アオのハコSideB #101~   作:扇町グロシア

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アオのハコ#194 「幸せの正面に」SideB たまのお出かけなので

 さすがに少し攻めすぎたかな、とは思う。上着を脱ぐ事になるのは確実だからその時に大喜くんが狼狽えるような感じにしたかったんだけど、肩出しは正直恥ずい。まあでも、こうしてお出かけなんて久しぶりだし良いか。

 最初に行ったのは水族館、その後はインターハイ後に海へ行った時。秋合宿が終わってからのお出かけは、夢佳と再会して色々とうやむやになってしまった。そしてクリスマスを経て年明け、去年の今日――私たちは付き合いだした。

 まあでもお互い忙しいしバレると困るから、一緒に行動する事はあまりなくて。……夏祭りで我慢できなくなって、言っちゃったんだよね。

 そこからは渚たちにも色々言われたし藤木くんに横恋慕されるしで大変だったけど、それでもなんとか頑張ってウインターカップも終わった現在。

 一年間ありがとう、これからも宜しくの想いを込めての――おデートでございますわ。

 

 ハーフ&ハーフのポップコーンをつつきながらスクリーンに向かう私はでも、さっき見た大喜くんの狼狽えぶりを反芻していた。いつもより多少はメイクを頑張ったせいか、大喜くんの反応がスゴく可愛い。いや大喜くんはいつも可愛いけどさ、うん。

 方向は同じだけど見ているものが違ってた私たちにしては、暗がりの中で同じ視点で見ているというのも考えれば珍しい。チラチラと隣を見そうになるけれど、それは我慢だ。安くない料金払って観に来てるんだし。

 アクション映画には似つかわしくない甘い恋愛要素が繰り広げられているのを、私は思わず真剣に見入ってしまう。勉強になりそうだし、これもまた良い選択か。こんな風に真剣に熱く愛を語る日が、もうすぐそこにまで迫っているのだから。……いやまあ本当にそうなるのかはまだ分からないけどね、うん。

 人の絆は永遠じゃない、自分ではどうにもならない理由で離れるときも来る。夢佳もそうだったし、去っていった仲間は他にもいる。

 私が猪股家を離れる日も、刻一刻と近づいている。だから一日一日を大事にしよう、これからもずっと。例えこの先に別れの日が来たとしても、大切な思い出を抱いていられるように。

 だから今は、この瞬間を楽しもう。大喜くんが隣にいてくれる、この幸せを噛み締めよう。

 

 映画を終えて出てくると、照明はちょっと眩しい。これから来る一人暮らしの為に細々と買い物したいけど、少し目を慣らさないと。……などと自分に言い訳しながら、大喜くんの手を握って歩き出す。どうせだし売り場まで少し遠回りして、大喜くんの手の感触を楽しむつもりだ。私ってやっぱり変態なんだろうか、花恋とも話したけど。

 こっちが「私、変態かもしれない」と言ったのに否定しないんだもんなぁ、あれは。まったく友達甲斐の無い女だよ、本当に。良いじゃん変態ちー、じゃなくて少しはカバーリングしようよ。そんな事無いよって言ってよ親友。

 まあ良いけどさ、別にもう。それに変態だって構うもんか、カップルだぞ。手ぐらい繋ぐさ、もっと触りたいさ。

 さてと、何を買ったものか。炊事器具はもう一通りあるし、大喜くんの分を買おうかな。遊びに来る事もあるだろうし、と言うか――泊まっていったりするかもしれないしね。でも一式揃えるとなると大変か、量も金額も。今はとりあえず小物だけにしようかな、そろそろお昼だし。

 良さげなお店もあるっぽいし、軽くカフェ飯と行きますか。おお、なんだかカップルっぽい。

 なんだか良いな、こういうの。もっと早くこうしたかった、隠す必要がなければそれで済んだのに。

 今日は手を繋いで帰りたいな、見付かると大変だけどそれでもしたい。あーでも大喜くんがなぁ……そこまではなぁ……。未だに名前で呼んでくれないし、千夏先輩のままだし。

 まぁ贅沢は言うまい、私たちのペースで行こう。肝要は何よりも、楽しむことなのだから。

 君も浮かれる春の季節に、楽しめ一瞬(ひととき)を、それこそ真の人生だ! ってね。

 いやまあ春と言うか新春だけど。

 

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