私はどうすれば良かったのだろう。
初詣の帰り道からずっと、そんな事ばかり考えている。もう三ヶ日も終わって一月四日、そろそろ正月気分も抜かなければならないのに。て言うか冬休みも残り少ないから課題も山積み、忙しいのに。
匡くんの為に、何をするのが最善なのか。それが分からないまま、思考は堂々巡りを繰り返す。
ああ、もう。
菖蒲には彼氏が出来て、でも匡くんは菖蒲が好きで。その気持ちを私がどうこう出来る訳もないんだけど、それでも力になりたい。大喜と友達に戻れたのは、匡くんのお陰だから。
忘れない、きっと眩しい眼差しを。不器用に言葉を選んだ声を。
その場では笑って祝福した、フラれてから何ヵ月も経って傷口も塞がって痛みも感じなくなっていた――筈だったのに。
胸の奥にある傷口が生傷に変わり、見えない血が流れて。誰にも言えなくて、ただ涙が溢れそうになって。
それを力尽くで堪え、私は歯を食い縛る。
――私は蝶野雛だ、これくらいで潰れるものか。立て不死身の身体、不屈の闘志。いつだって燃えている、赤毛の美しい女だ。何度倒れても立ち上がれ、立ち上がる限り死んでない。死んでないなら負けてない、負けてないから立ち上がれる。
そうやって大喜を忘れてでも強引に立ち直ろうとした時に、匡くんは言ってくれた。
恋愛に支配される人間関係は寂しい、と。
そう、そうだ。私はもう大喜の恋人にはなれない、なろうとしてもいけない。でも、だからって。友達として過ごした時間まで、無かった事にして良いのか。あのバカと縁を切って、思い出も何もかも全部綺麗に棄ててしまったとして。
それで私は、笑えるのか。勝手に人を切り捨てて、それで良いのか。
結局私は何も棄てなかった、大喜とは友達に戻り今では恋愛感情はない。と言うか、あれはちょっと……いやスゴく大変だったから暫くは良いや。毎日がジェットコースターで、精神的にブン回されて落ち着く暇がない。そりゃ振り返れば楽しかったっちゃ楽しかった、でもキツい。こうやって友達やってる方が、ずっと気楽だ。
今は素直に、そう思える。
匡くんもまた、恋を失った人だ。好きだった幼馴染みには恋人が出来て諦め、菖蒲は匡くんの気持ちを知らないまま他に彼氏を作ってしまった。いやまあ誰を好きになったって自由だし、それこそ私がなにか言える訳でもない。でもなあ……もう少しどうにかならないだろうか。
菖蒲と高砂くんは傍から見ても仲良しで、そうそう別れはしなさそう。二人を別れさせて匡くんを後釜に据える、なんて酷い事は出来ないし。
今現在菖蒲と匡くんは仲の良い
もし私が気持ちを打ち明けないまま、大喜と千夏先輩が付き合いだしていたら。私は今の匡くんのように、諦観の中にいたんだろうか。思いを伝えても伝えなくても苦しいまま、形だけ友達を維持して過ごしていたのか。
そんなのは、――嫌だな。そんな思いは誰にもしてほしくない。
お節介でも余計なお世話でも良い、なんとかしてあげたい。そうでないと、あまりに匡くんが報われなさすぎる。
なんとかしないとな、なんて何度目かのため息を吐きながら窓の外を見やると、空にはもう夜の帳が降りていた。
皆今ごろ、何をしているんだろうな。大喜と先輩はデートでもしてるかも、菖蒲はどうだろうな。匡くんは弟妹のお世話だろう、学校が休みだとそっちで大変らしいから。
ああ、世の中は難しい。でもどうにかなるさ、打つ手も上げる手も無い事態になんか滅多にならない。
さて……と。明日からまた、頑張ろう。なんとかなるさ、うん。