しかも顔を向き合うように!
かれつかてぇてぇ!!
イージスタワー侵入から数日後、時計塔前のベンチで1人黄昏ていた。
「よっ!そこのお兄さん♪良かったらお茶しない?」
「逆ナンみたいに話しかけてくんな、なんの用だ?」
茅森が話しかけてきた。現在バイト休憩中である。
「むしろそっちこそ何してんの?」
「見ての通りバイトの休憩中ですが?」
「えっ!?無休の連勤術士フルタイムアルバイターが休憩!?」
「ちょっと待て、誰だそんなあだ名つけたやつは」
「あたし」
「よし表出ろ」
「もう既に表だよ?」
不名誉なあだ名をつけられてた事に驚きだ。ココ最近は休んでいたんだが、休んでジムで走ってただけなんだが。
「いやまぁ〜、この間のこともあったし大丈夫かなァ〜って」
「安心しろ、どこぞの誰かさんの歌声聴いた挙句、名シーンを見せられれば影響されるもんよ。てぇてぇ邪魔したのはマジでスマン」
「せっかく濁してたのに台無しじゃん」
「とにかく、お前らに習って勝手に信じさせてもらうわ・・・お前らのてぇてぇが本物になるその日まで」
「ほんと、台無しだね。でも、あの部屋から出てからキャンサーに襲われなかったから、結構ダメージはきてたんだ」
「まさか穴掘ってたら、色々整理できるとは思わなかったけどな」
流石は31Aの部隊長と言うだけはある。同じ部隊でもなく、セラフ部隊員ですらない自分のことを気にかけてきた。コレが切り込み隊のリーダーのなせる技なのか、それともミュージシャンとしてのカリスマによるものなのか気になるところだ。
「ところでさ、研究室の物壊したりしたけどづかっちゃんに怒られなかった?」
「そこはモーマンタイ!兄貴埋める当たりから始めた演技で、司令官殿に精神的に参ってる様に振る舞った事により!お咎め無し!!」
「・・・あ〜、そっか」
「なんだよそのにえきらねぇ反応」
「・・・ごめん、後ろ」
「後ろ?」
茅森がおずおずと指を指した先を見ると、見た事のある軍服に身を包んだ女性がいた。グラビアが図書館にあったあの人。こんな漫画みたいなことがあってたまるかと叫びながら逃げようとしたがもう既に遅し、1週間のタダ働きが決定した。
「ブラックだ・・・セラフ部隊はブラック企業だ」
「会社じゃないけどね」
「ところでお前はなんでここに?」
「明日最終作戦当日だから息抜きにみんなで遊ぼうと思って向かってる途中」
「なら、俺ナンパしてないでさっさと行けよ。・・・逢川も一緒か?」
「めぐみん?なんで?」
「【逆エンパス】ってのは受信も出来るみたいだからな」
最近、といってもナービィの事を聞かされてから逢川の様子がおかしい。悩んでいる、焦っているそんな感じだ。時折、変な感覚になる事がある。【逆エンパス】との受信の方なのだろうと思う。自分にそんな力があると知ってからか、受信に関しては何となく他人のものなのかどうかわかるようになった気がする。気がするだけだが。
「気になるんならみこっちも一緒にどう?」
「バイト中だっての、休憩ももうすぐ終わりだ。今日はフレバー通りにも行くから会うかもな・・・というかみこっち呼びなんだな」
「あっ、変えた方がいい感じ?」
「うんや、東堂命じゃないけど東堂命として生きてきた過去は偽物じゃないから、これからも俺は東堂命だ」
「えっ・・・くっさ!!」
「やめろ!俺だってポエミーだって自覚してんだよ!!突っ込むなよ!!恥ずか死するぞ!!」
「恥ずか死って何!?」
わちゃわちゃしてたが休憩時間も終わるので茅森と別れた。今からの仕事が無給だと思い出したらやる気が出なくなった。これじゃあ無休ではなく無給の連勤術士になる。そもそも連勤術士じゃないが・・・絶対に認めないが。
ジム隣のショップバイトが終わり、フレバー通り雑貨屋バイトへ向かう。その途中逢川が1人どこかに行くのが見えた。
「・・・(動画サイトで見た時は確か、コーラだか浮かせてたな。一応用意しておくか)」
雑貨屋に着くとバイト始めるより先にタオルを大量に買い込んだ。
「そんなに爆買いして何する気だ、コノヤロー♪」
「いや、杞憂だといいんだがな・・・」
「言い返してこないんですね・・・」
「スマン、少し抜ける」
「始まってもいないですが、まぁ何かあるみたいですから良いですよ」
佐月から許可を貰い逢川が向かった方へ走る。動画サイトで見たサイキックの情報を頼りに水がある場所だと予想する。
丁度噴水近くに来たところで中から悲鳴らしきものが聞こえた。31Aメンバーもその声が聞こえたらしく来ていた。杞憂だと願ったが叶わなかったらしい、ずぶ濡れの逢川がそこにいた。
「・・・風邪ひく前に風呂連れてけ、ここは俺がやっとく」
逢川の頭にタオルを被せると和泉にタオルを放り投げる。
「東堂!?なんでいんだ、バイト中だろ?」
「これからフレバー通りの雑貨屋バイトなんだよ。逢川が1人でこっち来てたからタオル買い込んで向かっただけ」
「・・・さっきあたしと喋った時おふざけモードだったよね?この短時間で何があったのさ」
別に真面目モードになる条件なんてないのだが
「いいから、タオル持ってきたから拭いてやれ。大方サイキック試して噴水の水持ち上げたんだろ。動画投稿してた時みたいに、焦るのは分かるけど落ち着けよ」
「何がわかるんや・・・うちと違うて一回目やろ!」
「それ言われると耳が痛いわ」
「何?1回目?」
他の人達と違う部分として、これが最初の人生と言うこと。東堂命に吸収された事によりヒト・ナービィとして生まれたのが1回目の人生、他の人間は2回目の人生ということになる。
「あんまそのこと口走るなよ。熱くなって周りに人がいること忘れてるだろ」
「うっさいわ!」
「とにかく風呂入れてこい、落ち着くだろ」
「うん!ごめんみこっち!ここ頼んだ!!」
「へいへい・・・はぁ〜佐月に毒吐かれそうだわ。我々の業界ではご褒美に、なんて言えるレベルになってないしな。モップ持ってこよ」
この後佐月に毒吐かれたのは言うまでもなかった。どこぞの末っ子さんなら喜ぶんだろうけど自分はその域に達していない。というか、末っ子さんは自ら言われに来るレベルだ。そこまではさすがに行きたくない。そして、ついでと言わんばかりにタダ働きが半日伸びた。
「・・・疲れた、容赦ないわ。無休はともかく無給はやめてほし・・・おや、末期か俺?」
日が沈んだあと、バイトから解放された。自室に向かおうと歩いていると31A(逢川除く)メンバーがやってきた。
「やめろ、バイトで疲れてんだ。巻き込むな」
「まだ何も言ってないんだけど・・・」
「なんかお題付きで買い物だろ?」
「うん!めぐみん安眠グッズ買いに行く!」
「面白そうだからついて行っていいか?」
「ネジ切れんばかりの掌返しだな」
《フレバー通り》
「(う〜ん、安眠ねぇ〜。やはりコレか?いやでも1週間タダ働きだしなぁ〜。稼いだGP大量にあるけど、円になおしたら家一括で数軒購入出来る金額はあるけどなぁ〜・・・問題ねぇわ!)」
問題なかった。伊達に無休の連勤術士(以下略)とは言われていない。認めないが、認めたくないが。
他のメンバーはまだ来ていない。今のうち買ったコレを使い準備をする。何故か防音室があるのでそこを借りる。丁度準備が終わると他メンバーも買い終わったらしく集まってきた。1人やたらとデカイなんかを持っているが、突っ込まない方がいいだろう。因みに自分が買ったものは知らない人が見れば生首に見えるヤツ。
「よっし!うんじゃ1つづつ試そうぜ!先ずはユッキーからよろしく♪」
「あたしはコレだ」
和泉が出したのはももひき。それもベージュ色。年寄り臭いもん押し付けるなと一蹴された。
「次!つかさっちよろしく」
「私はこれよ!」
東城が出したのは冷蔵庫の取説。無駄に分厚いうえ、この部屋には無い。というかどこで取説だけ売ってるんだと思う。バイト中見かけた記憶ないんだが。
残りメンバーは、五円玉、ハンモックといった。真面目なのかふざけているのか判断しずらいものを持ってきていた。そしてやたらとデカイ物があると思ったがキャンサー型抱き枕だった。安眠ではなく悪夢を見るアイテムだ。
「次!みこっちお願い!!」
「なんやねん!自分までおるんか!!」
「だって面白そうなんだもの。とりあえずこれどうぞ」
ヘッドホンを逢川に渡し装着させる。スイッチON
『めぐみん、ゆっくりおやすみ♪(茅森月歌風イケボ)』
「なんやコレ!?耳がゾワゾワする!!?」
「えっ?何それ?」
「なにそれちゃうわ!!コレ自分の声やろ!!手伝っておいて何言うとんねん!!」
「えっ!?あたし何もしてないよ!?」
「いや〜、兄貴の体何でも出来るな」
「お前何した」
「茅森の声真似(イケボ)で『めぐみん、ゆっくりおやすみ♪』って言った」
「はぁ!?本人かと思う位似とったで!!」
「お前何買ったんだよ」
「コレ」
両手で買ったそれを見せる。人の頭部の形をしたマイク。ダミーヘッドマイク等と言われるASMR音声を作る道具。1,000,000円以上するらしい。
「それ、滅茶苦茶高いやつだよな!よくそんな金あるなお前!!」
「まだ、新築の家一括購入出来るだけはあるから」
「流石、フルタイムアルバイターね」
「うん、茅森お前後で屋上な。まぁ悪ふざけのお詫びとしてコレやるから」
そう言って電子軍人手帳を操作しRINNEを送る。
『みこっちからのメールのお知らせ♪無視したら許さないぜ♪(イケボ)』
「RINNE着信で俺ボイス!」
「腹立つぅぅぅ!!!」
「というか、いつ弄ったんだよ」
「なんやコレ!どうやって変えるんや!!」
『みこっちからの『みこっちからの『みこっちからのメールのお知らせ♪無視したら許さないぜ♪(イケボ)』
「送ってくんなや!操作させぇ!!」
どうやらお気に召さないようで、今回の安眠グッズ大会はDrawとなった。因みに逢川は、結局変え方分からず床に叩きつけてた。
部屋に戻ると目覚ましの時間をいつもより5分はやめて寝た。
《翌日》
「・・・さて、やるか」
目覚ましの音に起こされ電子軍人手帳を手に取る。普段は寝起きが悪いが今日は妙に良い。とても良い。すこぶる良い。時計を見て普段の起床時間残り10秒位に和泉へRINNEを送る。
《31A部屋》
『ユッキー、早く起きな。起きないなら・・・(茅森月歌風イケボ)』
「東堂お前ぇぇぇ!!いつ弄ったぁぁぁ!!!」
逢川の方は骨が折れたがこっちは楽だった。やり方としてはとても単純だ。KETSUに頼んだ。
数秒後
和泉「東堂お前!!どうやった!いつやった!言え!!答えろ!!東堂!!!」
茅森「ユッキー落ち着けって」
和泉「落ち着けるか!!みんながいる前で流れたんだぞ!!」
東堂「KETSUに頼んだだけ」
和泉「お前らいつの間に結託してたんだよ!!というか!なんでお前がKETSUの存在知ってる!!」
茅森「ごめんユッキー、あたしが前に教えちゃった」
和泉「お前のせいかァァァァ!!!」