我愛羅成り代わりによる四代目風影救済RTA   作:とんでん

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お久しぶりです、生きてます。
穢土転生してくれた一般通過卑劣ニキネキはありがとうございました!またちょっとずつ書いていきます。




閑話

  

 

 ───忍などという血生臭い生業に就く者は、大抵が神も仏も知らぬ虎狼の性と決まっている。

 

 少なくとも己はそうだ、という自負がバキにはあった。上からの命令さえあればどのような死地にも向かえたし、怖気のするような所業でも必ずやり遂げる。嫌悪はあれど迷いはなかった。任務ならば、それが里のためになるのならば否やはない。

 なにせ、忍とはそういうものだ。

 

「今回の刺客は質が良いな・・・・・・お前強いだろう?」

 

 だから今まで誰も成功したことのないその仕事が己に回って来た時も、なんら臆してはいない筈だった。

 

「俺を殺しに来た連中の最長記録(、、、、)は今のところ三時間だ。さあ、お前はどれだけの間持つだろうな。」

 

 砂に雁字搦めにされて路地裏へ膝をつき、齢十にも届かぬ幼子を見上げる。返り血一つ浴びずに佇む小柄な少年を見上げる。

 

(嗚呼、)

 

 その日。立っている大地すら味方につける、この里が生み出した化け物に───バキは本物の修羅を見たのだ。

 

 

 

*******

 

 

 

 ついにきたか。

 とは、バキが四代目風影からその子息の暗殺を命じられた時一人抱いた感想である。

 

 砂隠れ所有、一尾・守鶴が人柱力の我愛羅。

 

 風影である羅砂(らさ)が妻との間に設けた第三子であった。

 露悪的な言い方をすれば、風の国の軍縮方針の煽りで胎児の折に尾獣を封じられた、哀れな生ける兵器である。

 

(三人の中で一番適合率が高かったとはいえ、やはり無理が生じたか。)

 

 人柱力は概ね影の身内から選出される。

 それが故に我愛羅も守鶴を封じられるに至ったのだが、そもそもの話、我愛羅はあまり人柱力向きの体質ではなかったそうだ。あくまでテマリやカンクロウよりは相性が良いというだけであり、成長と共に封印に綻びが生じる懸念から見送る案も出たと聞いている。

 それを強硬に進めたのが実父の羅砂その人であったとも。

 焦躁の理由はバキも承知のところだ。五大国の一角という体裁すら保てなくなれば、砂隠れの存続はない。我が子で博打を打とうという気にもなるだろう。 

 しかし一騎当千の駒を手に入れる博打に、風影は失敗した。妻の命を吸い上げ生まれた我が子は抑え込めぬ力を暴力に代え、向かうもの全て傷つける化け物であった。

 

(まあやりきれまいな。)

 

 尾獣形態での我愛羅の暴走は、一度や二度ではない。そしてその都度里には甚大な損害が出た。

 風影は里長として軍事力向上の一手を打ち、それが失策した故に処理を決定した。なんらおかしなところはない。彼のやっていることは正しい。忍としては、だが。

 閑話休題。

 

(叔父である夜叉丸を手にかけてからは、目立った暴走はない。しかしかといって、油断することもできない。)

 

 昨今のターゲットの仔細情報の書かれた資料に、バキは目をすがめた。

 年の割には小柄。叔父を己が手にかけて以降、心理的ショックからか随分と大人しく従順になったそうで、姉弟仲は以前より比較的良くなったという。

 されどその鬱憤を晴らすためか、父から差し向けられる暗部への対応には残虐性が増していた。

 例えば戦闘時に手を抜き敢えて致命傷を避けた攻撃をする、或いはわざとやられたふりをして、攻防を長引かせる、軽傷を負った相手が向かって来るのをチャクラ切れ寸前まで甚振る──────といったように。

 

 

 

「・・・・・・なぜ、俺にとどめを刺さない?」

 

 ───もしや、戦いそのものを楽しんでいるのか。

 と、そう事前に分析したバキの言葉に我愛羅はうん?と薄い色の目を瞬いた。

 我愛羅の面立ちは母親に似ている。色白でつくりが良い。その白皙の頬に返り血の一滴を浴びることなく、バキの攻撃をいなした人柱力は「なぜ?」と首を捻った。

 

「殺し合いを好んでいるにしては、お前のやり方は半端だ。何故先程俺の足を潰さなかった?」

 

 するすると拘束を解き去っていく砂がぐるぐると我愛羅の周囲を旋回している。

 利き腕から滴り落ちる血に「暫く印は組めんな」と独り言ちながらバキは油断なく相手の動きを伺った。

 

「・・・・・・面白い。今度の刺客はお喋りが好きなのか?今までの連中は話しかけてこなかったのに。」

 

 くふくふ笑った我愛羅が、風影が買い与えたという気に入りのクマのぬいぐるみの手を持って、ちょいちょい、とバキを示した。まるで子どものような仕草だった。

 

「───別に人を殺すのは好きじゃない。と言っても誰も信じないのだろうが、最近わざと長ったらしく戦っている件についてはなに、ちょっとな。」

「では、嗜虐趣味か?」

「いいや?アカデミーで体術のテストがある。」

 

 ・・・・・・たっぷり三拍ほど置いてから、バキは「は???」と言った。

 

「は???」

「だから、アカデミーで忍組手のテストがある。実技試験だ。もう来週になるんだが、如何せん俺は友達がいない。」

 

 同級生はクラスメイトと練習していたりするようなんだが、と我愛羅が憂い気な溜息をついた。

 

「しょうがないから、父様から向けられる刺客で練習することにしたんだ。わりと良い頻度で来るので助かっている。お前も任務に失敗して暇だろう、始末書を書く前に少し付き合え。」

「・・・・・・お前がアカデミー程度の体術テストで難儀するようには思えんのだが?」

 

 多分、ツッコむべきところは他に色々あった。しかし残念ながらその時バキの口をついてでたのはそんなちょっとズレた言葉だけだった。思うに混乱していたのだろう。否、どう考えても里の精鋭たる暗部をいなせる奴が真面目に取り組む必要ないことなのだが。

 

「甘いな、父様の刺客。アカデミーの体術テストでは忍術の使用は禁止だから、砂の術も使えないんだ。つまり砂を動かした瞬間失格になってしまう・・・・・・。」

「・・・・・・それはそれは、」

 

 お気の毒、とか言えば言いのだろうか。

 

「だから暗部に攻撃してもらう間、砂が反応しないよう自分でコントロールしようとしたのだが、これがなかなか上手くいかない。このままだと俺は体術で成績がドベになる。それは嫌だ。」

「はあ。」

「とても嫌だ。」

 

 大事なことだったのだろう(当人にとって)

 二度言われた。言われても困ると思った。

 

「というわけで、今からチャンスをやる。俺はなるべく砂が動かないように制御を頑張るから、お前は本気で俺を殺しに来い。多分水遁あたりが効果的だ。砂忍の底力を見せてみろ。」

「ええ・・・・・・。」

 

 ドン引きである。なんだこの状況。標的に嬉々として殺しに来いと言われるこの現状、いったいどうしてくれよう。しかも理由がアカデミーの試験対策。

 バキは正気を疑ったが、残念ながら我愛羅は大マジなようだった。無駄に曇りなき真摯な眼に見つめられたバキは、思わずなんとも言えぬ顔になってしまい、つい人相を隠す名目で与えられた面布に感謝した。

 

「頭がおかしいのか・・・・・・?」

「?今更気がついたのか。」

 

 無邪気に問い返されたバキは、なんかもうやけっぱちになって起爆札付きのクナイを放った。無論、当たりゃしなかった。むしろこんなやけくそで事の始末が完了していれば、風影だって苦労していないのである。

 閑話休題。

 兎にも角にも、そうして先人たち同様に我愛羅暗殺に失敗したバキはすごすご帰還することとなった。報告を聞いた風影は頭を抱えていた。気持ちは分かる。これ以上ないほどに。

 

 

「───じゃ、まずは自己紹介から始めるじゃん?」

「必要あるか?四分の三が身内だぞ。」

「いいのいいの。区切りって大事でしょう、チーム結成一日目なんだしさ。」

 

 ・・・・・・バキが再び我愛羅と顔を合わせることになったのは、それから数年。

 当人がそのアカデミーを卒業し、新人下忍としてバキの部下となった時のことである。チームメンバーとなった姉や兄にせっつかれて、「我愛羅、好きなものは砂肝。嫌いなものは甘すぎるもの。」と不承不承名乗った末っ子次男は、不意にふとバキを見上げた。

 

 一度、二度。薄緑の目が瞬きをする。そして、

 

「───・・・・・・ああ、あと。体術も苦手だな、未だに(、、、)。」

 

 ひくり。

 

「あー。そういや我愛羅って中遠距離タイプだよな。」

「それ言ったらアタシら全員そうだろ。近接対策も練らなくちゃね。」

「つっても我愛羅にゃ砂の防御があるじゃんよ。」

 

 思わず口元を引き攣らせた上忍を他所に。盛り上がる姉弟へ「一応弱点もあるから克服したいんだがな。」と我愛羅が混ざる。

 

「バキせんせーってその辺得意じゃん?教えてくれよ。」

「アンタ強いんだろ?風影直轄部隊にいたって話聞いたけど。」

「今日は初任務があるから無理だろうが、今後是非ともご指導願いたいものだな。」

 

 ・・・・・・バキは忍者である。

 上からの命令があればどのような任務も熟す。否やはない。あってはならぬのである。だがしかしこう胃袋に来るのはどうもなあ、と人知れずしょっぱい顔になったバキは嘆息を吐いて、風影から我愛羅たちへ下された任務を告げるため口を開いたのであった───

 





───で、バキが本格的に胃痛になる案件こと二話(我愛羅迷子事件)へ繋がるわけである。
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