皇帝と帝王と、折れた杖   作:スライム小説家

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小説初心者なんでヘタクソですが、どうか生暖かい目で見てくだされば幸いです。


1話 皇帝との邂逅

何故そう思うようになったかは全く覚えていないが、幼い頃から私には一つの夢があった。

 

 

 

『この手で最強のウマ娘を育てたい』

 

 

 

あまりに子供じみた、非現実的な夢だ。しかし、幸運なことに私にはそれを目指せるだけの才能と環境があったらしい。

 

ウマ娘へのトレーニング、レース運び、メンタルケア…ウマ娘に関する全ての勉強が、有り得ないほど順調に進んだ。その後もトレーナーになる為に地道な努力を続けた私は、遂に………

 

 

 

 

 

「精進ッ!!君と、そして何より君がこれから担当するウマ娘のため、励んでくれたまえ!」

 

 

 

 

 

日本ウマ娘トレーニングセンター学園―――通称トレセン学園のトレーナーになれたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーナーになったからには、担当するウマ娘が必要だ。まずは、ウマ娘のスカウトをしなければ。

 

 

そして私の手で、担当になった子を最強へと導いてみせる!

 

 

…そう意気込んだまでは良かったのだが、肝心のスカウトが全く上手くいかない。あれから一か月間の間、何人かのウマ娘に声をかけてみたのだが全員に断られてしまったのだ。

 

「次が今日最後の選抜レースかぁ。次は…見なくても良いかな」

 

正直なところ、次のレースに出る『シンボリルドルフ』というウマ娘は凄く気になっている。途轍もない実力の持ち主な上に、向上心も高く練習熱心な逸材らしい。スカウト出来るならしたいのだが………

 

『ここは負けられない1番人気、7番シンボリルドルフ』

『実力は完全に上位ですね。デビュー前とは思えませんよ』

 

わぁぁぁぁ、と紹介と共に歓声が上がる。このレースを見ている観客、出走するウマ娘、噂の新人を見に来た多数のトレーナー。この場に居る全ての人々が、彼女に注目していた。

 

流石にこれだけの大型新人をスカウト出来るわけがない。何十人ものトレーナーが彼女に注目しているのだ。その中には当然名の知れた優秀なトレーナーだって何人も居る。きっと、彼女にはそんなトレーナーがつくのだろう。ああ、あの子をスカウト出来るトレーナーが羨ましいなぁ。

そんなことを考えていると、カッコンッと音が響き、ゲートが開いた。9人のウマ娘が一斉に飛び出し、猛烈に加速をしていく。

 

どうやら、レースは始まってしまったらしい。私がシンボリルドルフを担当することが無理だろうし、見る必要はないと思っていたけども、折角だし最後まで見ようかな。

 

………数分後、私のそんな軽い気持ちは吹き飛んでいた。

 

 

1番を手にしたのはシンボリルドルフ! 鎧袖一触!万邦無比!これぞシンボリルドルフの走りだぁーっ!

 

 

デビューを目指すウマ娘たちが、トレーナーの前で実力を表明する選抜レース。1着の座を手にしたのは、シンボリルドルフ。2着とは、残酷なまでの差が開いていた。

ああ、何て凄いんだ。彼女の走りは、まるで星のように美しく輝いていた。そして、威圧的でもあった。はるか高みに居る上位者が、下々の者たちを圧倒するような…そう、正に『皇帝』とでも呼ぶべき走りだった。

彼女をスカウトしたい。トレーナーとして、彼女と共に最強への道を歩みたい。そんなことを考え、はっと我に返る。…駄目だ。私では彼女に釣り合わない。足を引っ張るだけだ。

 

余りにも常識外なレースに、熱気の冷めないスタンド。私を含めたトレーナーたちも、その恐ろしいほどの実力に一同騒然となっていた。

 

 

「客席で応援を送ってくれた皆、感謝する。今日の勝利は、君たちの声援あってのものだ」

 

 

唐突に、シンボリルドルフが観客たちへとそう呼びかけた。それに呼応するかのように、益々スタンドが騒がしくなる。

 

「そして―――トレーナー諸君。私の実力は確認してもらえただろうか」

 

次に、ここに集まったトレーナーに彼女は語りかけた。

 

「無論、至らぬ点は枚挙に暇がなく、いずれ至るべき頂点はまだ遠い。なればこそ、共に帝道を歩む債輩を、私は強く求めている。」

 

その言葉に、今度は多くのトレーナーがざわつく。シンボリルドルフの一言で、人々は興奮し、混乱し、畏れる…もはや、彼女はこの場を掌握していた。

 

 

「我こそはと思う者は、是非名乗り出て欲しい」

 

 

その一言に、全員が驚愕し、互いに見合うが…その場では誰も名乗り出ることなく、解散になった。

 

 

 

 

トレーナー寮の自室に戻っても、私は彼女の走りを忘れられないでいた。圧倒的すぎるのだ、彼女は。

あの場で誰も彼女のトレーナーに名乗り出ることがなかったのも、彼女が強すぎるからだろう。素人でも格が違うとすぐに分かる彼女が、もしレースに負けたとなれば…普通に考えてトレーナーが無能ということになる。

 

トレーナーとしての立場を考えると、シンボリルドルフを担当するということはとてもリスキーなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

でも、私なら彼女をもっと輝かせることが………いや、やっぱり実力不足だし………

 

 

結局、色んなことを考えこんでいた私はその日、一睡もできないのであった。

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