シンボリルドルフの衝撃的なレースを見た翌日、私はある目的でトレーニングコースへと足を運んでいた。
「おや、君は!?………せ、選抜レースでも見た顔だな」
そこには、シンボリルドルフが居た。どうやって話しかけたものか、と私が悩んでいると彼女は話を続ける。
「選抜に出たウマ娘をトレーナーが直々に訪れる………これ即ち、スカウトだと捉えても構わないかい?」
その言葉に、躊躇いながらも私は…軽く首を縦に振った。一晩悩んだ私は、シンボリルドルフをスカウトすることにしたのだ。
「ならば1つ、聞かせて欲しい。君は何故、私の所へ来た?」
その問いかけへ答えることは、直ぐに答えることが出来た。
「貴方なら、最強のウマ娘になれる。私は、貴方を最強のウマ娘にしたい」
目標は、高ければ高いほど良い。それにシンボリルドルフならば、そんな目標も夢ではなく現実にしてみせるだけの才能と実力を持っている。そう思えるほどに私はシンボリルドルフというウマ娘の虜になっていたのだ。
今の言葉で私の熱意は伝わっただろうか、とシンボリルドルフの方を見てみると彼女は複雑そうな表情をしていた。
「かつての君は、そんな考え方では………」
ん?何か今、変なことを言われた気がする。
「いや、何でもない。それよりも、実は君の他にも私をスカウトしに来たトレーナーが2人居てね」
話を逸らすように、唐突にもたらされたその情報に驚きはなかった。これだけの逸材だ。私以外にもスカウトをしたトレーナーが居たのは当然だろう。むしろ、2人というのは少ないように感じる。
「1人は私を必ず強くするという決意を語り、1人は私と必ず歩むという覚悟を語った」
「トレーナー君。3日後に、再び私は同じことを君たちに問う」
一気にそう話した彼女は一呼吸置いて、私にこう言った。
「その時は君の
その一言には、誰かに願うような、頼み込むような…そうであってくれと縋るような弱さが見えた気がした。
「誰しもが認める頂点の存在となり、全てのウマ娘を導く―――それは、私が課せられた使命。大志のために、君と共に道を歩む………そうなることを願っているよ」
そう締めくくると、彼女はどこかへと去っていった。
本来の答え。
シンボリルドルフは私にどんな答えを求めているのだろう。カフェテリアで、私はずっと考えていた。
「おや、君は………奇遇だね。向かいの席は、空いているかな?」
いきなり掛けられた声に驚いて、そちらを向くとそこにはシンボリルドルフが居た。
「私は別に構わないけど…」
一体何故、わざわざそんなことをするのだろうか。
「有難う。そろそろ混雑し始めるからね。少しでも席を空けておいた方が良いだろう?」
そう言ってシンボリルドルフは向かいの席に腰掛けると、少し心配そうな表情で話を続ける。
「ところで………かなり例の件について悩んでいるようだね、トレーナー君。今の君は、大分疲れているように見える」
成る程、私のところに来たのはそちらが本題か。確かに昨日から全く眠れていない上にずっと考え事をしているのだから、今の私は疲れているのだろう。実際、頭痛も少しするし。
しかし他人から心配される程ともなると、よっぽど酷いらしい。
「問いかけた私が言うのも何だが、余り根を詰めすぎるのも良くないよ。丁度カフェテリアに居るのだから、甘味の一つでも摂取してみてはどうだい?」
それも良いかもしれない。そう思って、テーブルの上に置いてあったメニュー表を見てみる。
キャロットアイス、お汁粉、きな粉餅、特盛やる気UPパフェ…色んなメニューがあってどれを選べばいいのか迷ってしまう。
「糖類は脳へ活力を与えるが、中でも果物や野菜、全粒穀物などは精神的な集中を促す効果が高い。本日のメニューから選ぶのならば、季節のフルーツサラダがお勧めだな」
く、詳しい…にしても、こういう話がすらすらと出てくるあたり、日常生活からレースのことを念頭に置いて過ごしているのだろう。
「凄く真面目なんだね、貴方は。生徒会長なだけあって、いつも皆の模範生なんだなって感じがするよ」
「ふふ、褒めてくれるのは有り難いな。だが、もはや習慣づいてしまったそれが悪い方向に働くこともあってね」
悪い方向に?何もデメリットがあるようには感じないけれども。そんな疑問を抱いていると、シンボリルドルフは周囲を軽く見回した。私もそれに続いて周りを見てみると…
「わわ…か、会長、トレーナーさんと難しそうな話してるね………」
「私たちがうるさくして、邪魔なんかしたら申し訳ないし………向こうで食べよっか………!」
あっという間に、周囲のウマ娘たちが移動していく。今や、ここ一帯の席に居るのは私とシンボリルドルフだけとなってしまった。
「見ての通りだ、トレーナー君。本来、生徒会長とは皆に気軽に頼られる者が相応しい。ひいては、皆を導くに相応しいウマ娘になれるはずなのだが…」
「何というか、畏れられてるよね」
「うぐっ」
何気なく放った一言がどうもクリティカルヒットしてしまったらしく、シンボリルドルフは苦々しい表情になる。
「だ、だが私だって改善案が無い訳ではないぞ、トレーナー君」
改善策?
「ジョーク、というのを最近研究していてね。固い空気を打ち壊す粋な冗談というやつだ!」
いつもよりワクワクした彼女らしからぬ様子に、少し嫌な予感がしてきた。
「えっと――例えばどんなの?」
「先日、通りを歩いていたら犬を見かけてね。余りに見事な毛並みだったために、私は思わずこう呟いてしまったんだ…」
あ、これヤバいかも。
「
「どうだ、トレーナー君!?」
………少し寒気がしてきた。頭も痛いし、少し休んだ方が…
「トレーナ―君!?おい、トレーナー君!?大丈夫かい……