姫ギルに転生しましたが、どうやらFate世界では無いようです。 作:Shohei Hayase
突然ではあるが、俺も人間である以上、どうしようもなく気分が悪くなることがある。
例えば、失意に沈んだ友人を説得する為とはいえ、口に出すことすら烏滸がましいイキった発言をしてしまった時、とか。
(何が日本一のファッションモデルだよ……英雄王スペックに胡座を掻いてる俺と、ただの人間のアイとでは、その努力の量も密度も、天と地ほどの差がある。……情けない男だな)
この才能はあくまでも外付けの物だ。断じて俺という個人が持つものではない。
「どうしようもない……そう、どうしようもないんだ。本当に」
別に降って湧いた才能を喜んで捨てられるほど禁欲的ではない。俺はそこまで聖人ではない。
だが悪人では無いからこそ、本気で動けば世界征服すら容易くできてしまうであろうこの体の全てを十全に扱おうとも思えない。
……うんまぁ、ぶっちゃけ世界征服くらい簡単にできる。
主要都市にエヌマをぶっ放して核ミサイルサイロを吹っ飛ばせばアメリカは簡単に沈む。中国も同様、東西の格差が酷い分更に簡単。これでサプライチェーンの3割近くは破壊できる。後はもう消化試合だ。
黄金律で無尽蔵に増やした金を使ってもいい。
そうしたら議決権を盾にアドバイザーとして事業拡大とM&Aを推し進めていけば、やがて世界経済を手中に収めることができる。これもある種の世界征服と言えるだろう。
だが、正直言って、俺は世界征服というものにそこまでの価値を見出していない。
もし世界を征服したとして、それをどうするのか?
確かに俺は世界を統べることが出来る。人々を富ませ、国を豊かにすることが出来る。だがそれは、俺という一個人の力に極端に頼り切った偽りの世界だ。
俺なら出来る。しかし、その後は? 一度舵取りに失敗すれば坂を転げ落ちるかのように崩壊する……そんな世界を作るわけには行かない。
加えて、経済ではなく、武力で世界を支配するにしても、俺は決して一人ではない。
アイがいる。斎藤社長がいる。施設の職員がいる、仲間たちがいる。
彼らを守りながら国家と正面から衝突したり、敵対勢力を排除するのは難しい。彼らを切り捨てればずっと簡単になるが、それは俺が俺という存在であるが故に許されない。
……それはさておいて。
今この瞬間を以て、
あらゆる思惑、あらゆる奸計が俺に、あるいは俺の大切な人達に向かうことになるだろう。それを事前に察知し、注意を逸らし、その隙に根源を断つ。
それを達成するためには、今のままでは権力も資金力も足りない。芸能事務所に所属し、確定申告による査察が入る以上、法律に沿った合法的な手段で莫大な金を得ることは難しい。
……なので、ここは英霊ギルガメッシュとしての力に全力で乗っからせてもらおう。
多摩川の河川敷、視線避けと光学迷彩の宝具で監視衛星と監視カメラから身を隠しつつ、王の財宝のゲートを開く。
巨大な波紋の中から現れたのは、古代インドの叙事詩に登場する神々の乗り物である
を、魔改造したものである。
ぶっちゃけヴィマーナ君、凄い凄い言われてる割には欠陥が多いのである。
宝具化されていたとはいえ現代の戦闘機にすら負ける格闘戦性能の低さと、誘導武装の貧弱さ、光波妨害技術の不足、あと趣味の悪い金ピカ色等々……
これらを何とかすべく、同じく王の財宝内に収蔵されていた「光の船」と各種結界宝具、防御防具、電波吸収塗料、現代の火器その他諸々で機能を補い、一つに纏め上げたものとなっている。
その結果として全長25m程度まで大型化し、戦闘機染みた真っ平らな外観に変化したが、そのスペックは凶悪の一言に尽きる。
F-22に搭載されている塗料より数世代先の技術を持つ電波吸収塗料を使用した結果、ステルス機用の機体設計をしていないにも関わらず素の
そして、主機関を光の船に搭載された「ブラウン・ドライブ」に変更することで、宇宙空間での活動及び超光速機動能力を獲得している。これに伴って操縦席の後部にはエアロックが設置され、それらバイタルパートは電離放射線を防ぐ結界を二重にした上で独立稼働させることで冗長性を確保している。
「ブラウン・ドライブ」の他に、大気圏内ではジェットエンジン双発による通常動力での駆動を可能とし、この状態でもアフターバー点火時の最高速度はマッハ3に達し、
極めつけには機体の各種開口部を閉じ、主機関をヴィマーナ本来の太陽水晶とする事で、廃熱を極限まで抑えた
……まぁやりすぎた感は否めないが、無いよりはあったほうがマシだろう。
ヴィマーナに乗り込んで熱隠蔽形態に変更、同時に光学及び電波迷彩を起動し、河川敷に埋め込んだGPS受信機の座標をウェイポイントとして記録する。
物理法則から解き放たれたヴィマーナは静かに上昇し、上空2000mの地点でVTOLをオフにして、雲を壊さないように注意しながら対流圏を抜け、成層圏からは熱隠蔽を解除してブラウン・ドライブでぐんぐんと加速していく。
念の為に宇宙服を着用し、熱圏に入った。
「宇宙かぁ……」
この目で宇宙から地球を見るのは、前世今世通して初めてのことなので、人並みに感動などしてみる。
速度は時速10万キロに到達し、ものの1分で国際宇宙ステーションの高度を超え、10分で静止軌道を超えた。
宇宙空間での自身の位置を知るためには、電波を利用することが求められる。しかし、当然ながら俺にそんなコネはない。どこかのレーダーをハッキングしてヴィマーナに向け続ければいいのだが、そんなことをしたら即バレする。
結局、頼ったのはGPS衛星だった。
とは言っても、GPS衛星は地球に向けて電波を発射しているので、静止軌道以遠の座標特定には使えない。なので、俺から見て地球の裏側にいるGPS衛星から溢れた電波を拾うことで、電波航法を成立させている。
(軌道速度合わせ、1795、1797……1800)
「……着いた」
万感の思いを込めて、そう呟く。
多摩川の河川敷を出発してから1時間。地球との相対距離、およそ10万2000キロの超
ヴィマーナ君:もはやヴィマーナの名前を借りたナニカと化しているが、構成割合としてはヴィマーナ4、光の船3、その他宝具2、武装類1なので、辛うじてヴィマーナを名乗っている。
光の船:Fate/EXTRA CCCに登場するギルガメッシュの所有物。超光速での移動を可能とし、銀河の果てから戻ってこられるレベルの性能を誇る。CCCエンディングによると、Fate世界には1500光年離れた所に異星文明があるらしいが、天の川銀河は直径10万光年なのにそんな近くでいいのか、と突っ込んではいけない。