姫ギルに転生しましたが、どうやらFate世界では無いようです。   作:Shohei Hayase

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Steadfast:[形]確固とした・断固としたさま、不変の、不動の



堅き決心、それと抑止力

 

宇宙服をしっかり着用していることを確認して、エアロックを開放する。

 

エアロックの取っ手と宇宙服の腰をケーブルで繋いでおく……ヴィマーナが展開するフィールド内であれば、別に生身で活動したって問題無いのだが、念の為だ。

 

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)……起動」

 

俺の声に応えて、ヴィマーナを喚んだ時よりも遥かに大きい波紋が現れる。その中から出てきたのは、超大型戦略級偵察衛星……ステッドファスト。

 

重量2万トン超え、もはや衛星というより宇宙戦艦とでも言うべきこのステッドファストだが、主な機能としては2つある。

 

1つは高度約10万キロの遠軌道からでも軍事偵察衛星並の解像度での撮影を可能とする高精度光学系。

 

そしてもう1つ。

 

()()()、およびヘルメスMk-4……起動」

 

第十世代量子コンピューターたるヘルメスMk-4と、それを下支えする動力炉。量子コンピューターであるヘルメスは本来なら駆動に魔力を必要としないが……

 

(宇宙には無尽蔵に水素があるわけじゃないからな。核融合炉を使うにしても限界がある)

 

星間物質から供給できる水素には限りがある。木星や太陽から水素を汲み上げるのだってタダじゃないし、第一完全に自動化できない。

 

故にこその超抜級の魔力炉心、そして魔力を集める魔術礼装は、宝石剣ゼルレッチの能力を元にした……平行世界からほぼ無限の魔力を供給するもの。エンタルピーとしては有意に減っているが、それはそれとしてこの世界単体で見れば永久機関……という訳のわからない状況だが、活用しない手はない。

 

礼装のコアをステッドファストに差し込み、呼び水となる魔力を叩き込むと、ステッドファストの各部から淡い光が溢れ、監視形態へと変形していく。

 

これで起動は完了した。後は地球に戻るだけ……なのだが。

 

「……まぁ、そう上手く行く訳もない、か」

 

背後から飛来した数多の剣。それを防御宝具で防ぎきり、呆れともつかぬ言葉を零す。

 

「やっぱり、抑止力が出張ってきたな」

 

そもそもこの世界、微弱なりともマナが存在している。

 

存在してなければ俺自身の魔力だけで王の財宝を千門展開し、それらの魔術礼装をすべて同時起動できるわけがない。千門は以前試しにやってみた数値だ。

 

そして、マナがこの世界に存在するからこそ、星と人類の絶滅回避の祈りたる抑止力がこちらに干渉してくる事は、十分に予想できていた。

 

……しかし、妙だ。

 

抑止力による介入は、通常なら介入対象の周りにいる人物を後押ししたりとか……そういう、僅かながらの後押しによって達成される。それがいきなり抑止の守護者を派遣してくるなんて……

 

(……が、なったものは仕方ないか)

 

現実に守護者が現れたというのであれば、対峙する他ない。

 

あいにく戦いなぞやったこともないが、王の財宝で防御をカチカチに固めれば一対一(タイマン)なら問題ないだろう……

 

そんな考えは、振り返ると同時に霧散する。

 

赤い外套に身を包んだ錬鉄の英雄、それはいい。あの剣の雨の時点で予想できていた。

 

……しかし、もう一人。

 

桃色のグラデーションが毛先にかけて掛かった金髪と、赤い瞳。

 

白を基調にしたドレスと、傍らに携えた剣。

 

彼女は、彼女こそは……

 

アーキタイプ・アース(地球最強種の原型)……!?」

 

だがどうしてアレが出てくる? 死徒狩りやらなんやらでスれてるんじゃなかったのか……そう言おうとして、思い至る。

 

この世界はマナが薄い。Fate世界に比べれば死徒も弱く、死徒狩りの任なぞ星の最強種候補からすれば赤子の手を捻るようなものだろう。

 

……それに加えて。

 

「あ゛ーっ! そうだよなぁ! 直死の魔眼の効力も弱まってるんだから月姫起きねぇじゃんクソが!」

 

おまけに俺という存在が出てこれる時点で少なからずこの世界はアラヤに寄っている。故にこそ、ここに於いて現れるのは真祖の姫。無垢な箱入り娘でありながら、この世界において最強の存在である。

 

「その船は、人から生まれ、(しか)して人の尺度に留まらず、星を滅ぼしうる物……私が呼ばれるとは、驚きましたよ、黄金の女王」

 

「星の触覚が、一体何の御用ですかね、真祖の姫君。癇に障ったんなら取り外すんで、とっとと帰ってくれませんか?」

 

声が届く。魔力の放出はなされず、戦闘態勢にはならないと判断して、多少体の力を抜いた状態で会話に応じる。

 

「それは不可能というものです。消極的な介入であれば、我々は容認しました。 ……しかし、貴女は直接的な力を振るえる状態に付けた。または、その決意をした。それはもう、抑止力の容認度を超えているのです」

 

「……ここですべて手を引けば、貴女は俺を追わないか?」

 

俺の問に、彼女は静かに首を振る。

 

「どちらにせよ、です。貴女が力を振るう振るわないに関わらず、その決断をした時点で、結末は決まっているのです」

 

それに、と彼女は続ける。

 

「貴女が力を振るうのであれば……貴女ではなく、貴女の大切な人が犠牲になるかもしれませんよ?」

 

……言ったな? ()()に向けて、その言葉を。

 

「もし、俺の友に手を出すというのなら……たかが石ころ1つ、この乖離剣にて、諸共に砕くまで。図に乗るなよ、アーキタイプ・アース!」

 

俺の返答を受けて、彼女は苦笑と共に剣を抜き、外套の男は黒白の陰陽剣をその手に握る。

 

「……でしょうね。貴女というヒトは、そういう性質であるが故に、ある種読みやすい」

 

何を……と一瞬考えかけて、今はその時ではないと強制的に振り払い、両手に宝剣を装備し、王の財宝から防御防具を複数展開する。

 

「交渉は決裂です。行きますよ、錬鉄の英雄」

 

「……チッ!」

 

地球のはるか上、静止軌道から3倍以上離れた宇宙空間で、1つの戦端が開かれた。

 

 

 

 




抑止力:カウンターガーディアン。世界の存続において決定的なエラーを抑止する為の最終安全装置。星の思う生命延長の祈りたるガイアと、人類の持つ破滅回避の祈りたるアラヤの2種類が存在する。抑止力は破滅が決定的となった瞬間に発動するが、今回は時間遡行して殺しに来た。逆に言えば、そこまでやらせるだけの物がステッドファストには積まれている。

超大型戦略級衛星・ステッドファスト:全長200m、重量2万トン。内部には人が住めるだけのスペースがあり、地球上での実戦運用に耐えうるだけのC4Iシステムを積んでいる。宇宙戦艦ヤ○ト。流石にアレ程狂った威力ではないが、()()()()()()()()()()()で世界と人間が恐怖するほどの兵器を搭載している。
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