タイトルが思い付かず適当なものになってしまった。
想定していなかった事態に頭を悩ませる事となってしまった、まあ、その前に店主のミアに看破されてしまったかもしれないがまだどうにかなるレベルなので問題無いはず。
そうだ慌てる必要はない、向こうは大手のファミリアでおそらく遠征帰りを労う為の宴会みたいなものだろう。そんな中態々他ファミリアに絡んでくることは無いだろう。
(食事が終わったら早々に立ち去るとしよう)
残りの料理に手をつけ始める、ベルを急かそうとベルの方を見ると。
「・・・」
一点を見つめたまま固まっていた、その視線の先を追ってみると。
「ア、アイズさん!よ、よければお隣の席によろしいでしょうか!?」
「・・・うん、空いてるから良いよ?」
わかりやすい奴だった、視線がアイズ・ヴァレンシュタインに釘付けになっており惚けた顔をしていた。ベルの隣に座っているシルもベルの意識が自分から逸れたことに不満をベルに言っていたが横からミアからの説教が飛んできて接客へと戻って行った。
ロキファミリアの面々が席に着くと一人の人物がジョッキを片手に立ち上がる、その人物はヘスティアが眷属集めの際にヘスティアに茶々をいれていた神だった。
(あれがロキファミリアの主神ロキだったのか。天界にいた頃なにかと因縁があると言っていたな。)
「みんな、遠征お疲れ様や。とりまみんな無事に帰ってきたことに感謝や。」
そう言って一度言葉を区切りファミリアの面々を見渡すと、
「色々あったみたいやけど今日は無礼講や!!大いに騒ぎ飲みまくれえぇぇぇぇぇ!!」
ロキファミリア主神であるロキの挨拶が合図となり宴会が始まった、ファミリアメンバーたちは乾杯を済ますと思い思いにはしゃいでいた。
料理や酒の注文も大量に入った為ホールとキッチンはてんやわんやとなっていた、茶髪の猫人が喚きながら仕事に勤しんでいた。
隣のベルの様子からすぐに店から出ることはできなさそうな為軽くつまめる物を注文する、もうベルの気が済むまで付き合うしかないか。
そう思い僕は食事を再開する事にした。
あれからそこそこの時間が経った、結局居座るためにミアに食事だけでなく酒まで頼む羽目になった。懐には余裕があるから問題ないが。
ベルもいつの間にか隣に陣取っているシルに絡まれていた、ロキファミリアの宴会も落ち着き始めていた何名かは酔い潰れてダウンしている。
流石にそろそろ出よう、あまり遅くなるとヘスティアが五月蝿く喚き散らす。
勘定とミアに伝えようとすると、背後から大きな音が店内に響く。音のした方を伺うと一人の狼人が視界に入った。
「おい!アイズそろそろあの話をしようぜ!!」
「・・・あの話?」
狼人は恐らく『凶狼』ベート・ローガだろう、レベル5でロキファミリアの幹部だが素行や言葉遣いが悪くファミリア内外問わず冒険者から毛嫌いされているらしい。
「ほらあれだよ、帰る途中で逃げたミノタウロスを追って5階層まだ行った時に会ったあのトマト野郎のことだよ!」
「ミノタウロスって、返り討ちにしたら集団で逃げ出したあの?」
「そう、それだよ!奇跡的に上層に逃げてこっちが泡食って追いかけてたやつ!こっちは遠征帰りで疲れてるってのによ!!」
上層に逃げたミノタウロス、そしてトマト野郎。その二つのワードに妙な引っ掛かりを覚えるその瞬間思い起こさせるのは返り血を浴びて街中を全力疾走していたというベルの姿。
まさかと思い隣を見ると先程まで惚けた顔から一転して表情は青ざめ、目には動揺が見えていた。やはりあの話はベルの事か。
命の恩人として感謝しなければと思っていたがここまで品の無い事をされれば感謝の念も無くなるというものだ、しかし、あのミノタウロスが逃げ出すか・・・。
僕も何度も遭遇したが必ずと言って良いほど襲いかかってきた、力の差を解らせたとしても怯まず襲いかかって来たミノタウロスが逃げたとなると。
(ロキファミリア、深層で何と戦ったんだ?)
基本的にモンスターが逃げる事は殆どない、例外があるとするならイレギュラーな存在強化種などが挙げられる。
本来の生息階層を移動してモンスターの魔石を捕食し力を得たモンスターが強化され更に高い知性を得る事もある。
もしかすると倒したその強化種の返り血などの匂いを嗅ぎ取ったためにミノタウロスは逃げ出したのかもしれない。
そうこうしているうちに話が佳境に入ったのかベート・ローガの声が大きくなっていっていた。
「ああいうヤツがいるから俺たちの品位がさがるっていうかよ、勘弁して欲しいよな全くよ。」
「その口を閉じろベート、ミノタウロスを逃したのは我々の落ち度だ被害に遭ったその冒険者を酒の肴にする権利は無い。恥を知れベート。」
ベート・ローガの言い分にエルフ。いや、ハイエルフの女性が止めに入った。彼女がエイナが言っていたリヴェリア・リヨス・アールヴだろう。
エイナ曰く閉鎖的な風潮がある里に飽き飽きしていたところ里を抜ける際にロキとフィンに助けられそのまま眷属となったそうだ。
エイナの母とは幼馴染兼親友だそうで何かと気にかけてくれているらしい、母親の方は森の外の空気が合わず体調を崩し療養中なのだそう。
「あのガキと俺、ツガイにするならどっちがいい?」
なんとも下品な話題が飛び出して来た。
「ほら、選べよアイズ。どっちの雄に尻尾を振るんだ?どっちの雄に滅茶苦茶にされてぇんだ?!」
「もしかしてベート酔ってる?」
「そんなこと言うベートさんはお断りです。」
あっさりと断られていた、酔っているとはいえあれは酷い。
「無様だな。」
「五月蝿えババア!じゃあアイズテメェはあのガキに好きだと言われりゃ頷くのかよ!!」
「・・・っ」
ベート・ローガの言葉に返答が詰まるアイズ・ヴァレンシュタイン、その反応が全てを物語っている様なものだが。
「はっ、そんな筈ねぇよな?自分より弱くて軟弱で救えねえ。気持ちだけが空回ってる雑魚にお前の隣に立つ資格はねえ他ならないテメェがそれを許さねえ。」
そしてついに、ベート・ローガが無自覚にそして無遠慮にとどめの言葉を口にする。
「雑魚じゃアイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ。」
その言葉が店内に響くそして次の瞬間。
「っ!!」
「ベルさん!?」
隣に座っていたベルが駆け出した、シルが飛び出して行ったベルを追いかける。その様子を見た客たちからも困惑する様子が窺えた。それは当然ロキファミリアも同様だった。
「何?食い逃げ?」
「かぁ〜、よりによってミア母ちゃんの店でかいな勇気あるなあ」
原因の一端は彼らなのだがな、さて僕も追いかけるとするか。そう思い席を立つ。
「勘定を頼む、あいつの分もな。」
「あいよ、しかしなんともまあ厳しい団長様だねフォローの一つでもしてやっても良かったのに」
「あいつには必要な挫折だと思ったからな、最近のあいつは少々調子に乗っていたからな。」
「そうかい、まあでも。精々大事に育ててやるこったね」
「言われなくとも。」
そう言って店を出るため歩き出す、途中ベート・ローガが縛り上げられる光景を目にするがスルーする。店を出たところで店外にベルを追いかけたシルと目が合う。
「ジューダスさん!!どうしてベルさんをすぐに追いかけなかったんですか!?ベルさんもう行ってしまいましたよ!」
「僕に食い逃げ犯になれと?」
そう言うとシルは「あっ」と声を出し、苦笑いをしながら僕から視線を逸らした。
「ベルの件は明日にでも謝罪しに行く、取り敢えず僕はあいつを追う。ではな。」
そう言ってベルが向かったと思われるダンジョンに向けて走り出そうとすると。
「あ、あの・・・。」
僕を呼び止める声が聞こえた、その声の主が誰なのか見当は付くが無視する訳にもいかず声がした方を向く。そこには僕の想像通りの人物が居た。
「その、さっき飛び出して行った子について話したくて・・・。」
アイズ・ヴァレンシュタインがそこに居た。そしてその後ろにはリヴェリア・リヨス・アールヴがアイズ・ヴァレンシュタインを見守る様に居た。
《スキットオブオラトリア》
「黒猫の観察眼」
「むむむっ、シルが連れて来たあの二人。」
「ちょっとクロエお客見てないで手を動かしなさいよ」
「まあ、待つニャルノア。シルが連れて来たあの二人にアタシのセンサーがビビッと来たニャ。」
「客を色目で見てんじゃないわよ、ミア母さんにどやされるわよ。」
「白髪の方は見て分かる程だけど仮面の方は・・・マントで分かりにくいけど間違い無く良い尻をしている筈ニャ!」
「デカい声で何叫んでんのよこのショタコン」