「誰?」
一回目 小学校の卒業式にて
「星野アイさん、ずっと前からあなたの事が大好きでした。僕と付き合ってください!」
「えっと、確か君は…隣の席の、えーと、名前、名前、あっ、そうだ山田くんだっけ?毎日宿題見せてくれる」
「…えっと、名前も席も全く違います…」
「あはは…、なんかごめんね。うん、そういう事だから、ね?…あっ、そうだ。実は今度私アイドル始めるんだ。こんな事やっちゃったけどまだ、愛想つかしてないなら応援してくれると嬉しいな」
「アイドル…はい、是非とも応援させてください。…あれ、涙が…ごめんなさい、今日は失礼します!」
二回目 ライブハウスでの初ライブ後…
「初ライブお疲れさまです。アイさん好きです」
「応援ありがと〜、私も好きだよ〜」
「僕です。約束通り来ましたよ?覚えてますか」
「………えっと、最前列でサイリウム振ってくれてた人?」
「…違います。普通に2列目とかでした。…それ以外に何か覚えてませんか?」
「…ごめんね?」
「…いえ、大丈夫です、だいじょぶです。では今日はしつれいしまぁす!!」
五回目 ライブハウスにも慣れた頃
「こんにちは、アイさん。好きです」
「えっと…うーん、中学の同級生の佐藤くん?」
「違います。僕はそもそも中学受験したのでアイさんとは別の中学です」
「なんか、いつもごめんね?名前間違えたことしか記憶に残ってなくて…」
「はい、なんかもう、諦めがつきました。僕は君を好きでいられるだけで幸せなのでいいんです。間違え方のレパートリーも面白いですしね?」
「…そっか。でも私も頑張って覚える努力はするね?」
「ありがとうございます!期待して待ってます」
13回目 初握手会
「こんにちは、好きです、アイさん」
「えっと、昨日、コンビニで働いてた人?」
「…一応、知り合ったつもりになってから三年、アイドルとしては一年推してるのに出会って一日のコンビニ店員に負けるんですね。僕」
「あはは、ごめんね。あぁ、月一で告白してくれる人か。えっと、でも、私に告白してくる人って結構いたな…ごめん、わかんない」
「いいえ、大丈夫です。忘れてくれるから月一で思いっきり好きって言えるんです」
「いやぁ、参ったな。ここまでいいファンだと流石にもう忘れられないかもね」
「だといいのですが」
18回目 チェキ撮影
「アイさん、好きです」
「初見さん?ファンになってくれてありがとう〜」
「いやいやいやいやいや、一応多分もしかすると貴方のファン1号かもしれない僕に何てことを。せめて記憶には引っかかっててくださいよ」
「うーん、ファン1号?B小町にそんな会員制度無いし…やっぱり嘘ついてる初見さん?」
「もういいです。どうせ僕は永遠の初見さんですよ」
26回目 ラジオ撮影にて
「なになに、ペンネーム、ファン第一号さんからお便りがきてるね」
『アイさん好きです。こんな事、書くのは少し気持ち悪いかもしれないですが毎度の事なのでご容赦ください。僕が誰だか分かりますか?』
「うん、きも〜。それに一ミリも心当たりないし」
38回目 少し規模が大きくなった握手会にて
「こんにちは、アイさん、好きです」
「私もだよ〜、応援ありがとう!」
「…遠くなってしまいましたね。もう問答をする時間もありません」
『はい、お時間です』
50回目 体調不良から復帰後、初の交流にて
「アイさん、お久しぶりです。お身体の方はもう大丈夫なのですが?」
「うん、バッチリ!心配してくれてありがとね?」
「では、久々に…アイさん好きです。覚えてますか?一応、月一で応援のお手紙も出してはいたのですが」
「手紙、手紙…ごめんね、沢山来てたから分かんないかも」
「いえ、一秒でも貴方の励ましに成れたらそれに勝るものはありません。これからもどうかお身体に気を付けつつ頑張ってください」
「うん、ありがとね、本当に」
64回目 写真集の手渡会にて
「こんにちは、アイさん、好きです」
「ありがと〜、ちゃちゃっとサイン書いちゃうね、初見さん」
「いや、その…はい、"いつも"応援してます!」
「…よし、できた!はい、どうぞ」
「聞いてなかったんかい」
72回目 "大規模な"握手会にて
「アイさん、好きです。僕n」
『はい、お時間です』
96回目 ある少女の寝室にて
『アイさん、好きです、誰か分かりますか?挨拶はさておき来月はいよいよドームですね。本当に随分と遠くに行ってしまいましたね。学校の屋上で告白できた頃が懐かしいですね。もう、月一で直に言葉も届けられなくなってしまいました。まぁ、文字は文字で返答は聞こえないけど、貴方に多くの言葉を届けられるメリットもあります。僕が返事を聞けないデメリットなんてそのメリットに比べたらなんて事はありません。僕は貴方が空に向かって歩き出した日を今でも覚えています。もし、あの時引き止められたら、友達ぐらいにはなれていたのかもしれないと、ふと思う事もあります。ですが、そうしたifを考えてみてもやっぱり貴方が名前を覚えてくれる気がしません。だからきっと僕らは運命的にまで運命が無かったのでしょう。これからも貴方がアイドルでいてくれる限り、僕はファンであり続けます。でも、貴方がアイドルを卒業するとき、僕たちの月一・一期一会の縁も終わってしまうのでしょう。いつかやってくるその日までに僕の名前を覚えてくれる様に努力します。
第一号ファンより』
「えっと、誰だろ、この人、…あれ、目が、涙?誰かわからないのに涙が出るなんておかしな話だね。うん、止まらない、止まらないよ…本当に貴方は誰なの?…手紙だから聞き返せないや」
97回目 墓前にて
「こんにちは、アイさん、好きです。もう返事も聞けませんね」
「どうしてここが?…貴方の事務所の壱護さんって言う人が誰かさんと違って僕の事を覚えていてくれましてね。教えて貰ったんです。一回きりですけどお参りする事も許して貰えました」
「時間というものは残酷です。これから貴方はきっと少しずつ皆から忘れられていってしまうのでしょう。忘れられる痛みは誰よりも分かっているつもりです」
「だから、せめて僕だけは、長生きして長生きして、貴方の名前を事を忘れない様にします。星野アイさん」
「どうか安らかに眠ってください、名無しのファン第一号からの言葉は以上です」
100回目 しわくちゃの老紳士が、墓前にて
「ああ、お久しぶりです。遂に勝手に来てしまいました。私もマナーの悪いファンになったモノです。最後に来たのは貴方を殺した黒幕があなたの双子によって倒されたあの日ですから…60年ぐらい前ですね。それで貴方の死も含めて貴方は本当に終わってしまったのでしょう。双子や、貴方の関係者も少しずつ自分の人生を歩みはじめました」
「身近だった人達の記憶からも風化していき、貴方を観てくれた大人の人たちも少しずつ亡くなっていき、いつしかお墓もこんなに寂れてしまいました。今では私の方が知名度があるくらいですよ?」
「貴方のご家族はどちらも『星野』ではなくなってしまったみたいですし、それでも何かと墓参りに来ていた双子も10年くらい前に亡くなってしまいました。あとは多分、私だけです」
「良い人生でした。好きな人を最後まで好きと言える、本当に良い人生でした。ありがとうございます、私に本物の愛を与えてくれたのは他でも無い貴方なのです」
「では、私も近いうちにそちらに行きます。でも人は忘れられた時に本当に死んでしまうものです。私がそちらにいってもひょっとしたら貴方はもう居ないかもしれませんね」
「それではさようなら。ああ、最後にもう一度だけ自己紹介でも」
「私は、
「星野アイさん、私は貴方をずっと愛しています」
最後にそう言葉を紡ぎ、老紳士が立ち去った
───ふと、ある木にカラスが留まった
奇跡は相応しい者にのみに与えられる
だから、それはきっと必然だったのだ
101回目、小学校の卒業式にて
「星野アイさん、ずっと前から貴方の事が大好きでした。僕と付き合っt、うわぁっ、えっ?星野さん?」
「初見大翔くん」
「愛してる」
「ああ、やっと覚えられた」