だが、勝ったのは私だ!   作:ゆっくり歩く人

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中学生な第四話

あのフラジールも今や中学二年、所謂青春の前半戦ってやつの真っ只中。

中性的だった顔付きは今やキリッとした青年に早変わり…性格は物静かで大人しく、しかし友人との会話の中で不意に見せる爽やかな笑顔や体育の授業等で見せるスーパープレイ等はガッツリと女子のハートを鷲掴みしていた。

(ちなみにフラジール本人にとっては本当に不本意なものである。)

そして、そんな性格にも関わらず意外にも、話しかければちゃんと答えてくれる取っ付きやすい好青年フラジール…今日は何を隠そうバレンタインデーである。

 

「これを、私に?」

 

「はい!受け取ってください!」

 

「ありがとう…ところで君、名前は……ん?」

 

と、まあこんな感じで…チョコやそれに準ずるものを受け取っては名前を聞こうとして逃げられ、受け取っては名前を聞こうとして逃げられ……。

いつしかフラジールの腕は差出人不明のチョコやそれに準ずるもので溢れ反っていた。

 

「プランD…所謂ピンチだな……」

 

と、フラジールは腕に抱え込まれた荷物のあまりの多さに少々苦笑いしつつ、これだけの気持ちをどれだけ返しきれるだろうかと悩んでいた。

フラジール、存外本当に好青年だったりする。

 

「あ、ふーくん…今年も一杯だね~!」

 

と、教室に入ったフラジールにすかさず後ろから腰に抱き付く篠ノ之束…今の状況じゃ彼女がフラジールにタックルをかましているようにしか見えない。

 

当のタックルされた方のフラジールはその衝撃によろける事もなく、ただそのまま束を冷たい目で見た。

 

「皆から貰ったプレゼントを持っている……」

 

落としたらどうするんだ?と言わんばかりの目で、フラジールはそう注意した。

 

「ごめんなさい……」

 

目に見えてしょぼくれる束に、フラジールは苦笑い……

 

「わかってくれたならそれで良い…悪いのは学ばない事と、悪いと知っていながらする事……」

 

と、机に荷物を置いて空いた手で束の頭をクシャクシャッと撫でた。

まるで…そう、この場にはいないが、カーチス父がカーチス娘の頭を撫でる時の様にワシャワシャッと撫でた。

撫でられた束は髪型が崩れる事を嫌がる素振りも見せず、心地好さ気に目を瞑り楽しんでいた。

 

「ん~♪」

 

「今日の一時限目は体育…女子は水泳、男子は野球…どうも、やってられないな……」

 

フラジールは暑いのが苦手である…体質なのかどうかは知らないが、体に熱がこもり易くかつ中々冷めないのだ。

かといって泳げる…という訳ではない。

つまりフラジールにとって夏は過ごしにくい環境なのだ……。

 

「ぬっふっふ~…そんなふーくんの為に束さんはプレゼントを作ってきたのでした~ぁ♪」

 

と、言いつつ束が鞄から取り出したのは…保冷剤の様なモノ。

 

「これは冷却装置なのだ~!」

 

束はフラジールの制服(上)を大きく捲ると、背中にペタッと保冷剤(?)を張り付けた。

 

「お、おお…成程、確かにこれは冷却装置だ」

 

と、大歓喜のフラジール。

なんだかんだ言って、バレンタインデーで一番嬉しいプレゼントだったのであった。

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