「な、なあ…フラジール」
「……ん、呼んだか?」
バレンタインデー、その日の四時限目終了後の休み時間…静かに手帳のスケジュールを眺めていたフラジールの席に、奇妙な友人一号の織斑千冬がやって来た。
目を泳がせながら話し掛ける千冬と、手帳に栞を挟んで閉じ…静かに返事をするフラジール。
なんとも奇妙な光景だが、教室にいる生徒達にとってはいつも通りの光景…普段はカリスマキラーンな千冬は、幼馴染みのフラジールの前でだけああなる。
「きょ、今日も一緒に弁当を食べないか?」
この調子なので、新入生以外の男子生徒は千冬を諦めている……。
可哀想にもソレを知らず千冬に告白した生徒は、ものの見事にフられ、撃沈している…合掌。
「ぬふふ~…ちーちゃんちーちゃん、ふーくんにそんな事聞かなくても、毎日一緒だよ~?ね~、ふーくん?」
あぁ、そうしようか…とでも言う様に頷き立ち上がったフラジールの腰に勢い良く抱き付いた束。
フラジールは腰にタックルされたにも関わらず微動だにもしないで束の頭へと手を回した。
「仲良く昼食…その為の、フラジールです……」
頭をクシャクシャッと撫でられてご満悦そうに笑う束は、抱き付く力を一層強めた。
それを面白くなさそうに見ていた千冬だったが……?
「今日は天気が良いですから…そう、屋上で食べましょうか……」
と、フラジールが手を引いて歩き始めたので慌てて歩き始めた。
「うにゅ~…ふーく~ん……」
ちゃっかりフラジールにおんぶされている束…背中に頬を擦り付けご満悦。
当の背負い背中に頬を擦り付けられているフラジールは、然程気にしてはおらず…腹が減った等と別の事を考えていた。
「む、フラジール…少し束に甘過ぎやしないか?」
それが面白くない千冬は頬を膨らませ、フラジールの顔を覗き込みつつ前を歩いた。
「そんな事ない…やったら駄目な事はちゃんと注意してる……」
「そういう事じゃ……うん、お前はそういう奴だもんな……」
そう言いつつ千冬はフラジールの手を握り直した。
「そういう奴?」
「んぅ~…束さん達と仲良くしてくれる奴って事だよ~」
「そうですか…それも、そうですね……」
付き合い始めは何だかんだ言っていたフラジールだったが、今じゃこの調子…性格が本当に大人びて落ち着いている。
「千冬、扉を開けてくれないか?」
フラジール、見れば右手には弁当箱、左手には千冬の手が…ものの見事に両手が塞がっている。
それに気付いた千冬は左手で扉を開けた…つまり手は繋いだままである。
「ありがとう、じゃぁ行こうか……」
この先は屋上…ようやくフラジールは昼食にありつけるというわけだ。
今日は快晴…日陰はそこそこ涼しく、ほんの僅かな暑さも苦手なフラジールにも今は冷却装置がある。
のんびりとした昼休憩になりそうだ。