8月6日、眩い光が広島を襲った。
あたり一面は焼け野原、人っこ一人いないような静寂した空間がそこにはあった。
中岡進次はその日ピカドンの犠牲者となった。
にいちゃんあついよー らららー
その日しんじはしんだ。
そして彼はなんと星野アイというアイドルの子供として転生した。
「よし!名前はアクアマリンだ!」
アクアマリン?どういうこっちゃ?
しんじはキラキラネームを理解できなかった。
しかも自分の隣にいる子はルビーである。しかも妹、姉ではなく。
しんじはますます理解できなかった。
しばらく成長していくと分かったことがある。
それは母親の職業である。
歌って踊るアイドル歌手というものを知った。
しんじの時代にも歌手はいたが、あんなにキラキラしていなかった。声を震わせながら歌う人やはっきりとした日本語で歌う人などだ。
そしていずれもみんなマイクから微動だにせず歌い上げ、動いてなかった。
しかし自分の母はどうだろうか、めちゃくちゃ動いてる。
「すごいのう、うちのおかあちゃんは?」
「でしょでしょ、ママはすごいんだから!」
「ホンマやでぇ」
「ていうかお兄ちゃんなんで広島弁?」
ルビーは兄の生まれた時からの広島弁に驚きを隠せないでいた。
広島弁なんて仁義なきでしか聞いたことがない。
そして不思議なことはもう一つ、兄がたまに歌う浪曲だ。
なぜママの歌ではない、古臭い歌なのかと。
「あ、そろそろ野球だ」
「ちょ」
ママの歌途中なのにーとルビーがぐずる。
だがしんじは気にしない。
カープの試合だけは見逃せない。
「今日は楽天じゃのう」
楽天とは奇妙な因縁がある。それは監督が星野仙◯だから。
自分と同じ苗字だからこそ、しんじはこの監督にライバル心を持っていた。
試合後のインタビューにおいて
「監督、今話題の星野アイについてどう思いますか?」
「あの子はワシが育てた」
星野アイはどうかと記者に聞かれた星野仙一はこう答えた。
「「はぁ!?」」
二人は思わず固まった。
しんじは星野仙一顔負けの鉄拳制裁でテレビを壊そうとするも、ルビーはそれを落合博満顔負けの首締めで止めに入る。
結局アイが帰ってくるまでこの押し問答は続いた。
しんじとルビーは成長し、やがて運命の日は訪れる。
それは星野アイが刺される日。
花束を持って現れたファンはアイ目掛けてナイフを突き刺そうとする。
だがそうならなかった。
しんじが勢いよく犯人の玉を蹴ったのだ。
言うようのない痛みが彼を襲う。
所詮、死を覚悟したしんじの敵ではないのだ。
彼もまた作中トップクラスの強さを誇る中岡ゲンの一族だと再認識させられた。
「助かった、ありがとーアクアー」
「お兄ちゃん、すごいー」
「母ちゃんが無事で何よりじゃけえ」
「もー母ちゃんじゃなくて、ママだぞ⭐︎」
こうして犯人は逮捕された。
だが駆けつけたマスゴミによって、星野アイに子供がいることが世間に明るみとなった。
連日連夜バッシングの嵐。
アイが記者会見を開いても収まることはなかった。
「なんでママが叩かれてるのよ」
ルビーは唇を噛み締める。
「仕方あらへん。さすがに隠し子とは、大らかな時代といわれた昭和でも叩かれたと思うで」
「でも!」
(こんな時にいちゃんならどうすっぺか)
ここにはいないゲンを想像するしんじ。己を無力さを悟った。
結局アイは引退した。
多くのバッシングに耐えられなくなったから。だが実際には自分の子供にも危害が加えられそうになったのが一番の理由だ。
引退を決めた日、三人は夜通し泣いた。
「ワシにもっと力があれば…!」
家の下敷きになり、死んでいった顔を思い出す。
アイが引退した日は、広島に原爆が落とされた日と同じくらいショックだった。
それから数年が経った。
星野ルビーは母の叶えられなかった夢、ドームを目指すため、アイドルとなった。
星野アクア、しんじは令和の上原敏を目指すため歌手となった。
今二人の戦いが始まる。
原爆は恐ろしいものです。
プーチンが核を使わないことを祈ります。
あと最近推しの子にハマりました。
猫の目みたいな女の子、黒川あかねちゃんが好きです