俺の親友はスカートを履くらしい   作:ガンガンいこうぜ!

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俺は親友と再度お出かけするらsぶぇっくしょん!!!

「あ゛~」

 

ベットで夏場に扇風機で声を震わすアレをする。扇風機など介さずに自力で。要は喉がめちゃくちゃ痛いのだ。

寒いのか暑いのかわからない不快感を感じながら毛布にくるまり体を休める。

完全にやばい方の風邪にかかった。恐らく昨日、店員がこぼした水を頭からかぶったのが原因だろう。

最悪だ。せっかく休日の最終日なのに風邪でおじゃんになるなんて。

あ、そういえば今日瑞希と遊ぶ約束じゃん。キャンセルの連絡しないと。

スマホを起動しい瑞希に断りのメッセージを送る。

既読が付くのを確認しないまま、眠気に従い意識を落とす。

いつの間にか、スマホが『Untitled』を再生していたことを知らずに。

 

 

 

 

 

 

気が付いたらデカいお山が二つ、俺の目の前にそびえたっていた。

なるほど。これは“あれ”だな。女性の“あれ”だ。うん“あれ”だ。

後頭部にも柔らかい感触があり、これは恐らく太もも。

今の俺は膝枕というものをされているんだろう。

何でこうなっているのかわからないが、どうせならこの柔らかい感触を楽しみながら状況を整理するとしよう。

まずは場所だ。

視界いっぱいに広がる花畑。そして示し合わせたかのように俺の周りに咲き誇る白い花。

空は二つの太陽が重なっていた。

……まあ、何となくわかってたさ。

ここは俺のセカイだ。

 

横に滑るように転がり膝枕から抜け出す。

横に寝転ぶ形になった俺は必然的に膝枕をしていた人物が目に入る。

そこには腰まで伸びたピンク髪に、修道女のような恰好をした見覚えのある美人がいた。

 

「あら?私の膝で探偵ごっこ、お気に召さなかったかしら?

……それに、私の膝を借りたんだからお礼ぐらい言いなさい?」

 

美人は俺と目が合うと、己の慈悲深さを表したかのような笑顔を浮かべてそんな驕り高ぶった発言をした。

随分な物言いである。

第一自分が勝手にやったことなのに、それにお礼を求めるというのは当たり屋的な思考だろう。だが、こういう所は相変わらず変わっていないという事実に少しだけ安心感を覚える。

人の思考を盗聴するのはやめてほしいが。

 

「10年ぶりの再会よ?もっと喜びなさい?」

「相変わらずの性格だな。ていうか何でお前が?」

「あら?あなたのセカイが復活したのよ?当然この私も復活するに決まっているでしょう?」

「ハッ その割には随分と遅かったじゃないか。カイトに追い抜かされちゃってさ」

「……そう。あなたはそういう認識なのね」

 

はぁ……と、深いため息をついて呆れた目線を俺によこすルカ。

そんな目で見られてもどうしようもないのである。

そもそも、セカイが復活して誰が出てくるかを指定なんてできるわけないのだ。

そこのところをわかってほしいと思うのは傲慢だろうか。いや、当然の帰結だ。

 

突然、俺の視界に青色の瞳が広がった。

この場に俺とルカ以外はいない。そして青い瞳を持っているのはルカだけだ。

覗き込まれているんだろうルカに。にしても近すぎると思うんだが。

今時眼球しか見えないぐらい近づく奴いないって。泥棒ぐらいでしか見たことないよ。そんな覗き方。

 

頬に冷たくしっとりとした感触が走る。

そちらに目線を合わせると、真珠のように白く美しい手が俺の頬に添えられていた。

恐らくルカの手だ。

 

「このセカイが出来た時に一番最初にいたのは私。そうよね?」

 

まるで自分に言い聞かせるようにルカはつぶやく。

どんな顔で言っているのか、ルカの表情は俯いて見えない。

 

「何でカイトなの?普通私よね?だって最初にあなたを支えたのは私だもの」

「そこまでだよ」

 

革をにじったような音がルカに掴まれた肩から鳴る。このまま掴み続ければ折れてしまうのではという所でストップが入った。

声のした方に視線を向けるとオーバーオールに麦わら帽子といった、農家としか言えない格好をしたカイトが立っていた。

 

「ルカ、気持ちはわかるが彼に当たっても何もならないだろう」

「選ばれたあなたなんかに私の気持ちなんてわからないでしょうね」

「めんどくさ……選んだ選ばれたの問題じゃないだろう。第一―――」

 

俺をそっちのけで口論を始めたルカとカイト。

口論の内にいつの間にか俺から離れたルカは、次第にカイトとの距離を詰めていき一歩踏み込めば鼻と鼻が触れ合う距離でお互いを罵り合う事態にまで発展した。

 

「……」

 

最初の原因は俺……俺なのか?まあ俺のせいだろう。だがここまでの事態になるとは思わなかった。

ちょっとしたプロレスのつもりだったんだけどなぁ……

 

俺が割り込むと事態が良くない方向へ進むと感じ、口論を終わらるのを待っているとカイトと目が合った。

カイトはルカに見えない位置でジェスチャーをして俺に何かを伝えようとする。

 

四角い箱?

 

何かを押す?

 

あ、この隙に逃げろってことね。

Untitledを止めれば俺は現実世界に帰れる。

ここは厚意に甘えよう。

ていうか俺、Untitled再生した覚えないんだけど。

まあいいや。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?いなくなってしまったのね」

 

ルカは先ほどまで白夜がいた方を見て、スンッとまるで電池切れの機械のように落ち着いた。

先ほどまでの荒ぶりようからは考えられないぐらいの冷静さにカイトは驚きを隠せなかった。

 

「なんだか不思議そうな顔ね、カイト。私になにか?」

「いや……何というかその……大丈夫?」

「?まあいいわ。それより白夜のことよ。あなたは何していたの?」

「へ?」

 

ギロリと呆れと怒りが混じった目で睨みつけられたじろぐカイト。

農作業に勤しんでいていたとか、白夜がなかなかセカイに来ないとか、そんな言い訳など言う物なら今すぐこのセカイから退場させられるであろうそんな覇気を持ったルカを前にしてカイトはただ謝罪をするしかないと思った。

 

「何のことかわからないけど、なんかごめん」

「謝罪が聞きたいわけじゃないわ。

……まあいいか。今度白夜が来た時にとてつもなく辛い料理を食べさせなさい」

 

汗一つ掻かずに何事もなかったように食べきるわよ―――

そんな確信めいた言葉を残して、ルカは森の奥深くの所まで消えていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベットの上で目を覚ます。

最初に目に入ったのは天井。

おかしい。俺はうつ伏せで寝ていたはず。

 

リビングの方から音がした。

泥棒かと思ったが別に盗まれて困る物なんてないので多分違うだろう。

じゃあ誰だ。

まあ別にどうでもいいや。

 

そんなことを思案しているとドアが開いた。

入ってきたのは瑞希。

 

「不法侵入?」

「ぶっぶー 普通に家の人に空けてもらいましたー」

「家の人?」

 

瑞希の言葉に疑問を覚え、オウム返しをする白夜。

鍵を開けてもらったということは誰かに空けてもらったということだ。

この家に普段から出入りするのは白夜だけ。たまにメイドが様子を見に来るが、今日はその日ではない。では誰が?

白夜の中に一人だけ顔が浮かんだ。

 

「それにしても白夜のお父さんってかっこいいね!なんかアニメに出てくるおじさまみたいな感じで!」

「その男、手の甲に傷があったよな?」

「え?何で?」

「いいから」

「あー そういえばあったような……」

 

その一言で白夜は確信する。

あの男だと。

自分の妻を見捨て、死に目にすら会いに来なかったあの男だと。

 

ベットからはいずり出てリビングへ。

人の気配がないことを確認して外へ。

熱に侵され、思うように体が動かないことなど白夜は気にならなかった。それ以上に憎しみが体を支配していたから。

外に出ても人はいなかった。

遅かった。

当然だ。瑞希が来たのは恐らく俺がセカイに行っている間。だったら、鍵を開けるという行為をしただけの人間は、もっと前の時間に来ていてとっくのとうにこの場を去っている。

そんなこともわからないくらい、白夜の思考は冷静じゃなかった。

 

白夜は足をふらつかせながら家に戻る。

今更ながら熱が体に回ってきたらしい。

 

家に入ると瑞希が心配そうな顔をして白夜に駆け寄ってきた。

 

「びゃ、白夜、あのさ……」

「今日は帰ってくれ」

 

白夜は瑞希を無理矢理外に出し、拒絶するように扉を閉めた。

瑞希に自分の心情を知られたくないのだろう。今の白夜は瑞希に隠し通せる気がしないのだ。

自分の心を。

 

部屋に戻ろうとする白夜は少しばかり思案し、リビングへと入った。

リビングに設置されてある棚の引き出しを開け、中にある物を取り出す。

取り出した物は一枚の写真。

少し埃が被った写真には黒髪の少年を挟んで両親であろう夫婦が笑顔で写っていた。

幸せそうな笑顔だ。穢れを知らない、この世の悪意も醜さも知らない、素敵な笑顔だ。

 

壊れ物を扱うようにそっと引き出しの中に戻す。ふと、棚の奥に何かがあることに気が付いた。

好奇心に駆られた俺はそれを引っ張り出す。

中から出てきたのは一冊の汚れのない白いアルバムだった。

 

「誰がこんな物を……」

 

アルバムを開き、中身を見物する。

1ページ目の写真には満面の笑みを浮かべた銀髪の少年が、黒髪の少年の頬を引っ張って無理矢理笑顔にしているところを写した写真が中央に貼られていた。

 

ページをめくる。

ページをめくった先にはなんてことない日常の写真が貼られていた。

 

最初は不愛想だった黒髪の少年も段々と笑顔が増えてきた。

 

二人が川で遊ぶ姿や、虫取りに励む姿、ベビーベットの上で寝ている妹を二人で覗き込んでいる後ろ姿、いろいろな写真がアルバムにはあった。

 

ページをめくる。無感情に。本能のままに。まるで目的の場所はそこじゃないというように。

 

白夜の手はあるページで止まる。

 

写真にはどこかの小学校の入学式での記念撮影をした様子が写っており、そこには黒髪の少年と、少年より背が高い黒色のマジックで顔を塗りつぶされた誰かが写っていた。

 

ページをめくる。

 

また塗りつぶされている写真があった。

 

ページをめくる。

 

また

 

ページをめくる。

 

また

 

ページをめくる。

 

また

 

 

 

やがて最後のページにたどり着く。

そこには写真がなく、その代わり乱雑に書かれた文字が書かれていた。

 

『自分の罪を忘れるな』

 

その文字を見た白夜は頭に釘を刺されたような痛みが走る。

 

「い……! ガァ……!」

 

その痛みは治まることはなく、身体に広がる。まるで毒だ。

 

首筋に引っかかれたような痛みが走る。

 

痛い、かゆい……

 

『忘れるな……』

 

『お前は人殺し……』

 

「! 黙れ!」

 

頭の中に響く声を追い出そうと、白夜は手当たり次第周りの物を投げつける。傍から見たら子供が癇癪を起こしたかに思えるが、白夜は至って正気だ。ただ頭の中の声を追い出そうと必死なだけである。

 

その時、リビングに繋がるドアが開いた。

そちらに白夜が目を向けると、長身の女性と瑞希がいた。

それを見た白夜の表情は引きつった。

 

「違う、違うんだ兄さん! 俺は……!」

 

白夜は誰かと勘違いしているのか今までの挙動が嘘のように収まり、今度は何かを恐れるように体を体を丸め縮こまってしまった。

長身の女性は注射器を構えて白夜に近づいていく。

縮こまっている白夜の首筋に注射器を刺し、中の液体を注入していく。すると白夜の体は脱力し床に倒れこむ。

 

「ちょっとこれ、本当に大丈夫なんですか⁉」

 

倒れこんだ白夜を支えながら瑞希が長身の女性に噛みつく。

白夜にいきなり追い出された瑞希に声をかけてきた怪しい人。

白夜の小さい頃からの知り合いというけれどその素性は明らかではない。

瑞希が疑うのは無理もないのである。

 

「大丈夫大丈夫。刈谷さんを信じなさい。ほら、運ぶの手伝って」

 

そんな瑞希の様子を気にも留めないで、刈谷は白夜の両腕を持ち瑞希に手伝うことを要求する。

刈谷の言動に少しだけ不満を持ちながら、渋々白夜の両足を持ち運び出す。

完全に誘拐犯の絵図だが、そんなことを気にしてられない。

 

いつの間にか用意されていた刈谷の車に白夜は乗せられる。

 

「これからどこに行くんですか?」

「ん~?私の病院。あ、そうだ。君も一緒に来てよ」

「え?」

「知りたくない?白夜の過去」

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