遅くなってごめんなさい。年末も年始も大変だった……
今回はバチバチの戦闘シーン。原作にも二人の戦闘シーンはなかったからいくら盛ってもいい。
年末に見返したら魔法効果意味わかんない部分があったので簡潔な効果に変更+追加します。
ちゃんと見なくても問題はありません。物語に反映させておくので、変わったんだなということは理解してください。
以下、変更箇所です
■変更前
踊る時間が1分を超えるたびに現在のステイタスに過去のステイタスをLv1から順に加算。加算上限は現在の昇華回数。上限到達時、現在のレベルの値を全ステイタスを乗算。5分後に初回加算時の潜在値の値にリセット。
■変更後
・時間経過により各踊りの付与効果割合上昇。割合上昇上限は現在までの昇華回数。踊りが途切れるまでマインドを消費し続け、効果を持続させる。
・踊り変更時、途切れること無く踊りを繋げる事で消費魔力還元。
タイトルも変えようかな……
大剣を担ぎ、分厚い甲冑に身を包む目の前の戦士。
彼より強く、レベルの高い数多の英傑、数多の英雄達が居たあの時代。記憶にあるシャクティはともかくとして、まだ幼子だったアーディは話に聞いたことがある程度。
そして、目の前の戦士は、その英傑の中でも更に上澄み。Lv9がいたとされる時代で、陸の王者を討伐した立役者はLv7のザルドだったと言う。
アーディが対応するは、未知の結晶にして、現人類の頂点に等しい戦士の片割れ。
(凄い圧…!ただ目の前に立ってるだけなのに!全身の肌に針が突き刺さってるみたいに鋭い殺気……こんなの、ダンジョンでだって経験した事ない…!)
ステイタスも、技術も、心も負けるつもりは無い。けれど、それを突き抜けてくる生物としての本能的な恐怖が、アーディの体を小さく震わせていた。
そんな彼女を知ってか知らずか、後ろからぬぅっと伸びた屈強な腕が、ワシワシと雑にアーディの頭を撫でた。
「わ、わわっ…えっ!?ガネーシャ様!?」
「ガネーシャ!?なぜここに!」
「ほぅ……お前たちの主神か。」
「そう!!俺がっ!!ガネーシャだァッ!!!」
今も防衛拠点にてフィンと共に指揮を執っていた筈のガネーシャが、2人の後ろに堂々と立っていた。
「な、なんでこんなところに…危ないんだから拠点に───────」
「アーディ、震えを殺す必要は無い。その震えも、お前という戦士の証だ。」
「ガネーシャ、様……?」
いつものお調子者らしい、喧騒は鳴りを潜め、うっすらと暖かな神威がアーディを包んだ。
「そうだ。恐怖を前にして尚、お前は誰かの為に、守りたいと思ったものの為に立ち上がる。お前の魂は高潔で、何者にも侵されることは無い。それは、シャクティやアスラに並び立つものだ。」
「……!」
「故に、お前達を奮い立たせるのは、
ガネーシャは知っていた。アーディの正義の在り方を。憧れの在り方を。
だからこそ足手まとい、守られる存在の自分が必要だと、奮い立たせるための起爆剤が必要だと、この状況にもっとも適した鼓舞をしに、死地へと赴いた。
「ガネーシャ様…!」
「貴方という神は……まぁ、らしいといえばそうか。貴方が後方で大人しくしている方が異常事態だな。」
呆れたように笑ったシャクティにニカッ!と笑いながら、ガネーシャは胸を張った。
「だから、お前達の背に居る俺を!民を守ってくれ!」
「うんっ!」
「普段もこうして威厳ある姿を見せてくれればいいんだがな…」
「それは無理だ!!俺はガネーシャだからなっ!!」
呵呵大笑するガネーシャに呆れ笑いながら、敵を見やったシャクティは信じられないものを見た。
「……未熟と、見誤ったか。」
集中していたが故に、ほんの一瞬の相手の変化に気が付いた。
(笑った…あんなに優しい笑みを……?)
何かを思い出し、慈しむような優しい微笑み。
シャクティは心底驚いた。あの殺気の塊のような戦士が、あんなにも柔らかく笑うのかと。
けれど、そんなことを考える暇はなく、一触即発の空気が漂い始めた。とにかく今は考えを捨て、目の前に集中することにした。
そんな空気の中、ぱち、ぱち、と手を叩きながら、ザルドの背後にエレボスが現れた。
「感動的だな、ガネーシャ。眷属への激励、正に理想の神。人気なのも頷けるよ。」
「エレボス……2000年振りだな。」
「そうだな【幸運と前進】を司るお前は冥界なんて鬱屈とした場所に用はないしな。」
「正確には【障害の除去】だがな。お前にはお前の、俺には俺の仕事があり、それに優劣は存在せず、またそれぞれ誇り高い物だ。」
「あーあ、神格者はこれだから……嬉しいこと言ってくれる……けど、残念だ……これから、そんなお前と、その眷属を殺さなきゃいけないんだから。」
ニヒルに笑ったエレボスに、ガネーシャは動じることなく腕を組んだまま、ニカッ!と白い歯を見せた。
「
その言葉に、誰よりも大きく反応したのはザルドだった。
「ハッハッハッハッ!!俺を前にハンデと抜かすか!!面白い!余程の自信があると見える!」
「当然ッ!!
その言葉には一欠片の嘘もなく、絶対の信頼を2人に寄せる物。呆れたように笑ったふたりは、すっかりいつもの雰囲気を取り戻していた。
「勝たなきゃね、お姉ちゃん!」
「そもそも私達が勝たなければオラリオは滅びるんだが……まぁ、言うのは野暮か……当然、常勝不敗の私たちに敗北など無いと見せつけてやるか。」
背中を合わせ、左右対称の構えをした二人に合わせるように、ザルドも大剣を上段に構えた。
シャクティとアーディの肌を焼くような熱を持った空気が一瞬、ピタリと止み、2人の集中力が極限に達した。
「貫けッ!
「粉砕しろ、ザルド。希望諸共木っ端微塵にな。」
ガネーシャの声に合わせ一直線に突撃してくる2人に、ザルドは目を見開く。
(2対1のセオリーを捨てた!?だがそれは裏を返せば自信の裏付け!)
本来、2対1の状況であれば、力と思考を分割させるために挟撃を行うことがセオリー。しかし、二人はそれを捨てた。
ザルドから見てもとてつもないスピードで迫る2人の背後には、2人が駆けた足跡が深々と刻まれ、瓦礫が吹き飛んでいく。
目の前に来た瞬間。トップスピードを保った攻撃が空を裂く。
攻撃が当たる寸前、ザルドは2人の攻撃の軌道上に大剣を差し込み、防御の体勢をとった。
推定Lv7の攻撃。
ザルドは、来る衝撃に備え体を強ばらせる。いくらLv7という人外の膂力があろうと、Lv6上位、下手をすればLv7に届く戦士2人の攻撃。完全な防御態勢に回らなければ防ぎきれないと、最初の1合で確信していた。
そうしてザルドの思考が固定され、防御に偏った。
と、ふたりは予備動作を見て確信する。
このパターンは何度も経験している。一撃目を布石にした、2撃目の本命は、経験上
そして、来る二つの衝撃。
アーディの蹴り、シャクティの拳を受け止め───────2人の真意を理解したザルドは、自身が選択を誤ったことに気がつく。
(───────これはっ!?)
ザルドは見誤った。
ザルド程の強者であれば、遠目で見ただけでステイタスの推測は容易。加えて、1度2人の攻撃を受けたザルドは2人の力量をその時点の認識で固定した。
(力が増している……あれが全力ではなかったのか!!)
受け止めた2人の拳と蹴りの衝撃が、コンマ数秒の認識を超えて大剣ごと吹き飛ばし、ザルドの脚を浮かせた。
久方ぶりの感覚だった、地から足が離れた浮遊感など。
アスラの魔法【ダンス・ダンス・ダンス】は時間経過とともに強化割合が上がっていく。
1分の踊りの継続時間につき踊りの付与効果が約20%上昇、その上昇上限は現在のレベルまで加算されていく。
ザルドは、2人のステイタスが最高地点に到達する前の認識を持っていたが故に、無意識の慢心と己の肉体に対する絶対の自信が、ザルドの防御を突破した。
(ここに来るまでのステイタスは1000を超えた程度だったが、今は違う!)
(ガネーシャ様が稼いでくれた時間で、きっちり6分!!このステイタスなら、貫ける!!)
魔法発動より、現在6分が経過。
魔法により付与効果が最大値に上昇するタイミング。ステイタスの上昇率が約120%に到達した潜在能力を、ふたりは存分に爆発させる。
踊りが途切れるまで、3人のステイタスはオール2000を超え、力、俊敏のステイタスに至っては3500を超える。
『ぶっ飛べえぇぇぇッ!!』
「ぐおおおぉぉぉッ!?」
訪れた果てしない衝撃により、2度3度とバウンドして吹き飛んだザルドは、なんとか体勢を立て直し、体を襲った衝撃に目を見張った。
半身とも言える苦楽を共にした全身鎧が、一部を大きく凹ませていた。
(出鱈目な魔法に、俺に迫るパワー……これは…!!)
敗北
この二文字がたったの一撃でザルドの脳裏をよぎる。
だが、それでもザルドは凹んだ鎧を脱ぎ捨て、笑った。
「───────面白いッ!!」
ザルドは自他ともに認める生粋の戦餓鬼。血を吐こうが、毒を食らい体が腐ろうが戦い続けた闘志は、先の一撃をもって全盛期の状態に突入した。
噴き上がった間欠泉のように闘志がザルドから溢れたのを感じた2人は、臆すること無くステップを変え、力強く地を踏む。
2人が奏でていた音が、変化する。
「音が、変わった……?いや、この味……そうか…そこが到達点では無かったか!!」
万民の音色から、戦士の音色へと曲調を変える。
【ダンス・ダンス・ダンス】には5種の踊りが存在する。
今まで踊っていた踊りは、比較的戦闘向きでは無い【
今の一撃をもって二人は痛いほど理解していた。ザルドの硬さと強さを。
故に、出し惜しみなどしない。
民衆の躍動するステップを、重く鋭い旋律に合わせ、力強い戦士の舞に繋げる。
『
【戦士の舞】力と耐久の高域強化に加え、任意アビリティの昇華効果を付与する、戦士が奏でる戦場の輪舞曲。
「───────来いっ!!」
拳を突き出し、力強く踏み込んだ2人は、待ち構えるザルドに再度突撃する。
(この味……恐らく、この2人、先程よりも格段にステイタスが上がっている!となれば、俺の選択肢はただ1つ……!!)
2人の攻撃を、受けに回ることなく、攻撃によって相殺する。
果たして激突した3人の攻撃は、都市にまで届く程の衝撃波を伴う。
『ッ───────!?』
「ハハハハハッ!!デタラメなステイタス!!これでも俺は軒並み
ザルドの行為は、狂っているとしか言いようが無い突撃。技で受けるでもなく、避けるでもなく、真正面からぶつかりに来た。
2人にとって、自分たちの攻撃を真正面から受けて吹き飛ばせない人間など、初めての経験だった。
だからこそ、2人の行動は速い。
防がれたと認識したシャクティは続け様に次の攻撃を放つべく、ザルドの内側に踏み込み、胴体に向け掌底を放つ。
対するアーディは右足を軸に、しなやかに回転。ザルドの死角に回り、そのまま飛び上がって後頭部に蹴りを放つ。
二か所の同時攻撃。高速で選択肢を増やす必殺の連携は、二人の十八番。『猛者』ですら、対応できず数分間タコ殴りにされた実績を持つ
しかしザルドはそんなことは関係ないと言わんばかりに、アーディの蹴りをそのまま受け、シャクティの掌底をもその身で受け止める。
その音は、まるで鉄同士が激突した様な、重厚な音だった。
「っ…………いい連携だ。やるな、痛みなど久々だ。」
「嘘でしょ…っ!?」
(今のを受けられるかっ…!)
咄嗟に距離を取った二人を前に、ザルドは大きく肩を回す。
「今度はこちらから行かせてもらう───────死ぬなよ?」
2人は咄嗟に防御の構えを取って攻撃に備えた。それが功を奏したのか、既に2人の目の前にいた攻撃を、アーディが真正面から蹴りを放ち、受け止める。
「いっったぁぁぁ!?絶対ヒビ入ったぁぁ!!?」
しかし、その攻撃はアーディに確実にダメージを与え、足の骨に罅を入れる。が、ザルドは何度目かもわからない驚愕に身を引いた。
(またパワーが上がっている!恐らく、耐久も加速度的に上がっているな?この音と踊りが関係しているのか。それに、実に厄介なのがこの連携!追撃をしていれば吹き飛ばされていたのは俺だったな。)
ザルドが追撃の姿勢に入る寸前。シャクティが一歩速くアーディのカバーに回り、追撃のカウンターを狙っていたため、ザルドは追撃を諦め、距離を取らざるを得なかった。
攻撃した足を抑え、蹲ったアーディは纏っていた炎で足を癒し、すぐに立ち上がる。
「イッテテテ……お兄ちゃんの魔法が無かったらもう動けなくなってたかも」
「……それで済むのか、割と本気で殴ったぞ。」
「ふふん!今はみんなが踊ってるからね!それだけ、私達のステイタスもどんどん上がる!」
「そういう事だ。今、私達の力は先の比では無い。」
「勝手に見た目で技術特化だと判断していたが……予想を裏切る、美しいまでの
背を合わせ、力強く対極の構えを取ったアーディとシャクティは、不敵に笑った。
「知っているか『暴食』お前たちが去ったオラリオでは、こんな言葉が生まれた。」
「『力こそパワー!!』ってね!」
「ッ!」
再び激突した二人は、アーディがタンクを担い、シャクティが攻撃に、役割をランダムに
息もつかせず、思考の隙を与える前に殴る。
その弱攻撃の様に無数に出される拳と蹴りが、既に必殺の域にある。
しかし、その爆撃の雨を、ザルドは防ぎ、躱し、攻撃を返しながらさばいていく。
(駆け引きも、策も無い純粋な殴り合い!俺とこれができる相手は団長くらいだったんだがな…!なんだよエレボス…!後進が育っていないだァ?嘘つきやがって!!)
額に浮かぶ冷や汗と、期待に満ちた笑みを浮かべながら、ザルドは後進二人の猛攻を本能に身を任せ防ぎ続ける。
(それにしても…この連携…!)
アーディの蹴りを受け、反撃する瞬間。アーディが首を傾けたその隙間から、シャクティの爆弾のような拳が飛んでくる。
(どういう原理だ…!後頭部に目でもついているのか!?当たればアーディが死んでるぞ!洗練された連携、というだけでは説明がつかない…確実にスキルか魔法!)
先程から、明らかにアーディとシャクティの連携に感じる違和感。まるで、どこを攻撃するのかを互いに予め理解しているような、そんな感覚。そして、結論に辿り着く。
弾けた両者の拳が波濤の如き衝撃をもたらす。
『───────っ!!』
「どこへ行く?まだまだ終わっちゃいないぞ!!」
思わず距離を取った二人に追撃せんと、ザルドが剛腕を振り下ろせば、地面に巨大なクレーターを残した。軽々と避けた二人は威力にゾッとしながらも、尚笑っていた。
「流石、過去の英傑!ここまで強いのなんて、バロール以来だよ!」
「あぁ、なんならバロールよりも出力は高いだろう。オマケに、まだ魔法が残っている!」
「なら、出す隙なんてあげない!!」
再度攻勢に出た二人は、陣形を崩すこと無く、淡々とザルドを削っていく。
ザルドもザルドで、この膠着状態にも似た消耗戦に飽き始めていた。
(このままでは埒が明かないな。俺の体力が尽きるのが先なのは明確……しかし、この連携、そういう事か。)
この短時間で、ザルドは2人の魔法について確信に近い物を得ていた。
アーディの蹴りを掴み、視線を遮っての死角からの攻撃すら、見ることも無くアーディは躱し、ザルドの腕にそのまま組み付く。瞬間、まるでシャクティが突っ込んで来るタイミングを理解しているようなタイミングでザルドの腕を固め、動きを封じ、シャクティの一撃と共に離脱、再度超近距離の肉弾戦に持ち込む。
今の攻防で、確信はより強固なものになった。
「視界の共有、いや、思考の共有だな?それも無意識か、本能レベルの感覚に近いもの!さしずめ意識の共有といったところか!」
「流石だな。この短時間で殆ど答えを導き出したか。」
「でも!対処なんてできないし!だからなんだって話だけどね!」
アーディは自信たっぷりに構え、ニィッ!と笑って蹴りの嵐をザルドに叩き込む。
タイミングよく弾くことで捌いたザルドは、アーディの蹴りを掴み、足を払って見事な投げを見せた。
(今の私が投げられた!?反応もできなかった!チックショ~!力に技まで私たち並か上じゃん!)
空中に放り出された無抵抗のアーディに対し、ザルドは当然攻撃を仕掛ける。
しかし、シャクティが突き出されたザルドの腕に横から掌打を当て、軌道を逸らす。そして、アーディは間に割って入ったシャクティの肩の上で逆立ち。そのまま回し蹴りを放ったが、ザルドは余裕をもって防いで見せた。
「まるで大道芸だな!」
「でも、良い蹴りでしょ!」
「憎らしいほどになっ!!」
体勢を整える為に、距離を取れば、状況は振出しに戻った。
「カラリパヤトゥの真髄はまだまだ深いからね!驚くのは速いよ!」
「勝負はこれから、ということだ。」
未だ戦意衰えず、不敵に笑みを浮かべるアーディとシャクティ。元都市最強や見知った顔には失望したが、やれやれどうして、本命は別だったかと呆れ笑ったザルド
「そうだな……第2ラウンドだ!!」
再度激突せんと構えた三者の背後で、ザルドは確かに耳にした。
黄昏に置いてきた、日常の声を。
ザルド:もっと魅せてみろ!!!ヴァルマ姉妹!!!
アーディ&シャクティ:POWER!!!
ガネーシャ:俺達がッ!!ガネーシャだぁぁぁぁ!!!
エレボス:うわぁ……ザルドと殴り合ってる……こわ……
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