敵の女幹部とドンパチしてたら息子が出来た   作:イベリ

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なんか、ランキングとか凄いことになっててびっくりした。


まさか、な

サラサラと書類にペンを走らせ、今回納品する武器類の生産数を承認。それを配布ボックスに投げて、はぁ、とため息を吐き出す。

 

ココ最近の闇派閥の活発さは、何か嫌な予感を思わせ、それに伴うように増えた武器の依頼の量には、鍛治の神とはいえ、辟易としてしまった。

 

赤髪の麗神────ヘファイストスは、再びのため息を吐き出す。

 

そんな彼女の執務室へ、ドカーン!と扉を爆音で開け放ち入った影は、ニィッ!と笑う。

 

「びっくりした……帰ってきて早々にお説教が欲しいみたいね、アスラ?」

 

「よう!ヘファイストス!許せ!」

 

ワッハッハ!と変わらぬ調子で笑ったアスラは、気にもせずヘファイストスの机に腰掛ける。

 

無神経を擬人化したような彼の振る舞いに呆れながら、いつも通りの彼に少し安堵もしていた。

 

「それで?一体なんの用?」

 

「わかってんだろ?取りに来たんだよ、アイツを。」

 

「ん………あぁ!アレね!」

 

一瞬理解できなかったヘファイストスは、数秒後に理解した。

 

裏の倉庫スペースに入り、その最奥に飾られていた物を運ぶ。

 

軽い音を立てて机に置かれたそれを見て、アスラは獰猛に笑う。

 

「はい、あなたの武器【ナーガ】よ。整備は万全、いつでも使えるわ。」

 

「おう!悪かったな、取りに来るのが遅くなっちまった。」

 

「本当よ、まさか1年も待たされるなんて。まぁでも、私と椿のココ最近の最高傑作を思う存分眺めることが出来て良かったわ。」

 

「ハッハッハッ!そりゃよかった!」

 

アスラに手渡されたそれは蜷局(とぐろ)を巻いた蛇──────ではなく、帯剣(ウルミ)だった。

 

全長キッカリ1M(メドル)の鞭のような見た目で、剣とは思えないほどの薄さと、布の様な柔らかさを持つが、相反するように硬い。

 

そして、見ただけで理解出来るほどの恐ろしいまでの斬れ味は、使い手であるアスラにすら冷や汗をかかせた。

 

「流石だ、刃を見るだけで斬れ味がわかる。」

 

「当然よ。貴方が狩ったバロールの左腕。その鋼の性質に似た筋繊維を編み上げて鍛えたから、よく伸び、よく縮む。その反発が産む力は、並じゃないわ。椿と一緒に鍛えたけど、本当に作るのに苦労したんだから、壊したらただじゃおかないわよ?」

 

バロールという類を見ない素材を使い武器を作らせてもらったとはいえ、注文は無理難題だった。

 

「任せろ!」

 

「調子いいわねホント。」

 

それを、当然のように振り回すアスラだが、狭い室内だと言うのに、壁や床には一切傷を付けることなく、高速で舞うように振るった。

 

ヘファイストスには見えないが、そこかしこで空気を突き破る破裂音が響く。

 

「ほぉー!伸びるな!軽く振っただけで4M(メドル)か?ほんとによく伸びやがる!」

 

「嘘でしょう?振っただけでそこまで伸ばしたの?ウチの子供たち全員で引いても3Mだったのに……アホみたいなステイタス()ね…」

 

鞭に近いこの【ナーガ】は、ゴムのような伸縮性により軽く振っただけでも、ゆうに音速を超える。

 

「─────ハハッ!本当に、これなら魔法でもなんでもスパスパ斬れそうだ!」

 

「ほんと、簡単そうにやってくれるんだから。」

 

「師匠が良かったからな!」

 

クンッと手首のスナップで、縄のように輪っかを作り纏めて、それを腰にある専用の鞘に納めた。

 

ウルミという武器種自体、その扱いには細心の注意と限りなく極められた技量を求められる。それなのに、あたかも当たり前だと言うように扱う彼の感性を理解出来る者は、そう居ないだろう。

 

1度教えを乞いに来たアーディも、彼が何を言っているのか理解出来ず、習得できずじまい。

 

技量に自信のあった輝夜ですら、ある程度のところまでしか習得できず、手足の様にとまでは行かなかった。

 

「それで?他に御用は?」

 

「あぁ、もう一個あんだ。」

 

アスラは本題とばかりに机にある物を置いた。

 

ヘファイストスは、それを見て絶句した。

 

脈動する赤黒い塊。心臓のようにも見えたが、どうにも違う。これは───────

 

「気づいたか?モンスターの素材だ。それも、外のな。」

 

「外の?ありえない……こんなもの素材だけでいえば、貴方のそれと同レベルよ?」

 

「あぁ、実際強かった。」

 

「………倒したの(・・・・)?」

 

「あぁ、倒した。完全に魔石までぶっ潰した。」

 

それでは、アスラの言葉とは矛盾する。この素材は、まだ生きている。間違いなく、鼓動を鳴らし復活を待っていた。

 

そして、嫌な予感がヘファイストスの脳裏を過ぎった。

 

「……名は?」

 

「アンタレス。過去、精霊に封じられた大サソリだ。」

 

その名に、ヘファイストスは渋い顔をする。

 

「……もう一度聞くわ。倒したのね?」

 

「あぁ、灰に還った所までアルテミスと見届けた。」

 

「あぁ……そう、アルテミスがいたなら間違いないわ。」

 

けれど、とヘファイストスは続ける。

 

「……しくじったかもね。」

 

「マジか?」

 

「マジよ。でも、分からないが本音。」

 

さっさとこんなの処分した方がいい、そう進言すると、仕方ねぇなぁとそれをつかみ、力を込めると、素材が燃え上がり、灰も残さず燃え尽きた。

 

「んま、用はこれだけだ。悪かったな、邪魔して。」

 

「ちょっと、久々なんだから少しくらい話していきなさいよ。」

 

そうして出ていこうとするアスラだったが、ヘファイストスの待ったによって、その足を止めた。

 

「ハハッ、わかったよ。」

 

「よろしい。椿にはもう会った?」

 

「いんや?まだ帰ってからは会ってねぇ。」

 

「そう、なら今度会ってあげて。その武器を思いついたのも、あの子な訳だし、整備はあの子に、ね?」

 

「おう!わかったぜ!そういや、聞いたか?ラキアにいるクロッゾの末裔が、クロッゾの魔剣を作ったって話。」

 

「へぇ……いえ、聞いたこと無かったわ。許したのか……それとも、その鍛冶師だけが特別なだけか…これから、ラキアとの戦争もちょっと激化するかしら?」

 

「いや、なんでもその坊主、魔剣を作りたがらねぇんだとよ。」

 

「…なんでまた?」

 

「ぶっ壊れるのは武器じゃねぇ。使い手を置いていく武器は、使い手を殺すんだとよ。」

 

「……間違いないけど、硬そうな子ね?」

 

「ハハッ!アンタに言われたくねぇだろう!」

 

どういう意味よ?と少し睨んだヘファイストスは、そういえばと指を立てた。

 

「そうそう!フレイヤがここに何度が来たわよ?貴方がここに逃げ込んでないかって」

 

「げぇっ……」

 

珍しく、本当に嫌そうな顔をするアスラに、ヘファイストスは苦笑した。

 

「げぇって…貴方……本当に男?フレイヤに求められて嫌がる子なんて、貴方くらいでしょうに。」

 

この男、常識と空気を読む能力をは欠落しているが、貞操観念だけはまともなのだ。

 

「女に篭絡されて愚王に堕ちるなんて、笑い話にもなりゃしねぇし、寵愛を受けたなら応えて当たり前みたいな態度も、俺は好かねぇ。そもそも、俺はアイツらの在り方が気に食わねぇんだよ。」

 

「在り方?」

 

「あぁ。人は、手を取り合えば、無限の可能性を生み出せる。なのに、オッタルと来たら……」

 

「あぁ、そういえば昔、【猛者】が貴方に負けて、罰ゲームでフリフリのサリーを着て町中で奉仕活動をさせられてたわね………今思い出しただけでも、い、いたたまれなくて…っ…」

 

過去、突如街中で襲われたアスラは、市民を、冒険者を巻き込んで踊り(戦い)、勝利した過去がある。その罰として、1年の奉仕活動。その半年間をサリーを着て炊き出しなどを行わせた。

 

孤児院の炊き出しで、ムキムキの大男が可愛らしいパッツパツのサリーを着て、食事を配っている姿は、なんとも言えない哀愁があった。

 

「アレ最高だったよな!我ながらいい罰だった!ま、アイツらは群の力を舐めすぎなんだよ。」

 

だから俺に負けるんだ。そう唇を尖らしてブーたれた様子から、本気であの派閥が苦手なのだろうことが理解できた。

 

「手を取り合えねぇ奴がいるのはわかるけどよ。その努力もしねぇのは、俺は嫌いだ。」

 

「そう……」

 

「というか、そもそもの在り方が俺とは正反対だ!美を振りかざし支配する魔女よりも、笑いと踊りで民を導く王様の方が、よっぽどかっこいいだろう?」

 

「ふふっ、それはそうかも。」

 

だろっ?と笑ったアスラは、ヘファイストスの顔をじっと見て、そうだな、と口を開く。

 

「アンタには言っておくか。近い内に、奴らが仕掛けてくる。」

 

「……本当なの?」

 

「ああ……多分だが、奴ら本気でオラリオを落としに来るぜ。」

 

「っ……わかった、準備はしておくわ。」

 

「あぁ、頼む。」

 

そう言って、アスラは今度こそ、その場を後にする。

 

腰に下げたウルミを撫でて、ボソッと呟いた。

 

「準備は、しとかねぇとな。」

 

 

 

翌日。グースカと真昼間からハンモックで昼寝をかますアスラを見下ろすシャクティは、ハンモックを掴み、思い切りブン回す。

 

「アスラ、起きろっ!」

 

「んがぁぁぁぁっ!?な、なんだ!?」

 

昼寝をしていた所を突然叩き起され、ハンモックから叩き落とされたアスラは、何事かと周囲を見渡した後に、シャクティを認識し、あのなぁと少し文句を垂れる。

 

「あのなぁ、姉ちゃん。もう少し優しく起こすとかなかったか?」

 

「無い。」

 

「ちぇー、昔はあんなに優しかったのに。今じゃこんな厳しくて、俺は悲しいぜ…」

 

「私よりデカくてゴツい男が膝を抱えて拗ねるな。」

 

膝を抱え、床をイジイジするアスラを冷たい視線で射抜きながら、シャクティはさっさと立てと催促する。

 

「仕事だ、北西区の廃教会で不自然な動きがある。お前も来い。」

 

「りょーかい!」

 

「はぁ…副団長として、もう少し威厳を見せてくれ。」

 

今まで特に威張るわけでもなかったが、彼は一応ガネーシャ・ファミリアの副団長の座に就いている。

 

そんな彼だが、自分ではしっかりとその背中を見せていると思っているらしく、納得いかないような顔をして首を傾げた。

 

「見せてんだろ?」

 

「馬鹿者、どこに定期的にいなくなる副団長がいる。」

 

「ハハハハハッ!!違ぇねぇ!」

 

「……ふふっ、変わらんな…お前は。」

 

姉弟らしいそのやり取りは、シャクティがあまり見せることの無い、姉としての顔。

 

子供の頃から対照的な2人ではあったが、なんだかんだ姉弟として上手くはやれている自負が、2人にはあった。

 

「んじゃ、さっさと終わらせようぜ姉ちゃん。」

 

「あぁ、頼りにしているぞ、愚弟よ。」

 

「任せな!姉ちゃんも団員も、もれなく俺が守ってやる。」

 

逞しく力瘤を作ったアスラに、シャクティは今は遠い、昔を思い出した。

 

家族の団欒を過ぎ、団員を引き連れて現場に向かえば、アスラは長年住んでいるオラリオにも知らない場所があるのかと、ほえーと唸った。

 

「へぇ、こんなとこに教会なんざあったのか。」

 

「あぁ、廃墟が多くなり治安も今は悪い。危険とまでは行かないが、準危険区域に変わりは無い。」

 

なるほどねぇ。と呟いたアスラは教会の扉に手をかけ、一息に開け放つ。

 

すると、そこには想像していたものとは違う景色が映った。

 

地面で呻く白いローブを着た闇派閥の信者達。いきなり襲われるかと思っていたアスラは拍子抜けと言わんばかりに首を傾げたが、この景色を作り出した元凶らしき影を視認し、警戒心を高めた。

 

「……また、喧騒が入り込んだか。それも、今回のはとびきり喧しい。この場所でも、静寂に浸る事は出来なかったか。」

 

「……俺まだ喋ってねぇよな?」

 

「お前、自覚あるのか。」

 

ステンドグラスの前に立つ、ローブと、漆黒のドレスを纏う女は、うんざりとしたような気怠げな声を出した。

 

警戒を露わにするアスラに、シャクティはより目の前の女を危険対象として見なし、1歩前に出た。

 

「……お前が、この景色を作ったのか。」

 

「そうだ。」

 

「なんのために?」

 

「私の望む静寂の阻み、思い出(過去)を穢された。故にその罰だ。」

 

そして、女は自身の左側を指さし、さっさとしろと言わんばかりに言い放つ。

 

「貴様らの目的はその下にある。後は好きにしろ。」

 

「行かせるとでも?」

 

その場から立ち去ろうと2人の横を通るが、それをシャクティと団員たちに囲まれる。しかし、女はこのオラリオでも上位の実力を持つシャクティを前に、不遜にも鼻で笑った。

 

「…行けぬとでも?血に濡らしてもいいが…感傷が邪魔をするな。」

 

スゥっ…と女がシャクティに手をかざした瞬間

 

「【福音(ゴスペル)】」

 

鐘の音と共に感じる空気の圧が、その場一帯を飲み込む。

 

「───────っ!?ヤベェ!シャクティ!!」

 

それをただ1人感じ取ったアスラは、シャクティの前に飛び出し、ナーガを振った。

 

鐘の音を置き去りにアスラが教会の壁に激突。血を吐いて蹲った。

 

(───────んだ、これッ!?バロール並じゃねぇかっ!?魔力じゃねぇっ、衝撃波…いや、この細胞全てが揺れる感覚…!『音』かっ!?)

 

「アスラっ!!」

 

シャクティの目線からでは、ただ鐘が鳴ったと同時に、アスラが血を吐きながら吹き飛び、壁に叩きつけられる場面だけだ。

 

しかし、アスラが吹き飛んだ瞬間、ハラリと銀色の髪が宙を舞った。それを見て、女は感心した様ように呟く。

 

「……あの一瞬で、私まで斬った(・・・・・・)のか。そこいらの騒がしいだけの愚物では無いな。」

 

フードの縁を手の甲で撫でて薄く笑う女は、ただアスラだけを見つめていた。

 

血を流す義弟の姿に血が上ったシャクティは猛った。

 

「貴様ッ!!」

 

「っやめろシャクティッッ!!」

 

「【吠えるな(ゴスペル)】」

 

不味いと本能で察したアスラは、瞬時にシャクティを庇うように前に割り込み、音の衝撃に拳を叩きつける。

 

「─────っらあああァァァァッッ!!!」

 

グチャチャっ、と肉が裂け骨が軋む音を無視して、拳を振り抜き音の衝撃波を吹き飛ばす。

 

「アスラ!?無事か!!」

 

「俺のこたぁいい!俺はすぐ治るが、姉ちゃんが怪我する方が不味いだろ!」

 

女を睨みつけたアスラは、最高にマズイ状況に冷や汗を流す。

 

(ヤベェ…!接敵が早すぎた…!アレなら間に合うが…こんなとこで踊ったら、姉ちゃん達を巻き込んじまう…!!)

 

アスラは、スロースターターの究極系と言ってもいい。よーいドン、の持久走は大の得意で、戦いが長時間であればあるほど強くなり、我慢比べでは右に出る者はいない。

 

しかし、咄嗟の接敵では非常に不利なのだ。現在のような状況は特に。

 

魔法を喰らってわかった。この目の前の女は、素のアスラよりも強い。それも、1段か2段の差は確実にある。

 

アスラの奥の手であれば、どうにか間に合うだろう。だが、その戦いの余波は想像を絶するものになるだろう。

 

過去、彼が49階層で遭遇したバロールとの死闘を演じた時。この踊りのお陰で勝利を掴むことが出来たと言っても過言ではない。

 

膠着状態にさせて貰っている状況の中、女がふっ、と笑う。

 

「……預けよう。」

 

「………は?」

 

「勝負は、預けようと言ったのだ。」

 

シャクティが前に出ようとするのを、アスラは手で制して、目を瞑る。

 

「……あぁ、わかった。」

 

「賢明な判断だ。なるほど、存外冷静だな。」

 

「へっ、普段任せっぱなしなんだ。こんな時くらい頼りにならねぇとな。」

 

「……せいぜい、足掻け。」

 

警戒する団員に「退け」と一睨みするだけで、道を作り、悠然と歩いていくその背中に、アスラは叫ぶ。

 

「俺はアスラ。アスラ・マハトマン・アビマニー!次は、俺が勝つ!」

 

また1つ、ふっと笑った女は、そのままいなくなった。

 

完全に脅威が去った事で、警戒心と緊張が解けたのか、アスラがドシャッと背中から倒れた。

 

(見逃された……)

 

そう悔しさに拳を握るアスラに、シャクティは慌てて傍によった。

 

「っ無事か、アスラ!」

 

「あ、あぁ……しかし、無茶しねぇでくれ、姉ちゃん…俺と違って、回復薬でも使わねぇとダメなんだからよ。」

 

「…っすまん、またお前に頼りきりになってしまった。」

 

「構いやしねぇよ!存分に頼ってくれ!姉ちゃん支えられんの、俺だけだろ?」

 

どこかの正義の眷属(アリーゼ)のように、バチコーン☆とウィンクをかましたアスラに、思わず吹き出した。

 

相変わらず、恥ずかしげもなくこんなことを言う義弟に、心底安心したように笑って、シャクティは団員に物資の回収と闇派閥の拘束を命令した。

 

そうして一息ついたアスラが、全身に魔力を回せば、清炎が揺らめき、傷ついた箇所を焼く様に浄化していく。

 

ものの数秒でグチャグチャになっていた左腕を再生させたアスラは、過去を思い出し天に祈るように頭を下げた。

 

「……ったく、ほんと…いつまでアンタは俺を守ってくれんのかねぇ…俺はもう、子供じゃねぇんだぜ?」

 

「副団長!治ったらこっちをお願いします!」

 

「えー、いいぞ!姉ちゃん!俺これ終わったらロキんとこに報告行ってくるぞ!」

 

「わかった、頼むぞ。」

 

そうして立ち上がったアスラは、地面に落ちた輝く灰髪を見て、まさかな、と思考を振り払った。

 

 




アスラが見逃された同時刻。

ベルは、起きたらいなかった輝夜を探す為に、街に飛び出していた。今頃、アストレアが大慌てで探し回っているところなのだが、そんなことは知らぬと、輝夜を探しに飛び出した。

白い着流しと、輝夜に貰った刀を担いで、少年は街を駆ける。

しかし約3時間が経過しても見つからず、探し回った少年は絶賛迷子中だったのだが、今はその先頭を、金色の少女が少年の手を引いて先導していた。

「……こっち。」

「お姉ちゃん…っ…僕をっ、置いてっちゃったのかな…」

ヒックヒックと肩を揺らして、輝夜を呼ぶベルは、手を引かれながらもずっと俯いていた。

「………大丈夫。きっと見つかる。リヴェリアに手伝って貰えば平気、だよ。」

「……うん…ありがとう……アイズお姉ちゃん。」

「…気にしなくて、いいよ?」

アイズと呼ばれた少女は、泣いているベルが闇派閥に襲われそうな所を助け、話を聞いていたら、人を探していると言うので、それを手伝っているのだ。

普段、アイズという少女はそういうことに精力的では無いのだが、ベルのお姉ちゃん呼びに、少しテンションが上がっていた。

「ここ。外は危ないから、ウチに入って。」

「うん……」

そうして、目の前の館─────ロキ・ファミリア本拠『黄昏の館』へと、2人は入っていった。

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