「───────ベルがいなくなった!?」
「そ、そうなの!急にバタバタ準備したと思ったらそのまま出て行っちゃって…!」
警邏から戻った輝夜を待っていたのは、最悪の報告だった。帰って来たら、アストレアが青ざめた顔で輝夜にしがみついてきたから何かと思ったが、そりゃそうもなるだろう。
「ま、不味い…スキルのお陰で割と刀を振れる様になったとはいえ、あの子が剣を人間に向けられるとは思えん!」
「ま、不味くねぇか!?どうする輝夜!?」
輝夜と共に警邏に出ていたライラが慌てながら尋ねると、輝夜は頭を抑えた。
「ええい!落ち着け!ネーゼは!?」
「まだ帰ってねぇ!」
「クソが!アストレア様、恩恵は!?」
「無事よ、生きては居るわ!」
その事を聞いただけでも安心した輝夜は、すぐさま刀を握ると、ライラと共に外に駆け出した。
「輝夜!闇雲に探すのは逆に危ねぇぞ!」
「知るか!今はベルの安全だ!」
「───────待て輝夜!提案がある!」
ズザザッ!とブレーキをかけた輝夜が、ライラに詰め寄る。
「なんだ!早く言え!今の私は貴様でも斬るぞ!!」
「あっ、アスラ!!アスラのダウジングぅぅぅ!!?」
「それだぁぁぁっ!!」
「ただいま。」
「おかえり〜、アイズた…ん?」
「ベル、こっち。」
「っ…うん……っ……」
そうして見知らぬ着流しを着た少年の手を引いて客間に入っていった少女────アイズ・ヴァレンシュタインを追いかけ、朱色髪の神─────ロキは客間に入る。
「ベル、お菓子、食べる?」
「…ったべ、る…ぅ…」
机に置いてあった梱包を丁寧に剥き、それを少年に手渡すアイズは、見たことの無い雰囲気を醸していた。
「な、なんなんや一体…アイズたん、説明!」
そうしてされた説明は、本当に無駄を省いたもの。
ダンジョンから帰ってきた→白い集団がいてこの子を襲っていた→暴れた→どうすればいいか分からなかったから連れてきた。
という事だ。数秒考えたロキは呟いた。聞きたかったのはそこじゃないと。
「……アカン、聞きたいことが全く伝わっとらん……と言っても……少年〜、わかるかぁ〜?」
べしょべしょと泣いている少年に声をかけ、なんとか流れを理解するために情報を照合させる。
曰く、名前はベル。7歳→母親を探しにオラリオまで来た→アスラお兄ちゃんが連れてきてくれた→朝起きたらお姉ちゃん達がいなくなった→探してたら変な人たちが来て、怖くて動けないところをアイズお姉ちゃんが助けてくれた→今ココ
という事らしい。
なんで7歳の号泣してる少年の方が喋れてんねん。
と、心でツッコミを入れるロキ。
「んじゃあ、神様分かるか?自分の神様や。」
「あずどれあさま…っ…」
「あー、アストレアんとこの眷属なんか。」
「グスッ…ぅっ……かみざまぁ…っ…」
「おーおー、大丈夫やでぇ。すぐ会わせたるからなぁ。ウチはロキや!なんやベル、男の子やろ?泣いてたら強なれへんで〜?」
「…うんっ……っ…」
「おー、偉いなぁ我慢できて。ちょい待っとってなぁ。」
そうやって頭を撫でられたベルは泣くのを我慢する素振りをしたので、いい子であることはわかった。
どうしよーかなーと思いながら、とりあえずリヴェリア呼んどきゃなんとかなるやろ、と結論付けた。
なんであのいい子ちゃんの眷属世話せなアカンねん、と心で文句を垂れながらも、流石に7歳の子供にそんな事を言うつもりはなかった。
さっさと保護者呼んで引き取ってもらわななぁ。と思っていたが、ちょうどよく目的の人物が来た。
「アイズ、帰ったか……おや……君は確か、ベル…だったな。」
「お、お化けの、おうさまぁ…っ…」
「おっと……よいっしょ…全く、一体何があったと言うんだ?」
トテトテと歩み寄ったベルは、その人物に抱かれ、余計涙を流す。
「なんや、リヴェリア知り合いなん?ちゅーか、お化けの王様ってなんや?」
緑髪を耳に掛けたエルフ─────リヴェリア・リヨス・アールヴは、抱き上げたベルの背中を軽く叩きながら頷いた。
「それについては、私も悪ノリが過ぎた……彼はアストレア・ファミリアの新人だ。【大和竜胆】が育成しているはずだが。」
そう言われてみれば、顔立ちとは少し違い、極東の着流しと剣を持っている。
よく見れば、胸元には竜胆の飾り紋が、刀の鞘には美しい竜胆が描かれており、手ずからの弟子というのは、知る者が見れば理解できた。
「なるほどなぁ。悪いんやけど、使い出してアストレアん所に引取りに来るよう連絡入れてくれへん?」
「承知した。」
リヴェリアすぐにエルフの団員を呼び出し、ベルを預かっていることを伝え、迎えに来るように、と向かわせた。
未だ泣きじゃくるベルの背中をトントンと優しく叩くリヴェリアの後ろから、ベルにお菓子を餌付けするアイズ。そして、それをただ口に運ぶベル。
何だこの光景は、と考えることに疲れたロキは、何も考えずその光景を眺めている事にした。
「ほら、あまり泣くな。あとが辛いぞ?アイズ、あまり菓子を与えるな、制限されているかもしれないだろう。」
「でも、ベルはこれが好き。よく食べる」
「好きなら際限なくあげていい理屈にはならん。おいベル、お前は雛鳥か。与えられたものを全て口に詰め込むな!」
お姉ちゃんはもう僕のことが嫌いなんだとモゴモゴしながら泣くベルに、大丈夫だと安心させるように頭を撫でて、落ち着かせる。とにかく餌付けがしたいアイズは、リヴェリアの制止を無視して、お菓子を上げ続けている。
その光景は、ヤンチャな姉と気弱な弟。そして、それを育てる母親にしか見えなかった。
「ママやん」
「だ、誰が………誰がママだ!」
あなたの事です女王さま。と口に出なかっただけ、ロキは褒められても良かっただろう。
ベルを探し回っていた2人は、万策尽きたと言うように項垂れながらベンチに腰かけていた。
「───────万策尽きた…どうやって探す!?アスラはホームにはいなかったしよ!」
ベルを探すためにアスラを探す事にしたライラと輝夜。しかし、ホームにはシャクティ共々いなかった。どうすると焦るライラだったが、輝夜は焦ること無く、致し方なしと懐に手を突っ込んだ。
「コレで呼ぶ。」
そう言って取り出したのは、極東の横笛だった。
「笛?」
「あぁ、見ていろ。」
その後に始まったのは、素晴らしい程の演奏だった。 なんだなんだと、市民がこちらに注目することも関係ないと言わんばかりに、一心不乱に笛の音を奏でた。
極東ではやんごとなき生まれであった輝夜は、戦闘以外にもそれなりの教育を受けてきた。それは、芸術方面にも言えることだった。
あまりにも綺麗な演奏に、気がつけば観衆の波ができ、人が溢れていた。
雅というのだろうか。趣があり、品がある。そんな輝夜の音色がその場を支配していた時、遠くの方からドンッ、と言う音が聞こえた。
「………来たぞ。」
「来た…?」
突然止められた演奏に、観衆はもう終わり?と首を傾げていたのだが、次の瞬間に目の前に飛び込んできた影に、一気に沸き立った。
「───────だぁぁあれだ!!こんな楽しくなさそうに演奏してんのは!!」
「こうして、音楽を楽しくなさそうに演奏すると、どこからともなく現れる。そういう習性だ。」
「嘘だろ、ヘビかあいつ。」
「アスラ様だ!」
「アスラ様〜!」
「おう、お前ら元気だな!!」
あんた程じゃねぇ!と言う声に、そりゃそうだ!と笑えば、民衆も一緒になって笑顔になった。
相変わらず凄いカリスマだと感心するライラを差し置いて、輝夜が前に出る。
「アスラ!」
「あっ!あの笛輝夜だろ!あんな楽しくなさそうに曲を弾くな!いいか!音楽ってのは─────」
「ベルがいなくなった!力を貸せ!」
「────もっと楽しくて……………は?」
笑顔を消したアスラはアワアワと動きながら頭を抱えた。
「いい子にしてろって言ったろ〜!?」
「すまん!私のせいだ!アスラ!魔法を頼む!」
「あっ、そうか!ベルには使えるな!」
そうして突き出したアスラの手のひらに、大きな炎が揺らめいた。
その大きな炎を見た輝夜は、崩れ落ちて安堵した。
「……あぁ…よかった…」
「なんだ、めっちゃ元気だなこりゃ。方角は…北区か?」
うーむ、と唸ったアスラは、着いてこい。と指で指示を出した。
「悪ぃな民よ!これからちょいと用事があってな!」
「アストレアの嬢ちゃん達に迷惑かけんなよ〜王様ー!」
「おい!俺、王様!!コイツら!俺の民!言うの逆だ!」
「一体いつから私達はあいつの民になったんだ。」
「しらね、こいつなら全オラリオ市民は俺のもんだくらい言いそうだしな。」
ライラの呟きに民衆は、アスラ様なら言いそうだな!とみんなして笑った。
無事とわかりはしたが、輝夜があまりにも急かすので、小走りで指し示す方角に向かっていた。
「ったく、任せたはずだろう?」
「あぁ、本当に不甲斐ない……寝ているあの子を起こすのはどうかと思って、そのまま出てしまった……失念していた。」
「あぁ…なるほど…恨むぜ、母親共。」
なるほど、と頭をワシワシと掻いたアスラは、恨めしそうに呟く。
母親が起きたらいなかった出来事は、ベルの中で随分と大きなキズとして残ってしまったらしい。
今の状況も、良く考えればトラウマと同じだ。
それに加え、このオラリオに来て、アスラ以外に唯一心を許した輝夜がいなくなった、という理由もあるのだろう。
「しっかしよォ、相変わらず便利だよなぁそれ。方角と今の状態までわかんだろ?」
「そうだ、炎が大きい時は元気で、小さい時が瀕死。消えかけはやべぇ。つかねぇ時はそもそも生きてねぇ。」
「……試したのか?」
「ま、昔な。」
少しだけ、彼の表情に影が差したのを見て、ライラはやぶ蛇だな、と追求を辞める。
「本当に便利なものだ。確か、信頼されたか否か、だったか?」
「あぁ……
現在三人を導くように、一定の方向に傾いている炎は、アスラの魔法の効果のひとつ。
アスラの魔法である【ゾロアスト・アンドロノヴァ】は、不明な部分が多い。
と言うよりも、魔法に近い物と言うだけで、正確には魔法では無い。
らしい
『魔法であり、魔法では無い……精霊や、今はしなく無くなってしまったけれど…過去、神々があなた達に与えていた
当時の主神曰く、加護に限りなく近い魔法らしく、詠唱もあるにはあるが、それも強化詠唱。何も唱えずとも発動事態は出来る。
回復、浄化、自他へのエンチャントにこのようなダウジングまで、様々な事が可能で汎用性が高い。
唯一不便なのは、できることが多すぎて何ができて何ができないのか、アスラ自身把握しきれていない事だろうか。
「喜んでいいんだか分からねぇが、大抵の事はできる。」
「いや本当に便利だな。」
「前に聞いたんだが、加護の効果を試す為にポイズン・ウェルミスの毒を飲んだというのは本当か?」
「あぁ!懐かしいな!あん時はベロベロに酔ってたからよ、あんま覚えてねぇんだけど、大丈夫だったからなぁ。多分、俺のアビリティランクにも影響あるんだろ。【舞踏】に至ってはAだしな。」
ま、その後シャクティにボッコボコにされたけどな!と笑ったアスラに、2人は呆れ返った。
因みに、ポイズン・ウェルミスとはダンジョンの中層以下に出現する猛毒を吐くモンスターのこと。常人を遥かに超える冒険者の肉体でも、【耐異常】のアビリティを持つ冒険者の肉体すらも容易く侵食する。
それをがぶ飲みして平気だったアスラのアビリティのランクは、異常すぎるのだ。
本来、冒険者は他人のステイタスを詮索してはならないのだが、どうしようもなく気になったライラは、興味本位で尋ねる。
「…ちなみに、【耐異常】は?」
「Cだ!」
「おい、本当にこいつどうすれば死ぬんだ。」
「首切っても踊りながら復活しそうだよな。」
「………やめろ、想像したらキモすぎる。」
「ダッハッハッハッ!!なんもしてねぇのにこんなこと言われんのかよ!俺可哀想だな!」
いつものように笑ったアスラの前方から、エルフの冒険者が輝夜たちに手を振っていた。
「ちょうど良かった!アストレア・ファミリアの皆さんに、アスラ!」
「おっ、アリシアじゃねぇか。久しぶりだな。」
「えぇ、お久しぶりです。アスラ、聞きましたよ?また無茶苦茶したようですね?」
「ハハハッ!あんなもん無茶のうちに入らねぇよ!」
「……貴方の義姉は本当に大変そうですね。」
アスラにアリシアと呼ばれたエルフは、3人に探していた理由を話す。
「っと…話が逸れました、ベルと言う少年を預かっているのですが…」
「済まない、すぐに行く。」
「え、えぇ…こちらです。」
食い気味に反応した輝夜に、アリシアは少し引きながらも、盛大に顔に出すことは無かった。
案内されるままにロキ・ファミリアのホームに着いた輝夜は、啜り泣く声を耳にして一気にその部屋へ駆けた。
「───────ベルッ!」
扉を開ければ、泣きじゃくるベルを抱いたリヴェリアと、ベルにひたすら菓子を食わせる【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインが居た。
輝夜を視認したベルは、リヴェリアから離れてそのまま輝夜にダイブ。
なんでどこかに行っちゃったの?僕の事が嫌いなの?と泣きじゃくるベルを、輝夜は力いっぱい抱き締めた。
「そんな訳あるか…!すまないベル…私が悪かった……もうお前に何も言わず、どこかに行くことはしない。」
「ほんとう…っ…?」
「あぁ、アストレア様に誓う。だから、もう一度、私を信じてくれ。」
こくんっ、と小さく頷いたベルは、ギュウッと輝夜に抱きつき、輝夜もそれに応える様に強く抱き締めた。
「悪ぃな、リヴェリア、アイズ。ベルが世話んなった。」
片手で謝ったアスラに、2人は首を振った。
「いい。私が、連れてきたから。」
「ん、構わん。しかし、いい子だなあの子は。置いて出ていった母親は………いや、口が過ぎたな。」
「ははっ、そうだな。俺らが怒ったところで、母ちゃんは悪くないって言うぜ、アイツは。」
「ベルは、いい子。」
「アイズもあれくらい聞き分けが良ければいいんだが……別ベクトルで頑固だが、ベルは素直でいい子だ。」
「ハハハッ、言われてんぞアイズ?」
「……聞こえない。」
2時間弱共に居たリヴェリアとアイズは、すっかりベルに絆された様で、アイズに至っては既に友達になったらしい。
ようやく泣き止んだベルは、アスラに気が付き、たたたっと駆け寄った。
「お兄ちゃん!」
「おう!4日ぶりだな、ベル!」
「うん!」
さっきとは違い、ニコニコとアスラの足にしがみついたベルを肩に乗せて、アスラはもう一度リヴェリアの方を向いた。
「少し報告もあったが、また今度にする!俺はこのままコイツら送って帰るわ。」
「そうか、気をつけろよ。」
「えと、王様っ、ばいばい!」
「ふふっ…ああ、バイバイ。いいか、ベル?お前の信じた人を信じてやれ。」
「……うんっ」
モドモドしながらアスラの肩から手を振ったベルに、リヴェリアは優しく手を振った。
「ベル。」
「アイズお姉ちゃんも、変な人達から助けてくれて、ありがとう!」
「ううん、いい。また、ね?」
「うん!」
「【九魔姫】この借りは必ず。」
「気にするな。借りと思うのなら、しっかりとそばに居てやれ。」
「……感謝する。」
バイバーイ!と、来た時とは違い元気に出て行ったベルに、2人は手を振った。
その帰り道、アスラに肩車をされているベルは、嬉しそうに最近あったことを報告していた。
「お兄ちゃん!僕ね、お兄ちゃんと同じ魔法使えるようになったんだ!」
「なにぃ!?じゃあお揃いだ!!」
「うんっ!」
「あぁ、そういえば……使っていないから忘れていた。アスラ、ベルのステイタスだ、目を通しておけ。お前なら構わんだろう。」
渡されたステイタスシートをマジマジと眺め、はえーと唸った。
「すげぇじゃねぇかベル!お前、冒険者の才能があるぞ!」
「ほんと?」
「あぁ!この俺が保証してやる!よーし!そうなったら、俺がダンスの稽古つけてやる!俺と同じ魔法なら、上手くなれば効果も上がるしな!」
「やったー!」
「…まぁ、いずれは必要だったか。頼むぞ、アスラ。」
「任せとけ!んじゃあ!とっととホームに行くぞ!」
「うん!」
びゅーんっ、と擬音が着くくらいに走った3人は、あっという間にアストレア・ファミリアのホームに到着。
中で待っていたアリーゼたちが、いなくなったベルを抱き寄せて無事の再会を喜ぶ中、アスラはキョロキョロと周りを見回して、音を立てないように動く。
「さてっ、ベルも届けた事だし〜…俺はそろそろ…」
「あら、兄様もう帰るの?少しゆっくりして行ったら?」
「あっ?あ、あぁ!そ、そうか!ところでよ、その…アストレアは?」
何故かアリーゼの言葉に吃るアスラに、不思議そうに首を傾げたアリーゼ達。
「いま、用事があるからって席を外しているけれど…もう帰ってくるんじゃない?」
「あ、あぁそうか……よし!なら俺は帰るぞ!」
「……もしかして、兄様まだ引き摺ってるの?」
「う、うるせぇやい!合わせる顔がねぇの知ってんだろ!!」
そう言って有無を言わさず立ち上がり扉を開ければ、女神がとてもいい笑顔で
やべっ、と声を出したアスラに、アストレアは本当にいい笑顔で口を開く。
「───────あら、久々に会った感想がそれ?」
「あぁ…いや、その…あれだ……あっそうだ!用事を思い出したんだよ!」
「嘘ね。神に嘘がつけないのは忘れたの?しかも、あっそうだ!って言ってるじゃない。慣れないことはしない方がいいわよ?昔から変わらないわね。」
「あ、いや…その…」
「貴方、あれから何年来ていないと思っているの?5年と8ヶ月。その間、放っておかれた私の気持ち、考えた事ある?」
「お、おす……スンマセン…」
徐々に萎んで行くアスラに、珍しいものを見たと輝夜とベルは目を丸くした。
それよりも、ぷりぷりと怒りを露わにするアストレアに、何よりも驚いていた。
「そもそも貴方、どうして帰って一番に会いにこないのかしら?
───────昔の女はもう用済み?」
『昔の女!?』
「いや言い方ァ!?」
アリーゼ以外の団員が大声を上げてその言葉に驚愕した。まさか、そういう関係だったの!?と全員が目を向けた。
「まぁ…確かに、顔はいいもんな。」
「おい、ネーゼ。顔はってなんだ。」
「そうですね…後、強い?」
「なんで疑問形だマリュー?強いぞ?Lv4でLv6のオラリオ最強ぶっ飛ばした男ぞ?」
「ももももっ、もしかして、アストレア様は、すっ、既に、あ、ああ、アスラと、ちっ、ちちっ契りを!?」
「リュー!!してねぇ!!!どうしてくれんだアストレア!?誤解が誤解を呼んでるぞ!!」
「あら、誤解でもないでしょう?昔はお風呂も一緒に入って背中を洗いっこして……」
『お風呂!?一緒に!?』
「あれを一緒に入った扱いするな!お前が勝手に入ってきたんだろう!?背中は確かに流したが!」
「私の初めてまで捧げたのに…」
『アストレア様の初めてを!?』
「そりゃ恩恵刻んだの俺が最初だもんな!!そうだよな!?」
誤解を解こうとするが、輝夜とリューはクズを見るような目で見ているし、マリューやアスタなんかは見た事のない顔をしている。ベルに至っては話を理解出来ていないが、初めて見る輝夜の表情を見てこれまた凄い顔をしていた。
『クズですね』
『そんな人だと思いませんでした。民辞めます』
「お姉ちゃん……!?」
「おいこらアストレア!!アリーゼ!お前からもなんか言ってくれ!」
唯一の助け舟を得るために、アリーゼに声をかければ、仕方ないわね〜というように、大袈裟に首を振る。
「アストレア様、そろそろお巫山戯が過ぎますよ?怒っているのはわかりましたけど。」
「……ふーんだっ、許さないわっ」
『ふ、ふーんだっ!?アストレア様が!?でも、か、かわいい……!』
「頼むから続けてくれアリーゼ…」
「ご、ごほん!まぁ何?アストレア様が怒ってるのは、最初の眷属がいつまでも顔を見せに来ないから怒ってるのよ!」
ばーん!と胸を張って、言ってやったぜ!みたいな感じで仰け反ったアリーゼの言葉を整理した
「アストレア様の」
「最初の」
「眷属」
『誰が?』
「俺」
『ふーん』
数秒の間を置いて、輝夜たち全員がアスラに勢いよく視線を移した。
『───────マジ?』
「マジ。なっ、アリーゼ。」
「えぇ!因みに!私に戦い方を教えてくれたのもアスラ兄様よ!みんなより先に
そうして、アストレア・ファミリア唯一のLv4であるアリーゼは、誇らしげに(無い)胸を張った。
アストレアって何年前から居たんだろう。そしていつからファミリアを持ち始めたんだろう。