敵の女幹部とドンパチしてたら息子が出来た   作:イベリ

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俺達3人【象神の三叉槍(トリシューラ)】!

ギルド本部、その一室。

 

そこには、円卓に腰掛ける5派閥の幹部が、揃い踏みしていた。

 

「───────さて、3日後に向けての会議はこのくらいにしようと思う。」

 

そうして、派閥会議が終わりを迎えようとした時、アリーゼが1ついいかしら、と手を挙げる。

 

「……兄様はなんでいないの?」

 

「たしかに…お兄ちゃん何してるんだろう。」

 

「団長、アーディ……あいつはどうせどっかで踊ってる。」

 

「あぁ……十中八九踊っているな、これは。仕方あるまい、気難しい同胞でさえ、奴の踊りには抗えんのだから。」

 

「ガハハっ!奴は昔からやる事なすこと豪快でワシは好きじゃ!」

 

「気が合うわねおじ様!私もよ!」

 

「それに、市民の士気向上もさせているからあまり文句も言えないんだよねぇ…彼のお陰で、民衆の不満は最低限に抑えられてる。」

 

そう真っ先に口を開いたのは、都市最強を二分する派閥代表、ロキ・ファミリアからフィン・ディムナ、リヴェリア・リヨス・アールヴ、ガレス・ランドロック。

 

アストレア・ファミリアから、アリーゼ・ローヴェル、ゴジョウノ・輝夜。

 

「情報資料は、アスラの持ってきた情報を参考にしたわけだ。提供感謝するよ……シャクティ。」

 

「構わん、アイツがやった事がなにかに役に立つのならそれでいい。」

 

小柄な体格を持つ小人族でありながら、Lv5の都市有数の実力者。なにより、頭がキレる。オラリオの頭脳(ブレイン)と言っても過言では無いだろう。

 

「それで……彼は?」

 

この資料を持ってきた張本人がいないことにフィンが改めて問うと、シャクティとアーディが手を挙げる。

 

「最後に私が見た時は上機嫌でカフェに入って行った。」

 

「朝に『はっ!民が呼んでる!』って言って飛び出して行ったんだよね。」

 

「………彼らしいと言うか…忘れてないよね?」

 

「本っ当にすまん………」

 

そろそろ来てくれると信じてはいたが、既に終わり10分前。シャクティの目には、だいぶ前から怒りが宿っていた。

 

触らぬ神に祟りなし、となるべく触れないように話を進めようとするが、最悪のタイミングでバカが乱入する。

 

「すまん!遅れた!」

 

汗を流しながら飛び入ったアスラは、アーディの隣に素早く腰掛けた。

 

「いや〜、悪ぃ悪ぃ!忘れててよ!」

 

「もぉ〜!今日の朝忘れないでって言ってたでしょう、お兄ちゃん!」

 

「許せアーディ!俺の魂が今日は踊れって言っててな!」

 

「あははっ、それならしょうがないか〜!」

 

「そうそう!」

 

『ワッハッハッハッハッハ!』

 

豪快に笑う二人に、ほとんどの人間が呆れながら、こいつだもんなぁと頭を抑えた。

 

「アスラ……」

 

「いい身分だな、王様よ?」

 

ツンケンとした言葉をアスラに投げたのは、ロキ・ファミリアの対となるフレイヤ・ファミリア。その代表とその片割れ。オッタル、アレン・フローメル。

 

「おっ!相変わらずとんがってんなぁアレン!オッタルは……普通だな!」

 

「これは俺の平常だ。」

 

「この糞ダンサーが…何度遅れりゃ気が済む。」

 

「おいおい、折角とびきりの情報持ってきた俺にそんな態度とっちゃう?」

 

ああ?と眉間に皺を寄せたアレンを素通りして、アスラはフィンの真横に陣取り、机に腰掛けた。

 

「やぁ、久しぶりでも相変わらずみたいだねアスラ。遅れたことに小言を言いたい気分だけど…まぁ、会議なんてどうせ君寝てるしいいか。」

 

「流石フィン!よく分かってるぜ!あっ、アリーゼに輝夜!そういや、今日の炊き出し悪かったな、やることあってよ!」

 

「構わないわ!アラクニアは捕えられなかったけれど、どうにかなったわ!」

 

「……もとより、お前のスケジュール管理の甘さは知っていたことだ、気にするな。それに、いい機会だ、【勇者(ブレイバー)】この場を借りて、あの日の事に感謝を。【剣姫】には感謝してもしたり無い。」

 

「いいや、構わないよ。なにより、彼が無事でよかった。」

 

「それと、その……この前は、あの子が本当に失礼を……」

 

はて?と一瞬考えたフィンだったが、次の瞬間にはあぁ、と笑いながらその出来事を思い出し、気にしていないと手を振った。

 

「気にする事はないよ。聞けばヒューマン以外居ない村の生まれなんだし、あの歳の子だ。小人族の見た目は知らなくてもおかしくは無い。それにね……彼は優しく、素直で暖かい。今の時代にはこれほど珍しいこともないさ。大事にして欲しい。」

 

「ほんとにすまん…!」

 

平謝りする輝夜については、理由がある。

 

数日前、たまたま出会うこととなったフィンとベル。ベルはもちろん小人族など見たことないわけで、少し高い身長から年齢を割り出し、少し年上くらいの凄い冒険者という認識をしたらしく

 

『フィン君とお友達になったんだ!』

 

と、輝夜の顔を真っ青にさせながら、ニコニコと笑っていた。

 

「あっはっはっ!まぁ知らなきゃ間違えるわなそりゃ!」

 

「まっ、彼の前ではただの冒険者、フィン君さ。」

 

お茶目に笑ったフィンは、輝夜に再度、本当に気にしなくていい、と笑いながら手をヒラヒラと振った。

 

「さて、それで?アスラの情報は?」

 

「んじゃあ、まずは……情報を加味してのお前の結論は?」

 

「オラリオを落とす算段ができた……そのように思えるね。オッタルの報告からしても、その線は濃いだろう。」

 

「一人……少なくとも、Lv6以下は有り得ん敵がいる。恐らくこれが、その切り札に近いものだろう。」

 

「あ?初耳だな。」

 

「俺達の警備領域に存在するアダマンタイト製の壁が殴り壊されていた。」

 

殴り壊されていた、という単語に、アスラはマジかぁ、と呟く。

 

「情報サンキュな、オッタル。んで、フィン。俺とガネーシャもその結論で、奴らの切り札…恐らくその1つってところだが、わかったぜ。」

 

「なに?どういう事だアスラ。」

 

「Lv6やLv5が逆立ちしても勝てねぇ。向こう側の切り札ってやつさ。覚えてんだろ、シャクティ。教会の女だ。」

 

「奴か……っ!」

 

都市の最高到達点であるアスラが、明確に勝てないと言う絶望に、数名が唾を飲む中、アスラは尚笑う。

 

「【静寂】のアルフィアが向こうについた。」

 

その名前に、リヴェリアは勢いよく立ち上がり、そんなはずは無いと捲し立てた。

 

「アルフィアだと!?馬鹿な!?」

 

「なるほど【静寂】……あの廃教会の女は……実際にあったことはないが、聞いていた実力が正しいのならば、なるほど、あの強さにも納得がいく。」

 

「しかし、奴には持病が…!」

 

「んー、ピンピンしてたぜ?さっきまで一緒に踊ってたし。」

 

「……そうか…………ん?」

 

何かがおかしい、と数名が首を傾げた中、シャクティは、頭を抱えた。

 

「……なんだって、お前…」

 

「だーかーらー!アイツと踊ったんだよ!」

 

「アルフィアと」

 

「あの暴力装置と」

 

「……踊った、だと?」

 

『……………………は?』

 

アルフィアを知る面々が、空いた口も塞がらないという顔でアスラを見るなか、アリーゼと、その隣に座っていた、青髪の少女ヘルメス・ファミリアの苦労人、アスフィ・アル・アンドロメダ、アーディなどの若い面子はなんだなんだと、首を傾げた。

 

「アルフィア……確かヘラ派閥の冒険者……だったような…」

 

「その、アルフィア?ってどんな人なの?」

 

「あ、あぁ……音の魔法を扱う、過去に存在したLv7。才能の権化などと呼ばれていた……そして終ぞ私たちが一度も勝つことなくいなくなった英傑だ。」

 

「噓でしょ…ロキ・ファミリアが勝てなかった…?」

 

「性格も難アリでね……そもそも彼女、ダンスなんて自分から参加する質じゃないだろう?」

 

「俺が引っ張り出した!いいやつだぞ、アイツ!」

 

「ガッハッハッ!じゃじゃ馬もじゃじゃ馬の奴をいいやつだと?本当にお前は器がデカすぎて困る!」

 

「そうね!Lv7の冒険者ですら兄様のダンスには敵わないらしいわ!」

 

豪快に笑うガレスとアリーゼを、眺めながら、シャクティはあれ?と思い至った。

 

「……アスラ、踊ったんだな?」

 

「ん、ああ!」

 

「何を踊った…?」

 

「【英雄の舞(ナートゥ)】だ!」

 

その一言で、あぁ終わった。とシャクティは頭を抱える。

 

「───────この馬鹿者ッ…!!自分の踊りの効果まで忘れるのか!?」

 

「何でだよ!?何踊ったって…………あっ。」

 

ここで、思い出して欲しい。

アスラの魔法【踊れや踊れ、騒げや踊れ(ダンス・ダンス・ダンス)】は、複数の踊りから構成され、それぞれに効果が割り振られている。

 

広範囲に戦意を高揚させ、中程度のステイタス補正をかける【民衆の舞(ヴァイシャ)】。

 

広範囲に状態異常から外傷までを治療する光を出現させ、味方勢力を回復させる【神官の舞(バラモン)

 

中範囲に戦意高揚、ステイタス小補正。そして、浄化効果を齎す【英雄の舞(ナートゥ)

 

注目すべきは、この浄化という効果。

 

弱い治癒効果なのだが、浄化効果では病魔の類まで治癒、軽減される。現に、これを踊った民は健康そのもの、病に侵されていた民もその後は快調だったりする。

 

しばらく考えたアスラは、ポンっ、納得したように

 

「俺がアルフィアの病気ちょっとよくしたって事か!」

 

「何、良いことしたんだな!みたいに言ってるんだ!」

 

怒鳴るシャクティに、アスラはまぁまぁと笑いながら諌める。

 

「な〜に!難易度がちょっと上がっただけさ!万全で挑めりゃ、あいつの魔法も封殺出来る!俺の勝ちだな!」

 

「びっくりするほど楽観的ッ!なぜ、私と過ごしていてここまで馬鹿になってしまった!」

 

「姉ちゃん達が厳しい鞭だからなぁ!俺とアーディは飴じゃなきゃ!」

 

「そうそう!お姉ちゃんが厳しくしてくれる分、私たちが飴にならないと!」

 

『ねぇ〜?』

 

「元凶はお前かぁッ!!アーディに余計なことばかり吹き込むなぁ!」

 

猛るシャクティを抑え、忘れたか?とアスラは笑う。

 

「平気さ!俺に、アーディとシャクティなら!姉弟妹3人でどんな戦いだって乗り越えてきた!フレイヤ・ファミリアだってそうさ!」

 

「そうそう!私たち3人が揃えば、どんな敵だって楽勝〜!!」

 

俺たち(私たち)最強!常勝!【象神の三叉槍(トリシューラ)】!!』

 

「今まではそうだったが、今回が最初の敗北になるかもしれないだろう!」

 

その話は、まだ記憶に新しい者も居る。壮絶で、それでいて爽快な戦いだった。

 

「…チッ……忌々しい…」

 

「だが、事実だ。俺達は、文字通りあの3人(・・)に蹂躙された。今俺たちがオラリオに存在していることも、状況と……奴の機転に過ぎん。」

 

重みのある声音で語ったオッタルは、あの時を思い出すように目を細めた

 

「………何も言わねぇ、オッタル。俺は、何も覚えてねぇ……」

 

「………寧ろ、笑ってくれ……」

 

遠いどこかを眺めるようなオッタルに、フィンは乾いた笑い声を出しながら、あの日を思い出した。

 

「最強の軍勢すらもひっくり返した君たちを【象神の三叉槍(トリシューラ)】と歓声を上げたのも、記憶に新しい。」

 

「やめてくれ、フィン……治安を維持するはずの我々が街を滅茶苦茶にしてしまったんだぞ。被害も馬鹿にならなかった…まぁ、私たちが悪いかと言われると、疑問は残るが。」

 

「いや、あれは全面的に彼らが悪いかな。」

 

「そのとーりー!私達は悪くない悪くない!」

 

「そうさ!俺達【象神の三叉槍(トリシューラ)】が揃えば、どんな敵でも倒せる!いい作戦も考えたんだ!」

 

自信たっぷりにアーディと肩を組んで語るアスラに、渋々賛同しながら、シャクティは口を開く。

 

「はぁ……しかし、それでは作戦を変えねばならん。私とアーディはアリーゼたちと行動するつもりだが…」

 

「ジャフ達に任せりゃいいさ!あいつらもLv4だ!シャクティとアーディの代わりなら、しっかりこなしてくれる!フィン!良かったら変えるから聞いててくれ!」

 

「はいはい、止めても無駄なんだろう?」

 

「分かってんじゃねぇか!」

 

ボードの前に立ったアスラは、分厚い胸板をこれでもかと張って、バンッ!とボードを叩く。

 

「さぁ、聞け!俺達3人を主軸とした陣形!作戦!その名も──────突っつけ蜂の巣!オペレーション・ハニービーだ!!」

 

『…………………』

 

この時、普段はそれ程仲がいいとはお世辞にも言えない、フレイヤ・ファミリアを含めた、全員の心が一致した。

 

『大丈夫かなぁ、この作戦。』

 




踊りの効果の中でナートゥがいちばん弱い。けど楽しい。

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