「はぁ、はぁ」
息が上がってきた。体が重い、周りの炎が熱い。マリア姉さんは大丈夫かな。マムは切歌ちゃんは調ちゃんはウェル博士は……。
ネフィリムを相手にしてどれだけの時間が経ったのか今の私にはわからなかった。だけど自分が酷く疲労してきていたのは理解していた。だからそれは必然だった。
疲れて思考があっちこっちに飛んでいた私はネフィリムの攻撃を避け損なって吹き飛ばされた。
「きゃあっ!?」
丸太のような腕に殴られた痛みと壁に叩き付けられた痛みで一瞬意識が飛びそうになったけれどなんとか意識を繋ぎ止める。
ここで意識を失ったら戦況はもっと悪くなる。そう思って痛みをこらえながらネフィリムに視線を向けると。ネフィリムは大きな牙が鮫の歯のようにビッシリと並ぶ大口を開けて私に向かって来ていた。
「ひっ!?こっ、来ないで……っ!!」
こちらに喰らいかかって来るネフィリムを見て私は目を閉じてしまった。ここから逃げれば良いはずなのにそれが出来るはずなのに私を喰らおうとするネフィリムともしネフィリムに食べれてしまった時の事が頭をよぎって動きを止めてしまった。この時の私を支配したのは
「ぐっ!?あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
だけど聞こえて来たのは奏さんの叫び声だった。その事に驚き目を開ければネフィリムの大口に食いつかれている奏さんの姿だった。
「……えっ、かな、で、さん。わ、わたし、のせい……」
一瞬思考が止まるが直ぐに動き出して目の前の光景が私のせいで引き起こされたものであると理解する。
私のせいだ、私の。私があの時動けていれば私が恐怖していなければ。私が私が、
ホントなら今すぐ奏さんを助けなくちゃいけないのに自分自身を攻めるばかりで動けない。
どうして?どうして動かないの!?私のせいなのに!!私の代わりに奏さんはネフィリムに食いつかれているのに!私はどうして動けないの!?
情けなくて情けなくてそれでも私は私を攻めることしか出来ない。どうして?その言葉ばかりが私の頭に浮かんでくる。
そうしているうちに翼さんがネフィリムの片足を切り飛ばしてその隙に奏さんはネフィリムから抜け出した。
その事に安堵するも何も出来てない私を攻め続ける新しい理由が出来ただけだった。
「セレナァ!!」
「は、はい!」
そんな私に奏さんが迫力のある声で呼びかける。その言葉に驚きつつも反応して返事をする。それと同時に内心怯えている。
奏さんにどんな酷い言葉をかけられるのか、怖い。私が動けなかったせいで、私のせいで怪我をさせてしまったから、奏さんには私を罵る権利がある。
「怖いなら、怖さを押し込められないなら、戦場に立つな!」
「っ!?」
でも奏さんから出た言葉は怒りの言葉でも罵る言葉でもなかった。他の人が聞けば気分を害すかもしれないその言葉は私にとってはとても優しい言葉に聞こえた。
「戦場に立つなら覚悟を持て!」
私を心配する言葉だ。私を励ます言葉だ。
「何よりなんの為にここに立ってる!」
まだ失望されていない。そしてチャンスをもらっている。
「お前は何がしたい!!」
そう言ってネフィリムに向かっていく奏さんの背中を見る。
「何をしたいのか……」
私は戦いが嫌い。傷つくのも傷つけるのも嫌。でも私は力を持って、そして使ってる。じゃあどうして私は力を使っているの?
答えは単純だった、『この力でみんなを守りたいから』マリア姉さん、切歌ちゃん、調ちゃん、マム、翼さん、奏さん、他にももっと守りたい人達が大勢いる。
だからここに立った、だから戦いに身を投じた。
今ならネフィリムも怖くない。だって守れない事の方がとっても怖いから。
だから、私は1歩踏み出した。そしてもう一度ネフィリムとの戦いに参加する。
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「はぁ……はぁ……っ、クソっ!!」
息を切らしながらついつい悪態をついてしまう。先程受けた傷で血を流しすぎたのか意識が朦朧として体が冷えてきた。
「奏、無理しない方が」
「まだ、やれる……」
翼が心配してくるが駄目だ。ここで俺が抜けたら翼1人にネフィリムを任せちまう。そんなことできない。
「……まだなのか!?」
未だに来ない避難完了の報告につい口に出してしまう。そうしているうちにまたネフィリムが再生を終えて再びこちらに向けて動き出した。
「やあっ!!」
だが次の瞬間にはネフィリムの腹に竜巻が直撃し吹き飛ばす。そして竜巻の中から出てきたのはセレナだった。
「奏さん!」
「……どうした」
「私は戦いが嫌いです。でも!この力で誰かを、大切な人達を守りたいんです!!だから怖くありません!もう、情けない姿は見せません!」
大きな声で俺を呼び決意を語った、セレナのその瞳は一切の揺るぎがなく俺を真っ直ぐと射抜いた。
「まったく、俺がバカみたいじゃないか」
「いえ、奏さんがあの時声に出して言ってくれたからです」
「そうか、ならよかったよ」
うん、嫌われる覚悟で言ったがセレナが成長出来たようでよかった。
「グルァ!!」
「はあっ!!」
そしてさらにネフィリムに一本の槍とドラゴンが激突する、避難側につけていたズメイ。そしてマリアまでもがやって来た。
「待たせたわね!避難は終わったわ!」
「よし!後はコイツをどうするかだな……」
戦況は良くなったがまだまだ気は抜けない。俺は再びアームドギアを構えてネフィリムを見つめた。