俺、天羽奏は今車で移動をしている。そう、この前了子さんが発案したオペレーション『翼ちゃんとお出掛け♡ 』が発動しているのだ。
相談する相手を間違えたな、これならオペレーターのあおいさんに相談すれば良かった。了子さんよりもマシな意見をくれたに違いない。
「そんな顔をしてどうする。これから翼と仲良くなるんだろ?」
「そうは言ってもよお。これはいきなりすぎだろ」
不満そうな顔していた俺に弦十郎の旦那がそう言うがやっぱり性急すぎやしませんかね。
「いつまでもそんな気持ちじゃ縮められるものも縮められんぞ。それにもうすぐ目的地なんだ諦めも肝心だぞ」
「はいはいわかりましたよ」
そう言ってバックミラーに映る翼を見る。緊張はしてるみたいだが外に来れたのが嬉しいのか窓に張り付いて目を輝かせている。
「なあ、旦那」
「なんだ奏くん」
「翼の奴、子供らしい事できてるか」
「……あまりできてはいないな。俺が言っちゃあなんだが家も良いお家柄だ、翼もその血筋。一般的な子供的な生活とは違うだろうよ」
「……そっか」
なら、いつまでもうじうじしてられないな。子供一人エスコート出来なくちゃあ大人の名折れだ。まあ、今の俺は子供なんだけも。
とにかく翼にはいい思い出作って貰わなくちゃな。
「まあ、よろしく頼むぜ。今日の財布さん」
「ふっ、大人の財力見せてやろう」
案外ノリいいなこのOTONA。
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そんなこんなでやって来たのは国内最大級らしいショッピングモール。22万4,000m²の広大な敷地とかいう聞いた事のある敷地面積に700を超える店舗。到底1日で回りきれる場所ではないが、別に回りきる必要も無いしな。
俺は弦十郎の旦那に促されるまま、翼の手を引いてショッピングモールの中に入った。
最初こそ俺から弦十郎に移動しようとしていたが俺が粘り強く相手をした結果、俺と弦十郎で翼をサンドする事でとりあえず落ち着いてはいるんだが。
この翼、アクティブすぎる。俺と弦十郎を引っ張ってあっちにフラフラこっちにフラフラ。
目を輝かせてあっちこっちに目移りする様は正に子供といった感じだ。
興味を持ったものには突撃!というスタンスなのだろう。そう言う俺もあっちこっちに目が奪われているけどな。
そんな感じであちこち回って弦十郎の旦那を財布にあれこれ買いまくり。旦那の両腕に荷物をバチくそ持たせた頃には昼時になりかなり混んでいるフードコートで休憩をしていた。
フードコートでジャンクなフードをピエロが特徴的な某ハンバーガー屋で買い。その後のおやつとしてミスターなドーナツ屋でドーナツを買って食っていた頃。
「すまないがしばらくここで待っていてくれ。この荷物を車に置いてくる」
そう言って弦十郎の旦那が席を立ち荷物を抱える。
「頼んだぞ奏くん」
「うい」
旦那からの頼み事に頷く。
まあ、あの荷物じゃ午後から回る時大変だろうからな。
そう思いながらポンデなリングを食べる。このモチモチさが堪んないんだよな。フレンチなクルーラーも頬張る。この生地とホイップが美味い。
そして隣に座る翼を見る。ポップなドーナツが大量に入った容器を片手で器用に抱えながら口いっぱいに頬張る姿につい笑ってしまう。
「ククッ」
「ムグッ!?」
それが気に食わなかったのか口をモゴモゴさせたままコチラに抗議の目線を送る翼は可愛らしかった。
「ハハッ、悪ぃ悪ぃ。別にバカにした訳じゃないぜ」
そう言って翼の頭を撫でる。それを不承不承ながらといった顔で受け入れる翼は可愛いもんだ。心がポカポカする。
この数時間でだいぶ打ち解けられたようだ。最初はどうなるかと思ったけど良い日になりそうだ。
そう思っていた時だった。悲鳴が聞こえた。
フードコートはその悲鳴に騒然となり次の言葉でパニックとなった。
「ノイズだぁぁぁぁぁぁ!!」
ノイズ。その一言で昼時のフードコートは悲鳴と怒号が飛び交う場所へと様変わりした。
その言葉に固まった俺と翼の机をパニックになった客の一人が吹き飛ばした。咄嗟に翼をだき抱えたが俺と翼は椅子から転げ落ち机の上のドーナツが地面に散らばる。
「いってぇな」
そんな愚痴を零しながら起き上がる。転げ落ちて背中をぶっただけだな。この時ばかりは旦那との訓練に感謝だ。
「大丈夫か翼?」
「う、うん」
翼の無事を確認する。特にぶつけたとかは無いようだ。
そう安心していると俺達の横を通過しようとした奴が炭素に変わった。
「ヒィッ」
それに翼は声を漏らす。俺も事態の速さに息をのむ。
俺は咄嗟に翼を抱えて近くの棚に潜り込む。フードコートにある備品などをしまっておくところだ。
運良く俺と翼が隠れられるスペースが空いておりそこに自分と翼を押し込み翼の口を押さえる。
「静かに」
そう言う俺の言葉に無言で頷く翼を胸に抱き縮こまる。
今の俺には隠れてやり過ごす事しか出来ない。
特徴的などこか気の抜ける様な音が聞こえてくる。隠れている棚にもだんだんと近付いてくる。
通り過ぎろ、通り過ぎろ、通り過ぎろ、通り過ぎろ。
そう祈るしかない。
そうしてからどれ程たっただろうか。
いつの間にか足音は消えており棚の隙間から外を覗けばノイズはいなかった。
慎重に棚の戸を開けて周りを見渡せばノイズはいなかった。それに安堵しつつも急いで翼を連れて走り出す。
こんな場所にいられるかよ。