十ニ歳のマリアがクロッケと出逢った頃のお話。

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不思議のマリアの宝箱

 

 

ープロローグー

 

 

新月の夜は小さな星までよく見える。

 

 

『あの小さな星は私とおんなじだ。』

 

『大勢の星の中でひっそりと光る。多分、誰もそれに気づく事はない。』

 

 

月のいない星々の騒がしい夜、その屋根裏部屋からうっすらと光が漏れる。

 

(、、、ペラッ、、)

 

ランプの灯りに照らされたその少女の金色の髪が、妖精に魔法でも掛けられたかのようにキラキラと煌めく。

机の上に覆い被さるかの様な姿勢の彼女の、その視線の先には本があった。

 

 

(スーーーーッ ペラッ、、)

 

『でも、それでもいいのです。

私には、本があるから。』

 

 

本の中は、不思議なことで溢れている。

 

見たこともない不思議な生き物や自然の法則。行ったこともない異国の文化に美しい美術品。

私の街の小さな野外演劇とは比べ物にならない、素晴らしいお芝居や物語。

 

世界中を駆け巡ってあらゆる驚きをこの目にし、

時には魔法の杖を振り翳し悪者をやっつけ、素晴らしい宝物を手に入れることだって、、、

 

『本の中では、私は自由なのです』

 

 

 

、、、本さえ有れば、それでいい。そう思ってた。

あんな事が起きるまでは、、、

 

 

 

 

 

 

 

『この世界は、

 残酷なのです、、、』

 

 

 

 

 ー『不思議のマリアの宝箱』ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーマリアの宝物ー

 

 

「マーリア〜、マァ〜リアー、お休みだからって、いいかげん起きなさい!もうすぐお昼になるのよ〜」

 

母が呼ぶ声が聞こえる。

「もう、全く」と母が言うのもよく分かる。

来年は十三になるというのに私はめっぽう朝が弱い、寝坊助だ。

 

そして、身体も強くない。運動もろくに出来ないし、しょっちゅう病気にもなる。

 

私は何の取り柄もない子供なのです。

、、、でも、本は大好きなのです。

 

 

『本は大砲より強し』なのです〜、、、

 

 

(ふわぁ〜〜〜〜っ、、、)正直まだ眠いのです、、

 

 

 

「いいかげんに起きなさい!

顔を洗って朝ごはんを食べたら、叔母さん家にお使いに行ってきてちょうだい。」

 

母に怒られて、ようやく私は目を覚ます。

 

 

「はい、、(なのです。)」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

『ふふふふっ、叔母さんにリンゴを貰ったのです。』

 

母に頼まれたお使いの帰り道、マリアは緑瑞々しい初夏の森の中を歩いていた。

帰ったら、さっそくリンゴのパイでも作ろうかと思いを巡らす、その彼女の頭上を横切る小さな影があった。彼女はそれを目で追う、、、

 

小さな灰色の毛皮にまん丸い大きな瞳、、、

「あ、モモンガ!であります」

 

昼間に夜行性のモモンガに出会うとは、、これは何か良い事が有るかもしれないですよと、嬉しくなったマリアはその小さな生き物を追いかける。

 

 

(そして私は夢中になると周りが見えなくなるので、、、)

 

「げふっ!?」案の定、横に伸びた太い枝におでこをぶつけた。

 

 

「あいたたたたっ、、」尻もちをつき、両手でおでこを押さえるマリアが目を開けた先に何かがキラリと光った。

 

『!?んんっ、、、』彼女は目を凝らす。

桃色に耀く何かが草の間で陽の光を反射させている。「これは、もしかして、、、」

 

 

「水晶華でありますかぁ!?」

 

 

それは本で読んだ、断崖に 十数年に一度だけ咲くという桃色に耀く水晶の花だった。

 

 

「実物は初めて見たのです、、」

 

 

『でも何でこんな所にあるのでしょう?

崖のそばでもないのに、不思議なのです、、、』

 

とはいえ、モモンガの言い伝えの通りに良い事が起きたマリアは、その宝物を手に取り、ほくほく顔で家路に就くのだった。

 

 

 

「ただいま、なのです♪」

 

家に帰ってきたマリアは、リンゴのパイのことはとっくに忘れ、ボール紙で工作を始めた。

そして出来上がった小さな箱にその宝石をしまい、眺める。

 

「綺麗なのです〜♪」

 

ご満悦の彼女は、その綺麗な宝石を誰かに見せてあげたくなった。

 

 

とりあえず、先ずは母に見せてみた。

「まあっ、どうしたのこれ?、、」驚く母に森での出来事を話すと、「よかったね〜。ちゃんとおつかいしてくれたご褒美を神様がくれたんだね」と褒めてくれた。

 

 

益々嬉しくなった彼女は近所の人達にもそれを見せて回った。

 

「まあ!凄い」皆んなが驚く。

 

「おお、これは凄い。これだけ立派な水晶華を見たのは数十数年ぶりだな。よく見つけたなあ!」皆んなが褒めてくれる。

 

 

皆んなが私の宝物に驚いて、

今まで見向きもされなかった私を褒めてくれる。

 

噂が噂を呼び、皆んなに褒められ有頂天のマリアは、宝物を入れたその箱を、常に肌身離さず持ち歩くようになっていった。

 

 

 

 

 

そんなある日の学校帰り。

 

「うわー、やっぱり綺麗な石だねー」

「マリアちゃんスゴいねー!」

 

「いや〜そんな事ないのです〜〜」褒める友達たちの言葉にご満悦のマリア。

 

「いや、そんな事あるよ、きっとマリアが物知りだからみつけられたんだよー」

 

 

そんな集団の後ろからマリアに声をかける者がいた。

 

「オレ達にも見せてくれよ」

 

その声に彼女が振り向く。

 

 

『ううっ、、いじめっ子トリオなのです』たじろぐマリアだったが、ここ数日間の承認欲求に気が大きくなっていた彼女は勇気を出して言う。

 

「、、ちょっとだけなら構わないですよ」マリアは水晶華の入ったボール箱を恐る恐る手渡す。

 

 

「ふ〜んコレが水晶華か、スゲー」

少年達は大人しく見てはいるが、取られやしないかと彼女は気が気でない。緊張に喉の奥がカラカラになる。

 

 

「もう充分見たのです。返して欲しいのです」マリアは催促する。

 

「もう少しぐらい、いいだろ?ケチくせ〜な〜」少年達は取りあわない。

 

「返せと言ったら、返すのです!」

マリアは箱を取り返そうとする。

 

 

絡み合うマリアと少年。

互いに引っ張りあう二人の力にボール箱が破ける、、、『え?/あ!』

 

 

マリアの水晶華が、宙に舞う、、、

 

 

そして、もつれ合う二人の向こうにそれは落ち、バラバラに砕けた。

 

 

「は!何だよ、本物は何百年も輝き続けるって聞いたぞ。

ただの偽物じゃないかよ!」

少年達はそう言い捨てて走り去る。

 

(!?)急いで地面に膝をつき、砕けた破片を集めようとするマリア。

あんなに綺麗だった記憶までもが褪せていく、、、

 

 

「それでも、私には大切な宝物だったのです、、、」

 

呆然とする彼女の目尻から一筋の涙が流れる。

 

(・・・・・・)

 

マリアは、ただ淡々と破片を摘みボール紙の宝箱に入れてゆく、、、

 

 

その様子に、周りの子供たちは声を掛けてあげる事さえ出来なかった。

 

 

 

 

 

 

ー私の本当の宝箱ー

 

 

(は〜〜あ、、)マリアは、セロハンの粘着テープで直したボール箱を抱えて、とぼとぼ家路を歩く。

 

結局は、友達の女の子達が慰めてくれたのだが、それでマリアの気持ちが晴れることはなかった。

 

 

『私がこんなボール箱に入れたから、壊れてしまったのですか?、、、』

思い出すと、また涙が出てきそうになる。

 

自信を失うマリアは、とうとう足を止め道端の大きな樹の根に座りこんでしまった。

 

(はあ、、、)薄曇りの空を見上げた彼女はそこで気づく。

 

『ここは!?、、あの時水晶華を見つけた場所なのです、、、』

 

 

「たしか、、あの草むらで、、、」

 

(ガサッ、)

 

『わあっ!?、な、なんでありますか?、、まさか、水晶華の霊が、、、』

 

その時、その茂みからピョコッと小さな灰色の頭が飛び出した。

その生き物とマリアの目と目が合う。

 

 

「あっ、あの時のモモンガ?(なのです)」

 

そして、すらすらと彼女の足下にやってきて、地面に置かれたボール箱の中の砕けた水晶華の破片をじっと見ている。

 

 

「もしかして、お前の水晶華だったのですか?

、、すまないことをしたのです」

 

再びうるうるするマリアの目尻に慌てるモモンガ。わたわたしながらも、マリアの肩に上がり、なんとか彼女を慰めようとする。

 

「ふふふふっ」それを見て笑ってしまうマリア。

 

「お前はいい奴なのです」

モモンガに頬ずりをするマリアの唇がそのおでこに触れたその時、

彼の身体が光を放った(!?)

 

「おうっ??」

 

そしてマリアの体から、モモンガの耳と尻尾がピョコンと生えた。

 

「な?、なんでありますか??、、、お?、、おおっ??」

 

自分の頭に生えたモモンガの耳を両手の指で摘み驚くマリア。

 

「あわわわ、これ本で読んだことがあるのです。

お前、、、精霊だったでありますか?!」

いま、頭の中に感じるそのモモンガに訴える。

 

「う〜〜、なんか変な感じなのです、、、」

初めての感覚に違和感を覚えるマリア。

 

 

「、、、でも、私はついているのです!」

マリアは口元にクイッと笑みを作る。

 

『クロッ?』頭の中でモモンガが尋ねる。

 

 

「これで私はウィッチなのです。私、一度でいいから空を飛んでみたいと思っていたのです!!」

 

「なにしろ、使い魔の精霊はモモンガなのです。飛べないワケがないのです」

「だから今日からお前が私の師匠なのです。そして、お前の名前は『クロッケ』と呼ぶのです!」

 

『クゥルゥーーーー♪』

 

 

先ほどまでとは一転、両手を腰に当て鼻高々と仁王立ちするマリア。

雲間からさした光が、彼女の顔を神々しく照らす。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

(カタンッ、、)「このホウキがちょうど良さそうなのです」

 

帰宅したマリアは家の物置に立て掛けられていた古いホウキを手に取った。

 

 

その日から早速彼女は空を飛ぶ練習を始めた。本を読み、やってみて、上手くいかなかった所を、また本で理解して、またやってみる。

何日も何日も失敗し、それでも何日も何日も一生懸命練習する。

 

運動は相変わらず苦手だが、本で得た知識と練習で少しずつ成果が現れて来ると、どんどん楽しくなっていくマリア。

とにかく空を飛んでみたい。その一心が彼女を突き動かした。

 

 

マリアは、いま彼女の跨る古びたホウキに意識を集中する。

彼女の踵がだんだんと、、浮き上がり、

自分の重さがゆっくりと無くなってゆくのを感じる、、、

 

(、、ふわっ、)

 

『浮かんだ?!』

彼女のつま先が地面から30センチほど浮き上がった。

 

「!?やったであ、、」

 

その次の瞬間、バランスを崩したホウキの機首はぐるんと180度回転し、マリアは背中から地面に落っこちた。

 

「、、ぐへっ!?」

 

頭の中のクロッケが慌てる、、

しかし、腰をさすりながらも彼女はすぐに起き上がる。

 

「(ィタタタ、、、)私はお前と同じ弱い生き物なのです、、、だから、もっともっと知識を付け、練習して、強くなりたいのです」

 

手脚をキズだらけにしながらも笑みを浮かべ、夕陽に顔を紅く染めるマリアであった、、、

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

三週間ぐらいが経った頃、師匠のクロッケとマリアが滑空の練習をしていた時、数人の大人達が慌てて山道を上がって来るのが見えた。

 

『ん〜〜?、かなり急いでいるようなのです、、、一体なんなのでしょうか??』

 

 

・・・・・・数分後、彼女のもとにたどり着いた彼等の話を聞いてみると、マリアに頼みがあって上がって来たと言う。

 

水晶華採りに山に入った息子が足を滑らせ崖の中腹に取り残されしまったのだが助ける良い方法が見つからない。そこにマリアが最近ウィチの力が発現したと聞いたので、どうか飛んでその子を助けてくれないかとのことである。

 

 

「でもまだマリアは自由に空を飛ぶことは出来ないのです。今はまだホウキで、滑空の練習をしているのです。」

 

そう彼女が答えると、それであれば崖の上から滑空して助けてやって欲しいと言う。

 

どうしてもと、余りに深刻な顔でお願いされるマリアは、可能かどうかは崖の上に着いてから答えることを条件に、先ずは彼等と一緒に崖の上まで山道を登ることにした。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「はあっ、、もう、ヘトヘトなのです、、」

 

マリアは持ってきたホウキをつっかえ棒にし、今にも座り込みそうな状態だ。

 

30分ほどを山登りに費やし、彼女達は崖の上にたどり着いた。

それは想像していた以上に断崖絶壁の崖だった。へりに近づくことすら躊躇(ためら)われる。

 

大人達の後ろから勇気を振り絞って崖の下を見てみると100メートルは優にある。そしてその崖の中腹にへばり付く豆粒ぐらいの小さな人影が見えた。

 

「たしかに此れではロープを下ろす事も出来ないのです」

とは言え、、、

 

『ううっ、、さすがに高すぎるのです、、、』

崖の高さに脚がすくみ、たじろぐマリア。そもそも、人を抱えて飛ぶ練習などしたことがない。

 

 

、、、出来る自信が全く湧かない。さすがに無理だと彼女が断わろうと考えたその時、

(クルックーーッ!)頭の中でクロッケがマリアを励ます。

 

『そう言われても、、、えっ、飛べる?、、、、、、、師匠は、私がほんとに飛べると言いますか?!』

 

 

、、、マリアは胸に手を当て、自分の心に問いかける、、、、、、

 

 

あの日砕けた水晶華が目の奥に浮かぶ。

 

悲しかった。

あんなに素晴らしいと思っていた宝物が、あんなにも呆気なく崩れてしまうとは想像だにしなかった、、、

 

 

『人から貰ったモノではダメなのです』

 

形在るモノはいつか崩れる。

 

 

 

『宝物は、自分自身が作るのです、、』

 

 

 

、、、(フンッ!)マリアは息を吐いた。

 

「正直まだ、私の実力では飛べるとは言えないのです、、、

 

でも、もしかしたら今がそのチャンスなのかもしれないのです、、、」

 

 

 

『、、飛べるとしたら、それは、、、』

 

マリアは、クロッケと出会ってから、共に練習してしきたことを思い出す。

 

 

 

 

「今なのです!!」

 

(たんっ、、)

 

 

 

 

マリアはホウキに跨り崖の先に跳んだ。

 

「クロッケ、行きますよぉ!」

 

 

 

そして、ほんとに飛べているのか?というスピードで滑空していく。

 

 

『ぐぐぐ、、、風圧が凄いのです』

マリアは目を細める。

 

 

あっという間に少年が視界に、、、、、、入った、、

 

 

 

「とはいえ、練習の成果なのです。いけるのです」

 

滑空する角度を微調整して、

見事、少年をホウキの柄の上にキャッチ!

 

そしてそのまま、今度はもはや滑空とは呼べないスピードで落ちていく!??

 

 

 

 

マリアの髪が風に暴れる。

彼女は奥歯を噛み締め地上との距離を計る。

 

『勝負は、一回きりなのです、、、』

 

 

 

 

 

既に地面が目の前に迫る!!

 

 

『!?、、ここで、急上昇、、、』

 

少年を抱える腕を締め、全身の力をホウキに集中し目をつぶる?、、マリア。

 

 

 

 

 

 

 「『 なの、です !!! 』」

 

 

 

 

 

 

その瞬間、マリアと少年の体が宙に浮かんだ。

 

『おおっ?、、、、、、、、』

 

マリアの金色の髪が宙に舞い上がる、、、

 

 

 

 

 

  ( 私、、飛んでる? )

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「べふっ!?」

 

 

 

 

 

 

(、、、ん"!??、、、、、、、、)マリアは、力一杯顰(しか)めたその目を恐る恐る開く。

 

 

、、、黄色いつがいの蝶がヒラヒラと飛ぶ、、、

その向こうには、雲のたなびく青空が広がっていた。

 

鼻の頭に夏の草花の匂いがした。

 

 

『、、、生きてる??の、です』

 

そして背中には柔らかな草の感触があった。

 

 

「、、できた!?、、、(でありますか?)」

 

 

(はぁーーっ)まだ放心状態のマリアは、ゆっくりと上体を起こす。

 

 

 

「本当に、無茶しやがって」

 

、、声のした方を向くと、同じ様な姿勢の少年がいた。

 

「無事だったでありま、、、」

(!?)マリアは少年の顔を凝視する。

 

 

「お、、、」彼女の眉間に険しい皺が浮き上がる。

 

 

 

「お前だったのですかーーー!?!」

 

 

 

マリアが助けたその少年は、あろう事か先日マリアの水晶華を壊したあの少年だった。

 

「おかげさんでな、」緊張し身構える彼女の前に少年が何かを差し出す。

 

 

『えっ、、』

それは、薄桃色に耀く小さな水晶華だった。

 

「この間は悪かったな、、、お前にやる」

 

 

 

「んんっ??、、、、、、、、、、、、 

、、、あっ!、、、、、もしかして、その為に崖を降りたのです、か?、、、」

 

少年は耳を真っ赤にして、バツが悪そうに横を向く。

 

 

『、、はあっ、、そうだったのですか、、、』

 

少年があの日マリアの水晶華を壊してしまった事を悔い、その代わりを探してあの断崖を降りたことを理解した彼女は、そして下を向き、はにかむ。

 

「ありがとう、なのです。でも、、、」

 

 

顔を上げ、少年を見て彼女は言う。

 

「もうマリアには、それは必要無いのです」

 

 

「・・・」少年が、キョトンとした顔をしてマリアの顔を見つめる、、、、、、

 

 

 

彼女の髪を、風が揺らす。

 

「、、、宝物はもう既に、私の中にあったのです。」

 

 

 

陽の光に、葉っぱを散らした金色の髪を輝かせ、

マリアの満面の笑みに白い歯がこぼれた。

 

 

 

「ふふふふっ、、」

 

本当の宝物は、実は最初から自分の中にこそ在ったのだということをマリアは知るのだった。

 

 

 

 

「さあ、陽が暮れる前に帰るですよ!」

 

マリアは立ち上がり、上着の草を払う。

 

 

そして右手の拳を天に突き上げ、彼女は言った。

 

「今度は絶対、もっと上手にやってやるのです!」

 

 

マリアは七月の青空に目を細める。

 

『そして、もっともっと色んなことを経験して、知りたいのです。

この私の身体を溢れるほどに、いっぱい!!、、、』

 

 

 

崖の下の陽だまりに、金色の風が吹く。

 

そしてマリアは緑の野原を駆け始める、、、

今その心に在る宝箱と共に。

 

 

 

ーおわりー

 

 


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