リリィちゃんをFate/Zeroに突っ込んだ安易な奴   作:鎖佐

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正直フェイトって設定がやたら多くてフェイト世界の創作はする気無かったんだけどな。
活躍させやすすぎるんだよなぁ。


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「サーヴァント、セイヴァー、召喚に応じ参上した。…嗚呼、私は其処であたふたしている少女の騎士だ。彼女がセイヴァーだ」

 

 セイヴァーと呼ばれた少女は、ハッっと二人の視線に気が付くと、黒い外套を纏った剣士の後ろに隠れてしまった。

 

 

 …間桐雁夜は頭痛によってダウンした。

 本来ならば、伝説として名高いアーサー王伝説の円卓の騎士、その中から誰かが来るはずだったのだ。ガウェインやランスロットなどと贅沢を言う気は無い、ベディヴィエールやカイであっても聖杯戦争では十分な実力と知名度を有している。だが…

 

「ふむ、またぞろ異なことになったのう。貴殿、名は何という」

 

「私か?名乗ってもよいが、貴様に名乗る気は無い。理由はその身の内にでも問いかけるがいい」

 

「かかっ言ってくれるわい」

 

 心底愉快と思っていそうな臓硯の声が聞こえるが、もはや右から入って左に抜けている状態だ。

 目の前の剣士は腕が立ちそうだが、彼は自分がオマケだと言っていた。つまり、宝具は彼のではなく、少女のほう…期待できない。

 

 ふと、少女と目があった。

 血のような深紅の瞳に、白い髪に混ざる赤い何か。少なくとも良い物ではないだろう。彼女がセイバー?いや、違う。セイヴァー、と言ったか。若干ニュアンスが違う。

 

 ここで雁夜はようやくリリィのステータスを確認した。セイヴァーとは何なのか、それを見るために。

 

筋力E

耐久E

俊敏B+

魔力A---

幸運EX

宝具EX

 

 目についたのは幸運と宝具のEX表記だ。幸運EXは生来から運がいいというだけでは到底到達できない、それこそ、不可能を可能にしたという実績が無ければ獲得できないものだ。宝具EXに至っては神話や伝承レベルの何かを成し遂げた、ということ。

 であれば、セイヴァーとは、まさか救世主か?この少女が?

 

 

 

 ―――深淵を除くとき、深淵もまた…なんて大仰な話ではなく、雁夜が少女を見て思い悩むように、少女もまた思い悩んでいた。

 

 なにせ、廃宿で眠っていたらいきなり見知らぬ石造りの建物の中に居て、人間らしきものが目の前にいるのだから。

 

 …らしきもの、と言うのは、おそらくまだ人間だということだ。正確には、もう手遅れの老人と、まだ助かるかもしれない白髪の男性だ。穢れとは違う、しかし何かによって侵され、今も苦しんでいる二人。助けるべきだろうかと思い、身を乗り出したところを、黒衣の騎士がやんわりと押しとどめた。

 

「ふん、痛ましい物は随分と見てきたが、貴様ら二人して引けを取らんな。うちの白巫女の浄化は現在品切れ中だ。救いなら他所に求めろ」

 

「白巫女…浄化、ふむ。セイヴァーとはさしずめ救う者、救世主という意味かのう。雁夜よ、思いのほかハズレとは限らんのではないか?パラメーターはどうだ」

 

「…ほとんど最低ランクのEだ。だが、幸運と宝具…だけ、やたらと高い」

 

 もう一つ、魔力のステータスも高い、だが何らかの原因によってか劇的に低下しており、-が3つも発生している。これでは碌に術を発生させることは出来ないだろう。もしその原因を取り除くことが出来れば、宝具の内容次第ではこの聖杯戦争を勝ち残る可能性も、あるかもしれない。

 

「ふぅむ、幸運と宝具か。宝具だよりの聖杯戦争は、ちとまずいな。何せ相手は6人。切り札がバレては対策も打たれよう。格上ばかりの此度の聖杯戦争において、それは致命的。故に、のう、騎士殿。貴殿、あるいは其処な少女にも、聖杯に懸ける願いがあろうて。一つ、頼まれてはくれんかのう?」

 

「なるほど、ブレインは貴様か。まったくどうした物か、余り教育に悪いことをこの子に見せてくれるなよ」

 

「かか!それは困った。これは聖杯戦争。人と人との殺し合いを見せぬ訳にはいくまいて」

 

「…殺し合い、か。まあいい。貴様の立てる作戦とやらを聞かせてもらおう。その前に、場所を変えるぞ。ここは臭くて適わん」

 

「うむ、では応接間に案内しよう。雁夜よ、茶でも入れてくるがいい。サーヴァントと言えど、茶の一つはあった方が良かろうて」

 

 

 

 

 

 

 …いや、こういうのってむしろサーヴァントの役目では?と、雁夜は人数分のお茶(来客用)を淹れ終えた後で思い至った。とはいえ、そもそもサーヴァントがお茶の淹れ方を知っているかなど分からないし、ここは間桐邸。下手にうろつかれて蟲の餌なんて目も当てられない。これでいいのだろう。

 

そう自分に言い聞かせてお茶と茶菓子(羊羹)を盆にのせて客間へと向かう。

 

「あ、おじさん」

 

 

『あの人達と、また会えるの?』

『ああ、きっと会える。それはおじさんが約束してあげる』

 

 

気まずい。

アレほどの啖呵を切っておいて、お茶とお茶菓子をお盆にのせている姿を見られるのは、非常に、尋常ではなく気まずかった。だが、そこは間桐雁夜、大人である。そんな素振りを見せずに会話を切り出し自室に向かわせることなど容易そのものだ。

 

「桜ちゃん。まだ居たのかい。もう夜も遅いから」

 

「お盆持つの、手伝うよ?」

 

 …間桐雁夜は、度重なる無理な修練で、体のあちこちが言うことを聞かない状態になっている。特に左足は碌に動かないため引きずっているような形だし、左目もほとんど見えない。そんな状態でお茶の乗ったお盆を運ぶのは、確かに少し無理があった。

 

「………、うん。頼めるかな、桜ちゃん」

 

 間桐雁夜はプライドを蟲蔵に捨てた。

 

「今来ているのはおじさんの、仕事仲間になる人達なんだ。少し恰好が変かもしれないけど、魔術的な理由だから、怖がらないであげて欲しい」

 

「うん、わかった」

 

 黒衣の騎士の方は明らかにおかしな恰好ではあるが、異常ではない。だが、少女の方はそうではない。髪や足元からも謎の赤い触手が伸びた姿は、かなり痛ましい。そういうモノを見慣れてしまったからこそ、雁夜は悲鳴も嫌悪感も抱かずにいられた。だが、桜はどうだろう。

 

「未知数だな」

 

 そもそも合わせる理由などないのだ。怖がる可能性もあるし、扉の前でお盆は与っておくべきだろうか。

 

「おじさん?」

 

「いや、何でもないよ。ありがとう、手伝ってくれて。…最後に、扉だけ開けてくれるかい?」

 

「うん」

 

 お盆片手にドアノブを捻ることすら、この体では難しい。さりげなくお盆を返してもらい、扉だけ開けてもらうことにした。

 

 かくして桜とリリィは出会った。それは決して運命的な出会いでも、衝撃的な1シーンでも無かっただろう。だが、運命の糸は今、僅かに絡まった。

 

「ん、桜。なぜここにおる」

 

「サクラ?ああ、そこの少女の名か」

 

「?」

 

 客間には3人の人物がいた。真っ先に反応したのは遠坂桜を引き取り地獄に招いた張本人、そして得体のしれない黒衣の剣士。どちらも視界に入れば視線を向けずには居られないだろう。

 だが、桜は他の二人が一切視界に入らなかった。祖父から声を掛けられていたことにすら気づかなかった。

 白い少女を一目見た時、間桐桜は理解しがたい怖気に襲われた。

 遠坂家から出された時とも、蟲蔵を見た時とも、蟲に凌辱された時とも違う、形容詞し難い感情が桜の中で渦巻いて、弾けそうで、怖くなった。

 

「ひゅ‼」

 

 桜は悲鳴を上げた。目を合わせていたくない。これ以上、一秒たりとも一緒に居たくない。

 感情が渦巻く中で残った理性は逃走の二文字を弾き出し、桜は走って逃げだした。

 

「こうなったか…すまない、悪い子じゃないんだ。おそらく感受性が高すぎるせいだろう」

 

「成程、この子の中の穢れを感じ取れてしまったのだろう」

 

 パタリと閉じた扉から視線を切り、お茶と茶菓子を差し出す。ちらりと横目で見ると、落ち込んでいるように見えた。

 

「…」

 

 救世主、というクラスとステータスに表記される秩序・善の性質からして、彼女が悪人であるとは全く考えていない。だが、彼女の異様な姿と先ほど騎士が口にした「穢れ」という言葉。はたして彼女はいったいどういう英霊なのか…

 ことは己の命を懸けて臨む聖杯戦争の最も重要な部分だ。凡人である自分が足を引っ張らないようにするのは当然だが、サーヴァントに足を引っ張られる訳にも…

 

「…んぅ‼…!?!?!?」

 

「どうした?火傷でもしたか?…ああ、飲み食い事態が初めてだったか」

 

 …5,60℃のお茶でサーヴァントが火傷するわけが…と思ったところで衝撃的な言葉が飛んできた。

 飲み食いが初めてだと?

 

「失礼だが、飲み食いが初めて、と言ったか?ならどうやって生活していたんだ」

 

「ふむ、何分世界が違うため説明が面倒なんだがな、まあ軽く説明しておこう。

 …セイヴァーの元居た世界は「穢れ」と言う呪いが満ちた世界だった。 この呪いは雨として日夜降り注ぎ、あらゆる動植物は汚染された。人間も、例外ではない。彼女はそんな世界で唯一残った穢れを浄化できる「白巫女」という存在だ。数年前まで生命維持装置の中で成長し、そこから出てからは穢れを浄化して得る魔力を糧に生存してきた。なにせ、土地のすべてが汚染されていたからな」

 

「ほう、聞く限り地獄のような世界のようじゃが、何故救世主と呼ばれるような存在になったのだ?」

 

「なに、止まない雨を止ませた。それだけだ」

 

「ふぅむ」

 

 その言葉は「これ以上は詮索無用」という意図が出ていた。流石の妖怪もサーヴァント相手に意味もなく不興を買うような真似はしない。

 口を噤んだ我々を横目に、茶菓子として差し出した羊羹を爪楊枝で一口大に切って少女の口元に持っていく騎士。

 

 羊羹をみて、騎士をみて、羊羹をみて、騎士をみる。

 

「大丈夫だ。食ってみろ」

 

 十分に小さい一口大の羊羹をさらに小さい口で半分程齧る。

 

「⁉!?????‼‼」

 

「…くくっ」

 

 目をまん丸にして驚く少女を見て、騎士はこらえきれずという様子で小さく笑う。そんな様子に目もくれず、少女は残った半分もパクリと食べてしまう。

 

「俺の分も食べると良い、この世界は随分と食文化が豊かなようだ。それだけで来た甲斐がある」

 

 

端から見ればまるで父と娘のような関係に見える。毒気が抜けるというか、…地獄とやらを乗り越えて、なぜそこまで純粋無垢であれるのだろうか。

 

「さて、聖杯戦争の概要は大聖杯から概ね伝えられている。我々も、勝利と共に願う事がある。そちら側の陣容について、聞かせてもらおうか」

 

「カカ‼戦意有りか。一先ず安心であるな。ここで日和見などされては溜まったものではないわい」

 

 それから少女を脇に騎士と妖怪は戦略を立てる。魔術師としても、戦闘に関わる者としても未熟な自分の出番は無い。

 

少女の方を見ると、羊羹を爪楊枝で切って、口に運び、足をパタパタさせていた。初めての食事にしてはかなりお行儀が良いと言える。

さて、甘い菓子ばかりでは飽きるだろう。煎餅でも取りに行くか。

 

そう考えて、部屋を出る。

燃費は良いサーヴァントらしく、覚悟していた魔力を奪われる感覚もない。心なしか体の痛みもかなり和らいで…

 

「それは気のせいではないわよ」

 

 不意に、後ろから声が掛かる。女の声だ。

 急いで振り返るが、もとより無理の効かない体、バランスを崩して無様に倒れる羽目に、

 

「あまり大きな音を立てないでもらえるかしら。あの蟲男には気づかれたくないの」

 

 俺の体が床に叩きつけられる寸前、背後からしっかりと支えられ、音を立てることなく立ち上がらされる。

 魔術師の自宅に気取られずに侵入してきた!?まさか敵サーヴァントか凄腕の魔術師か…心の中では最大限に警鐘が鳴り響いている。だが、騒ぐことはしない。そんなことをするくらいならすぐさま令呪を使うべきだ。

 

 だが、まだ攻撃らしい攻撃を受けていない。相手が魔術師であるならば受け答えすら危険だが敵であるかどうかすらも分からない。同時に敵であったらならすでに詰みであるという思考も奔る。

 

「はあ、そんなに警戒しなくても、私はリ、…セイヴァーの…そうね使い魔よ」

 

 生気のない灰に近い顔色、赤い瞳、蔦のようなモノが絡んでうねる下半身。はっきり言って異形の女がいる。

 背後を振り返ると鉄製の面具をつけ、深い緑の外套を纏っている男。目の前の女に比べれば幾分まともだ。騎士と言うには装備が軽装のように見える。剣も帯びていない。

 

「さっきの蟲男は、余り味方と考えたくないの。だからこうしてあなたに声を掛けた。まだマシそうだから」

 

「…」

 

「とはいえ拠点としては好都合ね。水の属性で支配された蟲なんて、私の思うがままよ。今あなたを監視している蟲は、主に異常なしと伝えているわ。騎士が気を引いている内に、こちらも詰めるところを詰めておきましょう」

 

 一方的に告げた女は階段を下りていこうとする。何がどうなっているんだ。

 混乱し、つい立ち止まった俺の片腕が不意に持ち上げられる。

 

「あ、ちょ、痛でででで‼」

 

「大人しくついてこい。お前には利用価値がある。その価値を十分に発揮したのなら、我々も悪いようにはしない。なにやら思い立って部屋を出たのだろう。怪しまれない程度の時間で最低限の情報交換をする。いいな」

 

「あ、ああ。…あんたは」

 

「へニールと呼べ、あの女は…一先ず魔女と呼べばいいだろう。部屋にいる剣士も、そのまま騎士と呼んでおけ」

 

「名前、あったのか」

 

 そういえば、あの魔女も少女を名前で呼びかけていたように思う。何か、隠す理由があるのか?

 

「なに、単純な理由だ」

 

 そう切り出した男、へニールは俺の腕を支えながら館を進む。前を向く男の目は見えないが、見なくて正解だろう。

 

「お前たちのような屑共に名を呼ばれなどしたら、腸が煮えくり返ってしまうからな」

 

 その言葉には少女の尊厳を汚すすべてを許さぬ義憤に溢れていた。

 

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