リリィちゃんをFate/Zeroに突っ込んだ安易な奴   作:鎖佐

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独自解釈が火を噴きます。そして別に重要ではない。


8

 セイバーの監視にランサーを残し、すでに間取りを把握したアインツベルンの城をひた歩く。

 礼装によって補足した人影はセイバーの元に走る者と、ガチャガチャと喧しい音を立てて移動する者の二名。

 恐らくではあるが、セイバーの元へ向かっている者は先日の女性マスターだろう。そして品のない鉄擦れ音を立てているのが傭兵で間違いは無いだろう。

 

 歩けばそこいらから爆発と金属球が飛んでくる為、常に走査し続ける事は出来ない。しかし動きの連続性を考えればどこかに誘い込むように動いているのは用意に判る。追いかけっこに興じる趣味も時間も無いためケイネスは内壁を切り飛ばしながら足音の方へ向かっていく。

 

 6時方向(真後ろ)、8m。敵影あり。

 

「なに‼」

 

 あり得ない場所に突如現れた新手。咄嗟に振り返れば放たれる9×19mmパラベラム弾のフルオート射撃。ケイネスにとっては爆竹程度の脅威でしかない。事実それら鉛玉の数々は高密度圧縮流体によって絡めとられ、雨水のように地面に転がっていくのだから。

 故に、重要なのはそこでは無い。

 

「私の背後を取るとはな‼」

 

 自立走査は基本設定に従って人間の心拍、体温を計測するものだ。特に心拍はどれだけ音を小さくしようと一定のリズム。これを隠蔽することはかなり難しい筈だ。

 つまり、己の裏を掻ける程度には学がある猿だという事。

 キャリコM950の一マガジン分が打ち尽くされ、弾幕が切れると共に自動攻撃。速度は音速を超え、先の弾丸より遥かに速い。それが胴体を断ち切るように一閃、頭をカチ割るように二閃。さらに跳躍による回避先を仕留めるための3閃目を待機状態にしてチェックを掛ける。回避・防御を選択しても次手で終わる。そう確信できる盤面だ。

 

「Time Alter Double Accel」

 

 しかし。そうはならなかった。

 一撃目と二撃目を避けるために男は跳躍。放たれる3撃目を猿は壁を蹴りこむことで更に跳躍。高く空中に出た男はリロードを終えた短機関銃を鳴らす。自動防御が反応し、攻撃が止まる

 

 目の前の男は不可避の盤面を避け、またしても爆竹を鳴らしながら壁裏へと逃亡する。ケイネスは呆然とその姿を眺めていた。

 呆気にとられたような表情で、素早く頭脳を回転させ、結論する。

 

「固有時制御、それを二小節で扱うとは。――――残念でならん」

 

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは魔術師だ。魔導という学問への敬虔たる学徒だ。

 今の魔術が一体どういう物か一目で理解出来る程に優れた魔術師だ。

 

 時間操作に類する物体の固有時間。それを自己体内に限定し、さらに固有結界化。これにより現実と自身に流れる時間にギャップを生みだす。

 

 つまり、先の3秒間の攻防は奴にとって6秒間の戦闘であり、1秒後に殺す筈だった3撃目はその時点で2秒間行動する猿には絶対に当たらないのだ。

 単純な加速ではない。因果律にすら干渉する極小の大魔術。それが、アレだ。

 

「魔術の薫陶を受けておきながら、あのような玩具に頼るとは。残念で、ならない」

 

 弾丸という固有時制御の影響を受けられない玩具では、絶対に月霊髄液の自動防御を突破出来ない。

 固有時制御の魔術がある限り、男を狙った攻撃は全て回避される。

 一見膠着状態のように見えるが、そうではない。自分はたとえ24時間であってもこの月霊髄液を起動状態にしておけるが、あの男の固有時制御は使うたびに修正力が掛かるだろう。3秒間で6秒生きたという事実は間違いなく修正対象だ。

 

「或いはそれがあの男の限界か。哀れだな。実に…」

 

 固有時制御の影響下のまま攻撃手段を持つことが出来れば、或いは脅威足り得た。だがその手段が無いのなら。最早脅威ではない。

 

「では、キツネ狩りの再開と行こうか」

 

 

 

 

 

異様な緊張感が満ちていた。

不審な動きがあればすぐ様に剣を振りぬくだろう。セイバーは一切の力みなく自然体で剣を構えている。

対する男は今にも振り抜かれそうな(不可視の)剣を見ながらも、極めて自然体で壁に背を預けている。

心理的に余裕が無いのはセイバーだ。それも当然。本来守るべきマスターが単独で戦闘状態にあり、しかしもう一人の護衛対象であるアイリスフィールが後ろにいるのだ。ここに居続けることも、マスターの元へ向かうことも、なんなれば目の前の男を打ち倒すことすらも悪手。最悪の状況とはこれ以外に無い。

 

「…セイバーよ。これはほんの些細な思いつきで、所謂世間話の一つなのだが、聞いてもよいか」

 

「…答えるかどうかは質問次第だ。当然真を答えるかどうかも定かではないが、貴様の口を封じる手段も、私には無い。好きにしろ」

 

「ふ、先の一戦とは違って随分と余裕に欠ける。だが、だからこそ見えてくる物がある。…先との違いはやはり、我がマスターが其方の傭兵を狙っている。という一点だ。だからこそ思いついてしまう。まさか、貴様のマスターは件の傭兵の方ではないか?」

 

真実ズバリ。目の前の英霊は見事にこちらの奸計を見破った。とは言えセイバーはこの程度で狼狽えることはない。

 

「ふん、所詮は一時の思いつきだな。その件の傭兵は我がマスターの夫にあたる。まさしく私が守るべき一人だ」

 

「なに?そちらもご夫妻での参加だったのか」

 

「え、ええ」

 

 このような戦場に妻を連れてくるメリットは本来ない。ランサーの発言は正しく失言ではあった。だが、それを拾えるような人生経験がアイリスフィールにはない。そして、真実ズバリを言い当てられて眉目を変えないでいられる程にも、強くなかった。

 

「そしてご両名よ。謝罪する。そちらのご婦人の反応で、先の当てずっぽうが当たっていることが分かってしまった」

 

「っ‼」

 

 唇を噛むのはアイリスフィール。この聖杯戦争において最も未熟な参加者である、という自覚はある。だからこそ切嗣の足を引っ張ることだけはしたくなかった。だが、ここにはもう一人、騎士の王にして老獪なる王が居る。知られてしまったのなら利用するまで。

 

「であれば、どうする。今まさに聖杯戦争の停戦命令中にそちらのマスターが我がマスターを殺害しようとしているのだとして、貴様はどうする」

 

「ふむ。成程難儀なことになった。下手をすればそちらのマスターに令呪を使われ、一転窮地に陥る可能性も有る、という事か」

 

 そう言いながら男はひゅるりと何の気負いもなく赤い長槍を構える。戦意は見られないが、冗談でもない。真剣では無いが本気の構えだった。

 

「何のつもりだ、ランサー」

 

「なに、令呪による転移が発生したとして、何の前兆もなく忽然と、とはいかないだろう。であればその瞬間にこの『破魔の紅薔薇』を触れさえさせられれば、中断させることも出来る。そして、後ろにいる女性もまた其方の護衛対象なら避けるという選択肢も、ない」

 

「っ、貴様‼」

 

「誓って言うが、当てる気は無い。だがそれでも其方は避けられない。そういう問題ではない。後ろに護るべき人が居て。私達騎士に退くという選択肢など、端から存在しない」

 

「聖杯戦争から除名される可能性も有るのだぞ‼」

 

「もとよりこれは我がマスターの聖杯戦争。マスターが戦えと言うのなら戦い、邪魔をするなと言うなら控え、邪魔をさせるなと言うのなら万難を排する。そして、勝利せよというのなら、必ずや勝利を。それが、私の誓いだ」

 

 マスター自身が敗北したのだとしても、失格になったのだとしても、それでいい。これは、マスターの戦いだから。それが真にランサーの心中であった。

 

「貴方は…聖杯が欲しくないのか」

 

 それは、セイバーの抱えた弱さからの発露

 

「ああ、すでに私の願いは叶っている」

 

 その言葉が、セイバーには強さに見えた。まるで、聖杯に頼らなければならない自分を咎めているようで。

 

「────アイリスフィール。申し訳ありません。」

 

「なに?セイバー」

 

「ここで、ランサーを倒します」

 

 決断だった。ランサーとは正しく正々堂々の一騎打ちにて勝敗を決すると、そう騎士の誓いを交わした。

 だが、王として、その誓いを破らなければならない。そう判断した。

 

「いいの?セイバー」

 

「はい。確かに、私はランサーと尋常の勝負にて決着をつけると誓った。しかし、それは貴女方へと誓った勝利への誓いより優先するものではない。ここで決着を付けなければなりません」

 

「そう。…セイバー」

 

 闘気が高まり、風が逆巻く。ランサーはすでに跳躍により間合いを開け、2槍を構えて真剣の構え。

 戦いの火蓋は、

 

「ガツンとやっちゃって‼」

 

 アイリスフィールの声援と共に落とされた。

 

 

 

 

 

聖杯戦争

聖杯そのものに雨生龍之介にとってはさほど興味のあるイベントではない。だが、どうやら推しの一人である青髭の旦那はその優勝賞品である聖杯が欲しいらしい。自分に出来ることは数少ないだろうが、出来る限りの協力はしたいと思う。

 

だが、雨生龍之介にとって最重要なのは聖杯戦争というイベントではなく。参加者。

最推し、セイヴァーだ。

 

スランプを克服する為、余り気乗りしないながらも儀式殺人なる物を行ったが、その甲斐はあった。あり過ぎだった。

死に至るまでの感情の変化。召喚した悪魔、青髭からもたらされたインスピレーションを最高に刺激し、4日程創作活動の為眠れなかったほどだ。しかも青髭の旦那は悪魔らしくも魔術が使え、芸術の幅が一気に広がった。

 龍之介にとって、クリスマスプレゼントとお年玉と誕生日プレゼントが一篇にやって来たような物。寝れる訳が無かった。

 

 青髭の趣旨に合わせて暫くは子供を中心に題材とし、「体内の神秘を晒しながら生きている」をコンセプトに創作を続けた。

 内臓の美しさ、小さな体にたくさんの臓器が詰まっている。成長共にこれらのサイズも変わっていくのだろうか。だとすれば、この切り開いた体のまま十数年と経過すれば、その成長性も見られるのだろうか。成長記録も撮らなければ‼人一人の人生を費やして完成される超大作‼

 創作意欲が尽きることは、無かった。

 

そんななか、青髭が水晶を覗きながら何かを見ていた。

 

「なーに見てんの旦那ぁ」

 

「おや、リュウノスケ、丁度良いところに。これがわたくしめが召喚された聖杯戦争なるいべんとの様子でございます。休憩がてら、少し見てみませんか?」

 

「おー‼みるみる‼」

 

 画材工具を最近作った棚に戻し、一撫でしてから旦那が用意してくれた椅子に座る。うむ、座り心地も処女作にしては中々である。

 

 そこに映っていたのは吃驚仰天の大立ち回り、一級SF映画ですら見られないような大迫力のアクションが、リアルにあるのだ。これが興奮せずにいられるだろうか。

 だが、今の俺はその時の俺にこういうだろう。「こんなところでそんなに興奮してんなよ。本番は、ここからだぜ?」って。

 

 

 

 少女が、いた。

 雪のような、花のような、月のような、真珠のような。

 そんな穢れを知らぬ乙女があの穢れを凝縮したかのような者共を支配して戦場を駆け抜け、リアル吃驚人間たちに一泡吹かせていた。

 痺れた。惚れた。恋焦がれて。我を忘れた。

 俺は芸術家だ。美しい物を見たのなら。感情を動かされたのなら、万の言葉を尽くすより先に作品を作る性だ。

 いつの間にか青髭の旦那はどこかに出かけていて、落胆しながら帰って来ていた。だが、今の自分には慮って上げられそうにない。

 

「旦那‼帰ったんだ‼」

 

「ええ、リュウノスケ。ただいま戻りましたよ」

 

「なんか落胆してる?」

 

「いえ、いえ、落胆している、と言うのは事実です。ですが、わたくしめの使命に依然変わりはありません。ただ、己の目が曇っていたに過ぎないのです」

 

「ならさ、ならさ、予定通りこの聖杯?戦争ってのに噛むんでしょ?」

 

「ええ、もちろんです。ですが…」

 

「だったら最優先目標はあの子だよ‼もう一目でぞっこん‼インスピレーションが湧いて、溢れて、止まんねぇ‼」

 

「リュウノスケ。そのことについてです」

 

 青髭は龍之介の両肩に手を置き、宥めるに語る。

 

「貴方が例の少女に焦がれているのは分ります。私も、或いは聖処女ジャンヌに出会う前であれば、同じように思ったでしょう。しかし、だからこそ分かります。彼女こそ、聖杯戦争における最大の障壁です」

 

 青髭は未だかつてなかったほど冷静に、正確に分析し、最大の脅威を語る。龍之介もまた、真剣に聞きに徹する。

 

「彼女を打ち倒すためには全力を尽くさねばなりません。遊びが介在する余地など無いのです。なにより、彼女もまたサーヴァント。肉体を持たない影法師。残念なのは理解出来ます。しかし、彼女を作品にすることは出来な」

 

「間違ってるぜ、旦那」

 

 真剣に聞いた。真剣に考えた。真剣に向き合った。真剣に生きてきた。

 だからこそ言える。

 

「確かに俺達は傍から見たら遊んでいるように見えるかも知れない。でも俺達は真剣に、『美』っていう奴と向き合ってきた。ずっと、ずっとだ。今更、無視なんて出来ねえ。忘れられる筈がねえ。だって綺麗で美しい物がそこにあるんだから。だから、俺達は俺達の道を歩くべきなんだ。ここで遊びを捨てるなんてそれこそ邪道。俺達の正道を、真っっっすぐに突き進もうぜ」

 

 肩に置かれた手に寄り添って真っすぐ述べる。彼らを取り囲むは数十に及ぶ視線。雨生龍之介が作り上げた外道の美、最醜悪の造形達。しかし、これが彼らの美であり、傑作であり、自信作。

 ここに新しい純白の作品を飾り、完成とする。その意志は強固。

 

「肉体が無いから作品に出来ないなんて、旦那が言う事じゃねえや。俺に題材の感情っていう画材を教えてくれたのは、他ならぬ旦那自身じゃねえか」

 

「感情…

 つまり、リュウノスケ。あなたは…」

 

 

「ああ、あの聖女の感情を‼表情を‼千変万化させて釘付けにするような‼そんな作品を作り上げて……最後にはあの子自身が作品に加わる…タイトルは…」

 

想像する。最も美しい死を。

想像する。いずれ消えてしまう物を残す方法を。

想像する。己に出来る事を、彼に出来る事を。

想像する。設計図、工程、材質、施工、そして、完成を

 

 

創造する。最も美しい美を。

 

 

 

「チャペル・オブ・グローリー」

 

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