悪魔と魔女の物語   作:ゾキラファス

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 今回、視点が結構移り変わり激しくて読み辛いかもしれません。ごめんなさい。
 それと誤字報告、いつも本当にありがとうございます。

 追記 作者が勘違いをしていたのと、色々とご指摘がありましてので、前書きや本分の文章を色々変更しました。ご指摘、本当にありがとうございます。

 更に追記 最後の展開を編集しました。


VSグエル 2

 

 

 

 

 

「これより、双方合意のもと決闘を執り行う。勝敗は通常通り、相手モビルスーツのブレードアンテナを折った方の勝利とする。立会人は、ペイル寮のエラン・ケレスが務める」

 

 決闘委員会のラウンジでは、エランが決闘の音頭を取っていた。そして第7戦術試験区画に、4つのモビルスーツコンテナが凄い勢いで運ばれる。それは一斉に開き、中から4機のモビルスーツが出てきた。それにしてもこの勢い、中に入っているモビルスーツとパイロットはどうして平気なのか割と疑問だ。訓練の賜物なのだろうか。

 

『LP041、スレッタ・マーキュリー、エアリアル』

 

『LP042、三日月・オーガス、バルバトスルプス』

 

『KP001、グエル・ジェターク、ダリルバルデ』

 

『LP008、ジュリエッタ・ジュリス、レギンレイズ』

 

 

『出ます!』『出るよ』『出る!』『行きます』

 

 

 決闘に参加した4人が、まるで古代の戦場のように名乗りながらモビルスーツコンテナから自分の愛機を出撃させる。こうして、第7戦術試験区画に4機のモビルスーツが現れた。これで役者は揃った。後は決闘で全部決めるだけだ。

 

 余談だが、決闘前に名乗るという文化は地球の東洋のみにしかなかったりするらしい。

 

「両者、向顔」

 

 エランがそう言うと、決闘に参加している4機のモビルスーツのコックピットに相手の顔が映し出された。そしてスレッタが、決闘前にミオリネに教わった口上を言う。

 

『えっと確か、勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず?』

 

『…操縦者の技のみで決まらず』

 

 自信なさげに言うスレッタに、グエルは少しキレる。それくらい、ちゃんと覚えておけと。

 

『「ただ、結果のみが真実」』

 

「フィックスリリース」

 

 そしてその苛立ちも、この決闘で晴らそうと決めた。

 

 

 

『じゃあスレッタ。俺はあっちの緑の相手するから』

 

「うん。気を付けてね。三日月」

 

『うん。スレッタも油断はしないでね』

 

「勿論」

 

 三日月はスレッタに一言入れると、バルバトスをエアリアルの全面に立たせて、決闘相手2機に突っ込む。そしてスレッタも、愛機エアリアルの武装を展開し、バルバトスを援護するようにした。

 近接が得意なバルバトスが前衛で、射撃が得意なエアリアルが後衛というかなり理想的な陣形。

 

「絶対に勝って、ミオリネさんと三日月と学校に残ってみせる!」

 

 自分に言い聞かせるように、スレッタは鼓舞する。全てはこの決闘に勝って、憧れの学校生活を送る為に。

 

 こうしてスレッタと三日月、そしてミオリネの運命を懸けた決闘が始まるのだった。

 

 

 

『おいジュリエッタ。さっき言った通り、お前は横から俺を援護しとけ。あの2人は俺がこの手で必ず倒すからな』

 

『はいはい。2度も言わなくてもそうしますよグエル先輩。というかそっちこそ、また無様に負けないよう気を付けてくださいね』

 

『んだとてめぇ!?』

 

 スレッタと三日月がお互いを激励しあっていたというのに、グエルとジュリエッタは決闘が始まったというのに口論をしていた。

 

(兄さん、どうか冷静になって戦ってくれ…)

 

 そして弟のラウダは、それを心配そうな目で見ている。そもそもラウダは、グエルのパートナーにジュリエッタが選ばれたことに反対だった。スレッタと三日月がコーヒーとチョコレートくらい相性が良いとするならば、グエルとジュリエッタはスイカと天ぷらくらい相性は最悪だからである。

 この2人、パイロットとしても技量は間違いなく学園でもトップレベルなのだが、本当に兎に角馬が合わない。そのせいで、これまで何度も衝突してきたのをラウダは知っている。こんな即席のコンビで勝てる程、スレッタと三日月は弱くないだろう。

 自分だったら、グエルのパートナーには自分かフェルシーを選んでいるだろう。そうすれば、グエルとの息もばっちりで、あの2人相手にも負けないだろうし。

 

(それだけじゃない…兄さんのモビルスーツには…)

 

 それにグエルが乗るダリルバルデには、ある細工がしてある。父親のヴィムが、グエルに無断で仕込んだのだ。これもラウダはどうかと思っている。だって自慢の兄のモビルスーツの腕前は、本当に凄いのだから。ならばしっかりと、本人の力で戦わせるべきなのに。

 

(だが、もう兄さんを信じて見守るしかない!)

 

 しかし今更何も出来ない。もう決闘は始まってしまったのだから。ラウダは不安を感じながらも、兄の勝利を信じる事にした。

 

 

 

「いた」

 

 三日月はグエルのダリルバルデと、ジュリエッタのレギンレイズを見つける。そして背中のスラスターを吹かし、一気に接近した。

 

「まずは赤より緑だ」

 

 見たところ、赤いモビルスーツのダリルバルデには射撃武器が見当たらない。対して緑のモビルスーツのレギンレイズは、右手にライフル、左手に小型のシールドのようなものを装備している。ならば、先ずは射撃武器を持っている方を排除するべきだろう。向こうもそれを察したのか、バルバトスに向けて撃ってきた。

 

「当たる訳ないじゃん」

 

 だがまだ距離がある。相手も当てる気では撃ってはいないだろう。恐らく、これは牽制だ。なので三日月は、普通にビームを避ける。

 

 その時、三日月の視界に赤い影が映る。それは、バルバトスに接近してきたダリルバルデだった。

 

「ちっ」

 

 三日月は舌打ちをしながら、ダリルバルデの蹴りを避ける。どうやら、グエル達も自分達と同じような作戦を取ったようだ。普通ならば、先ずは目の前にいるダリルバルデの相手をするべきだろう。

 

 しかし三日月は、自分の決闘パートナーを信じている。

 

『くっ!!』

 

 そして三日月が信じていた通り、エアリアルのビームライフルがダリルバルデに向けて発射される。その攻撃を、ダリルバルデは距離を取りながら避けていく。

 

「ん?」

 

 だがそのダリルバルデの動きに、三日月は違和感を覚えた。何と言うかダリルバルデの動きが、どこか機械的な動きに感じる。前に見た決闘とは全然違う動き。もしかすると、機体が不調なのかもしれない。

 

「別にどうでもいいか」

 

 だがそんな事どうでもいい。今はスレッタがダリルバルデを抑えているあいだに、レギンレイズを倒せばいいだけだ。そして三日月は、レギンレイズ目掛けて一気に接近をする。

 

 

 

 一方、グエルの決闘パートナーに選ばれたアリアンロッド寮所属のパイロット科2年生、ジュリエッタ・ジュリス。彼女は今、とっても不機嫌だった。

 

(本当に迷惑です。会社同士のいざこざが無ければ、こんな決闘やる必要もなかったというのに)

 

 そもそもこの決闘自体、ジュリエッタには関係が無い話。だって元々は、グエルが決闘に負けたのをあーだーこーだ言って無効にし、再戦しているだけなのだから。やるのなら、グエルだけでやってほしい。もしくは、ジェターク寮のみで。

 だというのに、こうして何故か自分が決闘に参加している。ハッキリ言って、凄く迷惑だ。出来る事なら、こんな決闘に参加もしたくない。

 だが会社の関係上、ジュリエッタの所属会社はジェターク社に逆らえない。内心嫌でも、やるしかないのだ。

 

(さっさと終わらせますか)

 

 しかし今は決闘の最中。これ以上考えても無駄なので、ジュリエッタは三日月が乗るバルバトスの方へと向かう。彼女自身、スレッタと三日月の退学も、グエルのプライドもどうでもいい。だって自分は巻き込まれただけなのだから。

 しかし、やるからには勝つつもりで行く。いくらグエルと馬が合わないとしても、態と負ける気はない。そんな八百長は、自分が許せないから。

 

(それにしても、あれが噂のガンダムフレームですか)

 

 ジュリエッタは、こちらに接近してくるバルバトスを見る。その手には、モビルスーツの身の丈程のソードメイス。数日前に、フロント管理社のデミギャリソンを3機も破壊した武器だ。まともに食らったら、ひとたまりもないだろう。

 それにバルバトスは先程の射撃を避け、更にダリルバルデの攻撃も避けた。あれはパイロットの腕が良いだけでは説明できない。モビルスーツの性能も中々のものだろう。流石伝説のモビルスーツというところか。

 

(しかしいくら伝説のモビルスーツとはいえ、所詮は300年前の骨董品。この新型機のレギンレイズに敵う訳ありません。速攻で終わらせます)

 

 だがあんなモビルスーツ、既に埃を被った大昔のモビルスーツだ。今ジュリエッタが乗っている最新鋭機、レギンレイズの敵じゃない。ジュリエッタ自身、三日月がデミギャリソンを破壊したのを見てはいたが、あれはフロント管理社が油断していたからだろうと思っている。まさか学生が、いきなり自分達を攻撃してくるとは思わないだろうし。

 

「先ずは腕!」

 

 ジュリエッタのレギンレイズがバルバトスを再び射程に捉え、ビ-ムライフルをバルバトスの右腕に向けて発射する。同時に頭部を展開させ、索敵センサーを起動する。これで正確な射撃が可能となった。

 最初に武器を持てなくしてしまえば、相手の動きはかなり制限される。それに、バルバトスの腕には腕部ビーム砲が装備されている。腕を破壊すれば遠距離攻撃も出来なくなるというジュリエッタなりの考えだ。あとは、遠距離からビームライフルで頭を狙えばいい。

 

(くっ!思ってたより速い!?)

 

 だがそれは、攻撃が当たらないと意味がない。レギンレイズが発射したビームライフルの攻撃を、バルバトスは左右に動きながら綺麗に避けていく。試しに偏差射撃も行ってみたが、それすら全く当たらない。こっちは索敵センサーと連動しているというのに、当たらない。

 

「だったら近づくまで!」

 

 ならば、もう少し接近して撃てばいい。ジュリエッタはレギンレイズのスラスターを思いっきり吹かして、一気にバルバトスに接近する。勿論、バルバトスも簡単に接近させる気はない。両腕に装着されている腕部ビーム砲を、レギンレイズ目掛けて撃ってくる。

 だがそんな攻撃に当たるほど、ジュリエッタは弱くない。先程の三日月のように、攻撃を避けながら接近する。

 

「そこ!」

 

 そして遂に、バルバトスまで100メートルという至近距離にまで近づけた。これだけ接近できれば、そう外す事は無い。ジュリエッタはそう確信し、ビームライフルを発射する。発射されたビームは、真っすぐにバルバトスの腕に向かっていく。これでバルバトスの腕を一つ落とす事が出来る。だが、そうはならなかった。

 

「な!?」

 

 何故ならバルバトスは、そのまま背中のスラスターを使い、上へと上昇したからだ。とんでもない推力だ。そしてそのまま、バルバトスは腕を大きく振り被ってソードメイスをレギンレイズ目掛けて振り下ろす。

 

「これくらい!」

 

 しかしジュリエッタも、これでやられる事は無い。素早く後方へ下がり、バルバトスの攻撃を避けた。

 

「グレイズとは違うんです!」

 

 もしこれが自社が開発し販売した旧式のグレイズだったら、機体の反応速度が足らずにやられていただろう。だが今乗っているのは新型のレギンレイズ。これならば、伝説と言われたモビルスーツでも負けない。

 攻撃を避ける事に成功したジュリエッタは、すかさずレギンレイズの左腕に装備しているツインパイルをバルバトスに向ける。すると、ツインパイルの先端が発射された。それはそのまま、バルバトスの腕に絡みつく。

 実はこのツインパイル、先端部分が鉤縄のようになっているのだ。相手を一時的に拘束し、その間に攻撃をするというコンセプトである。そしてそれはコンセプト通りに、バルバトスの動きを一時的に止めた。

 

「これで動きは止めました。あとはブレードアンテナを」

 

 そう言うとジュリエッタは、ビームライフルをバルバトスの頭部に向ける。あとはこのままビームを発射して、バルバトスを失格にするだけだ。

 

 しかしその瞬間、

 

「な!?」

 

 なんとバルバトスはツインパイルのワイヤーを掴み、それを思いっきり投げたのだ。結果、レギンレイズは宙を舞う。更にその衝撃で、ツインパイルがバルバトスから外れてしまった。

 

「何ですかその出力は!?」

 

 レギンレイズは比較的軽量に設計されているが、それでも32トンある。それを片腕で投げ飛ばすなど、とんでもない出力だ。本当に決闘用の出力が疑いたくなる。しかし三日月。ただ投げ飛ばしただけではない。

 

「ぐう!?」

 

『ぐは!?』

 

 狙いは、エアリアルに2本のビームジャベリンを持って攻撃をしようとしていたダリルバルデだ。そしてそれは見事命中。レギンレイズとダリルバルデは激しく衝突し、転倒。

 

『スレッタ、大丈夫?』

 

『うん。ありがとう、三日月』

 

 実は三日月、ジュリエッタと戦いながらも、スレッタの状況を常に把握していた。そして今、ダリルバルデがエアリアルに接近したのを見て、このような真似をしたのだ。

 

 そう。この決闘は2対2である。

 

 片方がピンチになれば、当然それを助ける事も可能だ。更にスレッタと三日月は、10年以上の付き合いがある。これくらい、いちいち連絡をしなくても目線の動きだけでなんとでもなるのだ。

 

『てめぇジュリエッタ!何しやがる!?』

 

「こっちの台詞ですよ!あなたなら今のくらい避けれるでしょ!?何をやってるんですか!?おかげでこっちのスラスターの出力が下がってるじゃないですか!?」

 

『うるせぇ!!やむにやまれぬ事情があるんだよ!!』

 

「何ですかそれは!?」

 

 一方でジュリエッタとグエルはこれだ。決闘中だというのにこれである。流石ラウダがお墨付きを与える程の相性の悪さ。

 そしてそんな瞬間を見逃すほど、スレッタと三日月は甘くは無い。ダリルバルデとレギンレイズに向かって、それぞれビームを発射する。

 

『「っ!?」』

 

 それに気が付いた2人は、直ぐにそこから移動。こうして瞬時に動ける辺り、やはりパイロットとしての腕は確かなのだろう。

 

『あ、外れた』

 

『ちっ、避けたか』

 

 残念そうに言うスレッタと三日月。だが直ぐに2人は同時に動き出す。

 

(くっ!1度距離を…!)

 

 このままではマズイと思ったジュリエッタは、1度ここから離れる事にした。だがその瞬間、バルバトスはソードメイスを投げ、自分目掛けて飛んできた。先程ダリルバルデと衝突してしまったいせいで、スラスターの出力が下がっているので、簡単には避けられない。

 

「それくらい!」

 

 しかし避けれないのなら、弾けばいいだけだ。ジュリエッタはレギンレイズのツインパイルで、ソードメイスを上に弾き返す。その衝撃で、レギンレイズの左腕が少し歪む。だがそんな事を気にする時間も惜しい。ジュリエッタは直ぐに前を向き、反撃を開始しようとした。

 

「え!?どこに!?」

 

 しかし目の前に、バルバトスの姿が無い。

 

「まさか、上!?」

 

 ジュリエッタが上を向くと、そこにはスラスターを吹かして宙を飛ぶバルバトスがいた。そしてバルバトスは、ジュリエッタが上に弾いたソードメイスを手に取る。そのまま腕に装備されている腕部ビーム砲でジュリエッタを撃ちながら、バルバトスは再びソードメイスを投げたのだ。

 だが今度は、ジュリエッタが標的では無い。ソードメイスの向かう先は、グエルのダリルバルデだ。

 

『っ!?』

 

 グエルが三日月の攻撃に気が付くが、もう遅い。これでは避ける暇も無いだろう。だがダリルバルデに搭載されている意志拡張AIが、とっさに肩に装備されているドローン兵器のアンビカーの1つを盾にする事に成功。

 結果、ソードメイスはダリルバルデには届かず仕舞い。グエルは何とか命拾いをしたのだった。

 

(待って。どうして?)

 

 この時、ジュリエッタの頭に疑問が浮かぶ。どうして今三日月は、自分ではなくグエルを狙ったのか。あのまま自分を攻撃をすれば、撃破できたかもしれないのにどうしてグエルを狙ったのか。

 

「まさかっ!?」

 

 その瞬間、ジュリエッタは直ぐにレギンレイズを横に動かす。

 

「!?」

 

 そして動いた瞬間、レギンレイズの左肩のアーマーをビームが掠る。

 

『うっそ!?外した!?』

 

 この時、レギンレイズの後ろには、エアリアルがビームライフルで狙っていたのだ。もしもジュリエッタがとっさに動かなければ、今のでやられていただろう。

 

(なんてコンビネーションですか…)

 

 全く通信をしていないというのに、このコンビネーション。この2人は、連携という点ではグラスレーに匹敵か、それ以上かもしれない。

 

「これは、マズイですね…」

 

 ここに来てジュリエッタは、ようやく自分とグエルが相手にしているのが、とてつもない強敵であると認識するのだった。

 

 

 

「これは、もう勝ちじゃないの?」

 

 決闘を観戦しているミオリネは、素直にそう思う。なんせスレッタと三日月のコンビネーションは抜群。お互い全く通信をしていないのにこれである。

 対してグエルとジュリエッタは最悪だ。今もスレッタと三日月相手に上手く立ち回れていない。おかげで、どんどん追い詰めている。

 

「それになんか、グエルの奴動きが変じゃない?」

 

 あとなんか、グエルのモビルスーツの動きがおかしい。とても元ホルダーとは思えない。いくらジュリエッタと仲が悪いと言っても、全くコンビネーションを組もうとしないなんておかしい。まるでジュリエッタが邪魔で、自分1人でなんとかしようと言わんばかりの動きだ。

 だがそんな真似をしていれば、スレッタと三日月には勝てないだろう。これはもう勝ったと言えるかもしれない。

 

「でも、ジェタークがこれで終わるとは思えない…」

 

 しかし同時に、ミオリネには不安がある。ジェターク社は今回、態々新型機を投入している。それにジェターク社CEOのヴィムもこの試合を観戦しているという。そこまで本気で挑んでいるジェターク社が、これで終わるとは考えにくい。

 

「杞憂で終わって欲しいけど…」

 

 そう言うミオリネだが、恐らくそれは無理だろうと思うのだった。

 

 

 

 決闘が始まって以来、常に相手2機に追い詰められているグエルとジュリエッタ。このままでは、本当に負けてしまう。今だって、エアリアルのガンビットの援護を受けたバルバトスが、自分達に近づいてソードメイスを振るう。何とも戦いにくい相手だ。何か打開策を考えなければ、これで終わってしまう。

 

『おいジュリエッタ。提案だ』

 

「何ですか?」

 

 ここでようやくグエルが口を開いた。

 

『このままだとマジで負ける。だから、お前はあのチビのバルバトスとかいうモビルスーツの相手だけをしろ。俺は水星女だけを相手にする』

 

 そしてジュリエッタに提案をする。要するに、それぞれが1機ずつ相手にしようと言うのだ。

 

「……いいですよ。乗りました」

 

 その提案に、ジュリエッタは乗る事にした。そもそもこのままでは、本当に何もできずに負けてしまう。そんなの、自分のプライドが許さない。

 

『じゃあ行くぞぉ!!』

 

 グエルの合図と同時に、グエルがダリルバルデのスラスターを思いっきり吹かす。同時に、ジュリエッタもレギンレイズのスラスターを吹かした。そしてそのまま、バルバトスにぶつかりながらエアリアルから距離を取った。

 

『ぐ!?こいつ…!』

 

 まさかタックルをしてくるとは思わず、三日月は反応が遅れてしまう。ある意味これで、一矢報いたと言えるかもしれない。

 

「この距離なら!」

 

 バルバトスにタックルをし、エアリアルから距離を取ったジュリエッタは、バルバトスを蹴り飛ばす。おかげで、バルバトスは少しだけふらついている。

 そしてすかさず、ビームライフルを発射。狙いはバルバトスの右肩。この距離なら外さないし、間違いなく撃ち抜けるだろう。これでバルバトスは右腕を失う。

 

 だが生憎、目の前のバルバトスは普通のモビルスーツでは無い。最強と言われた、伝説のガンダムフレームなのだ。

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 つい、そんな間抜けな声を出すジュリエッタ。今、彼女は目の前で起こった出来事が理解できずにいた。

 

 なんせバルバトスの右肩に当たったと思ったビームが、突然弾かれたのだから。それもバルバトスが全くの無傷という程に。

 

「今のは一体?まさか、ライフルの故障?」

 

 あまりの事態に、隙が生まれてしまった。そして三日月が、それを逃す事は無い。そのまま右腕を、思いっきりレギンレイズ目掛けて右に振るう。

 

「まずい!」

 

 ジュリエッタはとっさにスラスターを吹かして後退。なんとかソードメイスを避ける事に成功する。だがその瞬間、バルバトスは左腕の腕部ビーム砲を発射。そしてそれは、レギンレイズのビームライフルに当たってしまう。

 

「くっ!」

 

 バルバトスのビームが当たったライフルを、ジュリエッタは直ぐに放棄する。これでもう、ライフルは使えないと判断したからだ。

 

「何ですか…?今のは…?」

 

 未だ混乱しているジュリエッタに、息をつく暇も与えずバルバトスが襲い掛かって来る。

 

 

 

 決闘委員会 ラウンジ

 

「うっそ!?ビームを弾いた!?」

 

「いくら決闘出力に調整しているとはいえ、ビーム兵器をあの至近距離で食らって、あそこまで完全に弾くなんて…」

 

「まさか、新型のビームコーティング…?シン・セーはそんなものの開発に成功している?」

 

 そうやって騒いでいるのは、決闘委員会のメンバー。彼らは今、レギンレイズのビームの直撃を食らったにもかかわらず、それを弾いたバルバトスに驚いている。

 だってビームを弾くなんて、今研究中のビームコーティングしかないからだ。ダリルバルデのシールドにも似たような物が組み込まれているが、流石に至近距離で撃たれると貫かれる。

 だがバルバトスは、あれだけ至近距離だったにも拘わらず、完璧に弾いた。こんなの聞いた事が無い。それを、グループ末端企業である水星のシン・セーは開発している事になる。これは技術革命が起こっても不思議じゃない。だからこそ、3人は驚いている。

 

「あれは多分、ナノラミネートアーマーだよ」

 

 そんな中、1人だけ冷静に試合を見ている男子生徒がいた。決闘委員会の1人で、グラスレー寮の寮長、シャディクだ。

 

「ナノラミネートアーマー?」

 

「そ。最早失われた、伝説の装甲の事さ」

 

 聞いた事も無い単語に、セセリアはシャディクに聞き返す。

 

 ナノラミネートアーマー。

 それは、300年前のガンダムフレームにのみ標準装備されたと言われる特殊装甲。詳しい事は資料が殆ど失われているのでわかっていないが、何でもとてつもなく頑丈で、ビーム兵器をほぼ完璧に弾く特性があるらしい。そしてこの装甲のおかげもあって、300年前の人類はモビルアーマーに勝つ事ができたとか。

 

「え、ええ…?」

 

「そんなものが?」

 

 あまりのも規格外の技術に、セセリアとエランは驚きを隠せない。物理もビームも大丈夫とか、なんだそれはと。インチキにも程がある。

 

「それ、凄く興味あります。昔のデータ資料見たら何かわかりますかね?」

 

 一方で、セセリアとよく一緒にいるロウジは興味を惹かれる。やはりメカニック科所属ともなれば、未知の技術には興味を惹かれてしまうのだろう。

 

「残念だけど、探してもロクな情報は無いよ。作り方は全部失われているし、どうしてそうなるかもわからないんだ。グラスレーのデータベースを探しまくったけど、どういう物かという事しかわからなかったからね。なんせ300年前の代物だし」

 

「そうですか…少し残念…」

 

 少し落ち込むロウジ。御三家の御曹司であるシャディクが探せなかったというなら、本当に無いのだろう。最も、シャディクが知ってて隠している可能性もあるが。

 

「なんでシャディク先輩は、そんな事知ってるんですか?」

 

「そりゃ俺は歴史が結構好きだからね。授業と関係無く、個人的に色々調べたんだよ」

 

 どうもシャディクは、歴史が好きらしい。故にグラスレーのデータベースを使って、過去の事を調べたのだと。クラスに1人くらいそういう子いるよね。

 

「まぁどうしてもって言うなら、現物を手に入れる事だけだね」

 

 シャディクはそう言うと、決闘を映し出しているモニターを見る。そこには現存する最後のガンダムフレーム、バルバトスが映っていた。

 

「……ブリオンで1番のパイロットって誰だっけ?」

 

「ロウジ落ち着いて。多分うちの連中じゃあれには勝てない」

 

 ロウジは決闘を考えたが、セセリアが止める。

 

(さて、三日月・オーガス。果たして君は、伝説のガンダムフレームのパイロットに相応しいかな?あの英雄、アグニカ・カイエルのように)

 

 そしてシャディクは、まるで見定めるような目をしてバルバトスを見るのだった。

 

 

 

 三日月とジュリエッタの決闘では、新たな場面を迎えていた。レギンレイズはビームライフルを破壊され、最早遠距離攻撃は出来ない。そしてバルバトスが、自分目掛けて接近してくる。

 

『だったらこちらも接近戦です!』

 

 ならば残されたのは、接近戦のみ。ジュリエッタはレギンレイズの腰に装備されていた近接武器、ツインパイルをレギンレイズの右腕に装備。そしてバルバトス目掛けて突っ込んできた。

 ジュリエッタはこれまで何度か決闘をした事があるが、その殆どに接近戦で勝利している。負けたのは、数か月前のグエルとの決闘のみ。それ以外は全勝だ。

 だからこそ、接近戦には自信がある。それに今乗っているのは新型機のレギンレイズ。これならば先ず負けない。例え相手がグエルであろうとも。

 

 

 しかし、そこは三日月とバルバトスの領域である。

 

 

 ツインパイルを装備して接近したジュリエッタは、先ずバルバトスの攻撃を受け流して、そこから反撃しようと考えた。バルバトスの得物は長物のソードメイス。懐にさえ入れば、ツインパイルの方がやりやすい。なのでバルバトスの攻撃を受け流そうとしたのだが、

 

『な!?』

 

 武器同士がぶつかる直前、バルバトスはソードメイスを手放した。そして何と、

 

『あぐ!?』

 

 そのまま右腕で、レギンレイズの首元を殴りつけたのだった。その結果、レギンレイズは後ろに大きくのけ反る。

 

(本当にどんなパワーを!?)

 

 なんせバルバトスは300年前のモビルスーツ。レギンレイズはつい最近開発された最新鋭機。それだけの世代差があるというのに、まさかパワーで吹っ飛ばされるとは思っていなかっただろう。

 

「へぇ?まだ動けるんだ?」

 

 そして三日月。彼はさっさとこの目の前の決闘相手の緑ことレギンレイズを倒したいと思っていた。別にスレッタがグエルに負けそうだからとは思っていない。むしろスレッタであれば、まず勝つだろうと思っている。

 だがやはり、一抹の不安はぬぐい切れない。さっさと終わらせて、スレッタの援護に向かいたい。それにいい加減、目の前の緑の相手も飽きてきた。

 

「これで終わりだ」

 

 地面に落としたソードメイスを拾い上げると、三日月はバルバトスのスラスターを吹かす。そしてのけ反り、よろよろとしているレギンレイズにソードメイスを叩きつける。

 

『くっ!?』

 

 だがジュリエッタも、これでやられる程弱くない。直ぐに体勢を整えて、左腕でバルバトスの攻撃を防御する。

 

『がは!?』

 

 しかし無情にも、そのまま左腕は破壊されてしまった。おまけに壊れた左腕がレギンレイズのコックピット周りにぶつかる。パイロットは無事だろうが、衝撃は伝わっているだろう。

 

「しぶといな…」

 

 少し苛ついてきた三日月。もう相手はボロボロなのに、未だに動こうとしている。

 

「じゃあ、頭だ」

 

 ならば頭を破壊すれば、黙るし動かなくなるだろう。そう思った三日月は、ソードメイスを上に振り上げ、レギンレイズの頭を狙う。

 

『まだまだーー!!』

 

 だがここでジュリエッタは奥の手を使った。それはレギンレイズにひとつだけ装備している特殊なスモークグレネードだ。やたら即効性があり、直ぐに煙がばらまかれる。そしてバルバトスは、そのまま煙に身を包まれてしまう。

 

「ちっ。面倒くさい…」

 

 更に苛立ちが募る三日月。これでは相手がどこにいるかわからない。しかもこのスモークグレネード、どうもセンサー類に影響を及ぼすようだ。おかげでレーダーが使用できない。

 

「……」

 

 すると三日月。何を思ったのか目を瞑った。まるで剣士が精神統一するかのように。

 

『貰ったぁぁぁーーー!!』

 

 そしてジュリエッタは、スモークグレネードのおかげでバルバトスの背後を取る事に成功。残った右腕を振りかざし、バルバトスのブレードアンテナに狙いを定める。

 この時、ジュリエッタは勝利を確信していた。完全な背後からの不意打ち。これを避ける事が出来る人なんていないだろう。

 

 しかし、

 

『な!?』

 

 バルバトスはその攻撃を避けた。それもただ避けただけじゃない。まるで人間が背後からの攻撃を避けたかのような滑らかな動きで避けたのだ。

 

(何ですか今の反応速度は!?)

 

 明らかに普通じゃない反応速度に、ジュリエッタは驚きを隠せない。だって今のを避けるなんて普通じゃない。ただ避けただけならまだしも、あんな避け方おかしい。まるでモビルスーツそのものが、人間になったようだった。

 

『しまっ!?』

 

 そしてその一瞬が隙になってしまう。避けたと同時にバルバトスが振り返り、

 

『がはっ!?』

 

 なんとレギンレイズに回し蹴りを食らわせたのだ。それをモロに受けたレギンレイズは、そのまま吹き飛ぶ。

 

「頑丈だな。こいつ」

 

 どちらかといえば、モビルスーツを蹴とばして足回りが壊れていないバルバトスの方が頑丈だと思う。

 

「ん?」

 

 その時、突然第7戦術試験区画に何かが降ってきた。

 

「水?」

 

 それは水。よく見ると、試験区画の天井にあるスプリンクラーから大量の水が出ている。

 

「何だこれ?」

 

 三日月は疑問符を浮かべながら、天井を見るのだった。

 

 

 

「ほら見ろ!俺の言う通りにして成功だったろ!」

 

「……」

 

 ジェターク寮の決闘指揮所。そこではヴィムが、息子のラウダに声を大きくして誇らしげに喋っていた。もうおわかりだろうが、この水はヴィムの細工である。おかげでエアリアルはビームが減衰して、使い物にならなくなっていた。

 更に言えば、今スレッタとエアリアルが戦っているグエルのダリルバルデにも細工がされてある。それは、意志拡張AIによる自動操縦。相手のパターンをAIが判断して、最適な動きをするというものだった。

 現にグエルは今、操縦桿を握ってすらいない。最もその事に、グエル本人はショックを受けているが。

 

「これでビーム兵器は使えない!あとはダリルバルデで止めをさせば終わりだ!」

 

 ヴィムは勝利を確信。これでグエルはホルダーに返り咲き、自分は次期総裁の最有力候補になるだろう。あとはデリングを暗殺さえしてしまえば、完璧だ。

 

「しかしアリアンロッドの小娘。全く使えん。あんな大昔のモビルスーツに何を手間取っている。まるで詐欺にあった気分だ」

 

 ヴィムはジュリエッタに対して酷い言い草をする。折角パイロットとしても腕前を見て選んでやったというのに、バルバトス相手に劣勢。今では左腕を破壊され、腰回りも損傷して倒れている。これはもう、勝目なんて無いだろう。文句の一つも言いたくなるのはわかるが、あまりに言い方が酷い。

 

「まぁいい。グエルがあの時代遅れのガンダムを破壊さえすればな」

 

 だがそれすらもうどうでもいい。グエルがエアリアルを倒せさえすれば。

 

 

 

「結局何なんだろ、これ?」

 

 三日月は大量に散布される水を見ながら呟く。その時だ。

 

『スレッタ!三日月!聞こえる!?』

 

「ん?」

 

 突然ミオリネから、通信が入ってきた。

 

「何か用?トマトの人?」

 

『だからミオリネ・レンブランだつってんでしょ!?』

 

 未だにトマトの人呼ばわりされる事に、ミオリネはキレる。

 

『って今はそんなのどうでもいい。このスコールは私が止める!スレッタはそれまでの間持ちこたえて!そして三日月はジュリエッタを倒して早くスレッタの援護に向かって!』

 

 この時エアリアルは、水の影響でビームライフルが減衰している。おかげで遠距離からダリルバルデを撃つ事が出来なくなっていた。

 そしてその間に、ダリルバルデはエアリアルに接近し、ビームジャベリンで攻撃を開始する。つまり、スレッタとエアリアルはピンチだった。

 

『も、持ちこたえるって、どうすれば?』

 

『いいから持ちこたえて!!』

 

 そう言うとミオリネは、一方的に通信を切る。なんて自分勝手なお嬢様だろう。

 

「ま、いっか」

 

 でもそんなの今はどうでもいい。三日月は倒れているレギンレイズに近づく。ミオリネに言われたからでは無い。自分の意志でスレッタの援護に向かいたいからだ。

 

(こんな筈じゃ…)

 

 そんな中、倒れているレギンレイズのパイロットのジュリエッタは、焦っていた。こんな筈じゃなかった。こんな風に、無様にボロボロにされる筈じゃなかった。余りに惨めで情けない。今すぐ過去に戻って決闘をやり直したい。

 

(いえ、まだです!)

 

 だが、ジュリエッタはまだ諦めていなかった。今バルバトスは、レギンレイズのブレードアンテナを破壊しに接近している。どうして腕部のビーム砲を使わないのか疑問だが、好都合。

 接近してきたその時に、右腕に残されているツインパイルで反撃をすればいい。狙いは当然、バルバトスのブレードアンテナだ。その瞬間が訪れるまで、今はじっとするしかない。

 

(情けない戦い方ですけどね…)

 

 出来れば、こんな泥臭い戦いをしたくなんてない。だがここで負ける方がずっと嫌だ。ならば、後で何と言われようともこの方法でやるだけだ。そもそも決闘は、ただ結果のみが真実なのだから。

 

(あと少し…まだ…まだです…)

 

 バルバトスが近づいてくるが、焦ってはいけない。チャンスは1回だけ。もう後が無い。だからこそ、焦ってはいけない。近づいてきたバルバトス。そしてソードメイスを振りあげて、レギンレイズのブレードアンテナを折ろうとする。

 

(今です!!)

 

 この時を待っていた。今ならバルバトスのブレードアンテナを狙える。ジュリエッタは直ぐにレギンレイズを操作し、右腕のツインパイルをバルバトスの顔めがけて突き出した。

 

(取った!!)

 

 この距離でこの速度なら防げない。今度こそジュリエッタは勝利を確信する。

 

 だが、

 

(な…)

 

 ツインパイルは無情にもバルバトスの左腕に掴まれて、動きを止めていた。バルバトスの尋常ではない反応速度だから出来る真似である。ツインパイルを掴んだバルバトスは、そのままツインパイルを握りつぶす。この瞬間、ジュリエッタは全ての攻撃手段を失った。

 そしてバルバトスは、両足でレギンレイズの両肩を踏む。これでもう動けない。

 

 この時、ジュリエッタはバルバトスの顔を見た。見てしまった。まるで自分を見下し、何でも見透かしているような緑の目。それにその直ぐ後ろに振り上げているソードメイス。

 

(ひっ…)

 

 つい声が漏れる。この時ジュリエッタは、バルバトスに恐怖したのだ。今まで決闘で恐怖した事なんて無かった。学園内の生徒同士の生身の喧嘩でも、臆した事は無かった。何なら怖い物なんて、今までの人生で特に無かった。

 だがジュリエッタはこの時、初めてモビルスーツに恐怖した。だって今のバルバトスは、まるで本物の地獄の悪魔みたいに見えたのだから。

 

「えっと確か、頭を壊せば勝ちだっけ?」

 

 三日月はそう言うと、ソードメイスを両手に逆手に持ち変えて、大きく振り上げる。そして勢いよく、ソードメイスをレギンレイズの頭に突き刺したのだ。

 その瞬間、レギンレイズの頭部は貫かれてしまう。当然、決闘用に付けているレギンレイズのブレードアンテナも壊された。

 

 こうしてジュリエッタは、決闘で1番最初に敗北を期したのだった。

 

「これでよしっと」

 

 突き刺したソードメイスを上にあげる。先端には、レギンレイズの頭部。まるで獲物を仕留めた狩人のようだ。そしてそれを三日月は、ソードメイスを横に振り払うようにしてその辺に投げたのだった。

 

「じゃ、スレッタの援護に行くか」

 

 破壊した頭をその辺に捨てたのち、三日月はエアリアルの下に行った。残されたのは、ボロボロにされたレギンレイズだったものだけ。

 

(何なんですか…あれは…)

 

 そのレギンレイズだったもののコックピットに残されたジュリエッタは、1人両手で身体をかき抱いていた。

 

(まるで、本当に人では無い何かと戦ってる気分でした…)

 

 初めて怖いと思った。それだけ、ジュリエッタはバルバトスに恐怖していた。未だに身体が小さく震えているのがその証拠だろう。

 

(彼は一体、何者なんですか…?)

 

 どうすれば、あそこまでの強さが手に入るのだろう。幼い頃からの訓練か。生まれ持った才能か。もしくは本当に、悪魔と契約でもしたのだろうか。

 

(三日月、オーガス…)

 

 この日、ジュリエッタは三日月・オーガスという人物に興味を持ち始めた。

 

 ふと上を見ると、先程まで大量に振っていた水は、何時の間にか止んでいた。

 

 

 

『スレッタ、三日月。水は止めた。後はあんたらが勝つだけだからね』

 

「ありがとう、ミオリネさん」

 

 水がもう降ってこないのならば、ここからはスレッタとエアリアルの時間だ。

 

「エアリアル、皆。今度は私たちの番だよ!」

 

 そしてエアリアルの最終兵器であるエスカッシャンを起動。それは直ぐにダリルバルデを捉え、飽和攻撃を開始する。何とか避けているダリルバルデではあるが、突然動きを止めてシールドを構える。

 

『おいバカ!?止まるんじゃねぇ!?』

 

 これはダリルバルデの意志拡張AIが、回避より防御が良いと判断したからだ。しかし、それは裏目に出る。エスカッシャンの11条のビーム攻撃を一気に食らった結果、シールドは破壊され、全身がボロボロだ。

 

『あんなわかりやすい囮攻撃に引っかかりやがって…!このポンコツ…!?』

 

 グエルが苛立っていると、直ぐ後ろから攻撃がきた。それをダリルバルデは、何とか避ける。

 

『あ、避けた』

 

 ダリルバルデを攻撃したのはバルバトス。それを見たグエルは、ジュリエッタが敗北したのだと察する。

 

「おかえり三日月」

 

『うん。ただいま』

 

 これで2対1。しかもダリルバルデはボロボロなのに対して、エアリアルとバルバトスはほぼ無傷だ。もう詰みである。

 

「それじゃ、行くよ!」

 

『うん』

 

 スレッタの掛け声と共に、エアリアルが再びエスカッシャンによるビーム攻撃を開始。そしてバルバトスは、ソードメイスを手にした状態で接近する。エアリアルがバルバトスを援護するという理想的な陣形だ。

 そんな波状攻撃をダリルバルデは何とか避けてはいるが、何度もビームやソードメイスが掠っていく。もう時間の問題だろう。それは決闘を見ている生徒や、スレッタと三日月だって同じ事を思っている。

 

 しかし、

 

『黙れよ!!

 

 グエルが突然大声で叫ぶと、ダリルバルデに変化が現れた。いきなり両腕にビームサーベルを装備したかと思うと、背中のスラスターを勢いよく吹かして、エアリアルに向かっていく。

 

『行かせるかよ』

 

 それを三日月のバルバトスが阻止しようと立ちふさがる。だが、

 

『あ』

 

 ダリルバルデはバルバトスの攻撃をかわし、一気にエアリアルに接近。そして両腕のビームサーベルをエアリアルに振り下ろす。

 

「くっ!?」

 

 スレッタはそれを、同じくビームサーベルで防いだ。

 

『これは、俺だけの戦いだぁぁぁぁ!!』

 

 グエルはそう叫ぶと、ダリルバルデのスラスターを思いっきり吹かす。そしてエアリアルは、ダリルバルデのパワーに負けて押されてしまう。それをエアリアルは、巴投げをしてダリルバルデを投げるが、その瞬間にダリルバルデの足に装備されてるシャクルクロウを発射し、エアリアルの腕を掴み試験区画の壁まで投げ飛ばす。

 

「やっぱりこの人、強い!」

 

 先程までとは全然違う動き。もし今の動きを最初からされていたら、危なかったかもしれない。

 

「でも、私とエアリアルは、三日月とバルバトス以外には負けません!だって、やりたい事リスト、まだ全然埋まって無いんですからーーー!!」

 

 スレッタは自分を鼓舞する為にも叫ぶ。そしてビームサーベルでの攻撃を再開。狙いは勿論、ダリルバルデの頭部だ。

 

『このグエル・ジェタークが負けてたまるかよ!!来い水星女ぁぁぁ!!』

 

 グエルもビームサーベルを構えて、エアリアルを迎え撃つ。これが最後のチャンスだろう。グエルは全神経を、エアリアルのブレードアンテナを破壊する事だけに集中させる。さながら、居合で敵を屠る侍のようだ。

 そしてエアリアルが近づいてきたその時、

 

『終わりだ』

 

 背後からバルバトスがソードメイスを振り下ろし、ダリルバルデの頭部を破壊しようとするのだった。三日月には騎士のような1体1の決闘を邪魔しないなんて考え、無いのである。むしろ、今グエルは背中を晒しているのだから絶好の機会だ。この期に頭部を破壊すれば、それでもう勝ちなのだから。なので背後から攻撃をしたのだが、

 

『邪魔すんじゃねぇぇぇ!!』

 

『!?』

 

 なんとグエルはバルバトスの攻撃を避けたうえ、ダリルバルデの足を使ってソードメイスを踏みつけたのだ。これには三日月も驚きを隠せない。

 そしてグエルはそのまま機体を回転させ、飛んできたエアリアルにビームサーベルを振り下ろす。まるでどこぞの勇者の回転斬りだ。

 

 その瞬間、エアリアルとダリルバルデが交差し、土埃が舞う。

 

 第7戦術試験区画に静寂が訪れる。誰も言葉を発しない。今か今かと、決闘の結果を固唾を飲んで知りたがっている。そして土埃が晴れると、そこにはブレードアンテナを折られたダリルバルデがいた。

 

『勝者 スレッタ・マーキュリー エアリアル 三日月・オーガス バルバトスルプス』

 

 こうして、決闘はスレッタと三日月の勝利に終わるのだった。

 

 

 

「ふぅ、終わった」

 

 バルバトスのコックピット内では、三日月がヘルメットを取って一息ついていた。

 

「にしてもホルダーの人、最後だけ速かったな」

 

 そして決闘でのグエルの事を思い返す。決闘の初めの頃は、グエルはどこか固い動きをしていた。しかし最後だけはとても速く、それでいて的確な動きをしていた。更に背後からの攻撃を避けたし、自分が攻撃出来ないよう足で武器を踏みつけもした。もしグエルが最初からあの動きで戦っていれば、危なかったかもしれない。

 

 「俺も、もっと強くならないと」

 

 最後は意表を突かれ、反撃する時間が遅れてしまった。これではいざという時、スレッタを守れないかもしれない。なので三日月はもっと強くなろうと決めるのだった。

 

『お疲れ、三日月。おかげで助かったわ』

 

 そんな三日月に、ミオリネから通信が入る。

 

「お前の為じゃないよ。スレッタの為だ」

 

 折角のミオリネからのお礼の言葉だったが、三日月はそれにやや苛立ちを覚える。だってこれでスレッタは、ミオリネの婚約者となったのだ。

 確かに学校を退学にならずにすむが、スレッタが良いように利用されている感じがし、やはり腹が立つ。

 

『だとしてもよ。おかげで私も結婚しなくてすむし、あんたらも学校に通える。過程はどうあれ、結果オーライでしょ。それに、スレッタが良いなら良いんじゃないの?』

 

「……」

 

 そう言われてしまうと、三日月もあまり強く言い返せない。だって当のスレッタは特も問題無いと言ってるのだ。なら自分がこれ以上何か言うのは、確かにおかしい。

 

「わかったよ。でも昨日も言ったけど、スレッタを泣かしたら絶対に許さない」

 

『大丈夫よ。少なくともスレッタを物みたいに扱う事なんてしないわ』

 

 ミオリネの言葉からは、しっかりと誠意を感じた。なので三日月は、とりあえずはミオリネを信じる事にする。最も、もしミオリネがスレッタに何かしたら許さないが。

 

 『それにしても、本っ当に気分が良いわ!ざまぁみろ!クソおやじ!!

 

 そしてミオリネは凄く喜ぶ。父親に一泡吹かせる事に成功したのだ。気分が良くもなるだろう。

 

 そんなミオリネを無視して、ふとスレッタの方を見てみると、

 

 

 

『スレッタ・マーキュリー。俺と、結婚してくれ』

 

 

 

 何故かグエルがスレッタの手を取り、跪いてプロポーズをしていた。

 

 

 

 

「何あれ?」

 

 その光景を見た三日月は、頭に疑問符を受けべると同時に、何故か少しだけイラっとしたのだった。

 

 

 

 

 




 以下、ちょっとした説明

 ジュリエッタ・ジュリス
 アスティカシア高等専門学園 アリアンロッド寮パイロット科2年。鉄血本編からのキャラクター。鉄血本編では地球生まれの孤児だったけど、本作では宇宙生まれでかなり裕福な家の出身にしている。父親は元ドミニコス隊のMSパイロット。母親はMS設計者。両親に愛されて育っているので、『ラスタル様の為に!』みたいな性格では無い。寮内に友達も普通にいる学生である。
 パイロットとしても腕前は本物で、現アス高ではトップを争う程である。ただし集団戦は少し苦手。数か月前、グエルとの決闘ではあと一手だけ届かずに敗北。以来リベンジを誓っていた。なおその時使っていたMSはグレイズリッター。因みに決闘の理由は、楽しみにしていた大盛肉定食をグエルがぶつかったせいで落としたから。

 所属しているアリアンロッド寮の寮長とは、小さい頃からの腐れ縁。

 レギンレイズ
 アリアンロッド社の新型MSでジュリエッタの愛機。鉄血本編からのMS。見た目は同じだけど、本作では水星仕様となっているのでエイハブリアクターは積んでいない。130mmライフルも、形状が同じビームライフルになっている。
 そして今回の決闘でボロボロになったので、会社と寮の人達は割と嘆いた。でも多分そのうち進化する。

 まさかの17000字。今まで書いてきた中で1番多かったです。次回はまた気長にお待ちください。もし矛盾などがあればどうぞ言って下さい。


 追記 『この流れでグエルがスレッタに惚れるの無理じゃない?』と至極真っ当なご意見を沢山いただきました。なのでちょっと緊急でアンケート設置しました。よろしければお答えください。

 更に追記 アンケートのご協力、本当にありがとうございます。個人的に、やっぱりグエルにはプロポーズしてほしかったので、ああしました。確かに、スレッタに止めをさされた訳じゃないのにプロポーズするのはちょっと変ですもんね。前の展開が良いと思われた方々、本当に申し訳ございません。

スレッタではなく、三日月がグエルに止めを刺す展開は、

  • 違和感がある。書き直して欲しい。
  • これでいいと思う。このままでいい。
  • 好きにしなさい。
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