お気に入り登録、誤字報告、感想、いつもありがとうございます。大変励みなっております。相変わらず拙い作品ですが、楽しんで頂けると幸いです。
感想にてご指摘があったので、1部を変更しました。
「離せよ」
「お前がチュチュを離したらな」
現在、地球寮内の格納庫は、まさに一触即発の状態だった。未だにチュチュの腕を掴んでいる三日月と、その三日月の腕を掴んでいる昭弘。両者はお互い睨みあったまま、直ぐに動けるようにしていた。相手が動いたら、即座に反撃できるように。
「おい昭弘!」
「おいおい。これやばくないか?」
オジェロが昭弘の肩を掴んで落ち着かせ、ヌーノが状況を観察する。見ての通り明弘はかなり大柄な体型で、それでいてとても鍛えられている。まるで筋肉が服を着ているかのように。普段から筋トレばっかりしているおかげだろう。
一方で三日月はチュチュ程の身長で、見た感じかなり細い。とてもじゃないが、明弘と喧嘩で勝てるとは思えない。もしこのまま喧嘩になれば、三日月は負ける。下手をすると、スペーシアンである三日月が怪我を負ってしまうかもしれない。
そうなったらまた、地球寮は肩身の狭い思いをしてしまう。それは避けないといけない。
最も、実際の三日月の体は昭弘並みに鍛えているので、一方的に負けるどころか昭弘に勝つ可能性すらあるのだが。
「ど、ど、ど、どうしよう!このままじゃ大変な事に!!」
因みにこの状況で1番焦っているのは、地球寮寮長であるマルタンである。彼の頭の中では現在、もしこのまま三日月が怪我をしたら賠償金を請求され、地球寮が立ち行かなくなるかも等の不安でいっぱいだ。
と、その時である。
「ふん!!」
「あた」
スレッタが三日月の後頭部を思いっきり叩いたのだ。
「何すんのスレッタ?」
「三日月!今すぐ手を離しなさい!」
「え?でも」
「でもじゃない!早く離して!!」
「わかった」
スレッタに言われ、三日月はチュチュから手を離す。それと同時に、明弘も三日月から手を離す。
「い…つぅ…」
「チュチュ!大丈夫!?」
「リリッケ!救急箱取ってきてくれ!」
「は、はい!!」
ニカがチュチュに近づいて腕を見る。チュチュの腕は三日月に掴まれていた部分が赤くなっていた。見ている方も痛く感じてしまう。それを見たアリヤがリリッケに救急箱を取って来るよう言う。
「三日月」
「何スレッタ?」
「謝りなさい」
そしてスレッタは、三日月にチュチュに謝るよう言う。確かにチュチュはスレッタに工具を投げつけようとしたが、これはやりすぎだ。何より暴力はいけない。だからこそ、スレッタはしっかりと三日月を謝らせるのだ。
「何で?そいつは」
「三日月?」
「…………ごめん」
「謝るのは私にじゃないでしょ?」
「……ごめん。変な頭の人」
「てめぇ…喧嘩売ってるのか?っつぅ…!」
謝ったかと思えばけなしてくる。そんな三日月をチュチュは睨みつける。しかし腕の痛みがひどく、直ぐに目を閉じてしまう。
「えっとニカさん。声をかけてくれて嬉しかったですが、ごめんなさい。こんな事をしちゃったら誰も納得しないでしょうから、私達は他をあたります」
「う、うん…」
「本当にごめんなさい。ほら、いくよ三日月」
「うん。えっと、ごめん」
スレッタは頭を下げて謝罪した後、三日月の手をひいて地球寮から出ていった。こんな事をした後じゃ、どうあっても誰も良い顔をしない。元はと言えばチュチュがしでかして事ではあるが、それでもこれはダメ。こうしてスレッタと三日月は、折角のチャンスを棒に振ってしまったのである。
「ほらチュチュ。腕出して」
「悪ぃ…アリヤ…」
スレッタと三日月が去った後の地球寮。そこではアリヤがチュチュの腕を治療していた。といっても、冷却スプレーをふって湿布を貼るだけだが。
「おっかねぇな…あの三日月って奴…」
「だな。昭弘がいなかったらマジでどうなっていたかわからねぇ」
その周りでは、地球寮のメンバーが話をしている。内容は勿論、三日月の事だ。これまでも他の寮のスペーシアンから嫌がらせを受けた事はあったが、あそこまで直接的なものは無かった。大抵はゴミを投げられたり、グチグチと嫌味を言われたりだ。
だが三日月は、本気でチュチュの腕を折ろうとしていた。こんな事、初めてである。
「昭弘。本当にありがとう。君がいなかったらどうなっていたか…」
「気にするな」
マルタンは昭弘に礼を言う。
「それにしても、僕は本当にダメだね。寮長なのに…何もできなくて…」
同時に、自分が情けないとも言う。マルタンは地球寮の寮長だ。いざという時、皆を守るのが寮長の仕事でもあるのだが、先程のマルタンは慌てるだけで何もできずにいた。そんな自分が情けないと、マルタンは自己嫌悪する。
「そう言うな。お前は俺らが出来ない事が出来る。それにお前は、誰よりもここの皆の事を考えているだろ。もっと自信を持て」
「はは、お世辞でも嬉しいよ」
「お世辞じゃない」
そんなマルタンに昭弘は、もっと自信を持つよう言う。実際、マルタンは頼りなさそうに見えるが、いざという時は誰よりも地球寮の皆の事を考えて行動する男なのだ。その事を、昭弘達は知っている。これでもっと自信に溢れていれば文句無しとはチュチュの談。
「チュチュ」
「な、何だよニカねぇ」
アリヤに治療を受けているチュチュに、ニカが話しかける。
「確かに、さっきのは三日月くんが悪いとは思うよ?でもね、先にきっかけ作ったのはチュチュだよね?いくら今日の試験で嫌がらせを受けていて、それで気が立っていたからと言っても、流石にそれを他の生徒に当たるのは違うと思うな」
「う…」
尊敬しているニカにこう言われてしまうと、チュチュも強く言えない。だって実際その通りなのだ。もしスレッタと三日月がここで嫌がらせをしていればまた話は変わるが、あの2人は何もしていない。
そこに自分が『スペーシアンだから』という理由で噛みついたら、逆に噛みつかれたという話。自業自得とも言える。
「ごめん、ニカねぇ…」
「今度からは、スペーシアンだからと言って急に噛みつくみたいな真似はしないでね?少なくとも、あの2人は他のスペーシアンとは違うから」
「うん…」
チュチュ、ヘコむ。そして今後はあまり嚙みつくような真似は控えようとも思う。
「にしても昭弘がいてくれてよかったぜ。あのままだったらマジで大変な事になっただろうし」
「だな。あの時ホルダーがあの三日月って奴の頭を叩かなかったら、そのまま喧嘩になっていたかもだし」
「まぁ昭弘だったら大丈夫だろ。あの三日月って奴小さいし」
オジェロとヌーノはほっと胸を撫で降ろす。仮に喧嘩になったとしても、昭弘ならば負ける事は無いだろうと思ったからだ。
「……」
しかし昭弘本人は、腕を組んで先程の事を思い出す。
(腕を掴んだ時にわかったが、あいつ相当鍛えてやがる。それに俺が強引にチュチュから離そうとしたのに、ビクともしなかった…)
先程、昭弘は三日月をチュチュから力任せに離そうとした。だというのに、三日月は全く動かなかった。まるで地面から足が生えているかのように。
(間違いなく、あいつは強い…もし喧嘩になれば勝てるかわからねぇ…それに…)
何より昭弘が警戒した理由が、三日月の目だ。まるで獣の様な目。あんなに鋭く冷たい目は今まで見た事が無い。あのような目をした奴が暴力的な行動を自分達に対して取ったらと思うと、思わず身震いしてしまう。
(あまりあいつとは、敵対したくねぇなぁ…)
勿論、三日月が地球寮の仲間に何かしたら容赦しないが、そういう事さえなければ、昭弘は三日月と敵対したくないと密かに思うのだった。
触らぬ神に、何とやらである。
「で、スレッタ。どうするの?」
「どうしよう?」
地球寮から出てきたスレッタと三日月。2人は途方に暮れていた。折角ニカが自分達の追試を手伝ってくれるようにしてくれたのに、それが全て台無し。これでは追試が受けられない。
「やっぱり俺がやろうか?俺の時はまた考えればいいし」
「うーん…」
三日月の好意は嬉しいが、パイロット科である三日月では計器の操作も誘導の仕方もわからないだろう。しかし、最早それしか手が無い状況。
「どうしたんだい?」
そうやって悩んでいると、声をかけられた。
「え、エランさん!?」
「あ、弁当の人」
「弁当の人!?」
声をかけてきたのはエラン。これまで何度か話した事のある男子生徒だ。あと何でか三日月はエランの事を弁当の人呼ばわりしてる事に意味が解らずにスレッタは驚く。絶対に後で聞こうと思った。
「それで、どうかしたの?何か悩み事?」
「え、えっと実は…」
エランに質問され、スレッタは落ち着きながら事情を説明。そしてその事情を聴いたエランは、
「だったらうちの寮に来る?」
「え?」
自分が所属している、ペイル寮への入寮を進めてきた。
「うちならメカニック科の生徒も沢山いるし、何なら追試前にデミトレーナーの操縦の練習だって出来る。どう?」
「い、いいんですか?」
「構わないよ」
地獄に仏とはこの事だろう。この誘いを受ければ、スレッタと三日月はペイル寮の助けを受けられながら、晴れて追試を受けられる。
「俺も弁当の人のとこなら別にいいよ。良い人だし」
おまけに三日月もエランには好意的だ。これならば、余計な心配をする必要も無いかもしれない。
「じゃあ、よろしくお願い「ダメに決まってるでしょ!!」うえぇ!?」
その誘いを受けようとした時、背後から大声がした。スレッタが驚きながら振り向くと、花嫁であるミオリネが随分怒った顔をしてこっちに歩いてきていた。
「スレッタ!前に言ったでしょ!御三家の連中は敵だって!そいつだって私が欲しいからあんたに近づいてきてるだけよ!!」
「いや、僕は君には全く興味ないよ」
「んな!?」
エランの発言に言葉を失うミオリネ。まぁ、いきなりこんな事言われたらこうもなるだろうが。
「こっちだってあんたみたいなマネキン王子に興味なんてないわよ!!」
「何てこと言うんですかミオリネさん!!エランさんは凄く良い人なんですよ!?私と三日月が追試で困っているのを助けてくれそうなんですから!!」
「そうだよ。少なくとも弁当の人はトマトの人より良い人だよ」
「え?追試?弁当?」
エランに言い返すミオリネだが、スレッタに止められる。そしてスレッタは事情を説明。
「……ねぇスレッタ」
「はい?」
「あんた、どうしてそんな大事な事を私に言わないの?」
「え?だってミオリネさん経営戦略科ですし、普段から凄く忙しそうにしてるから悪いかなーって」
「てい」
「あた」
ミオリネ、スレッタにデコピン。因みに三日月は、流石にこれには反応しなかった。
「このおバカ。あんたは私の花婿なんだから、そういうのは遠慮無く頼っていいのよ」
「え?そうなんですか?」
「当たり前でしょ。ほら、行くわよ」
そう言うとミオリネは、スレッタの手をひいて歩き出す。
「じゃあ弁当の人、また」
「うん」
三日月もエランに一言言ってから、2人の後を追う。そしてエランは、そんな3人が去って行くのを黙って見ているのだった。
「あの、ここは?」
ミオリネに付いて行った2人がやってきたのは、校舎にあるとある部屋だった。中は随分広く、何かの野菜の苗が植えられている。
「元は理事長室だったとこ。クソ親父から奪ってやったのよ」
「は、ははは…」
暴君という単語がスレッタに頭に浮かんだ。
「これ、何?」
「トマトの苗。ここで少し育ててから温室に持っていってるの」
「へぇ」
三日月は部屋にあった苗に興味を示す。
「とりあえず、2人共こっちに上がって」
ミオリネは2人を手招きすると、部屋の奥にある階段を登っていく。2人もそんなミオリネの後に続く。階段を上がると、そこは居住スペースだった。流石に元理事長室とでも言うべきか、机に椅子にベッドにクローゼット。更に下にはシャワー室もある。
だが、そこはとても散らかっていた。
「随分散らかってるね」
つい三日月はそう言ってしまう。水星では、太陽風のせいで物が自分目掛けて飛んでくる事がある。
なのでスレッタも三日月も、基本部屋はしっかりと整理整頓していた。
しかし、ミオリネが使っているというこの部屋は酷い。ゴミ袋は散乱しているし、食べ終えたであろうカップ麺や空き缶がそこいらにある。もしここが地球だったら、黒くてすばしっこい奴らが大量に発生していた事だろう。
「た、たまたまよ!明日掃除しようと思ってたの!」
三日月の指摘に反論するミオリネ。でも部屋を片付けられない人ほどよくこう言うよね。
(ミオリネさんって、汚部屋女子ってやつだったんだ…)
部屋の惨状を見たスレッタは、少しだけショックを受ける。とりあえず、1度部屋を掃除した方がいいかもなんて思っていた。
「あ」
そう思いながら部屋を見ていたスレッタだったが、突然三日月の目を自分の両手で塞ぐ。
「え?スレッタ、何?」
「あんた何してんの?」
「あ、あのーミオリネさん…流石にあれは…」
「は?」
スレッタがベッドの方を見ながらそう言う。疑問符を浮かべながらミオリネがベッドを見る。
するとそこには、ミオリネのブラやらパンツやらの下着が雑多に脱ぎ散らかされていた。それもいくつも。
「~~!?!?」
とっさに下着の上に覆いかぶさり下着を隠そうとするミオリネ。これがスレッタだけなら問題ないが、ここには男である三日月もいる。いくらミオリネがそういった事に無頓着でも、流石にこれは恥ずかしい。
「ちょっとだけ部屋の外で待ってて……」
「あ、はい」
「スレッタ。何も見えないんだけど」
「今は見ちゃだめだよ」
スレッタに視界を隠された状態で、三日月は廊下に1度スレッタと共に出る事となった。この後、ミオリネは3分で衣服類だけ必死で片付けた。正確には、クローゼットに押し込んだだけなのだが。この時ミオリネは、今後下着類だけはしっかりと整理しようと誓ったのだった。
その後、ミオリネが数分で実習のマニュアルを暗記したり、スレッタがわからないところを教えてあげたりとした。最初こそミオリネが寮に入っておらず、本当に1人しかいないという事に驚いたが、ミオリネがあっという間に手順を暗記したのを見てほっとした。これならば、ひとまず安心だろう。
「野菜って自分で作れるの?」
「大抵は作れるわよ。物によって数年かかったりするやつとかもあるけど、例えばネギやホウレンソウは2ヵ月もあれば収穫できるわ。そこまで難しくないし」
「へぇ。火星ヤシも作れる?」
「いや流石にあれは農場レベルになるから個人では無理よ。先ず木を買わないといけないし」
因みに三日月は学校の勉強以外の事を聞いたりした。どうやら三日月、農業に興味を示したらしい。
「って、もうこんな時間か。流石に寝ないと明日に響くわね」
ミオリネが時間を確認すると、既に深夜というべき時間だった。そろそろ寝ないと、寝不足になってしまう。
「私とスレッタはベッド。三日月はさっき学校から簡易ベッド借りてきたから、それ使って」
「ええ!?わ、私、ミオリネさんと一緒に寝るんですか!?」
「別にいいでしょ?花嫁なんだし」
ミオリネと一緒に寝るという事態に驚くスレッタ。いくら婚約者という関係でも、これはちょっと恥ずかしい。そして三日月は、先程ミオリネが借りてきた簡易ベッドを使う事になった。流石に3人一緒にひとつのベッドで寝るのは無理だし、異性と寝るのは嫌だからだ。
「寝る前にシャワー浴びてきなさい。そっちにシャワーあるから」
「あ、わかりました」
「ん」
ミオリネに言われ、スレッタと三日月は部屋の下に設置されているシャワー室に入っていく。その間、ミオリネはクローゼットから自分の寝巻を出す。
「……ん?」
だがその途中、ミオリネは手を止めた。今明らかに、可笑しい事があったからだ。それに気が付いたミオリネは、即座にシャワー室に向かう。
「いや何してんのあんたら!?」
「「え?」」
シャワー室の脱衣所では、スレッタと三日月が服を脱ごうとしていた。あと少し遅かったら、色々見えていたのに。
「何ってシャワーを」
「どうして2人で一緒に浴びようとしているのかって聞いてるの!!」
「……?あ、そっか。三日月、ちょっと浴びるの待っててもらっていいかな?」
「わかった」
スレッタにそう言われると、三日月はシャワー室から出ていく。
「え?何?あんたら普段から一緒に?」
シャワー室ではミオリネがスレッタに問い詰める。
「いやー、水星って水が貴重品で生活用水も潤沢に使えないんですよ。だから水の節約を兼ねて、三日月とは小さい頃から一緒にシャワー浴びたりしてまして…」
「……水星人って羞恥心が無い訳?」
「いや、流石に最近はそういうの少し考えるようになりましたよ?やっぱり見られたりするのはちょっと恥ずかしいし。ただ、水星にいたころの何時ものクセと言いますか…つい…それに三日月は、目を瞑ってって言ったらちゃんと目を瞑ってくれますし…」
いくらスレッタが小さい頃から三日月とよくシャワーを浴びていたとしても、流石に最近は羞恥心を覚え始めていた。だってもう17歳だし。それでも遅すぎるくらいだろうが。
(この2人、本当にそういう関係じゃないのよね?)
ミオリネは2人の関係を疑い出す。いくら幼馴染とはいえ、この歳になっても一緒にシャワー浴びるなんてしない。しかし、仮に2人がそういう関係だったらそれもあるだろう。
だがそれは、他ならぬスレッタ本人が否定している。だとすれば、水星の常識が可笑しいのだろう。というか、育った環境が特殊すぎる故の弊害なのかもしれない。
(勉強の前に、常識を教えないといけないわねこれ…)
そしてミオリネは、先ずスレッタに色々と地球圏での常識を教えようと決意。このままでは大変な事になっちゃうかもしれないからだ。
その頃、三日月はシャワー室の前で軽い柔軟運動をしていた。
翌日 デミトレーナー格納庫
「何でてめぇらがここにいんだよ」
「いや、だって私達もこれから試験ですし…」
再試験を受ける為にモビルスーツ格納庫に来たスレッタ、ミオリネ、三日月の3人は、地球寮のチュチュにガンを付けられていた。その後ろには、ニカとヌーノもいる。
「チュチュ?」
「わかってるって…」
ニカに言われると、チュチュはそれ以上何も言わずに自分のデミトレーナーに乗り込む。昨日のニカとの約束を破らない為だ。
「いい2人共。昨日私が手順を覚えはしたけど、あくまで私は素人。正直メカニック科の生徒に比べると何段もレベルが下がる。けど精一杯やるから、この再試験ちゃんとクリアしなさい」
「わかりました」
「わかったよ」
「三日月、今更だけどミオリネさんと普通に喋れるようになったね?」
「まだ信用はしてないよ」
「……」
「今だけは信用しなさい」
再試験前に気分が下がってしまうスレッタ。でも刻一刻と再試験の時間が迫っているので、自分用のデミトレーナーに乗り込むのだった。
『これより再試験を始める。LP041,スレッタ・マーキュリー。試験開始』
「はい!」
試験官の合図と共に、スレッタの再試験が始まる。
『スレッタ。前方右5度、50メートルに地雷反応。避けて』
「はい!」
『次、左4度に地雷反応』
「了解!」
『そのまま真っすぐ。地形が結構上下してるからこけないよう気を付けて』
「わかりました!」
ミオリネの指示のもと、スレッタは再試験を順調に進める。ミオリネは経営戦略科とは思えないくらい的確な指示を出し、スレッタを誘導させていく。これならば、再試験をクリアできそうだ。
しかし、
「うぇぇ!?」
『え?どうしたのよ?』
「ミオリネさん!急にモニターが真っ黒になっちゃいました!」
『はぁ!?』
突然、スレッタのデミトレーナーのモニターが暗くなってしまった。これでは何も見えない。
『機体トラブルです。試験の中止をお願いします』
『ダメだ。機体整備も試験のひとつ。そんな理由で中止には出来ない』
『ちっ!スレッタ!計器の数値で方角を決めるわよ!』
「わ、わかりました!」
だがこれで試験を中止には出来ないらしい。ならば難しいが、コックピットの計器を見ながら試験をやるしかない。
『スレッタ・マーキュリー。不合格』
だが、そう簡単に出来る訳が無い。なんせ人で言えば、目が全く見えない状態なのだ。どこぞの天パならともかく、そんな状態で試験をクリアできるなんて普通は無理だ。
「こ、これで終わり?どうしよう…本当にどうしよう…」
『スレッタ。直ぐにスタート地点に戻って』
「え?でも私、不合格になったんじゃ…」
『追試は何回でもリトライできるのよ。だから諦めないで』
「…!はい!」
まだ自分にチャンスがあると知り、スレッタは元気を取り戻しながらスタート地点に戻る。こうしてスレッタの追試のリトライが始まったのだが、これが中々上手くいかない。惜しいところまでいくのだが、どうしてもあと1歩が足りないといった感じ。モニターさえしっかり見えていれば、こんな事にはならなかっただろう。
『スレッタ・マーキュリー。不合格』
「リトライ、お願いします!」
その様子を心配そうに見ている女生徒ニカは、スレッタを何とかしたいと思っていた。
「ヌーノ。あれ何とか出来ないの?」
『あの遅効性塗料は水かけたら落ちるなんて代物じゃないよ。落とすなら特殊な薬品使って、時間かけて落とさないと』
スレッタのデミトレーナーのメインカメラには、遅効性塗料が塗られている。これは昨日、チュチュが別の寮のスペーシアンにやられた嫌がらせと一緒だ。出来れば今すぐ何とかしたいが、やるなら格納庫に戻ってしっかりとした手順を踏まないといけない。つまり、この試験の最中ではどうあっても無理なのだ。
「スレッタさん…」
『ねぇ』
「え?」
ニカがスレッタを心配していると、突如通信機に声が入ってきた。
「もしかして、三日月くん?」
声の主は、スレッタの幼馴染である三日月・オーガス。どうやら、今試験待ちで乗っているデミトレーナーから通信を入れてきたようだ。
『あれ、何?』
「え?」
『だからあれ。スレッタの』
三日月が、試験中のスレッタのデミトレーナーの事をニカに聞く。
「あれは遅効性塗料だよ。メインカメラに振りかけて、時間が経ったら真っ黒になる特殊な塗料。うちの後輩も、昨日あれのせいで試験不合格になったんだ」
『誰がやったの?』
「多分、他の寮の生徒だと思うよ。こう言うのは凄く失礼だけど、水星出身のスレッタさんの事をよく思わない人もいるんだよね…」
水星は田舎だ。それも凄い田舎。そんなド田舎からやってきたスレッタの事を見下す生徒は、一定数いてしまう。故にスペーシアンであるスレッタにも、こういった嫌がらせをしてしまうのだ。
『……へぇ』
「え、えっと多分だよ!?私も犯人には心当たりなんて無いし!だから落ち着いて!?」
三日月の声色が冷たくなったのを感じたニカは、とっさに三日月を落ち着かせる。もしもこのまま三日月が塗料を吹きかけた生徒を見つけでもしたら、絶対に大変な事になるからだ。多分、昨日の地球寮の時以上の事が起きる。
『まぁでも、スレッタならあれくらい大丈夫でしょ』
「え?」
そんなニカの心配をよそに、通信機越しの三日月は冷静に言う。
『スレッタは水星で1番のレスキューパイロットだしね。それに、俺と何回も戦闘シミュレーションしてる。目が見えないくらい、何とかなるよ』
それはまさに信頼。三日月は、スレッタは試験に合格すると信じて疑っていない。幼い頃より、ずっと一緒にいた故の信頼だ。
(羨ましいな…)
そんなスレッタの事を、ニカは少し羨ましがった。自分にもこんな幼馴染がいたら、もっと違う人生を歩めたかもと思いながら。
『スレッタ・マーキュリー、不合格』
そうしている間も、スレッタは試験を不合格になってしまっていた。
「も、もう1度お願いします!」
『その調子よスレッタ。タイムもさっきよりずっと良くなってる。これなら絶対にいけるわ』
「はい!」
何度も不合格になっているスレッタだが、彼女は諦めない。スレッタには夢があるからだ。
スレッタは何時の日か、水星を豊かにしたいと思っている。水星は過酷な環境故に人が殆どおらず、あらゆる物資が貴重品扱いだ。パーメット採掘中に死人が出るなんて日常茶飯事だし、人々は心に余裕がなく過ごしている。
でも、そんな水星でも自分と三日月が育った故郷なのだ。それに最初こそイジワルばかりしていた水星の老人達も、スレッタ達が水星を離れる時には祝福してくれた。
そんな水星の人達に、恩返しがしたい。その為には、この学校でしっかりと学び、卒業しないといけないのだ。だからこそ、スレッタは決して諦めない。
『よし!武器換装エリアまで着いた!ちょっとあんた。手伝って』
『は?ちょ!?』
遂にスレッタは武器換装エリアにたどり着いた。それを見届けたミオリネは、直ぐ傍にいた地球寮のヌーノを無理矢理手伝わせる事にして、自分は武器換装作業を行う事にした。
(これなら今回はいけるかも!)
スレッタも自信を持って試験に挑めている。
『時間切れだ。スレッタ・マーキュリー、不合格』
だが無情にも、時間切れとなってしまう。
『おいお姫さまとホルダー、いつまでやってんだよ。あーしスタートできないじゃん』
同時に、順番待ちをしているチュチュが苦言を呈する。既にスレッタは8回もリトライしているのだ。いい加減、諦めてこっちの番に回して欲しいと思うのは当然だろう。
『リトライは何度でも認められているでしょ?大人しく順番待ってて』
『ちっ…!』
だが別にスレッタとミオリネはルール違反をしている訳では無い。そう言われてしまうと、チュチュもあまり強く言い返せない。昨日、ニカに無暗に噛みつくなと言われたばかりだし。
「大丈夫です」
『あ?』
「もう大丈夫です。次で必ず、成功させますから。だって水星の環境と比べると、こんなの何ともありませんし!」
『その意気よスレッタ。しっかりとこの試験に合格して、水星であなたを待っている人達の期待に応えなさい。じゃあ直ぐにスタート地点に戻って』
「はい!」
スレッタは元気に返事をすると、スタート地点に戻っていく。今度こそ、必ず合格すると決意しながら。
『……』
チュチュはそんなスレッタの事を、黙って見つめる。スペーシアンであるスレッタにも、待っている人がいるんだなと思いながら。
『よし!今度は時間に余裕もある!直ぐに兵装換装作業に入るわよ!』
「わかりました!」
9回目のリトライをするスレッタ。今度は試験の時間にも余裕があるし、兵装換装作業も問題無く進めている。問題は、メインカメラが見えない状態で射撃試験が出来るかだ。
(ここが1番の難所。せめて少しでもカメラが見えたら…!)
ミオリネもここが1番の問題点になっている事は理解している。コックピットの計器は動いているが、それで射撃が的に当てられるかはわからない。というか、少なくとも自分なら無理だ。
「大丈夫ですよ、ミオリネさん」
『スレッタ?』
しかし、当のスレッタは不安がっていない。
「何度も戦った三日月のバルバトスに比べたら、これくらい何とでもなります!」
なんせ相手は動かない的。バルバトスのように、予測不能なデタラメな動きが出来る訳でもない。そんな的相手だったら、計器の数値でどうにかできる。
『……わかったわ。じゃあいくわよ』
「はい!」
ミオリネも自分が不安がっていたらダメだと思い、気持ちを切り替える。
そして、
『LP041。スレッタ・マーキュリー。合格だ』
9回目にして、スレッタはついに合格を勝ち取ったのだった。
「一時はどうなるかと思ったけど、何とかなってよかったわね」
「ですね…流石に疲れましたけど…」
「あぐ…むぐ…」
ミオリネ、スレッタ、三日月の3人は食堂で食事をしていた。スレッタが合格した後、直ぐに三日月の試験になったのだが、こっちは特に問題なく1回で終了。やはり、遅効性塗料をかけられているかいないかの差は大きかったようだ。
「俺ちょっとおかわりしてくる」
「え?沢山食べるね?」
「これ美味しいから」
三日月はそう言うと、席から立ち上がって再び厨房へと向かう。余程今食べている肉料理が気に入ったのかもしれない。
「スレッタさん、ちょっといいかな?」
「え?」
そしてミオリネと2人きりになった時、声をかけられた。2人が隣に目をやると、そこには地球寮の生徒であるニカ、ヌーノ、そしてチュチュがいた。
「あ、えっと…」
「スレッタさん、大丈夫だから。別に仕返しにきたとかじゃないから」
チュチュを見たスレッタは少し畏縮。てっきり昨日の三日月がしでかした事の報復かと思ったが、違うらしい。
「ほら、チュチュ」
「……」
「チュチュ?」
「あーもう、わかったよ…おいスペーシアン。昨日は、悪かったな…」
「え?」
「昨日のは、完全にあーしの八つ当たりだ。本当悪かった…」
ニカに言われ、チュチュがスレッタに謝る。その行動に、スレッタは驚いた。
「いえ、こちらこそ、三日月が本当にすみません…あの、腕とか大丈夫でしたか?」
「別にあれくらい何ともねーって。追試もしっかり合格したし」
チュチュにつられ、スレッタも昨日の事を謝る。もし昨日の事が原因でチュチュが追試を不合格になっていたら、申し訳がないからだ。
「それでスレッタさん。まだ寮に所属していないよね?よかったら地球寮にこない?勿論、三日月くんも一緒に」
「え?」
そうやって謝っていると、ニカが地球寮に入らないかと誘ってきた。
「昨日の事は皆既に納得してるから気にしなくていいよ。どうかな?」
「え、えっと…」
ニカの誘いは嬉しいが、今スレッタはミオリネの部屋にいる。勝手に承諾してもいいのかと考えて、1度ミオリネを見る。
「いや、こっち見ないであんたが自分で決めなさいよ」
どうやらミオリネ的には大丈夫らしい。
「あ、じゃあ…」
ニカの誘いを受けようとしたその時、
バシャアァァ
「…へ?」
「あーごめーん。ちょっと手が滑っちゃったー」
スレッタの頭に、何か液体がかけられたのだ。
「え?え?え?」
突然の事態に、スレッタは困惑。スレッタの後ろには深い青色のショートカットと、茶髪のポニーテールをした女生徒が2人。その手には、コップが握られている。
「あんたら何してんのよ!」
「別に?手が滑っただけって言ったじゃん」
「そーそー。そんなに怒んないでよレンブランさん?ちょっとした事故だって」
ミオリネ、突然のスレッタへの嫌がらせに激怒。実はこの女生徒2人、スレッタのデミトレーナーに遅効性塗料を振りかけた犯人なのだ。2人は水星という辺境からやってきたスレッタの事が、単純に気にくわない。なのでスレッタに、普段アーシアンに対してするような嫌がらせを実行。
だが結果は失敗。本当だったら、あのままスレッタが試験を不合格になるのを見て『ざまぁみろ』と良い気分になる筈だったのに、まさかのスレッタが合格してしまうという展開。
このまま終わるのは癪だ。だからこうして、直接的な嫌がらせをしにきたのだ。因みに、今スレッタの頭にぶっかけたのは水である。
「な、何を…!?」
「だから手が滑っただけって言ってるじゃん?何勝手に怒ってんの?」
「お、お母さんから教わらなかったんですか!?こんな人に迷惑かけたらダメだって!こんな事したら、お母さんが悲しみますよ!?お母さんを泣かせちゃダメです!!」
スレッタも反論するが、それすら彼女達はどうでもいいという感じ。
「水星の田舎者のくせに!いちいちうるさいのよ!!」
「さっさと水星に帰れって!!」
それどころかスレッタの今の発言が癪に障ったので、手にしていた水の入ったコップをスレッタの顔めがけて投げつけてきた。
「ぶっ!?」
「「あ…」」
コップはスレッタの鼻に当たってしまい、スレッタは手で鼻を抑えて座り込む。よく見ると、鼻血も出ている。
「う…あ…」
((やっば…))
彼女達の名誉のために念のため言っておくと、彼女達は最初からコップをスレッタにぶつけようと思っていた訳ではない。本来は水だけをスレッタの顔にかけるつもりだったのだが、運悪く手からコップがすっぽ抜けてしまったのだ。その結果がこれだ。
「あんた達!!」
「てめぇら!!」
そして、そんな2人の事情を知らないミオリネとチュチュはキレた。チュチュに至っては殴りかかろうとしている。こうなってはもう仕方が無い。ここで返り討ちにしようと女生徒2人も覚悟を決める。チュチュは殴りかかろうと、腕を振り上げる。
だが、
グシャ
『え?』
チュチュの振り上げた拳は、そのまま動かせずじまいとなってしまった。何故なら、ショートカットの女生徒が急に横に吹き飛んだからだ。
「へ?」
ポニーテールの女生徒が振り返ると、
「……」
そこには、明らかに敵意を持った目をしている三日月がいた。そして三日月は、そのままポニーテールの女生徒目掛けて拳を振りかざす。
「ちょ!待っ!」
ゴシャ
彼女は待ってと言うが、勿論待たない。思いっきり右腕で殴り飛ばした三日月は、そのままポニーテールの女生徒に乗っかり、拳を顔めがけて振り下ろす。
ガスッ!ガスッ!ゴスッ!
何度も、何度も振り下ろす。おかげで彼女は鼻血を出し、顔は腫れ上がっていった。尚、最初に殴り飛ばされたショートカットの女生徒は、脳震盪を起こして動けずにいる。現状では、ある意味幸せかもしれない。だって意識があったら、同じ目に合っているだろうし。
「や、やめ…!もう、許して… 「うるさい」あぐっ…!?」
彼女は泣きながらやめてと懇願するが、三日月がスレッタに危害を加えた人を許す事など無く、拳で殴りつける。少なくとも、スレッタが止めない限り、止まる事は無いだろう。
「ま、三日づ…!」
「三日月!やめなさい!」
未だに鼻を抑えるスレッタと、ミオリネが三日月を静止しようとする。
「三日月くん!やめて!!」
「マジでやめろ!そいつ死んじまうぞ!!」
「おいお前もうやめろって!いくら何でもやりすぎだ!!」
ここで三日月を止めるべく、ニカやヌーノ、スペーシアン嫌いのチュチュが動く。具体的には、3人がかりで三日月の体にまるで張り付くように密着し、女生徒から引き離そうとした。
だが三日月は止まらない。3人を振り払おうと必死だ。何時もならスレッタが声を大にして止めれば止まるのだが、彼女達がスレッタに怪我を負わせているのがまずかった。
今の怒り心頭な三日月には、言葉による静止なんて効果が無い。何よりスレッタは、痛みで大きな声が出せない。
このままでは、本当に女生徒が死んでしまうかもしれない。どこかに三日月を力づくで止める事が出来る力自慢の生徒でもいればいいのだが、そんな都合の良い生徒がそう簡単にいる訳も無い。現にこの惨状を見ている殆どの生徒は、遠目に見ているだけだ。スレッタはいっそ、食器を三日月の頭にぶつけて正気に戻そうかと考え始める。
だが、そうする必要は無くなった。
「やりすぎだ。手を離せ」
『あ、昭弘!』
偶然通りかかった地球寮の昭弘が、三日月の腕を掴んで止めたからだ。昭弘程の力があれば、流石の三日月も簡単には振り払えない。おかげで三日月は、女生徒を殴れなくなった。
「離せよ」
「断る。俺もスペーシアンはあまり好きじゃないが、これ以上は許さん」
「は?」
「おい、これ昨日の再現じゃねーか…」
ヌーノの言う通り、これでは昨日の地球寮での出来事の再現だ。このままでは、今度は三日月と昭弘の間で喧嘩になってしまう。
「三日月…」
ここでようやく、スレッタの声が三日月に聞こえるようになった。
「私、大丈夫だから…ちょっと鼻血が出てるだけだから…だから、もうやめて…お願い…」
手で鼻を抑えながら、三日月にやめてと懇願するスレッタ。その目は、とても悲しそうにしていた。
「……わかった」
そんなスレッタを見た三日月は、拳をひっこめる。スレッタが悲しい顔をしているのが嫌だからだ。
「チュチュ!直ぐに教師を呼んできて!」
「あーもう!わかったよ!」
「ちょっと顔触るぞー。あとでセクハラとかいうなよー」
ニカに言われ、チュチュは教師を呼ぶ事にした。いくらスペーシアン嫌いとはいえ、流石にこれをほっとく事など出来ないからだ。そしてその間、ヌーノは殴られた女生徒を介抱する。
因みに昭弘は、念のためずっと三日月を掴んでいた。
その後、三日月にボコボコにされた2人の女生徒は、暫く学園内の病院に入院。幸い、命に係わるほどの大事には至らなかったが、複数回殴られた方の女生徒は奥歯が3本折れてしまっていた。
数時間後 中庭
「で?どうなった訳?」
「えっと、三日月は2日間の停学処分になりました…」
「よく2日程度で済んだわね…」
あの後、駆け付けた教師によって三日月は拘束された。そして教師陣の話し合いの結果、三日月は停学処分を受けたのだった。
「あんた本当にいい加減にしなさいよ?」
「あいつらがスレッタを傷つけたのが悪いんじゃないの?」
「確かに先に手を出したのはあっちだけど、どう考えてもやりすぎ。せめて殴られた回数だけやり返すようにしなさい」
「何で?」
ミオリネが三日月を叱るが、三日月は意に返さない。
「三日月」
「何?」
「今度、あの2人に謝りなさい」
「何で?」
「怪我をさせたから。それに私、何時も言ってるよね?暴力はダメだって。私の事を心配してくれたのは嬉しいけど、暴力はダメ。ましてや女の子を殴るなんて、絶対にダメ。わかった?」
「……わかった」
「本当に?」
「うん」
「なら今度ちゃんと謝りにいくよ?いいね?」
「わかったよ、スレッタ」
(母親…いや、これは姉かしら?もしくは飼い主?)
スレッタの説教は素直に聞く三日月。そんな2人のやり取りを見て、ミオリネは2人の関係性をそんな風に考える。
「でもまぁ、スッキリしたな。いや多少の罪悪感はあるけど…」
「ま、あいつらの自業自得だろ。これに懲りたら、もう嫌がらせなんてやめるべきだな」
チュチュとヌーノは、スペーシアンがボコられたのを見れて少しだけスッキリしていた。
「それでスレッタさん。さっきの話だけど、どうかな?」
ここでニカが、先程の話の続きをしだす。
「えっとその、いいんですか?さっきも三日月があんな事しちゃいましたけど…」
「ヌーノも言ってたけど、あれって自業自得だしね。そこまで気にしないよ。ね、皆?」
若干圧を出しながら、ニカはその場にいる地球寮の3人に話す。
「あーしは1年だけど、地球寮じゃ先輩だかんな」
「ま、いいんじゃね?マルタンは頭抱えそうだけど」
「俺も構わない。だが、もし地球寮の奴らに何かしたら許さん」
「あ、ありがとうございます!」
ニカの圧に負けたのかどうかはわからないが、3人共大丈夫らしい。こうしてスレッタと三日月は、地球寮に入る事となったのだ。
その後、その事実を知った寮長のマルタンは、ヌーノの言った通り頭を抱えた。
「ひぃぃぃ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
「もう悪い事しません!もう2度としませんから、殴らないでぇ…!」
因みに後日、三日月がスレッタに連れられて殴った女生徒の元に行ったが、2人共怯えまくってて碌に会話すらできなかった。
モブ2人はもう2度と嫌がらせをしなくなりました。
ちょっと言葉足らずだったり、説明不足だったりしたかもしれない。ごめんね。
今後は日常回1回挟んで、4号の話に行く予定です。相変わらず遅い筆ですが、気長にお待ちください。