そしてこれが今年最後の投稿になります。今後も更新速度は遅めなので、ご了承ください。
追記 感想にてご指摘があったので1部編集しました。
地球寮の女子部屋に、小さい音で目覚ましアラームが鳴る。それが鳴った瞬間、スレッタは直ぐにアラームを止めた。
「むにゃ…」
未だ眠気が抜けない目をこすりながら、同じ部屋にいる地球寮の生徒を起さないよう静かに見渡しながらスレッタは起きる。時刻は朝の6時前。殆どの学生はまだ寝ている時間だ。
本当ならスレッタも、このままベッドの中でもう少し寝ていたい。しかし、そう出来ない理由がある。ベッドから起きたスレッタは、先ず顔を洗う。そして寝ぐせが付いた髪をセットしなおす。といっても、ヘアバンダナで無理やり整えているだけである。
ミオリネやリリッケがこれを見たら、あまりの雑さに怒るだろう。だって髪は女の子の命なのに、少し水をかけてブラシを適当に流しているだけだ。こんなやり方、髪が痛むに決まってる。
「よし!」
しかしスレッタは、そんな事どうでもいいと言わんばかりだ。寝ぐせを直したら、自分用のロッカーに入っているジャージに着替える。そして地球寮の前まで歩き出す。
「おはよう三日月」
「おはよう、スレッタ」
「じゃあ、2人が来るまで柔軟してよっか」
「わかった」
そこには、スレッタと同じようにジャージに着替えている三日月がいた。あいさつをした後、2人は軽く柔軟運動をする。
そして10分後。
「あ、おはようございます!チュチュ先輩!昭弘さん!」
柔軟運動をしていた2人の元に、ジャージ姿の地球寮のチュチュと昭弘がやってきた。
「おいスレッタ。先に起きてたならあーしも起こせよな」
「あ。ごめんなさい。チュチュさん凄く気持ちよさそうに寝ていたんでつい…」
「……あーしそんな顔してたか?」
スレッタは口にしなかったが、起きた時のチュチュは口から涎をたらして、それは幸せそうに寝ていた。もしかすると、地球にいる家族に会う夢でも見ていたのかもしれない。
「それじゃあ、早速行きましょう!!」
「お、おう…朝からテンションたけーな…」
「俺達がするの、ただのランニングだよな?」
朝からテンションが高いスレッタに、少し困惑する2人。だってジョギングだ。普段から自分達がやっている何の変哲もないランニング。なのにスレッタは、凄い笑顔で嬉しそうだ。
「えへへ、実は夢だったんです。こうして登校前にランニングをするの」
「あー…あー…?」
スレッタが説明をするが、ピンとこないチュチュ。こんな普段やっている事が夢だなんて、よくわからない。
「おいチュチュ。行くぞ」
「わあーってるよ」
昭弘に言われ、チュチュもゆっくりと走り出す。
こうして4人は、朝のランニングへと行くのだった。
「あ、おはようございます!ミオリネさん!」
暫く4人で学園内を走っていると、スレッタ達は何かをバイクで運んでいるミオリネを発見。恐らくトマトの肥料だろう。
「あんたら、朝から何してんの?」
「はい。パイロットは身体が資本だとお母さんに教えてもらいましたので、体力づくりの為に皆さんと朝のランニングを!」
ミオリネの質問に、スレッタは笑顔で答える。スレッタの言う通り、パイロットは身体が重要だ。モビルスーツの操縦は、とても体に負荷がかかる。なんせモビルスーツは機動兵器。通常の戦闘機や戦車とは比べ物にならない動きをする。
その為、搭乗しているパイロットにはかなりのGが掛かるのだ。しっかり鍛えていないと、モビルスーツを動かすだけで気を失ってしまったりする。だからこそ、基礎体力作りはとても大切なのだ。
「あんまり走りすぎないようにね。朝から過度な運動しちゃうと、授業がきつくなるわよ。肌にも悪いし」
「わかりました!それじゃ!!」
ミオリネに笑顔であいさつをしたスレッタは、再び皆と走り出す。
「じゃあね、トマトの人」
「だからミオリネ・レンブランだつってんでしょうが」
そして三日月も、ミオリネに一言言ってから走り出す。尚、未だにトマトの人呼ばわりだ。ここまでくると、もう態とではないかとさえ思ってくる。
(何だかんだ、一緒に朝のランニングするくらいには仲が良くなったわね…)
そんなスレッタの背中を、ミオリネは少しだけ嬉しそうな顔をして眺める。例の三日月が起こした暴力事件、あれから既に1週間。最初こそニカの厚意に甘えた状態で地球寮に入っていたので色々と不安はあったが、どうやら杞憂だったらしい。
(まぁ、問題はスレッタじゃなくて三日月の方なんだけどね…)
スレッタは少しだけ引っ込み思案でこそあるが、誰とでも仲良くなれる素直な子である。
しかし、三日月は違う。
彼はスレッタ以外とは、まともに話そうとしない。今でこそスレッタとミオリネの説得のおかげで、地球寮のメンバーとある程度は話せているが、それでもまだどこか壁がある。
スレッタも一緒にいる以上、あまり地球寮のメンバーと壁を作るのはスレッタにも良い影響は無いだろう。どうにかして、三日月をもう少しだけ地球寮に馴染ませないといけない。
(なんかきっかけがあればいいんだけど…)
ミオリネはそんな事を考えながら、バイクを走らせて温室へ向かうのだった。
「「あ」」
ミオリネが温室へ向かっている時、スレッタ達はあまり出会いたくない面子と出会っていた。
「あ、ホルダーの人」
「おい」
「だ、ダメだよ三日月!グエルさんはもうホルダーじゃないんだから!」
「そっか。じゃあ……ホルダーじゃない人?」
「はっ倒すぞてめぇら」
「ぷ」
「そしてお前は笑うの堪えてるんじゃねぞジュリエッタ」
それは決闘で戦ったジェターク寮のグエルと、アリアンロッド寮のジュリエッタだ。因みにグエルの後ろには、何時ぞやの温室で見た3人もいる。
「貴様らぁ…!兄さんになんて事を…!」
「ラウダ先輩!落ち着いてっす!!」
「そうですよ!私もむかつきましたけど兎に角今は落ち着きましょう!」
敬愛する兄を侮辱されたと感じたグエルの弟ラウダは、スレッタと三日月を睨みながら詰め寄ろうとする。そしてそれを後輩であるフェルシーとペトラが必死で押える。2人共、これが原因で三日月に何かされたらヤバイと思っている故の行動である。
なんせ今目の前にいるのは、1週間前に暴力事件を起したあの三日月だ。ただでさえ、入学初日にグエルの首を掴みあげるという行動を起こしているし、今度はマジで首を折るような行動を起こしかねない。だからこそ必死で止める。
「おいおい。クソスペーシアン共は現ホルダー様にまともに挨拶もできねーのかぁ?あぁん?」
「は?何で私達がお前らに挨拶とかしないとけない訳?頭沸いてんの?」
「おいやめろチュチュ、ニカに言われた事を忘れたか?」
「ペトラも落ち着いて!」
しかしスペーシアン嫌いのチュチュが煽った事により、場の空気はどんどん悪い方向へ行く。非常にマズイ流れだ。
「え、えっと!皆さんも朝のランニングを!?」
このままでは何がきっかけで三日月が暴発するかわからない。ただでさえ既に停学処分を受けているのだ。これ以上何かあると、退学だってあり得る。なのでスレッタは話題を作って、気を反らすようにした。
「ええ、そうです。パイロット科であれば体力作りは必須。なので普段からこうして朝は走っています。あ、因みにですがグエル先輩と一緒なのは偶然ですよ?私、彼の顔とか基本見たくもありませんので」
「癪だがこいつの言う通りだ。体力の無いパイロットはパイロットじゃないからな。本来ならジェターク寮のトレーニングルームでやるんだが、生憎今日はメンテ中でな。おかげでこっちも見たくも無い顔を見る事になっちまったが」
「こっちの台詞ですよ。私は1人で走るのが好きなのに、朝から嫌な物を見てうんざりしてるんですから」
「んだとてめぇ?」
スレッタの機転のおかげで三日月が暴発する事は無くなったが、代わりにグエルとジュリエッタがいがみ合う事となってしまった。
「仲良いね」
「「どこが!?」ですか!?」
「え?だってこういうの喧嘩する程仲が良いって言うんじゃないの?」
「えっと三日月?多分だけどあの2人は本当に仲が悪いと思うよ?」
三日月はこの前覚えた諺で2人の関係性を例えるが、グエルとジュリエッタは真っ向からこれを否定。断じてそんな関係では無い。ただ純粋に、とっても相性が悪いだけなのだ。
「兄さん。これ以上そいつらに付き合う必要は無いよ。時間もあまり無いし、さっさと行こう」
「……そうだな。そうしよう」
ラウダに言われ、グエルは再びランニング再開。その後にフェルシーとペトラも続く。
「おい!スレッタ・マーキュリー!!」
「は、はい!?」
だがその場から去る前に、グエルはスレッタの方に振り返る。
「今は色々あって無理だが、何時の日かお前らは俺が倒す!それまで誰かに負けるのは許さん!わかったな!?」
そしてそう言い捨てると、今度こそランニングを再開。あっと言う間にその場から離れていった。
「グエル先輩と同じで癪ですが、三日月・オーガス。貴方は何時の日か、私が倒します。それじゃ」
その後を、ジュリエッタが追う。グエルと同じような捨て台詞を吐いて。
「お前ら、面倒な奴らに目付けられてんだな…」
「あははは…」
チュチュがスレッタと三日月に同情するような目線を送る。確かにホルダーともなれば色々と面倒な奴に目を付けられるだろうが、あれはその中でも特別面倒だろう。まるでひと昔前の少年漫画のライバルだ。というかリアルであんな事言う奴初めてみた。
「俺達も行かない?」
「あ、そうだね。行こっか」
3人が少し面食らっている中、三日月だけは平常運転である。こうしてスレッタ達は、朝のランニングを再開するのであった。
昼休み
「えっと、朝友達とランニングをする。一緒に授業を受ける。友達と一緒にランチを食べる。えへへ、やりたい事リストが一気に3つも埋まっちゃいました」
スレッタの周りには、地球寮のメンバーとミオリネと三日月がいる。その全員で、共に昼食を食べていた。そしてスレッタの手には、やりたい事リストが入っている端末がある。今日だけで3つも埋まり、スレッタはかなり喜んでいた。
「朝言ってたのはそれか」
対面に座っているチュチュは、朝スレッタが言っていた事がよくわからずにずっとモヤモヤしていたが、今ようやく謎が解けてスッキリしていた。
「やりたい事リストかぁ…結構バカに出来ないんだよね」
「そうだな。日常の充実感を得る事とかできるし、見える化が出来るしね」
マルタンとアリヤの言う通り、スレッタがやっているやりたい事リストは決して馬鹿に出来ない事なのだ。これをやってみると、自己分析が出来たり、目標が明確にされ、モチベーションがあがったりする。
その結果、理想の自分へと近づく事が出来る。人生をより良い物にする為には、割と効果的な事なのだ。
尚スレッタ本人は、そこまで考えていない。ただ本当に学校でやってみたい事をリスト化しただけである。
「あぐ…むぐ…」
「あんたはもう少し綺麗に食べなさいよ。口の周りケチャップだらけじゃない」
スレッタの両脇を陣取っているミオリネと三日月。三日月は黙って食事を続けているが、口の周りが汚れてしまっている。
「あ、ダメだよ三日月。ほらこっち向いて」
そんな三日月に口に、紙ナプキンを当てて汚れを拭きとるスレッタ。三日月も一切動揺せずに、それを受け入れる。
「ありがと、スレッタ」
普通なら恥ずかしい筈なのに、こうして平然とお礼を言える辺り、もしかすると日常的にやっている事なのかもしれない。これをグエルが見たら憤慨しそうである。
「……」
尚、ミオリネは普通に嫉妬していた。そして素早く自分の口元にケチャップを付けようかと思ったが、どうあってもここにいる全員にバレそうなので寸前で思いとどまった。賢明である。
「こいつら、本当にそういう仲じゃ無いんだよな?」
「これは恋人って言うより姉弟だろ」
オジェロとヌーノの言う通り、今の2人からは恋人特有の甘い空気は感じられない。地球寮に入った当初こそ、リリッケが2人はそういう関係だという噂を信じていたが、数日も経ったら恋人と言うよりは姉弟という関係がしっくりくる事を発見。以来、2人に対して気ぶるのをやめた。
「俺も弟の昌弘が小さい頃、あんな事してたな」
そして昭弘は、2人のやり取りを見て少し懐かしい気分になっていた。
「にしても、結構食べるんだね三日月くんって」
「ですねー。凄いですー」
「うん。よく食べるのは良い事だ」
ニカの言う通り、三日月はかなりの量を食べている。食べているのは所謂ナポリタンのようなものなのだが、その量が多い。通常の2倍近くある超大盛だ。それを三日月は、もくもくと食べている。
身長はチュチュと同じくらいだというのに、食べている量は地球寮で1番身体がデカい昭弘と同じくらいだ。そんな三日月を、リリッケとティルは凄いと感心する。
「僕、少し気分悪くなってきたよ…」
地球寮寮長のマルタンは、男子にしては小食なためこの量に驚き、ちょっとえずく。
「ところでさ、なんかこの席の周り、人いないね」
三日月が周りを見渡すと、確かに地球寮が使っている大きなテーブルの周りだけ、露骨に人がいない。この席の周りだけ、何故か皆が席をひとつふたつ開けて座っている。
「そりゃお前が1週間前にあんな事したらこうもなるだろう。あーしはクソスペーシアン共が近くにこねーから最高だけどな!」
チュチュの言う通り、こうなっている原因は三日月にある。1週間前、三日月はスレッタに水の入ったコップをぶつけた女生徒2人を、一切の容赦無くボコボコにした。
ニカや昭弘達が止めに入ったおかげで、2人の女生徒は幸いそこまで大きな怪我はなかったが、その光景を目撃した大勢の生徒が三日月を恐れるようになってしまったのだ。
更に生徒達の中には『スレッタ・マーキュリーに手を出してはいけない』という暗黙のルールさえできている。同じように、2人が所属している地球寮にも今は手は出さない方が良いというルールも出来てしまっている。
その結果が、触らぬ神に祟りなしと言わんばかりのこの妙な間である。
「まぁ、チュチュの言う通り悪くはねーけど、なんかなぁ…」
複雑な顔をするオジェロ。確かにスペーシアンからの嫌がらせは無いが、腫もの扱いのようで少し居心地が悪い。こっちが気を使ってしまいそうである。
「ははは…誰かにからかわれないのは良い事なんですけどね…」
乾いた笑いをするスレッタ。しかし、これではいけない。せっかく自分達を誘ってくれた地球寮の皆に悪い。
更に言えば、もっと不安なのが今後も三日月がこの前と同じ事をし続けてしまったら、今以上に大変な事になるかもという事だ。速い内に、対策を作らないといけない。
地球寮
「と言う訳で、急遽三日月に対する今後の学校生活についての講座を開く事にしたわよ」
「何でクソスペお嬢様が仕切ってるんだよ。しかも地球寮で」
「まぁまぁチュチュ」
地球寮内の談話スペース。そこには地球寮の面々とミオリネがいる。そしてこれから、今後の学園での生活を三日月に教えるつもりだ。
「先ず質問するけど三日月。もしも、スレッタに危害を加える生徒が出てきたらどうするつもり?」
「殺す気でぶちのめすけど?」
「そういうとこよ」
ミオリネの質問に、三日月は瞬時に答える。
「だめだよ三日月!こ、こ、こ、殺しちゃうとか!せいぜいちょっと怪我させるくらいに抑えてよ!」
「いやそうじゃないでしょ」
「おいこいつ染まってきてるぞ」
若干スレッタも思考が三日月になっている。これは危険だ。
「あのね三日月。そうやって全員に必要以上の仕返しをしていたら、その内あんたの居場所が無くなるわよ?」
「そうなの?」
ミオリネ自身は、別に仕返しを否定はしない。やられた分はやり返す。これ程わかりやすく、素敵な言葉もそうは無いだろう。
しかし、三日月はやりすぎる。仮にミオリネが誰かから侮辱されたりしたら、その分だけやり返す。だが三日月は、やられた以上の事をする。その最たる例が、先週のアレだ。
「良い事三日月。仕返しっていうのはね、必要以上にやるとダメなのよ。時には必要かもしれないけど、普段は精々自分がされた事と同じくらいかそれより小さく納めないとダメなの。その時はスッキリするかもしれないけど、その後にあるのは孤独よ。あんたはいずれ必ず1人になるわ」
今後も三日月があんな事を続けてしまえば、まず間違いなく周囲からの評価が悪くなる。『あいつに関わると、こんなにひどい事をされる』とか『あいつは危険な奴だ』とか言われ、どんどん人が遠ざかっていくだろう。
更にそういった評価は、自分の周りの人にも影響する。『あいつの近くにいるから、あいつも同じなんだ』と言われ、何もしていないのに人が遠ざかる。
「俺は1人でも気にしないけど」
「そうじゃない。あんたが良くても、スレッタが良くないのよ」
1匹狼気質の三日月であれば1人でも良いかもしれない。しかし、優しいスレッタは違う。
「仮にあんたが今後もあんなやり方をしていったら、さっき言ったようにどんどんあんたの評判が悪くなる。最初はあんただけの評価でも、それはいずれ必ずスレッタの評価になるわ。だってあんたら、いつも一緒にいるんだし」
2人はもう10年以上の付き合いがある幼馴染。そして普段から、基本的に一緒に過ごしている。そんな2人の内片方が暴力事件を起していくとどうなるか。人とは醜いもので、一緒にいる=同じ様な奴と判断するのだ。
「そうすればいずれ、間違いなくスレッタも周りから排除される。そうなったら、スレッタが楽しみにしている学校生活が送れなくなるわ。折角楽しみにしてここに来ているのに、これじゃ楽しくない学校生活になる。あんた、私にスレッタを悲しませたら許さないとか言ってたくせに、自分はスレッタを悲しませてもいいとか言う訳?」
「……」
そう言われてしまうと、何も言い返せない三日月。確かにその通り。自分であんな事を言っておいて、自分がスレッタを悲しませてしまえば、筋が通らない。
「三日月先輩、そんな事言ってたんだ…!」
「どうしてリリッケはそう嬉しそうなんだよ」
三日月の『娘を泣かしたら許さん』ムーブに、リリッケは黄色い声を出す。やはり2人は、とても固い絆で結ばれているんだと。これはこれで楽しそうな話題である為、リリッケは食いついた。そして特段、そういう話題に興味の無いオジェロはうんざり顔だ。
「スレッタ。念のため一応聞くけど、君達はそういう関係では無いで良いんだよね?」
「はい…三日月とは家族みたいなものなんで…その、恋人とかそんなんじゃなくて…」
念のためアリヤがスレッタ確認を取るが、やはり違うらしい。2人の関係性で1番近いのは、やはり姉弟だろう。
「まぁでも、俺も弟を悲しませるような奴がいたら絶対に許さねぇな」
「昭弘の言う通りだ。あーしも家族をバカにしたり悲しませる奴がいたらぜってー許さねぇ。てかボコす」
家族思いな昭弘とチュチュは、三日月が言ったという発言に同意する。もしも自分の家族を悲しませる奴が目の前にいたら、絶対にぶちのめす。
「じゃあどうすればいいの?俺、手加減とか出来ないんだけど」
ミオリネの言葉を聞く三日月だが、彼は手加減なんて器用な真似が出来ない。水星というかなり荒んだ環境で幼少期を過ごしたせいで、手加減を覚えなかったからだ。
小さい頃の環境とは重要で、その後の人生に大きく影響を与える。その後のその人の人格を、形成していくからだ。スレッタのように母親がいれば違ったのだろうが、三日月にはいない。小さい頃に、事故で死んでしまったから。
「仮に相手が危害を加えてきたら、無力化すればいいわ。例えば、スレッタに聞いたけどそこにいるチュチュの腕を掴むとかね」
「おいこらふざけんな。あれめっちゃ痛かったんだぞ」
ミオリネは三日月に提案。それは殴って黙らせるとかじゃなくて、相手の無力化。前にチュチュにしたやり方であれば、少なくとも大怪我を負う事は無いだろう。やりすぎると骨折とかになるだろうが。
「わかった」
「あとあんた。威嚇もダメよ。それもスレッタを悲しませる要因になるから」
「それも?」
「ええ。今度スレッタに嫌味言うような奴がいたら、そもそも相手にしない事」
更にミオリネが提案したのは、無視である。争いは同じレベル同士でしか発生しないという言葉がある。相手と同じレベルならば、自分は相手に勝てるかもしれないと思うもの。
だからこそ、同じレベル同士で争いが発生する。ならば、いくら向こう側が喧嘩を売ってきても相手にしなければいい。そうすれば、三日月が手加減をせずに相手をぶちのめす事も無いだろう。
「なんか、納得できないなそれ…」
しかし、三日月は困り顔。というより、納得できていない。だってこれでは、相手が言いたい事を言うだけ言ったり、やりたい事をやるだけやる事になる。その過程でスレッタが嫌な思いをしても無視しろというのは、納得できない。だってスレッタが傷つく姿は、三日月が1番見たくない姿なのだから。
「納得できる出来ないじゃないの。やりなさいって言ってるの。それがスレッタを傷つけない1番の方法よ。慣れなさい。それにね、相手をするっていうのは、そんな奴らと同じレベルに自分はいるって言っているようなものなのよ?嫌でしょうそんなの」
「……」
未だ納得できない顔をする三日月。しかしスレッタを悲しませないには、これが1番らしい。それに、そんな奴らと同じとか流石に嫌だ。
「そうですよ三日月先輩。相手にしない事が余計なトラブルを生まない1番の手段ですし」
「リリッケの言う通りだよ。多少むかついても、無視すればいいんだって」
リリッケとニカもミオリネに同調。
「三日月。お願い」
そしてスレッタもミオリネの案に同意し、三日月にお願いする。
「……わかった。今後は威嚇とかもしないよ」
「よろしい」
こうして三日月は、渋々ながらもミオリネの案に乗るのだった。
「あと、もしスレッタに直接怪我とかさせる奴がいたら決闘でやり返しなさい。それなら特に問題無いから思う存分できるしね」
「うん、わかった」
「えー…ミオリネさん、それは…」
「何よ?学校のルールに則っているだけだからいいでしょ」
それはそれで三日月がやりすぎそうで心配である。スレッタは、可能な限り三日月には決闘をさせないと決めるのであった。
翌日
「えへへ、またひとつリストが埋まっちゃった」
「よかったね、スレッタ」
スレッタは校内を三日月と共に歩いていた。先程のモビルスーツを使った授業で、やりたい事リストが埋まって気分も良い。因みに埋まったリスト内容は、1回で試験を合格するというものである。
「この後は、寮でエアリアルとバルバトスの解析だったよね?」
「そうだよ。もう搬入は終わってるから、今日からやるんだって。まぁ、搬入しても色々準備があるから、今日直ぐ解析が出来る訳じゃないってニカさんが言っていたけどね」
授業も終わり、今日はこれから地球寮でエアリアルとバルバトスの解析を行う予定だ。なので2人共、寄り道せずに地球寮へ向かっている。
「おい、そこの水星人」
歩いていると突然。横から声をかけられた。2人揃って横をみると、初めて見る男子生徒が1人。
「お前、一体どんな卑怯な手段でホルダーになったんだ?まぁ、アーシアンしかいない地球寮にいれば卑怯な手段くらいいくらでも思いつくんだろうけどな。それとも、決闘委員会の連中をどうにかして抱きこんだか?」
突然現れて失礼な事を言う彼は、地球圏生まれのスペーシアンだ。普段からアーシアンを見下しており、このように酷い事を言う。彼は三日月が女生徒2人を医務室送りにしたのを知っているが、あれは相手が女子だったのと、不意を突かれたからだと思っている。
自分はパイロット科に所属して、普段から訓練をしているし、今全身全霊で三日月を警戒している。これならば、簡単にやられる事は無いだろう。
「なんとか言ったらどうなんだ?それとも、何も言い返せないのか?」
そんな彼に対して2人は、
「「……」」
「あ、あれ…?」
ガン無視してそのまま歩きだした。
「え?お、おい!!」
「先ずは私のエアリアルから色々調べるんだよね?」
「うん。その後はバルバトスだよ。今日だけで終わらないだろうけど」
「お、おいこら!!」
ひたすら無視して歩く。ここで反応すれば、あれと同じレベルになる。そんなの、凄く嫌だ。なので徹底的に無視する。相手が何を言ってきても、無視する。
「な、何なんだよ…」
結果、相手の方が先に折れて、それ以上は何も言ってこなかった。何だかよくわからないが、負けた気分である。
「三日月。よく我慢したね」
「あれくらいなら別に大したこと無いよ」
地球寮へ向かう道中、スレッタはほっと胸を撫で降ろす。流石にあれくらいなら三日月が手を出す事は無いだろうが、
やはりちょっと緊張した。
「三日月。ミオリネさんはああ言っていたけど、本当に暴力はダメだからね?」
「うん。わかってる。そうしないとスレッタが悲しむんでしょ?」
ミオリネは1回だけなら問題無い的な事を言っていたが、やはり暴力はダメだ。そして三日月も、ミオリネにああ言われた手前、今後は瞬時に手を出す事を控えるよう気を付ける事にしている。先週のような事をしたら、スレッタが悲しむから。
(まぁ、最後の手段としてなら容赦なくやるけど)
最も、決して暴力をやめた訳じゃない。あくまで頻繁には使わないだけだ。いざとなれば、容赦なく使う。だとしても、これはかなりの凄い事なのだ。幼い頃から三日月を知っているスレッタから見れば、これはとんでもない成長である。
(学校にきて、本当によかった)
もし学校に行かなければ、三日月もこんな風に成長しなかっただろう。仮に成長したとしても、もっと時間がかかったかもしれない。スレッタは、自分と三日月を学校に通わせてくれた母親に感謝をした。
「あれ?どうかしたのかな?」
そうこう話していると、地球寮へたどり着いた。しかし、少し様子が可笑しい。
「あ、スレッタ先輩!良い所に!」
「はい?」
リリッケがスレッタに駆け寄る。
「実は、今からあのエラン先輩が決闘をするんですよ!!」
「……ええ!?」
「弁当の人が?」
そして驚くべき事を言うのであった。
後半がちょっと説教臭くて蛇足感があるかな?変なところがあれば言って下さいませ。編集いたしますので。
次回はエラン関係ですけど、ほぼ何も考えていないので、また気長にお待ちくださいませ。
それでは皆さん、良いお年を!