あと今更ですが、本作は基本的には水星本編通りの流れで行きます。でも最後のクワイエットゼロとかは多分かなりオリジナル入ると思う。
まぁ、そこ書くのいつになるかって話ですけどね。
地球寮 男子部屋
「スレッタが、あのエランとデートねぇ…」
「それもモビルスーツを使ったデートねぇ…」
男子が就寝する部屋では、明日スレッタがペイル寮のエランとデートをするという話題で持ち切りだった。いくら男子が女子よりこういった話題をしないと言っても、全くしない訳では無い。やはり学生である彼らも、こういう話題には食いつくものなのだ。
ただ、その内容は女子のように和気藹々とは少しだけ違う。
実はエランがスレッタをデートに誘った時、どういう訳かスレッタのモビルスーツであるエアリアルも一緒にと言ってきたのだ。エラン曰く『興味があるから、一緒に乗せて欲しい』との事。
これを例えるなら、モビルスーツを使ったドライブデート。もしくは、どこぞの怪異に好かれている男子高校生が体験した保護者同伴デート。そんな感じでだろう。正直、普通のデートでこんな事はしない。
「マルタン。これ、デートって名前のスパイ活動だったりしないか?」
「やっぱり、ティルもそう思う?」
「まぁね」
その普通とは言えないデートに、地球寮の男子達は訝しむ。エアリアルは現在、禁止されている兵器であるGUND-ARM疑惑があるモビルスーツ。その戦闘能力は、非常に高い。
実際、審問会ではエアリアルの興味津々な役員もいたくらいだ。尤も、彼らは今バルバトスに夢中なので、エアリアルに対する興味はほぼ失せてしまっている。
しかしそれでも、エアリアルを欲しがる人はいる筈だ。だから地球寮の面々が、ペイル寮所属のエランがスレッタに近づいてきたと思うのも仕方が無い。
無論、エランが本当にスレッタとデートをしたいからという可能性もあるが。
「なぁ三日月。お前はどう思ってるんだよ」
オジェロは、ベッドに寝そべっているスレッタの幼馴染の三日月に尋ねる。彼ならば、今回のデートについて何か思う事があるかもしれない。
「スレッタがしたいって言ってたし、デートくらい別にいいんじゃない?」
「いいのかよ」
だが三日月は、特にこれといって気にしていない様子。むしろデート推進派にすら聞こえる発言をする。
「そもそもエアリアルが欲しいとしても、白昼堂々スパイなんてしないでしょ」
「いやまぁ…それはそうかもしれんけど…」
三日月の言う事は尤もだ。普通スパイ活動というのは、人知れずひっそりとやる。中には某007のようにド派手にするスパイもいるだろうが、普通はしない。
もしエランがエアリアルの情報が欲しくてスパイ活動をするにしても、こんな白昼堂々はしない筈だ。どうせやるなら、スレッタに決闘を挑んで勝ち、エアリアルを手に入れた方がずっと安全だし。
まぁ、実際はエランはそういうつもりでスレッタとデートをやるのだが。
「だとしてもお前、いいのか?もしかすると、スレッタがエランに獲られるかもしれねーんだぞ?」
それはそれとして、オジェロにはもうひとつ気になる事がある。それはスレッタの事。三日月とスレッタは、水星から一緒にやってきた幼馴染。そんな幼馴染に、もしかすると恋人が出来るかもしれない。
もしそうなったら、今後スレッタは三日月よりエランを優先するだろう。誰だって、家族より恋人を優先するのは当たり前だ。その事で、三日月はエランに嫉妬しないのか。リリッケ程では無いが、その辺が気になる。
「別に、弁当の人ならいいかな」
「マジかお前」
「だって良い人だし」
だがそれも、三日月は別に気にしていない。というか、エランであればスレッタとくっついても良いとすら言う。これも全て、エランが最初に独房で拘束されている三日月に弁当を差し入れしていたおかげだろう。人は、第一印象がとても大事なのだ。
「ところでさ、話はちと変わるけど、この中でデートをした事ある奴いる?」
スパイ云々の話は1度置いておくとして、オジェロは部屋にいる地球寮の男子達に質問をする。デート。それは男女が遊びに行く事を言う。実際、アスティカシアでもデートを行う生徒はいる。オジェロだって、そういうのに多少は憧れてもいるが、当然経験は無い。なのでデートがどういうものかよくわからない。
だから部屋の中にいる皆に聞いてみた。ひょっとしたら、そういった話が聞けるかもと思って。
「んな暇なかったし」
孤児であるヌーノは、そんな余裕など無かったので経験無し。
「特に興味が無い」
ティルは特にそういった事に興味が無いらしく、同じく経験無し
「僕みたいなナヨナヨした男なんて、誰にも相手にされないし」
マルタンは興味はあれど、誰にも相手にされなかった為経験無し。これだけ男が揃っていながら、誰もまともなデートというものをした事が無い様子。残念である。これがアーシアン差別かとオジェロは思う。
と、その時である。
「あー、一応あるな」
『はぁ!?』
昭弘がとんでもない発言をした。
「おいおい待て昭弘!!お前いつの間にそんな相手がいたんだよ!?」
「そうだぞ昭弘。非モテ同盟の誓いを忘れたか」
「俺はそんな誓い立ててねーぞ」
オジェロとヌーノが昭弘に食って掛かる。これまで、そういう話を1度もした事が無く、最もそういう話題から縁遠いと思っていた昭弘がまさかのデート経験者。こんなの、驚かない筈が無い。
「デートって言ってもな、学校に来る前に、世話になっていた企業の人と一緒に出掛けたってだけだ。丁度コロニー内で縁日みたいなのやってて、そこで一緒に食べ歩きしたり、射的でクマのぬいぐるみ獲ったりしたくらいだ。もう何年も前だぞ」
「十分デートじゃねーか」
昭弘の話にヌーノは突っ込む。縁日に2人きりで出かけて、出店を見て回るなんて、誰がどう聞いたってデートだ。ただのお出かけで、こんな事はしないだろうし。
「それどんな子だ!?」
「いや近けぇよオジェロ。どんなって言っても、俺より6つ年上で、俺にモビルスーツの操縦技術を叩き込んでくれた恩人だ。今も木星圏の企業で働いている」
「と、年上のパイロットのお姉さん…!」
昭弘が言う年上という単語にオジェロは反応する。思春期の男子に、年上の女性というのは非常にそそられる単語だからだ。男子なら、誰だって経験がある事だろう。
「写真とかねーのか?」
「無いな。会社に戻ればあるだろうが、俺はそういうの持ってない」
出来ればそのご尊顔を拝んで見たかったが、生憎昭弘は写真を持っていないらしい。
「一体どんな人なんだ…パイロットだから、やっぱりスタイル抜群で茶髪の巨乳とか?」
「それもあるかもだが、個人的には銀髪で腹筋が割れてて、ちょっとツリ目のクールな人が思い浮かぶ」
「わかる。それもいいよな」
2人で色々妄想する。パイロットであれば、少なくとも肥満体系ではないだろう。じゃないとパイロットスーツを着れないだろうし、アスティカシアに所属しているパイロット科の生徒も皆スタイルが良い傾向があるからだ。スレッタもこれに当てはまる。
そこに年上という要素が加われば、色々妄想し放題だ。
「気持ち悪ぃ…」
そんな2人を、昭弘は冷めた目で見る。そしてもし、そのパイロットのお姉さんが学園に来る事があっても、絶対に2人には会わせない様にしようと決めた。
「えっと、三日月。因みに君は?」
「ある訳ないじゃん。そもそも水星って何も無いとこだし」
「ははは、だよね…ごめん…」
「何で謝るの?」
そんな2人をよそにマルタンが三日月にデートについての質問をするが、三日月も自分と同じで経験など無いらしい。そもそも水星には、本当に娯楽施設なんて無い。精々、エアリアルのデータにあるアーカイブ映像を見るか、ゲームをするかくらいだ。そんな場所でデートなんで、出来ないだろう。
最も、デートをしてなくても2人は常に一緒にいたので、ある意味毎日デートしていたようなものかもしれないが。
「あ、俺だ」
そうやって皆が話していると、三日月の携帯端末が鳴る。三日月はそれを手に取り、画面を見ると、
「……プロスペラ?」
そこには、スレッタの母親であるプロスペラの名前が表示されていた。
翌日 モビルスーツハンガー
そこでは地球寮の皆が、エアリアルをコンテナに積み込んでいた。スレッタはエランとの約束通りに、エアリアルと一緒にデートに行くつもりだ。
皆が協力してくれたおかげで、作業は順調に進んでいる。これなら、エランとの約束の時間に間に合いそうだ。
「スレッタァ!!あんた私の言葉忘れたの!?御三家は敵だって言ったでしょうが!!だって言うのにエランとデート!?ふざけんじゃないわよ!!」
ただ1人、もの凄い剣幕で反対しているミオリネがいるのが不安だが。というかミオリネには黙っていた筈なのに、一体彼女はどこで今回のデートの事を知ったのだろうか。もしかすると、グラスレー寮寮長辺りから入れ知恵でもあったのかもしれない。
「さぁスレッタ先輩!私達がミオリネ先輩を抑えている間に!」
「行ってらっしゃい」
「え、えっと!ありがとうございます!」
リリッケとティルがミオリネを抑えながら、スレッタに早く行くよう促す。それを聞いたスレッタは、そそくさとコンテナに乗り込む。
「スレッタァ!ロミジュリったら許さないからね!!」
ミオリネのよくわからない言葉を聞いてか聞かずか、スレッタはあっという間にコンテナを発進させるのだった。
「ていうか三日月!!三日月はどこに行ったのよ!?あいつ、自分の幼馴染が別の男とデートしに行ってるこの状況に何もしない訳!?今だけエラン殴るの許可してやるから出てきなさいよ!!」
去って行くコンテナを見ながら、ミオリネは三日月を探す。小さい頃から一緒にいる異性の幼馴染が別の男の毒牙にかけられるかもしれない状況なのに、何もしない事に腹が立つからだ。完全にただの八つ当たりではあるのだが、せめて1回何か言わないと気が済まない。
そんなミオリネに、ヌーノが答える。
「あー。三日月だったら、昨日の夜にシン・セーから呼び出し食らって、朝1のシャトルで本社に向かったぞ」
「は?」
三日月は今日、学校にはいない事を。
シン・セー開発公社 本社手術室
「久しぶり、三日月くん」
「ん」
三日月は昨夜、プロスペラから連絡を受けて、シン・セー本社の最奥にある手術室へと1人でやってきていた。ここは、シン・セー本社内で最も警備が厳重な部屋。もし許可が無い者がここに来ようとしたら、対人武装が施されたハロが沢山襲い掛かって来るだろう。三日月がここに簡単にこれたのは、ひとえにプロスペラの許可があったからである。
「本当なら少しお茶でも飲みながら色々お話したいんだけど、あまり時間も無いし、何より貴方はそういうの好きじゃないだろうから、さっさとやりましょうか」
「わかった」
プロスペラに言われ、三日月は服を脱ぎ、上半身裸になる。そして黙って、中央にある手術台の上にうつ伏せに乗る。
「じゃ、始めるわよ」
手術台にうつ伏せになった三日月の背中に、プロスペラは先端に特殊な器具が付いたチューブを差し込む。
「っ」
一瞬、三日月の頭に痛みに似た感覚が伝わる。阿頼耶識システムを通して、脳に直接情報が一気に流れ込んできたからだ。
だが三日月は、その感覚を我慢し飲み込む。そしてプロスペラは、そんな三日月の事をあえて無視して、室内に設置されている端末を使い三日月の体を診断する。
「ふむ。阿頼耶識は問題なさそうね。体になにか違和感とかは無い?」
「特に無いね」
端末に映るのは、三日月に埋め込まれている阿頼耶識システムの情報。プロスペラはその情報を見ながら、キーボードをカタカタと打つ。
そう。これは三日月の阿頼耶識システムの調整なのだ。阿頼耶識は、プロスペラがバルバトスから抽出したデータにより再現された大昔の技術。このおかげで、三日月はバルバトスを完璧に近い形で動かせる。
しかし、体にナノマシンを埋め込むというのはプロスペラでも経験が無かった事。もし今後、三日月の体に不調があったら申し訳が無い。なのでこうして、定期的な診断をしているのだ。
「三日月くん。学校は楽しい?」
「まぁね。水星じゃ出来なかった事が出来るのは楽しいよ」
「ふふ、楽しんでいるならよかったわ」
阿頼耶識のチェック中、プロスペラは三日月と会話をする。
「スレッタは、どうかしら?」
「楽しんでいるよ。今日も弁当の人とデートするみたいだし」
「……そう。すっかりティーンエイジャーの学生みたいになったわね」
その話は、昨夜スレッタ自身から聞いているのでプロスペラも知っているが、弁当の人とはなんだろうか。間違いなく三日月がエランに付けたあだ名なのだろうが、何がどうしてそんなあだ名が付けられたかがわからない。恐らく、エランが初対面時の三日月に弁当を渡しでもしたのだろうが。
「ところで前に決闘していたけど、バルバトスはどうだった?」
「凄く良かったかな。まるで自分の体みたいに動いてくれるし、6感ていうの?あれがバルバトスを通して自分の中に入ってくれるから、例え真後ろに敵がいてもすぐ気が付くし」
「成程。阿頼耶識様様ね」
話題は学校での生活から、決闘で使用したバルバトスについて。バルバトスは阿頼耶識システムを使用しているガンダムフレーム。その戦闘能力は、現在存在しているモビルスーツを凌駕している。
尤も、これでも決闘用にリミッターが掛かっている状態なので、その力を完璧に発揮している訳では無いのだが。仮にバルバトスがその力を遺憾なく発揮したら、エアリアルでも勝てないだろう。
「そうそう。スレッタに怪我をさせた生徒を殴ったって聞いたけど、今後はあまりそういうのはやめた方がいいわよ。そんな事ばかりしてると、敵しか作らないから」
「それトマトの人にも言われたからもうしないよ。でも、スレッタに怪我させたらやっぱり許せない」
「貴方のスレッタを守りたいって気持ちはわかるけど、あまり目立ってはダメ。やるなら決闘でやりなさい」
「それもトマトの人に言われたよ。ていうか、まだ?」
「まだね。もう少し我慢して」
プロスペラによるこの阿頼耶識システム診断の時間は、三日月にとって退屈でしかない。これがないとバルバトスを扱えないので仕方が無いが、それでも退屈なのは退屈。体は動かす事が出来ないし、プロスペラとの会話はあまり楽しくない。何より、何か裏があるプロスペラに体を弄られている感覚が好きじゃない。
(まだかなぁ…)
退屈な思いをしながら、三日月はそのままプロスペラと多少の会話を挟みながら、時間が経過するのを待つのだった。
30分後―――。
「はい、終わり。これで今日の診断は終わりよ」
「問題無いの?」
「ええ。体も阿頼耶識も問題無いわ」
ようやく、この退屈な時間が終わった。診断の結果、三日月も阿頼耶識も問題無し。これなら、再びバルバトスに乗って戦う事が出来る。
「学園行きのシャトルは40分後に出発予定よ。まだ少し時間があるけど、1度シャワーでも浴びる?」
「別に汗とかかいてないからいいよ。シャトルの待合所で待ってる」
「そう。なら気を付けて帰ってね。それと、もし学校で体に不調があったら直ぐに連絡して」
「わかった」
スレッタであればまだプロスペラと会話とかするのだろうが、生憎三日月にそんな気持ちは無い。未だにプロスペラの事をイマイチ信用していないし。なのでさっさと帰りたい。
「あら?何かしら?」
三日月が帰り支度をしている時、プロスペラの端末が鳴る。プロスペラはそれを手に取り、電話をする。
「…そう。わかったわ」
通話時間は数秒で終わり、直ぐにプロスペラは電話を切る。
「どうかした?」
特に気になった訳ではないが、三日月を聞いてみた。
「御三家のペイル寮のエラン・ケレスと、ジェターク寮のグエル・ジェタークが決闘をするらしいわよ」
「へぇ、そうなんだ」
スレッタであれば驚く事をプロスペラは言うが、三日月は特に驚く事も無く、簡単な相槌を打つのであった。
ジェターク寮 視聴覚室
「カミル。今のところをもう1度再生してくれ」
「わかった」
時間は少しだけ遡る。ジェターク寮内に設置されている視聴覚室では、グエルと弟のラウダ。そしてジェターク寮メカニック科の3年生、カミル・ケーシンクを初めとしたジェターク寮の生徒達が、先の決闘の映像を見直していた。今後、またスレッタや三日月と決闘した時に備えてである。
「やっぱり、動きが有機的すぎるね、兄さん」
「ああ」
映像は、三日月のバルバトスが、ジュリエッタのレギンレイズの背後からの攻撃を避けているところ。この時のバルバトスの動き、いくらなんでも人間的が過ぎる。正直、不気味だ。
(これがガンダムフレームの性能ってやつなのか?だとしたら、化け物過ぎるだろ)
かつて、人類を滅ぼそうとした天使を打ち払ったモビルスーツシリーズ、ガンダムフレーム。恐らく当時の人類は、持てる全てをこのガンダムフレームに詰め込んで開発したのだろう。なんせ人類存亡の危機だったのだ。出し惜しみをしている場合では無い。
結果、人類滅亡は回避され、今も人類は生存している。それだけの技術力を注ぎ込んでいるから、まるで人間のような動きが可能となっているのだろう。少なくとも、ジェターク社のディランザやダリルバルデではこんな動きは出来ない。
「グエル、普通に数で押す戦法はどうだ?いくら伝説と言われていても、物量には勝てないだろ」
「いや、こいつにそんな単純な戦法が通じるとは思えない。そもそもビーム兵器が効かないんだ。ただ数で押しても、まともなダメージが通るかわからない。倒すなら頭部のヘッドアンテナを狙った狙撃戦か、物理兵器による格闘戦なんだが…」
「それをやると相手の得意分野になるから、今度はこっちが不利になると。おまけのこの動き、背後からの攻撃を綺麗に避けているし、下手な狙撃も通用しない可能性があるな」
「兄さん。こいつにはかなり高性能な駆動システムと、それを動かせるだけのシステムが組み込まれてるって考えてもいいかな?」
「ああ。だとしても、この動きは不気味だが…」
「誰かがバルバトスに引っ付いて動きを止めて、その間に狙撃するのは?」
「それ誰がやるんだよ。ほぼ肉盾扱いだぞ?」
「そうだそうだ。下手したら死にそうだし」
3人を初めとして、視聴覚室にいる生徒達は案を出し合いながら話し合う。彼らジェターク寮にとって、このまま負けたままなんてあり得ないからだ。そんなの、プライドが許さない。無論、プライドだけの問題では無い。企業の人間らしく、利益的な話だってある。
(恐らく父さんは、ガンダムフレームを手にしようとしている。1番手っ取り早いのは現物入手だが、正直こいつに勝てる気がせん…)
ガンダムフレームを手にする事ができれば、総裁の座に一気に近づける。なんせ永久機関ともいえるエイハブリアクターが2基も積んであるのだ。これを手にして増産できれば、エネルギー分野でトップになれるし、補給無しで動けるモビルスーツも開発出来切る。
その為にはバルバトスを手に入れればいいのだろうが、少なくとも今のグエルは自分では勝てないと思っている。それだけ、バルバトスと三日月は強敵なのだ。
おまけのあちらには、スレッタとエアリアルもいる。この2機がタッグを組んだ場合、勝てる未来がまるで見えない。エアリアルのガンビットの飽和攻撃に、バルバトスの近接攻撃。あまりに凶悪なコンボである。
なのでこうして、映像を何度も見返して相手を分析しているのだ。相手を分析していけば、いつかは弱点だって見つかる筈だと思い。
(だがこのままなんてごめん被る。何時か必ず俺の手で2機とも倒してやる!)
グエルは闘志を燃やし、必ずエアリアルとバルバトスを倒すと誓う。
まぁ、今のグエルは父親から決闘を禁止されているので、仮に相手の弱点を見つけたとしても決闘が出来ないのだが。
「グエル先輩!大変っす!!」
「あ?どうした?」
そうやって映像を見返していると、後輩のフェルシーとペトラが視聴覚室に慌ただしく入ってきた。
「氷の君と水星女が、デートするって!!」
「……あ゛あ゛?」
そして無視できない事を、グエルに報告するのだった。
エラン・ケレスは、強化人士と言われる強化人間である。非人道的な実験をされ続け、人権なんてモルモットのような扱い。そんな憂鬱な毎日を送っていた。
そんな彼にとって、自分と同じかもしれないスレッタと三日月は、ある種特別な存在だった。本社からの命令もあるが、個人的に2人とは接触しておきたい。
だから、こうしてデートのような形でスレッタと2人きりになったのだ。
「そうか。彼とは水星で」
「はい。三日月とはもう10年近い付き合いで。あ、でも三日月の生まれは火星なんですよ。色々あって水星に来たらしくて」
「成程。彼のご両親は?」
「三日月が小さい頃に水星の落盤事故で亡くなってて、私も会った事は無いんです。でも確か、モビルスーツの技師だったとか聞いた事が」
「ふぅん」
エアリアルのコックピット内で、エランはスレッタと会話をする。内容は、スレッタと三日月の事。本社の命令通り、彼は情報を集めているのだが、これといって大した情報は出てこない。
「あのバルバトス、ガンダムフレームをどこで見つけたんだい?」
「…ごめんなさい。それはちょっと誰にも言っちゃいけないってお母さんに言われてて…」
「そっか。ごめん」
「い、いいえ!エランさんが謝る事じゃありませんから!」
核心を突く質問をしても、流石にはぐらかされる。
(仕方が無い。先ずはエアリアルから調べよう)
この際、バルバトスは後回しだ。今はこの、エアリアルから調べよう。
「スレッタ・マーキュリー。少しでいいから、僕にエアリアルを操縦させてもらっていいかな?」
「え?エランさんが1人でですか?」
「大丈夫。君の大切な家族を壊したりしないから」
スレッタに許可を取ったエランは、エアリアルを1人で操縦する。その間、スレッタは演習区画に1人で立っていた。
そしてエランはパーメットスコアを上げ、このエアリアルが間違いなくGUNDーAUMである事を確信。
(だが、頭にいつも来るあの不快感が無い…だとすれば、呪いをクリアしているのは…)
何時もならくる筈の、脳みそに手を突っ込まれているような感覚が無い。それに、体のパーメットも反応しない。つまり、ガンダムの呪いを克服しているのはエアリアル。
「ふざけるな…なんだそれは…」
自分と同じだと思っていたのに、スレッタはそうじゃなかった。恐らく、三日月も違うだろう。その事実が、エランを苛立たせる。
「スレッタ・マーキュリー…君は僕とは違う…!」
その後、エアリアルから降りたエランは、八つ当たり同然な態度でスレッタを突き放す。突然のエランの態度の豹変、そしてエアリアルを侮辱された事。何よりエランに酷い事を言われたスレッタは、そのまま静かに涙を流す。
そして丁度この時、その場にグエルが現れた。スレッタが泣いているのを見たグエルはエランに詰め寄る。するとエランは、突然グエルに決闘を申し込んできた。グエルはこれを了承。
こうして、グエルとエランは決闘する事になったのだ。
地球寮
画面の向こうでは、既にグエルとエランの決闘が開始される寸前。そんな状況で、スレッタは地球寮の談話スペースで皆と決闘を見守っていた。
「一応話は聞いてるけど、何でああなってるの?」
「決まってるじゃないですかミオリネ先輩!!2人がスレッタ先輩を巡ってですよ!!」
「へぇ…?モテモテね?スレッタ?」
「いや違いますよミオリネさん!?私だって何でああなったかよくわからないんですから!!」
リリッケの説明に納得しかけるミオリネに焦るスレッタ。けど本当にどうしてああなったのか知らないのだ。なんか自分を置いてきぼりにして、突然決闘が決まったし。それに異議を唱えても、シャディクから『これはエランとグエルの決闘だから』と聞き入れてもらえなかった。
「それにしても良い展開ね。あいつらには潰し合って貰おうじゃない」
「いや性格悪すぎだろこのクソスペお嬢様…」
「失礼ね。立派な作戦を言ってるだけよ」
御三家の2人が決闘をする。これはミオリネにとっては嬉しい展開だ。なんせ勝手に潰し合うのだから。いっそこのまま共倒れくらいしてほしいくらいである。
「あれ?ザウォートじゃない?」
「何だあれ?まさかペイル寮の新型か?」
決闘場にはグエルが乗るディランザと、見た事が無いモビルスーツがいた。エランが何時も乗っている、ザウォートのカスタム機じゃない。全体的に細く、黒っぽい。装備は物理的に長いビームライフル。そして背中には飛行ユニットが付いている。恐らく、ペイル寮の新型だろう。
こうしてグエルのディランザとエランの新型が対面し、2人の決闘が開始されるのだった。
「へぇ。弁当の人、新しいモビルスーツに乗ってるんだ」
学園行きのシャトルの中。三日月は自分の携帯端末を操作して、決闘を見ていた。本当なら学園で直接見てみたかったが、流石に間に合わなかったからである。
「それにしても、ホルダーじゃない人、なんか怒ってる…?」
決闘を見ながら、三日月はグエルの戦い方を見て違和感を感じていた。何というか、戦い方がかなり荒っぽい。モビルスーツの操縦は、パイロットの精神がモロに出る場合がある。多分だがグエルは今、何故か怒っている状態で決闘をしているのだろう。
序盤はグエルが常に攻めていたのだが、その流れは突然変わる。エランの乗る新型から、ドローン兵器が射出されたからだ。
「なんか、エアリアルみたいだな」
まるでエアリアルのエスカッシャンを使ったような戦い方。赤いレーザーのような攻撃が、グエルに降り注ぐ。しかし、これで負ける程グエルは弱くない。
「やっぱり、ホルダーじゃない人強いな」
並みのパイロットなら、この攻撃で負けているだろう。しかし、グエルは元ホルダー。まるで雨の様な攻撃をかわしながら、エランに近づいていく。
(金星の事を思い出すなぁ)
2人決闘を見て、三日月は金星でスレッタとやった模擬戦を思い出す。あの時は、スレッタとエアリアルの攻撃を自分もグエルみたいに避けていた。
しかしグエルは、それを重量機体のディランザでやっている。これが出来る辺り、やはりグエルは強いと三日月は再認識。
「あ、当たった」
あと少しでエランに辿りつくといった時、突然グエルのディランザが動きを止めて、そのままエランの攻撃にハチの巣にされる。後はこのまま、頭部のアンテナを破壊すればエランの勝ちだ。
「……何してんだろ、弁当の人」
しかしエランは直ぐにトドメを刺さずに、グエルのディランザをまるで嬲り殺すようにビームを打ち続ける。そのビーム攻撃を避ける事が出来ず、ディランザは両腕を失い前に倒れた。そこにエランは態々近づき、ディランザの頭を掴む。
「何だか、弁当の人も怒ってる?」
さっさとトドメを刺せばいいのに、態々こんな事をする。もしかしたら、エランも何時もの冷静さを失っているのかもしれない。
「なんか、今の弁当の人ヤダな…」
今のエランに、三日月は不快感を示す。まるでエランが、何時ものエランじゃない気もした。正直、今のエランは好きじゃない。
そしてエランの乗る新型が、グエルのディランザのヘッドアンテナを握り潰した事で、決闘はエランの勝利となったのだ。
決闘が終わり、あと少しで学園に着くと言った時、三日月の携帯端末が鳴った。
「スレッタ?どうかした?」
『あ、えっとね…』
相手は幼馴染のスレッタ。しかし、その声は戸惑っているように聞こえる。
『あのね三日月、私、エランさんに決闘挑まれちゃった…』
「……何で?」
『わ、わからない…でも、私が負けたら、エアリアルをよこせって…』
「は?」
『あと、私との決闘が終わったら、三日月にも決闘を挑むって…勝ったら、バルバトスをよこせって…』
「あ?」
そしてこの瞬間、三日月のエランに対する好感度が爆下がりしたのだった。
現在の三日月の好感度
1位 スレッタ
2位 エラン(ただし今日下がりまくった)
3位 ミオリネ&地球寮の生徒
それ以下
プロスペラ、グエル、シャディク、ジュリエッタ等々。
本編とあまり変わらないところは、今後カットしていく予定。
次回もいずれ投稿しますので、どうか気長にお待ちください。
VSエラン戦は
-
本編通り、スレッタだけ
-
三日月も参戦して2対1
-
どっちでもOK