そして劇場版SEED見てきました。 いや凄かった。
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追記・最後のエランの台詞を少し変えました。
「ええ。魔女はペイルにいたわ。それも随分懐かしい顔がね」
『そうでしたか』
プロスペラはベネリットグループ本社の通路を歩きながら、ゴドイに連絡を取っていた。彼女は先程まで、とある人物と会話をしていた。
その人物とは、ベルメリア・ウィンストン。ペイル社のモビルスーツ、ファラクトの開発主任であり、プロスペラのかつての同僚の魔女。
つまり、ヴァナディース機関の生き残りである。
21年前に起こったヴァナディース事変。あの時ベルメリアは、運良くフォールクヴァングにいなかったため難を逃れる事に成功。
しかし運が良かったのもそこまで。どこかに潜伏しようとした矢先にペイル社に捕まり、彼女はペイル本社に連行される。そこでベルメリアは、自分達に協力するかどうか選べと選択肢を与えられた。
尊敬していた先輩であるプロスペラは、娘とルブリスと共に行方知れず。そしてかつての同僚は、自分以外既に殺されている。
もしここで協力しなかれば、自分も他の皆と同じように処分されるだろう。そんなのは嫌だ。皆みたいに殺されるなんて絶対に嫌だ。
だからベルメリアはペイル社に協力し、GUND技術を提供した。おかげで今まで生き残る事ができて、ペイル社でもかなりの地位を手にする事もできたのである。その結果、こうしてかつての先輩であるプロスペラと再会できたのだった。
尤もその再会は、感動の再会とはとても言えないものであったが。
『それで、決闘はどうします?相手はエアリアルと同じモビルスーツとそれを扱える強化人士。今なら彼と共に2対1で決闘をする事も可能ですが』
ゴドイはプロスペラに提案する。相手はエランとファラクト。そしてファラクトは、エアリアルと同じGUNDーARM。しかもエアリアルより機動力がある。苦戦を強いられる可能性がかなり高い。
だがこちらには、ガンダムフレームであるバルバトスがある。
バルバトスにはビーム兵器がほぼ効かない。これはアスティカシアの決闘ではとっても有利だ。なんせ決闘で使うモビルスーツの主兵装は、全てビーム兵器。中には質量兵器である近接武器を使うモビルスーツもいるが、射撃武器は例外なくビーム兵器だ。
これは、実弾兵器が条約で禁止されているからである。おかげでドミニコス隊のモビルスーツでさえ、主兵装はビーム兵器だ。
そしてもし、バルバトスをエアリアルの盾扱い、または前衛として相手の攻撃を全て受け、その間にエアリアルがビームライフルでファラクトを攻撃するという戦いをすれば、難なくファラクトにも勝てるだろう。
例えそうでなくても、バルバトスがファラクトに接近戦を挑み、エアリアルが後方から援護をする戦い方でも問題は無い。
勿論、先の決闘で使っていたファラクトのGUNDビットが心配ではあるが、三日月ならあの攻撃だって避けられるだろう。なんせ彼には、阿頼耶識システムが埋め込まれているのだから。
「いいえ。今回の決闘はスレッタとエアリアルだけでやらせるわ」
しかし、プロスペラはゴドイの提案を却下。今回は、スレッタとエアリアルだけで決闘をやるらしい。その為にも、あとでスレッタに連絡を(いれてorして)おかないといけないとも思う。
『少々心配ですが、大丈夫でしょうか?』
「心配?大丈夫。エアリアルは勝つわ。だって、私の可愛い娘だもの」
それはスレッタに対する信頼か、それとも自分が開発したエアリアルか。
こうしてスレッタとエランは、1対1で決闘を行う事となったのだった。
地球寮
「で、どうしてあいつは決闘を持ちかけてきたの?」
「えっと、よくわからない…多分だけど、私が誕生日を聞いたからだと思う…」
地球寮の談話室では、三日月がスレッタに決闘する事になった経緯を聞いていた。その近くにはミオリネや、他の地球寮メンバーもいる。
因みにだが、スレッタは自分が泣いた事は言っていない。もし三日月に言ったら、絶対に大変な事になるからである。主にエランが。
「にしても、うっとおしいか。氷の君は随分と酷い事を言うんだな」
「自分から誘ってきてんじゃねーのかよ。あのクソスペーシアン」
「つーかそもそもエランの奴はなんで突然キレたんだ?」
「さぁ?誕生日に碌な思い出が無いとか?俺もねーし」
皆もスレッタから経緯は聞いている。何でもエアリアルでデート中に、エランは突然スレッタに酷い事を言ってきたらしい。
しかも、スレッタは別にエランを罵倒したり酷い事を言ったりとかしていない。なのに突然エランは怒った。
「スレッタの前に俺があいつと決闘やろうか?それか、2人であいつを倒すとか」
そして三日月は既に、エランに対する好感度が下がりまくっている。エランの事を弁当の人じゃなく、あいつと言っているのが良い証拠だ。
そもそもスレッタの話曰く、エランは突然態度を豹変させている。意味がわからないが、そのせいでスレッタが悲しんだのなら許す事はできない。
なので2対1でボコボコにしようと考えているのだ。しっかりと落とし前をつけないと気が済まないし。
「ううん。私がエランさんから決闘を挑まれたんだし、先ずは私がエランさんと決闘するよ。それに2対1ってなんか卑怯な気するし、お母さんにも『今回は1人で戦いなさい』って言われたし」
しかしスレッタは今回、エランとは1対1で決闘をするつもりのようだ。母親であるプロスペラに言われたというのもあるが、そもそも2対1は卑怯な気がする。
それに、いつまでも三日月とバルバトスに頼ってばかりではいけない。それでは自分も成長できないからだ。だから今回は、1人で戦う。
「スレッタがそれでいいならいいよ」
そして三日月は、スレッタの意見に賛成する。スレッタがやる気を出しているのならそれに越したことはないし、スレッタを信じているからだ。
「そもそもあんたがチョロすぎなのよ。ちょっと優しくされたからって簡単にデレデレして」
「ミオリネさん…」
だがミオリネは簡単に納得していない。イライラしているのを隠そうともせず、スレッタに対して強い言葉であたる。
「というか1番ムカツクのは、私になんの相談も無しにエランと決闘の約束をしてきた事よ」
「う…ごめんなさい…」
それはその通りだろう。だってもしスレッタがエランに負けたら、ミオリネの婚約者はエランになる。そしてあのペイル社が、次期総裁に名乗り出るだろう。そんなのごめん被る。
だからせめて、花嫁である自分に一言言って欲しかったというのに、スレッタは勝手に話を進めていた。これはミオリネが怒るのも仕方が無い。
「お前スレッタを信用してないの?」
「違うわよ。信用しているからこそ相談して欲しかったの」
三日月はミオリネにそう言うが、これは信用とかそういった話では無い。どちらかというと報連相である。
「負けたら絶対に許さないから」
「は、はい」
ミオリネはそう言うと、談話室から出ていった。
「まぁ、今回はミオリネさんの言う通りじゃないかな。一言言うべきだったていうのは私も思ったし」
「そうですよね…」
ニカもミオリネと同じ気持ちだった。こんな大事な事、勝手に進めて良い訳が無い。だってミオリネにとっては人生が掛かっているようなものなのだから。
「過ぎた事はもうしょうがない。今後気を付けたらいいって。それより今は、明日の決闘の宣誓が大事だし」
「そうですね。それでスレッタ先輩。エランさんにどんな事を要求するんですか~?」
「え、えっと…今は思いつきません…」
アリヤとリリッケの言う通り、明日は決闘前の宣誓がある。そこでスレッタは、エランに決闘に勝ったら何をするかを要求できる。だがスレッタは、それが思いつかない。
「あのジェタークのボンボンが言ってたみたいに学校から追い出せばいいじゃねーか」
「もうチュチュ。そういう話じゃないと思うよ?」
チュチュはそんな提案をするが、ニカに止められる。
「ペイル寮にうちを支援してもらうっていうのは?」
「ダメじゃねーか?それ下手したらバルバトスやエアリアルの情報抜き取られるぞ」
「あー…それもそうだな…」
オジェロは地球寮を支援して貰うという提案をしてみるが、これは少しでもミスをしたらエイハブリアクターの情報を取られかねないとヌーノに言われたので却下される。
「まぁ、明日の放課後までに考えればいんじゃないかな?今日はもう遅いし、皆寝よう?」
「マルタンの言う通りだ。今日はもう寝た方がいい」
マルタンと昭弘に言われ皆が時間を確認すると、既に深夜0時になろうとしている。確かにもう遅い。これ以上起きていると、明日に響きそうだ。
「だな。じゃあシャワー浴びて寝るか」
「賛成。もう明日考えよう」
オジェロとヌーノがそう言い、席を立つ。それに続いて、他の皆も立ち上がる。
「じゃあスレッタ、おやすみ」
「うん、おやすみ三日月。そして皆さんも」
こうして皆は、談話室からそれぞれの部屋へと帰るのだった。
そして翌日の放課後。地球寮では皆が頭を抱えていた。
「ふ、フロント外宇宙域…」
「おまけにエアリアルには推進ユニットが無い、と」
「マズイよ!これかなりマズイよ!ペイル社のモビルスーツは機動力が売りなんだ!ましてや相手は新型だし、これじゃあ…!!」
「うん。あの装備だけじゃ不安だな」
決闘ラウンジで宣誓をしてきたスレッタだったが、その決闘の場所が問題だった。場所は、フロント外宇宙域。遮蔽物が碌にないただっ広い空間である。
そしてエアリアルには、そんな空間で自由に動ける推進ユニットが無い。このままじゃ不利なんてものじゃない。間違いなく碌に動けずに負ける。
「バルバトスなら全然大丈夫なのに」
「え?そうなの三日月くん?」
「うん。バルバトスはあのままでも宇宙で自由に動けるからね」
「それもエイハブリアクターのおかげ?」
「多分」
エアリアルと違い、バルバトスにはそういった推進ユニットは必要ない。あのままの姿で自由に戦えるらしい。当然ペイル社のファラクトより機動性は落ちるだろうが、それでも十分すぎるだろう。
「やっぱり今からでも、俺が決闘を変わろうか?」
「いや、もう決闘は了承されてるから無理だと思うよ」
ニカの言う通り、既に決闘は決闘委員会によって了承されてしまっている。今から変更なんて不可能だ。なのでエアリアルをどうにかして、エランとの決闘に挑まないといけない。
「で、どうすんだ?うちの寮の資金じゃ新しい推進ユニット買うなんて無理だぞ」
「別の寮に貸してもらうとかは?」
「スペーシアンがアーシアンのあーしらに貸すなんて事する訳ねーだろ」
皆の言う通り、このままではマズイ。ただでさえ機動力で負けているのだ。なのに場所はフロント外宇宙域。これではスレッタが負けてしまう。
だが貧乏で有名な地球寮に、新しい推進ユニットを買うお金なんて無い。また他がスペーシアン寮なので、借りるというのも無理だろう。
その時ニカが、
「じゃあ、今から作っちゃおうか」
『え?』
無いのなら作ればいいとか言い出した。
数日後
(暇だな…)
地球寮が廃材を買い取り、そこからエアリアル用の新しい推進ユニットを作る事になってから数日、三日月は暇を持て余していた。単純に、やれる事がないからである。
スレッタはエアリアルのパイロットなので色々とやる事があるが、メカニック科でも無くそういった知識も無い三日月は本当にやる事がない。なのでこうして、学園内を適当に散歩していた。
「ん?」
そうやってブラブラしていると、何やら変な物音が聞こえる。ほのかに、良い香りもした。特にやる事もないので、三日月はその物音がした方へ歩いていった。
「何してんの?ホルダーじゃない人」
そこには、あのグエルが何故か学園内でテントを張って、キャンプ用のガスコンロで使ってポットを沸かしていた。
「グエル・ジェタークだ。いや、今の俺にはそんなあだ名がお似合いか…」
どこか諦めたような顔をするグエル。その時丁度ポット内のお湯が良い感じに沸いたので、グエルはコーヒーを淹れる。
「水星女はどうした?今日は一緒じゃないのか?」
「スレッタならエアリアル用に新しく作った推進ユニットのテストしてるよ」
「ああ。そういや次の決闘はフロント外宇宙域だった…ちょっと待て。作ったってなんだ?」
「そのままの意味だけど」
今日、スレッタはようやく完成した推進ユニットのテストをしていた。今頃、学園周辺の宇宙をエアリアルで飛び回っているだろう。
「で、こんなところで何してんの?」
それはそうと、三日月はグエルが気になる。グエルはジェターク寮の寮長。それがこんな場所で何故か野宿をしている。そういった趣味でもあるのだろうかと、気になってしまう。
「……追い出された」
「は?」
「だから追い出されたんだよ。ジェターク寮をな」
衝撃の事実。なんとグエルは、自分の寮を追い出されたらしい。
「何で?」
「この前の決闘。あれは俺が決闘を禁止されていたのに勝手にやったんだ。その上で敗北した。こんな勝手、許される訳が無い」
ついこの間行われたグエルとエランの決闘。そこでグエルは、父親から決闘を禁止されていたにも関わらず決闘を行い、あげくエランに敗北している。
そしてその事を知った父、ヴィム・ジェタークは激怒。ただでさえグエルがホルダーで無くなってから会社に対する風当たりが強いというのに、更に決闘で負けている。ここで1度しっかりと罰を与えておかないと、グエルは再び何かをしでかすかもしれない。
なのでこうして、寮から追い出したのである。
「ふーん。大変だね」
「はっ。これくらい大丈夫だ。元ホルダー舐めんな」
別にグエルを心配した訳じゃない。三日月はただ、外での生活は大変だろうなーっと思っただけである。そしてふと、グエルが今後寝泊まりするであろうテントを見る。
「ところで、これがテントってやつ?」
「そうだが、もしかしてお前テント知らないのか?」
「うん。水星に無かったし」
「……そういや水星はかなり酷い場所と聞いたな」
グエルの言う通り、水星は酷い環境だ。こんな風に、テントを張ってキャンプをするような事なんて無理である。
「凄いね。こんなの1人で作れるなんて」
「いやテントそのものは昔購入したやつだ。テントの設営は自分でやったが」
「やっぱ凄いじゃん。俺には出来ない」
「そうでもねぇ。テントの設営はすぐに覚えられる。それに俺の場合ガキの頃、父さんとラウダとよく一緒にキャンプをしてたからな。そのおかげだ」
「へぇ」
余談だが、ジェターク寮では昨年、学園内で寮の生徒全員参加でキャンプをやっていた。親睦を深める為にグエル主導でやった事だが、結果は大成功。
バーベキューコンロで肉を焦がすフェルシーや、ラウダにジュースをお酌しようとして足を挫き、壮大にラウダにジュースをぶちまけたペトラ。何故か突然始まった腕相撲大会でカミルと一進一退の攻防繰り広げたグエルなど、色んな事が起きた。
兎に角楽しくて、今後10年は語れるであろう良い思い出となった校内キャンプ。あれがあったおかげで、元々結束の強いジェターク寮は更に一致団結をするようになれたのだ。グエルがこうして追い出されても、誰もグエルをバカにしたり、蔑んだりしない程度には。
「飲むか?」
「それ何?」
「コーヒーだ。豆からひいたのじゃなくてインスタントだがな」
グエルは空いていたチタン製のコップにコーヒーを注ぎ、三日月へ差し出す。
「ん」
特に断る理由も無いので、三日月はそれを受け取り一口飲む。
「ぐっ…!何これ、にっが…」
「あ?まさかお前、コーヒーを飲んだの初めてか?」
かなり渋い顔をする三日月。どうやらお気に召さなかったようだ。しかし折角貰ったし、既に口を付けているのを捨てるなんて出来ない。
水星では物資が乏しく、お腹いっぱい食べれるのだってあまりなかった。それ故、三日月もスレッタも食べ物と飲み物は残さず食べるようにしている。なのであまり好きな味でなくても、コーヒーを三日月は飲み切る事にした。
「ところで…」
「ん?」
「あー、あれだ。水星女は今どうしてる?」
そうやってコーヒーを飲むのに苦労している三日月に、グエルは尋ねる。彼が態々三日月にコーヒーを渡した理由がこれ。
こうすれば少なくとも、コーヒーを飲み終えるまではスレッタの話が聞けるかもしれないと思ったからである。
「さっき言ったじゃん。作ったばかりの推進ユニットのテストやってるって」
「いやそうじゃなくてだな…」
頭をガシガシとかきながら、グエルは再び尋ねる。
「あれだ。悲しい顔とかしてなかったって事だ」
「何それ?どういう意味?」
確かにスレッタは、エランの事で悲しんでいた。だがそれをグエルが聞いてきた理由が三日月にはわからない。そもそもグエルには関係が無い筈だし。
「だってあいつ、泣いてただろ」
しかしそれらの疑問は、グエルの発言でどうでも良くなった。
「……スレッタが泣いてた?」
「ああそうだ。エランが何したか知らねーが、あいつは泣いてたんだよ。それがどうかしっ…!?」
話を続けようとしたグエルだったが、三日月を見た時、つい口を閉じてしまう。
「……」
なんせ今の三日月は、以前の決闘前に見た獣のような目をしていたからだ。明らかに怒っている。それもかなり。
「これありがとう。じゃ」
三日月はコーヒーを飲み終えると、空のカップをグエルに渡して、その場を後にする。
「もしかしなくても俺、マズイ事言ったか?」
そして残されたグエルは、独り言のように呟くのであった。
同じ頃、ニカが地球寮の予算で買い取った廃材から数日で新しく作ったエアリアル用の推進ユニットのテスト中、スレッタはエアリアルのコックピット内で落ち込んでいた。
エランが自分と三日月に優しくしてくれたのは全部作戦で、それを知らない自分は喜んで、まるで犬みたいにはしゃいでいた。
その後も何度もエランと話をしていたスレッタだったが、それをエランはうっとおしいと思っていたのだろう。
そしてエアリアルを使ったデートの日、遂に我慢の限界が来てあのような事を言ったに違いない。
「私、本当にバカみたいですね…」
『そうね。本当にバカみたい。私もエランの言う通りだと思うよ。だってあんた、本当にうっとおしいもの』
弱音を吐くスレッタに、テスト飛行を見守っているミオリネはきつい言葉で話しかける。
『ちょ、ミオリネさん』
慌ててニカがミオリネを止めようとするが、ミオリネは喋り続ける。
『でもそれがあんたじゃん。鬱陶しいくらい絡んできて、私の言う事聞かずに勝手に動いて。でも進めば2つなんでしょ?それが口癖のあんたが、何で逃げているのよ。こんなところでうじうじ言っていないで、さっさと進みなさいよ!!』
「ミオリネさん…」
それは、ミオリネなりの励ましだった。何時もスレッタが言っている『逃げたら1つ。進めば2つ』という生き方。今のスレッタからは、それが感じられない。ここで誰かが背中を蹴とばす勢いで言わないと、何時までもこのままになってしまうかもしれない。だから多少キツイ言葉を使ってでも言う。
「はい、わかりました!私、今からエランさんのところに行ってきます!」
スレッタはもう、止まるのをやめた。とりあえず今から、エランと話をしよう。そう決めてエアリアルを学園に向けて動かす。
その時だ。
『スレッタ先輩!大変です!!』
「え?リリッケさん。どうかしました?」
突然、リリッケから通信が入ってきた。何事かと思い、スレッタは通信を聞き入る。
『三日月先輩がペイル寮にカチコミしかけてるらしいですーー!!』
『『「はぁ!?」』』
そしてそれを聞いたスレッタ、ミオリネ、ニカの3人は同時に驚くのであった。
ペイル寮前
「だから!俺達もエラン・ケレスが今どこにいるか知らないって言ってるだろ!!」
「そうだって!つか少なくとも寮には本当にいないんだよ!!多分本社だろうけど、そもそも連絡先すら知らないんだよ!!」
「いいからあいつ出してくれない?」
そこでは、三日月がペイル寮の前でペイル寮の生徒と言いあっていた。グエルからスレッタが泣いていたという話を聞いた三日月は、エランとお話をするべくここまで来ている。
しかし残念ながら、ペイル寮の生徒は誰もエランが今どこにいるか知らない。当然、ファラクトの事もだ。これはエランが誰とも友達になろうとしたりせず、また周りもエランを孤高の存在として扱ってきたせいである。だが三日月からしてみれば、ペイル寮の生徒がエランを庇っているようにしか見えないのだ。
そして三日月は、そういった生徒にも容赦はしない。
「どけって」
『ひっ』
三日月の凄みにたじろぐペイル寮の生徒達。このままでは、三日月がペイル寮の中を調べつくしてしまう。流石にそれはマズイ。下手したら責任問題だ。でも誰もこれを止められない。もういっそペイル寮総出で三日月をこの場で迎撃しようかと考え出す。
だが相手は、以前食堂で女子相手にも容赦なく拳を振り下ろした三日月だ。正直、数で囲んでも勝てる気がしない。でもこのままにもしておけない。ペイル寮の生徒達は、皆どうしようかと頭を抱える。
「これは何の騒ぎ?」
「あ、いた」
すると、三日月の背後から今丁度探している奴の声が聞こえた。そう、エランが本社から寮に帰ってきたのだ。
「お前に話があるんだけど」
三日月、敵意を隠そうともせずエランに詰め寄る。
「……いいよ。場所を変えようか。付いてきて」
エランは三日月を連れて、その場を離れていく。その様子を見たペイル寮の生徒達は、ほっと胸を撫で降ろすのであった。
ペイル寮から少し離れた、学園内にある公園のような広場。普段はアスティカシアの学生達が昼休みや放課後に集う場所。そこでエランは三日月と対峙していた。
「それで、一体何の用?」
「お前、スレッタを泣かせたって本当?」
三日月、単刀直入にエランに聞く。
「ああ、あれか。そうだけど、それがどうかした?」
そしてエランも、誤魔化さずに答える。
「何でそんな事したの?」
「何でも何も、うっとおしいからだよ」
エランの発言にイラつきながらも、三日月はぐっと堪える。スレッタとの約束があるからだ。それがなければ、とっくに殴りとばしている。
「こっちが聞いてもいないのに自分からペラペラと喋ってくるし、話したくも無い事を聞こうとしてくるし。本当にうっとしい。少しは口を閉じてて欲しい。それにモビルスーツが家族?気味が悪いね。あんなもの、僕には呪いでしかないのにっ…!?」
次から次へとスレッタ、そしてエアリアルに対する罵詈雑言が出てくるエラン。そんなエランの言葉をこれ以上聞きたくない。故に三日月は、エランの胸倉を掴んで言葉を遮らせる。
「お前が俺やスレッタに近づいたのも、何かの作戦?」
「…そうだ。あれは全部本社からの指示でやった事だ。君とスレッタ・マーキュリーに差し入れしたのも、連絡先を交換したのも、追試で困っていた君達を助けようとしたのも、全部エアリアルとバルバトスの情報を集める為だ。君達に対して、友情なんてかけらも感じてないよ」
「そっか」
このエランの態度でうすうす感じていたが、やはりエランは最初から上の命令で自分達に近づいてきたにすぎない。折角スレッタのやりたい事リストが埋まっていて、スレッタは嬉しそうにしていたのに、それらは全部嘘。ありていに言えば、スパイ活動をしていたにすぎない。
「殴るかい?なら好きにすればいい」
「そうするよ」
スレッタとミオリネに暴力はダメと言われているが、もう我慢の限界だ。そもそもエランは、スレッタを泣かせている。これだけでもうライン越え。更にエラン本人から許可も出た。これで思いっきり殴れる。
そして三日月は、狙いをエランの顔に定めて右腕を振りかぶる。
『やめなさい三日月ーーーー!!』
だが自分の幼馴染の声が聞こえた瞬間、三日月は腕を止めた。
「あ、エアリアル」
上空からエアリアルが目の前に降りてくる。
『リリッケさんから三日月がペイル寮にカチコミしてるって聞いたからエアリアルで大急ぎで来たけど何してるの!?本当に何してるの!?暴力はダメだって言ったでしょ!?』
エアリアルからスレッタの怒った声が聞こえる。どうやらどこかで話を聞いて、テストを中断してここにやってきたらしい。
尚この時、学園の外ではミオリネとニカが学園側に色々説明をしている最中だったりする。なんせ学園内にいきなりエアリアルで突っ込んでいるのだ。以前のように、フロント管理社に出てこられたら堪らない。しっかり説明をしておかないと、最悪またバルバトスが出てくるし。
「だってこいつ、スレッタを泣かせただろ?」
『ど、どこでその話を…』
「ホルダーじゃない人から」
『あ…』
こうなると思っていたから三日月には話さなかったのに、あの場にいたグエルの事をすっかり忘れていた。でも過ぎた事は仕方が無い。今は目の前の問題に集中しないと。
『と、とにかくエランさんから手を離して!今すぐに!!』
「え、でもこいつは」
『でもじゃない!離しなさい!!』
「……わかった」
三日月は渋々エランから手を離す。
「よっと」
そしてスレッタは、エアリアルのコックピットから出て、2人の前に降りてきた。
「エランさん、本当にごめんなさい。三日月が酷い事しそうになって」
「別にいいよ。怪我も無いし」
先ずはエランに頭を下げて謝る。そしてエランも制服を正しながら、怪我が無い事を伝える。
「それでなんですけど、今日を誕生日にするのっていうのはどうでしょうか?」
「は?」
次にスレッタは、エランにある提案をした。
「えっとだって、誕生日が無いのって寂しいですから。それに私!水星に居た時は三日月の誕生日を祝った事もありますから、誰かを祝うっていう経験もありますし!!あ、でもケーキとかは作った事ありませんけど…」
それは今日この日を、エランの誕生日にする事。エランには誕生日が無いと聞いている。誕生日は、この世に生を受けたおめでたい日。自分や三日月にも存在する。それがないなんて、あまりに寂しい。そこで考えたのがこれだ。優しいスレッタらしい提案である。
「だめ、ですか…?」
「やっぱり君は、うっとしいよ…」
エランはスレッタに冷たい目線を送ると、その場から立ち去ろうとする。
「お前…!」
「ちょ!三日月落ち着いて!」
折角スレッタが提案したのに、エランはそれすら真っ向から拒絶。そんなスレッタの優しさを踏みにじった真似をしたエランに、三日月はキレる。そしてスレッタは、そんな三日月を何とか抑える。
「そんなに僕が許せないのなら、スレッタ・マーキュリーを倒した後に決闘で相手をしてあげるよ」
エランは2人の方に振り返り、そんな事を言う。確かに決闘であれば、思いっきり戦える。三日月もエランをブチのめす事が出来るし、エランもバルバトスを手に入れる機会が得られる。
正直、スレッタと決闘をした後にまだ自分がこの世にいられるかわからないが、そこはもう天運に任せるしかない。
「いや、それは出来ないでしょ」
「は?」
だが三日月、それは無理だと言い放つ。
「だってスレッタが俺以外に負ける訳ないじゃん」
そこにあるのは、スレッタに対する絶対の信頼。三日月は、スレッタが負けるなんて全く考えていない。だから、エランがスレッタに勝った後に自分と決闘をするなんて無理だと言うのだ。
まぁ、仮に決闘をやる事になったら全力で倒すだけなのだが。
「っ!!」
それを理解したエランは、つい歯を噛み締めてしまう。自分が持っていない、信用できる友人、もしくは家族。やはりスレッタは、自分とは全然違う。何にも持っていない自分と違い、沢山のものを持っている。それを再確認してしまったのだ。
「やっぱり君達は、本当に
エランは、そんな捨て台詞を吐いてその場を立ち去る。そして必ず、明日の決闘には勝つと決めた。だって自分には、本当に何も無い。ならば勝利くらい強く望んだって、誰も咎めたりしないだろう。
こうして、スレッタとエランの決闘前日は過ぎていくのだった。
そして遂に、エランとの決闘が始まる。
次回はエラン戦を一気にやる予定。まぁ何時投稿できるかわからないけどね。
にしても、三日月のキャラエミュが本当に難しい。合ってる?これでキャラエミュ合ってる?
次回もどうか気長にお待ちください。