あと、書いている時は毎回『大丈夫?これ変なところとか無い?』って不安感じながら書いていたりする作者です。
追記 三日月も某作品に出ていた事を最近知りました。
地球寮 モビルスーツ格納庫
『くそ!このタイミングでかわすのかよ!?三日月・オーガス!!』
地球寮内のモビルスーツ格納庫には、4機のモビルスーツが綺麗に並んでいる。そして現在、その4機全てがケーブルのような物で繋がっている状態だ。
「すっげぇ…」
「よく今の避けられるなぁ…」
端末で何かの映像を確認するオジェロとヌーノ。
『ぐあああああああ!?』
同時に、グレイズに乗っている昭弘の叫び声が響く。
「これで昭弘の10連敗だな」
「やっぱ三日月強ぇわ…」
実は現在、三日月と昭弘は、仮想空間でモビルスーツの対決をしている最中なのだ。そしてたった今、昭弘は三日月とバルバトスに10連敗目を喫したばかりである。
「ぐふっ…!もう1戦だ!!頼む三日月!!」
コックピットから出たパイロットスーツ姿の昭弘は、直ぐに三日月に再戦を申しこむ。負けっぱなしなど、彼のプライドが許さないからだ。
「いやいや昭弘!少し休憩しよう!?もう1時間もぶっ通しでシミュレーションしてるんだよ!?流石に休まないと!!」
「マルタンの言う通りだ。少しは休憩しておいた方がいい。じゃないと、十分なパフォーマンスを発揮できないぞ」
「うっ…わかった…」
しかしマルタンとアリヤに言われ、昭弘は1度休憩を取る事にした。確かに既に全身ヘトヘトで、もう1度戦っても勝てるビジョンが見えない。ならばここは、1度しっかり休憩をしてから、再び再戦をすればいい。そして昭弘はコックピットから降りて、下にいるアリヤからタオルとスポーツ飲料水を貰う。
「昭弘がこんだけやってもダメか」
昭弘と同じくパイロットスーツ姿のチュチュが、負けた昭弘にややキツイ事を言う。確かに、10連敗は情けないかもしれない。
しかし、相手はホルダーであるスレッタと同じくか、それ以上の技量を持つ三日月と、伝説のガンダムフレームバルバトスなのだ。昭弘が乗っている中古のグレイズでは、そもそも機体性能差が激しいので、碌に反抗できないのである。10連敗してしまうのも、無理は無い。むしろ、三日月とバルバトス相手に肉薄できる昭弘を褒めるべきなくらいだ。
「すまん…」
「いや謝るなって。そもそもあーしもスレッタ相手に8連敗中だし…」
そしてこんな事を言っているチュチュだが、彼女も現在スレッタ相手に負け続けている。チュチュのデミトレーナー改は、狙撃戦特化型のモビルスーツ。一応近接戦闘も可能だが、エアリアル相手では分が悪すぎる。そもそもエアリアルもバルバトス並みに強力なモビルスーツだ。中古のデミトレーナーでは、先ず勝負にならない。
「でも昭弘、凄くいいね。必死で相手に食らいつくところとか、凄いし」
そんな中、バルバトスから降りてきた三日月が話しかける。手には、リリッケから受け取ったタオルとスポーツ飲料。
「最初に比べると、かなり成長してるよ。射撃もそうだけど、特に接近戦が上手くなってるね」
三日月の言う通り、昭弘は成長している。特にグレイズに装備されたバトルアックスの使い方が上手くなっている。シミュレーションとはいえ、何度かバルバトス相手に攻撃を打ち込めているのがその証拠だ。
「それでもお前には1度も勝てねーけどな」
三日月はそう言うが、当の昭弘の顔はやや暗い。いくら成長していると言われてても、勝てないと意味が無いからだ。
「訓練で負けているうちはいいじゃん。これが本番の決闘だったら、1度でも負けたらそこで終わりなんだし」
「まぁ、それは…」
それはその通りだ。もしこれが地球寮の存続をかけた決闘だったら、泣きの1回なんてのは無い。1度でもブレードアンテナを折られたら、そこで終わりなのだから。
「それに、昭弘は絶対にもっと強くなるよ。なんかそんな気がするし」
そして三日月は、昭弘に素直にそんな事を言う。これは三日月の本心だ。確かに昭弘は未だに三日月に勝てていないが、それでも三日月は昭弘が強くなると勘で確信している。
「ふ、ありがとよ」
その三日月の言葉に、嬉しくなる昭弘。学園最強のホルダーであるスレッタと同じくらいの実力のある三日月にこんな事を言われたら、大抵の人は嬉しくなるだろう。グエルとかジュリエッタも多分同じだ。
「おい三日月。あーしは?」
どうせならと、チュチュも三日月に自分の事を聞いてみる。
「チュチュも強くなれると思うよ。でもどうせなら、近接武器をひとつ装備した方がいいんじゃない?」
そんなチュチュに、三日月は昭弘と同じようにチュチュも強くなるだろうと答える。しかしチュチュのデミトレーナー改には、狙撃用のビームライフルしかない。
そしてチュチュは弾切れを起したら、いつもそのビームライフルを棍棒のようにして闘うのだが、取り回しもよくないし、そもそも耐久性が低いので、あまり上手く戦えないでいる。出来ればしっかりとした近接武器を積んでおいたほうがいいだろう。そうすれば弾切れを起した後も、チュチュはしっかり戦えるだろうし。
「……ちと中古の近接ナイフとかねーか探してみっか」
三日月に言われチュチュは、今夜にでもモビルスーツ用品を販売しているネットサイトを見てみる事にした。あと、もう少し体力増やすようトレーニングをする事も決める。
「あ、三日月。後で私も相手してもらっていい?」
「いいよ」
そしてスレッタは、後で三日月とシミュレーションをする約束をする。
「あんまりのめり込んだりしないようにね。もう直ぐ学校から会社の営業許可も下りる筈だし。そうなったら、色々忙しいわよ」
「はい、わかってます!」
ミオリネの言う通り、予定通りならもう直ぐ株式会社ガンダムの営業許可が下りる筈だ。そうなれば、会社の仕事と学生の勉強を2つ同時にしないといけなくなるので、かなり忙しくなるだろう。今やっているシミュレーションも、あまりできなくなるかもしれない。
勿論こうやって練習するのはとても良い事だが、あまりのめり込み過ぎると、仕事が疎かになるかもしれない。ミオリネの注意は、そうならない為の注意である。
「にしてもさ、やけに事業申請を受理されるの遅くね?」
その時、オジェロが株式会社ガンダムの事を話し始める。彼の言う通り、株式会社ガンダムの事業申請を受理され、営業許可が下りるのがやたら遅い。普通であれば、遅くとも3日以内には営業許可が下りる筈なのだ。
だというのに、既に5日が経過している。確かに、事業申請を学園に申請して直ぐに、アリアンロッド寮と決闘するという予定外の事はあったが、それで遅い。いくら何でも遅い。繫忙期でもない筈なのに遅い。
「私達が、アーシアンだからかな…?」
アリヤの呟きは、格納庫にいた全員に聞こえた。以前、食堂で三日月がスペーシアンをボコボコにした事件以来、直接的な嫌がらせはされなくなったが、それでも未だにアーシアンの事をよく思っていない生徒は大勢いる。
ならばこうして、アーシアンが主導になって設立しようとしている会社の邪魔をする事だってありえるかもしれない。
「いくら何でもそれはないわよ。考え過ぎ。偶然遅いだけでしょ」
しかしそれは、ミオリネ曰く考え過ぎとの事。確かに遅いが、ただそれだけだ。別に会社の事業申請が却下されたなんて事も無い。ミオリネの言う通り、本当に偶然遅いだけかもしれない。
「もう勝手にやっちまおうぜ」
「ダメに決まってるでしょ」
チュチュは許可される前に勝手にしようと言うが、それはダメだ。そんな事すれば、株式会社ガンダムが信用を失うかもしれない。そうなったら、エアリアルもバルバトスも破壊されるし、ミオリネも父親の言う通りに生きる事になる。地球寮だって、学園から追い出されるだろう。
なのでここは、しっかりと許可が出るまで待たないといけない。今は辛抱の時なのだ。
「おし、三日月。もう1戦頼む」
「わかった」
「おい三日月。昭弘が終わったら次はあーしだ」
「いいよ」
「……今更だけど三日月の奴、ずっとシミュレーションやってるのに、全然疲れていないように見えるんだけど…」
「あはは…三日月はかなり体力ありますし…」
その後三日月は、昭弘、チュチュ、そしてスレッタとシミュレーションを連戦するのであった。尚、最後まで顔はケロっとしていたので、それを見ていたミオリネは少し引いた。
翌朝、三日月は授業前に1人でミオリネの温室に来ていた。
「あ、赤くなってる」
しかし温室の中には入らず、その外に設置している自分用のプランターの前に座っている。そしてプランターには、ミオリネに色々教えてもらいながら育てているミニトマトが赤くなっていた。これはミニトマトが、しっかりと育っている証拠。もう少し大きくなったら、収穫も出来るだろう。
(こうやって、食べ物育てるのっていいな)
ミニトマトを育てるようになってから、三日月は食べ物を育てる事に興味を持つようになっていた。何というか、楽しいから。正直、筋トレより楽しい。今はまだ無理だけど、何時の日か、火星ヤシも育ててみたいと思ってもいる。
「へぇ~、トマト育ててるんだ~。凄いね~」
「ん?」
そうやってミニトマトを眺めていると、突然三日月の隣に誰かが座ってきた。
「こうやって自分で物を育てている人って、なんかいいよね。手先が器用っていうか、物を大切に出来る人っていうか。そういう人、私好きだなぁ」
三日月の隣に座ってきたのは、へそ出しにしたトップスの下に黒いインナーを着用し、半ズボンの左側をロールアップし左右非対称としているツインテールの女生徒。その女生徒は、自分の体を三日月に密着するかしないかの距離で、三日月に話続ける。
「……あんた誰?」
突然現れて、自分の隣に座ってきた謎の女生徒。三日月は鬱陶しいそうな顔をしながら、とりあえず誰かと尋ねる。
「あれ?覚えてない?前にエランの決闘の時にモニター越しだけど顔合わせてるんだけど」
「?」
「あ、これ本当に覚えてないやつだ」
どうも、彼女は前に三日月と会った事があるらしい。しかし、三日月は全く覚えていない。なので彼女は、自己紹介をする事にした。
「じゃ、改めて。初めまして、三日月・オーガスくん。グラスレー寮のレネ・コスタだよ。よろしくね?」
彼女の名前は、レネ・コスタ。グラスレー寮所属のパイロット科2年の生徒で、
シャディクの命令を受けて、三日月にハニートラップを仕掛けにきた女生徒である。
彼女、レネ・コスタについて簡単に説明をするならば、アスティカシア学園で1番異性にモテる女子だ。学園内には、彼女の親衛隊が存在し、その数は学園で1番とまで言われている。
更にレネには、本命手前の『キープくん』と呼ばれている恋人候補が何人も存在しており、実際に彼らと何度もデートなどをしている。
それだけ聞くと、大勢男を侍らせている禄でもない女子だが、彼女はキープくん全員を本気で大事に思っているし、その事をキープくんたちも理解しているので、今まで男女間でトラブルになった事はほぼ無い。
これだけで、彼女が男の扱いに慣れているのがわかっただろう。なのでシャディクは、そんなレネにハニートラップを命じたのだ。上手く三日月を懐柔し、バルバトスやエアリアルの情報を抜き取る為に。
「あ、そうそう。この前のアリアンロッド寮の決闘見たよー、凄かったねー、まさか5対1で勝つなんてさー。やっぱりパイロット科の男子ならあれだけ強くないとね」
レネは自分の肩と三日月の肩が触れているのを確認して、先日のアリアンロッド寮との決闘について話し出す。パイロット科の生徒であれば、自分の操縦技術や、
決闘の事を褒められると嬉しいからだ。
「ふーん…」
しかし、三日月は興味なさそうにしている。それどころか、どうもレネを怪しむような目で見てる。
(あれ、思っていた反応と違うな…)
今までのパイロット科の生徒であれば、これでほぼ確殺できていたのだが、三日月はそうはならない。中々に難敵のようだ。
(まぁでも、大丈夫でしょ。こいつも男だし)
しかし、それも今だけだとレネは思っている。これまでも、数多くの男を手玉に取ってきたレネ。その中には、三日月のような堅物っぽい子もいた。
しかしそういった男子も、最終的にはレネによって陥落させられている。なので三日月のこの反応も今だけ。最後は絶対に自分にゾッコンになるとレネは思っている。
「結局、あんた何か俺に用があるの?」
その時、三日月の方から話しかけてきた。これをチャンスだと思ったレネは、三日月に話しかける。
「えっとね、実は私、三日月くんと仲良くなりたいなーって思っててね」
「……何で?」
「アリアンロッド寮との決闘で、かっこいいなぁって思ったからだよ。私、そういう男の子好きなんだー…」
並みの男であれば、即落ちするようなキャルンといった顔でレネは三日月に言う。こんな顔が出来たのは、今までの経験値のおかげだ。おまけにこの近距離。これでドギマギしない男なんていないだろう。
「へー…」
が、三日月には全く効果が無い。ドギマギするどころか、よりレネを怪しむ目で見てくる。
(あっれ?これもダメ?こりゃ中々に難題っぽいなぁ)
必殺のコンボが決まらずに、レネも三日月はかなりの強敵だと認識。だがそれがどうした。今までレネに落とせなかった男などいない。経験があるし、何よりレネは自分の容姿に自信がある。だから必ず三日月を落として見せると誓うのだった。
「そうだ。三日月くんって、何か好きなものとかある?」
次にレネがとった作戦は、相手と同じものを好きになるという作戦。人は、自分と同じ趣味だったり、好きな食べ物が同じだと、その人物に親近感を沸くものなのだ。これだけで、警戒心は随分薄れる。なのでこの質問をしたのだが、これが思いもよらない答えだった。
「スレッタかな」
「……え?」
三日月はレネの質問に、スレッタと答えた。流石にこれには、レネも硬直。なんせ今の言い方だと、既に三日月はスレッタとそういう関係であると言っているようなものだ。もしそうだったら、流石に付け入る隙が無い。レネにNTRの趣味は無いのである。
「後は、トマトの人とか、地球寮の皆とかかな」
「……」
だが後に続いた三日月の言葉を聞いて、レネは安心する。要するに三日月の好きなものは、親愛や友愛の意味なのだ。これならば、まだまだ全然チャンスはある。
(つーかミオリネ、まだあだ名呼びなんだ…)
ついでに未だに名前を覚えられていないミオリネに、少しだけ同情した。
「ふふ、友達想いなんだね、三日月くんって」
それはそうと、何時も男を落とす用の笑顔で三日月に話しかけるレネ。しかし、これだけでは足りない。
(よし、もう一気に踏み込んでみよっか)
だからここは、踏み込んだ事を言う事にした。
「ねぇ、三日月くん」
「何?」
レネは三日月の前に移動し、抱え膝の姿勢で、三日月に踏み込んだ発言をする。
「よかったらさ、私のキープくんにならない?」
ズバリ、キープくん宣言。相手の目を見て、男が好きそうな顔をする。更に抱え膝をしているせいで、レネの太腿がバッチリ見えており、おまけにレネの豊満な胸も強調されているので色仕掛け方面も万全。これで落ちない思春期の男などいないだろう。仮に落ちなくても、自分の事を多少は意識する筈だし。
「何それ?」
「ようするに、私の彼氏候補って事。どう?」
「何で?」
「うーん、一目惚れ、かな?」
嘘である。レネは三日月の事を、顔は整っているけど別にタイプじゃないと思っているし、そもそもシャディクの命令が無ければ話しかける事さえなかったと思っている。
しかし、シャディクの命令ならば仕方が無い。なので確殺コンボを決めて、さっさと落とすか、自分を意識させるようにした。
が、
「面倒だからいいや」
「え?」
「じゃ」
三日月、全くなびかない。それどころか、レネなど眼中に無いっていった感じで
その場を立ち去る。残されたのは、レネと三日月のミニトマトのプランターだけ。
「ふ…ふっざけんなぁぁぁーーー!!」
今までレネは、こんな風に断られた事は無かった。恥ずかしくてつい断った子はいたが、面倒だからと言って断ってきた子はいない。
そしてこの時レネは、自分のプライドにかけて絶対に三日月を落として見せると誓ったのだ。
「ねぇねぇ三日月くん。もしかしてさ、そこわからなかったりする?私が勉強教えてあげようか?」
「後でスレッタに教わるからいいよ」
同じパイロット科の授業を受けて自習中に話しかけたが、三日月はスレッタに教わるからいいと言って、レネの誘いを断った。
「あ、三日月くーん。よかったらさ、一緒にお昼行かない?」
「いや、俺スレッタと食べるから」
お昼を一緒にしようとして話しかけたが、三日月はスレッタと共に昼食を取ると言って、レネの誘いを断った。
「三日月くーん。途中まで一緒に帰らない?ちょっと話したい事あるしさ」
「この後スレッタと一緒にトレーニングする予定あるから、それじゃ」
放課後、一緒に帰ろうと誘ったが、三日月はスレッタと約束があったので、レネを置いて先に帰った。
(スレッタ・マーキュリーぃぃぃ!!)
三日月はずっと、スレッタを最優先している。朝も昼も放課後も、ずっとスレッタ最優先だ。勉強も顔も自分の方が優れている筈なのに、三日月はいつもスレッタばかり。これが幼馴染補正か。はっきり言って、凄くムカつく。
(何よりムカつくのは、あの子私を全く見ていない!!)
そして何より腹が立つのが、三日月がレネの事などまるで眼中に無いというところだ。レネの事を敵とも、そして味方とも思っていない。レネを全く見ていない。三日月の目には、何時もスレッタばかり。
確かに幼馴染なので仕方が無いのかもしれないが、それでも自分を全く意識しないのはムカつく。まるで空気だ。
(ムカつくムカつくムカツつく!!!こうなったら意地でもキープくんにしてやるんだから!!)
僅か1日でレネは、シャディクの命令など二の次になっていた。そんな事より今は、自分のプライドに誓って、絶対に三日月の意識をスレッタから自分に向けさせることにする。
(あまり使いたくないけど、頻繁にボディタッチとかもするべきかもね)
出来ればプライドにかけて仕草と言葉だけで男を落としたいが、三日月にはそれが通用しない。
なのでレネは、多少はしたないが、積極的にボディタッチもすることにした。最悪、自分の体を思いっきり使うのも視野に入れる。といっても、Rが18な事はしない。せいぜい15くらいだ。
(よし。そうと決まれば明日直ぐに行動しよう。今日は早めに寝て、英気を養っておかないと)
既に三日月は地球寮に帰っている。流石に地球寮に乗り込む訳にはいかないので、レネは明日三日月が1人になったら勝負を仕掛ける事にした。
なので今日は、肌と髪の手入れをして、さっさと寝ておこう。夜更かしは、乙女の大敵なのだ。
「シャディク、やっぱり無理じゃないか?」
「いや、ここはレネに最後までやらせてあげよう。本人もその気だしね」
その様子を見ていたサビーナとシャディクは、レネに気がつかれないようにその場を後にするのであった。
(不安だ…)
そしてサビーナは、やはりこのハニートラップ作戦にかなり不安を覚えるのであった。
「三日月くん、おはよう!」
昨夜、しっかり英気を養ったレネは、翌日も三日月に猛アタックを仕掛けていた。
(こいつ、しつこいな…)
だが当の三日月は、かなりげんなりしている。ていうかめっちゃ鬱陶しいと思っていた。そもそも三日月は、レネに出会った当初からレネをかなり警戒していた。
その最たる理由が、レネの笑顔と喋り方にある。何と言うか、嘘っぽいのだ。初めて出会った時から、レネの全てが嘘っぽく見える。
なので信用が出来ない。そもそも初対面で笑顔全開で近づいてくる人間は、何か胡散臭いし。
「今1人?ホルダーのマーキュリーさんは?」
「……温室でトマトの世話してる最中」
「へぇ~」
好都合。もし今スレッタがいたら、絶対に突っかかる自信がある。それにスレッタがいないうちに三日月を篭絡しておかないと、絶対に面倒な事になるし。
(じゃ、さっそく…)
そしてレネは行動を開始する。
「そういえばさ、三日月くんって結構手大きいよねぇ~」
レネは三日月の手を握って、恋人繋ぎのようなつなぎ方をする。これで相手の手をニギニギして、自分を意識させるという作戦だ。
しかし、
「!?」
「何?」
三日月は、レネの手を掴んで相当不機嫌そうな顔をして、レネの手首を掴む。流石にいきなりあんな握り方をされるのは、嫌だったらしい。そもそも三日月はレネを信用していない。今だって、レネが自分の手を掴んで何かするんじゃないかと思い、逆にレネの手首を掴み返したのだ。
「ちょ、ま、痛っ…!」
まさか手首を掴み返されるとは思わず、レネは痛がる。最初こそ三日月から手を振り払おうとしていたのだが、思っていた以上に三日月の力が強く、振り払えずにいた。
「おまえ!レネちゃんに何してるんだ!!」
「は?」
そこに現れたのは、見た事の無い男子生徒。彼は三日月を睨みつけながら、近づいてきた。明らかに三日月に対して、敵意を持っている。
これはまずいと真っ先に思ったのが、レネだ。今こっちに向かってきているのは、レネのキープくんの1人。もしここで彼と三日月が騒動を起こしてしまえば、騒ぎが大きくなって、そのままレネの親衛隊と三日月の乱闘になりかねない。
それはまずい。そもそもレネの親衛隊は、荒事には向いていない子が多い。彼らに三日月の相手なんて、出来る訳が無い。
「あ!大丈夫大丈夫!ちょっと悪ふざけしていただけだよ!?」
なのでレネは、直ぐに彼を落ち着かせるように嘘を言う。万が一にも、乱闘騒ぎにしない為に。
「え?そうなの?」
「うん!そうなの!心配させてごめんね?」
レネは必死で手首の痛みに耐えながら、レネはキープくんを落ち着かせる。そのレネの思惑に気が付いたのか、それとも偶然か、三日月もレネから手を離す。
「まぁ、レネちゃんがそう言うなら。えっと、本当に大丈夫?」
「うん!大丈夫だよ!!心配してくれてありがとね!!」
するとキープくんは、渋々だが引き下がった。そして静かに、その場を立ち去る。
(あっぶな…)
なんとか最悪の事態を避けれた事に、レネは安堵する。
だがそんな時だ。
「お前さ、そんなに演技してて疲れない?」
「…………は?」
三日月は、レネに突然そんな事を言い出した。その三日月の発言に、レネは目を丸くして、三日月を見る。
「昨日から思っていたけど、お前のその顔も喋り方も、全部演技でしょ?それって疲れない?」
「な……」
今度こそレネは言葉を失う。今までレネは、シャディク以外にこの演技を見破られた事などなかったからだ。なのに三日月は、たった1日で見破ってきた。いや、もしかすると、最初から見抜いていたのかもしれない。
「はっきり言ってさ、不自然だよ。それにそんな演技をしている奴、俺は好きじゃない。疲れるみたいだし、嫌ならやめたら?」
三日月は、まるで全部を見透かしているような目でレネを見る。
「あんたに何が分かるっていうの…」
そしてレネはその目に耐え切れず、思わず素で話してしまう。
「人間、誰だって仮面を被って生きてんだよ。素の自分を本気で好きになってくれる人なんて、いる訳ないだろーが。だから私はこういう喋り方なの」
レネは男子と女子で、全然違う話し方と接し方をする。どうしてそうしているかは本人にしかわからないが、このやり方のおかげで、レネは学園で1番数の多い親衛隊を持つほどの人気がある女生徒になっている。因みに同じくらい、女子のアンチも多い。
「そもそもあんたはどうなの?こんな私の方がいいとか思える訳?どうせなら例え嘘でも、気持ちの良い会話や体験をした方が幸せじゃない?」
例えそこに本物が無くても、本人達が心地よければ害はない。それに、自分の素を本気で好きになってくれる人なんて、そうそういる訳が無い。ならば、仮面を被って相手に好かれた方が得だ。そうすれば、自分も相手も傷つかないし。
「俺は素で話してくれる人の方が好きだけど」
「……え?」
しかし三日月は、素の方がいいと言う。彼にしてみれば、嘘で塗り固められた方が普通に嫌だからだ。スレッタもミオリネも、そして地球寮の皆も嘘を言わない。それに、よそ者だった自分達の事をよくしてくれる。だから三日月は、地球寮の皆を仲間と認めたのだ。
「何で…」
「いや、何でもこうも、そっちの方がいいじゃん。それに、今のあんたの方が俺は好きだよ。何も取り繕ってない自然体だし」
「なっ!?」
三日月のまさかの発言に、レネは面食らう。決してドギマギした訳じゃない。三日月がこんな事を言うとは思わず、びっくりしただけだ。
(あーもう…調子狂うなこいつ…)
完全に素という訳ではないが、三日月はこっちの自分の方が好きらしい。既に演技を忘れているが、今更だ。なんせとっくに三日月にはバレていたのだから。これではもう、ハニートラップも意味が無い。
しかし、三日月に媚びるような言い方は絶対に通用しない事がわかった。ならばハニートラップでは無く、素直に仲良くなった方がいいのかもしれない。
(しょうがない…キープくんじゃなくて、友人とかを目指そ)
レネは方向転換する事にした。こうなっている以上、正直あまり自信は無いが、バルバトスの情報を手に入れる為には、本人の口から聞くのが手っ取り早い。
なので、ここで引くという真似はしない。あくまで三日月とは、何かの形で関係を持っていた方がいいだろうし。だからレネは、三日月と友人関係を築く事にするのだった。
「なんかごめん。私、最近ちょっと色々あってさ。だからあんな揶揄う様な事してたんだ」
「別にいいよ」
先ずは三日月に謝罪をするレネ。流石にハニートラップの事は話さない。ここでそんな事を話したら、それこそ三日月からの信用は地に落ちるのは間違いないだろう。
「そのお礼って訳じゃないけどさ、この後一緒にご飯とかどう?奢るよ?」
そして同時に、仲良くなるために食事に誘う。今度は媚びるような真似も、男がドギマギするような仕草も無し。ほぼ素で三日月を誘っている。勿論、裏はあるのだが。
しかし、
「それは無理かな」
「え?何で?」
「俺、この後スレッタの手伝いに行かないといけないから」
「…………は?」
「じゃ」
三日月、このレネの誘いを断る。例えレネが素直に三日月を誘ったとしても、やはり三日月はスレッタ優先なのだ。そもそもスレッタの方が先に約束をしていたし、ここでレネの誘いを受ける訳にはいかないのだが。
(また、スレッタ…)
一方で三日月が去った後、取り残されたレネは、その場で立ち尽くす。だってまただ。また三日月は、スレッタを優先した。確かに三日月はスレッタと先約があったが、やはり気にくわない。
「スレッタ・マーキュリーぃぃぃぃぃ!!」
そしてレネは、その場で大声でスレッタの名前を叫び敵対心を燃やすのであった。
地球寮 モビルスーツ格納庫
(やっぱり、何もわからない…)
深夜の地球寮モビルスーツ格納庫。そこには、ニカが1人でバルバトスのコックピットに入って、端末を弄っていた。
彼女は今も、シャディクの命令に従って、バルバトスの情報を集めているのだ。しかし、何時になってもバルバトスの強固なプロテクトを突破できない。
(あの人は直ぐにでも情報が欲しいって言っていたけど、やっぱりこれは無理だよ…こんなに強固なプロテクト初めてみたし…)
ニカはメカの整備は得意だし、システム面もティル程では無いが明るい。しかしそれでも、バルバトスのプロテクトはあまりに強固過ぎる、こんなの、何時になったら解けるのかわからない。下手すると、何年もかかりそうだ。
(やっぱり、もっと別の方法で情報を集めよう…)
中枢データの吸い出しが限りなく不可能であると判断したニカは、別の方法でバルバトスのデータを集める事にする。例えば、シン・セーから貰ったバルバトスの整備データとかから。
そして今日はもう寝ようと思い、バルバトスのコックピットから降りた時だ。
「何してんの?」
「!?」
突然、ニカは声をかけられた。ニカがゆっくり後ろを振り返ると、
「み、三日月くん…」
そこには、バルバトスのパイロットである三日月がいた。
「それでニカ、何してたの?」
「え、えっと!実はちょっと今日の整備中にバルバトスで気になる部分があってね!?そこがどうしても気になって眠れそうになかったから調べてたんだ!!私、1度気にし出したら眠れないからさ!!」
「ふーん、そうなんだ」
嘘は言っていないが、本当の事も言っていないニカ。でも幸いなことに、三日月は納得してくれたようだ。
「ところで、三日月くんはどうしてここに?」
ニカは話を逸らす為、こんな時間に三日月が格納庫にいる事を聞いてみる。
「なんか寝付けなくてさ。だからちょっと月を見に行ってたんだ」
「月?」
「うん。俺の名前の三日月ってさ、月から取ってるんだよね」
どうやら三日月、月を見に行っていたらしい。確かに三日月という名前は月に関係しているし、気になるのも仕方が無いだろう。
「どうだった?」
「綺麗だった。凄い丸かったよ」
アスティカシア学園からも、月は見える。そして今日は、丁度満月が見える日だ。
残念ながら三日月では無いが、とてもきれいな月が見えただろう。
「月か…見た事はあっても、行った事はないんだよね…」
火星生まれ、水星育ちの三日月と違い、ニカは地球生まれのアーシアンなので、地球から月を見た事くらいはある。しかし、月に行った事は1度も無い。そもそも行く機会が無いし。
「月って、何があるの?」
「えっと、アリアンロッドの本社があるよ。フォン・ブラウンって大きな街もあるし、あとはパーメットの採掘現場とかかな?」
先日決闘をした、イオクやジュリエッタが所属しているアリアンロッド寮の本社があるのが月。つまりあの2人は、正確にはスペーシアンではなく、月生まれのルナリアンという事になる。尤も、ニカ達地球寮からすればスペーシアンに変わりはないが。
「前にスレッタの母親から聞いたけどさ、月って昔戦場になったんだっけ?」
「うん。厄祭戦だと、月でも戦いがあったって残されている歴史書に書いてあるよ。あまり細かい事は書かれてないけど」
「やっぱりそうなんだ。でも綺麗だったね。普通、戦争の後って色々荒れちゃう筈なのに」
「えっと確か、300年前のギャラルホルンが、月に攻撃をしようとしていたモビルアーマーに宇宙艦隊全てを使って特攻をしたから、月はあまり被害が無かった筈だよ」
「へぇ、やっぱりバルバトスが元居た場所の人達って凄かったんだ」
「ふふ、そうだね。まさに英雄だよ」
因みに三日月やニカは知らない事だが、その月を守る戦いで、ギャラルホルンの兵士が最低でも5万人は死んでいたりする。
「それじゃ、俺はもう1回寝るよ」
「うん、おやすみ、三日月くん」
少し話していたが、あまり長く話していると、かえって眠れない。なので三日月は話を切り上げて、寝る事にした。今なら眠れそうな気がするし。
「あ、そうだ」
「ん?何?」
だがその途中、三日月はニカに振り返り、
「もう勝手にさ、バルバトスを調べたりしないでね。俺、ニカの事敵にしたくないし」
「っ!!」
ニカに対して、釘を刺すのだった。
「じゃ、おやすみ」
そう言うと三日月は、男子部屋に帰っていった。
「……」
ニカも少しだけ時間を空けて、俯きながら女子部屋へと戻る。そしてもう、バルバトスを調べるのはやめておこうと思うのだった。これ以上、三日月から不評を買いたくないし。
でも恐らく、どうせ無理にでも調べないといけないとも思う。だって自分は、彼らに命令されたら逆らえないのだから。
「はぁ!?何よこれ!?」
その翌日、ミオリネは学園に新たに追加された規則を見て、大声を出すのであった。
何だか書いているうちに、レネが早坂みたいになってきた気がする。中の人圭ちゃんだけど。というか、レネのキャラがイマイチわからない。
そんな訳で、リリッケよりスレッタに敵意を向ける事となったレネでした。そして次回はいよいよVSグラスレー。まぁまだ決闘までは書けないだろうけど。水星本編とは色々違う決闘にするつもりですので、どうかそれまでお楽しみを。でも過度な期待はしないでね。
そして、変なところとかがあったら言って下さいませ。修正したしますので。
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