悪魔と魔女の物語   作:ゾキラファス

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 いつの間にか、本作を掻き始めて1年が経過。早いものですねぇ。

 1年も経っているのにまだグラスレー戦だよ。しかも決闘はまだだよ。予定だけど、多分グラスレー戦は結構長くなると思う。

 何時も誤字報告や感想、本当にありがとうございます。大変励みになっております。


VSシャディク 1

 

 

 

 

 

 地球寮

 

「いくら何でも、これは露骨すぎるだろ」

 

「だね…いきなり校則が変更されて、起業出来ないなんて…」

 

 地球寮の談話室では、昭弘とマルタンを始めとした地球寮のメンバーほぼ全員が集まって話合いをしていた。内容は、昨日いきなり追加された学生起業規則について。

 

「学生起業規則53条 第3項。学生事業における、新製品の安全性の証明。これって、明らかに私達を狙って追加された校則だな」

 

 アリヤが追加された校則を読み上げる。つまりこれは、起業するにあたって、その会社の製品の安全が証明されないと、起業する事は出来ないというもの。

 そして株式会社ガンダムの目玉商品は、医療機器であるGUNDフォーマット。これは現時点で、安全性が保証されていない技術。なのでこのままでは、起業する事が出来ない。つまりこれはアリヤの言う通り、地球寮が狙い撃ちにされたかのような追加校則だ。

 

「いくら俺達がアーシアンだからって、ここまでするか?」

 

「するだろ。そもそもスレッタや三日月、ミオリネみたいな奴らが特殊で、大抵のスペーシアンはアーシアン嫌ってるぞ」

 

 オジェロの言葉に、ヌーノが即言い返す。彼の言う通り、学園の殆どのスペーシアンはアーシアンを見下している。そんなアーシアンが起業しようとしていると知ったら、こうして妨害もしてくるだろう。今回のは、いくらなんでも露骨すぎるが。

 

「もう校則無視してやっちまおーぜ」

 

「そんな勝手な事したら、私達退学になっちゃいますって!!」

 

 チュチュが勝手に起業するべきと言うが、そんな事をすれば即退学だ。流石にそれはまずいので、リリッケがチュチュをなだめる。

 

「そうだね。ここは、社長が話を付けるまで待っておこう」

 

 ティルはそう言うと、地球寮の上にある応接室を見る。そこでは現在、株式会社ガンダムの社長であるミオリネが、この校則を追加したであろう張本人と話している最中だ。

 

 

 

「うん、美味しいねこれ」

 

「香りも良いな」

 

「アリヤさんの故郷の茶葉だそうです」

 

「成程、地球産か。どうりで香りも味も良いわけだ」

 

 スペーシアンの他の寮と比べると、明らかにどこかボロい地球寮の応接室。そこには現在、5人の男女がいる。椅子に座り、シャディクを警戒している様子のミオリネ。その反対側にいて、出された紅茶を飲んでいるシャディクとサビーナ。お盆を持っているスレッタと、ミオリネの後ろでやや圧を出している三日月。正直言って、空気がかなり悪い。

 だが仕方がないだろう。やっと起業許可が出るかと思ったら、突然校則が追加されて起業できなくなったのだ。そりゃ社長であるミオリネも、機嫌が悪くなるというもの。

 

「それで、私に話っていうのは?」

 

 ミオリネがシャディクに尋ねる。目の前のこの幼馴染が、このタイミングでただお茶をしにきた訳が無いと確信しているからだ。

 

「前に俺が言っていた話、本気で考えてみないか?」

 

「……あんたと手を組むって話?」

 

「そうだ。これはその事業譲渡契約書だ」

 

 シャディクはサビーナから端末を受け取り、ミオリネに渡す。

 

「会社の社長はミオリネのまま。経営も実務も全部君達に任せる。そして必要なら、こちらはいくらでも手を貸そう。校則の違反は、あくまで起業に関してだけだ。既存の会社を使う分には何も問題無い」

 

 シャディクは、端末に映し出されている契約書をミオリネに見せながら説明をする。その間、ミオリネはしっかりと契約書に目を通す。

 

「ミオリネはデリング総裁の信用を失う事は無いし、水星ちゃんはエアリアルを守れる。当然、三日月くんのバルバトスもだ。そして俺は、ガンダム事業とエイハブリアクターの研究に1枚噛む事が出来る。どうだい?悪い話じゃないだろ?」

 

 シャディクはミオリネに淡々と説明をする。確かに聞いている限り、悪い話では無い。地球寮は色んな物が足りていないし、それを手伝ってくれるのならば、ありがたいものである。実際、スレッタはとても興味深そうな顔でシャディクの話を聞いている。しかし、ミオリネは簡単にシャディクを信用しない。

 

「その前にいい?あの校則を追加したのはあんた?」

 

 なので、先ずは確認を取る。そもそも、これはあまりに都合が良すぎる。いきなり校則で起業できないと思ったら、この話だ。前もって校則が追加されると知っておかないと、ここまでスムーズに話は行かない筈。

 

「……どうしてそう思ったんだい?」

 

 シャディクはミオリネの質問に質問で返して、答えを濁す。しかしそれだけで、ミオリネは確信した。やはりあれは、シャディクの仕業だと。

 

「だってこれ、あんたの何時ものやり方じゃない。自分で相手を危機に追い込んでおいて、そこに手を差し伸べる。そこから相手の信用を勝ち獲り、中からゆっくり会社を自分の物にしていく。そして最後は、手を差し伸べられた相手の立場が、いつの間にかあんたになってる。そうでしょ?」

 

 ミオリネは、シャディクがどういう奴かをよく知っている。笑顔で相手に近づき、言葉巧みに相手を操り、気が付けば全てを手に入れる。彼はこれまでもそうやって、グラスレーに貢献してきた。それを知っているからこそ、ミオリネは簡単にこの契約書にサインなんてしない。気が付けば株式会社ガンダムが、シャディクの会社になっているかもしれないから。

 

「仮にそうだとしても、今のミオリネに何が出来る?校則を元に戻すなんて出来っこない。それに、ガンダムを狙っている連中は大勢いる。そんな奴らから、ガンダムを守れるのかい?」

 

 そしてシャディクは、あくまで冷静にミオリネを論するように言う。実際、今のミオリネはあまり力が無い。新しい校則を無かったことにするなんて、絶対に出来ない。

 

「それとも、他に何か良い案があるのかな?今、俺以外にミオリネを守れる奴なんていないと思うけど」

 

「決闘があるじゃん」

 

 シャディクが畳みかけようとしていると、ミオリネの後ろに立っていた三日月が口を開く。

 

「この学園じゃ、決闘で何でも決められるんでしょ?なら決闘で俺達が勝ったら、その校則を無かった事にできるじゃん」

 

 三日月が口にした提案、それは決闘。アスティカシア学園では、大抵のもめ事は決闘で解決できる。ミオリネに校則を変える力が無いのなら、自分がバルバトスで決闘をして、それに勝てば良い。

 

「……三日月くん、俺は今ミオリネと喋っているんだ。ちょっとだけ口を閉じててもらえるかな?」

 

 シャディクは直ぐに三日月を黙らせようとする。なんせ今三日月が提案した事は、シャディクが1番避けたい事だからだ。なんせもし決闘になったら、相手となるのはバルバトス。

 これまで三日月の戦いを見てきたシャディクは、可能ならバルバトスとは闘いたくないと思っている。エアリアルなら対策の立てようがあるが、バルバトスには無い。そんな化け物相手に、決闘なんてしたく無い。

 そして何より、シャディクはミオリネと決闘をしたく無い。

 

「三日月の言う通りよ。この学園には、何でも解決できるシンプルな方法があるじゃない」

 

「……よせ、ミオリネ」

 

 だが無情にも、ミオリネは三日月の提案を取る事にしてしまう。シャディクはそれを止めようとするが、ミオリネは止まらない。

 

「シャディク・ゼネリ。あんたに、決闘を申し込むわ!」

 

 こうして株式会社ガンダムは、シャディク率いるグラスレーと決闘をする事になったのだ。

 

 それが決まった時、シャディクはどこか後悔したような顔をしていたが、三日月以外誰も気がつかなかった。

 

 

 

 決闘委員会 ラウンジ

 

 翌日、ミオリネはスレッタ、三日月、マルタン、リリッケを引き連れて、決闘委員会のラウンジへと来ていた。そんなミオリネと対面する、シャディク。その後ろには、グラスレーの女生徒、サビーナ、レネ、イリーシャ、メイジー、エナオの5人。全員が、アスティカシア学園パイロット科の成績上位者の生徒である。

 

「双方、魂の代償をリーブラに。決闘者は、ミオリネ・レンブランとシャディク・ゼネリ。場所は戦術試験区域4番」

 

 決闘の立会人であるラウダが、決闘の詳細を話す。戦術試験区域4番は、アスティカシアで1番大きな試験区域。そして相手は、集団戦では無敗のグラスレー。

 

(ほぼ間違いなく、向こうはシャディク含めたサビーナ達でやってくるわね)

 

 グラスレーには、パイロット科の上位成績者が数多く所属している。そもそもシャディクの後ろにいるサビーナ達は、全員パイロット科の010番台。その辺のパイロット科の生徒より、遥かに強くて厄介だ。

 そんな彼女達を、シャディクは態々引き連れて決闘委員会に来ている。だからこそミオリネは、シャディクが今回の決闘に集団戦で挑んでくると予想する。

 

(苦しいけど、こっちにはスレッタと三日月がいる。あの2人が、そう簡単に負ける訳無い。やってやろうじゃない)

 

 だが地球寮には、スレッタのエアリアルと、三日月のバルバトスがある。この2機が以前のグエルとジュリエッタの時のように戦えば、グラスレーとはいえ負けるとは思えない。

 それに三日月は、この前アリアンロッドとの数的不利な決闘で勝利している。その経験もあるし、そう簡単に負けないだろう。

 

 だが、このミオリネの予想は裏切られる。

 

「決闘方法は、最大20機までモビルスーツを投入する事が出来る大規模な集団戦とする」

 

「…………は?」

 

 ラウダの言葉を聞いて、ミオリネは呆気に取られた。

 

「さ、最大20機!?」

 

「そんな!地球寮にそんな数のモビルスーツなんてありませんよ!?」

 

 ミオリネの後ろにいたマルタンとリリッケは驚愕する。なんせ20機だ。モビルスーツでいえば7個小隊。それだけのモビルスーツなんて、地球寮には無い。

 

「何を言っている?兄さんはどんな不利な条件でも、決闘を拒んだ事なんて無かったぞ。それにそっちにはガンダムと、伝説と言われたガンダムフレームがあるじゃないか。何とでもなるだろう」

 

 ラウダは前髪を弄りながら、敵意の籠った目でミオリネを睨む。

 

「やってくれたわね、シャディク」

 

「根回しも、決闘準備のひとつだからね」

 

 どうやらシャディクは、前もって根回しをしていたようだ。その結果が、この圧倒的不利な決闘。

 

「あんた、そんなに三日月が怖い訳?」

 

「ああ、怖いね。この前のアリアンロッド寮との決闘を見てから、更に怖くなったよ。容赦の無い攻撃。縦横無尽に動く機動性。グエルやエランとも違う、暴力的で野蛮な戦い方。あんなの、まるで獣だ。普通に考えたら、対等な条件で戦う相手じゃない」

 

「その答えが、この自分有利な決闘?」

 

「ああ。情けないかもしれないけど、それだけ俺は彼を警戒しているんだ。当然、水星ちゃんもね。もし俺達6人だけで戦っていたら、負ける可能性が非常に高いだろうし」

 

 情けないかもと思うだろうが、シャディクはそれだけ三日月とバルバトスを警戒しているのだ。それにもしエアリアルとバルバトスがタッグを組んで戦ったら、勝てる相手なんていないと思える程凶悪なコンビになる。

 エアリアルのエスカッシャンによる四方八方からの援護射撃。そこにバルバトスのソードメイスによる接近戦。これだけでも凶悪なのだが、バルバトスにはビーム攻撃が効かない特性がある。つまり、エアリアルの誤射を気にする必要が無い。これだけで、どれだけこの2機のコンビが凶悪かがわかるだろう。

 

「獣を仕留めるには、それなりの作法と手段がある。例えば、地球の中東ではジャッカルという狂暴な獣を、猟犬や弓を持った狩人で囲んで狩る獣狩りがあったらしい。そして、彼のモビルスーツはバルバトスルプス、狼だ。狼はとっても狂暴で危険な獣。なら余計に正面から堂々と戦う訳にはいかない。だから今回の決闘、こういった条件でやらせてもらうよ?俺も勝ちたいんだ」

 

 今回の決闘、シャディクは全力で勝ちを拾いに行っている。だからこその、この決闘条件なのだ。いくらスレッタと三日月が強くても、数の力には敵わないだろうから。

 因みにラウダは、スレッタと三日月が負ける姿が見られると思ったので、この決闘条件を容認した。

 

(どうする?地球寮にあるモビルスーツは全部で4機。いくらスレッタと三日月が強くても、流石にこっちの5倍の戦力を相手にするのはキツイ…!)

 

 そして、予想が外れていたミオリネは焦っていた。いくらあの2人が強くても、彼我の戦力差は5倍。アリアンロッド寮との決闘の時も5倍の戦力差だったが、今回の相手は集団戦では無敗のグラスレー。質も量も、アリアンロッドとは全く違う。あまりにも、こちらが不利だ。

 

(いえ、考えるのは後。とりあえずは決闘を了承しましょう)

 

 しかし現状では、良い手が思い浮かばない。ならば、その問題は後回しだ。でも決闘までには、この不利な状況をなんとかしなければ。

 

「三日月は獣なんかじゃありません!!」

 

 その時、突然スレッタが大声でシャディクに怒鳴った。

 

「さっきから、何で三日月の事をそんな風に言うんですか!?確かに、三日月はちょっと危なくておっかなかったり喧嘩っ早いところもありますけど、歴とした人間です!最近ミオリネさんに習って野菜を育てる事を楽しんでいたり、チュチュさんや昭弘さんと一緒に筋トレをしたり、アリヤさんやリリッケさんに勉強を教わったりする、私の大切な家族なんです!そんな酷い事言わないでください!!」

 

 スレッタの怒鳴り声が、ラウンジに響く。周りにいた生徒達は、まさかスレッタがこれ程大声で怒鳴るとは思わず、動きを止めて、ポカンとしている。スレッタを嫌っているラウダでさえ、ポカンとした顔をしているし。

 

「スレッタ。俺は気にしていないから大丈夫だよ」

 

「三日月が良くても私は全然良く無いよ!?あと三日月は少しくらい怒ろう!?シャディクさん、もの凄く酷い事言っているんだよ!?」

 

「スレッタ先輩!落ち着いて!!」

 

 三日月は気にしていないと言っているが、それでもスレッタの怒りは収まらない。リリッケが何とか落ち着かせようと必死になる。

 

「シャディク?」

 

「あー、ごめん水星ちゃん、確かに今のは俺の言葉選びが凄く悪かったね。謝るよ」

 

 サビーナに言われ、シャディクはスレッタに謝罪する。

 

「謝る相手が違うと思いますけど?」

 

「……三日月くん、ごめん」

 

「気にしてないから別にいいよ」

 

 今度はスレッタに言われ、シャディクは三日月に謝罪。しかしやはり、三日月は全然気にしてないようだ。尚、これがもしスレッタの事をバカにするような場合であれば、今度は三日月がキレていただろう。

 

「……進めていいか?」

 

「あ、うん。お願いするよ、ラウダ」

 

「わかった。ミオリネ・レンブラン。君はこの決闘に何を賭ける?」

 

「新しく追加された、学生起業規則53条第3項の撤廃。あと決闘の条件を追加」

 

「条件?」

 

「今回の決闘、ベネリットグループの外部にも中継させてもらっていい?」

 

「何だと?」

 

 ミオリネの突然の条件とやらに、ラウダは疑問符を浮かべる。

 

「御三家全部の潰したパイロットとモビルスーツがいる会社なんて、最高の宣伝材料になるしね。あっちもこんな無茶な条件追加したんだから、これくらいはいいと思わない?」

 

 確かに、シャディクが根回しして追加した最大20機までという条件に比べれば、可愛い物である。

 

「ちっ!シャディク」

 

「俺は構わないよ」

 

 シャディクもそれくらいならと、その条件を呑む。

 

「シャディク・ゼネリ。君はこの決闘に何を賭ける?」

 

「ミオリネが社長をしている、株式会社ガンダムを俺に譲渡する事」

 

「アーレア ヤクタ エスト。決闘を承認する」

 

 少しひと悶着あったが、これで決闘が承認された。

 

 

 

 

 

 かに、思われた。

 

 

 

 

 

「三日月く~ん」

 

「ん?」

 

 決闘が承認された直後、レネが三日月に話かける。

 

「決闘が終わったらさ、私とデートしない?」

 

『は?』

 

 そのレネの提案に、再び周りにいた生徒達が驚く。

 

「デート…ああ、前にスレッタが弁当の人とやろうとしていたやつか」

 

「べ、弁当?」

 

 聞いた事の無いあだ名に、レネは少し困惑。でも直ぐに頭を切り変える。

 

「正直さ、この決闘そっちが勝つ可能性かなり低いと思うんだよね。だからさ、負けたら慰めてあげるよ?」

 

 そしてレネは、三日月を誘惑するような事を言う。というのもレネ、未だに三日月と距離を縮めようとしているのだ。三日月性格からして、キープは無理と判断。

 ならば、気軽に離せる友人ポジをレネは狙う。自分のプライドにかけて、必ず三日月の好感度を上げてみせる。だからこうして、積極的に距離を詰めに行く。

 

「えー…めんどい…」

 

 だがやはり、三日月はそう簡単になびかない。今も凄く嫌そうな顔で断っているし。後単純に既に勝った気でいるのが気にくわない。

 

「ちょ、ちょっと三日月!そんな事言ったらダメだよ!?」

 

「そうですよ三日月先輩!女の子からのデートをそんな風に断ったらいけませんって!!」

 

 いくら面倒だからといっても、この断り方はダメだ。スレッタとリリッケは、直ぐに三日月に注意する。

 

(ちょっと外野は黙ってろってマジで。今私が話してんだろーが…)

 

 そんな2人に、レネは心の中でキレる。そもそもレネは、スレッタとリリッケの事が嫌いなのだ。スレッタは三日月がいつも優先している人物。そのせいか、三日月は未だにレネの事を見てくれない。

 そしてリリッケは、自分のキープくん12号である生徒を誑かした人物。キープくんを大事にしているレネにとって、これは許す事が出来ないのだ。

 なのでレネは、スレッタとリリッケを嫌っている。尤も、その事をここで顔には出さないが。顔に出したら三日月からの好感度が下がりそうだし。

 

「そんな事言わずにさ、どう?何事も経験って言うしさ。試しにやってみない?ご飯も奢るよ?」

 

 レネはスレッタとリリッケを無視して、三日月に話し続ける。

 

「いや、やっぱいいよ」

 

 だがやはり、三日月はレネの誘いを断る。

 

「……そこまで断られると流石にヘコむなー…どうしてそこまで頑なに行こうとしない訳?」

 

 ここまで断られると、流石のレネもキツイものがある。なので理由を聞いてみた。

 

「だってお前とデートするより、スレッタと一緒にいた方が楽しいし」

 

「………」

 

 そしてその理由を聞いて、レネは後悔する。

 

「きゃーー!!今の聞きましたかスレッタ先輩!?」

 

「ちょ!リリッケさん落ち着いて…!!」

 

「あのバカ…」

 

「ははは…やっぱり三日月くん凄いや…」

 

 三日月の発言に、リリッケは興奮し、スレッタは少し赤面しながらリリッケを落ち着かせ、ミオリネは頭を抱え、マルタンは苦笑い。

 

「いやはや、凄いね彼」

 

「あそこまで自分の気持ちを直球で言えるとはな。誰かに見習わせたい」

 

 反対側にいるシャディクは三日月の素直さを褒め、サビーナは三日月の素直さを誰かに分けてあげたいと思う。勿論、その誰かは自分の隣にいる男だ。

 

「「「ぷっ…くくく…」」」

 

 そしてシャディクの後ろにいるイリーシャ、メイジー、エナオは笑うのを堪えていた。なんせ、あのレネが振られているのだ。出来れば映像に残しておきたいくらいには、この光景は面白い。

 

「いっつも…」

 

「ん?」

 

 だがその時、遂にレネは爆発した。

 

「いっつもいっつもスレッタスレッタスレッタスレッタスレッタスレッタスレッタスレッタスレッタスレッタぁ!!何なんだよお前はよぉ!!何で1度も私を見んぇんだよ!!少しは私を見ろよ!!」

 

「何が?」

 

 この数日、何度も何度も三日月にアプローチを仕掛けてきたレネ。だがその全てが、悉く失敗している。原因は、全部スレッタだ。三日月は必ず、スレッタを優先する。どんな時も、今回だってそうだ。おかげで三日月は、1度もレネを見てくれない。

 ハッキリ言って、もの凄く気に入らない。いくら幼馴染とはいえ、ここまでスレッタを優先するのはむかつく。

 

「……決めた」

 

「は?」

 

 だから、レネは三日月に対してある決断をする。

 

「決闘委員会!!」

 

「っ!?な、なんだ?」

 

 レネに突然大声で話しかけられて、ラウダは少し驚く。

 

「決闘の賭け、もうひとつ追加!!」

 

「……一体何を追加する?」

 

 だが、レネの次の発言で更に驚く事になる。

 

「もし私達が勝ったら、三日月・オーガス!あんたを、私の所有物にする!!

 

「……は?」

 

『えええぇぇぇーー!?』

 

 なんとレネ、決闘の賭けに三日月を賭けてきたのだ。これには三日月以外の全員が驚愕。

 

「俺、物じゃ無いんだけど…」

 

「決闘では何でも賭けられるの!!モビルスーツや情報!権利やお金!そして男や女もね!!だからこの賭けは合法なのよ!!」

 

 レネの言う通り、アスティカシアの決闘は、命に係わる物以外であれば大体何でも賭ける事が出来る。実際、そうやって色恋沙汰を解決した決闘も過去にはあった。

 

「それ、俺が勝ったらどうするの?」

 

 別に三日月自身、レネに大して興味は無いが、自分が勝ったらどんな事になるかは気になる。なので聞いてみた。

 

「もしそっちが勝ったら、あんたの命令を何でも聞いてあげる!!

 

『はぁーーーー!?』

 

 するとレネ、かなりとんでもない事を言い出す。

 

「何でもって、例えば?」

 

「何でもよ!デートしろとか、ご飯奢れとか、モビルスーツの訓練に付き合えとか!そしてもし、ベッドで相手をしろって言うのならそれも聞いてあげる!!

 

『ええぇぇぇぇーー!?』

 

 三日月以外の一同、更に驚愕。だってそれはつまり、レネを文字通り好きに出来ると言う事だ。要するに、性的な事をし放題という訳である

 

「え、えっとレネ?少し落ち着いて?」

 

「私は落ちついているけど?ちょっと黙っててくれないシャディク?」

 

「いやいやいや、流石に黙れないよ?」

 

「おいレネ、グラスレーの品位を落とす用な事を賭けるな」

 

 シャディクとサビーナがレネを止めようとするが、レネは止まろうとしない。

 

「これ、俺が了承してもいいの?」

 

「……いいんじゃない?」

 

「いいんですかミオリネさん!?」

 

「だってあいつ、何でか三日月に言っているし。だったらこれは本人同士が決める事でしょ」

 

 確かに新しく追加された賭け。これをレネは三日月に対して行っている。ならばミオリネの言う通り、三日月が決めるべきだ。

 

「あー…じゃあそれでいいよ」

 

 別にレネをどうこうする事に興味は無いが、これ以上この話を長引かせるのは面倒臭いので、三日月はさっさとこの新しい賭けの条件を了承する事にした。

 

「ふん!言質取ったからね!!ラウダ・ニール!!」

 

「あ、アーレア ヤクタ エスト。決闘を再度承認する…」

 

 ラウダは困惑しながらも、この決闘を承認。こうして地球寮とグラスレー寮の決闘は、なんか当初の予定を大幅に超える事態へとなっていったのだ。

 

 

 

「ところでミオリネさん。あの人は?」

 

「グラスレーのレネって子。確か…ジェタークのフェルシーの親戚だったかしら?」

 

「違うけど!?」

 

 

 

 

 

 校内 教室

 

「まさか、俺らが賭けの対象になるなんてな…」

 

「おまけに相手は、集団戦では無敗のグラスレー。俺でも全額グラスレーにベットする」

 

 決闘が承認された翌日の放課後の教室で、株式会社ガンダムの面々は集まって話をしていた。内容は勿論、グラスレーとの決闘についてである。

 

「負けたら株式会社ガンダムと、三日月が奪われるか。おまけに決闘内容は、最大20機まで参加できる大規模な集団戦。うん、かなり大変だなこれは」

 

「だね。でも会社の為、そして三日月の為にも負けられない」

 

 アリヤとティルが状況を整理。決闘で負けたら、株式会社ガンダムはグラスレーのものになる。そして三日月は、レネの所有物になる。こんなの、絶対に負けられない。

 

「三日月、お前あのレネってスペーシアンになにしたんだよ」

 

「さぁ?なんか向こうが勝手に怒ってるだけだし」

 

(無自覚になんかしたんだろうなぁ…)

 

 チュチュが三日月に聞いてみるが、三日月は全く覚えが無い。でも多分、何かしたんだろうとチュチュは思う。だって三日月だし。

 

「そもそもどうするの!?うちにあるモビルスーツは4機だけ!!とてもじゃないけど20機なんて揃えられないって!!」

 

「落ち着けってマルタン」

 

 顔を青くして慌てるマルタンを、昭弘が落ち着かせる。しかし、これは早急に解決しないといけない問題だ。地球寮にあるには、スレッタのエアリアル、三日月のバルバトス、チュチュのデミトレーナー改、そして昭弘のグレイズ改の4機だけ。とても最大上限である20機には届かない。

 

「ベルメリアさんに掛け合ってみるわ。ファラクトなりなんなり貸してもらう」

 

 とりあえずは、株式会社ガンダムが買い取ったペイル社技術部門の責任者であるベルメリアに助けを請うている。ミオリネは後で、ベルメリアに連絡を取る事にした。

 

「でもモビルスーツは揃えられても、パイロットがいない」

 

 だが1番の問題は、アリヤの言う通りパイロットがいない事だ。いくらモビルスーツの数を揃えても、パイロットまではそう簡単に揃えてられない。

 地球寮にはミオリネ含めても、12人しか生徒がいない。パイロットに至っては4人だけ。12人全員を参加させればまだ何とかなるかもしれないが、流石にそんな訳にはいかない。そんな事をしてしまえば、誰が整備や管制をするというのか。

 

「マルタン「絶対にいやだからね!?」そこまで言うか…」

 

 オジェロが寮長であるマルタンを乗せようとするが、マルタンはこれを全力で拒否。そもそもまともにモビルスーツを動かした事もない自分が行っても、的にしかならないだろうし。

 

「あ、私は出ます」

 

「やるのリリッケ!?」

 

「はい。経営戦略科の私なら整備も管制も手伝えませんし。最悪、スレッタ先輩の盾になります」

 

「君はいつも躊躇がないなぁ…」

 

 ここでリリッケがまさかの出撃。マルタンは驚きを隠せない。

 

「兎に角、私は1度ベルメリアさんに連絡を入れたり、戦略を練ったりしておく。その間にあんたらは、誰か私達を助けてくれそうな助っとを探しておいて」

 

『はーい…』

 

 ミオリネの号令により、地球寮の皆は決闘に向けて準備をする事にした。

 

(つーかこんな大変な時に、ニカ姉はどこいったんだよ…)

 

 そしてチュチュは、この場にいないニカの事を心配していた。

 

 

 

「あ、三日月。この後行くんだっけ?」

 

「うん。最近ずっと忙しかったし、ようやく収穫できたしね」

 

 

 

 学園内のグエルのテント

 

「何?水星女とシャディクが決闘?」

 

「はい。何かミオリネが新しく作った会社の経営を賭けるらしいっす」

 

「ついでに、あの三日月って子も賭けるとか。何か、グラスレーが負けたらレネが三日月の命令を何でも聞く事も賭けたとか」

 

「何してんだあいつら…」

 

 現在グエルが寝泊まりしているテントでは、フェルシーとペトラの2人が秘密裏に食料の差し入れを持ってきていた。安物の缶詰ばかりでは、体を壊すかもしれないと思ったからである。

 最初、この差し入れを断っていたグエルだったが、2人が『先輩が受け取るまで絶対にここから帰らない』と言ったので、受け取る事にした。

 当然、誰にもバレない様に手は打ってある。といか、ジェターク寮のほぼ全員が手を貸しているし。ジェターク寮を追い出されたグエルだが、今尚寮内では絶大な信頼がある。ジェターク社CEOのヴィムに何もするなと言われてはいるが、やはり誰もグエルをほっておくなんて出来なかったのだ。ラウダに至っては、グエルに秘密裏に寮に帰ってきて欲しいと言うくらい。だがグエルは、流石にそれは断固として拒否している。もし父親にバレたら、ラウダにも、他に寮生にも迷惑が掛かるからだ。

 

「何かいっぱいいる」

 

「ん?ひぃ!?」

 

「あ!三日月・オーガス!!」

 

 グエルが差し入れを受け取っている時、賭けの対象になっている三日月が現れた。何故か、右手に紙袋を持って。そして三日月の見たフェルシーとペトラはビビりまくり、三日月から少し距離を取る。

 

「何の用だ?」

 

「これを渡しにきただけ」

 

「あ?」

 

 三日月はグエルに近づき、手に持っていた紙袋を渡す。

 

「何だこれ?」

 

「この前のコーヒーのお礼。スレッタからさ、ご馳走になったんだから、しっかりお返ししなさいって言われたんだ。ちょっと収穫に時間掛かったから遅れたけど」

 

 どうやら、少し前のコーヒーのお礼らしい。グエルが紙袋の中を見てみると、小さな赤い野菜が見える。

 

「トマトか」

 

 紙袋の中身は、小さいミニトマト。それが十数個入っていた。

 

「俺が作ったやつだよ。いらなかったら捨てていいから」

 

「……いや、コーヒーのお礼って事ならこれは受け取っておく」

 

「そっか」

 

 これがもし、哀れみとかだったら三日月に返しているが、コーヒーのお礼という事なら受け取る。これで貸し借り無しになるからだ。

 

(つーかこいつ、ミオリネみたいな真似してるな…)

 

 いつの間に三日月は野菜を育てるようになったか気になったが、別に聞くほどの事でも無いと思い、グエルは何も聞かない事にした。それより今は、もっと別の事が気になるし。

 

「ところでお前、今度のシャディクとの決闘は大丈夫なのか?」

 

「もう知っているんだ。耳が早いね」

 

「ここじゃ、誰もかれも噂話が好きだからな」

 

 グエルが気になる事、それは当然決闘についてだ。いくら何でも、この決闘は地球寮側が不利すぎる。果たして三日月は、どうやってこの決闘を勝つつもりなのだろう。

 

「大丈夫だよ。数でかなり劣っているけど、何とかする。油断もしないしね。それに俺は、スレッタ以外には負けないよ」

 

 グエルの質問に、三日月は自信ありげに答える。これは慢心ではなく、単純に自信があるだけといった感じ。

 しかし、やはり数の問題があるので、これまで程の余裕はないみたいである。だがそれでも、三日月は負けるつもりなんて無い。だって三日月に勝てるのは、スレッタとエアリアルだけのだから。

 

「……そうか。まぁ、頑張れよ」

 

「ありがと」

 

 そう言うと、三日月はその場を立ち去っていく。

 

「あいつら、戦力差5倍はあるっていうのに、どうするんだろう?」

 

「さぁ?例のガンダムとガンダムフレームで何とかするんじゃない?」

 

 立ち去っていく三日月の背中を見ながら、フェルシーとペトラは今回の決闘について考えてみる。最大20機まで投入できる大規模集団戦。そして相手はあのグラスレー。普通に考えたら、先ず勝てない。それこそ例えば、とても強力な助っ人でもいない限りは。

 

「グエル先輩、まさかとは思いますけど」

 

「協力する訳ねーだろ」

 

 フェルシーがグエルに尋ねるが、グエルはそれを否定。グエルは今、父親から決闘を止められている。厳しいし、滅多に褒めてくれない父親だが、それでもグエルは父親を尊敬しているし、大好きなのだ。なのでこれ以上、勝手な真似をする訳にはいかない。

 

(本音を言えば、手を貸してはやりてぇけどな…)

 

 グエルはひっそりと内心そんな事を思いながら、三日月から貰ったミニトマトを食べる。

 

「あ、これうめぇ」

 

 結構おいしかった。

 

 

 

 第10戦術試験区画

 

 三日月がグエルのところに行っている時、ニカは戦術試験区画10番でシャディクと密会していた。

 

「酷いですよ、決闘だなんて。ようやくこれからって時だったのに…」

 

「俺も決闘は望んじゃないなかったよ」

 

「ならどうして「連絡係の君には関係が無い事だ」っ…!」

 

 出来ればもっと文句を言いたいが、所詮自分は連絡係のスパイ。シャディクに対等に物を言える立場にない。

 

「悪い…でも決闘をしたくないって言うのは本音だ。俺も決闘にならないよう、もう少し粘ってみるよ」

 

 少しキツく言い過ぎた事を、シャディクはニカに謝罪する。だが彼自身、本当に決闘は避けたいと思っているのだ。なので決闘までの数日間、何とかミオリネを説得する事にする。

 

「それで、何か情報は?」

 

「……一応、これがあります」

 

 それはそれとして、新しい情報は受け取る。

 

「内容は、バルバトスの特殊塗料についてです」

 

「塗料?」

 

 シャディクはデータを受け取ると同時に、内容を見る。

 

「……へぇ、成程。こんな風になっていたんだ」

 

 そしてそのデータを見たシャディクは、決闘に大きな希望を見出した。バルバトスという化け物を相手にしないといけない今回の決闘。普通に戦えば、先ず勝てない。

 しかし、このデータ通りならバルバトスにも弱点がある事になる。これならいける。バルバトスは決して、無敵のモビルスーツでは無い。

 

「ありがとう。もし決闘が避けられなくなったら、参考にするよ。安心してくれ。仮に決闘をして俺達が勝っても、絶対に悪いようにはしないさ」

 

 シャディクはそう言いながら、その場を後にする。

 

(ごめんね…三日月くん…本当に、ごめんね…)

 

 そして残されたニカは1人、その場で蹲って三日月に懺悔する。今更謝ったところで、もう遅いというのに。

 

 

 

 地球寮 談話室

 

「ダメだー。誰1人助けてくれねぇ…」

 

「まぁ、そりゃそうだよな。だって俺達、アーシアンだし」

 

 ミオリネに言われた後、地球寮の株式会社ガンダムの社員達は今回の決闘を助けてくれる助っ人を探していたが、全く誰も助けてはくれなかった。

 そもそも殆どの学生がスペーシアンであるこの学園で、アーシアンを助けてくれる生徒なんている筈が無い。なんせスペーシアンは、アーシアンを見下しているのだから。

 

「私さっきグエルさんに会って助っ人をお願いしたんですけど、ダメでした…」

 

 スレッタも先程、元ホルダーであるグエルに会ったので協力を要請してみた。もしグエルが助っととして参加してくれるのならば、とても心強いからだ。

 しかしこれは、空振りに終わった。何でも、グエルは現在父親に決闘を禁止されているかららしい。それなら仕方が無いとスレッタは思い、それ以上グエルを無理に誘わなかった。

 

「俺が全員倒せば問題無いんじゃない?」

 

「いや三日月。確かにお前は強いけど、それは流石に無理だろ。相手は20人だぞ?何か作戦立てるべきだ」

 

 三日月がバルバトスで手当たり次第に倒していく脳筋作戦を提案するが、昭弘にそれは流石に無理だと言われてしまう。だって今回は、アリアンロッド寮の時にはいかない。相手は集団戦では無敗のグラスレーなのだ。そう簡単に倒せる相手じゃない。

 

「なぁニカ姉、なんかあったか?」

 

「え?何で?」

 

「いやなんかさぁ、元気ない気がして」

 

 チュチュが、どこか元気の無いニカを心配する。

 

「いや、今回の決闘は、今までで1番大変だなぁって思っていただけだよ。このままじゃ、チュチュ達4人だけで戦う事になるかもしれないし」

 

 本当は、自分がシャディクにバルバトスの情報を与えている事に対する罪悪感でこんな風になっているのだが、それを馬鹿正直に話すつもりは無い。なのでニカは、それっぽい事を言ってごまかす。

 

「まぁ、そうだよなぁ…マジでどーすんだ?」

 

 ニカを信用しているチュチュは、ニカの言う事を全く疑わない。そして決闘について頭を悩ませる。

 

 その時だった。

 

「皆さ~ん!助っ人を1人連れてきましたよ~!」

 

「マジかリリッケ!?」

 

 談話室に入ってきたリリッケが、なんと助っとを連れてきた。その事実に、オジェロは驚く。

 

「ささ!入ってください!」

 

 リリッケは連れてきた助っとを談話室に招待する。そしてリリッケに言われて談話室に入ってきたのは、

 

 

 

「初めまして皆さん。通りすがりの仮面の生徒、ヴィダールです。今回の決闘の助っ人としてやってきました。よろしくお願いします」

 

 

 

 銀色で、正面に4つの覗き穴のようなものが開いている仮面を被った不審者だった。

 

「え、何あれ…」

 

「おい、これフロント管理社呼んだ方がよくね?めっちゃ不審者じゃん」

 

「アリヤ」

 

「了解ティル。えっと番号は確か」

 

「ちょっとリリッケ!?何その不審者!?」

 

 オジェロとヌーノは顔を引きつらせ、ティルはアリヤにフロント管理社に連絡を入れるよう促す。そしてマルタンはビビりまくっていた。

 

「ニカ姉!ぜってーあーしの後ろから出てくんなよ!?」

 

「え、えっとチュチュ?」

 

「おい、誰だお前」

 

 チュチュはニカを自分の背中に隠し、昭弘は仮面の不審者を威圧する。

 

「え?え?え??」

 

 尚、スレッタは1人だけ凄く混乱していた。そんな中、三日月だけその仮面の不審者に近づく。

 

「……何してんの?金髪の人」

 

 そして直ぐに、その仮面の不審者の正体を見破るのであった。そう、この仮面の不審者の正体は、アリアンロッド寮のジュリエッタなのだ。

 

「違います。私は通りすがりの仮面の生徒、ヴィダールです」

 

「いや、アリアンロッドの金髪の人でしょ?」

 

「違います。私はヴィダールです。断じてジュリエッタ・ジュリスではありません」

 

「……そう」

 

(三日月が折れた!?)

 

 あの三日月がそれ以上の追及をやめる事態。それだけ、今目の前にいる仮面の生徒はインパクトがあったのだ。そして仮面の不審者の正体を知った一同は、ほっと安心する。

 

「おい昭弘。何してんだあのスペーシアン…」

 

「俺に聞くな…」

 

 何時もならスペーシアンであれば噛みつくチュチュでさえ、少し動揺している。だってあんな変な仮面を被っている意味がわからない。頭がおかしくなってのかと心配するくらいだ。

 

「あのジュリ…ヴィダールさんは、本当に助っ人に?」

 

「はい。本当に助っ人として、ここに来ました」

 

「どうしてですか?」

 

 スレッタ、空気を読んでジュリエッタの名前を言わずに、自らが名乗ったヴィダールという名前で呼ぶ。どうしてそんな仮面を被っているのか、何で名前を偽っているのか、あとそれ暑くないのか。色々聞きたい事はあるが、先ずはどうして協力してくれるかを聞いておかないといけない。

 

「とある先輩からのお願いでして」

 

「先輩?」

 

「はい。彼は『本当なら友の危機に私が行きたいが、私が行っても足手まといにしかならない!なのでうちから1番のパイロットを助っ人として出向させる!』との事でして。それで私が来ました」

 

「あー…」

 

 スレッタの頭に、なんかややムカツク笑顔で何故か親指を立てている褐色肌の男子生徒が思い浮かぶ。確かに彼が来ても、碌な戦力になりそうにない。

 

「えっとじゃあ、その仮面は?」

 

「単純に身バレ防止です。うちの寮にもまだ、アーシアンを好きじゃない生徒はいます。なのに表立って協力したら、後で寮内で分裂が起きかねませんので」

 

「ああ、そういう理由でしたか」

 

 ジュリエッタが仮面を被る理由は、本当にそれだけだ。以前の決闘の時にわかった事だが、アリアンロッド寮にはアーシアンのテロにより親を失った生徒が所属している。

 そんな生徒にアーシアンに協力していると知られてしまえば、かなり面倒な事になる。その為にも、この仮面は必要なのだ。

 

「嬉しいけど、大丈夫なの?俺らの協力とかして」

 

 ジュリエッタの協力は嬉しい。だがアリアンロッド社は、ジェターク社の傘下にいるも同然の企業。いくら仮面を被っているとはいえ、もしこの事がジェターク社にバレたりしたら、後々面倒な事にならないか心配がある。

 

「まぁ、このまま参加したら面倒な事になるかもですね」

 

「やっぱりなるんだ」

 

 やはりいくら仮面で顔を隠しているとはいえ、流石に無理があるらしい。

 

「なので、どなたか学生証を貸していただけますか?それでごまかしますので」

 

 そこでジュリエッタが考えた作戦が、地球寮の誰かの学生証を借りて、それで相手を誤魔化す作戦だ。これでシステム上はその学生として参加できるので、後で誤魔化しも効く。

 

「あ、じゃあ僕のでよければ」

 

「ありがとうございます」

 

 結果、どうしても決闘に参加したくないマルタンが学生証を貸す事にした。これでデータ上はマルタンが参加している事になるが、実際はジュリエッタが参加できる事になった。

 

「でもとりあえず、これで助っ人が1人確保できたな」

 

 オジェロの言う通り、これで5人のパイロットが揃った。おまけに協力してくれる助っ人は、アスティカシアでも腕利きのパイロットであるジュリエッタ。100人力とまではいかないが、とても心強い助っ人だ。しかしまだまだ、数が足りない。

 

「まぁ最悪、俺達で相手の数を減らすしかねーか」

 

「だよな。あーしらが頑張るしかねー」

 

 まだ決闘まで時間はあるが、これ以上助っ人が得られなかったら、そうするしかない。要は根性だ。

 

(そうなった時は、頼むぞバルバトス)

 

 三日月も、そうなったら自分で数を減らす事をすると決める。バルバトスであれば、相手のビーム攻撃が当たっても大丈夫だし、接近戦でどんどん数を減らしていこう。

 

 

 

 

 

「ところでさ、それ暑くないの?」

 

「あ、これ通気性はかなり良いんですよ。思っている以上に快適です」

 

「そうなんだ」

 

 

 

 

 




 そんな訳で、VSグラスレーは大規模な集団戦になり、ジュリエッタが助っ人として参戦し、そしてレネが三日月の事を賭ける展開を追加しました。これ、上手く書ききれるかなぁ…。
 グエルは参戦させるか迷ったんですが、ここは原作通りにしました。あの子、何だかんだ父親に忠実だから、この時点では勝手な行動しないだろうと思って。

 そしてジュリエッタなんですが、乗るモビルスーツをレギンレイズジュリアにするか、普通にザウォートにするかで迷っています。
 もしジュリアに乗ったら、いろんな場所に関与がバレるので変装や偽装に意味が無くなる。だから今は登場させられないというのと、なんかうまい事誤魔化せばいけるのでは?(浅はか)みたいな考えがあります。 
 アンケートを設置しましたので、よろしければお願いします。

 活動報告も書いておりますので、そちらもよろしくお願いします。
 https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=314153&uid=187617

 そしておかしなところや、矛盾しているところがあれば言ってくださいませ。修正したしますので。

決闘でジュリエッタが乗るモビルスーツは?

  • レギンレイズジュリア
  • ザウォート
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