ジュリアに関して、アンケートや活動報告や感想にて、沢山の方々からご意見を頂きました。この場を借りて、お礼申し上げます。色々参考になりました。本当にありがとうございます。
そして色々と考えた結果、こうなりました。不満があるかもしれませんが、よければお読みください。
追記・感想にてご指摘があったので、グラスレーの登場モビルスーツを、マン・ロディからランドマン・ロディに変更しました。
アリアンロッド寮 寮長室
『お待ちください坊ちゃん。本気ですか?』
「本気ですとも!ラスタルCEO!」
アリアンロッド寮の寮長室では、イオクが現アリアンロッド社CEOのラスタル・エリオンと画面越しに会話をしていた。その会話内容は、地球寮とグラスレー寮の決闘に関するもの。
友である三日月の危機に、イオクはアリアンロッド寮から最も腕利きのパイロットであるジュリエッタを援軍として地球寮へ送っている。勿論、そのまま送ると後で寮内からの反発があるだろうから、ジュリエッタにはしっかり変装をさせて。
あの仮面のおかげで、ほぼ全ての生徒がアレをジュリエッタとは認識できていないので、簡単にバレる事は無いだろう。尤も、不審者扱いはされているが。
しかし、これだけではまだ戦力的に心もとない。なんせ今回の決闘では、最大20機までモビルスーツを投入する事ができるのだ。出来ればアリアンロッド社のグレイズやドミニコス隊でも採用されているシュヴァルベ・グレイズなどをモビルスーツを可能な限り送り戦力の増強を図りたいが、看板商品であるそれらのモビルスーツを送ると、アリアンロッド寮と地球寮と密接な関係を持っていると疑われ、折角の隠蔽工作が無駄になりかねない。
そこでイオクは、ある提案をラスタルにした。
『例の新型機を送って欲しい』
その新型機とは、高機動戦闘を主に設計されたモビルスーツだ。そして現在のところ、本社の開発部門の一部と、CEOであるラスタル、そしてイオクと、モビルスーツ開発部門責任者を母に持つジュリエッタくらいしか知らないモビルスーツ。これならば例えそのまま出したとしても、寮の生徒に疑われる事は少ないだろう。当然、それ以外にも様々な偽装工作はしておくつもりだが。
しかし、問題もある。
『ですが、あれはまだ新武装が開発中です。今お渡ししても使える装備がありません。それに、装甲の一部も未だに未完成のままですし…』
その新型機は、未だに未完成なのだ。正確には80%は完成しているが、完璧では無いといった状態。新機軸の近接装備も、肩に取り付ける予定のビーム砲付きフライトユニットも、そして脚部に取り付ける予定のブレードも完成していない。
一応機体最大の特徴である高機動性はしっかりと発揮できているが、些か心もとない状態。ちゃんと戦える状態ではあるが、企業のCEOとしては出来れば100%完成してから送りたい。じゃないと、パイロットが十分な力を発揮できない可能性があるからだ。
「武装に関しては既存の物で何とかします!それにジュリエッタであれば、完成率が80%でも十分に乗りこなせるでしょう!」
だが、イオクは譲らない。確かに未完成ではあるが、それでも既存のグレイズシリーズを遥かに凌駕する機体性能を持っている。それにジュリエッタであれば例の新型も間違いなく十分に乗りこなせるし、戦えるだろうと信じているからだ。。
少々ジュリエッタを信じすぎなようにも聞こえるが、実際ジュリエッタは元ホルダーのグエルに後一歩というところまで接戦した決闘をしている。それは間違いなく、アスティカシアではトップレベルのパイロットである証拠だろう。なんせ並大抵のパイロットであれば、グエルに一方的にボコボコにされて負けるのが普通だし。
それに未完成とはいえ、今のうちに決闘でデータを集めておけば、今後の役に立つ可能性もある。
「それだけではありません。ここで地球寮に恩を売っておけば、彼らが後に販売するGUND医療を優先的に斡旋してくれるかもしれません。なのでここは、彼らに協力をするべきなのです!」
『ふむ…』
更にここでイオクは、ただ善意で協力する以外のメリットも説明。現在、地球寮の皆がやろうとしている新事業であるGUND医療。もしこれが本当に開発されれば、とてつもない利益を生み出す可能性が高い。なのでここで恩を売るべきだとイオクは説明。
イオク自身は無償で手助けをしたいが、CEOであるラスタルを説得するにはこういった利益の話もしないといけないのだ。今までのイオクであれば、こんな説得は出来なかっただろう。こういった説得が出来るようになったのも、三日月との決闘のおかげである。
『……坊ちゃん。何故そこまでして、アーシアンを助けるのですか?』
そんな中、ラスタルはイオクに尋ねる。そもそもイオクはかなりのアーシアン嫌い。父親がアーシアンのテロリストにより怪我を負い、それ以来ずっとアーシアンを嫌ってきた。
だというのに、今回はリスクを冒してでもアーシアンしかいない筈の地球寮に手を貸そうとしている。ラスタルはそれがとっても気になる。一体どういう心変わりで、このような事をしているのか、と。
「アーシアンやスペーシアンなど関係がありません。私はただ、友を助けたいのです」
そんなラスタルの質問に、イオクは真っすぐに答えた。イオクにとって地球寮の三日月は、自分を見つめなおすきっかけを作ってくれた人物。つまり友なのだ。意味が分からないかもしれないが、イオクの中ではそうなっている。
そして友が困っていたら助けるのがイオク。実際、これまでも社内や寮内でそういった人助けをしてきた。おかげでイオクは、寮内生徒からの信頼はかなり厚い。イオクにとって友という存在は、それだけ大事なのである。
『…変わりましたな、坊ちゃん』
「ふ、最高の友を得ただけです」
尚、三日月はイオクを友達とは認めていない。なんか変な人という認識である。
『わかりました。では直ぐに例の新型を送りましょう。勿論、偽装工作はこちらでしっかりと行わせていただきます』
「ありがとうございます!ラスタルCEO!!」
こうしてイオクの説得のおかげもあって、変装して決闘を行うジュリエッタには、アリアンロッド社の未完成の新型機が送られる事となった。
(噂のガンダムフレームのデータも取れるしな…)
勿論、ラスタルはただの善意でこんな事をするつもりはない。ラスタルの耳にも届いているガンダムフレームの情報。今回の決闘では、そのガンダムフレームも出るらしい。
これはまたとない好機。この機に、ガンダムフレームのデータを可能な限り取っておこうという
打算的な思いもあったので、ラスタルは決闘に新型を用意する事にしたのだ。
それにイオクの言う通り、ここで新事業をやろうとしている地球寮に恩を売っておけば、後々何かしらの役にたつかもしれない。
(にしてもイオク坊ちゃん、本当に変わったな…男子三日会わざれば刮目して見よなんて諺があるが、ここまで成長するものか?)
それはそれとして、ラスタルはイオクの成長っぷりに内心驚く。今までのイオクは、言うなれば頭に血が昇りやすい典型だった。冷静になれば問題無いのだが、それがナカナカ出来ない。能力はあるのに、これのせいでとてもいずれアリアンロッド社を任せられるとは思えなかった。
しかし、今のイオクはこれまでとは全然違う。頭ごなしに自分の要求を通そうとするのではなく、しっかりと説明をしながらラスタルを説得してきた。
こんなの、今までならありえない。一体彼に何があったのか、非常に気になる。決闘が終わったら、1度本社に呼び出して詳しく話を聞いてみよう。
(ラカンさん。貴方のご子息は、間違いなく化けますよ)
ラスタルは自分の恩人でもあるイオクの父親に、心の中で彼の息子であるイオクの成長を喜んだ。今のイオクであれば、いずれ自分の後を任せられると。
地球寮 モビルスーツハンガー
「すっげぇ…」
「まさか地球寮のモビルスーツハンガーにこれだけのモビルスーツが揃うなんてな」
決闘前日、地球寮のモビルスーツハンガーには7機のモビルスーツが揃っていた。スレッタのエアリアル、三日月のバルバトス、チュチュのデミトレーナー改、昭弘のグレイズ改、そしてペイル社から借りたザウォートが3機。
結局最大投入機数の20機には届かなかったが、元が4機だったと思えばほぼ倍になっているので、かなりの戦力増強が達成されている事になる。
「それにしても、やっぱ俺がいかないとダメ?」
「くじで決めただろ。腹くくれオジェロ」
「ちくしょう…」
ヌーノに言われ、オジェロはがっくりと肩を下ろす。パイロット科の4人以外はザウォートに乗るのだが、ここで問題になったのがパイロットについてだ。
リリッケは何故か自ら乗る事になり、ティルもこれに賛同。残る1機を誰が乗るか決める際、地球寮の皆でくじを引いたのだ。その結果オジェロが見事に当たりを引き、3機目のザウォートに乗る事になってしまう。かなり反対したが、ミオリネの『やれ』というドスの効いた一言で、オジェロは渋々乗る事になった。
「皆ー!ちょっとどいてーー!」
『ん?』
そうやってオジェロが悲壮感を漂わせていると、モビルスーツハンガーの搬入路が開いた。そしてそこから、モビルスーツコンテナが現れる。
「何だあれ?」
「さぁ?俺は知らね」
予定にないコンテナの搬入に、オジェロとヌーノは首を傾げる。
「マルタン、ハッチ開けて」
「了解だよ、ニカ」
ニカに言われ、マルタンがコンテナのハッチを開ける。すると中から、見た事の無いモビルスーツが出てきた。頭に2つのヘッドアンテナがついていて、腰には大型のスラスターが2基。右腕にはビームライフル、左腕には大きなシールドがついている。見た感じ、かなり大きなモビルスーツに見える。
「来ましたか」
「「うお!?」」
突然後ろから声がしたので、オジェロとヌーノはびびるそして振り返るとそこには、今回の決闘において、地球寮の援軍としてやってきた仮面を被った生徒、ヴィダールがいた。
「あーっと、あれってお前の?」
「ええ。とある寮長がどこぞの本社に掛け合ってくれましてね。超特急で届けてくれたんですよ」
かなり言葉を濁しているが、2人も態々その辺を訂正するような真似はしない。
「ねぇ仮面の人。あれって、あんたのモビルスーツ?」
そこにふらっと現れる三日月。
「そうです。以前、貴方が壊した私のレギンレイズを改造したモビルスーツです」
「そうなんだ」
やはりと言うべきか、あれはヴィダールのモビルスーツらしい。
「えっと機体名は…プロト?」
「あれ?これまだ未完成みたいだね」
ニカとアリヤが端末を使って情報を見ているが、どうやら今回ヴィダールが乗るモビルスーツは、まだ完成していないようだ。今回の決闘は絶対に負ける訳にはいかないというのに、これではちょっと不安である。
「大丈夫なの?」
「問題ありません。腕に装備する予定の新武装が無いのはちょっと残念ですが、運動性能はしっかりと発揮できますので。必ずお役に立ちましょう」
「そっか。じゃあよろしく」
しかし、ヴィダールは問題ないと言う。それだけ自分の腕に自信があるのか、はたまた新型のモビルスーツの性能を信じているのか。でも弱気になるよりは全然良いので、三日月も何も言わない。
けれど、それはそれとして聞いておきたい事がある。
「ところでさ、何であれオレンジ色なの?」
それは、ヴィダールが乗るモビルスーツのプロトがオレンジ色をしている事だ。正直、かなり目立つ。あれでは隠密行動とか無理だろう。
「隠ぺい工作の一環です」
「どういう事?」
「人の記憶というものは、第一印象がかなり大事です。なのでそれを逆手に取りました。本来の機体カラーは深いグリーンなのですが、それだと決闘後に寮に帰った時に関与がバレてしまう。なので今回の決闘にかぎり、機体カラーを変えたんです。要は偽装です」
ヴィダールは今回の決闘に、自分の寮の殆どの生徒に内緒で協力している。もし知られてしまえば、アーシアン嫌いの生徒から反感を買い、下手をすれば寮内で争いが起きる可能性があるからだ。なので秘密裏に、この決闘に参加している。知っているのは彼女の寮の寮長と、メカニック科の数名の生徒だけ。
しかし決闘が終わった後は、普通にこの新型を自分の寮に持って帰らないといけない。そこで寮の生徒にこの機体の事を聞かれ、そこから地球寮に協力した事が露見してしまったら、かなり面倒な事になる。
なので新型機の機体色を変えたのだ。本来はグリーンだが、それとは真逆に近い色であるオレンジ。これで大勢の人は、この新型機の色を誤解するだろう。
それに、この新型機は未だに未完成。完成すれば、肩や腕、そして足などに色々追加される。つまり、形が変わるのだ。
流石に機体の形や色が変わってしまえば、そう簡単には見破れないだろう。もし見破れたとしても、既に色々手は打っているので多分問題無い。うん、多分大丈夫だ。
尚当然だが、地球寮の皆は今回ヴィダールが乗る新型機の情報はほぼ貰っていない。せいぜいどんな武器があるかとか、機動力に特化した機体であるとか、それくらいの情報である。
折角ヴィダールが善意で助っ人として協力してくれているのだ。流石にアリアンロッド社の新型の情報を抜き取るような真似はしない。そんなの、恩知らずにも程がある。
「私も質問があるのですが、いいですか?」
「何?」
「貴方のバルバトスには、一体今何を塗っているんですか?」
今度はヴィダールが三日月に質問をする。先程から三日月のバルバトスには、地球寮の手すきの生徒が何かを塗っているのだ。ペンキでは無い。何か透明の塗料のようなもの。
「あー…あれは秘密で」
ヴィダールの質問に、三日月は答えを濁す。今地球寮のスレッタを初めとした手すきの皆が塗っているのは、バルバトス専用の特殊な金属塗料だ。あの特殊塗料を塗っておけば、エイハブリアクターから発生するエイハブ粒子がその特殊塗料と割と魔法じみた科学反応を起こし、バルバトスはビームを弾く事ができるのである。
しかしこれは、地球寮どころかシン・セーでもトップレベルの極秘情報。おいそれと誰かに話す訳にはいかない。例えそれが、助っ人として協力してくれるヴィダールでも。
「そうですか、わかりました」
ヴィダールもアレが何か特別なものだとは察したが、流石にそれ以上は聞かない。自分だって、今回の新型機の事を全部話せと言われたら話さないだろうし。
「ジュリ…ヴィダールさん。今から機体のテストをしたいんだけど大丈夫ですか?」
「問題ありません。早速しましょう」
そんな会話を三日月としていると、ヴィダールはニカに呼ばれ、新型機のコックピットに向かう。
「なぁ三日月…あれ、大丈夫と思うか?」
オジェロが三日月に尋ねる。心強い援軍であるヴィダールだが、やはり未完成のモビルスーツを持ってくるのは不安だ。ただでさえ決闘相手は、集団戦では無敗のグラスレー。それに結局、彼我の戦力差は2倍以上。
おまけにこちらの3人はパイロットとしては素人同然。なのに向こうは、パイロット科でも成績上位者ばかり。これではいくらエアリアルやバルバトスがいるとしても、不安である。
「仮面の人は大丈夫って言っていたし、俺は信じるよ」
しかし、三日月は全然不安がっていなかった。確かにヴィダールが乗る機体が未完成ではあるが、ヴィダール本人が大丈夫だと言うのだ。ならば、信じるとしよう。
「まぁ…お前がそういうならいいけどよ…」
三日月が信じて、自分が信じない訳にはいかない。なのでオジェロもそれ以上、何かを言う事はしなかった。
「つーかお前も訓練しとけって。もう決闘まであとちょっとしかねーんだぞ」
「わかったって」
そしてヌーノに言われ、オジェロも残り少ない時間でモビルスーツ訓練をするのであった。
グラスレー寮 視聴覚室
「今回の決闘で最大の障害となるのは、このバルバトスだ」
寮内にある生徒用の視聴覚室。そこには大型のモニターに映像を流しながら、サビーナを初めとしたグラスレー寮のトップパイロット達と、今回の決闘に参加するグラスレー寮の生徒がいた。
ここにいる全員、シャディクが自ら選んだ腕利きばかり。シャディクが今回の決闘にそれだけ本気で挑んでいるかがよくわかる。そして彼ら、彼女達は現在、決闘の作戦会議を行っている最中である。
「皆も知っての通り、バルバトスはかなりの強敵だ。先ず、ビーム兵器が効かない。これではこちらの射撃武器はほぼ役に立たない。ならば接近戦をすればいいのだが、このバルバトスはその接近戦がデタラメに強い。恐らくだが、今この学園で接近戦ならばバルバトスが1番強いだろう」
その通りだと、視聴覚室にいる誰もが思う。今までの決闘でもバルバトスは接近戦ばかりなのだが、それが本当に強い。いや本当、デタラメに強い。
数日前のアリアンロッド寮との決闘でも、彼は変形する近接武器でアリアンロッド寮のモビルスーツを倒している。
それにバルバトスは、かなり機動力もある。まるで人間が攻撃を避けるみたいに動き、後ろに目でもついているかの如く攻撃を避ける。
攻、守、走の全てが揃っているモビルスーツ。それがバルバトスだ。こんな相手に正面から挑んでも、勝ち目は薄いのは明白である。
しかし地球寮には、もう1機厄介なモビルスーツがいる。
「だがそれだけじゃない。向こうにはエアリアルもいる。あのモビルスーツは、ビームによる遠距離飽和攻撃が非常にやっかいだ。事実、元ホルダーのグエル・ジェタークも、最初はこの11条のビーム攻撃で碌に抵抗できずにやられているしな」
サビーナが映像を切り変えて、エアリアルの映像を流す。11条のビーム攻撃による、四方八方からの飽和攻撃。これを避けられる生徒が、果たしてこの学園に何人いるのだろうか。
「我々が最も懸念しているのが、バルバトスを前衛にし、エアリアルを後衛にいた戦闘スタイルをやられる事だ。バルバトスにはビームが効かないから、誤射の心配も無いしな」
それは確かに凶悪だ。なんせ誤射の心配をする必要が無い。それだけで、エアリアルはビームを撃ち放題である。もしこれを決められると、いくらサビーナ達がいたとしても成す術なくやられかねない。
「こうして見返すと、マジで化け物だな…」
「本当だよ。そもそもビームが効かないって卑怯すぎるって」
「それもだけど、あのエアリアルのデタラメな飽和攻撃もやべーだろ。あんなの避けられないって」
「だよねー…シャディク先輩でも厳しいって思えちゃう…」
決闘に参加する事になったグラスレー寮のパイロット科の生徒達。その顔には、一様に不安が見え隠れしている。
「だが、我々には切り札がある。そしてその為のシミュレーションもしてきた」
しかしサビーナ達には、エアリアルに対する切り札がある。これがあれば、少なくともエアリアルはどうにかできるだろう。その切り札を使うために、しっかりシミュレーションで訓練もしてきた。問題なのはバルバトスだが、こちらもきちんと作戦を考えている。
「そして対バルバトス用の作戦が、これだ」
サビーナはモニターを切り変えて、対バルバトス用の作戦を説明。
突然だが、ここでアスティカシア学園の決闘のルールをおさらいしておこう。
先ず一つ目に、決闘で使うモビルスーツは3割出力を落として使用する事。
次に二つ目は、コックピットへの直接攻撃の禁止。
更に三つ目は、実弾兵器や、殺傷能力の高い質量兵器の禁止。
そして最後の四つ目は、相手モビルスーツのブレードアンテナを折ったら勝ちというもの。それ以外にも色々あるが、この四つが主なルールとなっている。
逆に言えば、これ以外なら何をしても問題ないのだ。
以前あったスレッタとグエルの決闘でも、空調システムを弄って雨を降らしたり、三日月とイオクの時のように、相手より多くの数を揃えたりする事が出来たのも、そういった事情があるからである。
だからこそ、シャディク達は考えた。対バルバトスの作戦を。そこで出した結論が、今サビーナが説明した作戦である。
「成程…確かにこれなら…」
「うん、勝てるかもしれない」
その作戦は、確かにバルバトスをどうにかできるかもしれない作戦だった。そして作戦を聞いた生徒達は、顔を明るくする。
「無論、これが全て作戦通りに行くとは思っていない。なので第2、第3の予備作戦も伝える」
だが当初の考えた通りに作戦が遂行される事なんて、ほぼ無い。なので当然。予備の作戦も考えている。決闘に参加する生徒達は、皆真剣にそれらの作戦も聴く。
「……」
そんな中、1人だけ別の事を考えている生徒がいた。名前を、レネ・コスタという。彼女は今回の決闘で、新たに賭けを追加している。それは自分が勝ったら三日月を自分の所有物にでき、自分が負けたら三日月の命令を何でも聞く事というものだ。
当然、レネは負ける気はない。というか三日月を普通に1度ぶっ飛ばしたい気持ちでいっぱいなのでやる気十分である。
(あんなフラれ方、絶対に認めない…!)
自分に全く興味が無いと言っている三日月。正直、もの凄く腹が立つ。なので1度決闘でボコる。そうしないと気が済まない。
そして必ず決闘に勝って、三日月をしっかり顎で使ってやると決める。
(あーでも…念のため、負けた時の事もちょっとだけ考えておかないとなー…)
しかしやはり三日月とバルバトスは強敵なので、負ける可能性だってある。そしてもし負けたら、レネは本当に何でも命令を聞くつもりだ。例えそれが、性的な事だとしても。
もしそうなった場合、普通の下着を見られて三日月にがっかりされるのはレネのプライドが許さない。どうせ見られるなら、三日月がドキドキするような下着じゃないと。
(……最近胸キツイし、念のため新しい下着買っておこ…いや本当に念のためだけどね?負けるつもり無いけどね?)
決闘がどんな結末になるかわからないが、決闘が終わり次第、新しい下着だけは購入しようとレネは決める。
「ところでサビーナ先輩。シャディク先輩はどこに?」
「シャディクなら、決闘で使う自分のモビルスーツの最終調整をしている」
同時刻 グラスレー寮 モビルスーツハンガー
シャディクは、グラスレー社の新型モビルスーツであるミカエリスのコックピットに乗って最終調整をしていた。
しかし、その顔は怒りがにじみ出ている。シャディクは、ギリギリまでミオリネの説得を行っていた。出来れば、彼女と決闘はしたくないからだ。けれどそれは、ミオリネの明確な拒絶によって終わりを迎える。
『あんたは信用できない』
その一言は、シャディクの胸に突き刺さるには十分だった。これではもう、ミオリネと共に歩く事は出来ないだろう。なのでシャディクは、本気で決闘をする事を決める。
(そのためにも、君達は必ず倒さないといけない)
シャディクの決闘相手、スレッタ・マーキュリーと三日月・オーガス。あの2人はシャディクにとって、捨てた筈の想いや憧れを具現化したような2人だった。幼い頃から共にいて、お互いを信用して守り合い、決して裏切らない。鉄のように固く強い信頼関係を持った幼馴染。
そしてそんな2人に、シャディクは嫉妬した。
自分もミオリネとそのような関係を築きたかった。あの2人のように、ミオリネの隣に立ちたかった。
でも、それは叶わない。なんせシャディクには立場がある。立場がある故に、迂闊な事は出来ない。例えば、素直になって行動したりだ。
結果としてシャディクは、ミオリネへの想いに蓋をして、自らの理想の為に前に進む事にした。せめて遠くから、ミオリネの変わらぬ姿を見れればそれで良いとして。
しかし、ミオリネは変わってしまった。他ならぬ、あの2人が変えてしまった。
前に進み続ければ、多くを手にする事が出来るというスレッタ。そんなスレッタの為なら、文字通り何でもやるという三日月。その2人の影響を受けたミオリネは、打算的な考えを抜きにしてでも、自分のやりたい事をやると言い出す。昔のミオリネからは、考えられない事だ。
でもそれは、ミオリネの為にもよくない。
だって振り返らずにそのまま進み続けたとしたら、どこかで取り返しのつかない事になりかねないからだ。物事というのは、相手との妥協点を見つけて、お互いに納得するようにしていくのが最も理想的。これならばリスクがかなり減るし、直ぐに引き返す事だって可能だ。少なくとも、シャディクはそう考えている。
だが今のミオリネは、そういったリスクを無視して進み続けているように見える。これはいけない。このままでは何時かミオリネは、とんでもない事をやらかしてしまうかもしれない。
それに今ミオリネの手元には、エイハブリアクターがある。これを狙っている者はかなり多い。力の無いミオリネに、それを守れるとは思えない。
同時に、スレッタと三日月にも守れると思えない。だってあの2人は、ただモビルスーツで戦う力があるだけなのだから。
だからこそ、シャディクは決闘前にミオリネに手を差し伸べたのだ。
今の自分であれば力もあるから、ミオリネを守る事も出来る。それは勿論、モビルスーツ戦が強いだけでは無い。それ以外の力もあるという事だ。
だがシャディクは、それらの事を素直に口には出さない。何故なら、そういう場所で生きてきたから。本音を素直に言う事など出来ない。そんな場所でシャディクは生きてきた。だからそう簡単に、シャディクは素直になれない。
しかし結局、ミオリネはシャディクの手を取る事はしなかった。
こうなってしまったら仕方が無い。野蛮なやり方だが、力づくでエアリアルとバルバトス、そしてミオリネを手に入れる。その方が、間違いなくミオリネの為にもなるからと信じて。
そもそもあの2人は、ミオリネに相応しくない。これが、子供じみた嫉妬によるものだとは理解している。それでもシャディクは、ミオリネを変えたあの2人に嫉妬する。だからこそ、必ずこの決闘に勝利すると誓うのだった。
(にしても、ミカエリスか。これほど悪魔の相手に相応しい機体名も無いだろうね)
シャディクが今回の決闘で乗るモビルスーツは、ミカエリス。右腕に戦術複合装備であるビームブレイサーを装備しているのが特徴的なモビルスーツなのだが、ミカエリスという名前は、旧世紀に少女に取り付いた悪魔を祓った宗教家と同じ名前なのだ。
そして今回の決闘の相手は、魔女が作り出した呪われたモビルスーツであるエアリアルと、かつて人類を救った悪魔の名を冠するモビルスーツシリーズであるガンダムフレームバルバトス。流石に偶然だろうが、これほど相応しい名前もそうは無いだろう。
(例の作戦準備も完了しているし、必ず魔女と悪魔を祓ってやろう)
シャディクは自分が必ず勝つと誓う。それが、ミオリネを助ける事になると信じて。
翌日 第4戦術試験区域 地球寮モビルスーツハンガー
『モビルスーツの積み込み完了!』
『進路問題無し!いつでもいけるよ!!』
地球寮側のモビルスーツハンガーでは、決闘に参加する全てのモビルスーツが順次コンテナに積み込まれていた。
『なぁ三日月。ほんとにこれ借りてよかったのか?』
「別にいいって」
『そっか。あんがとよ』
「でもそれ重いから、使う時は気を付けてね」
『おう』
そしてチュチュのモビルスーツコンテナには、今まで三日月が使用していたソードメイスも積み込まれている。三日月に借りたからだ。少し前まで、チュチュは自分のデミトレーナー改でも使える近接武器を探していたのだが、やはりどれも結構高くて購入できずにいたのだ。
そこで三日月は、自分のソードメイスをチュチュに貸す事にした。自分にはレンチメイスやツインメイスがあるので、どうしてもソードメイスが余ってしまう。ならばチュチュに貸した方が有意義だろう。
『ジュリ…ヴィダールさん!積み込み作業完了です!』
『ありがとうございます、ナナウラさん。この機体大きいので大変ではありませんでしたか?』
『いえいえ、そんな事ありません。それに私もアリアン…例の会社の新型に触れて嬉しかったですし』
『そうですか。では私も、しっかりと助っ人として頑張らせていただきますね』
ニカがヴィダールと話す。その会話には、どこにも棘などは無い。信頼している証拠だろう。
『それじゃあんた達、勝ってきなさいよ!』
『わかりましたミオリネさん!』
『はい!頑張ります!』
『わかっている』
『うん』
ミオリネの激励に、スレッタ、リリッケ、昭弘、ティルが答える。全員やる気十分だ。
『行きたくねぇ…』
『腹くくれーオジェロー』
ただ1人、オジェロだけは未だに戦いたく無いと言っているが。
『んじゃコンテナ、全基発進!』
しかし無常にも時間が来てしまい、全てのコンテナが決闘場へと発進される。
モビルスーツを乗せたコンテナが、第4戦術試験区域に多数現れる。地球寮側からは8基のコンテナ。そしてグラスレー側からは、20基ものコンテナが。それらは決闘場についたと同時にハッチが開いて、それぞれのモビルスーツが姿を現す。
地球寮側には、何時もの装備のエアリアル。レンチメイスを右手に持ち、背中にツインメイスを装備しているバルバトス。
昭弘の頭と肩の白いグレイズ改は、ビームライフルとバトルアックス。チュチュのデミトレーナー改は狙撃用ビームライフルと、三日月から借りたソードメイスを腰に装着。
助っ人であるヴィダールのモビルスーツのレギンレイズプロトは、右手にビームライフルを装備し、左腕には近接用のクローがついている大型のシールドを装備。因みにシールドの中には、ビームサーベルを収納している。
そしてリリッケ、ティル、オジェロが乗るザウォートが3機。これら合計8機が、地球寮が揃える事が出来た全戦力だ。
対してグラスレー寮側には、地球寮の倍以上のモビルスーツがいる
リーダー機であるシャディクが乗るミカエリス。
サビーナやレネ達が乗るベギルペンデが5機。その内1機だけ、何故か長砲身のビームライフルを装備している。
その他グラスレー寮生徒が乗っているのは、グラスレーの量産型モビルスーツであるハイングラが5機。背中に円形の何かの装備を施し、頭に大きなアンテナが生えている都市迷彩風のハイングラが1機。
何か大きな両手持ちの武器を持っているデミトレーナーの改造機が3機と、背中にコンテナを背負っているデミトレーナーの改造機が同じく3機。
そしてずんぐりむっくりしている白とオレンジのツートンカラーのモビルスーツのランドマン・ロディが2機の合計20機だ。
「圧巻ね…」
地球寮のモニタールームにいるミオリネは、グラスレーの戦力を見てそう呟く。こちらは8機。相手は20機。いくら何でも、数が不利すぎる。
「おいおい…グラスレー社の傑作量産機のハイングラまでいるじゃん…」
「それ以外にも、チュチュと同じデミトレーナーの改造機もあるな」
ヌーノとアリヤの言う通り、グラスレー側は多種多様。これだけで、ちょっとしたモビルスーツ博覧会ができる。
「全部バルバトス対策でしょうね」
ミオリネは、デミトレーナーやマン・ロディは三日月の対バルバトス用に揃えたのだろうと考える。なんせバルバトスは、接近戦が異常な程強い。並みのモビルスーツであれば、一撃で戦闘不能だ。
そこで他社の装甲の分厚く、重量のあるモビルスーツをシャディクは用意したのだろうとミオリネは考える。これならば、少なくとも頭部以外ならば一撃でやられる事はない。まぁ、三日月なら頭部を優先して狙うだろうけど。
(にしても、やっぱりこれかなり不利よね…)
ミオリネの思う通り、ハッキリ言って戦況は悪い。そもそも2倍以上の戦力差があるのだ。でも、負ける訳にはいかない。負けたらシャディクの思い通りになってしまうから。
幸いな事に、こちらにも新型のモビルスーツに乗った強力な助っ人がいる。少なくとも、一方的になすすべなく負けるという事は無いだろう。
「ん?」
その時、ミオリネはグラスレー側のモビルスーツの1機が、左腕に赤い布を巻いているのを見つけた。
『何あれ?』
決闘場にいる三日月も、ミオリネと同じ物を見ていた。そんな疑問に、シャディクが通信で答える。
『知らないかい三日月くん。アグニカ戦記によると、厄祭戦では大抵のもめ事はここみたいに決闘で決めていたらしいよ?そして決闘をするときは、こうして赤い布をモビルスーツに巻いていたらしいんだ』
『へぇ、そうなんだ』
シャディク曰く、彼が乗っているモビルスーツの左腕に巻いている赤い布は、大昔の決闘の合図らしい。
「シャディク、一応聞くけど、何で態々そんな事をしてんの?」
『折角伝説のガンダムフレームと決闘が出来るんだ。どうせなら、ガンダムフレームが活躍した時代の作法に則ったってだけだよ。深い意味はないさ』
「あっそ」
どうやら、シャディクもそういった物に憧れがある男の子だったようだ。
『それではこれより、双方合意の元決闘を執り行う。立会人は、ジェターク寮寮長のラウダ・ニールが務める。決闘方法は、最大20機までモビルスーツを投入する事が出来る集団戦。勝利条件はリーダー機のモビルスーツのブレードアンテナを折った方の勝利とする。リーダー機はそれぞれ、スレッタ・マーキュリーのエアリアルと、シャディク・ゼネリのミカエリスとする。両者、向顔』
立会人のラウダの声が聞こえ、両陣営戦闘態勢を整える。そしてミオリネとシャディクがモニター越しに顔を合わせ、宣誓する。
「勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず」
『操縦者の技のみで決まらず』
『「ただ、結果のみが真実」』
『フィックスリリース』
そして遂に、学園内外で多くの人が見ている8対20という圧倒的不利な決闘が始まったのだ。
『スレッタ!三日月!そしてジュリ…ヴィダール!あんた達は兎に角相手の数を減らして!!流石にこのままじゃ包囲殲滅されかねない!!』
『わかりました!』
『了解です』
「わかった」
ミオリネの命令に従い、エアリアルとバルバトス、そしてヴィダールのレギンレイズプロトが前に出る。
『チュチュは後方から援護。昭弘はそれぞれのサポートに回って。他の3人は盾にでもなってて』
『わぁーってるよ!』
『了解だ』
『いや俺らだけ扱い酷くない!?』
『仕方ありませんって。私達、本当にほぼ素人なんですから』
『そうだね。でも盾は勘弁だから、せめて援護射撃をしておこう』
かなり酷い扱いだが、3人は素人同然なので仕方が無い。
「ん?」
その時、三日月は正面から自分に近づいているモビルスーツを見つける。それはベギルペンデが1機と、ハイングラが5機だ。三日月は直ぐに応戦するべく、レンチメイスを構える。
するとベギルペンデは上に跳び、ハイングラが左右に散開。そしてバルバトスを囲むように動き、各自ビームライフルで攻撃を開始。
「ち!」
それらの攻撃を、三日月は全て避ける。エアリアルの飽和攻撃に比べたら、これくらい何て事無い。
『三日月!』
そんな三日月に、直ぐにスレッタがエアリアルのエスカッシャンを起動し、援護しようとする。しかし、
『ぐ!?』
そうなる前に、ミカエリスと2機のベギルペンデがエアリアルを攻撃。
『固めた!メイジー!イリーシャ!』
『『コピー!!』』
シャディクの命令に従い、メイジーとイリーシャがエアリアルに肉薄。
『くっ!エアリアル!』
スレッタは直ぐにエスカッシャンで防御。しかしこれで、三日月を援護できなくなってしまった。
『さっさと終わらせてあげる』
メイジーがエアリアルの頭に狙いを定め、引き金を引こうとする。
『させません』
『おっと』
しかしそれは、横から突然現れたオレンジ色のモビルスーツのビーム攻撃を防御したために止められた。
『見た事無いモビルスーツだなー?ていうか誰?』
『答える義理はありません』
『それもそっか』
誰かわからないが、邪魔をするなら容赦しない。こうしてメイジーは、目の前のオレンジ色のモビルスーツを排除するべく動く。
『いぎゃあああ!?こっちにも来たぁぁぁ!?』
『いいから反撃してくださいって!!』
更にその後ろでは、サビーナのベギルペンデがオジェロとリリッケを攻撃。そして2人は、直ぐにザウォートで反撃を開始。
『では、数を減らさせてもらうぞ』
だが、相手はグラスレーでもトップレベルのパイロットであるサビーナ。メカニック科と経営戦略科の2人では、とうてい太刀打ちできない。
『まずひとつ』
『ちょ!?ぎゃああああ!?』
オジェロが乗るザウォートは、サビーナのベギルペンデに正確に頭を打ち抜かれて、この決闘1番目の脱落者となった。
『続いてふたつっ…!?』
オジェロを撃破したサビーナは、直ぐに隣のリリッケにビームライフルを向ける。しかしその時、自分に向かってくる攻撃があり、それを避ける事になった。
『おいリリッケ!無事か!?』
『大丈夫?』
『昭弘先輩!ティル先輩!』
サビーナを攻撃したのは、昭弘のグレイズ改とティルのザウォート。オジェロは残念だったが、おかげでリリッケは命拾いした。
『ちっ!邪魔をするっ!?』
『あーしも忘れんじゃねぇーー!!』
そして後方から援護射撃をしているチュチュも、サビーナに向けて攻撃をする。危うくやられかけてしまうが、そこは流石のサビーナ。しっかりとチュチュの攻撃を避けている。
『先ずは、あいつから排除するか』
厄介な援護射撃を止めるべく、サビーナはチュチュに狙いを定める。
『させるかぁ!!』
だがそうはさせまいと、昭弘とティルは攻撃をする。チュチュの攻撃より弾数が多いので、近ければ全部避けられない。1度距離を取るべきだろう。
『ティル!リリッケ!奴をやるぞ!』
『わかった』
『わかりましたー!』
『援護は任せろ!』
しかしそうはさせまいと、4人はサビーナに狙いを定め猛追する。
『厄介な…!』
思っていた以上に厄介な相手に、サビーナはどうするべきか考えを巡らせる。そこでサビーナは、4人中2人はパイロット科の生徒では無い事を思い出す。実際見ていると、動きもぎこちない。
『ならば!!』
サビーナはベギルペンデを4人に向けて、スラスターを一気に吹かして距離を縮める。
『こいつっ…!?』
まさかこちらに向かってくるとは思っておらず、昭弘は驚愕。しかし直ぐにビームライフルをサビーナのベギルペンデに向けて、攻撃を開始。
だが、
『な!?』
なんとサビーナ、皆のビームの攻撃の合間を縫ってきたのだ。まるで、三日月みたいに。サビーナのパイロットとしての腕と、ベギルペンデの性能のおかげで可能となった動きである。
そしてビームサーベルを抜き、更にスラスターを吹かしてスピードを上げる。そのままスピードを出した状態で、サビーナはリリッケとティルに向かう。
『っ!避けろ2人共ーー!!』
昭弘が2人にそう叫ぶが、遅かった。
『きゃああああ!?』
『ぐっ!?』
リリッケとティルは、あっと言う間にサビーナのベギルペンデにビームサーベルで頭を切り裂かれ、脱落となった。
『これでみっつ』
こうしてサビーナは、5分もしないうちに3機のモビルスーツを破壊したのだった。
一方その頃、
『くたばれ三日月・オーガスぅぅぅぅ!!!』
三日月は、5機のハイングラから攻撃をされ続けていた。というかこの5機、全員執念が凄い。何としてでも三日月を倒そうとする執念が凄い。
「なんか鬼気迫るって感じだな。俺なんかした?」
まるで自分が恨まれているかのような事態。しかし、三日月に覚えは全くない。なので通信越しに聞いてみた。
『とぼけるんじゃねぇーー!!』
『俺達知ってるんだぞ!』
『お前が、レネちゃんを賭けに巻き込んだ事を!』
『そしてお前が勝ったら!』
『レネちゃんの体を好きに出来るって事もなぁーー!!』
「はぁ?」
質問の答えを聞いても、三日月はきょとんとする。実は彼ら、全員レネのキープくんなのだ。そしてレネは、決闘委員会で決闘が決まった後に彼らにこう言った。
『実はね、もし決闘で負けたら私、あの三日月って子に慰み者にされちゃうの…』
一応そういう事も出来るという賭けであるから、嘘は言っていない。そしてこの話を聞いたレネのキープくん達は、全員何があろうと三日月を仕留めるという気持ちでいるのだ。恐らく、グラスレー側で1番士気が高いのは彼らだろう。
「いや、俺別にあいつの体に興味無いけど」
しかし三日月自身、レネをどうこうしようとは思っていない。なので彼らの口にした事を否定する。
『てめぇ!レネちゃんをバカにしてんじゃねぇぇーーー!!』
「えー」
だがそれは逆に彼らの逆鱗を踏む行為だったようだ。おかげでより一層ヤル気を出してしまった。そのあんまりな展開に、三日月は理不尽を感じた。
「っ!?」
その時、頭上から攻撃をされる。なんとか避けると、上から1機のベギルペンデがビームを撃ちながら降下してくる。
『あたしの体に興味無いってどういう事だーー!!あんたのそういうところ、本当にムカツクんだよーー!!言っておくけど、私胸とか結構あるからね!?』
そのベギルペンデに乗っているのは、他ならぬレネである。今の通信を聞いたレネは、普通にむかついたので三日月に対する攻撃を激化させた。というかこんな事を言われて怒らない女などいないだろう。
(めんどくさ…)
かなり面倒な事態になったが、これらをどうにかしないとスレッタや他の皆の援護にも行けない。
「じゃ、トマトの人に言われた通りに、先ずは数を減らすか」
そして三日月は、先ずは目の前の敵を倒すために、レンチメイスを構えるのだった。
という訳で、レギンレイズジュリアは一部未完成として出す事にしました。うん、不満とかあるだろうけど、ジュリアをそのまま出すと、後でアリアンロッド寮内で問題になりそうだったんですよ。
なので色をオレンジ色にして、代名詞でもある腕のジュリアンソードを無くし、肩の射撃武装付きスラスターを外し、地上戦仕様の時の後ろ足のブレードを無くすという事にしました。いやそれジュリアじゃなくね?と思われるかもしれませんが、もうこのままで行きます。多分完成版が出るのは、ランブルリング編くらいかも。
もう少し考えてお話書かないと、こういう時頭抱えてしまう。本当に私はまだまだ未熟ね。
決闘はまだ始まったばかり。次回から対バルバトスやエアリアルをやる予定。上手く書けるか不安あるけど、しっかり書きます。
矛盾点や、その他におかしなところがあれば言って下さい。修正いたします。
あと最近本当に暑いので、水分補給はしっかりしておきましょう。