悪魔と魔女の物語   作:ゾキラファス

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 先週コロナになってました。いや初日の夜が本当にキツかった。頭の中がぐちゃぐちゃになる感じがして。
 そして今も、咳が全く止まりません。正直かなりキツイ。最近増えているらしいので、皆さんも気を付けましょう。

 今回はVSグラスレー3話目。結構ごちゃごちゃしてますので、読む際はお気をつけください。

 追記 感想にてご指摘があったので、ナノラミネートアーマー周りの解説を少し編集しました。


VSシャディク 3

 

 

 

 

 

 バルバトスがレンチメイスを両手でしっかりと持ち、背中のスラスターを吹かしながらハイングラに突っ込んでいく。

 

『全員!距離を取って!!』

 

『了解!!』

 

 レネの命令と共に、彼女のキープくん達が乗るハイングラがバルバトスから距離を取っていく。なんせバルバトスは、接近戦が異常に強い。もしバルバトスの間合いに入ってしまえば、そのままやられてしまう。なので決闘に参加しているグラスレーのパイロット達は、必ずバルバトスから距離を取る事を義務付けられてた。

 

 しかしいくら気を付けていても、そう簡単にいくものではない。

 

『いやこいつ速!?』

 

 何故なら、グラスレーのパイロット達の想像より、バルバトスが速かったからだ。事前にバルバトスが行った決闘の映像を見てはいたが、やはり映像で見るのと実際に体験するのでは違う。

 

『くっそぉ!!』

 

 自分目掛けてやってくるバルバトスに向けて、ハイングラがビームライフルを発射する。

 

『な、何でこの距離で避けられるんだよ!?』

 

 だが当たらない。普通であれば当たるであろう距離なのに、当たらない。バルバトスは左右に、そして偶に上下に避けながら、ハイングラに突っ込む。おかげで1機のハイングラがあっという間に間合いに入ってしまった。

 そして間合いに入った瞬間、レンチメイスの口が開き、1機のハイングラの左腕に噛みつく。

 

『援護!!』

 

『了解!!』

 

 再びレネの命令に従い、周りにいる4機のハイングラがバルバトスに向けてビームを発射。しかし、それは当たらなかった。

 

『んな!?』

 

 何故なら、バルバトスはレンチメイスで捕まえたハイングラを盾にすることで、攻撃を防いだのだから。

 そして三日月は攻撃を防いだ後、直ぐに周囲を確認。すると1機のハイングラが、丁度遮蔽物の無い場所にいるのを発見する。

 

「せーのっと!!」

 

 そしてそのままレンチメイスを大きく振りかぶって、捕まえていたハイングラをビームを撃ってきたハイングラ目掛けて投げつけるのだった。

 

『『嘘だろぉぉぉ!?』』

 

 とっさに避ける事が出来ず、投げつけられたハイングラと、投げられたハイングラはそのまま衝突。その衝撃で、2機ともブレードアンテナが折れてしまった。

 

「先ず2人」

 

 まだまだ数は多いが、とりあえずは相手の数を減らせた。この調子でもっと減らさねばと思った三日月は、新たな目標に狙いを定める。

 

『なんつー馬鹿力…』

 

 少し距離を取っているレネは、バルバトスのパワーに恐れおののく。ハイングラは54トンもあるモビルスーツだ。それをああも簡単に投げられるとは、やはりガンダムフレームとは恐ろしい力を持っている。

 

「次は、お前でいいか」

 

『ヤバッ!』

 

 そんな風にバルバトスの強さを再認識していると、そのバルバトスがレネのベギルペンデに攻撃を仕掛けてきた。今度はレンチメイスによる攻撃では無く、腕に装備された腕部ビーム砲による攻撃だ。何とか避けるレネだが、あと少し遅かったら頭を撃ち抜かれていただろう。

 

(今は、シャディクの作戦に集中しないと…!)

 

 例の作戦を開始するには、バルバトスを誘導しないといけない。その為にも、ここでやられる訳にはいかないのだ。なのでしっかりと決闘に集中する。

 

『レネちゃんを守れぇぇぇ!!』

 

『撃て!撃てぇ!!』

 

『ここでくたばれーー!!』

 

 残ったハイングラ3機が、バルバトスに攻撃を続行する。しかし、バルバトスはそれをいとも簡単に避けていく。やはり、スレッタのエアリアルの攻撃に比べたら何段も厄介さが落ちるからだ。これなら、スラスターのガスが続く限り避けられる。

 そして三日月は攻撃を避けながら、近くにいるハイングラに近づく。

 

「これで3人目」

 

 ハイングラに接近した三日月は、横から薙ぎ払うような形で、ハイングラの腰部分をレンチメイスで攻撃。これで3人目の撃破となる。

 筈だった。

 

『舐めんなぁ!!』

 

「あ」

 

 なんと攻撃を食らったハイングラは、タイミングを合わせてレンチメイスを掴んだのだ。これでは、レンチメイスが使えない。こんな真似が出来る辺り、流石パイロット科の生徒と言えるだろう。

 

『これでその武器は使えないだろ!これなら…!』

 

 これでかなりバルバトスは不利になったと思ったが、別にそんな事はなかった。

 何故ならバルバトスは、直ぐにレンチメイスから手を離し、背中に装備していたツインメイスを手に取ったからだ。そしてそのまま、レンチメイスを掴んだハイングラの頭を叩き潰す。

 

『ごっふぅ!?』

 

 頭を潰されたハイングラは、まるで糸が切れた人形のように後ろに倒れる。

 

「今度こそ3人目」

 

 ハイングラの頭を潰したのを確認した三日月は、バルバトスを反転させ、残ったレネ達の方へ向かう。

 

『ちくしょうーーー!!』

 

『あ!バカ!前に出るなって!!』

 

 するとハイングラに乗っている生徒の1人が、バルバトスに向かって前進した。立て続けに仲間がやられたせいで、若干の恐慌状態となってしまったのだ。そのせいで、正常な判断能力を少し失っている。

 故に、バルバトスには接近戦を挑むなという注意が頭からすっぽ抜けているのだ。

 

『が!?』

 

 その結果、バルバトスが投げたツインメイスが見事に頭部に命中。そしてバルバトスは、そのままハイングラの後ろに回り込み、もう1本のツインメイスを下から上に切り上げるような形で攻撃。

 結果、ハイングラの頭部はぐちゃぐちゃになり、ブレードアンテナも破壊された。

 

「4人目」

 

 投げたツインメイスを再び手に取りながら、三日月は呟く。僅か数分で、4人を撃破した三日月。

 おまけのその戦い方は、全て近づいて殴るというまさに蛮族とも言うべき戦法。決闘を見ていた大勢の観客達は、その姿に息を飲む。

 

(これ、誘導できるかなぁ…)

 

 そしてレネは、シャディクが考えた作戦が実行できるかどうか、わからなくなっていた。残った仲間は1人だけ。これでは例のポイントまで誘導できるか、もうわからない。

他の仲間は作戦準備中だったり、スレッタやそのほかの地球寮の相手をしているので、援軍は期待できない。

 

(いや!出来る出来ないじゃない!やるしかないんだから!!)

 

 しかし、ここで諦める訳にはいかない。何としてでも、三日月のバルバトスを誘導しなくては。

 

『っ!?』

 

「あ、外した」

 

 そんな風に思っていると、腕部ビーム砲をレネに向けて撃ってくるバルバトス。あと少し反応が遅かったら、今のでやられていたかもしれない。

 

『くそ!!』

 

 レネはバルバトスに引き撃ちしながら後退する。それと同じように、残ったハイングラに乗っているグラスレーの生徒も後退。

 

「逃がすかよ」

 

 両手にツインメイスを持ったバルバトスが、レネを追いかける。

 

(さっさとあいつら倒して、スレッタ達の援護しないと)

 

 現在、地球寮は既に3人の脱落者を出している。幸いリーダー機であるスレッタのエアリアルは無事なのだが、他の3人が心配だ。これ以上こちらの数を減らされる訳にもいかないので、さっさと倒さないといけない。

 何よりレネ程の腕利きを、このままのさばらせている訳にはいかない。だからこそ、今ここで倒す。

 

(よし!食いついた!)

 

 そして逃げているレネは、三日月が自分に食いついたのを確認して、密かにほくそ笑む。もし三日月がこのままスレッタ達の元に向かっていたら、作戦が全部パーだ。

 だが三日月は食いついてくれた。これなら作戦が進められる。

 

「ん?」

 

 レネ達を追いかけていると、周りには凹凸の激しい廃墟となっているビル群と、少し開けている広場のような場所が見える。それと同時に、周囲の瓦礫の隅からグラスレーのランドマン・ロディが出てきた。その手には、何やら小型のバズーカの様な物が見える。

 

(実弾ってダメなんじゃなかったっけ?)

 

 三日月の思っている通り、決闘には実弾兵器の使用は認められていない。しかし見る限り、ランドマン・ロディは実弾兵器の片手で持てる小型バズーカを装備している。もしかすると、小型のビームバズーカのようなものかもしれないが。

 

(ま、いっか)

 

 だがそんな事は些細な問題だ。だって倒してしまえばいいだけなのだから。

 

「よっと!」

 

 そして三日月はバルバトスのスラスターを吹かして、レネのベギルペンデに思いっきり接近する。その間、レネもハイングラもビームライフルを撃ってくるが、その全てを避けている。

 

『化け物…!』

 

 ついレネが小言を言う。だってこんな真似、シャディクにだって出来るか怪しいし。そしていよいよ、バルバトスのツインメイスがレネのベギルペンデの頭部を捉えた時、

 

『うおおおおお!!』

 

 最後に残っていたハイングラが、スラスターを吹かして三日月のバルバトスに体当たりをしてきた。大好きなレネを守りたいが故の行動である。

 

「邪魔」

 

『あが!?』

 

 だが、それをバルバトスは逆手に持ったツインメイスで無慈悲に頭を潰す。

 

「これで5人目」

 

 これでレネの護衛をしていたハイングラは全滅させられた。残るはレネのベギルペンデと、いつの間にか合流しているランドマン・ロディだけだ。

 

(わかってはいたけど、やっぱりこの子強い…!!)

 

 そしてレネは、三日月とバルバトスの強さに驚愕し、奥歯を食いしばる。たった1人で5人を撃破した三日月とバルバトス。強い。あまりにも強い。間違いなく、1対1では勝てないだろう。

 

(でもおかげで、ここまで誘導出来た!)

 

 しかし、この決闘はタイマンなどでは無い。そしてバルバトスは今、予定していたポイントに誘導されている。これでようやく、シャディクの考えた対バルバトス用の作戦が開始できる。

 

「もう逃げないでよ。追うの面倒くさいから」

 

 聞きようによっては口説き文句にも聞こえる台詞。当然、三日月にそんな気は全くない。

 

『別に逃げて無いし。むしろそっちが追ってきたんじゃない。何?私のお尻追いかけるのが好きだったり?』

 

「いや、別にあんたの尻とか興味無いけど」

 

『~~~~!!??』

 

 三日月の心無い言葉に、レネは頬をピクピクさせる。レネは見た目通り、美容にはかなり気をつかっているのだ。

 肌や髪の毛は勿論、体の体脂肪率やプロポーションに至るまで、あらゆるところに気を使っている。おかげで多くの男子から見れば、かなり情緒を抑えられない体付きとなっている。

 だというのに三日月は、全然興味が無いとか言い出す。女として、これ程プライドを傷つけられる事はそうは無いだろう。

 

(絶対この決闘に勝って顎で使ってやる…!)

 

 決闘に勝ったら、三日月には自分専用の執事の真似事でもさせよう。あと絶対に、自分に興味を持たせてやるとも。

 

「じゃ、ばいばい」

 

 そんなレネの事等知った事かと言わんばかりに、三日月はベギルペンデに一気に近づき、ツインメイスを振り下ろす。

 しかし、寸前のところでベギルペンデは空に逃げた。

 

『今!!』

 

 そしてその瞬間、レネは待っていましたと言わんばかりに、近くにいた2機のランドマン・ロディに命令を出す。

 レネの命令を聞いたランドマン・ロディ達は、左手に持っていた小型バズーカのような武器を空に向けて引き金を引く。すると中から何かが発射され、それは空中で弾けたのだ。

 

「ん?」

 

 何事かと思った三日月が、上を見ていると、空から何かが降ってくる。

 

「水?」

 

 それは、水。と言っても、以前のグエルとジュリエッタとの決闘の時みたいに、決闘場の上にあるスプリンクラーから出ている訳では無い。

 どうやら、あの小型バズーカから発射された弾丸が空中で爆発し、その中身が水として降っているようだ。これが何かはわからないが、特に決闘に支障はなさそうである。そう思った三日月は、再びレネを倒すべく動こうとした。

 

 その時だ。

 

「!?」

 

 突然、バルバトスのいた場所に大量のビーム攻撃が、雨あられと降り注いだのは。

 

「何だこれ…!?」

 

 何とか避けている三日月だが、いかんせん数が多すぎる。このままでは、被弾してしまう。一体この攻撃は何かを思い、周囲を見渡してみた。

 すると、ビルの上にモビルスーツを発見。それはチュチュも使っているデミトレーナーの改造機だが、その手にはとても物騒な武器が握られていた。

 

 それは銃というには、あまりに大きすぎた。大きく、分厚く、長く、そして大雑把だった。それはまさに、ビームガトリング砲だった。

 

 そんな物騒なビームガトリング砲を装備し、大型のシールドで機体の大半を隠しているデミトレーナーが、正面に2機、そして背後の1機の合計3機。その全てが、バルバトスを狙っている。

 

「ちっ!!」

 

 流石の三日月とバルバトスとはいえ、これを全て避けるのは不可能だ。エアリアルのエスカッシャンとは数が違いすぎる。

 しかし、仮に当たったとしてもあまり問題は無い。なんせバルバトスにはナノラミネートアーマーがある。これがある限り、ビーム攻撃はほぼ意味が無い。

 

 なので多少当たっても問題は無い、筈だったのだ。

 

「な!?」

 

 バルバトスの肩にビームガトリングの弾が掠った時、三日月は直ぐに違和感に気が付いた。なんとバルバトスの肩に、明らかにビーム攻撃を受けた際に起こる衝撃が伝わったのだ。

 

「なんで…さっきの水か…!!」

 

 三日月は直ぐに、バルバトスにビーム攻撃が通った事に当たりを付ける。それは、先程ランドマン・ロディが撃った水。正確には、水の入った弾丸だ。

 

 バルバトスにビーム攻撃が効かない理由は、エイハブリアクターが発する特殊粒子が、バルバトスに塗っている特殊塗料に反応し、外部からの衝撃に適した複層分子配列を機体全体に形成する事にある。これのおかげでバルバトスには、機体全体にクッションのような薄い装甲が纏わりついている状態となるのだ。

 更にこの装甲は、表面が鏡面構造となっているので、ビーム攻撃に対してとても強い防御性を発揮する事が出来る。だから、バルバトスにはビーム兵器がほぼ効かない。

 

 しかしこれは、言ってしまえばこの特殊塗料ありきなのだ。

 

 この特殊塗料さえ無くしてしまえば、理屈の上ではバルバトスにもビーム攻撃が通る事になる。

 恐らくだが、先程ランドマン・ロディが撃った弾丸。あれにはバルバトスに塗っている特殊塗料を、幾分か落とす役割でもあったのだろう。以前、スレッタがモビルスーツの操縦試験中にやられた遅効性塗料が、特殊な薬品を使わないと落ちなかったように。

 だとすれば、先程の弾丸は水では無く、何かしらの薬品だと考えるのが普通だ。流石に一気に全ての塗料を落とす事は出来なくても、今のように塗料そのものの効果を落とす事は出来る。

 おかげで今のバルバトスは、何時ものビームに対する絶対防御ともいうべきアドバンテージが無い状態になっているのだ。

 

 そこに雨あられと降って来る大量のビーム攻撃。1発1発の威力は強く無くとも、いかんせん数が多い。もしこれを避けきれずにどんどん被弾してしまえば、バルバトスとて無事では済まない。

 

「これは、ちょっとマズイかな…」

 

 三日月は学園に来てから初めて、少しだけ冷や汗をかくのだった。

 

 

 

 

 

「三日月…!くぅ…!?」

 

『よそ見とは、随分余裕があるじゃないか、水星ちゃん』

 

 三日月がピンチに陥っているのを見たスレッタは、直ぐにでも助けにいきたい気持ちに駆られる。

 しかし、それをシャディクが許す筈が無い。そもそもシャディクはパイロット科の生徒な上、グエル、エランに次いで学園3番目とさえ言われるほどの実力者だ。そんなシャディクが、スレッタに反撃する隙を与える筈が無い。

 

(あの武器、思っていたより厄介…!!)

 

 何より、ミカエリスの右腕に装備されているビームブレイサー。これが想像より厄介なのだ。ビームブレイサーが出来る攻撃は、ビーム攻撃とビームサーベル攻撃の2種類。

 しかしこれは、有線ワイヤーでミカエリスの腕から離れ、いつの間にかエアリアルの背後に回って攻撃をしてきたりする。

 当然、バルバトスのようなデタラメな動きではないのだが、シャディクはビームブレイサーを自在に扱い、エアリアルの急所を的確に狙ってくる。エスカッシャンでしっかり防御できていなければ、スレッタは既に負けていたかもしれない。

 

『イリーシャ。決してあのスウォーム兵器は使わせるな。攻撃を続けろ』

 

『うん、わかってるよ』

 

 エアリアルがガンビットによる攻撃を行おうとするたびに、シャディクとイリーシャはとてもタイミングの合った攻撃をして、エアリアルを防御に徹底させる。

 シャディクは、出来ればここでメイジーと合わせて3人でエアリアルと仕留めたかったが、そのメイジーは別の相手をしていてこっちに来れないので今は無理だ。

 ならば、今は2人でやるしかない。それにその内サビーナも合流してくるだろう。それまでは、ここで徹底的に足止めだ。

 

『水星ちゃん…いや、スレッタ・マーキュリー。降伏するんだ。ミオリネの暴走に君の大事な家族を巻き込んで、壊してもいいのか?』

 

「そ、そんな言い方…!」

 

 シャディクは1度攻撃の手を止めて、スレッタに降伏を呼びかける。彼なりの、最後の慈悲だ。

 

「他の皆もまだ戦っているのに、そんな事する訳ないじゃないですか!!私は絶対に降伏なんてしません!!」

 

 だがそれで降伏するなんて真似を、スレッタがする訳も無い。まだ三日月に昭弘にチュチュ、そしてヴィダールも戦っているのだ。ここでリーダー機であるスレッタが降伏するなんて、絶対にありえない。

 

「それにミオリネさんが暴走って、それもどうなんですか!?シャディクさんって、ミオリネさんの事好きなんじゃないんですか!?私はミオリネさんが好きだから、ミオリネさんを信じます!!」

 

 でも何より、シャディクがミオリネが暴走していると言っているのがちょっと許せない。

 確かに、ミオリネは物事を勝手に決め気味ではある。目玉商品であるGUND医療だって、まだ成功するかなんてわからない。

 しかし株式会社ガンダムを設立する際、地球寮の皆に頭を下げているのだ。もし本当にミオリネが暴走しているのなら、絶対にそんな事はしないだろう。

 そもそもの話、好きな人を信用しないなんておかしい。だからスレッタは花婿として、株式会社ガンダムの従業員として、そして1人のパイロットとして、ミオリネを信用する。

 

「ぐっ!?」

 

『そうか。ならば残念だけど、エアリアルはここで破壊させてもらう』

 

『ごめんなさい』

 

 しかし反撃しようにも、シャディクはそれを許さない。イリーシャと共に、再び攻撃を開始する。

 

(今は兎に角、耐えるしかない!でも、このまま向こうに増援がきたら…!)

 

 ガンビットを攻撃に回せれば、最低でも1機は落とせる筈なのに、一向に隙が無くそれが出来ない。それに今はまだ2人だが、もしこのままシャディクに増援がきてしまえば、反撃がより難しくなる。

 

(ごめんね皆…!もうちょっとだけ耐えて…!)

 

 スレッタは心の中で皆に謝罪しながら、もう暫く防御に徹するのだった。

 

 

 

 

 

 スレッタとエアリアルが、シャディク達の攻撃を防いでいる場所から比較的近いところで、

 

「そこぉっ!!」

 

『おっと』

 

 ヴィダールは、メイジーの乗るベギルペンデと1対1の勝負を繰り広げていた。オレンジ色のレギンレイズプロトはシールドに収納していたビームサーベルで攻撃を繰り返す。

 しかし、それをメイジーはひらりとかわす。かわされた直後に右手のビームライフルを先読みして撃っても、それすらかわす。

 

「ならば!!」

 

 今度は一気に反転し、レギンレイズプロトによる蹴りを入れてみる。

 

『あっぶないなぁ』

 

 だが、これもシールドで防がれた。すると今度は、逆にメイジーがレギンレイズプロトの頭目掛けてビームを発射。

 

「っ!!」

 

 しかしヴィダール、これを回避。そしてメイジーから距離を取る。レギンレイズプロトが、高機動設計されていたモビルスーツだからできた芸当だ。多分これが元のレギンレイズだったら、ギリギリ避けられずに当たっていただろう。

 

(ちっ!流石に成績上位組なだけはありますね…!)

 

 並みのパイロット科の生徒であればとっくにやられているであろうに、未だに倒せない。普段から明るく気さくで、誰に対しても笑顔を絶やさないメイジーだが、やはりその腕前は本物なのだ。

 

(ですが、ここで彼女を倒しておかないと一気に戦況は不利になる!何としてでも私が仕留めなければ…!)

 

 現在、地球寮は劣勢だ。というかはっきり言って、勝ち目がかなり低い。ただでさえ戦力差があるのに、パイロットの質もグラスレーの方が上。それだけでも酷い状態なのに、肝心のバルバトスとエアリアルが厄介な足止めを食らってまともに行動が出来ずにいる。

 もしそこのどちらかに、腕利きのパイロットであるメイジーが参戦すれば、下手をしなくともやられてしまう可能性が高い。だからこそ、ここで彼女を倒しておかないといけないのだ。

 

『んー…』

 

 そんな当のメイジーは、まるで何かを考えているようなそぶりで攻撃をかわしている。稀に反撃はする、基本は回避だ。

 

『ねぇ?ちょっといい?』

 

「は?」

 

 そして突然、ヴィダールに話しかけてきたのだ。

 

『えっと貴方ってさ、ジュ「違います。私は通りすがりの仮面の生徒、ヴィダールです」あー、そっか。じゃあそれでいいや』

 

 恐らく、先程の攻撃でレギンレイズプロトに乗っているのが誰か見抜いたのだろう。しかし、ここで正体がバレると本当に面倒なので、ヴィダールは正体を偽る。メイジーも勘でその辺を察したのか、それ以上は追及しなかった。

 だが、メイジーが聞きたい事はそれでは無い。

 

『じゃあヴィダールちゃん。ちょっと聞きたいんだけど、

 

 

私ってさ、貴方に何かした?』

 

「…どうして今そんな事を?」

 

『いやだってさ、なんかさっきから攻撃に私怨が乗っているっていうか、明らかに私に対する嫌な感情があるっていうか、なんかそんなものを感じるんだよねぇ。だから』

 

 メイジーが聞きたい事とは、ヴィダールの攻撃にあった。確かにヴィダールは、ここでメイジーを足止め、ないし失格にする為に闘っている。

 しかし、その攻撃がどうも変なのだ。何と言うか、明らかにメイジー個人に対する私怨のようなものが籠っている。もしかすると、自分は彼女に何か恨みを買うような事をしているのかもしれない。

 別にそれはいいのだが、メイジー自身、ヴィダールことジュリエッタに何かをした記憶が無い。もし何かしていたのならば、せめてその辺をハッキリさせておかないとなんか気持ち悪い。だから態々聞いたのである。知っている方が、後腐れとか無くなるし。

 

「いえ、貴方に直接何かされた事は1度もありません。ですが、確かに私は貴方の事が好きではありませんよ」

 

 だがどうも、ヴィダール自身はメイジーに何かされた訳では無いらしい。しかしやはりと言うべきか、メイジーの事は嫌っているとの事。

 

『それは何で?』

 

 謎が深まる。ならばどうしてあんな攻撃をするというのか。そしてヴィダールは答える。

 

 

 

「だって貴方、ずっと笑顔で気持ち悪いじゃないですか」

 

 

 

 メイジーが気持ち悪いと。

 

『……』

 

 それを聞いた瞬間、メイジーは笑顔のまま固まる。

 

「貴方って、何時どんな時でも笑顔ですよね?近くで喧嘩があった時も、ファンの子が怪我をした時も、グラスレーの生徒が決闘で負けた時も、そして、地球でアーシアンのテロリストがテロを起こしたっていうニュースを見ていた時も。それがとっても気持ち悪いんですよ」

 

 ヴィダールの言う通り、メイジーは何時でも笑顔である。誰にでも明るく気さくで、優しく笑顔。それが崩れた事など、1度も無い。少なくとも、ヴィダールが見ていた時は。

 

『それはね、笑顔ならどんな子でも安心できるからって思って』

 

「嘘でしょそれ」

 

『……』

 

 確かにメイジーの言う通り、どんな状況でも誰か1人が笑顔であれば、暗い雰囲気だって消す事が出来るだろう。

 しかし、ヴィダールはそれはメイジーの嘘だと見抜いている。

 

 だっていくらなんでも、メイジーの笑顔が崩れなさすぎるのだ。

 

 その違和感に気がついたのは、まだグエルと決闘をする少し前の頃。偶然、学食のテレビで地球で起こったアーシアンによるテロ事件の報道を見ていた時だ。

 その時テレビからは、最低でも100人以上の死傷者が出たという報道がされていた。実際、崩れた建物や怪我人が運ばれている様子も映し出されていたので、多くの死傷者が出たのだろう。

 それをヴィダールは、あまり良い気持ちでは見れなかった。彼女自身、別にアーシアンとかスペーシアンとか関係なしに死傷者が出ているのは気分がよくないし、何より食事中に見るようなニュースでは無かったからだ。自分の周りにいた多くの生徒も同じような気持ちなのか、どこか嫌そうな顔をしていたし。

 中には、自分と同じ寮に所属している寮長のように『卑劣なアーシアン許すまじ!』といった感じに、怒りを露にしている生徒もいた。

 そしてヴィダールは、その時に偶然見たのである。

 

 何故かそのニュースを見て、いつものように笑っているメイジーを。

 

 普通、あの手のニュースを見たら、多少は顔の表情に変化がみられる筈。なのにメイジーは、それが全く無い。本当にいつも見ている笑顔のまま、ニュースを見ていた。

 

 まるで本当に、笑顔がつけられた仮面を被っているみたいで。

 

 気になったヴィダールは、その後もちょくちょく確認してみたが、やはりメイジーは何時も笑顔。どんな時でも笑顔。

 そしてヴィダールは、何時しかそんな四六時中笑顔のメイジーを気味悪がっていったのだ。

 

「その、いかなる時も笑顔の仮面を被っている姿が、とっても気持ち悪くて、好きになれないんです。まるで、それ以外の顔を知らない人形みたいで

 

 そう、まるで人形だ。どんな時も最初に作られたまま、表情が変わらない人形だ。そんなの、普通じゃない。

 

『そっかー…私が人形かー…』

 

 ヴィダールから一通り話を聞いたメイジーは、

 

「っ!?」

 

 ベギルペンデに装備されているビームサーベルを抜き、それで攻撃をしてきた。何とかビームサーベルで防御する事が間に合ったが、気が抜けない。

 

(早いっ…!)

 

 メイジーは明らかに、先程までとは違う。攻撃の振りが早いだけでなく、その攻撃には明らかに怒りが乗っていた。

 

『あはは、これは久しぶりに、ちょーーっと怒っちゃったかなー』

 

「そんな感情、出せたんですね貴方」

 

 ヴィダールは少々選択肢を間違えたと思いつつも、攻撃を再開する。

 

 

 

「あの仮面!メイジーちゃんの笑顔が気持ち悪いだと!?」

 

「許せねぇ!一体誰だ!!」

 

「えっと学生番号によると…地球寮のマルタン・アップルトンって奴だな」

 

「地球寮のマルタンか!覚えたぞ!!」

 

「絶対に何時かメイジーちゃんの笑顔が気持ち悪いとか言った事を償わせてやる!!」

 

 尚、そのやり取りを見ていたメイジーのファンクラブの男子生徒達は、マルタンの学生証を借りて参戦しているヴィダールに敵意を向けていた。実際はマルタン本人では無いのだが、そんな事を彼らが知る由も無い。そしていずれ、メイジーを気味悪がった事のケジメをつけさせてやると団結するのだった。

 

「ところでさ、あの変な仮面はなに?」

 

「さぁ?中二病でも患ってるんじゃね?」

 

 ついでに変な仮面を被っているせいで『マルタンは中二病』とかいう割と不名誉な噂も流れた。

 

 因みにその事実を知ったマルタンは、後日胃痛で少し寝込んだ。

 

 

 

 

 

「くっそ!厄介だな!!」

 

 三日月は、ビームガトリングの攻撃を何とか避けていたが、それでも全弾避けるなんて事は不可能だった。

 先程の特殊な水でナノラミネートアーマーの特殊塗料を落とされた結果、既に何発も攻撃を受けているバルバトス。その装甲には、着弾痕のようなものが増えている。

 このままではマズイ。なのでさっさと目の前のビームガトリングを装備したデミトレーナーの改造機を倒さないといけないのだが、それが中々上手くいかない。

 

 先ず、デミトレーナーが陣取っている場所がビルの上という高所なのだ。殴って倒すにはそこにたどり着かないといけないが、そのままスラスターを吹かして空に上がろうものなら、あっと言う間にハチの巣だ。

 ならばと腕に装備された腕部ビーム砲で狙ってみるが、それも機体の大半を隠している大型のシールドのせいで、上手く狙えない。仮にその大型シールドを破壊するまで攻撃しようにも、どうもシールドには耐ビームコーティングを施しているらしく、更に距離もあるため、腕部ビーム砲で貫く事も出来ない。

 

 次にビームガトリングを装備したデミトレーナーが、全部で3機いる事だ。この3機は、それぞれバルバトスを高所から囲むようにしている。

 おかげで今のバルバトスは、常に3か所から同時に狙われている状態。普通ならばこの時点でとっくにやられているのに、未だに失格になっていないのは、やはり三日月のパイロットとしての素質と、ガンダムフレームであるバルバトスの性能、そして背中の阿頼耶識システムのおかげだろう。

 

(でもこのままじゃじり貧だ…!早く何か考えないと…!)

 

 しかし、何時までもこのままではいられない。現にスラスターのガスは、度重なる回避のせいで減り続けている。これではいずれ、回避すらできなくなる。早い所、何か手を打たないといけない。

 この状況を打開できるであろう数少ない手段が、相手のビームガトリングの弾切れ、もしくは熱で砲身が焼けて使い物にならなくなった時を狙う事。いくらなんでもあれだけバカスカ撃っていれば、直ぐにエネルギー切れを起こすだろう。

 更にガトリングというのは、砲身が高速で回転する性質上、どうしても部品が壊れやすくなっているというのをここの授業で習った。特にその砲身はどうしても熱が籠るので、あまり長時間使用する事は出来ないとも。

 今撃ちまくっているデミトレーナーだって、いずれはそういった瞬間が来るはずだ。その瞬間を狙って相手を1機でも倒せば、この包囲網に穴が開く。

 

 だが、シャディクはそれすら既に対応済みだった。

 

「あいつらっ…!ガトリングのエネルギーと砲身を交換してるのか…!!」

 

 1機のデミトレーナーのビームガトリング攻撃が止まったかと思えば、その後ろにいたコンテナを背負ったデミトレーナーが、なんとコンテナの中から新しいエネルギーパックと、新品のビームガトリングの砲身を出したのだ。そしてそれを、慣れた手つきで交換し始める。

 しかし今なら、少しだけだが弾幕が薄い。この期にその補給中のデミトレーナーを破壊しようとしたが、

 

『そんな事させる訳ないでしょ!!』

 

「くっ!!」

 

 それをレネと、2機のランドマン・ロディが邪魔をする。補給中のデミトレーナーに近づこうにも、レネのベギルペンデとランドマン・ロディをどうしかしないといけない。でも今度はそれを片付けようにも、高所にいるデミトレーナーが邪魔をしてくる。ナノラミネートアーマーさえ正常に動いてくれたら、ここまで苦戦はしなかった筈だ。

 

(マズイ…このままだと…)

 

 こんな場所で足止めを食らっていると、他の皆の援護に行けない。ヴィダールはまだ大丈夫だろうが、それも何時まで持つかわからない。

 なんせ相手は集団戦では無敗のグラスレー。いくら彼女が強くても、スレッタ程じゃない。おまけにシャディクは、バルバトス対策だけでこれだけの策を用意している。もしかすると、エアリアルにも何か作戦を考えているかもしれない。三日月の勘が、そう囁くのだ。

 それに昭弘やチュチュも心配だ。なんせ2人が今相手にしているのは、グラスレーでもトップのパイロットであるサビーナ。出来れば直ぐにでも助けに行きたい。だって2人は、もう大切な仲間なのだから。

 

『おい三日月!』

 

「昭弘?」

 

 その時、サビーナと戦っている昭弘から通信が入る。

 

『こいつは俺らがなんとかする!だからこっちの事は気にするな!お前はスレッタの事だけ考えとけ!!』

 

『昭弘の言う通りだ!あーしらの事は無視して、お前はそこから抜け出してスレッタを助け出す事だけ考えとけ!!そもそもスレッタのエアリアルがやられたらお終いだしな!!』

 

 昭弘に続いて、チュチュも三日月に通信を送る。そして自分達はほっといて、スレッタの援護に向かって欲しいと言って来た。

 現在2人は、サビーナ相手にまだ持ちこたえている。昭弘がビームライフルやバトルアックスでベギルペンデに攻撃し、それをチュチュがビームライフルで援護するといった動きだ。おまけにかなり息がピッタリなので、サビーナも攻めきれずにいる。

 2人がここまでサビーナと良い勝負をしているのは、スレッタや三日月とシミュレーションをしてきたおかげである。もしその経験が無ければ、とっくにやられていた事だろう。

 

「……」

 

 その2人の提案を、三日月は少しだけ考える。2人の言う通り、リーダー機のエアリアルに乗っているスレッタがやられたらこの決闘は負けだ。なので助けに行く優先順位は、スレッタだろう。確かに2人は心配だが、2人が大丈夫だというのなら、信用しよう。

 

「昭弘、チュチュ」

 

 そして三日月は、通信で2人に言う。

 

「そいつ、任せていい?」

 

 サビーナの相手を任せると。

 

『…っああ!任せろ!!』

 

『おうよ!こいつはぜってーあーしらが倒す!!』

 

 三日月の通信を聞いた2人は、やる気を出す。最初こそ最低に近い出会いをしていた3人。

 しかし、それももう昔。今では一緒に筋トレや柔軟、モビルスーツのシミュレーションだって一緒にやっている仲だ。

 そして三日月の返答を聞いた2人はやる気を出す。なんせ三日月から信用された。自分達で言い出した事だが、その信用には答えないといけない。

 

(って言ったけど、俺もここをどうにかしないとスレッタの助けにいけないんだよなぁ…)

 

 それはそれとして、三日月はこの包囲網をどうやって突破するべきか三日月は考える。

 

 

 

「随分と、自信があるみたいだな」

 

 三日月にああいった昭弘とチュチュの目の前に、ベギルペンデに乗ったサビーナが現れる。その機体には、未だに傷が無い。いくら昭弘達が必死になって攻撃をしていても、元のレベルが違うので、そう簡単に攻撃が当たらないのだ。

 

「今までも私に碌に攻撃を当てられていないが、何か秘策でもあるのか?」

 

 そしてサビーナは聞いてみる。今までも自分の攻撃を避けたり、上手く防御してきた2人だが、その程度だ。そもそもこちらに攻撃が届いていない。

 確かに昭弘のグレイズは接近戦には目を見張るものはあるし、チュチュのデミトレーナーもかなり射撃が正確ではある。しかしそれだけだ。

 現にサビーナは、今も大して機体が損傷していないのが良い証拠だろう。そんな自分を、ここで何とかすると言う。何か奥の手でもあるのかと思うのが普通だ。

 

『ああ?ねぇよそんなもん!!』

 

『あーしらにあんのは根性だけだ!!』

 

「……」

 

 しかし、まさかの根性論にサビーナは少し面食らう。確かに根性論は大事ではあるが、それで全てが解決出来る訳無い。

 

(所詮はその程度か。さっさと終わらせて、シャディクと合流しよう)

 

 何かあるかと思い少しだけ身構えていたが、これならその必要も無い。さっさと2人を倒して、シャディクと合流し、例の兵器でエアリアルを無力化してしまおう。

 

『行けぇ昭弘!!!』

 

『うおぉぉぉぉぉぉ!!!!』

 

 だがその時、昭弘のグレイズが思いっきり突っ込んできた。

 

「その程度で!!」

 

 しかし、ただ馬鹿正直に突っ込んできても、特に問題は無い。普通に攻撃を避けて、そのままビームライフルかビームサーベルでグレイズの頭を破壊してしまえばいい。後ろからチュチュのデミトレーナーが援護射撃をしてはいるが、これもシールドで防げば

いいだろう。

 

『逃がすかぁ!!』

 

「なっ!?」

 

 しかし昭弘は、更にスラスターを吹かしてベギルペンデに体当たりをかます。普通、更にスラスターを吹かせばその分体にGがかかるのであまりやらないが、今の昭弘はそれを根性で我慢している。そして体当たりをされたその衝撃で、ベギルペンデは少しバランスを崩す。

 

『おら食らいやがれぇぇ!!』

 

 そこのチュチュが、すかさずビームライフルで攻撃。

 

「ちっ!」

 

 サビーナは直ぐにベギルペンデのスラスターを吹かして回避。そしてサビーナも反撃するべく、チュチュにビームライフルを向ける。

 

『やらせるかぁぁぁ!!』

 

 しかし、そこ昭弘のグレイズが再び突っ込んでくる。おかげでビームライフルは明後日の方向に向いてしまい、チュチュから大きく狙いが外れてしまう。

 

(こいつら、急に思いきりがっ…!!)

 

 先程までとは違う。まるで自分の命を顧みない戦い方。正直、こういうのが1番厄介である。

 

『あいつが任せるって言ったんだ!だったら、やらねぇとダメだろぉぉ!!』

 

 昭弘は大声で叫びながら、ベギルペンデにバトルアックスで攻撃を続ける。先程三日月は『任せる』と言った。普段ならそんな事を口にしない三日月がだ。ならば、それに応えないと男が廃る。

 

(成程、決して弱くはないな)

 

 そんな2人を、サビーナは認識を変える。今まではそれほど強くないという感じだったが、今では下手をすると自分を倒しそうな勢いだ。元から手を抜いて戦う気など無かったが、今からはもっと気を引き締めて闘わないといけない。

 

(すまないシャディク。合流するのは、少し遅れそうだ)

 

 そしてサビーナは、心の中でシャディクに謝罪し、目の前の2人を明確な敵として再認識して戦う。

 

 

 

 地球寮 モニタールーム

 

「あああああ!!マズイってこれは!!スレッタも三日月もまだ包囲されてるし、昭弘とチュチュもこのままじゃ…!」

 

「おいマルタン、落ち着けって」

 

 寮長のマルタンは、両手で頭を抱えて軽くパニックになっていた。最大戦力であるスレッタと三日月が上手く戦えず、期待の援軍のヴィダールも今は1対1で決闘中。

 そして昭弘とチュチュは、あのサビーナを相手している。このままでは、2人もやられてしまう。

 

「2人はさっき、何とかするって言ったんだ。それに、あのサビーナ相手にあそこまで戦えている。なら信用しようじゃないか」

 

「そうは言うけどさぁ…!」

 

 アリヤが2人を信用するようにいうが、それでもやはり心配である。

 

「……」

 

「どうかしたの、ミオリネさん?」

 

 そんな中、ミオリネはモニターに映っている決闘の様子を見て、ある事に気が付いていた。

 

「……1機足りない」

 

「え?」

 

「ベギルペンデが1機足りない」

 

 それは、グラスレーのベギルペンデが4機しか見当たらない事だ。この決闘には5機のベギルペンデがいた筈。1機目はスレッタの相手。2機目はヴィダールの相手。3機目は三日月の相手。そして4機目は昭弘とチュチュの相手をしている。やはりどう見ても、1機足りない。

 

「……あ、本当だ。開始時点じゃ5機いたのに…」

 

 ニカもモニターを見てみるが、やはり4機しか見当たらない。

 

「一体どこに…?」

 

 どうも嫌な予感がする。ミオリネは直ぐに決闘に参加している皆にその事を報告しようとした。

 

 その時だ。

 

「は?」

 

 モニターに映っていたバルバトスが、突然決闘場で何かに足を取られたのは。

 

「何だ!?」

 

 ヌーノが驚き、モニターを拡大してよく見る。すると、バルバトスの右足首が土に埋まっているのがわかった。

 

「あれって、まさか落とし穴!?」

 

「うわ、古典的だなぁ」

 

 今度はマルタンが驚き、アリヤが少し感心する。まさかモビルスーツの決闘に、落とし穴を使うという古典的な真似をしてくるなんて思いもしなかったからだ。

 しかし、あの程度の広さ深さなら特に問題は無いだろう。直ぐに足を抜け出せばいいだけだ。

 

 けれど、そう簡単にはいかなかった。

 

「今度は何!?」

 

 なんとビームガトリングを持ったデミトレーナーが、バルバトスの背後にあったビルを狙い、攻撃を開始。そしてその時に発生した瓦礫を、バルバトスに降り注がせたのだ。幸いバルバトスは直ぐに両腕で頭をガードしたので、ブレードアンテナが折れるなんて事は無かった。

 しかしそこまで沢山の瓦礫では無いにせよ、これでほんの数秒はバルバトスの動きが止まってしまう。そんなバルバトスを、今度はレネ達が離れた場所から狙う。そしてバルバトスは、それに左腕の腕部ビーム砲で応戦。

 

「シャディク…!!ここまでする…!?」

 

 いくら決闘のルールがそこまで細かくないとはいえ、これは流石にやりすぎだ。確かにバルバトスは強力なモビルスーツ。普通に正面から戦っても簡単には勝てないだろう。ならばとあらゆる手段を講じて決闘をしているのだろうが、これはやりすぎに思える。

 尤も、ここで決闘委員会に抗議しても碌に相手なんてしてくれないだろうし、三日月を信じてグッと堪えるしかないのだが。

 

(え…?)

 

 しかしその時、ミオリネは偶然見つけた。バルバトスから、かなり離れたところにあるビルに空いた穴。そこに、1機のベギルペンデがいるのを。

 そしてそのベギルペンデは、砲身の長いビームライフルを持っていた。

 

(まさか…!!)

 

 僅かだが、瓦礫で動けなくなったバルバトス。それを狙っているであろうベギルペンデ。そしてバルバトスは、それにまだ気が付いていない。瞬間、ミオリネはシャディクが何をしようとしていたのか理解する。

 

「みかっ…!!」

 

 直ぐに三日月に通信をするが、少しだけ遅かった。

 

 

 

 

 

 決闘場の中にあるビルの中。そこにグラスレー寮のエナオは、愛機のベギルペンデと共にいた。

 

 長距離用に改造された、ビームライフルを装備した状態で。

 

 しかしエナオは、そのビームライフルでバルバトスはまだ狙わない。もう少し、バルバトスが疲弊してから撃たないと効果が薄いと考えているからだ。彼女は決闘が始まってから、ずっとここにいたのだ。全ては、バルバトスを倒す為に。

 

 シャディクが考えた作戦、それはバルバトスのブレードアンテナを狙撃する事である。

 

 先ずは、バルバトスをエアリアルから離す。その後にバルバトスの機体表面を覆っている特殊塗料を、特殊な薬品弾を使って落とす。これだけで、バルバトスはかなりの弱体化がされるだろう。

 そしてそこにデミトレーナーがビームガトリングでバルバトスを攻撃をするが、これでバルバトスを倒そうとは思っていない。実はこれ、バルバトスのスラスターのガスを減らすのが目的なのだ。

 いくらバルバトスが驚異的な機動力をしていても、スラスターのガスが無ければそれも叶わない。あれだけの弾幕を避けようとすれば、どうあってもスラスターのガスは減り続ける。そうなれば、バルバトスの機動力は必ず下がる。おまけにそれだけ動けば、パイロットだって疲弊する。

 

 しかし、それだけではまだ不安が残る。なんせ相手は、伝説のガンダムフレーム。仕留めるのなら、もっと策を考えなければ。

 そこでシャディクは、バルバトスをより動けなくするために、決闘場内に落とし穴を作りバルバトスの動きを少しでも止めて、その後ビルを破壊して瓦礫でバルバトスを足止めするという作戦を考えた。そうやって動けなくなった時を狙って、エナオが狙撃をするのだ。

 

(そろそろかな)

 

 エナオはバルバトスが落とし穴の近くにいっているのを確認すると、コックピット内にある狙撃用のスコープを覗き、ビームライフルの照準をバルバトスの頭に合わせる。

 現在バルバトスはレネ達のおかげもあってか、動きが少し鈍い。ほぼ間違いなく、スラスターのガスが減っている事だろう。

 

(距離、問題無し。障害物、問題無し。目標の動き、やや激しいけど何とかなる)

 

 情報を整理しながら、エナオは狙撃準備に入る。

 

(シャディクも重大な役割任せるなぁ…まぁ、しっかりやるけど)

 

 今回エナオが狙撃手に選ばれた理由は、彼女がシャディクの部下で最も気配を消す事に長けているからである。

 狙撃手というのは、自分の居場所がばれてしまえば意味が無い。なので狙撃手は、自然と一体になれるくらいのカモフラージュ技術と、相手に悟られないように自分の気配を消す事が求められる。

 だからエナオは、決闘が開始されてから誰とも戦わず、そしてここで気配を殺してじっとしていたのだ。

 

(きた)

 

 遂にバルバトスが、落とし穴のポイントまでやってきた。今の三日月は、度重なるビームガトリングの弾幕のせいで、やや注意力が散漫になっている筈だ。これなら引っかかる。

 

(よし)

 

 案の定、バルバトスは落とし穴に足を取られてしまう。その後、作戦通りにデミトレーナーがビームガトリングでビルを撃ち、バルバトスの頭上から瓦礫を降らす。そしてレネが追加攻撃を行い、バルバトスを足止めさせる。

 

(……)

 

 エナオは静かに、操縦桿の発射トリガーに指をかける。ゆっくりとバルバトスの頭に照準を合わせ、息を全て吐く。照準の僅かな微調整もし、あとはもう撃つだけだ。

 

(じゃあね、水星の悪魔くん)

 

 ミオリネが叫んだのと同時に、エナオはバルバトスに向かって、ビームライフルによる狙撃を行った。

 

 

 

 

 




 シャディクの対バルバトス作戦のおさらい
 用意した特殊な薬品弾で、ナノラミネートアーマーの特殊塗料をおとす→そこにビームガトリングで弾幕を張る→それで倒せたらいいけど多分無理なので、兎に角撃ちまくってバルバトスのスラスターのガスを減らす+パイロットを疲弊させる→落とし穴でバルバトスを動きを止め、瓦礫で更に動きを止める→そこを決闘開始時点からずっとスタンばっていたエナオが狙撃。こんな感じです。
 結構都合の良い展開ですけど、こうでもしないと、終始バルバトス無双にしかならないのよ。なので今回は、少しグラスレー有利くらいにしています。

 そして現在の対戦カードは
 スレッタVSシャディク、イリーシャ
 三日月VSレネ、グラスレーモブズ
 ヴィダールVSメイジー
 昭弘、チュチュVSサビーナ
 となっております。次回これがどうなるかは、まだ未定。いや、大筋は決まっているけどね。

 そしてメイジーちゃんファンの方々、ごめんなさい。でもあの子、本編だとマジでずっと笑顔でちょっと怖かったんですよ。なのでその辺を勝手に色々考えて、こんな扱いにしてしまいました。多分過去に相当な事があったと思う。

 どこか変なところ、矛盾しているところ、設定が間違えているところがあれば仰ってください。修正したします。

 次回、バルバトスの運命は如何に。
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