悪魔と魔女の物語   作:ゾキラファス

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 4回くらい書き直して、ようやく書けました。今回結構独自解釈を含んでいますので、読む際はご注意を。

 そして早くガンダムブレイカー4をやりたい。

 追記・1部を少し編集しました。


VSシャディク 5

 

 

 

 

 第4戦術試験区域 空調管理室

 

「ふははは!我ながら完璧な作戦だったではないか!!奴らめ、碌な抵抗をする事も無く撤退していったわ!!所詮卑劣なグラスレーよ!!私の正義の威光の前には成すすべもなかったと言う訳だな!!」

 

 そこには、全身ジャージ姿に、カボチャの被り物を脱いで空調システムを弄っているイオクが高笑いをしていた。彼は今、グラスレーの卑劣な手段を許す事が出来なかったので、こうして空調管理室をグラスレーから乗っ取り返したのだ。顔バレしないようしっかり変装し、態々モビルクラフトに乗って。

 そして襲われた方のグラスレー寮の生徒達は、そのあまりの異様な姿と異常な状況に恐れおののき、全員蜘蛛の子を散らす勢いで逃走している。

 情けないと思うかもしれないが、カボチャの被り物を被った不審者がいきなりモビルクラフトに乗って現れて、おまけに『我こそは正義の仮面!マフティーである!!』とか叫び出したら誰でも逃げる。多分ドミニコス隊でも逃げる。だって明らかにヤバイ奴だし。むしろ逃げない奴いたら教えて欲しい。

 

「それにしてもヤマジン。別に手伝ってくれなくてもよかったのだぞ?」

 

 そんなイオクは、直ぐ横にいるヤマジンに声をかける。実はイオクとは別に、ヤマジンもこの空調管理室の奪還作業に付き合っていたのだ。

 

「いや流石にこんな事、寮長1人にさせられないって。色々心配だし」

 

 いくらイオクがそこそこのハイスペックでも、彼はどこかでポカをやらかしたりする。もしここでこの作戦が失敗して、他の寮にマフティーの正体がバレてしまえば、絶対に面倒な事になる。なのでヤマジンは着いてきたのだ。

 因みに彼女は、赤くてとても大きなサングラスをかけて変装をしている。

 

「よし!これで空調は正常に戻った!もう煙なんかで視界が塞がれる事は無い!」

 

 満足そうな顔をしながら、イオクは端末で空調を操作して、これ以上グラスレーが妨害出来ない様にした。これで少なくとも、煙などによる視界妨害が行われる事は無いだろう。

 

「しかし、ジュリエッタがやられたのは予想外だったな。やはり、機体の調整が完璧ではなかったせいか?」

 

「学園に到着して、半日ちょっとで直ぐ決闘だったしね。おまけにまだ未完成のモビルスーツだったし。むしろあそこまで戦えた事を褒めるべきですって」

 

 だが残念ながら、煙が晴れるより前にヴィダール事ジュリエッタは、メイジーのベギルペンデに敗北してしまった。やはり調整が完璧では無かった未完成のモビルスーツでは、限界があったようだ。

 

「でも大丈夫だ。後は私の友が必ず勝つしな!」

 

 しかしイオクは、それで地球寮が負けるとは思っていない。なんせ地球寮には、イオクの友である三日月がいる。彼がいる限り、地球寮が決闘に負ける事はないだろうと信じているからだ。

 

(向こうは友達って認めてないだろうけど…いやこれ口にしたら面倒くさい事になるだろうから言わないでおこ…)

 

 尚ヤマジンの思った通り、三日月はイオクを友達とは認めていない。

 

 そして2人は、そのまま空調管理室で決闘の様子を見るのだった。

 

 

 

 

 

「スレッタ、エアリアルはどう?」

 

『それが、急に動かなくなったの…皆の声も聞こえないし…』

 

 三日月はバルバトスの後ろにいるスレッタとエアリアルを心配し、声をかける。そしてどうもエアリアルは現在、エスカッシャンが使えなくなっているらしい。これではエアリアルの強みが半減どころではない。

 

(多分、あのシールドから出てる変な光のせいだろうな)

 

 三日月は周りにいるモビルスーツを見ると、直ぐに原因を見つけた。シャディクが乗るミカエリスと、イリーシャとメイジーが乗るベギルペンデ。その右手とシールドが光っている。

 これは勘だが、あの光はエアリアルを動けなくする見えない電磁波が出ているのだろうと、三日月は当たりを付ける。恐らくバルバトスもこの電磁波をモロに食らっている筈だが、全く異常は見当たらない。多分、GUND-ARMであるエアリアルのみに効果がある兵器なのだろう。

 

『ごめんシャディク。抜かれた。あいつ、壁をビームでぶち抜いてきて…』

 

 そしてシャディクにも、レネ達が合流をしてきた。レネ曰く、三日月はビーム砲で壁をブチ破ってエアリアルの元に辿りついたらしい。ふとシャディクが視線を上に動かしてみると、そこには壁に穴の開いたビルが見える。確かにこの方法なら、ここまでくる事もできるだろう。

 しかし、まさかそんな方法で来るとは思っていなかった。だって普通はそんなやり方、誰もしない。少なくとも、アスティカシアの生徒はしない。

 

 尚、三日月のこの突破方法は、水星でスレッタが要救助者を助ける時によく使っていたやり方だ。宇宙空間で行う救助活動は、1分1秒を争う時間との勝負。なので、如何に早く要救助者を空気のある安全な基地まで運べるかが重要だ。

 そこでスレッタは、水星地表の山をビームで撃ち抜いて、基地までのショートカットを無理矢理作り出すという荒っぽい手段を行っていた。そのおかげもあってか、スレッタは今まで1度も要救助者を助けれなかった事が無い。今回、三日月はこれを真似たのだ。

 

 因みにこの方法、助けられている水星の要救助者達からは『怖すぎて逆に寿命が縮む』と言われ不評だったりする。

 

『いや、大丈夫だよレネ。そっちも他の皆と一緒に彼らを包囲してくれ』

 

『了解』

 

 そんな事を知らないシャディクは、直ぐにレネ達を配置につかせる。そしてレネは、バルバトスとエアリアルを囲むようにベギルペンデやランドマン・ロディ、そして改造されたデミトレーナーが配置につく。再び四方八方を囲まれ、バルバトスとエアリアルはかなりマズイ状況となった。

 

(あいつさえ倒せば、それで勝ちだ)

 

 しかし、三日月は諦めない。それどころか、ツインメイスを両手でしっかりと持ち、シャディクの乗るミカエリスを見る。この大規模な集団戦は、相手チームのリーダー機のブレードアンテナを折れば勝ちだ。

 そしてグラスレー側のリーダー機は、シャディクのミカエリス。このまま一気にミカエリスに突っ込んで、そのままブレードアンテナを折れば、それだけでこの決闘は地球寮の勝利となる。

 

(スラスターのガスは残り3割と少し…ナノラミネートアーマーの塗料は殆ど落ちている…ビーム砲も、あと数発くらいしか撃てない…それに何より、エアリアルが動けない…)

 

 ハッキリ言って、状況はかなり最悪だ。いくらこのままミカエリスを倒せばいいとしても、そんな事はシャディクも理解している筈。簡単に隙を見せる訳無いだろう。それに自分が突っ込んだその瞬間に、エアリアルのブレードアンテナを狙撃でもしてしまえば、それで向こうの勝利だ。

そんな事はシャディクも理解している筈。簡単に隙を見せる訳無いだろう。それに自分が突っ込んだその瞬間に、エアリアルのブレードアンテナを狙撃でもしてしまえば、それで向こうの勝利だ。

 

『三日月くん、1度だけ聞こう。大人しく投降しないか?』

 

「……」

 

 その時、シャディクから降伏を促す通信が三日月に入ってきた。

 

『正直、今の君達の状況は最悪だ。周りは敵だらけ。仲間はいない。リーダー機であるエアリアルはまともに動けない。それに君のバルバトスも、万全とは言えない状態だろう?こっちとしても、GUND-ARMとガンダムフレームをこれ以上傷つける事は避けたい。どうかな?』

 

 シャディクとしても、エアリアルとバルバトスを壊したくないのは本当だ。なんせ2機とも、非常に希少なモビルスーツ。呪いの影響を受けないエアリアルと、この世に1機しか存在しないバルバトス。これ以上戦って壊してしまったら、その後の機体調査が上手く進まない可能性がある。

 それにもう、勝負は決したような状況。この状況で逆転勝利できるなんて、まずありえない。なのでこうして、善意で降伏を促しているのだ。

 

 しかし、

 

「する訳ないじゃん」

 

 三日月が、そんなものを受け入れる筈はない。

 

「まだ決闘は終わっていない。ここであんたを倒せば、それでこっちの勝ちだしね」

 

 三日月の言う通り、まだ勝負はついていない。確かに状況は最悪に近いが、それでもまだ負けていないのだ。ならば地球寮の皆の為にも、諦める訳にはいかない。

 

『そうか。残念だよ』

 

 シャディクはそう言っているが、実のところ、ここで三日月が降伏するとは思っていなかった。彼はスレッタの為なら、何でもやる。そしてスレッタの敵には、決して容赦をしない。いつぞやの食堂での事件が良い例だ。そんな彼ならば、ここで降伏するなんて事はないだろう。

 

(そうやって最後まで諦めないところ、ガンダムフレームのパイロットに相応しいね)

 

 そしてシャディクは、同時に三日月をまるで見定めるような事も思っていた。人類を救ったモビルスーツシリーズ、ガンダムフレーム。そのパイロットであれば、諦めるなんて事はしてはいけない。少なくとも、あの英雄アグニカ・カイエルはそうだった。

 

(羨ましいよ。俺にもその力があれば…)

 

 もしもシャディクが、学園に入学して直ぐの頃にガンダムフレームを手にする事が出来ていれば、こんな決闘をする事はなかっただろう。この力があればミオリネを守る事だって容易かったし、次期総裁の地位だって、もっと簡単に手にする事だって出来た筈だ。

 しかし、現実はそうではない。ならばその力、ここで奪わせてもらう。

 

『全機、攻撃開始』

 

 シャディクの命令と共に、エアリアルとバルバトスに一斉攻撃がされた。

 

「くっ!?」

 

 三日月は直ぐにエアリアルと共に後方へ移動し、そこにあったビルをツインメイスでぶっ叩いて瓦礫を作り、その瓦礫を盾変わりにする。これで何とかビーム攻撃を防ぐことが出来た。

 しかし、こんなものは時間稼ぎにしかならない。所詮ただの瓦礫だ。相手の攻撃を受け続けたら、何時かは壊れてしまう。それにもし向こうが後ろに回りこんで攻撃をしてきたら、挟み撃ちに遭いもうどうしようもない。

 

(でも、スレッタをここに置いて行く訳にはいかないし…)

 

 三日月だけならば、このままグラスレーのモビルスーツ部隊に突っ込む事で出来る。しかし今ここには、まともに反撃も防御も出来ないエアリアルがいる。そんな状態のエアリアルをこの場に置いていくなんて真似、出来る訳が無い。

 

『三日月』

 

「ん?」

 

 どうするべきか悩んでいる時、スレッタから通信が入る。

 

『私の事は気にしないで。三日月はこのまま、シャディクさんを狙って』

 

 そして、自分の事を気にせずにシャディク達へ攻撃をするよう言ってきた。

 

「でも…」

 

『大丈夫。今は皆の声が聞こえないけど、何とかするから。だって私とエアリアルは、三日月とバルバトス以外には負けないしね!』

 

 スレッタはそう言うが、強がりにしか聞こえない。しかし、ここでこのままいても勝利する事は出来ない。ならば、まだ十分に動けて闘える事が出来るバルバトスは前に出るべきだろう。それに、スレッタは自分を信用するよう言ってくる。だったら、幼馴染を信用しよう。

 

「わかった。じゃあ、行ってくる」

 

『うん、気を付けてね』

 

 そして三日月は、スレッタとエアリアルをその場に置いて、その場からスラスターを思いっきり吹かして飛び出すのだった。

 

『っ!!イリーシャとメイジー、そしてデミトレーナー部隊はバルバトスを狙え!レネはランドマン・ロディ部隊と一緒にエアリアルを追い込め!!』

 

『コピー!!!』

 

 シャディクは各生徒に命令を出すと、自分はバルバトスから距離を取る。

 

(ちっ!そりゃ逃げるか!)

 

 この決闘、リーダー機のブレードアンテナを破壊された方の負けだ。ならば、こうして距離を取るのは当たり前の戦法だ。だって正面からバルバトスと戦って負けたら、そこで終わりだし。

 

「逃がすかよ」

 

 そして三日月も、そんなシャディクを逃がすつもりは無い。迫りくるデミトレーナーのビームガトリングや、イリーシャとメイジーの攻撃を避けながら、ミカエリスに向かって突撃をする。

 一方でシャディクも、ミカエリスのビームブレイサーで反撃をしてくる。かなり正確にバルバトスのブレードアンテナを狙ってくるので、避けるのに精いっぱいとなり、中々近づけない。

 

(簡単にはいかないか)

 

 このまま突っ込んでも、ナノラミネートアーマーの特殊塗料が殆ど落ちている今の状態では負けかねない。三日月は1度ミカエリスから距離を取るべく後退する。

 その時だ。

 

「な!?」

 

 何と、ミカエリスがバルバトスにもの凄い勢いで突っ込んできたのだ。まさかこっちに突っ込んでくるとは思わずに驚く三日月だが、直ぐに防御態勢を取る。防御態勢を取ったバルバトスの右腕に、ミカエリスのビームブレイサーが掴みかかってくる。そしてそれは、万力のようにバルバトスの腕部ビーム砲を握りつぶそうとした。

 

「っ!」

 

 三日月は直ぐに腕部ビーム砲を腕から破棄。何とかミカエリスの拘束から逃れる事が出来た。しかしこれで、バルバトスは遠距離武器を全て失ってしまった。

 

『流石、判断が早い』

 

 三日月の判断の速さに、シャディクは感心する。そんなシャディクに、三日月は左手のツインメイスで攻撃を仕掛ける。だがシャディクは、それをビームブレイサーで防御。

 そして三日月は、透かさず右手のツインメイスで横振りの攻撃をする。するとシャディクは、ビームブレイサーのワイヤーを伸ばしながら後ろに後退。同時にビームブレイサーを上に操作して、バルバトスのブレードアンテナを狙う。

 

「くっ!?」

 

 三日月はそれを寸前で避ける。そして狙いを外したビームブレイサーは、そのままミカエリスの元に戻る。

 

『ふむ…やはりガンダムフレームの機体反応速度は凄まじいな』

 

 普通であれば、今のでやられていた筈。しかし、三日月はそれを避けている。こういった真似が出来るのは、それだけガンダムフレームが凄まじい機体なのだろうと、シャディクは結論づける。

 

「お前、普通に強いな…」

 

『ありがとう、と言っておこうか?』

 

 そして三日月は、シャディクの強さを改めていた。これまでの行いから、てっきりシャディクはあまりモビルスーツの腕前がよろしくないのではと考えていたのだ。だからこそ、正面切ってバルバトスやエアリアルとの戦闘を避けていたのだと。

 しかし実際のシャディクは、こうしてバルバトスと戦っても未だにやられていない程度には強い。流石学籍番号3番の男である。

 

(せめてスラスターのガスが補給できたら…)

 

 スラスターのガスがあまり残っていない今では、何時もの様な戦闘はあまり出来ない。それに、戦う相手はシャディクだけでは無い。

 

「くっ!!」

 

『あ、また外した…』

 

『うっわー。彼よく今の避けれるねー。あ、ビームガトリングはどう?』

 

『装填までもう少しです。終わり次第、制圧射撃を開始します』

 

『了解』

 

 ここには、シャディク以外にも多くのグラスレーの生徒がいる。ナノラミネートアーマーが万全であればあまり問題は無いが、既に特殊塗料の殆どは落ちてしまっている。この状態では、1度でもビームライフルの攻撃を食らってしまえば、致命傷になりかねない。

 それにビームガトリングがエネルギー補給されてしまえば、また弾幕の雨が降る。また、未だに姿の見えないエナオの狙撃が再びあるかもしれない。それに狙われない為にも、動かなければ。

 

(だったら!!)

 

 だから三日月は速攻で決着をつけるべく、ミカエリスに向かって、もうガスの残りなんて気にしない程に一気に全力でスラスターを吹かす。そしてそのまま、ミカエリスに体当たりをしかけたのだ。

 

『シャディク!?』

 

 バルバトスはスラスターをふかしたまま、ミカエリスをまるでアメフトの選手のようにタックルして相手を捕まえているような状態に持ち込んだ。この状態では、下手に撃つとミカエリスにも当たってしまう。これで他の皆は、バルバトスを撃てなくなっただろう。

 

『エナオ!そこからなら狙えるでしょ!?バルバトスの頭を撃って!!』

 

『ダメ!ミカエリスが近すぎてこれじゃ撃てない!!』

 

 実際、高所でバルバトスを狙っていたエナオも、この状態では流石に撃てない。人類の歴史に名前を残したフィンランドの狙撃手ならまだしも、学園でトップクラスのエナオではこの状況でバルバトスの頭だけを正確に撃ち抜く事は無理だ。

 

(これで終わりだ!)

 

 こうなってしまえば、後はミカエリスの頭を潰せばいいだけだ。そして三日月は、バルバトスの右腕に装備されたツインメイスをミカエリスの頭部目掛けて振り下ろす。

 

 だが、

 

『そう来ると思っていたよ』

 

 シャディクはそれを読んでいた。

 

 

 

 

 

「くぅ!?」

 

『ほらほら!もっとしっかり避けないと、あっと言う間にやられちゃうよー!?』

 

 スレッタは、GUNDビットのエスカッシャンが使えなくなったエアリアルで、レネ達の攻撃を何とか避けているが、はっきり言ってかなり状況はマズイ。そもそもエアリアルの切り札であるエスカッシャンが使えないのは、エアリアルの戦闘能力を大幅に下げさせる。単純に防御と攻撃が出来なくなるからだ。

 だが、スレッタが押され気味なのはそれだけじゃない。

 

『つーか!あんただけはぜーったいにあたしがこの手で始末する!!この役は他の誰にも譲らない!!』

 

(なんかこの人、すっごいヤル気に満ちてる…)

 

 やたら、レネのスレッタに対する当たりが強いのだ。今だってエアリアル目掛けてビームライフルを連射している。レネの後ろのいるランドマン・ロディに乗っている生徒も、その光景に少しひいている。

 

「あの、私って何かしましたか?」

 

 いくら何でも変だ。もしかすると、自分が気が付かないうちに何か失礼をやらかしてしまったのかもしれない。だとすればなんか申し訳が無い。なので聞いてみたのだが、

 

『ぜーーーったいに教えてあげない!!』

 

「えー…」

 

 どうやら、レネは教える気はないようだ。だってレネのスレッタに対するこれは、完全な八つ当たりである。そんな事、態々口にする事などしない。それはそれとして、ここでスレッタは倒す。

 

「何があったかわかりませんが、私もここで諦める訳にはいかないんです!ちゃんとこの決闘に勝って、三日月や地球寮の皆の一緒に、ミオリネの会社を手伝うんですから!!それに、三日月を貴方の所有物になんてさせる訳にはいきませんし!!」

 

 しかし、スレッタもこの決闘に負ける事は出来ない。何としてでもこの決闘に勝利して、ミオリネの作った会社の手伝いをする。

 それにこれに負けたら、自分の幼馴染がレネの所有物になってしまう。そんな事、させる訳にはいかない。だから、絶対に勝利する。それが、今のスレッタの1番の願いだ。

 

『そう思っているなら、この状況を切り抜けてみろっての!!』

 

 だがいくらそう思っても、状況は良くならない。何とかレネやランドマン・ロディの攻撃をかわしてはいるが、エスカッシャンが使えない現状では、それも長く続きそうにない。こうなれば自分がやられるより先に、三日月がシャディクを倒してくれる事を信じるしかない。

 

(でも大丈夫!三日月なら、シャディクさんをしっかり倒してくれる!だって三日月は、私とエアリアル以外には負けないんだから!)

 

 でも心配はいらない。だってスレッタは、三日月を信じている。三日月なら、絶対にシャディクを倒してくれる。だから大丈夫だ。今は兎に角、レネにやられないように攻撃をかわしながら動き続けるだけでいい。

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 だがその時、スレッタは信じられない光景を望遠カメラの映像が映ったモニター越しに見てしまい、一瞬だけ動きを止めてしまった。

 

「うあっ!?」

 

『はは!命中!!』

 

 その隙をレネは見逃さず、遂にエアリアルの左腕にビームを命中させる。結果、エアリアルは左腕が損傷してしまった。これでは少なくとも、もうビームサーベルは握れない。

 

(まずいっ…!!)

 

 スレッタは直ぐに頭部バルカンを発射しながら、レネのベギルペンデから距離を取る。レネもバルカンに対する防御態勢を取ったおかげで、何とかブレードアンテナは守る事が出来た。

 しかし、こんな状況で動きを止めてしまうなんて自殺行為に等しい。ミオリネの会社の命運が掛かっているこの決闘で、何て気の抜けた行動なのだろう。だが、それもあの光景を見てしまえば仕方が無い。

 

 

 

 だってスレッタが見た光景は、ミカエリスによってバルバトスの腕が切り落とされた瞬間なのだから。

 

 

 

 

 

「は?」

 

 何が起こったか、三日月はわからなかった。たった今、自分はミカエリスにタックルをしかけて、そして空いていた右手のツインメイスでミカエリスの頭を破壊しようとしていた。

 

「腕が…」

 

 だがその瞬間、バルバトスの右腕が突如切り落とされたのだ。

 

『嘘…』

 

『何で…』

 

 モニター室で決闘の様子を見ていたミオリネやニカ達も、その光景に唖然としている。なんせバルバトスは、非常に頑丈に作られているモビルスーツ。並大抵の攻撃では、碌に傷をつける事さえ出来ない。実際にバルバトスは、学園で行われた決闘では、傷1つ負っていない。なのに、たった今腕が切り落とされている。

 そして今自分の目の前には、左腕に装備されていたビームサーベルを抜いているミカエリス。同時に、右腕のビームブレイサーのビームがバルバトスの頭部を狙っている。

 

「っ!?」

 

 三日月は直ぐに、その攻撃を左腕に持っていたツインメイスで防御。何とかブレードアンテナの破壊を防ぐ事が出来たが、おかげでツインメイスが破壊されてしまう。こうなってはもう使えないと判断した三日月は、直ぐにツインメイスを投げ捨てた。おかげで、バルバトスは丸腰となってしまった。

 

(何で、いや!今はそんな事後でいい!!)

 

 どうしてバルバトスの腕が切り落とされたか知らないが、そんな事は後で考えればいい。今大事なのは、これでバルバトスは戦闘能力が激減したという事だ。なんせ武器を失っている。これでは碌に抵抗できそうにない。

 

(よし、これでバルバトスは、もう今までみたいな攻撃は出来ない)

 

 案の定、シャディクは負傷したバルバトスを見て勝利を確信していた。

 

 実は、ナノラミネートアーマーは非常に強力な防御武装だが、熱に弱いという弱点がある。その弱点があるので、バルバトスの背中にあるスラスターは、ナノラミネートアーマーの消耗が激しい。

 

 そしてビームサーベルは、超高熱の武器である。

 

 いくらどれだけ頑丈に作られた物、例えば宇宙基地の外郭であっても、ビームサーベルをずっと当て続ければ、何れは穴が開く。

 そして今のバルバトスは、ナノラミネートアーマーの特殊塗料がほぼ完全に落とされている状態。普通のビーム攻撃だって、他のモビルスーツと同じように効く。

 更にビームサーベルが開発されたのは、厄祭戦が終わってから200年以上も経ってから。何なら今からほんの70年前に開発されたばかりの兵器。300年前の人類に、ビームを一定の形に保つ事は出来なかった。当時存在しなかった兵器の対策なんて、出来る訳が無い。なんせ概念そのものが無いのだから。

 

 そしてシャディクは、自らを囮にする事でバルバトスに密着するよう仕向けた。その結果、三日月は見事に引っかかってしまい、こうしてバルバトスの右腕を切り落とされたのだ。

 尚頭を狙わなかったのは、三日月が警戒しているから、狙っても防がれるだろうと思ったからである。

 

(関節部分を狙ったおかげもあるだろうけどね)

 

 更に言えばどんなモビルスーツも、関節部分を完璧に防御するなんてできない。そのおかげもあって、シャディクはこの学園でスレッタ以外では初めてバルバトスに傷をつける事が出来たのだ。

 

『エナオ、今だ』

 

『コピー』

 

 そしてすかさず、シャディクはエナオに攻撃を命令。今のバルバトスは、少なからず混乱している。この期を逃す訳にはいかない。エナオもそれを聞いて、バルカンの頭部を狙う。今ならいける。これでもうチェックメイトだ。

 

 だが、

 

『なっ!?』

 

 エナオが攻撃をしようとした瞬間、ベギルペンデの狙撃用ビームライフルが攻撃を受けて、そのまま破壊されてしまった。このままでは誘爆してしまうかもしれなかったので、エナオは直ぐにビームライフルを投げ捨てる。

 

『はっはー!ざまぁみやがれクソスペーシアン!!』

 

 ベギルペンデのビームライフルを撃ち抜いたのは、チュチュのデミトレーナー改だった。彼女は昭弘と共にサビーナを倒してから、ようやくここまでやってこれたのだ。

 そしてそこで、エナオのベギルペンデがバルバトスを狙っているのを偶然見つけ、即座に頭部より的の大きいビームライフルを攻撃したのである。これでエナオは、もう狙撃は出来ない。

 

『三日月!受け取れぇ!!』

 

 そしてチュチュは、バルバトス目掛けて腰に装備していたソードメイスを投げる。バルバトスはそれを受け取る事に成功。これでもう丸腰じゃない。

 

『援護する!だからその間にそいつを…!って危ねぇ!?』

 

『邪魔だよ』

 

『ごめんなさい。でも決闘なんで』

 

 チュチュはそのままバルバトスを援護しようとしたが、そんなチュチュにメイジーとイリーシャが襲いかかる。これでは援護が出来そうにない。

 

『寮長!援護します!!』

 

『頼む』

 

 そしてバルバトスには、ビームガトリングを装備した2機のデミトレーナー改が攻撃を開始。三日月は何とか避けようとするが、この弾幕の嵐では完全に避ける事など出来ない。

 

(くそ!どうすればいい!?)

 

 これはマズイ。本当にマズイ。バルバトスは右腕を損傷、スラスターのガスは残り2割。そして現在も、ビーム攻撃を受けている。

 更にミカエリスが、バルバトスにビームブレイサーによる遠隔の近接攻撃をしてくる。この防御に手一杯で、とても反撃が出来そうにない。

 

「ぐうっ!?」

 

 その時、バルバトスの左肩がビームで撃たれ、肩の赤いアーマーが破壊されてしまう。

 

『お待たせ、シャディク』

 

『ごめんね。ちょっと手こずっちゃった』

 

 悪い事は重なるものだ。チュチュの相手をしていたイリーシャとメイジーが、あっと言う間にチュチュを片付けて、シャディクに合流をしてきたのだ。今の射撃は、この2人によるものだろう。

 

『悪ぃ三日月…もう、あーしは戦えねぇ…』

 

 モニターを見ると、チュチュのデミトレーナーは脚部と頭部と武器を破壊されており、脱落判定を受けている。これで地球寮のモビルスーツは、エアリアルとバルバトスの2機だけとなってしまった。最早敗北まで、秒読みの段階だ。

 

「ううん、大丈夫。後は任せて」

 

『ほんとすまねぇ…』

 

 だが、まだ負けてはいない。状況はひたすらに最悪だが、まだ負けてはいない。

 

(やっぱり、もう1度あいつを狙うしか…)

 

 今のバルバトスに、全てを相手するだけの余力はない。こうなれば、再びミカエリスのみを狙って攻撃をするしかない。そして再びミカエリスに突っ込むべく、三日月はバルバトスの体勢を整える。

 

『この状況でまだ諦めないなんて、往生際が悪いね』

 

 そんなバルバトスに、シャディクを初めとしたグラスレーのモビルスーツは武器を向ける。三日月はその武器を全て見て、どう避けるかを考える。

 何としてでもこの攻撃を避けて、ミカエリスを倒さなければ。今のバルバトスではほぼ不可能な事だが、それでも勝つ為にはやらなければならない。

 

『君を倒したら、次はスレッタ・マーキュリーの番だ。あの子にはミオリネを守れないって事を、負ける事で理解させてあげないといけないからね』

 

「……あ?」

 

『安心してくれ。怖がらせるような真似はしないから』

 

 だがシャディクのその言葉を聞いた瞬間、三日月は頭に血が上るのを感じた。

 

(俺が負けたら、スレッタが攻撃される…)

 

 このままここで自分がやられてしまえば、次はスレッタが標的になる。恐らくだが、シャディクは今自分にしてるみたいに、嬲り殺すような攻撃をするだろう。それは避けたい。スレッタにそんな思いをさせたくない。

 

(ふざけるなよ。そもそも、さっきから何でお前そんなに上から目線なんだよ…)

 

 しかしそれより、シャディクの発言がムカツク。スレッタの事をよく知らないくせに、何でそこまで偉そうに言えるのか。そもそもそんな事を言うのなら、どうしてお前はホルダーにならなかったのだと言いたい。

 だがそんな事より、このまま自分が負けたら、直ぐにスレッタが次の標的にされる。そうならない様に何とかしないといけないが、この状況を打破するには、ソードメイス1本だけではどうにもならない。何か逆転の出来る切り札が必要だ。しかし、現実にそんな切り札なんて無い。

 

(……あるじゃん)

 

 いや、ある。実はこの状況を打開できる切り札が、バルバトスにはひとつだけ存在する。だがあれは、もし使えばどんな事が起こるかわからないと言われ、プロスペラからも使用を禁じられているのだ。

 しかし、もう他に方法が無い。使ってしまえばどんな事が起こるか全くわからないが、この決闘に勝つにはもう使うしかない。

 

(でもまぁ、いっか)

 

 それに、三日月は決めているのだ。スレッタを守れるならば、どんな事でもすると。だってあの日、三日月は自分の全てをスレッタにあげたのだから。スレッタの為ならば、この命だって惜しくない。

 

(おい、バルバトス…いいからよこせ、お前の力を…)

 

 そして三日月は覚悟を決めて、シャディクがビーム攻撃をしてきたと同時に、遂にその切り札を切るのだった。

 

 

 

 

 

「ぐぅ!?」

 

 チュチュがイリーシャとメイジーにやられる少し前、スレッタは絶体絶命の危機に瀕していた。レネは正確な射撃で、エアリアルを撃ってくる。直ぐ後ろにいる、ランドマン・ロディのパイロットも同じだ。流石グラスレーでも指折りのパイロットを選んでいるだけはある。

 

『これ以上あんたとは遊んでいられない!シャディクが来る前に終わらせてあげる!!』

 

 レネもいい加減決着をつけるべく、更に攻撃を続ける。

 

(ごめんね、エアリアル。怒っているよね…?私、何時も頼ってばかりだから…)

 

 レネの攻撃をかわしながら、スレッタはエアリアルに謝っていた。思えば小さい頃から、スレッタは何時もエアリアルに頼ってばかり。泣く時もエアリアルのコックピットだったし、水星で救助活動をしていた時もエアリアルと皆のおかげで沢山の人を助けられた。

 そしてこの学園に来てホルダーになれたのも、エアリアルのおかげだ。こんな風に頼ってばかりの自分では、確かにエアリアルもへそを曲げてしまうだろう。

 

「でもね、やってみたいんだ。私達の為に、ミオリネさんが作ってくれた会社を手伝いたい。リストに無いし、私に何が出来るかわからないけど、やってみたいんだ」

 

 廃棄されそうになったエアリアルを救い、ミオリネは嫌いな筈の父親に頭を下げて会社まで作ってくれた。そのミオリネの為に、何かしたい。

 

 

 

「よかった、いたんだ」

 

 

 

 そしてエアリアルは、そのスレッタの想いに応えてくれた。

 

 

 

「え?」

 

 目の前で起こった突然光景に、レネは言葉を失う。今までその機能を停止していた筈のエスカッシャンが、突然制御を取り戻し、自分達を囲むように青い空間を形成したのだ。

 

「アンチドートが…!」

 

 そして同時に、ベギルペンデのアンチドートがその制御を失う。何が起こったのかわからない。だがこれはマズイと、レネは本能で察した。

 

「この!壊れかけのくせにぃぃーー!!」

 

 恐らく、この謎の現象はエアリアルが原因だ。ならば、エアリアルを破壊すればいい。そう思ったレネはビームサーベルを抜いて、エアリアルに切りかかる。

 

「なっ!?」

 

 だがエアリアルはそれを避けて、ビルの壁にまるで重力を無視しているように立つ。

 

『一緒に?いいの?うん、大丈夫。私達でミオリネさん、助けるよ!』

 

 そして誰に向かって喋っているのかわからないが、そのまま勢いよくレネのベギルペンデにビームサーベルを抜いて切りかかってきた。

 

「速っ!?」

 

 今までと明らかに動きが違う。その動きに咄嗟に反応する事が出来ずに、レネのベギルペンデは頭部を切られてしまった。更にスレッタは、エスカッシャンでベギルペンデをまるで解体でもするかのように、達磨状にした。これでもう、レネは脱落だ。

 

「うっそ…」

 

 何をされたかわからず、レネはやや放心状態だ。わかったのは、今自分が負けたと言う事だけ。

 

『お前ぇぇぇぇ!』

 

『撃て!撃てぇぇぇぇ!」

 

 そしてその光景を見ていたランドマン・ロディのパイロット達は、エアリアルを攻撃。しかし、

 

『邪魔、です!!』

 

『なっ!?』

 

『嘘だろ!?』

 

 攻撃が防御された後、一瞬でエスカッシャンの飽和攻撃を受けてしまい、ベギルペンデと同じように達磨にされてしまう。これでランドマン・ロディも脱落だ。

 

「くそ…」

 

 負けてしまったレネは、コックピット内でモニターを軽く叩く。この手でスレッタとエアリアルは倒したかった。戦況だって、自分有利に進んでいた筈。

 しかし、最後はまさかの逆転負け。それも見た事も無い兵器でだ。こんな展開、まるでコミックだ。こんなの、そう簡単に認めたくない。

 

『あの!』

 

「……何?」

 

 そしてスレッタは、周りに戦えるグラスレーのモビルスーツがいないのを確認すると、今しがた破壊したベギルペンデに乗っているレネに声をかける。

 

『えっとですね、三日月と仲良くなりたいんだったら、特別な事なんてせず、普通にすればいいと思いますよ?』

 

「は?」

 

 突然の話に、レネは意味がわからないといった顔をする。

 

『例えば普通にあいさつをするとか、ご飯を一緒にするとか、勉強を見てあげるとか。そうすれば、三日月も邪険に扱う事はしない筈です。なので決闘が終わったら、そういった事をしてみてください!それじゃ!!』

 

 そう言うと、スレッタはその場から飛び去って行った。実はこれ、スレッタなりのアドバイスなのだ。よくはわかっていないが、どうもレネは三日月が気になる様子。

 しかし、中々三日月とは仲良くなれていない。そこでレネに少しだけアドバイスを送る事にしたのだ。三日月にも、地球寮以外の友達やガールフレンドを作れる良い機会みたいだし。

 

(それ殆どあんたのせいで断られてるんだけどなぁ…つーかあんたみたいな芋女にアドバイス送られるほど落ちちゃいないっての…)

 

 尚、スレッタが今言ったアドバイスは、既に全部実行済みである。そして全部、三日月がスレッタを優先するせいで断られている。

 更にレネは、スレッタより遥かに恋愛経験のある強者だ。今更そんな普通のアドバイスなんて必要ない。釈迦に説法、孔子に悟道とはこの事だろう。どうせなら、三日月の好物とか聞きたかった。

 

(まぁでも、何もかも終わったら、またご飯にでも誘ってみよ)

 

 それはそれとして、決闘が終わったらもう1度ご飯に誘ってみようと考える。

 

(っ!?)

 

 その時、レネは急に寒気を感じた。

 

(何…?今の…)

 

 レネは両肩を両手で抱きしめながら、瓦礫の向こう側を見る。そこは現在、バルバトスが包囲され、エアリアルが向かっている場所だ。

 

(本当に、何なの…?)

 

 瓦礫の山の向こうで、いったい何が起こっているのか。その答えは、今聞こえた何かの衝撃音なのかもしれない。

 

 

 

 スレッタは、急いでバルバトスの元へと向かっていた。

 

(三日月!まだ大丈夫だよね!?)

 

 自分を狙っていた敵はいなくなった。しかし、まだ三日月が絶賛包囲されている。今すぐエアリアルで助けにいかないといけない。なので急いでいる。

 

(チュチュさんもやられてるし、残っているのは私と三日月だけ!でも、今なら勝てる!皆がいる今なら勝てる!!)

 

 数の上では圧倒的に劣勢だが、今のエアリアルは先程とは違う。皆の声もしっかり聞こえるし、エスカッシャンも自由に使える。これならば、バルバトスを守りながら戦う事も出来る。

 

(この決闘に勝って、ミオリネさんの会社を手伝うんだから!!)

 

 スレッタは必ず勝つという強い想いを胸に、三日月の元へ急ぐ。

 

 しかし助けに行こうとしている道中で、スレッタはある事に気が付いた。

 

「え…?どうしたの皆?」

 

 突然、エアリアルが怯えだしたのだ。エアリアルだけじゃない。皆も一様に怯えている。まるで何か、恐ろしい物を見てしまったかのように。

 

「三日月?」

 

 何故か胸騒ぎがする。スレッタは、瓦礫の向こう側にいるであろう三日月のところへと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

「な…」

 

 バルバトスに攻撃をしたシャディクは、ついそんな間抜けな声を出してしまう。たった今、彼らはバルバトスを包囲しながら、四方八方から飽和攻撃をした。

 ナノラミネートアーマーが万全であれば防ぐこともできただろうが、既にバルバトスのナノラミネートアーマーの特殊塗料は落ちている。そうなった状態では、この飽和攻撃は防げまい。

 それにバルバトスは、右腕を切り落とされているし、スラスターのガスも残り僅かだ。これならば、避ける事だって簡単には出来まい。

 だからこそ、シャディクはここでバルバトスを倒せたと確信していた。しかし、その気持ちは直ぐに裏切られる。

 

 何と、バルバトスの動きが突然変貌したのだ。

 

 それまでとは比べられない程速くなり、シャディク達が行った飽和攻撃を全部避けきったのである。

 

「何だ…?その動きは…?」

 

 よもや今まで、本当の力を隠していたとでもいうのか。いくら何でも、会社の運命がかかっているこの決闘でそれはありえないだろう。もしそうだとしたら、舐めているにも程がある。ビーム攻撃による土埃が舞った後、それが晴れてバルバトスが姿を見せる。

 そしてシャディクは、バルバトスの顔を見てしまう。

 

「っ!?」

 

その瞬間、鳥肌が立つ。

 

(今のは…?)

 

 モビルスーツの顔は、改造や破壊でもされない限りそのままだ。なんせモビルスーツは兵器。いくら人型の兵器とはいえ、人間のような表情の変化なんてある訳が無い。仮にそんな機能をつけたら、コストも馬鹿にならないし、何より戦場で意味がないからだ。

 

 だが今見たバルバトスの顔は、嗤っているように見えたのだ。まるで、本物の悪魔が嗤っているように。

 

(ありえない…!気のせいだ…!!)

 

 そんな訳無い。何かの見間違いか、気のせいだ。事実、もう1度よく見ると、バルバトスの顔は全く変わっていない。決闘前と変わらない顔のまま。やはり何かの見間違いだ。シャディクは自分にそう言い聞かせる。だが何故か額には汗が流れ、鳥肌が止まらない。どういう訳か、寒気もする。

 

『全機!もう1度一斉攻撃だ!!』

 

『コピー!!』

 

 何かわからないが、あれはマズイ。ここで必ず倒さないとマズイ。だからシャディクは、再び飽和攻撃を開始した。

 そしてその攻撃は、バルバトスに一気に降りかかる。これで仕留めきれる。そのはずだ。なのにシャディクの心には、ぬぐい切れない不安が芽生えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コックピット内に居る三日月の背中と機体を繋ぐケーブルが、異様な音を立てている。それはまるで、三日月とバルバトスを繋げているような音だ。

 

「まだだ…」

 

 それだけでも異常なのに、更に異常な光景があった。

 

 それは、三日月の顔。彼は今、右目と右耳、そして鼻から大量の血を流していた。その顔は、あまりにも痛々しい。

 

『三日月!?』

 

『三日月くん!?』

 

『三日月!?大丈夫か!?どうしたんだ!?』

 

『おい三日月!?お前どうしたんだそれ!?』

 

『ち、血がぁ!!いっぱい血がぁ!!?』

 

 その様子を見ていた地球寮のモニター室にいたミオリネ達は、一様に声を荒げる。

 

「もっと、もっとだ…」

 

 だが、当の三日月はまるで気にしてない。それどころか、もっとバルバトスとの繋がりを強くしようとしている。全ては、この決闘に勝つために。

 

 

 

「もっとよこせ!!バルバトス!!」

 

 

 

 そして三日月の願いに、バルバトスは応えたのだ。

 

 

 

 

 




 流石のガンダムフレームでも、ビームサーベルは防げないんじゃない?と思ったので、ミカエリスのビームサーベルの攻撃を効くようにしました。解釈違いだったらごめんなさい。
 それ以外に、どこか矛盾があったりしたら教えてください。修正しますので。

 そして遂にリミッター解除したバルバトス。果たして、この後の三日月の運命は?アンケート設置しているので、よければお答えください。


 次回、第8の悪魔、覚醒。

三日月は代償を

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