悪魔と魔女の物語   作:ゾキラファス

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 ようやく書けました。待たせてごめんなさい。

 そういえば、水星の魔女が放送されてからもう2年ですってね。
 早っや…もうそんなに経つの?時間が経つのは早いですねぇ。

 あと本編に全然関係ないけど、オーバーロードの聖王国編見てきました。
 聖棍棒、しっかり描いてて凄かったよ…。


VSシャディク 6

 

 

 

 

 

 地球寮 モニター室

 

「三日月!!」

 

 地球寮のモニター室で決闘の様子を見ていたミオリネは大声を出して叫ぶ。なんせ三日月が、突然目や鼻から血を流しだしたのだ。これまでも決闘で怪我をして血を流す生徒はいたが、ここまでじゃない。精々、ちょっと鼻血が出るくらいだ。何が起こったかわからないが、明らかな異常事態である。

 

「決闘委員会!今すぐ決闘を中止して!!そっちもモニターで見えているでしょうけど緊急事態よ!!」

 

 ミオリネは直ぐに決闘委員会に連絡。安全を優先しているアスティカシア学園の決闘で、パイロットが血まみれになっているのだ。流石にこれでは続行できるとはいえない。なので即決闘を中止させようとする。

 

『し、しかし…』

 

「しかしとか言ってる場合ラウダ!?あんたがスレッタや三日月の事を嫌っているのは知ってるけど、今はそんな場合じゃないでしょう!?もし三日月が手遅れにでもなったらあんた責任取れるの!?」

 

 決闘の立会人であるラウダに怒るミオリネ。なんせちょっとした怪我とかじゃない。首から上が血まみれなのだ。鼻血だけならまだしも、目から血をあれだけ流すのは絶対におかしい。

 今すぐ決闘を中止して、三日月に適切な治療をさせなければ取り返しのつかない事になってしまう。

 

『わ、分かった…!直ちに決闘を『ダメだ』…っ!?』

 

 しかしラウダが決闘を中止させようとした時、別の人物が通信に割り込んで決闘の中止を却下した。

 

「おい、この声って…」

 

「デリング総裁!?」

 

 声の人物は、ミオリネを父親であるデリング。まさかの人物の声により、地球寮の面々は驚きを隠せない。

 

『決闘は続行だ。中止は認めん。これは、総裁命令である』

 

「なっ!?」

 

 そしてデリングは、そのまま決闘を続けさせる命令を出す。

 

「ふっざけんな!!あんた一体何言って!?

 

『ミオリネ』

 

 ミオリネがデリングに食って掛かろうとしたが、デリングはそれを言わせない。

 

『お前は会社を作った時に、ガンダムの呪いを背負うと言ったな?』

 

 以前のインキュベーションパーティで、デリングはミオリネに『ガンダムの呪いと悪魔の力は、思っているより重い。故に逃げるな』と言っている。それにミオリネは逃げないと決めたからこそ、株式会社ガンダムの設立が可能となった。

 

『だからこそ、この決闘を途中で中止にする事は許さん』

 

 確かにミオリネは、責任から逃げるつもりなんて無い。しかし、ここまでの事態は予想なんてしていなかった。そもそもガンダムフレームの悪魔の力とは何なのか。未だに碌な解析も出来ていないのに、責任も何も無い筈だ。

 

 だが扱っている以上、そんな事は関係ない。知らなかったではすまされないのだ。

 

 故に、決闘の中止は出来ない。例え何があろうとも。

 

『しっかりとその目で見ておけ。ガンダムフレームの、悪魔の力を』

 

 ミオリネに、しっかりと見届けさせる為に。

 

 

 

 

「凄いな…全部避けれた」

 

 2度目のシャディク達の飽和攻撃を全て避けきった三日月は、我ながら感心していた。普通であれば避ける事なんて不可能だった攻撃。しかし今、三日月はその全てを避けた。かすり傷ひとつ無い。

 

「っ…頭、いったいなぁ…」

 

 だがその直後に、頭痛を起こしてもいた。同時に目や鼻、そして耳から血が噴き出る。

 

「でもまぁ、これくらいなら耐えられる」

 

 しかし、耐え切れない程じゃない。これくらいなら我慢しながら戦える。そう思える辺り、やはり三日月は色々頑丈なのかもしれない。

 

「あぁもう、これ邪魔だ」

 

 三日月はそう言うと、ヘルメットのバイザーを上に上げる。バイザーが血で汚れていたのと、血がどんどんヘルメット内に溜まっていっていたからだ。本当ならヘルメットそのものを脱ぎたいのだが、この後の事を考えると脱ぎ捨てるのは色々危ないので、バイザーを上げるだけにした。

 

『ちょっとあんた大丈夫なの!?』

 

『三日月くん!?痛くないの!?』

 

 しかし顔中血まみれの三日月を見た地球寮の面々は、軽いパニック状態になっていた。

 

「大丈夫。全然痛くないから」

 

『いやそれ痛覚が死んでいるだけじゃねーのかお前!?』

 

 三日月は大丈夫と言うが、それでも地球寮の皆は心配そうである。

 

「本当に大丈夫だから心配しないで」

 

 三日月はそう言うと、1度自分の体を確かめる。腕も足も動くし、両目もしっかり見えている。そして、全身の感覚が全て鋭くなったのを感じる。今なら、さっきより速く動けそうだ。

 

(これがリミッター解除状態か…)

 

 そして三日月は、プロスペラから『決してしてはいけない』と言われていたバルバトスのリミッター解除について思い出す。

 

 ―――――

 

「リミッター?」

 

「ええ。バルバトスにはリミッターをかけておくわ」

 

 それは数か月前、三日月がアスティカシア学園に向かう少し前の事。水星でバルバトスの最終調整中に、プロスペラからリミッターの事を聞いていた。

 

「何で?リミッターって足枷みたいなやつでしょ?無い方がよくない?」

 

 この話を聞いた時、三日月はあまり良い顔をしなかった。なんせリミッターなんてかけてしまえば、バルバトスの力を完全には発揮できない。それではいざという時、スレッタを守れないかもしれない。それは困る。できればそのリミッターは解除してほしい。

 

「アスティカシア学園ではそういうルールがあるからって言うのもあるけど、単純にあなたの為よ」

 

「俺の?」

 

 しかしプロスペラ曰く、どうやらこのリミッターは三日月の為らしい。プロスペラは端末を操作し、三日月に説明をする。

 

「もしバルバトスの力を全て引き出して戦ったら、間違いなくより早く、より鋭く動く事ができるとは思うわ。多分、エアリアルでも全く対処できないくらいには」

 

 ガンダムフレームは、300年前の人類が絶滅しかけた厄祭戦時に建造されたモビルスーツ。絶滅の危機に瀕したのもあり、当時の人類の技術を結集させて建造されている。製造コストをガン無視しているのもあって、その戦闘能力は現代のモビルスーツを遥かに凌駕する。悔しいがもし全力を出して戦えば、本気を出したエアリアルでも勝てないだろう。バルバトスには、それだけの力があるのだ。

 

「けれどその分、三日月くんの頭に大量の情報が入ってくる」

 

 だがそれ故に、相応のリスクもある。ただでさえ普段から、三日月がバルバトスを動かす時、阿頼耶識を通して頭に大量の情報が流れてくる。これは、それだけモビルスーツを動かすためには情報が必要だからだ。

 なんせ軍事兵器である。指を1本動かすだけでも、大量の情報がいる。そしてもしバルバトスをより早く動かそうとするならば、より多くの情報が必要となるのは必然。

 

「もしそうなったら、貴方の体に何が起こるか、私もわからない。もしかすると脳が情報でパンクして、一生自力で動く事も話す事も動く事も出来なくなるかもしれない」

 

 これがただリミッターを解除するだけならば、そこまで問題にはならないだろう。しかし、三日月は阿頼耶識システムの手術を受けている。これのおかげで、リミッターを解除してバルバトスの情報をより多く脳に取り入れた場合、どうなるかプロスペラも分からない。もしかするとGUND-ARMのパイロットのように、脳に深刻な障害が残るかもしれない。

 

「それは、やだな…」

 

 もしそんな風になったら、もうスレッタと話す事も出来ない。一緒に食事も出来ない。そんなのはごめん被る。

 

「だから、バルバトスにはリミッターをかけておくわ。あと、このリミッターを解除するような真似はしないでね?もしあなたに何かあれば、スレッタが悲しむから」

 

「わかったよ」

 

 プロスペラの説明を聞き終えた三日月は、納得する。確かに、スレッタが自分のせいで悲しむのは嫌だ。ならば大人しく、リミッターはかけておこう。

 

 ―――――

 

(ま、結局解除しちゃったんだけどね)

 

 しかし三日月は、バルバトスのリミッターを解除してしまっていた。あれだけプロスペラに言われたにも拘わらず、三日月はリミッターを解除した。

 だが、この決闘に勝つにはもう他に方法が無いのだ。それにここでシャディクを倒せなければ、次に狙われるのはスレッタだ。

 ならばスレッタを守る為にも、なりふり構ってはいられない。そして、リミッターを解除を今なら確信できる。今の状態であれば、間違いなくシャディク達に勝てると。

 

(なんか、俺自身がバルバトスになったみたいだ…)

 

 正真正銘、本当に人機一体になった気分だ。いける。これならば、もう負けない。

 

「先ずは、ずっと鬱陶しいお前らだ」

 

 そして三日月は、いつの間にか少し後方に下がったシャディクのミカエリスでは無く、未だに高所に陣取っているデミトレーナー改へ向かってスラスターを吹かした。

 

『く、来るなぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 デミトレーナー改に乗っている生徒は、ビームガトリングで直ぐに応戦。

 

 だが、

 

『こいつっ…!?さっきまでと全然動きが違う…!?』

 

 三日月はそれを、ビームガトリングの弾の間をすり抜けていくように、全て避けて近づいていく。まるで宇宙空間で動いているかのような動き。明らかに動きが変わっている事に、デミトレーナー改のパイロットは驚愕。

 

(何だよ、何だよその動きは…!?)

 

 同時に、そのバルバトスの動きに恐怖する。なんせ、これだけの弾幕の間をすり抜けて近づいてくるのだ。おまけに全く被弾していない。こんな真似、元ホルダーのグエルだって無理だろう。

 

(凄いなこれ…本当に鋭く、そして素早く動ける)

 

 だがそんな彼より、三日月の方が驚いていた。リミッターを解除したバルバトスの動きは、本当に違う。元々勘の良い三日月に阿頼耶識システムを入れ、更に今バルバトスのリミッターを解除してた。おかげで今三日月は、バルバトスを通して全身の感覚が非常に鋭くなっている。これならば、あれだけの弾幕だって避ける事が可能だ。

 そしてあっという間に、バルバトスはデミトレーナーガトリングの目の前にまで来た。

 

「そら」

 

 デミトレーナー改がソードメイスの攻撃範囲に入った瞬間、三日月はバルバトスの左腕に持っているソードメイスを横に振るう。

 

『う、うわああああああ!?』

 

 近接武器を一切積んでいないデミトレーナー改は、そのまま成すすべなく頭部を破壊され、脱落した。

 

「お前もだ」

 

『ぐは!?』

 

 更に三日月は、直ぐ近くにいた補給型デミトレーナーを足蹴にする。バルバトスに蹴られたデミトレーナーは、そのまま下に落下。そしてそのまま、頭部のブレードアンテナが破壊されて脱落。

 

『くっそぉぉぉぉぉ!!!』

 

 それを見ていた別の場所にいたデミトレーナー改が、バルバトスに向かってビームガトリングを斉射。

 だが三日月は、それすら避ける。そしてソードメイスを、デミトレーナー改目掛けて思いっきりブン投げた。

 

『がはっ!?』

 

 ソードメイスは、見事デミトレーナー改の頭部に命中。更にそのデミトレーナー改のビームガトリングがそのまま斉射され続け、それは隣にいたデミトレーナーに命中。まるでハチの巣のように被弾したデミトレーナーは、何とも運の悪い形で脱落した。

 

『もう奴に武器は無い!!撃て!!撃ち続けろ!!』

 

『コピー!!』

 

 ここでシャディクが再び攻撃を開始。彼の言う通り、今のバルバトスには武器が無い。それに、ナノラミネートアーマーも既に消失している。

 これなら勝てる。その場にいる全員がそう思った。残ったメンバーであるイリーシャとメイジーとエナオはシャディクに言われた通りに攻撃を開始。

 尤も、エナオは射撃武装を先程損失しているので、ビームサーベルによる近接戦闘を行う事になっているのだが。

 

『これで終わらせる!!』

 

 エナオはシャディクとイリーシャとメイジーの援護射撃を受けながら、バルバトスに接近。

 

 しかし、そう簡単に行く筈なんて無い。バルバトスはエナオの攻撃を避けると、エナオのベギルペンデに抱き着くように密着。

 

『こ、こいつっ…!離れろっ…!!』

 

 何とか引き離そうとするエナオだが、バルバトスは全く離れようとはしない。

 

『ひっ…』

 

 その時エナオは、眼前にいるバルバトスの顔を見て思わず怯えてしまう。モビルスーツの筈なのに、別の何かに睨まれているような感覚。表情なんて無い筈なのに、本当に悪魔にでも睨まれているような感覚。その恐怖に負けて、つい操縦桿から手を離してしまった。

 そしてその一瞬の隙をつかれ、バルバトスは今いる高所から飛び出す。そのままエナオのベギルペンデは、バルバトスと共に下へ落下する。

 

『エナオ!?』

 

 2機が落下した場所には土埃が待っており、よく見えない。この状態では攻撃が出来ない。エナオに当たってしまうかもしれないからだ。

 

『エナオ!!大丈夫かエナオ!?』

 

 シャディクがエナオに通信をするが、返事はない。

 

 そして土埃が晴れた時、

 

『っ!?』

 

 そこには、左手でエナオのベギルペンデの頭をもぎ取っているバルバトスが立っていた。足元には、頭部が無いエナオのベギルペンデ。相変わらずエナオからは返事が無いが、恐らく落下の衝撃で気を失ってしまったのだろう。

 そしてベギルペンデの首からは火花が散り、オイルがドクドクと流れ出ている。更にバルバトスの体には、ベギルペンデのものであろうオイルがまるで返り血のように付着している。

 

『悪魔…』

 

 その姿は、まるで本物の悪魔そのもの。そしてそれを見たイリーシャとメイジーは、足が竦んでしまう。

 

『何だよ、あれは…』

 

『ひっ…』

 

『怖い…』

 

『うぷっ…』

 

 それは、決闘を見ている学園の生徒達も同じだ。確かに三日月は例の食堂での事件以来、多くのスペーシアンから恐れられている。

 だがそれはあくまで、不良を怖がっているような感覚だ。断じて命の危機を覚えるような恐怖心では無い。

 しかし、今は違う。今の三日月とバルバトスからは、死を連想させるような恐怖を感じる。例えるなら、人ではどうしようもない怪物に出会ったような恐怖。もうどうしようもない、一切の抵抗も出来ずに殺されてしまうような恐怖を感じる。事実その恐怖に当てられたのか、大勢の生徒が顔を真っ青にしている。

 

(これが、こんな物が、あのガンダムフレームだと言うのか?)

 

 そしてシャディクは、そのバルバトスの姿にいささかショックを受けていた。彼にとって、ガンダムフレームというのは英雄が乗るモビルスーツというイメージ。実際英雄アグニカ・カイエルは、ガンダムフレームに乗って、モビルアーマーを数多く討ち取ってきたと伝わっている。

 だが今目の前にいるバルバトスは、そんな英雄達が乗っていたとは思えない風貌をしている。アグニカ戦記で語られていた華々しいモビルスーツには全く見えない。こんな恐ろしいモビルスーツが、かつて人類を救ったとはとても思えない。

 

「これで後は、お前達だけだ」

 

 そんなややショックを受けているシャディクの事など知らない三日月は、エナオのベギルペンデの頭部をその辺に放り捨て、正面にいるシャディク達に狙いを定める。

 もう邪魔者もいない。残るは3機だけだ。スラスターのガスはもうほぼ無いが、速攻で3機とも撃破すれば何とかなるだろう。

 そして三日月は、シャディクのミカエリスに向かって飛び出す。

 

『っシャディク!逃げて!!』

 

 イリーシャはそう叫ぶと、バルバトスに向かってビームライフルで攻撃をしながら前進。彼女は今直感で、このままではマズイと判断。自分が盾になってでも、シャディクを逃がす事にしたのだ。

 

 しかし枷を外した悪魔にとって、最早イリーシャは障害になりえない。

 

『消えたっ!?』

 

 突然、目の前にいたはずのバルバトスが消えた。イリーシャがとっさに左右を確認するが、姿が見えない。まさかバルバトスには、未だにどこも開発できていない光学迷彩でも搭載されているのだろうか。もしそうなら大変だ。

 そしてイリーシャが再び前を向いた時、

 

『え?』

 

 眼前に迫るバルバトスの左手が見えたのだ。実はバルバトス、イリーシャの攻撃を避けたと同時に、

超前傾姿勢で下からイリーシャへ迫ったのだ。まるで地面を這っているかのように。

 そして左手でイリーシャのベギルペンデの頭部を掴むと、

 

「どけよ」

 

 バルバトスの右ひざで、思いっきり頭部に膝蹴りをかましたのだった。

 

『きゃああああ!?』

 

『イリーシャ!!』

 

 イリーシャのベギルペンデの頭部がひしゃげると同時に、イリーシャの悲鳴が響き渡る。それを見ていたメイジーが、即座にバルバトスに向かって攻撃。

 だが、

 

『なっ!?』

 

 なんと三日月は、頭部を破壊されたイリーシャのベギルペンデを盾代わりにして、メイジーの攻撃を防いだのだ。とっさにこのような動きが出来るのは、やはりリミッターを解除して素早く動けるようになったおかげだろう。

 

『そんなっ…』

 

 自分がイリーシャを撃ってしまった。その事がショックで、メイジーはほんの少しだけ動きを止めてしまう。

 そして三日月が、その隙を逃がす事など無い。三日月はイリーシャのベギルペンデが持っていたビームライフルを手にすると、それをメイジーのベギルペンデ目掛けて発射する。

 

『避けろメイジー!!』

 

『え、嘘…!?ちょっ…!?』

 

 シャディクが叫んだ時には、もう遅かった。メイジーは三日月の攻撃を避ける事が出来ず、先ずは両足を破壊される。更に三日月はビームライフルを連射。その全てが、メイジーのベギルペンデに命中。

 

『くそ!!』

 

 シャディクもそれをただ黙って見ている事はしない。直ぐにバルバトスに向かって攻撃をするが、

 

「もう当たらないって」

 

 三日月はその全てを避けて行く。最早シャディクの攻撃はかすりもしない。そしてその間も三日月は、メイジーのベギルペンデに向かって攻撃を続行する。

 

「あ、撃ち尽くしちゃった」

 

 三日月が奪ったビームライフルを全て撃ち終えた時には、メイジーのベギルペンデはボロボロだった。両足は破壊され、シールドも右腕ももう使い物にならない。

 更に腰回りもぐちゃぐちゃで、仰向けに倒れている。だがそれでもまだ頭部は無事。これでは脱落判定を受けれない。

 

「ちゃんと頭を、壊さないとな」

 

 三日月はビームライフルを捨てると、メイジーのベギルペンデに一気に近づき、そのままバルバトスの右脚で頭部を踏みつけたのだ。こうしてメイジーも、この決闘で脱落が決定する。

 

『エナオ…イリーシャ…メイジー…皆…』

 

 その様子を、シャディクは呆然と見ていた。同時に、彼の中にはどうしてこうなったかという思いがひしめき合う。バルバトス用の作戦を実行し、誇りなんて全く無いやり方で徹底的に追いつめた筈だった。

 確かにとても褒められた作戦では無かったが、バルバトスを倒すにはこうでもしないととても勝ち目なんて無かったのだ。実際バルバトスもエアリアルも、かなり酷い損傷を負っている。あと少しで勝てる筈だった。

 なのに突然バルバトスが動きを変えて、気が付けば10分とたたずに自分が追い詰められている。あまりにも異常な逆転劇だ。

 

(何だこれは…?俺は、悪い夢でも見ているのか?)

 

 まるで質の悪い悪夢を見ているようだ。こんな事、ありえない。いっそ全部夢だったらどれだけよかっただろう。

 

「あとは、お前だけだ」

 

『ぐっ!?』

 

 そんな風に思っていると、バルバトスが向かって来た。悲しいが、これは現実なのである。考えた作戦は全部破られ、サビーナ達も脱落。そしてグラスレーで残っているのは、もう自分だけ。

 

(このままじゃマズイ…!距離を…!!)

 

 今のバルバトスに接近戦は自殺行為でしかない。なので距離を取って、ビームブレイサーでバルバトスのブレードアンテナを狙い撃つ。そうすればいい。

 

 だが、

 

『速い…!?』

 

 今のバルバトスから距離を取る事は、簡単ではない。

 

「しっ!!」

 

『く!?』

 

 三日月はバルバトスの残った左腕で何かを掴んで、それでミカエリスを攻撃する。

 

『それは…!?』

 

 バルバトスが持っていたのは、ベギルペンデの右腕だった。恐らくは、先程頭を踏み抜いたメイジーのベギルペンデのだろう。

 

『そんなものでっ…!!』

 

 だが所詮はボロボロの腕。ビームブレイサーの敵では無い。シャディクは直ぐに、バルバトスが武器変わりにしているベギルペンデの腕を破壊する。これでバルバトスは、再び丸腰だ。

 

(この距離ならいける…!!)

 

 そしてシャディクは、ビームライフルをバルバトスのブレードアンテナ目掛けて発射する。

だが、

 

(この距離でも避けきれるのか!?)

 

 それもバルバトスは避けたのだ。更にバルバトスは左手で、ビームブレイサーの有線ワイヤーを

掴んだ。

 

『まずっ…!?』

 

「とべ」

 

 シャディクがマズイと思った時には、もう遅かった。バルバトスは有線ワイヤーを掴んだまま、その場で回転。そして遠心力が乗った時に有線ワイヤーを離し、ミカエリスを思いっきり投げ飛ばしたのだ。まるでハンマー投げだ。

 

『がはっ!?』

 

 シャディクのミカエリスは、そのままビルへ激突。

 

(くっ!?機体の状態は…!?)

 

 そして直ぐにミカエリスの状態を確認する。幸いまだブレードアンテナは無事だが、今の衝撃で背中のスラスターとビームブレイサーが上手く動かない。

 何とか腕に収納する事はできたが、もう発射する事は出来ないだろう。これではもう、相手の死角からビームブレイサーで攻撃する事は出来そうにない。しかし、三日月の狙いはこれだけでは無かった。

 

(待て、この位置は…)

 

 シャディクは今いる自分の場所に危機感を覚え、直ぐに周囲を確認。近くを見てみると、そこには頭部にソードメイスが刺さっているデミトレーナー改がいた。

 

 そしてそこに、悪魔がやってきた。

 

 バルバトスは左手にソードメイスを持ち、それをミカエリスに向ける。

 

(成程、闇雲に投げた訳じゃないって事か…)

 

 どうやら三日月は、武器を回収する為にミカエリスをここに投げたようだ。

 

(今こいつを投げたので、スラスターのガスはもう無いか…)

 

 だが三日月も、今のでスラスターのガスが無くなってしまった。これでもう、さっきまでみたいには動けない。

 

(でも、十分だ)

 

 しかしミカエリスは、背後にビル、左右を瓦礫で囲まれている袋の鼠状態。上に逃げられたら終わりだが、その時はソードメイスを投げて仕留めよう。それにもししくじったら、スレッタにシャディクを仕留めてもらうよう頼もう。

 

「んじゃ、これで終わらせるから」

 

 三日月はソードメイスを構え、ミカエリスに近づく。するとミカエリスは、なんと逃げる事なくビームブレイサーを向けてきたのだ。

 

「へぇ。逃げないんだ」

 

『スラスターをやられていてね。逃げたくても逃げれないんだ』

 

 それは好都合だ。おかげでこっちの間合いで戦える。

 

『活路があるとすれば、正面だけだ。だからここは、正面から挑ませてもらうよ』

 

 確かにバルバトスさえ倒せば、残るは負傷しているエアリアルだけ。どうもそのエアリアルもアンチドートを無効化したらしいが、まだ勝てない訳じゃない。その為にも、ここでバルバトスを倒さないといけない。

 

 そしてその直後、ミカエリスはバルバトスに向かって攻撃を開始。

 

 正面からの突き攻撃を、三日月はソードメイスで防御。防御される事を読んでいたシャディクは、左手でバルバトスのブレードアンテナを狙う。だがバルバトスは、それを首を横に傾げることで避けた。

 

『ぐっ!?』

 

 それと同時に、今度はバルバトスがミカエリスに膝蹴りを食らわせる。だが大したダメージにはならない。

 

「ならっ!!」

 

 今度はバルバトスがソードメイスを上に振り上げ、それを思いっきり振り下ろす。ミカエリスがそれをビームブレイサーで防御する。

 

『ちぃっ!?』

 

 何とか防御は出来たが、今の衝撃で右腕の関節部分が悲鳴を上げた。これではもう、2度目は防げない。もし次に受けてしまえば、ミカエリスの右腕は完全に破壊されるだろう。

 

 だが次の瞬間、バルバトスは予想外の攻撃をしてきた。

 

「ふん!!」

 

『頭突きだと!?』

 

 それは、頭突き。三日月はバルバトスのブレードアンテナが折れるリスクを冒してまで、ミカエリスに頭突きをかましたのだ。

 あまりに予想外の攻撃だった為、シャディクは防御する事が出来ずに後ろによろめく。

 

(今だ)

 

 それが、致命的な隙になってしまった。

 

『しまっ!?』

 

 シャディクが動こうとするが、もう遅い。三日月はソードメイスをミカエリスの右腕に思いっきり振り下ろす。その結果、ミカエリスは右腕を破壊されてしまう。これでもう、ビームブレイサーは使えない。

 

「まだだ」

 

 更に三日月は攻撃を続ける。今度はソードメイスを横に振り、ミカエリスの右足を攻撃。ミカエリスはその衝撃で、地面に膝まづくように倒れる。

 

「これで、終わりだ」

 

 そして遂に止めを刺すべく、三日月はミカエリスの頭部目掛けて、ソードメイスを振り下ろす。既にミカエリスに武器は無い。これでこの決闘も終わりだ。

 

 しかし、ここでまさかの事態が起こってしまう。

 

 

 

「あれ?」

 

 

 

 なんと、バルバトスが動きを止めてしまったのだ。

 

 実はバルバトス、これまでのリミッターを解除して行った散々な無茶な戦闘の結果、

遂に機体が限界を迎えてしまったのである。フレームは少し歪んでいるし、戦闘システムはフリーズした。更に機体は熱を持ってしまい、肩のアーマーからその熱を放出しだした。その結果、この最悪のタイミングで動かなくなったのだ。

 

『どうやら、俺にもまだ勝機はあったみたいだね』

 

 シャディクはミカエリスを立ち上がらせて、左腕に装備されている小型のビームサーベルを出し、それをバルバトスの顔めがけて突き出そうとする。

 

『終わりだ!三日月・オーガス!!』

 

 これはもう防御できない。どうあっても無理だ。これで三日月は敗北するだろう。誰もがそう思った。

 

 

 

 

 

『いいえ、終わるのは貴方です。シャディクさん』

 

 

 

 

 

 しかしその時、三日月が最も聞きなれた声が聞こえた。そして次の瞬間、ミカエリスの頭部が何かに撃ち抜かれ、ブレードアンテナが破壊されたのだ。

 

『なっ!?』

 

 シャディクが驚きながら上空を見ると、そこにはエアリアルのエスカッシャンが飛んでいる。そしてバルバトスの後ろには、ボロボロのエアリアルがいた。

 

「やっと来た。遅いよ、スレッタ」

 

『ごめん三日月。何か、皆がバルバトスを怖がってたみたいで…』

 

「そうなの?何かごめん」

 

 今ミカエリスの頭を撃ち抜いのは、スレッタのエアリアル。そう、この決闘のリーダー機だ。スレッタは本当なら直ぐにでも三日月の援護をしたかったのだが、どうやらエアリアルがバルバトスを怖がってしまったらしく、中々援護が出来ずにいたらしい。しかしようやくバルバトスが動きを止めたおかげで、エアリアルが怯えなくなり、こうして攻撃する事が出来たのだ。

 

「これで、俺達の勝ち?」

 

『うん三日月。私達の勝ちだよ』

 

 その瞬間、決闘場の上空に文字が現れる。

 

 

『勝者 地球寮』

 

 

 こうしてスレッタ達は、圧倒的不利だったグラスレー寮との決闘に勝利したのであった。

 

 

 

 

 

(危なかった…)

 

 眼前にいる、ブレードアンテナを破壊されたミカエリスを見ながら、三日月はほっと胸を撫で降ろす。正直、あのタイミングでバルバトスが動けなくなるなんて想像もしていなかった。

 しかし三日月は、スレッタを信じていた。もし自分がやられても、スレッタが必ず何とかしてくれるだろうと。

 

(まぁそれでも、かなり無茶させたな…)

 

 端末を操作してバルバトスの状態を確認してみると、そこら中ボロボロだ。これではもう戦えない。隅から隅までしっかり修理をしないといけないだろう。

 それにしても、ここまでボロボロになったのは初めてだ。それだけグラスレーがやっかいだった証拠なのだろうが、それでもボロボロすぎる。

 

「お疲れ、バルバトス」

 

 三日月は自分の愛機にお礼を言う。今回は本当に無茶をさせた。暫くはゆっくり休ませないといけない。でもその前に、お礼言っておいた方がいいと思ったのだ。

 

「あれ?」

 

 しかしお礼を口にした瞬間、三日月は突然目の前が真っ暗になるのを感じた。

 

「何だ、これ…?」

 

 そして三日月は、そのまま意識を失ったのだ。

 

 

 

(ふぅ~…何とか勝てた…)

 

 エアリアルのコックピット内で、スレッタは深いため息をつく。今回の決闘は、本当に危なかった。

モビルスーツの数で負け、相手の作戦にハマり、少しでも気を抜けばこちらが負けていた。

 しかし地球寮の皆や、協力してくれたヴィダール、そして三日月やエアリアルのおかげで、何とか勝利する事が出来た。

 

(これでミオリネさんの会社は、大丈夫なんだよね?)

 

 これでもう、株式会社ガンダムを邪魔する人はいない。ようやく株式会社ガンダムは企業できる。

 

(あ、そうだ!勝ったからアピールしないと!えっと、PVのあの踊りでいいかな?)

 

 今回の決闘は、グループの外部にも視聴されている。その結果、この決闘の視聴者数は学園始まって以来最高視聴率を出しているのだ。

 それだけ大勢に見られているのだから、最大のアピールチャンスでもある。なのでスレッタは、コックピットの外に出て株式会社ガンダムのPVで踊ったあの奇妙な踊りをしようとした。正直恥ずかしいが、この好機を逃す訳にはいかない。

 

(えっととりあえず、エアリアルの手に乗って…)

 

『三日月!!返事しなさい三日月!!』

 

「……え?」

 

 しかしそれは、ミオリネの叫び声で中断となった。

 

『三日月くん!お願いだから返事して!!』

 

『おい三日月!!何でもいいから声だしてくれ!!頼む!!』

 

『アリヤ!直ぐにフロント管理社に連絡!救護班を大至急派遣するように言って!!僕は決闘委員会に連絡を入れるから!!』

 

『わかった!!』

 

 ミオリネだけじゃない。モニター室にいた地球寮の皆が、三日月の事を呼んでいる。

 

「三日月…?」

 

 瞬間、スレッタはどうしようも無く嫌な予感がした。そして恐る恐る端末を操作して、バルバトスのコックピットに通信を繋ぐ。

 

 するとエアリアルのコックピットモニターに、顔中血まみれの三日月が映し出される。おまけにピクリとも動いていない。まるで、死んでいるみたいに。

 

「三日月!?」

 

 その姿を見た瞬間、スレッタは大声で自分の幼馴染の名前を叫ぶ。そして今すぐ三日月を救助するために、直ぐにエアリアルでバルバトスに近づく。

 

 こうして地球寮とグラスレー寮の決闘は、学園始まって以来、最も血だらけの結末を迎えたのであった。

 

 

 

 

 




 長かったけど、これにてシャディク戦決着です。そして三日月は意識を失いましたが、その辺は次回に書きます。

 冒頭のデリングの部分は、娘のミオリネに自分がどんだけヤバイ物を扱っているかをわからせる為に行ったって感じにしてますが、これ上手く書けているかちょっと不安。もしかすると後で書き直すかもしれない。その時はごめんね。

 読んでいて変な箇所や、矛盾があった場合は言って下さい。修正しますので。

三日月は代償を

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