悪魔と魔女の物語   作:ゾキラファス

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 なんかランキング2位になったり、もの凄い沢山の方々から評価と感想を頂いたりして戦々恐々としています。
 皆様のご期待に添えるかわかりませんが、精いっぱい執筆させていただきます。

 今日の水星の魔女の感想

 そっち!?

 それと今の三日月はCV河〇さんではなくCV諏〇さんのショタ三日月です。
 てな訳で、どうぞ。


プロローグ 3

 

 

 

 

 

 時間はすこし遡る。

 

『それでね!三日月ったらモビルクラフトで空をぽーーんって飛んだんだよ!?下手したらそのまま宇宙に放り出されていたかもしれないのに!私、モニターで見てたけどつい悲鳴上げちゃったんだもん!!』

 

「ふふ。随分やんちゃなことをするのね」

 

『本当だよ。しかもその後に三日月が言ったことが『あの方が速いから』だよ!?信じられないって!!』

 

 この日、プロスペラは仮面を外して、娘であるスレッタと遠距離通信で話していた。今、プロスペラは地球圏にいる。スレッタがいる水星まで、およそ1億5千万キロ。とんでもない長距離だ。

 故にそう簡単に水星に行ける訳もないのだが、テクノロジーのおかげでこうしてモニター越しに会うことは出来る。尤も、太陽風が酷い時は無理なのだが。

 

「それにしても、スレッタは三日月くんが大好きなのね?」

 

『ふぇあ!?』

 

 プロスペラの言葉に、素っ頓狂な声を出すスレッタ。その頬は、トマトのように赤くなっている。可愛い。

 

『ち、違うよお母さん!?別に私、三日月のことはそんなんじゃなくて!!』

 

「あらあら。随分おませさんになったわねスレッタ」

 

『も、もう!からかうのはやめてよ!!本当にそんなんじゃないから!!三日月は弟みたいなものだから!!』

 

 娘の慌て具合に、つい笑みが零れるプロスペラ。思えば、スレッタとこうやって話すのすら久しぶりだ。出来れば傍で成長を見守りたいが、それはどうしても出来ない。出来ない理由が、プロスペラにはあるからだ。

 

(ま、可愛い子には旅をさせろとも言うしね)

 

 そう思っていると、スレッタが思い出したかのように話し出す。

 

『あ、そうそうお母さん。そういえば三日月もね、モビルスーツを持ってるんだよ』

 

「へぇ?もしかして、三日月くんもどこかの会社の子供なのかしら?」

 

 今時自分のモビルスーツを持っているのなんて、モビルスーツに関係する会社を経営している金持ちか、反スペーシアンのテロリストくらいだ。

 水星には一応、プロスペラ以外が経営する会社も小さいながら存在する。ひょっとするとその三日月という子は、そのどれかの会社の子供かもしれない。

 

『ううん。三日月のお父さんとお母さんはもう死んじゃってるんだ。三日月が持っているモビルスーツは、昔三日月のお父さんとお母さんが、どこかで拾って直したって言ってたよ』

 

「拾って直した?モビルスーツを?」

 

『うん。そして今も水星にあるんだ。私も前に見せてもらったし』

 

 それはおかしな話だ。例えモビルスーツを拾ったとしても、それは大抵誰かの所有物である。仮に宇宙を漂流していても、機密だらけのモビルスーツをそのままほっとくなんて普通はしない。情報漏洩を防ぐため回収するか爆破する。

 それにもしモビルスーツを拾ったとしても、そう簡単に修理なんてできない。なんせ軍事兵器だ。専門の知識がなければ直せない。随分妙な話である。

 

『あとね、そのモビルスーツ、エアリアルに少し似てたよ?』

 

「―――何ですって?」

 

 だがそれはスレッタの更なる発言を聞いたことにより、別の思考で埋め尽くされた。

 

「どう似てたの?」

 

『えっと、色合いとかデザイン?でも顔つきはエアリアルより怖いかな?』

 

 プロスペラは考える。エアリアルに似ているモビルスーツ。それを普段から、エアリアルをよく見ているスレッタがそう言っている。つまり、かなり似ているのだろう。

 確かに世の中、見た目が似ているモビルスーツはあるかもしれない。しかし、エアリアルは特別なモビルスーツだ。同じような機体なんて、そうそうある訳ない。

 

 だからこそ、プロスペラはこう考えた。

 

 『もしかするとそれは、GUND-ARMではないのか』と。

 

 もしそうなら一大事だ。少なくとも、プロスペラにとっては。

 

「ねぇスレッタ。そのモビルスーツの特徴とか無いかしら?」

 

『特徴?えっとそうだな…名前はバルバトスっていうけど…』

 

 兎に角情報が欲しい。なのでプロスペラは、スレッタから可能な限りの情報を引き出す。結果わかったのは、バルバトスという名前と、動くとペビ・コロンボ23の電気設備が壊れるということくらい。もしかすると、ジャミング用のモビルスーツかもしれない。

 

(1度、この目で調べた方がよさそうね…)

 

 そしてプロスペラは、1度水星に赴くことにした。

 

 万が一にも、自分の計画を崩されない為に。

 

 

 

 

 

「ココアでよかったかしら?」

 

「別にいいけど」

 

 ペビ・コロンボ23内にある、シン・セー開発公社の来客用の応接室。恐らく基地内で最も清潔で豪華な部屋。そこに仮面の女プロスペラと、少年、三日月・オーガスはいた。今2人は、応接室に置いてあるソファに対面するよう座っている。

 その間、プロスペラは娘と同い年の三日月を想ってココアを淹れる。因みにこのココア、水星ではアルコール類に並ぶほど値段が高い。

 

「はい、どうぞ」

 

「ん」

 

 プロスペラから手渡された淹れたてココアを、三日月はそっけなく受け取る。そして一口飲んでみた。

 

「へぇ…」

 

「お口に合ったかしら?」

 

「初めて飲んだけど、いいねこれ」

 

「そう。よかったわ。これはスレッタも好きな飲み物なのよ」

 

 今まで水くらいしか口にしてこなかった三日月。理由は単純で、こういう飲み物を知らなかっただけだ。三日月は欲があまりなく、食事だって食べれたらいいという考えだ。それはここ水星の環境のせいでもある。水星は植物なんて育たない。更に太陽風のせいで、大型のコロニーの建設だって出来ない。無論、金と労力をつぎ込めば可能ではあるが、こんな辺境の地にそんなことをする物好きはいない。

 故に水星の食文化は産業革命時の英国より酷く、人為的に味付けのされた宇宙食くらいしか無いのだ。

 そして三日月は、生まれこそ火星ではあるが、物心ついた時から育ったのは水星である。こんな荒んだ食文化の地域に生まれたら、当然舌なんて肥える訳がない。なので普段口にするは水。ココアなんて、こんな機会でもなければ飲むことなんてなかっただろう。

 

「で、俺に何か用なの?」

 

「ふふ、娘に出来た初めてのボーイフレンドとお話ししてみたくてね」

 

 怪訝そうな顔でプロスペラに尋ねる三日月。それに対して、プロスペラは面白そうに笑う。

 

「ボーイフレンドって?」

 

「簡単に言うと、仲の良い友達ね」

 

「ふーん」

 

 確かにスレッタとは仲が良いだろう。しかし友達かといえば、それは違う気がする。三日月にとってスレッタは、大切な存在だ。それ以上でも以下でもない。

 

「先ずは、スレッタと仲良くしてくれてありがとうね。おかげであの子、随分楽しそうだし」

 

「別に。俺がそうしたいってだけだし」

 

 対面のソファに座ったプロスペラが三日月にお礼を言う。スレッタは母のいないこの水星で、エアリアルを除けばずっと1人だった。それ故、何度も寂しくて1人で泣いていた。そのことをプロスペラは、エアリアルから聞いている。

 しかし三日月と知り合ってから、スレッタはかなり明るくなったのだ。人見知りする性格も多少はマシになり、レスキューパイロットの資格も取得。更にイジワルをしてくる老人に対しても、スルーすることを覚えた。いつもエアリアルのコックピットで泣いていた頃とは大違いだ。

 仕事のせいで水星を離れることになったプロスペラは、最初こそスレッタが心配ではあったが、暫くすると思いのほかスレッタが元気そうにしているのを聞いて安心。おかげで心置きなく、地球圏で仕事が出来る。

 

「よく一緒にお話しするんですって?」

 

「そうだけど、それがどうかした?」

 

「いいえ。ちょっとした確認よ。誰かと話すのは良いことだからね」

 

「ふーん」

 

 普通、子供が大人に対してこんな口の利き方はしないだろうが、水星という色々荒んだ環境のせいで、三日月は基本誰に対しても砕けた物言いをする。遠慮が無い、もしくは遠慮を知らないとも言うが。

 

「ところでスレッタから聞いたけど、自分の命がスレッタの物っていうのはどういうことかしら?」

 

「そのままの意味だけど?俺の命はスレッタの物って」

 

「どうして?」

 

「スレッタに命を救われたからね。だからお礼がしたかったんだけど、俺スレッタにあげれる物が命しかなかったから。そしてこの命は、スレッタを守る為に使いたいんだ」

 

「あら、随分熱烈なアプローチね?」

 

「は?アプローチって何?」

 

「ふふ、冗談よ」

 

 やや空気が緊張気味な会話が続く。そりゃあんなヘンテコな仮面を被っている人に、心を許した会話をしろっていうのが無理な話だ。

 

(何だろうこいつ…なんか引っかかる…)

 

 それだけじゃない。いくらスレッタの母親とはいえ、三日月はプロスペラを全く信用していなかった。何かが引っかかる。確証は無く、野生の勘とでもいうべきものなのだが、三日月はその自分の勘を信じていた。実際自分の勘のおかげで、採掘現場で命拾いしたこともある。

 そしてその勘がささやくのだ。プロスペラを信用できないと。

 

「さて、お喋りはこれくらいにして、そろそろ本題に入りましょう」

 

「本題って?」

 

 少し身構える三日月。するとプロスペラは、タブレットを取り出して2人の間にある机の上に置く。

 

「これは貴方が所有しているモビルスーツ、バルバトスに関する書類なんだけね」

 

「これが何?」

 

「この書類によると、バルバトスの所有者は貴方じゃないのよ」

 

「……は?」

 

 三日月、目を丸くして驚く。そしてタブレットの画面を見てみると、そこには確かに自分でも死んだ両親のでもない『マルバ・アーケイ』という名前が記入されていた。

 

「なにこれ?てか誰?」

 

 混乱する三日月。そんな彼に、プロスペラは丁寧に教える。

 

「チャオモンフ採掘基地で、1つの採掘部隊を率いている人よ。調べてみたら、貴方の両親が事故で亡くなった時、この人がどさくさに紛れて書類を偽造したみたいなのよ」

 

「――――は?」

 

 それを聞いて、頭に血が上る三日月。確かに死んだ両親のことはあまり記憶が無いし、そこまで興味も湧かない。

 だがそれでも、あれはその両親が自分に残してくれた財産なのだ。それにバルバトスのおかげで、自分は採掘現場で働けるし、スレッタにも出会えた。

 こんなこと許さない。許せる訳がない。今すぐこの男を手にかけないと気が済まない。そして立ち上がろうとした時、プロスペラが三日月に優しく話かける。

 

「落ち着きなさい。既にその偽造書類はこっちで正しくしているから」

 

「え?」

 

 プロスペラはそう言うと、タブレットに新しい画面を映す。するとそこには、今度こそ所有者の欄に『三日月・オーガス』と記入されていた。

 

「私の方で調べたら、直ぐにこれが偽造書類だってわかってね。だからうちの者に色々やらせたらすぐ白状したわ。なんでも、売ればかなりのお金になるって思っていたんですって」

 

 確かにモビルスーツなんて、パーツごとにバラバラに売ったとしても、こんな危険な場所で働かなくてよいくらいの大金にはなるだろう。そんな大金が手に入れば、安全な地球圏で暮らすことも可能だ。

 

「それにしてもよかったわ。どうもこのバルバトスっていうモビルスーツ、来月には売られる予定だったらしいの」

 

 まさに間一髪。もしプロスペラが水星に来なかったら、バルバトスはどこかに売られていたのだ。そしておそらく、2度と手元に戻っては来なかっただろう。

 

「えっと、ありがとう…」

 

「ふふ、どういたしまして」

 

 慣れない感謝の言葉を言う三日月。いくら目の前の人物が信用できないとはいえ、これは本当に危なかった。正直、かなりほっとしている。それだけ三日月は、バルバトスのことを気に入っているのだ。流石の三日月だって、お礼は言う。

 

「何か、お礼とかした方がいいの?」

 

 なのでお礼の言葉だけではなく、何かした方がいいのかと思った三日月は、プロスペラに直接尋ねる。

 

「そうね。娘のボーイフレンドだから、特に気にしなくていいって思ったのだけれど…」

 

 するとプロスペラは、仮面越しに三日月をじっと見て、

 

「貴方のバルバトスというモビルスーツ、少し見せてもらってもいいかしら?」

 

 バルバトスを見せて欲しいと、お願いしたのだった。

 

 

 

 

 

「それで三日月。バルバトスは?」

 

「今はエアリアルのハンガーでスレッタのお母さんが見てるよ」

 

「あ、だから今日はハンガーに入っちゃダメってお母さん言ってたんだ」

 

 翌日、三日月とスレッタは何時もの倉庫で話をしていた。その手には、いつもよりずっと豪華な夕飯のチョコバーが握られている。プロスペラのお土産だ。

 

「大丈夫だよ三日月。お母さんはエアリアルを作った人だから、バルバトスを壊したりなんてしないから!」

 

「そうなの?」

 

「うん!」

 

「スレッタがそう言うなら…」

 

 正直三日月は、今でもプロスペラのことを信用していない。この期に、バルバトスに何かするんじゃないかとさえ思っている。

 しかし、プロスペラはバルバトスを助けてくれた。そのお礼はしないといけない。それすらも出来なくなってしまったら、自分は他の水星の老人たちと同じになってしまう。

 なので三日月は、プロスペラのことは信用できないと思いつつも、今回は我慢することにした。

 

「ねぇねぇ!バルバトスにもさ、エアリアルみたいに映像データ入ってるかな?」

 

「さぁ?そんなのわかんないよ」

 

 そう言うと、手にしていたチョコバーを口に入れる。甘い味が舌の上に広がる。

 

「これ意外と美味しいな」

 

「チョコなんて、水星じゃ滅多に手に入らないもんね」

 

 初めて食べるチョコレートの味に驚く三日月。月に1回来る補給船にもチョコレートは偶に売っているが、本当に偶にだ。おまけに高い。おいそれと簡単に、食べられるものじゃない。

 

「でもやっぱ、俺はこっちが好きかな」

 

 そう言うと三日月は、ポケットから火星ヤシを取り出して食べる。やはり高級であまり食べなれていない食べ物より、食べなれているこっちの方が美味しく感じる。人間あるあるかもしれない。

 

「あ。私にも1個ちょうだい」

 

「いいよ」

 

 スレッタに火星ヤシを手渡し、2人で食べる。

 

「うぐっ…私のハズレだった…」

 

「残念だね」

 

 こうして、2人の何時もの夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 エアリアルのハンガー。そこには今、エアリアルとバルバトスが並んでいた。

 

「まさか…ありえるって言うの?こんなことが…?」

 

 現在、バルバトスには機体データの吸出しを行うため、様々なケーブルが挿さっている。そしてプロスペラは、バルバトスから吸い出したデータを見て、驚愕する。

 

(もしこれが本物だとすると、色々マズイわね…)

 

 吸い出したデータを見る限り、バルバトスはとんでもないモビルスーツだ。ベネリットグループ内でも、こんなとんでもないモビルスーツは誰も所有していないだろう。グループの御三家や、総裁であるデリングでさえ。

 なんせ存在そのものがあやふやだ。一応公的な記録は残っているのだが、その記録自体がもの凄く古いし、当時現物を見た人間など最早生きていないだろう。

 それほどに、バルバトスは特別だった。

 

 それこそ、プロスペラが心血を注いで建造したエアリアルより。

 

(でもこれは、上手くいけば計画を早められるかもしれない)

 

 だが道具は全て使いようだ。例えばナイフだって、普通の人が使えばただの食器だが、訓練を受けた軍人が使えば立派な武器になる。

 同じようにこのバルバトスだって、上手く使うことができれば、自分の計画を一気に推し進めることが可能かもしれない。

 たとえそれが出来なくても、敵対するのは得策ではないだろう。

 

(そのためには、彼が必要不可欠ね…)

 

 そしてプロスペラは、バルバトスの所有者である少年のことを思い浮かべる。

 

 

 

 

 

 数日後

 

「ありがとう。モビルスーツ開発者として、貴方のバルバトスはとっても興味深かったわ。つい夢中になっちゃった」

 

「へー」

 

 水星にあるシン・セー開発公社の応接室で、プロスペラと三日月は再び話をしていた。最初に会ってから数日、プロスペラはエアリアルのハンガーに籠りっぱなしだった。相当にバルバトスに興味があったのだろう。

 

「それで?まだ俺に何か用があるんでしょ?」

 

「あら。貴方本当に勘が良いわね」

 

 前とは違い、今度は三日月の方から切り出す。何か用事でも無いと、こんな場所に自分を呼びつける訳ないからだ。

 そしてプロスペラは、三日月に質問をする。

 

「聞きたいことがあるんだけど、貴方はバルバトスをどうしたいの?」

 

「別にどうもしないよ。偶にセーフモードで動かしてシミュレーションするくらいだけど」

 

「それは…とっても勿体無いわね」

 

「は?」

 

 やや眉を吊り上げて、三日月は首を傾げる。

 

「私の方で調べたら、あのバルバトスは本当に凄いモビルスーツだったのよ。そんな凄いモビルスーツをあのまま埃を被らせておくのは、本当に宝の持ち腐れよ?」

 

「そうなの?」

 

 あまりピンとこない三日月だが、プロスペラは話を進める。

 

「もしあのバルバトスを本来の意味で扱えるようになったら、スレッタを守れる力が手に入るわよ?」

 

「え?」

 

 スレッタを守ると言う言葉に、三日月は反応を示す。

 

「前に言ってたわよね?スレッタを守りたいって」

 

「言ったけど、今のままじゃダメなの?」

 

「ダメね。いくら貴方が鍛えていても、生身ではいずれ限界がくるわ。例えばだけど貴方、生身でエアリアルと喧嘩して勝てるかしら?」

 

「無理に決まってるじゃん」

 

「ええ、無理ね。だって生身だもの。でも、モビルスーツでなら?」

 

「……」

 

 それなら少なくとも、生身よりは喧嘩にはなるだろう。子供だってわかることだ。

 

「だからバルバトス?」

 

「そうよ。あのバルバトスがしっかり動いて、それを貴方がちゃんと操縦できるようになれば、スレッタとエアリアルにだって届く力になるわ。そしてそれほどの力があれば、危ないことからスレッタを守ることが出来る」

 

「……」

 

 その言葉に耳を傾け、考える三日月。確かにもし、バルバトスがエアリアルみたいに使えるようになったら、何かの事故にスレッタが巻き込まれた時、エアリアルの代わりにバルバトスを使って助けに行くことが出来るかもしれない。しかし、そう簡単にうんとは言えない。

 

「もしかして、スレッタって戦争にでも行くの?」

 

 プロスペラの言い方は、まるで今後、スレッタに危険が迫っていると言っているようだ。モビルスーツを使った危険なことと言えば、戦争くらいしか無い。もしスレッタを戦争にでもいかせようとしているのなら、全力でこの女を止めないといけない。

 

「いいえまさか。私の娘を戦争になんて行かせる訳ないわ」

 

「じゃあ、何で?」

 

 戦争じゃなければ何だというのか。未だ子供の三日月にはわからない。

 

「これはまだスレッタにはまだ秘密なんだけど、スレッタにはいずれ、地球圏の学校に行ってほしいと思ってるの」

 

「学校?」

 

「貴方やスレッタみたいな子が勉強するところよ」

 

 学校と聞いて、前にスレッタに言われたことを思い出す。確か地球にあって、沢山人がいるところだ。

 

「何で?」

 

「あの子にもっと勉強して欲しいからよ。ここじゃ限界があるしね。それに勉強して知識を蓄えて視野を広げたら、今まで出来なかったことが出来るようにもなるわ」

 

 それは三日月にも経験がある。スレッタに勉強を教わったおかげで、しっかりと文字が読めるようになったし、計算も出来るようになった。

 いつも採掘作業終わりに書いている日報が速く書けるようになったのも、スレッタから勉強を教えてもらったからだろう。

 

「それはスレッタが決めることじゃないの?」

 

 だがそれは、スレッタ本人が決めることだと三日月は思う。いくら母親だからと言って、何でもかんでも決めるのは違う。

 

「勿論スレッタが決めることよ。でも、あの子は行くわ」

 

 まるでスレッタは間違いなくそう言うと確信しているかのように、プロスペラは言う。

 

「けれど仮に学校に行っても、世間知らずのあの子だけじゃ不安なのよ。もしかすると、危ないことに巻き込まれたりするかもしれないし」

 

「学校って危ないの?」

 

「スレッタが行くことになるかもしれない学校は、ちょっとだけ危ないわね」

 

 もしかするとその学校は、窓にカラースプレーで落書きがされ、教師が授業をしても誰も聞かず、通路で生徒がホバーバイクを乗り回し、毎日どこかで誰かが喧嘩をしている学校なのだろうか。前にスレッタに借りて読んだ古いコミックに、そんなのがあった。

 

「……だからさっきの話?」

 

「ええ。三日月くんには、学校でスレッタを守って欲しいの。それにもし三日月くんがスレッタと一緒に学校に行ってくれるってなったら、あの子も私も安心できるわ。誰も知らない場所に1人は、とっても寂しいしね」

 

 確かにそうだ。実際、三日月がスレッタと初めて出会った時、スレッタは泣いていた。誰も頼れる人がいないのは、とてもとても寂しく悲しい。

 

「もしも三日月くんがスレッタと一緒に学校に行ってくれるっていうのなら、私があのバルバトスを貴方に合わせた状態に調整するわ。勿論、お金なんて取らないわよ?」

 

 プロスペラの問いに、考える三日月。もしも本当に、スレッタが地球圏の学校に行ってしまえば、簡単には会えないだろう。地球圏はとっても遠いから。

 そんな遠い場所でスレッタが危険な目にあったらと思うと、なんか嫌だ。そんな時に自分が近くにいられなくて、守れなかったと思うと、なんか嫌だ。

 

(でもこいつ、何か隠してるよね?)

 

 だがそれでも、三日月はプロスペラが信用できない。何かを隠していると感じる。それが何かはわからないが、良くないことのような気がする。

 

「どうかお願いできない?あの子の為に…」

 

 だがそんな三日月に、プロスペラは頭を下げてお願いをする。

 

「……わかった。でもスレッタが行くって言うならだけどいい?」

 

「ええ。勿論」

 

 結果として、三日月はプロスペラの提案を飲んだ。正直、プロスペラのことは未だに信用できない。スレッタを守って欲しいというのは本心みたいだが、他に何か隠し事をしている気がしてならない。勘がそう囁くのだ。

 しかしスレッタが危ない目に遭った時、守れない方が嫌だ。なのでプロスペラのことを警戒しながらも、三日月は守れる力を手にすることにした。

 

(スレッタから教わった言葉でもあったな。確か、備えあれば敵無しって)

 

 スレッタに教わった言葉に1つにそんなのがあった。そういう意味では、渡りに船とも言えるだろう。

 

「ただ、1つだけやってもらわないといけないことがあるのよ」

 

「ん?」

 

 しかし、これで話は終わらないようだ。

 

「三日月くんのバルバトス、勿論私の方でしっかりと調整と修理と改修をするけど、それだけだと、三日月くんはバルバトスの力を100%引き出せないのよね」

 

「訓練すればいいんじゃないの?」

 

「それじゃダメなの。あのバルバトスには、ある特別なシステムが組み込まれているの」

 

「システム?」

 

「そう。それがきちんと機能しないと、バルバトスは力を発揮できないの」

 

 初耳である。何度かシミュレーションでバルバトスを動かしたことはあるが、そんなものあるとは知らなかった。

 

「それでね、三日月くんにはそのシステムに適合するよう手術を受けて欲しいの」

 

「手術?」

 

「ええ。その手術を受けてもらえたら、三日月くんはバルバトスをしっかりと使えるようになるわ。まぁ、操縦訓練も必要だけどね。勿論失敗なんてさせない。必ず成功するよう私が責任を持つわ。娘のボーイフレンドを傷つけたなんて嫌だしね」

 

 やはり胡散臭い女だと、三日月は思う。その手術がどういうものかは知らないが、モビルスーツを動かすのに手術が必要なんて、そんな話聞いたことがない。

 

(まぁでも、いっか)

 

 しかしバルバトスが特別というのなら、そういう事もあるのかもしれない。手術なんてしたことないが、必要なら仕方が無い。

 それにもしこれでプロスペラが自分に何かを仕込むつもりだったら、その時はその時だ。後でお返ししてやればいい。

 

「わかった。じゃあやるよ」

 

「ふふ。ありがとう」

 

 こうして三日月は、バルバトスを扱える力を手にする為、プロスペラの言う手術を受けることにした。全ては今以上に、スレッタを守れるようになるために。

 

「ところで何て名前なの?そのシステムって」

 

 その三日月の質問に、プロスペラは仮面越しに笑みを浮かべて答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「阿頼耶識システムよ」

 

 

 

 

 




 やっぱバルバトスには阿頼耶識システムだよね。

 そしてプロスペラは「これ敵になったらマズイかも。そうだ!味方にしよう!」←大体こんな感じです。

 あとこれを書いていら、急にHGバルバトスが欲しくなったので模型店に行ってきました。

 どこにも売ってませんでした…。

 うん、もう7年は前だしね。そりゃ無いよね。でもエアリアルは買えたので、まぁ満足。

 あと、読んでて矛盾点やおかしいところがあったら言って下さい。修正しますので。

スレッタと三日月の関係は?

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