悪魔と魔女の物語   作:ゾキラファス

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 やぁ、2カ月ぶり。
 最近仕事が忙しかったり、ちょっと嫌な事があったり、中々思うようにモチベが出なかったりですっかり遅くなってしまいました。
 これ、今年中にどこまで行けるかな。でも失踪だけはしないつもりですので、これからもよろしくお願いします。

 ところで、ウルズハントのアニメ情報きましたね。楽しみだ。



 そんな訳でバルバトス無双、はっじまるよ~。




プラント・クエタ 4

 

 

 

 

 

 時間は少しだけさかのぼる。

 

 輸送船 カシュタンカ 倉庫

 

「なぁビトー。俺達、どうなるんだろうな?」

 

「わからねぇよアストン…でも、やっぱり始末されたり?」

 

 20人程いた株式会社アローズの社員達は、大人も子供もまとめて船にある広めの倉庫に押し込められていた。そして全員が、暗い顔をしている。

 なんせ今この船を占領しているのは、生粋のテロリスト。彼らはこの船を使ってプラント・クエタで何かをしているらしいが、その何かが終わったら自分達はどうなるのだろうと不安になるからだ。普通に考えたら、口封じとして始末されるのがオチだろう。考えだすと、不安で仕方が無い。

 

「大丈夫だ!何があろうと私が皆を守る!!だから心配するな!!」

 

「で、でも社長…俺達、元ヒューマンデブリだし…」

 

「そんな事関係無い!!今はうちの大事な社員だ!!だからそんな事を言うんじゃない!!最期まで希望を捨てるな!!」

 

「は、はい」

 

 そんな不安そうにしている社員達に、社長は自分も不安な気持ちであるのを隠しながら皆を勇気づける。実際彼は、例え自分が死んでも社員を、最低でも子供達だけは逃がそうと考えていた。一応銃の扱いは知っているし、隙を見て脱出用ランチに乗り込めばプラント・クエタまで逃げ切れる筈だ。

 最も、今行動しても上手く行くわけないとも思っているので、今はまだ大人しくしておくつもりだが。

 

(本当、すげー良い社長だよな…)

 

 そんな社長を、ボブことグエルは素直に尊敬する。社員を大切にできる社長。これは企業で最も信頼できる社長である。もし彼がジェターク社に融資のお願いでもしてきたらグエルは絶対にその融資を断らないだろう。

 

『うわあああ!?』

 

 その時、船が大きく揺れた。恐らくだが、船が攻撃を受けたのだろう。爆発音がしていない辺り、直撃はしていないようだが。

 

「お、おい!ドアが開いたぞ!」

 

「社長!今すぐ逃げましょう!」

 

 でも今の衝撃で、閉じ込められていた倉庫のドアが開く。今なら逃げ切れる筈だ。さっさとここから逃げようと思い、社員達は倉庫から出て行こうとする。

 

「だめだ!艦内にはまだ沢山のテロリストがいるんだぞ!今逃げても見つかって撃たれるだけだ!!」

 

「で、でも」

 

「今はまだ待つんだ!大丈夫、必ずチャンスは来る!!」

 

 社長の言う通り、この船は未だに占領されている。そんな中を20人近い人間が動けば、どうあっても目立つ。そしてテロリストに見つかれば、撃たれてお終いだ。

 それに例え運よく脱出用のランチに乗り込めたとしても、テロリストのモビルスーツに撃ち落とされて終わりだろう。だから、今はまだ耐えるしかない。

 

「おい、聞いたか?例のガンダムの話」

 

「ああ、噂のアスティカシアのガンダムだろ?ソフィが報告していた」

 

 倉庫の中で社長が社員を説得していると、フォルドの夜明けのメンバーからそんな話が聞こえた。

 

(プラント・クエタに、スレッタ・マーキュリーがいるのか?)

 

 その話を聞いたグエルは、居ても立っても居られなくなった。そして直ぐ傍にあったヘルメットを手に取ると、閉じ込められていた倉庫から出ていく。

 

「お、おいボブ!?」

 

 突然倉庫から出ていくグエルを、社長は止めようとする。しかし、グエルは止まる気は無い。

 

「社長!2か月だけでしたが、本当にお世話になりました!この恩は、いつか絶対に返します!!」

 

「待て!ボブ!おい!!」

 

 社長の静止の言葉を聞かず、グエルはそのままモビルスーツデッキに向う。そしてフォルドの夜明けのモビルスーツパイロットがデスルターの武器の換装作業をしている隙に、グエルはデスルターに乗り込んでカシュタンカから出撃した。

 

(くっそ!俺何してんだろうな!!)

 

 デスルターに乗って出撃したグエルは、少しだけ冷静になり、自分のした事に驚く。プラント・クエタには、スレッタがいるかもしれない。そして今、プラント・クエタは絶賛攻撃にさらされている。もしかすると、そのせいでスレッタが死んでしまうかもしれない。

 だからこうしてデスルターに乗って出撃したはいいが、そもそもスレッタがプラント・クエタの何処にいるのかわからないし、今自分はテロリストが使用しているモビルスーツであるデスルターに乗っている。このままプラント・クエタに行っても、防衛部隊に迎撃されるかもしれない。こうして考えると、先ほどまでの自分はあまりに考え無しだった。

 

「くっ!?」

 

 そしてグエルは、懸念した通り攻撃を受けてしまう。攻撃をしてきたのは、ジェターク社のモビルスーツであるディランザだ。

 

「待て!攻撃するな!俺は敵じゃない!!味方だ!!」

 

 グエルは必死になって通信機を使って叫ぶが、ディランザは攻撃をやめない。恐らく、コンジャムポッドのせいで相互通信が出来ないせいだ。このままでは、グエルはテロリストとして処理されてしまう。

 

(い、いやだ…!死ねない…!こんなとこで死にたくない…!!)

 

 学園の決闘と違い、出力は実戦仕様にしているビーム攻撃。当然、当たれば死ぬ。

思わず人生で初めて経験する実戦に、グエルは恐怖し手足がすくむ。

 おまけに相手は、プラント・クエタを守っている守備部隊のモビルスーツ。つまり、職務を全うしているだけの善人だ。とてもじゃないが、そんな人を撃つなんて出来ない。

 

『逃げたらひとつ、進めばふたつ』

 

 その時、グエルの脳裏にスレッタが言っていた言葉が浮かぶ。このまま逃げ続ければ、自分が死ぬことは無いかもしれない。

 でもそれは、スレッタを助ける事が出来ないという事になる。だが勇気を出して何とか相手を無力化すれば、自分は助かるしスレッタを助けに行く事もできる。

 

 何より、ここで死ぬなんて絶対に出来ない。

 

「俺はまだ、あいつに…スレッタ・マーキュリーに進めていない!!」

 

 何故ならグエルは、まだスレッタに1歩も進んでいないのだから。

 

(狙いは、横腹ぁっ!!)

 

 そしてグエルは、こちらを攻撃してきたディランザの攻撃を必死に避けて、デスルターに装備されているヒートナイフを、ディランザのコックピット下の左腹部に突き刺す。するとディランザから小規模な爆発が起き、ディランザは動きを止める。

 これなら相手のパイロットを殺す事無く、モビルスーツのみを行動不能にできる。ジェターク社の御曹司だったのでディランザの内部構造にも詳しく、元ホルダーだからこそ出来た芸当だ。

 

「はぁ…はぁ…や、やった…やったぞ…」

 

 必死になってやった事だが、なんとかなった。スレッタの言っていた通り、進めばより良い結果を得られる事になり、グエルは安堵する。

 

『ぐ…』

 

「っ通信が!?」

 

 すると、デスルターのコックピット内に、ディランザのパイロットの声らしき声が聞こえた。接触回線のおかげだ。

 

「俺はジェターク社CEOのヴィム・ジェタークの息子のグエル・ジェタークだ!敵じゃない!!これ以上攻撃しないでくれ!!」

 

 この期を逃す訳にはいかないとグエルは思う。相手の戦闘能力を奪ったとはいえ、またいつ反撃されるかわからない。だから今ここで、自分は敵じゃないと相手に理解させないといけない。

 

 

 

『グエル、なのか?』

 

「……え?」

 

『何だ…そんなところに、いたのか…』

 

 

 

 しかしその声を聴いたグエルは、頭の中が真っ白になる。そしてデスルターのコックピットモニターに映し出される、ディランザのパイロット。

 

『全く、心配させて…俺もラウダも、ずっと探してたんだぞ…?』

 

 その人物は、間違いなく自分の父親であるヴィム・ジェタークであった。

 

「な、なんで…?」

 

 グエルは混乱する。何故父がプラント・クエタにいるのか。どうして父が、ディランザに乗っていたのか。何で今父は、口から血を流しているのか。

 

「っまずい!!」

 

 様々な疑問はあるが、そんな事は後だ。今ディランザからは、各所から火花が散り始めている。先程の攻撃が思っていたより深く刺さっていたせいで、ディランザは爆発寸前の状態になっているのだ。このままでは、ディランザは父ヴィムと共に宇宙に散ってしまう。

 

「父さん!今すぐ脱出してくれ!!いや、俺がそっちに行くから!!」

 

 父ヴィムを救うべく、グエルはデスルターのコックピットハッチを開ける。しかしその瞬間、

 

「な!?」

 

 ヴィムの乗るディランザが、グエルの乗るデスルターを突き飛ばしたのだ。

 

『でも、無事で、よかった…』

 

 ヴィムはモニター越しにグエルに呟くと、静かに微笑む。その瞬間、ディランザの腹部が小さく爆発。同時にヴィムは、最後の力を振り絞ってディランザのスラスターを吹かし、グエルのデスルターから一気に距離を取る。

 

「父さん!父さん!!」

 

 グエルが叫びながら手を伸ばすが、当然届かない。

 

 そして、デスルターから十分に距離を取った瞬間、轟音と共にディランザは爆発した。

 

「あ、あああ…」

 

 グエルの眼前に広がるのは、バラバラになったディランザの残骸。あの爆発だ。どうあっても、パイロットは助からない。

 

「ああ、ああああ…」

 

 その原因を作ったのは、間違いなく自分だ。今自分が反撃をしたせいで、父であるヴィムは死んだ。

 

 いや違う。殺されたのだ。ほかならぬ自分によって。

 

 実の親殺しというあまりにも重い十字架。その逃れようの無い事実が、グエルの背中に背負われた瞬間、グエル・ジェタークは決壊した。

 

「あああああああああああああああ!?」

 

 グエルは両手で自分の顔を覆いながら、未だに争っている宇宙で叫ぶ。ただひたすらに叫ぶ。涙を流しながら、ひたすらに叫び続ける。遠くで光が瞬いている間、グエルはずっと叫び続けた。

 

 それを止める人は、どこにもいない。

 

 

 

 

 

「これで10隻目」

 

 ノレアはソーンで、累計10隻目の宇宙船を破壊する。ここでスペーシアンは、1人たりとも逃がさないと言わんばかりに破壊する。

 

(にしても、もう碌に抵抗も無いな。いくらプリンスによって主力の守備艦隊が全部出払っているって言っても、ここまで抵抗しないもの?)

 

 ノレアは停泊している宇宙船を破壊しながら、プラント・クエタの守りに疑問を持つ。確かにプリンスの手引きによって、本来ならいる筈の守備艦隊がいないが、それにしても歯ごたえが無さすぎる。今ではもう、モビルスーツによる抵抗が全く無い。恐らく全滅したのだろうが、それにしたって早すぎる。普通なら、もっと頑強に抵抗する筈だ。

 

(いや、そこまでおかしくも無いか。今までずっと安全な場所で高みの見物していたような連中だ。実戦経験も碌に無いだろうし、弱くて当然でしょ)

 

 だけど、そう考えればそれほどおかしくも無い。事実、先ほどまで戦っていたプラント・クエタの守備隊は、明らかに練度が低かった。動きがぎこちなく、小隊との連携もまるで取れていないモビルスーツもいた。

 おまけにこちらが実弾兵器を使用していると知ると、感情に任せて攻撃もしてきたりもした。戦場で感情に任せて行動すると、正常な判断を失いあっという間に死んでいく。それすら理解できていないパイロットが多い事多い事。そりゃ死んで当然だ。

 

(本当に、皆殺しにしてやりたい…)

 

 自分達は毎日生きるのに必死だ。食事もまともに食べられず、医療品だって常に不足。おかげで、薬さえあれば助かる命が助からないなんて当たり前。寝る為のベッドはボロボロだし、人によっては地べたで寝る事もある。

 そして大人になって仕事を手にしたとしても、スペーシアンの気分次第で簡単にクビになるし、仮に真っ当で安全な仕事を手にしてまともな暮らしをしていたとしても、ある日突然戦争シェアリングの被害により、モビルスーツの戦闘に巻き込まれて死ぬ。大半のアーシアンが、こんな感じだ。

 

 対してスペーシアンは、戦争なんてまず起きない快適な空間で安心安全なコロニーやプラントで生活をし、それでいてとても安心安全な真っ当な仕事も手に入れている。

 好きなものを好きなだけ食べられて、ふかふかのベッドで好きな時間に眠れて、温かいシャワーも浴びれて、綺麗な家に住める。戦争シェアリングによる被害なんて出ず、命の危険も無い。

 こんなの、あまりに不公平だ。ムカついてしょうがない。こうなったらもう、兎に角片っ端から停泊している宇宙船を破壊して、1人でも多くのスペーシアンを殺していこう。そうすれば、多少は気分がすっきりするだろうし。

 

「ん?」

 

 そしてノレアが停泊している宇宙船を更に破壊するべくソーンの武器の照準を合わせていると、実行部隊の指揮をしているオルコットから通信が入る。もしかすると、とうとうデリング・レンブランを暗殺できたのかもしれないと思い、ノレアは通信に出る。

 

「オルコット?どうかした?」

 

『ノレア!今すぐソフィの援護に向え!!』

 

「え?」

 

 オルコットからの通信に出たが、とてもデリング・レンブランの暗殺に成功したとは思えない緊迫した声が聞こえる。

 

『このままだと、ソフィが殺される!!』

 

「っ!!」

 

 その言葉を聞いたノレアは、直ぐにソフィの援護に向うべくその場から飛び立つ。何があったか知らないが、あのソフィが殺されかけるという事は相当にマズイ状況だろう。一刻も早く、ソフィの援護に向わなければ。

 

 

 

「た、助かったのか…?」

 

「よ、よかったぁ…」

 

 先程まで、ノレアのソーンに攻撃されそうになっていた地球寮所属艦ミデア。そのブリッジには、地球寮の面々が冷や汗をかいた状態で勢ぞろいしていた。三日月と離れ離れになった後、全員ノーマルスーツを着てミデアに乗り込んだはいいが、流石にこんな状況で船を出すなんて出来ない。下手に出航すればそこを狙い撃ちされるかもだし、何よりスレッタ、ミオリネ、三日月を置いて自分達だけ逃げるなんて出来ないからだ。

 でもせめて何時でも逃げれるようにと出航準備だけしていたが、そこにテロリストのモビルスーツがやってきて、ミデアに向って銃を構えてきた。全員もうダメだと思ったのだが、何故かモビルスーツが突然構えていた銃を下ろし、そのままどこかに飛び立っていった。本当に、命拾いをした。

 

「皆!安心してないで早くシェルターに行こう!!」

 

「マルタンの言う通りだ!ここは危ない!直ぐに避難するぞ!!」

 

 だが安心はしていられない。いつまたテロリストの攻撃がくるとも限らない。ならばマルタンと昭弘の言う通り、直ぐにシェルターに避難しよう。

 

「くっそ!あーしのデミトレがあれば!!」

 

「いや何言ってんだチュチュ!」

 

「そうだぜ!いくらお前が強くても相手はマジのテロリストだ!相手になんねーよ!!」

 

 移動中、チュチュが握り拳を作りながら唇をかむが、オジェロとヌーノは直ぐに宥める。

なんせここを襲っているのは、本物のテロリスト。いくらチュチュが強いと言っても、所詮は実戦経験が無い学生。仮に出撃しても、あっという間に殺されるだろう。

 

「でも三日月は行ってるじゃねぇか!」

 

「それはまぁそうだけどさ!」

 

 でも三日月がバルバトスで出ているのに、自分だけ逃げ隠れするような真似は情けない。しかしあれは言ってしまえば、三日月が皆の静止を無理やり振り切っているせいだ。可能であれば、今ここにいない三日月にそんな真似してほしく無いというのが本音である。

 だって三日月は、地球寮の大切な仲間なのだから。

 

「3人共!言い争ってないで早く移動して!!」

 

 そんな3人に、マルタンは直ぐに移動するよう言う。そして3人共、直ぐに移動を開始した。

 

「……」

 

 そんな中、ニカはずっと黙ったままだった。三日月がいなくなってから、どうしてもいやな予感が消えない。今三日月は、もう後戻りできない手遅れな事をしてしまっているんじゃないかと不安になる。あの時、爆発の衝撃で三日月の手を離してしまった事を、心底後悔している。

 

(三日月くん…)

 

 これまでの人生経験から神様なんて全く信じていないが、ニカは祈らずにはいられない。

 

(どうか、どうか無事でいて…)

 

 自分がこんな事祈れた義理は無いが、ニカは心の中でずっと三日月の無事を祈る。その祈りが届くかどうかは、正に神のみぞ知るだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぐっ!?』

 

 ソフィは、ウルのビームガトリングを目標に向けて攻撃するが、まるで当たらない。これはソフィの射撃の腕が下手だからではなく、単に相手が異常に素早いせいである。

 

『ああもう!全然当たらない!!なにその速さ!?決闘の時と全然違うじゃん!!見た目も前と比べてなんかゴテゴテしてるしさ!!あと顔は前の方がハンサムで好きだったなー!!』

 

 作戦開始前まではウキウキしていたソフィだったが、今はもうあまりそんな気分じゃない。むしろ、早いところ目標を始末しないといけないと少し焦り出している。

 

 すると、目標が突然まっすぐにこちらに向って突っ込んできた。

 

『何?気でもおかしくしちゃった~?』

 

 これなら問題なく攻撃が当たる。ソフィはビームガトリングをまっすぐに構えて、目標に一斉射した。

 

『な!?』

 

「効かないって」

 

 だがそんな攻撃、目標であるバルバトスに効果がある訳無い。なんせナノラミネートアーマーは、ビーム攻撃をほぼ完璧に弾くのだ。いくらウルのビームガトリングが高威力だとしても、ビームである以上効果は無い。

 

『ちっ!話には聞いてたけど、マジで効かないんだね!!』

 

 確かにソフィも話には聞いていたが、ここまで完璧に弾くとは思っていなかった。ていうかこれ、卑怯すぎる。こっちの攻撃がまるで効かないとか、とんでもないクソゲーだ。これがゲームだったら、速攻で修正が入るだろう。

 

『だったら!!』

 

 突っ込んでくるバルバトスの腕部ビーム砲の攻撃を上に避けるソフィ。そしてバルバトスの背中に向けて、ビームガトリングを構える。いくらビームが効かないとはいえ、このまま背後から至近距離で攻撃をすれば、流石に無傷とはいかないだろう。

 けれど引き金を引こうとしたその瞬間、

 

『っ!?』

 

「あ、避けられた」

 

 バルバトスの背後にあった剣のような突起物、テイルブレードが突然ウルに向って伸びたのだ。突然の攻撃ではあったが、ソフィはこれを避ける事が出来た。それが叶ったのは、偏にソフィの腕前とウルの性能のおかげだろう。

 

『なっ!?』

 

 しかし、それも束の間。テイルブレードは真っ直ぐに伸びたかと思えば、見た事の無い軌道をして、突然ウルの背後に回り込んできた。

 

『がっは!?』

 

「うん、今度は当たった」

 

 そしてウルの左肩に命中し、ウルの背中にある背部フェーズドアレイキャノンを貫いた。その衝撃で、ウルは態勢を大きく崩す。ウルが態勢を崩すと同時に、バルバトスが振り返る。その手には、見た事無いくらい大きな鉄の塊である超大型メイス。バルバトスはそれを大きく振り上げて、ウルを殺すべく超大型メイスを振り下ろす。

 

『っまだぁ!!』

 

 だがここでやられる程、ソフィも弱くない。バルバトスの攻撃を避けるべく、スラスターを吹かして一気に後退。更にバルバトスに向けてビームガトリングを斉射する。その攻撃のほとんどは、バルバトスにしっかりと命中する。

 

『あーもう!何それズルイ!!本当にズルイ!!全然効かないじゃん!!なんか普通に萎えるんだけどーー!!』

 

 でもやはり、効果はまるで無い。流石にズルすぎるだろうと、ソフィは不満を口にする。

 

『ソフィ!援護する!!』

 

 その時、ソフィの仲間であるフォルドの夜明けのモビルスーツ部隊が、バルバトスに対してデスルターのアサルトライフルで攻撃を開始。

 

「邪魔」

 

 だがその瞬間、再びバルバトスの背中のテイルブレードが伸びて、

 

『がっ!?』

 

 そのまま、デスルターを貫いたのだった。更にテイルブレードは、デスルターを突き刺したまま大きく動き、

 

『よ、避けろぉぉぉ!!』

 

『うわあああ!?』

 

 近くにいた別のデスルターにぶつける。すると2機のデスルターは、そのまま爆発。パイロットも脱出できずに死亡した。

 

「先ずは2機」

 

 人生で初めて人を殺したというのに、三日月の心に特に変化は見られない。良心の呵責とか、罪悪感とかがまるで沸いてこない。あるのは、ただ敵を殺したなという感情だけだ。

 

「じゃあ、今度こそ」

 

『くっ!』

 

 でも、今はむしろそれで良い。だって今大事なのは、目の前にいるエアリアルと同タイプのモビルスーツ、ガンダムを殺す事なのだから。そうすれば、プラント・クエタにいるスレッタ達を助ける事が出来る。

 そして三日月は、バルバトスのスラスターを一気に吹かし、ウルに近接攻撃を開始。

 

 先ずは超大型メイスを、ウルに向けて横に思いっきり薙ぎ払うように振るう。ウルはこれを避けるが、背後にあの音と共にテイルブレードの攻撃が迫る。

 

『まっず!?』

 

 ウルに乗るソフィは、テイルブレードの攻撃を避ける。だがそこに、今度はバルバトスの腕部ビーム砲による攻撃がやってきた。それも避ける事に成功したソフィだが、またあの金属が収縮するような甲高い音が聞こえてゾッとする。

 

『あーもう!またそれ!?本当に面倒くさい!!でも、もう慣れた!!

 

 しかしソフィ、背後からやってきたその攻撃をまた避ける事に成功。確かに1撃でも食らえばマズイ攻撃ではあるが、攻撃そのものはGUNDビットとそう変わらない。そもそもGUNDビットによる攻撃は、多いと10以上もあるが、バルバトスのテイルブレードは背中のひとつだけ。

 おまけにビームも撃って来ない近接特化の攻撃だ。これなら、目の前のバルバトスとそのテイルブレードの2つにさえ気を付けていれば問題無い。つまり、慣れれば避ける事はたやすいのだ。

 

 だがテイルブレードには、GUNDビットと違う点がひとつある。

 

『なっ!?』

 

「捕まえた」

 

 それは、特殊粘性合金製のワイヤーで繋がれているという点。そして今三日月は、テイルブレードのワイヤーをウルの足に絡ませたのだ。そのまま三日月は、バルバトスのテイルブレードを思いっきり振って、ウルをプラント・クエタの岩石部分の外壁に叩きつける。ここならば、間違っても施設内にいる人間を巻き込まないだろう。

 

『かはっ!?』

 

 強い衝撃が、ソフィを襲う。一瞬だけ意識が飛び、動きが完全に止まるその僅かな隙を、三日月は逃さない。

 

「これでとどめだ」

 

 超大型メイスを、まるで中世の槍騎兵のランスのように前に構えて、ウルに突撃を開始。狙いはバッチリで、遮蔽物も無い。これなら、ウルを確実に破壊できる。

 

『させるかぁ!!』

 

「!?」

 

 だがウルにとどめをさそうとした時、横からオレンジ色のモビルスーツが割って入ってきた。フォルドの夜明けと共にプラント・クエタを襲っている夜明けの地平線団団長、サンドバルのユーゴーだ。

 彼はユーゴーに装備されている近接武器の2振りの円月刀を使い、バルバトスの攻撃を防いでソフィを守ったのだ。

 

『おい嬢ちゃん!まだ生きてるか!?』

 

『何とか、ね…でも頭くらくらして吐きそう…あと背中めっちゃ痛い…』

 

『生きている証拠だな!よしお前ら!今だ!!』

 

 ソフィの無事を確認すると、サンドバルは部下に命令を出してバルバトスを攻撃させる。命令を聞いた4人の部下は、バルバトスに対して実弾攻撃を開始。

 

「あっぶな」

 

 その攻撃を、バルバトスはユーゴーを蹴ってから上に避ける。そして攻撃目標を、動けなくなっているウルではなく、今自分に攻撃をしてきているユーゴー隊に変更。スラスターを吹かし、ジグザグに動きながら目標を定める。

 

『くっそ!なんて速さだあいつ!!』

 

『いいから撃ち続けろ!!』

 

 ソフィと同じく撃ちまくるが、誰も当たらない。そんな攻撃を避けながら三日月は1機のユーゴーに接近し、

 

『だっ!?』

 

 バルバトスの両腕の爪装備された新しい武器のひとつである左腕のレクスネイルを、コックピットに突き刺した。当然、乗っていたパイロットはこれで絶命している。

 

『お前ぇぇぇ!!』

 

 共に死線をくぐり抜けてきた仲間を殺された事に激高し、バルバトスに接近しながら攻撃を開始する1機のユーゴー。だがそんなユーゴーに対し、三日月は左のレクスネイルに突き刺さったユーゴーで攻撃を防御。

 

『き、貴様っ!』

 

 仲間を撃ってしまった事に一瞬だけ動揺したユーゴーに、今度は防御に使用したユーゴーをレクスネイルから取り外すと、両足で蹴りつけて、ユーゴーへと当てるバルバトス。

 

『ぐあ!?』

 

 蹴りつけられた方のユーゴーは、その衝撃で動きを止める。そしてその隙に、三日月は超大型メイスを振り上げて、それを思いっきり振り下ろす。ユーゴーは2機共原型がわからないくらいにひしゃげて、爆散した。

 

「これで4機目。さて次だ」

 

 4機のテロリストのモビルスーツを破壊したが、まだ安心は出来ない。だってプラント・クエタを襲っているテロリストは、まだまだ沢山いるのだから。

 

『全機!距離を取って戦え!絶対に近づくな!』

 

『聞こえるなサンドバル!こっちからデスルター15機を援軍として回す!そいつはなんとしてでも破壊しろ!!』

 

『言われなくても!!』

 

 そして安心していないのは、テロリスト達も一緒だ。話には聞いていたし、油断もしていなかった。しかし自分達の想像以上に、バルバトスは化け物だった。これはもう、一瞬も気が抜けない。下手をすると、こっちが全滅するかもしれない。

 最早捕獲は不可能。ならば、ここで絶対に破壊する。こんな化け物をほっておくなんて出来ない。もしこれがベネリット・グループで量産されてしまえば、地球で活動している反スペーシアンの組織を全て一掃されてしまうだろう。そうなれば、アーシアンは本当に終わりだ。だから絶対に、ここでバルバトスは破壊する。

 最も、ベネリット・グループはバルバトスを量産する気は全くないので、その心配は杞憂なのだが。

 

(援軍が来る前に、数減らしとかないとな)

 

 テロリスト達の一部通信を聞いた三日月は、直ぐに行動を開始。どれだけ敵が来ても負ける気はしないが、早く敵を殺しておくべきだろう。そうすれば敵の士気も下がって、援軍を殺す事も簡単になるだろうから。

 

(……ん?)

 

 その時、三日月はふと自分に違和感を持った。これからもっと多くの敵を殺せると決めた瞬間、妙な感覚が自分の中にある事に気が付いた。

 

 上手く言うことが出来ないが、その感覚を他で例えるなら、スレッタと一緒にいる時や、地球寮の皆と一緒に食事をしている時の感情に近い気がする。

 

(何で俺今、そんな風に思ったんだろ?)

 

 まだ危険な場面だというのに、おかしな感覚だ。わからない。どうしてそう思ったのかわからない。

 

(いや、考えるのは後でいいや)

 

 けれど今は、そんな事を考えている場合じゃない。早くこの場にいる全員を殺して、スレッタと多分一緒にいるであろうミオリネを探しにいかないといけないのだ。邪魔者を全員殺して、その後でゆっくり今の妙な感覚について考えればいい。

 

『コックピットだ!コックピットを狙え!!』

 

『了解だ!!』

 

 そんな風に思っていると、夜明けの地平線団のカラフルな2機のユーゴーがライフルで攻撃をしてきた。

 

「当たるかよ」

 

 その攻撃を避けながら、バルバトスのスラスターで一気に加速する三日月。

 

『くそ!何であんなに早く加速できるんだ!?』

 

『そんな事知るか!!いいから撃ちまくれ!!』

 

 2人共、夜明けの地平線団の中では選りすぐりのパイロットだ。射撃の腕前だって、実戦で鍛えてきたおかげでかなり凄い、だが、バルバトスがあまりに速すぎるせいでまるで当たらない。

 

 これは、バルバトスが改修されルプスレクスになっているからというだけでは無い。実は今のバルバトスは、機体の出力を学園の決闘時より1割程上げているのだ。

 本当なら実戦仕様の出力にしたかったのだが、そうした場合エイハブウェーブでプラント・クエタが全滅してしまう可能性があるので、プロスペラがそれを却下した。いくらバルバトスの内部を改造してエイハブウェーブ対策をしているとはいえ、枷を全て外して万が一があっては大変だ。

 しかし決闘出力のままでは、プラント・クエタを襲っているテロリストに勝てないかもしれない。なのでせめて1割増しという状態にしているのだが、たった1割増しでこれである。もしバルバトスが本気を出したら一体どれほどになるのか、考えるだけで恐ろしい。

 

『いたぞ!あれが悪魔のガンダムだ!!』

 

『撃て撃て!ここで仕留めろーー!!』

 

 そして三日月がユーゴー2機の攻撃を避けていると、正面から多くのデスルターがやってきた。先程聞いた、援軍だろう。

 

「よっと」

 

 だが三日月は、先ずバルバトスを一瞬で上に移動し、そして一気に加速して先頭にいたデスルターを踏みつけ、更に足に装備しているヒールバンカーを作動させる。

 

『がっ!?』

 

 それを食らったデスルターのパイロットは、そのまま貫かれて死亡。更に三日月はバルバトスを横に振り向かせると同時に、手にしていた超大型メイスをデスルターにぶん投げる。

 こんな質量の化け物みたいな兵器をモロに受けたデスルターは、そのままひしゃげて破壊された。

 

「これで6、いや8機」

 

 更に三日月はテイルブレードを起動し、背後にいたデスルター2機のコックピットを纏めて切り裂く。

 

『何だよ、何なんだよこの化け物は!?』

 

『落ち着け!!すぐにノレアも来る!それまで持ちこたえるんだ!!』

 

『距離だ!兎に角距離を取って戦え!!』

 

『距離を取れって言われてもよぉ!!』

 

 あまりに一方的な戦闘に、2大テロ組織のメンバーは動揺し始める。そしてその隙を逃さず、三日月はバルバトスを操作し、投げつけた超大型メイスを再び手に持って、デスルターの群れに突っ込んでいく。

 

『く、来るなぁぁぁぁ!!!』

 

 半狂乱になりながら、1機のデスルターが攻撃を開始。それと同時に、周りにいたデスルターもバルバトスに集中砲火を食らわせる。その攻撃を、バルバトスは避ける事なく受けた。

 いくらバルバトスが化け物のような防御力を持っていても、それはビームに対してだけの筈。これだけの実弾攻撃を食らえば、無事では済まないだろう。

 

 しかし、

 

『な、なんでだ!?何でこれだけの実弾攻撃食らって、こいつまともに傷すらつかないんだよ!?』

 

 その集中砲火を食らっても、バルバトスは無傷であった。これはナノラミネートアーマーが、実弾兵器にも非常に強い耐性を持っているからである。並大抵の実弾兵器では、碌にダメージを与える事なんて出来ない。

 バルバトスにダメージを与えるなら、より多くの重火器で集中砲火をするか、バルバトスがその手に持っている超大型メイス並の質量攻撃をするしかないのだ。

 そしてそんな事を知らないフォルドの夜明けのメンバーに、悪魔が襲い掛かる。

 

「そらっ」

 

『あが!?』

 

『ぐぎゃっ!?』

 

 デスルターの群れに突っ込んだバルバトスは、そのまま思いっきり超大型メイスを振るう。更に背中のテイルブレードも、まるで薙ぎ払うように横一閃に振るう。

 

 このたった2回の攻撃で、デスルターが4機も破壊されてしまった。

 

「これでえっと、12機かな」

 

 初陣で既に12機の撃墜スコア。軍にいれば、間違いなくエースとして称えられるだろうスコアだ。そして敵にとっては、絶望でしかない。

 

『どうなってんだよこれはあああ!!』

 

 デスルターのパイロットの1人が、思わず大声で叫ぶ。入念な作戦、潤沢な戦力、切り札である2機のガンダム。これだけあれば、今回の作戦は間違いなく成功する筈だった。

 例えデリング・レンブランを暗殺できなくても、憎きスペーシアンを沢山殺せて、恨みを晴らす事が出来る筈だった。実際ほんの10分までまで、プラント・クエタのスペーシアンは狩られる獲物のように追い詰められた。

 

 しかし、今では自分達が追い詰められている。

 

 たった1機。たった1機のモビルスーツによって、戦況は覆りつつある。このままでは、デリング暗殺どころではなくなる。下手をすると、組織そのものが壊滅するかもしれない。そうなってしまえば、誰がスペーシアンに正義の鉄槌をくだすというのか。既に作戦は失敗したも同然だし、ここは撤退するべきかもしれない。

 

「まだまだいるし、もっと殺しとかないと」

 

 だが、三日月はこの場にいる全員逃がすつもりは無い。1機でも逃がせば、プラント・クエタにいるスレッタや地球寮の皆に危害が及ぶかもしれない。

 だから、全員殺す。1人たりとも逃がさない。それが、スレッタや皆を守る事に繋がるのだから。

 

『これ以上はやらせんぞぉぉぉ!!』

 

『死ねスペーシアン!!』

 

「!?」

 

 その時、バルバトスに攻撃をしてくる2機のモビルスーツが現れる。夜明けの地平線団団長、サンドバルが搭乗するユーゴーと、ノレアが乗るソーンだ。

 サンドバルのユーゴーは、両手に持っている円月刀でバルバトスを攻撃し、ノレアのソーンはビームディフューズガンでバルバトスを攻撃。

 だがバルバトスはノレアの攻撃を避けると、超大型メイスでユーゴーの攻撃を防御。そこから更にユーゴーを押しのけようとする。

 

『ぐっ!?押し負ける…!』

 

 サンドバルのユーゴーは、近接戦に特化したカスタムがされているので、通常のユーゴーよりもパワーがある。なのに、押し負けそうになっている。だが、これでいい。

 

『今なら!!』

 

 サンドバルのユーゴーがバルバトスを足止めしている隙に、ノレアのソーンがバルバトスの背後にまわりビームディフューズガンのパワーを充填させ、バルバトスを狙撃しようとする。

 

「撃たせないって」

 

『!?』

 

 だが、ノレアが撃とうとした瞬間、テイルブレードが高速でソーンを貫こうと伸びてきた。ノレアはそれをビームディフューズガンで防御し、致命の1撃を避ける事に成功。だがこれで、ビームディフューズガンはもう使い物にならない。

 

『くそ!!』

 

 ノレアは直ぐにビームディフューズガンを投げ捨てる。それと同時に、ビームディフューズガンは爆発を起こした。ここに来るまでに、オルコットから話を聞いていたので防御できたが、それが無ければ今頃自分は殺されていただろう。

 

『私の事も忘れないでよね!!』

 

 そこに今度は、復活したソフィがやってきた。彼女はウルのビームガトリングをバルバトス目掛けて斉射しながら、一気に突っ込んでくる。

 

「どけ」

 

『ぐお!?』

 

 三日月はバルバトスでユーゴーを蹴り飛ばし、ウルのビームガトリングの攻撃を腕で防御。それと同時に、ウルに接近する。

 

『だったらこれ!!』

 

 そんなバルバトスに対して、ソフィはウルのビームサーベルを手に持って攻撃。

 

『なっ!?』

 

 だが、バルバトスはその攻撃を一瞬で下に動いて避ける。

 

『まず!?』

 

『ソフィ!!』

 

 そしてウルの下方向からコックピットに対して、レクスネイルを突き立てようとする。

 

『やらせんと言っただろう!!』

 

「くっ!?」

 

 しかしそれを、サンドバルのユーゴーがバルバトスに体当たりをして阻止。そのせいで、バルバトスはくるくると宇宙を回りながら態勢を崩してしまう。

 

『これで終わりだ悪魔め!!宇宙に散れぇぇぇーー!!』

 

 サンドバルのユーゴーが円月刀を振り上げて、バルバトス目掛けて振り下ろす。

 

『何!?』

 

 しかし、その前にバルバトスがユーゴーの腕に向ってテイルブレードを射出し、攻撃をキャンセルさせる。更にそこからテイルブレードは、円を書くようにユーゴーの背後に回り込んで、ユーゴーを貫こうとした。

 

『団長ーーー!!』

 

『な!?よせ!!』

 

 だがその瞬間、サンドバルの部下の1人がサンドバルを守るべく割って入ってきた。

 

『がっ!?』

 

「13機」

 

 そのまま部下は、モビルスーツごとテイルブレードで貫かれて絶命。サンドバルは助かったが、その代わりに部下が死んだでは話にならない。

 

『くっそ!!』

 

 サンドバルはコックピット内のモニターを思いっきり殴る。自分のせいで、部下が死んだ。団長として、こんなに不甲斐ない事は無い。

 

『ソフィ!ビームガトリングはまだ使える!?』

 

『使えるけど、あいつには効果ないから撃っても意味ないよ!?』

 

『でも撃って!私がビームサーベルでパイロットごと焼き殺すから!!』

 

『了っ解!!』

 

『残った皆も援護して!!』

 

 サンドバルが後悔している中、ソフィとノレアは攻撃を再開。ノレアのソーンがビームサーベルを装備し、ソフィのウルがビームガトリングで援護射撃。

 

『ノレアを援護しろ!!』

 

『あの化け物を落とせぇぇぇ!!』

 

 更に残存戦力も援護を開始。彼らとて、このままやられっぱなしなんてごめん被る。例えここで死んでも、悪魔の肉を切らせて骨を断ってみせる。

 

『やめろお前ら!攻撃するな!!』

 

 現場指揮官であるフォルドの夜明けのオルコットが攻撃をやめさせるよう言うが、誰も聞こうとしない。全員、頭に血が昇っている状態だからだ。

 

「撃ってくるなら、容赦しないよ?」

 

 そして三日月は、その敵に直ぐに反応。ビームサーベルを持って突っ込んできたソーンの攻撃を避けて、思いっきりバルバトスでソーンの横腹に回し蹴りをした。

 

『がはっ!?』

 

 まさか蹴られるなんて思っていなかったノレアは、一瞬意識が飛ぶ。そしてバルバトスは、ソーンにとどめを刺すべく超大型メイスを振り上げる。

 

『ノレア!!』

 

 このままではノレアが殺されると思ったソフィは、ビームガトリングでバルバトスを攻撃。それをバルバトスは、直ぐに腕で胴体を防御しつつ、背中のテイルブレードを起動する。

 

『もうそれは当たらないって!!』

 

 テイルブレードはそのまま一気にソフィ目掛けて向ってくるが、ソフィはその攻撃を避ける。

 

『ぶっ!?』

 

『ぐう!?』

 

 だがそんなソフィに、突然強い衝撃が伝わってきた。実はバルバトスは、テイルブレードを起動したと同時に、ノレアのソーンを手で掴んで、それをウルに向って全力で投げたのだ。

 そしてソフィが気が付いた時には、ノレアのソーンはもう目の前。これは避ける事が出来ず、そのまま2機は激突。その衝撃で、ウルは動きを止めてしまう。

 

『え?嘘…?』

 

 更にここで、絶望的な事が起こった。何と、ウルのコンバットシステムがフリーズしてしまったのである。これではもう、戦う事が出来ない。

 

『ソフィ!!大丈夫!?』

 

『あー、ノレア、マジでマズイ…コンバットシステムがフリーズした…』

 

『はぁ!?』

 

 その言葉に、ノレアも驚く。今のウルは、さっきみたいな動きがもう出来ない。これでは的と変わらない。

 

『マズイ!ソフィを守れ!!』

 

『悪魔め!落ちろぉぉぉ!!』

 

 それを理解した仲間が、バルバトスに攻撃を開始。

 

「うるさいな…もういい加減、黙ってろよ」

 

 だがもう今の三日月にとって、もう誰も敵にはなりえない。直ぐにその場から移動し、先ずは1機のデスルターを左手のレクスネイルでコックピットごと貫く。次にそれを盾にしながら、別のデスルターに向って腕部ビーム砲を連射。ビーム砲を食らったデスルターは、そのまま爆散。左手に刺さったデスルターをその場に放り投げると、今度こそウルとソーンにとどめを刺すべく進撃。

 

『ソフィに手を出すなぁぁぁ!!』

 

「邪魔」

 

『がっ!?』

 

 ソフィを助けるべくバルバトスに突貫したソーンは、バルバトスの超大型メイスを足に食らって吹き飛ばされる。その衝撃で、ソーンの両足が破壊されてしまう。更についでにと言わんばかりに、テイルブレードでソーンの背部フェーズドアレイキャノンも攻撃。これでもう、ソーンも戦う事は出来ない。

 そしてバルバトスは、ソフィのウルをまるで見下ろすような形で取りついて、今度こそとどめを刺すべく超大型メイスを両手でしっかりと持って上に振り上げる。

 

(あ、これは死ぬなー…)

 

 もう反撃の手立てが無い。ウルは動かないし、ノレアのソーンもたった今やられた。仲間も大勢死んでいるから、誰も助けに来れないだろう。

 

(ごめん、ノレア…)

 

 死を悟ったソフィは、そのまま目を瞑ってバルバトスの攻撃を受け入れる。後悔は沢山ある。もっと美味しい料理を食べたかったし、柔らかいベッドで寝たかったし、温かくて清潔なシャワーを浴びたかったし、自分を好きでいてくれる家族も欲しかった。でも、それはもう叶わない。だって自分は、ここで悪魔に殺されるのだから。

 

『うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』

 

『!?』

 

 だがソフィが殺される寸前、バルバトスの横から攻撃を仕掛けるモビルスーツが現れた。

 

 夜明けの地平線団団長、サンドバルのユーゴーだ。

 

 ユーゴーは円月刀をバルバトス目掛けて振り下ろすが、バルバトスはそれを超大型メイスで防御。だがそのせいで、ソフィのウルへの攻撃が中断せざるを得なくなった。そしてその隙に、オルコットのデスルターがソフィのウルを回収する。

 

『全機!今すぐ撤退だ!急げ!!』

 

 そしてオルコットから、全機に対して通信が入る。

 

『既に半数がやられた!もう直ぐプラント・クエタの守備艦隊も戻って来る!これ以上は無理だ!!撤退するぞ!!』

 

 それは、撤退命令。作戦に参加したモビルスーツ27機の内、15機がバルバトスによって撃破された。軍隊で言えば、全滅判定である。

 それに未だにバルバトスに対して有効な手立てがまるでない上に、こちらの切り札であったガンダム2機も既に戦闘能力を失った。もう打つ手がない。このまま戦っても、無駄な死人が増えるだけだ。ならばここは撤退をして、再起を図るしかない。

 

『でもオルコット!施設内にはまだ仲間が!!』

 

『諦めろ!!救出する時間は無い!!』

 

『くっ!!』

 

 ノレアがプラント・クエタ内部に侵入した仲間を気に掛けるが、既に彼らを助ける事は不可能だ。このまま、見捨てる他無い。

 

「逃がすかよ」

 

 だが逃げようにも、まだほぼ無傷のバルバトスが健在だ。バルバトスはサンドバルのユーゴーを突き飛ばすと、撤退を開始しているデスルター達に狙いを定める。とてもじゃないが、このままこちらを逃がしてくれるとは思えない。このまま逃げても、背中から悪魔に食い殺されるだけだ。ここは誰かが、悪魔相手に足止めをしないといけない。そうしないと、全滅してしまう。

 

(だが誰が出来るって言うんだ!?ソフィもノレアも、もう戦えない!他の連中じゃ相手にならない!こうなったら、俺がやるしかないか…!!)

 

 オルコットは覚悟を決める。バルバトスを相手に出来るのは、もう自分くらいだ。武器が心許ないが、せめて2分は稼いでみせる。そうすれば、生き残った味方は撤退できるだろう。

 

『オルコット』

 

『何だサンドバル?』

 

『うちの連中を、頼む』

 

『何?……まさかお前っ!!』

 

 その時、サンドバルから通信が入った。そしてそれはまるで、最後の別れの様な言葉であった。

 

『おおおおおお!!』

 

 サンドバルはバルバトスに肉薄し、円月刀で連続攻撃。バルバトスに一瞬たりとも反撃の隙を与えさせないくらいの凄まじい攻撃だ。その姿はまさに、ここからは誰も通さないと言わんばかりである。

 

「お前、邪魔っだな!」

 

『ここは絶対に通さんぞおおおお!!』

 

 バルバトスもユーゴーに超大型メイスで反撃。だがユーゴーはその攻撃を受け流したり、避けたりしながらバルバトスの相手をする。

 

『団長!!俺達も一緒に!!』

 

 夜明けの地平線団の団員達が、サンドバルを援護するべく銃を構えるが、それをサンドバルは止める。

 

『ダメだ!!お前達は生き残れ!!こいつの相手は、俺しかできん!!』

 

『ですが!!』

 

『お前達じゃ碌に足止めできん!!これ以上、部下を死なせる訳にはいかなんだ!!』

 

 サンドバルは、ここで命の限りバルバトスを足止めして、部下や仲間を逃がす気だ。

つまり、殿である。ユーゴーはデスルターよりパワーがあるし、防御力も上だ。

 何より彼は、その戦闘能力で組織を上へ上へと駆け上がって行った実力者。だからこそ、自分が殿を務めるのが最も合理的だ。

 

(それに例え俺がここで死んでも、組織は残る!!)

 

 万が一に備えて、今回の作戦前に新しい団長の選定も済んでいる。ならば命の限り悪魔の相手をして、味方が離脱するまでの殿を全うしよう。それが、アーシアンの未来に繋がる筈だから。

 

『生き残れ!これは夜明けの地平線団団長、サンドバル・ロイター最後の命令だ!!生き残って、夜明けの地平線団とアーシアンの未来を守れ!!』

 

『っ…ご武運を!あんたの部下で、俺らは幸せでした!!』

 

『そうか!そう言って貰えると嬉しいぜ!早く行け!!』

 

『了解!行くぞお前ら!撤退だ!!』

 

『っ了解だ、兄貴!!』

 

 自分達が尊敬していた団長の最後の命令を、部下達は涙ながらに遂行する。もしここで団長の命令を無視すれば、それは今までの恩を仇で返す事になるし、サンドバルの覚悟に泥を塗る事になる。そんな事、できる訳が無い。だから彼らは、必ずここから生き延びてやると誓う。

 

『すまんサンドバル!この恩は決して忘れん!撤退だ!全員直ちにここから撤退するぞ!!』

 

『っ了解!』

 

『ありがとね、おじさん』

 

 それは、フォルドの夜明けも一緒だ。協力してくれた組織のトップが、殿をしてくれているのだ。ならば何としてでも、撤退を完了させないといけない。

 

「だから邪魔だって」

 

『ぐうっ!?』

 

 しかし、相手は改修されたガンダムフレームバルバトスルプスレクス。いくらサンドバルが腕利きのパイロットとしても、相手が悪過ぎる。このままでは、殿の役目を果たす前に殺されかねない。

 

 でも彼は、かなりの武闘派で知られるアーシアンのテロ組織、夜明けの地平線団団長なのだ。部下の逃がすためにも、そう簡単にやられる訳にはいかない。

 

『舐めるなぁぁぁ!!』

 

「っ!?」

 

 サンドバルのユーゴーが、バルバトスに肉薄する。帰り道の事を考えなくてよいので、文字通り全てを出し切っているような状態だ。ユーゴーの2振りの円月刀の猛攻が、バルバトスを襲う。だがバルバトス、それを超大型メイスで防御。

 

『そこだ!』

 

 そのバルバトスが防御した瞬間、ユーゴーは少し距離を取って、腰に付いているアンカークローが射出。それはバルバトスの腕をガッチリと掴む。これでバルバトスの動きを制限できるだろう。

 

『な!?』

 

 だがそう思ったのも束の間。バルバトスは腕に掴まれたワイヤークローを掴んで、そのままユーゴーをまるでハンマー投げのように振り回す。

 そして腕からワイヤークローが外れると同時に、ユーゴーを宇宙に放り投げ、同時にユーゴーに対して腕部内蔵ビーム砲を連続発射する。

 

『ぐっ!?まだだ!!』

 

 しかしサンドバル、直ぐに態勢を立て直す事に成功し、バルバトスの攻撃を避ける。

 

『くらえ!!』

 

 更にユーゴーは、頭に装備されていたロケットランチャーをバルバトスに向けて発射。だがそれをバルバトスは避けて、腕部内蔵ビーム砲でロケット弾を攻撃。ロケット弾は爆発し、攻撃は不発に終わる。

 しかし、今のはおとりだ。

 

『捕まえたぞ!!』

 

 ロケット弾が爆発したと同時に、ユーゴーはバルバトスの脚部の膝部分に向けてワイヤークローを射出。

 そう。本命はこっちの、ワイヤークローでバルバトスを捕まえてからの近接攻撃にある。先程はぶん投げられてしまったが、足ならそうもいかない筈。膝を動けなくしてしまえば、蹴りだって封じ込める。今度こそいける。サンドバルはそう思った。

 ユーゴーはそのままワイヤークローを巻きながらバルバトスに接近し、円月刀でバルバトスに攻撃をする。

 

『なっ!?』

 

 けれど、それすらバルバトスは避けた。それもとても滑らかに、まるで人間が攻撃を避けるように。

 

(何だその動きは!?こいつ本当にモビルスーツなのか!?)

 

 驚きを隠せないサンドバル。いくら高性能なモビルスーツと言っても、今のような人間的な動きなんて出来ない筈。事実、フォルドの夜明けが保有しているガンダムにはあんな動きは出来ない。

 

『マズイ!?』

 

 そしてバルバトスは、攻撃を避けて1回転したと思えば、超大型メイスをユーゴーに向けて振り下ろす。ギリギリで避ける事に成功したが、そのせいでワイヤークローが外れてしまう。

 

(これも避けるか!化け物め!!)

 

 いよいよ後が無くなってきた。しかし、後ろにはまだ多くの仲間が撤退中。今はまだ、ここでやられる訳にはいかない。

 

(だったら、狙うは手元!!)

 

 このまま普通に戦っても勝てない。ならば、バルバトスがもう武器を持てなくするべきだ。先ずはバルバトスの手元を破壊し、その後で背中のテイルブレードを破壊する。出来るかどうかわからないが、出来ないと仲間が殺される。ならば、やるしかない。

 

 サンドバルはユーゴーのスラスターを吹かし、円月刀で防御態勢をしながらバルバトスに接近。そしてバルバトスも、超大型メイスを構えながら正面から接近。

 

(奴が攻撃をしてきた瞬間!そこを狙うしかない!!)

 

 バルバトスの初撃を避けて、そのまま手元を破壊する。バルバトスとの距離が縮まるほんの一瞬で、脳内で何度もシミュレーションしながら、サンドバルは攻撃のタイミングを見極める。

 そしてお互いがいよいよ接近した時、バルバトスが超大型メイスを動かす。

 

(ここだ!!)

 

 正に千載一遇の好機。サンドバルは狙いをバルバトスの手元に定めて、攻撃態勢を取る。そしてバルバトスが超大型メイスを横に振るった瞬間、その攻撃を下に避けて、サンドバルはバルバトスが武器を持っている手元に狙いを定め、下から振り上げるように円月刀で攻撃をした。

 

『は…?』

 

 だがその瞬間、バルバトスは超大型メイスを手放したせいで、サンドバルの攻撃は空ぶってしまったのである。

 

(読まれてた!?)

 

 そう、三日月はサンドバルの攻撃を読んでいたのだ。天性の勘の良さのおかげである。故に、サンドバルの攻撃が空ぶるように武器から手を離したのだ。

 一方こちらの考えを読まれて攻撃が空ぶったサンドバルは、ほんの一瞬だけ動きを止めてしまう。その一瞬を、三日月は見逃さない。

 

『しまっ!?』

 

 バルバトスは左足で、ユーゴーを思いっきり両足でドロップキックの要領で蹴飛ばす。更にテイルブレードを起動して、ユーゴーの両足を破壊した。そして手放した超大型メイスを手に取り、槍の様に構えてユーゴーに対して突撃。

 

『が!?』

 

 サンドバルのユーゴーは、そのままプラント・クエタの外壁に衝突。

 

「あ、まだ生きてる」

 

 土煙が晴れると、そこには超大型メイスの攻撃を、ギリギリで直撃だけは避けたユーゴーがいた。だが、既に機体はボロボロだ。右腕はもげており、両足も破壊されている。体中から火花も散っている。これでもう、碌に抵抗なんて出来ない。

 

「んじゃ、今度こそ」

 

 今度こそしっかりとどめを刺すべく、バルバトスはゆっくりと超大型メイスを振り上げる。

 

『ふざけるなよお前!!』

 

「ん?」

 

 だがその時、ユーゴーからオープン回線で通信が入る。既にサンドバルは、体中怪我だらけ。足は折れているのがわかるし、腕も思うように動かない。頭から血を流しているせいで、目もよく見えない。もう自分は、何も抵抗出来ないだろう。

 だが少なくとも、仲間が逃げ切れるであろう時間は稼いだ。恐らく今頃仲間たちは、プラント・クエタの空域外に差し掛かろうとしている頃だろう。これなら逃げ切れる。

 しかし、このまま大人しく死を受け入れる真似は出来ない。別に命乞いをしたいからじゃない。死ぬ前にどうしても、目の前の悪魔に言わないといけない事が出来てしまったからだ。

 

『貴様の戦いを見ていてわかった!貴様今楽しんでいるだろ!!人殺しを!!

 

「はぁ?」

 

 そしてサンドバルは、三日月にとって予想もしていなかった事を言い放つ。

 

『俺の部下を大勢殺しただろ!それも様々な方法で!安全な方法で一方的に相手を殺すのが楽しかったんだろう!?流石スペーシアンだな!そうやって貴様はこれからも大勢殺すのか!?そのガンダムで!!』

 

 サンドバルから見た三日月は、明らかに殺しを楽しんでいるように見えた。こちらの攻撃が効かず、自分の攻撃は効く。それでいて、周りには殺せる相手が沢山いる。例えるなら、身の安全が確立された狩りのようなもの。こんなの、そりゃ楽しい筈だ。

 

(俺が、殺しを楽しんでいる?)

 

 そして三日月は、サンドバルの言葉を脳内で繰り返し、考える。確かに新しくなったバルバトスで敵を何人か殺した時に、自分でもよくわからない感覚に襲われた。あの時はわからなかったが、サンドバルに言われた今ならわかる。

 

 あの時自分は、どこかワクワクしていたのだ。

 

 普通に考えれば、初めて殺しを経験したなら多少は動揺するもの。人によっては発狂したり、嘔吐したりするだろう。

 だと言うのに三日月は、全く動揺もせず、殺しに躊躇が無かった。その結果が、15機撃墜という戦果である。そういう意味でなら、サンドバルの言う通り自分は殺しを楽しんでいたのかもしれない。

 とてもじゃないが、まともなんかじゃない。やっぱり自分は、生まれながらにどこかおかしいんじゃないかと三日月は思う。

 

「ま、いっか」

 

 一瞬だけそんな普通じゃない自分に悩んだ三日月だったが、直ぐにその悩みをどうでも良いものとして捨てる。

 

 

 

「こいつは、死んでいい奴だから」

 

 

 

 だって例えそうだとしても、目の前のこいつが敵であり、スレッタに危害を加える存在である事に変わりは無いのだから。

 

『この、悪魔がっ!!』

 

 そして三日月は、バルバトスが手に持っている超大型メイスを振り下ろし、サンドバルのユーゴーを木端微塵に粉砕した。

 

 こうして、夜明けの地平線団団長サンドバル・ロイターは、プラント・クエタで戦死したのだった。

 

 

 

 

 




 まさかの2万字超…もうかれこれ5年程趣味の執筆活動しているけど、1話でこんなに書いたの初めてだよ。想像よりずっと長くなってしまったので、ここで1度切ります。次回は、出来れば8月中に投稿したいなぁ。
 それとどこか変なところや矛盾点があおればおっしゃってください。修正いたします。

 次回は多分フレッシュトマト、そして各方面の反応みたいな感じになると思う。


 追記・感想で言われて思いましたが、最後の方の「貴様今楽しんでいるだろ!!人殺しを!!」の台詞、矛盾してますかね?確かに言われてみれば「お前が言うなよ」的な感じになってるっぽいかな。
 もしかすると、少し編集するかもしれません。ごめんなさい。
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