悪魔と魔女の物語   作:ゾキラファス

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 今年最後の投稿です。ようやく水星2期にたどり着いたよ。あと、好きに書いたら長くなってしまった。

 そして今回は、鉄血2期やウルズハントのキャラ+αが出ます。多分今回だけの使い捨てになるだろうけどね。

 それでは、どうぞ。


羨望、興味、嫉妬、恋慕

 

 

 

 

 

 三日月が地球寮に戻って数日後。学園内のモビルスーツ格納庫では現在、地球寮の生徒達が決闘の準備をしていた。

 

『三日月!ぜってー勝てよな!』

 

「勿論。そもそも元から負けるつもりは無いしね」

 

 チュチュの激励に答えながら、三日月はコックピット内でバルバトスのシステムチェックをする。

 三日月は今日、これまでずっと溜まっていた決闘を一気に終わらせるつもりだ。昨日はスレッタが溜まっていた決闘を終わらせており、その全ての勝利している。ならば、自分も負けていられない。スレッタと同じように、全ての決闘に勝利しなくては。

 

「それに、俺を倒せるのはスレッタとエアリアルだけだしね」

 

 そもそも三日月は、スレッタとエアリアル以外に負けるつもりなんて微塵も無い。既に学園内の多くのトップ層にも勝利しているし、バルバトスも以前よりずっと強くなっている。今更、他の生徒に負ける事も無いだろう。でもだからと言って、油断は絶対にしない。油断は敗北につながりかねないからだ。

 

『ところでオジェロ、お前三日月にいくら賭けた?』

 

『10万くらい。ヌーノは?』

 

『15万。ほぼ間違いなく増えるしな』

 

 そしてバルバトスの出撃準備をしているオジェロとヌーノは、賭け事の話をしていた。三日月なら、確実にお金を増やせるからである。

 

『お前らなぁ…』

 

 そんな2人を、昭弘はあきれた様子で見ていた。確かに三日月が負ける事は無いだろうが、こんな時にまで賭けをするのはちょっとどうかと思うからである。

 

「ニカ、システム周りは問題無い?」

 

「……」

 

「ニカ?」

 

「え!?あ!?な、何かな!?」

 

 格納庫とは別の場所であるモニター室で決闘準備をしていたマルタンが、同じく決闘準備をしていたニカに話しかけるが、ニカは驚いたような顔をする。どうやら、こちらの話を聞いていなかったみたいだ。

 

「いやだから、バルバトスのシステムは問題ないかなって」

 

「あ、ああ!うん!直ぐに確認するね!!」

 

「そ、そう?じゃあお願い」

 

 マルタンの質問にニカは答えるが、どこか変だ。まるでずっと上の空のような顔をしていたし、何か別の事を考えていたような感じもした。

 

(まだ…あの時の感触が残ってる…)

 

 そしてニカは、ずっとあの日の夜に三日月にキスされた感触を思い出しながら、そっと唇を指で撫でる。もう数日は経過しているというのに、未だにあのキスの感触が消えない。おまけに三日月を見ると、あの時の事を思い出してしまい、顔が熱くなる。

 

 つまり今のニカは、三日月相手にドギマギしているのだ。

 

 おかげで最近は授業中も少しぼうっとしていしまい、教師にお叱りを受ける始末。このままではいけないと思いつつも、どうしてもあの時の事が忘れられない。

 

(ていうかなんで三日月くんは普通にしてるの!?もう少しこう、意識してくれても良くないかな!?女として少し傷つくんだけど!?)

 

 更に発端である三日月は、ニカのようにドギマギなんて一切していない。今も何時もと変わらない様子で、決闘に挑もうとしている。これでは自分が馬鹿みたいだ。温厚なニカでも、流石に思うところがある。

 

(ってダメダメ!今は決闘に集中しないと!)

 

 でも今は、決闘準備中。ここで少しでもミスをしてしまえば、三日月が決闘に負けてしまうかもしれない。なのでニカは頭を横にブンブンと振って、端末を使ってバルバトスのシステムのチェックを行う。

 

(うん、大丈夫)

 

 改めてシステム周りを見るが、特に問題は無い。これで決闘に挑める。

 

「えっと、三日月くん。バルバトスは何時でも行けるよ」

 

『わかった。ありがとう』

 

「よーし!そいじゃコンテナをカタパルトに乗せるぞーー!」

 

 オジェロの掛け声と共に、バルバトスの入ったコンテナがカタパルトに乗っていく。

 

「三日月!」

 

『ん?』

 

「頑張ってね」

 

『勿論』

 

 最後にスレッタが三日月に檄を飛ばすと、コンテナは決闘場に向って発進し、決闘へと向かうのであった、

 

 

 

 

 

 決闘委員会 ラウンジ

 

「これより!決闘を始める!決闘方法は、昨日ホルダーが行った方法と同じ連戦方式!挑戦者は地球寮所属の三日月・オーガスと戦い、彼に勝利した者が次の挑戦者に挑むものとする。そして最後に勝利していた者が、ガンダムフレームバルバトスを手にする権利を貰えるものとする!そしてこの決闘、立会い人はアリアンロッド寮寮長である、このイオク・クジャンが務めさせてもらおう!!」

 

 ラウンジの中央で、イオクはこれから行われる決闘を声を大にして高らかに宣言する。本来彼はこういう場に出てこない人間なのだが、委員会のメンバーであるエランは何故か立会い人をしたがらず、ジェターク寮代理としてきたフェルシーは地球寮の決闘の立会い人なんて御免被ると言って拒否し、セセリアとロウジは面倒くさがった。

 そしてシャディクの代理人としてやってきたサビーナも、何でか辞退した。そこに三日月が決闘をすると知ったイオクが出張ってきて、こうして立会い人をすることにしたのだ。

 

「なんかイオク先輩、すんごい元気っすねー」

 

「ちょっと声大きいですね…」

 

 イオクの無駄に元気な姿に、セセリアは面白がり、ロウジは両手で耳を塞ぐ。

 

「少し声を小さくしてくださいイオク先輩。うるさくて周りが迷惑しています」

 

「む?そうか。それはすまんかった」

 

 そんなイオクにジュリエッタは一声注意すると、イオクは素直にそれを聞き入れた。昔ならこんなに素直じゃなかたのに、凄い変わり用である。

 

「しかし、バルバトスを手にする事が出来るか。どこの寮も考える事は一緒だな」

 

 グラスレー寮の立会い人代理であるサビーナは、端末を操作して決闘の賭け内容を確認する。殆どの寮が、勝利したらバルバトスを手にしようとしている。

 グラスレー寮との決闘後の、バルバトスの価値が跳ね上がったせいだ。あれだけの戦闘力を持ったモビルスーツであり、更に搭載されているには永久機関とも言われているエイハブ・リアクター。この2つを同時に持っているバルバトスを欲するのは当然だろう。

 しかし、それだけではない。

 

「ま、気持ちはわかるよ。俺も欲しいしね。それに今は、俺達御三家全員の立場が揺らいでいる。この期を逃すなんて真似はしないでしょ?」

 

 以前と様子が随分変わったエランがそう口にする。彼の言う通り、現在ベネリット・グループ御三家はその地位が少し揺らいでいるのだ。

 原因は全て、エアリアルとバルバトスとの決闘に敗北したせいである。特にCEOが行方不明のジェターク社はその地位が急速に失われており、このままでは年内に倒産するとさえ噂されている。

 そんな今なら、自分達が上に上がれるかもしれない。ひょっとすると、新しい御三家の地位も手に入るかもしれない。でもその為には、バルバトスが必要不可欠。あれさえあれば、一気に上に這い上がれるのは間違いない。故に多くの生徒が、上に上がる為にバルバトスを欲しているのだ。

 

「ロウジ、因みに今のオッズは?」

 

「三日月・オーガスが1,5倍ですね」

 

「わーお、流石」

 

 因みに公然と行われている決闘での賭け倍率は、現在三日月が圧倒的である。これでは勝っても碌な稼ぎにはならないだろう。それでも、小金程度は間違いなく稼げるだろうが。

 

「くっそ。グエル先輩がいればリベンジだってできたのに…」

 

 そんな中、ジェターク寮立会い人代理であるフェルシーは、苦い顔をしながらモニターを睨む。なんせバルバトスとエアリアルに負けて以降、自分達が尊敬するグエルにずっと不幸な事ばかり続いている。

 そしてそのグエルは、現在行方不明。更に先日、プラント・クエタで起こった事故でCEOであるヴィム・ジェタークも死亡。おかげで現在、ジェターク寮は窮地に立たされている。

 先も言った通り、このままではベネリット・グループ御三家の地位も危うい。この事態を挽回するには、バルバトスかエアリアルに勝利して力を示さないといけないが、あの2機相手に勝負できる人材がジェターク寮にはいない。グエルさえいえばなんとか出来るだろうが、そのグエルがいないのであれば話にならない。

 

「そんな無いものねだりしたもしょうがなくない?」

 

「はぁ!?」

 

「悔しかったら、あんたがあのバルバトスを相手にすればいいじゃん。あ、出来る訳無いか。あんたグエル先輩よりずっと弱いし」

 

「んだと!?」

 

「おー、怖。弱い犬程良く吠えるって本当だねー」

 

「お前!!」

 

 そんなフェルシーに、セセリアが噛みつく。正直、ジェタークはもう落ち目だ。今ならずっと3番手とか言われているブリオンも、上に上がる事が出来る。それに実際、フェルシ―達はグエルに頼りっぱなしだった。そんなに悔しいのなら、自分で戦えばいいのにそれをしない。戦う前から負けるとわかっているからだろうが、

 そこが気に入らない。勝ちたいのなら、何か作戦でも考えて勝負をすればいいのにそれをしない。ジェタークならばいくらでも選択肢なんてあるだろうに、ジェタークはどいつもこいつも行方不明のグエル頼み。

 それが本当に気に入らない。初めから碌に考えもせず勝負を捨てている奴を、セセリアは心底嫌う。

 だって世の中には、初めから選択肢を与えられない人もいるのを、セセリアはよく知っているのだから。

 

「そこ!喧嘩をするな!どうしてもしたいと言うのなら、決闘でもすればよかろう!」

 

「はーい」

 

「ちっ!」

 

 イオクに注意されると、2人共それ以上は何も言わない。これ以上は疲れるだけと思ったからである。

 

「あ、始まります」

 

 ロウジがモニターを見ると、2基のモビルスーツの入ったコンテナが決闘場に現れ、遂に決闘が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 コンテナのハッチが開かれ、中からバルバトスがその姿を現す。

 

『三日月、準備はいいか?』

 

「いつでもいいよ」

 

『よし、それじゃ、行ってこい』

 

「うん」

 

 アリヤに言われ、三日月はバルバトスを動かす。

 

「LP042、三日月・オーガス。バルバトスルプスレクス、出るよ」

 

 コンテナから改修されたバルバトスルプスレクスが現れる。以前より大きくなった両腕に、背中には剣のような突起物。そして手には、何時ものソードメイスが握られている。

 例の超大型メイスは、決闘のレギュレーション違反になるので使えず、レンチメイスは既に壊れているので、これになった。

 最初は装備なんてせずそのまま素手で行こうとしていた三日月だったが、それは流石に相手に超失礼と思われてしまうと周囲が説得し、こうしてルプスが使用していたソードメイスを使う事にしたのだ。しかし、腕が大型化しているせいかどこかアンバランスである。

 

『MP168、ゴクハ・ファウンドリンク!モンキー・ロディ!行くぜぇ!!』

 

 そして三日月の最初の決闘相手、キンバル寮の1年の青髪男子生徒、ゴクハ・ファウンドリンクが愛機モンキー・ロディと共に姿を現す。

 

『両者、向顔!!』

 

 イオクの号令と共に、両モビルスーツのモニターに相手の顔が映し出される。

 

『三日月・オーガス!約束通り俺が勝ったら、俺をあんたの舎弟にしてくれよな!!』

 

「勝てたらね」

 

『よっしゃああ!!やってやるぜーー!!』

 

 決闘の前口上を言う前に、ゴクハが三日月に改めて賭けの内容を確認させる。彼が勝利した場合、三日月は彼を舎弟として迎えるというのものだ。先のグラスレー寮との決闘を見ていたゴクハは、三日月のその強さに強い憧れを抱くようになった。

 殆どの生徒が恐れを抱く中、彼のようにその力に魅入られた生徒も幾人かいた。そしてその結果、ゴクハは三日月の舎弟になって三日月の強さを近くで学びたいと思い、こんな願いにしたのである。

 因みに三日月が勝利した場合は、1度何でもいいから食堂でご飯を奢るというものであった。

 

「それじゃ、勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず」

 

『操縦者の技のみで決まらず』

 

『「ただ、結果のみが真実」』

 

『フィックス・リリース』

 

 そして遂に、三日月の決闘が幕を開けたのだ。

 

 

 

 第1戦 ゴクハ・ファンドリング

 

『三日月!これは今日行われる連続決闘の最初の1戦目よ!勝負が長引くとそれだけ疲弊するからさっさと終わらなさい!』

 

「わかってるよ」

 

 ミオリネの言う通り、今日三日月が行う決闘は全部で6戦。しかも1回でも負けたらバルバトスは奪われるのだ。決して負けられない上に、1戦に時間をかければかけるほど三日月は疲弊する。長引けば長引くだけ、三日月に不利なのだ。だから全ての決闘を、最短で終わらせないといけない。

 

「それじゃ、さっさとやるか」

 

 だが三日月は、ちっともその心配は無いと思っている。既に学園内での強者は殆ど倒したし、今のバルバトスはとても強化されている。これを何とか出来るとすれば、それはスレッタとエアリアルだけだろう。

 

『くらえ!!』

 

 そう思っていると、ゴクハのモンキー・ロディがビームライフルで攻撃をしてきた。三日月はそれを、素早く避ける。

 

『ま、あんたならこれでやられる訳ないよな!!』

 

 ゴクハも、これでバルバトスを倒せるなんて思っていない。直ぐにビームライフを投げ捨てると、右手に本来は工具として扱われているバールを装備し、左腕に装備したシールドを構えて、モンキー・ロディのブースターを吹かして一気にバルバトスに接近する。

 

(最初だ!最初の1撃に全てを賭ける!!それ以外に勝ち目はねぇ!!)

 

 ゴクハは、このまま普通に戦っても三日月のバルバトスには勝てないとわかっていた。だからこそ近接戦をしかけて、最初の1撃に全てを賭ける。狙うは、バルバトスのブレードアンテナ。相手の攻撃をシールドで受けたその瞬間に、バールで頭部を攻撃する。それが、彼の考えた作戦だ。

 

「ふっ!!」

 

 そしてバルバトスの間合いに入った瞬間、バルバトスのソードメイスがゴクハのモンキー・ロディを攻撃してきた。

 

(読み通り!!)

 

 それをゴクハは、作戦通りにシールドで受ける。そして直ぐに、右手に持ったバールでバルバトスを攻撃した。

 

『く!?』

 

「それでやられる訳ないでしょ」

 

 しかし三日月は、その攻撃をバルバトスの左手で掴んで阻止。だがこれでは、お互い両手が塞がって攻撃が出来ない。

 

(1度距離を…ダメだ!この人相手に距離を取っても意味ねぇ!ここはこのまま体当たりをする勢いで前進する!)

 

 ゴクハは、このままバルバトスに向って前進して、モビルスーツで頭突きをする気でバルバトスのブレードアンテナを破壊しようと考えた。幸いな事に、モンキー・ロディのブレードアンテナは長くて頑丈。これでバルバトスのブレードアンテナを攻撃して、そして三日月の舎弟になってみせる。

 

 キュルルル

 

『は?』

 

 そう思った時、奇妙な音が聞こえた。そして、

 

 ガァァァン

 

『……は?』

 

 ゴクハの乗るモンキー・ロディのブレードアンテナが、破壊されたのだ。同時に、決闘場の上空に三日月が勝利したといメッセージが出現。つまり今、ゴクハは決闘に負けたのだ。

 

『い、一体何が!?』

 

 意味が分からない。お互い両手が塞がっていた筈なのに、どうして今自分は攻撃を受けたのか。そしてゴクハが頭上を見上げると、

 

『な、何だあれ?尻尾?』

 

 まるで剣のような物が付いている、尻尾みたいな物が空中を漂っていた。それは奇妙な音を出しながら、バルバトスの背中に収納されていく。

 これは、テイルブレード。改修されたバルバトスルプスレクスを、象徴する武器である。たった今ゴクハは、これにやられたのだ。

 

『…くそっ』

 

 あまりにあっけなくやられた事により、落ち込むゴクハ。そんなゴクハに、三日月は話しかける。

 

「ねぇ」

 

『へ?』

 

「思いっきりが良かったね。でももうちょっと、相手に隠し玉が無いか考えながら動いた方がいいよ」

 

『っ~~~うっす!ありがとうございましたぁ!!』

 

 三日月はゴクハの思い切りの良さを誉めると、ゴクハはコックピット内で嬉しそうにする。憧れの人に負けはしたが、褒められた。これだけで今日の決闘はおつりが来ている、決闘をやってよかったと、ゴクハは心底思った。

 

『バルバトスに損傷無し!ガスも十分残ってる!このまま補給無しで行けるぞ!』

 

 戦闘時間、僅か30秒。大して消耗もしていないのでオジェロの言う通り、バルバトスはこのまま決闘に行ける。

 

『お疲れ三日月。じゃあ直ぐ次の決闘よ』

 

「わかった」

 

 そしてミオリネは、直ぐに三日月に次の決闘に行くよう指示。三日月は出てきたコンテナにバルバトスを再び収納すると、次の決闘へと向かう。

 

 

 

 

 

 決闘委員会 ラウンジ

 

 三日月の決闘を見ていた決闘委員会のメンバーは、あまりの衝撃に呆然とする。

 

「何だあの武器…有線式なのにあんなに素早く動かせるなんて…」

 

「まるで動物の尻尾ね」

 

 ロウジとセセリアは、バルバトスの新しい装備に興味を持つ。ドローン技術が発展しているこの時代に、態々有線式の武器なんて普通は使わない。一応シャディクが乗っていたミカエリスにも似たような兵装はあったが、あれよりずっと速度がある。

 おまけにバルバトスのテイルブレードには、射撃武装なんて一切無い。本当に動物の尻尾みたいで、とても面白い。是非1度徹底的に調べてみたいと、ロウジは強く思う。

 

「ふむ、威力も凄まじい。あれを相手にするのは簡単ではないな」

 

「だねー、俺もあれを正面から相手にはしたくないよー」

 

 サビーナは冷静に観察し、エランはそれに同意する。最も、サビーナは既にその事を知っているのだが。

 

「ふふ、流石我が友。より高みに行ったようだ」

 

「それどういう目線なんですか」

 

 イオクは何故か後方理解者面をしており、それにジュリエッタがツッコミを入れる。しかしそのジュリエッタも、どこか嬉しそうな顔をしていた。

 

(そうでなくては。それでこそリベンジのしがいがあります)

 

 バルバトスが以前より強くなった事により、ジュリエッタは対抗心を燃やす。もし三日月が新しくなったバルバトスを上手く扱えていなかったら、リベンジして勝利しても意味が無い。むしろ以前より強くなっていないと、リベンジの意味が無い。

 だが今の決闘を見る限り、イオクの言う通りより強くなっているようだ。これならば問題無い。アリアンロッド本社で修理している例のモビルスーツの相手にとって、不足無し。近々開催されるランブルリングが、今から楽しみだ。

 

「くっそ!水星女といいあのチビといい、何なんだよ!!」

 

 そんな中他の者達と違い、フェルシーだけは何とも面白くない顔をしていた。いっそ今の決闘でやられてくれれば良かったのに、結果は誰が見てもわかるくらい三日月の圧勝。昨日のスレッタも全ての決闘に勝利している。

 面白くないし、何よりムカツク。つい地団駄を踏みそうになるが、流石にそれはみっともないので思いとどまった。

 

「イオク先輩。次の相手は誰でしたっけー?」

 

「うむ、次はラコウ寮の寮長でもある、タマミ・ラコウだな」

 

「あー、あの子っすかー」

 

 セセリアに言われ、イオクは次の三日月の決闘相手を答える。次は女子生徒が1番多い比率で所属している寮、ラコウ寮の寮長だ。

 結構な姉御肌で、寮以外の女生徒からも信頼されている生徒である。おまけにモビルスーツの腕もかなり立つ。三日月に勝てるとは思えないが、簡単に負けるとも思わない相手だ。

 

「お、もう準備できたっぽいっすね」

 

 そしてモニターに、次の決闘が映し出される。

 

 

 

 

 

 第2戦 タマミ・ラコウ

 

『喧嘩上等ーー!!』

 

 タマミは愛機である白虹で、三日月のバルバトスに近づきながら攻撃。当然、その攻撃が当たる程三日月は弱くない。

 

『よし!近づけた!!』

 

 タマミは第1決闘のゴクハと同じように、ビームライフルを捨てて近接戦闘を行う。両肩にあった肩アーマーをパージし、それを両手に装備してステゴロスタイルで攻撃を開始。

 まるでガトリングのような素早い拳による攻撃が、バルバトスを襲う。元よりパワーでは勝てないと理解してたタマミが取った作戦、それは手数で圧倒するというものだった。こちらから徹底的に攻撃をして、相手に反撃の隙を与えない。

 

(こいつ、思ってたより素早いな…)

 

 ゴクハと違い、タマミの白虹はかなり素早い。おまけに攻撃の仕方が、本当に人間の喧嘩そのもの。手足を使って、バルバトスに猛攻を続ける。

 だがバルバトス、その攻撃を避けたり防御したりして全ての致命傷を避けていく。三日月の戦闘センスと、阿頼耶識システムあっての事だ。

 

『ははは!あんたいいね!今までの決闘相手の中で1番楽しいよ!!』

 

「どうも」

 

『どうやってそんな強さを手にしたのか、気になってしょうがないね!!一体何をしたんだい!?』

 

「……訓練?」

 

『はは!そうかい!』

 

 会話をしながらも、タマミは攻撃の手を緩めない。ボクシングのように連続したパンチを放ったかと思えば、突然回し蹴りをしてくる。相当な技術が無ければ、こんな事出来ない。

 

『この決闘に勝利して、あんたの強さの秘訣と、そのモビルスーツの秘密を調べさせてもらうよ!!そしてうちの会社も出世させて、寮や社員の皆で美味しい物をたらふく食べるんだ!!』

 

 今も手数の多い連続パンチを繰り出してくる。この攻撃に、三日月は防戦一方だ。

 

「これで!」

 

 しかし三日月、隙を見てテイルブレードを起動。そのままテイルブレードは白虹の真上から頭部を攻撃。

 

『舐めるなぁ!!』

 

 だがそれをタマミは、何とか避ける事に成功した。そのままテイルブレードは地面に刺さり、土埃が舞う。

 

「ふっ!」

 

『なんの!!』

 

 そこにバルバトスがソードメイスを投げつけてくるが、タマミはこれを拳で弾いて攻撃を受け流す。

 

『ここで決めるよ!!』

 

 そしてタマミは白虹のブースターを吹かして、バルバトスへと一気に距離を縮め勝負に出た。

 

『な!?』

 

「捕まえた」

 

 しかしその時、テイルブレードのワイヤーが白虹の左足に絡まっていた。実はタマミがソードメイスの攻撃を避けた時に、三日月は土埃の中テイルブレードを白虹の足元で動かしていたのだ。そして今ワイヤーが絡まり、白虹の動きを止めた。

 

「せー-ーのっ!」

 

『ぬあああああ!?』

 

 三日月はそのまま、タマミの白虹を思いっきり投げ飛ばす。こんな事、普通のモビルスーツは出来ない。これはテイルブレードのワイヤーが想像を超えた強度を持っていたのと、バルバトスの桁外れのパワーがあってこそ出来る芸当だ。

 そしてタマミの白虹は、そのまま決闘場の壁に転がりながら叩きつけられた。当然その時の衝撃で、白虹のブレードアンテナは破壊されている。

 

『あー、畜生め…負けちまったかい…』

 

 上空に出てきた三日月が勝利したというメッセージを見て、タマミは敗北を認識。

 

『なぁ、三日月・オーガス。負けたあたしが言うのもなんだけど、また喧嘩してもらってもいいかい?次はあたしが勝つからさ』

 

「別にいいよ。でも何度やっても、俺が勝つから」

 

『はは、そうかい』

 

 まるでヤンキーコミックの喧嘩後みたいな会話をする2人。背景に、夕日でも幻視してしまいそうだ。

 

『三日月!ガス補給したらすぐに次の決闘よ!急ぎなさい!!』

 

「わかったってミオリネ。じゃあね」

 

『あいよ。残りの決闘も頑張りな』

 

「ありがと」

 

 ミオリネに急かされ、三日月は直ぐ次の決闘に向う。その去っていく背中を、タマミは暫く眺めていた。そしていつか、あのような強さを手に入れたと思い、決闘後に早速訓練をしようと決めたのであった。

 

 

 

 その後も三日月は、順調に決闘で勝利を勝ち取っていった。

 

 第3戦の相手であるツィマッド寮のエグザベ・オリベのギャンは、バルバトス相手に徹底した突撃戦を仕掛けた。ランスによる縦横無尽な突進攻撃をひたすらに繰り返し、バルバトスをその勢いで倒そうとした。

 しかし突進攻撃を躱された時に、バルバトスが足をひっかけてギャンを転ばせる事に成功。その転んで動けなくなったところを、バルバトスによって足で頭を踏まれて破壊され、彼は敗北。

 

 第4戦はフロント外宇宙域で行われ、相手はヤシマ寮という日系の生徒が所属しているの寮の女生徒、シイコ・スガイ。彼女の乗るゲルググは、腕からワイヤーを飛ばしてそれをバルバトスにひっかけて、それを中心に瞬間的な加速と軌道変更をして戦うという特殊な戦法で三日月を翻弄。

 だが最後は、そのワイヤーをバルバトスのテイルブレードで切られてバランスを崩し、その隙にバルバトスの爪であるレクスメイルで頭を潰されて負けた。

 

 第5戦の相手は、ゲテモノモビルスーツを作る事で有名なオーガスタ寮の生徒、ゲーツ・キャパとドゥ・ムラサメの2人による2対1の決闘だった。2人は可変モビルスーツであるハンブラビに乗って、何度も変形を繰り返しながらバルバトスを挟撃した。

 しかし、変形する時にほんの僅か隙が生まれる事を三日月に見抜かれ、そこをテイルブレードで貫かれてしまい、変形途中で動きを止めてしまった。

 そしてそのまま、ゲーツのハンブラビはソードメイスで頭を潰されて、ドゥのハンブラビはテイルブレードでダルマにされた後に投げつけられてたソードメイスで頭を破壊され、敗北をした。

 

 こうして三日月は、この日一気に決闘を5連勝したのである。

 

 

 

 地球寮 モニター室

 

「すっげぇ…」

 

「昨日のスレッタとエアリアルも凄かったけど、三日月とバルバトスはそれ以上だな」

 

 ヌーノも昭弘も三日月とバルバトスの強さを知っていた筈だが、こうして改めて見ると凄まじいの一言。やはりあのモビルスーツは、普通じゃないとわかる。

 

「リリッケ、大丈夫か?」

 

「は、はい…なんとか」

 

 そしてアリヤは、リリッケの体調を心配する。未だにプラント・クエタでの事がトラウマになっているリリッケ。三日月に対する恐怖心は何とかなったとはいえ、こういった戦闘はまだ慣れないのだ。どうしても、あの時の恐怖が蘇ってしまう。

 しかし、何時までもこのままでいい訳が無いと思い、恐怖を克服する為にも決闘を見ているのだ。とりあえず今のところ、嘔吐したりはなさそうである。

 

「ところでさ、スレッタと三日月が戦ったらどっちが勝つんだ?」

 

「それは、気になるな」

 

 ヌーノの疑問に、昭弘も同意する。

 

 学園最強のホルダー、スレッタとエアリアル。

 学園最恐の悪魔、三日月とバルバトス。

 

 もしこの2人が決闘をしたらどっちか勝つのか、気にならない生徒はいないだろう。

 

「そういえばスレッタは、以前三日月と戦った事があるんだっけ?」

 

「はい。シミュレーションで何度も三日月とは戦っています」

 

「因みに今現在の戦績は?」

 

「えっと、現在は私が負け越しています…」

 

 マルタンがスレッタに質問すると、スレッタは少し落ち込んだ様子で答える。これまで何度も三日月のバルバトスと戦ったが、未だにスレッタの方が負けている。勿論スレッタが勝つ事もあるのだが、通算では三日月相手にずっと負けているのだ。

 

「でも!今なら私が普通に勝てるかもしれません!エアリアルだって強くなってるし、私も色んな人と戦ったおかげで強くなれている筈です!勿論、三日月もそうなんですけど、それでも今なら私が勝てると思います!」

 

 しかしスレッタも、もう負ける気は無い。何時までも三日月とバルバトスに負け続けるなんて事、ミオリネの婚約者としてどうかと思う。そもそも決闘をする事が無いだろうが、もし決闘する事になったら次は必ず自分が勝つ。

 

「言っておくけどスレッタ、三日月と決闘なんてしないでよね。もしあんたが負けたら、私が三日月と婚約する事になるんだから」

 

「そこは私を信じてくれても良くないですか!?」

 

「信じてはいるわよ。でも、ねぇ?」

 

 ミオリネがモニターに映るバルバトスを見てそう言う。スレッタの強さは知っているが、やはり三日月の方が強いだろうとミオリネは思っているからだ。

 そもそも、バルバトスにビームが効かないというのがキツイ。遠距離攻撃を潰されたも同然だから、近距離戦しかないのだが、そこはバルバトスの領域。改修されたエアリアルも間違いなく強いが、このまま普通に戦って勝てるような相手ではないだろう。

 

「ま、あんたらが戦う事なんて無いだろうから杞憂だけどね」

 

「あはは、ですね」

 

 だがそもそも、スレッタと三日月が決闘をする事は無いとミオリネは思っている。決闘をする必要が無いし、戦いたいのなら何時ものシミュレーションで十分だ。心配するだけ損だろう。

 

「さぁ、残る決闘はあとひとつ!頑張りなさいよ三日月!」

 

「三日月!最後の決闘も頑張ってね!」

 

『勿論だよ』

 

 そして遂に、最後の決闘が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

(クソっ。何が地球寮の悪魔だ。何がホルダーに並ぶ最強だ。そんな物全部、乗っているモビルスーツが高性能だからってだけだろうに…!)

 

 三日月最後の決闘相手は、とても苛立った様子で出撃準備を整えていた。

 

『おい!ブツブツ言ってねーでさっさとシステムチェックしろ!向こうはもう準備完了してるんだぞ!』

 

「わかってるザック。直ぐにやる」

 

 彼がこんなにイラついてるのは、三日月が原因だ。地球寮といえば、今までずっと学園で最も下の寮と言われていたのに、三日月とスレッタが入寮したとたん変わっていった。

 御三家との決闘に勝利し、ホルダーになり、そして新規事業も始めている。今までならあり得ない事だらけ。そして気が付けば、彼らはあっという間に自分達を追い抜いていった。

 だがそれは、彼らが恵まれた環境にいたせいと、ガンダムフレームという超お宝モビルスーツを手に入れたせいだろう。

 

 人は生まれた時にカードを配られ、それで生きていくしかない。

 

 そして三日月やスレッタは、そのカードが最初からとても恵まれていたに過ぎないのだろう。最強と言われている呪いのガンダム、伝説と言われたガンダムフレーム、それを操縦できるだけの技術も訓練を受けられるだけの環境も彼らにはあった。

 自分達にはそんな物、まるで無い。スペーシアンに生まれたとはいえ、誰もが裕福に過ごしている訳ではないのだ。スペーシアンの中でも、大きな格差がある。

 更に世の中、どれだけ頑張ってもその努力が必ず報われるとは限らない。なんせ上は、常に圧倒的な力を持ってそれを好きに使える。そんな上が一声かければ、自分達はその声に従っていくしかない。

 

(あのモビルスーツさえ手に入れば、俺達の寮だって成り上がれる筈だ…!別にホルダーとか最強とかには興味ないが、こっちも家族がいるんだ。そのガンダムを俺達の物にして、会社の利益に貢献する!!)

 

 しかしそれも、バルバトスさえ手に入れれば変わる。バルバトスさえ手に入れば、一気にグループの上にまでかけ上がる事が可能の筈だ。だからこそ、この決闘負ける訳にはいかない。

 

『準備完了!気張れよ!!』

 

「わかってる。行ってくるぞ」

 

『おお!!』

 

 こうして三日月への嫉妬を隠しながら、三日月の最後の決闘相手であるペルガミノ寮のハッシュ・ミディは、愛機スピナ・ロディに乗って出撃をする。バルバトスを手にして、自分達が上に上がる為に。

 

 

 

 

 

 決闘委員会 ラウンジ

 

「とうとう最後の決闘ですか」

 

「もっと時間がかかると思っていたけど、これならずっと短い時間で終わりそうね」

 

「ですね。それにしても、次で6戦目なのに全然疲弊していませんね、彼」

 

「そうだねロウジ。一体あの子どんなバカ体力してるんだか」

 

 三日月は今日、5戦連続で決闘をしている。なのに三日月は、まるで疲れている様子が無い。決闘にかかった時間が少ないというのがあるのだろうが、それでも普通は連続で5戦もすれば疲れる筈。未だにケロっとしている三日月が、ちょっと異常なのだ。

 

「しかし、圧倒的ですねバルバトスは」

 

「だねー。昨日のエアリアルも凄かったけど、バルバトスは更にその上を行ってるよー」

 

 そして三日月は、今日の決闘に全て圧勝している。1度も危ない場面が無く、ほぼ無傷のまま。あの元ホルダーのグエルでさえ、敗北しそうになった決闘があったと言うのに、今の三日月とスレッタにはそれがまるで無い。誰が戦っても、皆が負けている。

 

「改修されたバルバトスに勝る機体は、同じく改修されたホルダーのエアリアルくらいしかありませんね」

 

「でもそのエアリアルは、バルバトスと敵対する気も決闘する気も無い。つまり現状、バルバトスに勝てる機体はいないって訳」

 

 既に学園内で、三日月のバルバトスに勝てる存在はいない。いるとすればそれはスレッタになるが、あの2人が決闘するなんてありえないだろう。

 

「まぁ、流石にバルバトス相手にモビルスーツ100機とかで挑めば勝てるだろうけどね」

 

「それは勝てるでしょうけど、現実的じゃないですね。そんな多くのモビルスーツを展する決闘場は、学園には無いですし」

 

 セセリアはそう言っているが、実は圧倒的多数相手こそバルバトスの本領なのでそれも難しかったりする。

 もし仮にセセリアの言う通りに100機のモビルスーツを揃えて戦っても、そのパイロットが全員グエルやシャディクレベルでないと勝つなんて先ず不可能だ。

 

「ジュリエッタはどうなのだ?例の新型もそろそろ修理が終わる頃だろう?あれならば、三日月のバルバトスに勝てるのではないか?」

 

「やってみないとわかりませんが、やるからには全力で勝つ気で行きますよ」

 

「ふむ、そうか。それは良い心掛けだ」

 

「うへー。あれを相手にしようって考えが凄いねー。エアリアルならまだしも、俺はバルバトスの相手は勘弁だよー」

 

 三日月に勝つ気でいるジュリエッタと違い、エランは冗談じゃないと言った様子。今のファラクトじゃ、バルバトスの相手なんて先ず無理だ。勝つ為にはパーメット・スコアを上げるしかないが、彼は絶対にそんな事したくない。なんせスコアを上げると、間違いなく寿命が縮む。

 そんなの嫌だ。自分は長生きしたいのだ。だからバルバトス相手に決闘だなんて、絶対にしたくない。何だったらエアリアル相手の決闘もしたくない。

 

「今更ですけど、エラン先輩キャラ変わりました?」

 

「ま、色々あって肩の荷が下りたからね。こっちが俺の素だよ」

 

 セセリアの問いに、エランは答える。勿論素でこうなのでは無く、そもそもこのエランは全くの別人。別人なのだから、性格が違うのは当然だ。無論その事を言える訳ないので、こうしてごまかしている。

 

(それはそうと、何とかスレッタ・マーキュリーともっと親密にならないとなぁ…)

 

 更にエランの頭を悩ませているのが、スレッタについての事だ。上からの命令でスレッタともっと親密になり、エアリアルの情報を手にしないといけないのだが、これが全然上手くいっていない。

 その理由が、三日月である。なんせ三日月は、前任のエランである強化人士4号とオリジナルのエランを1発で別人だと見抜いてきた。自分も間違いなく、正体を見抜かれるだろう。

 そしてスレッタは、基本三日月と一緒にいる。そこに馬鹿正直にノコノコ出ていくなんて、したくない。可能な限り三日月がいない隙にスレッタに接触して、スレッタとより親密な関係を築かなくては、自分も碌な末路を迎えない。

 

(はぁ…いっそ無理にでもデートに連れ出してみるか?でもそれが原因で彼の逆鱗に触れたく無いしなぁ…)

 

 エランが今後どうするか悩んでいると、三日月の最期の決闘が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 連続決闘最期の6戦目。相手はペルガミノ寮のハッシュ・ミディという生徒。事前にミオリネから聞いた話では、これと言って大きな活躍の無い生徒との事。

 だからと言って、油断はしない。最初から全力で叩き潰すだけだ。

 

「勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず」

 

『操縦者の技のみで決まらず』

 

『「ただ、結果のみが真実」』

 

『フィックス・リリース』

 

 決闘前の前口上を言い終えると、直ぐに決闘が始まる。

 

 先ずハッシュは、バルバトスから距離を取った。近づいて戦うのは、ただの自殺行為でしかないとわかっているからである。

 

『くらえ!』

 

 そして十分に距離を取った時、ハッシュはモビルスーツ用の煙幕手りゅう弾を2つ使用した。

 

「ちっ、鬱陶しいなこれ」

 

 視界を奪われた三日月は、舌打ちをしながら移動をしようとした。しかし、思っていたより煙幕の範囲が広い。このまま下手に動くと障害物に当たってしまうかもしれないので、1度その場に留まって周囲を警戒。

 

(よし!このまま行くぞ!)

 

 一方ハッシュは、スピナ・ロディの赤外線センサーを起動。これでバルバトスの位置を把握する事に成功。

 そして銃口をバルバトスの武器に狙いを定めて、この決闘の為に用意した秘密兵器を使用した。

 

「ん?」

 

 何かがソードメイスに当たった。そんな感触を三日月は覚えた。ようやく煙幕が晴れて手元を見てみると、

 

「何これ?」

 

 そこには、白いベタベタした何かがソードメイスに付着していた。

 

 これは、ペルガミノ社が開発した特殊粘着弾。わかりやすく言うと、トリモチ弾である。戦場で敵の指揮官を捕縛する為だったり、相手のモビルスーツを破壊せず無力化する用途で開発された武器だが、殆どの戦場で使われた事は無い。その前に足でも撃った方が早いからである。

 

「取れない…」

 

 三日月は、ソードメイスをブンブンと振るうが、トリモチ弾はまるで取れない。これでは武器の意味を成さないだろう。そう考えた三日月は、ソードメイスをあっさり手放した。

 

(まぁ、なんとかなるでしょ)

 

 手持ちの武器は、他にもまだある。たかだか武器がひとつ使えないくらいで、三日月は負けたりしない。

 

「あ、あいつ逃げてる」

 

 煙幕が晴れた事により、ハッシュのスピナ・ロディを見つける事が出来たが、彼は決闘場内に設置された廃ビルに向っている。恐らく、そこで隠れて三日月相手にゲリラ戦でもしかける腹積もりなのだろう。

 

(全方向警戒しないとな…)

 

 後ろから撃たれたりするかもしれない。油断せず、全ての方向を警戒しておかないと負けかねない。油断せず、廃ビルエリアでしっかりと相手を仕留めるとしよう。

 

(何処だ?)

 

 廃ビルエリアに侵入した三日月だが、相手が見当たらない。よほどうまく隠れているのか、それともステルスに特化したモビルスーツなのか。そんな事を思いながら三日月が周りを見渡していると、

 

 ドオォォォン

 

「っ!?」

 

 背後で爆発音がし、三日月は直ぐに振り返る。

 

「いない?」

 

 しかしそこには、誰もいない。あるのは何かが爆発したであろう跡だけ。実はこれ、ハッシュが廃墟ビルエリアに入って直ぐしかけていた時限爆弾なのだ。三日月の気を反らす為に、大急ぎで設置していた。そんな事を知らない三日月が警戒しながら爆発跡を見ている、その時だ。

 

「上か!?」

 

 何かが、バルバトスの上に投げ込まれた瞬間に爆発した。それは大きな音を出したと思ったら、何かを四方八方にまき散らす。当たってはマズイと思った三日月は、直ぐにバルバトスを動かしてそのなにかを回避。

 

「何だこれ?」

 

 周りを見てみると、白くてネバネバした何かが辺り一面に大量に付着していた。

 

「これって、さっきの?」

 

 三日月はそれに見覚えがあった。先程、ソードメイスに付着していた物に酷似しっている。そして三日月が思った通りで、これは特殊粘着玉ことトリモチ爆弾である。爆発すると、辺り一帯にトリモチをばらまくという爆弾だが、これも戦場で使われた事は皆無だ。

 

「機体のダメージは…

 

 三日月がバルバトスを機体状況を確認すると、運の悪い事にトリモチ玉がテイルブレードの付け根と、右腕のレクスネイルに付着していた。これではテイルブレードが使用できないし、爪も片方が使えないのでバルバトスの近接格闘能力も半減しているも同然だ。

 流石の三日月も、殺意の欠片も無い四方八方に雨あられと広がるトリモチ攻撃を完全に避ける事は無理であり、こうして機体の様々な箇所にトリモチが付着し、その驚異的な戦闘能力を制限されてしまったのである。

 おまけに足にも少し付着しているので、機動力も落ちている。これでは、簡単に相手の射撃攻撃も避けられないかもしれない。つまり今攻撃されるのは、ちょっとマズイという事だ。

 

『よし!かかった!!』

 

 作戦が成功したと思ったハッシュは、スピナ・ロディでビルを突き破ってバルバトスに

ビームライフルによる攻撃を開始しようとしてきた。今のバルバトスは、その力を大きく制限されている。

 これならいけるかもしれない。まだ左腕と両足が残っているが、そんなもの距離を取っていれば問題無い。なんせバルバトスには、射撃武装が無いのだから。

 

『ここで倒れろ!!地球寮の悪魔め!!俺達の糧になれ!!』

 

 バルバトスの頭部に狙いを定め、勝ちを確信するハッシュ。これで自分達も、一気に上に上がれる。そしてハッシュのスピナ・ロディのビーム攻撃が、バルバトスの頭部に向って放たれた。

 

『なっ!?』

 

 しかしバルバトス、この攻撃をその場にしゃがんで回避。これまでもバルバトスの決闘は見てきたが、やはりあの俊敏性は異常だ。ビームライフルの攻撃をあんな風に避けれるなんて、どうかしている。

 

(いや!まだだ!ここで攻撃を続ければ勝てる!!)

 

 だが、それもその場しのぎに過ぎないとハッシュは考えた。このまま相手の攻撃が届かないアウトレンジ攻撃を続ければ、バルバトスは負けるだろう。近づかれたら、また距離を取ればいいだけだ。

 そしてハッシュが再びビームライフルで攻撃をしようとしたその時、

 

 『……は?』

 

 何かがこちらに飛んできて、ハッシュのスピナ・ロディのブレードアンテナが破壊された。

 

 ハッシュはバルバトスに射撃武装が無いと思っていたようだが、実はバルバトスにはちゃんと腕に内蔵された射撃武装があるのだ。

 この時バルバトスは、その腕部ビーム砲を使用してハッシュのスピナ・ロディのブレードアンテナを破壊したに過ぎない。その攻撃をハッシュは避け切れずに、今頭部のブレードアンテナを破壊されたのだ。

 

『勝者 三日月・オーガス バルバトスルプスレクス』

 

 そして決闘場の上空に、三日月が勝利したといメッセージが出現。

 

「あー…終わったぁ…流石に疲れたな…」

 

 1日で6戦の連続決闘。いくら体力お化けの三日月とはいえ、これはちょっとキツイ。今日はもう、このまま寝てしまいたいくらいに疲れている。全ての決闘も終わった事だし、さっさと帰って寝るとしよう。

 

『待て!まだだ!まだ終わっていない!!』

 

 だが三日月が帰ろうとした時、スピナ・ロディから降りてきたハッシュがバルバトスに向って大声で叫び出したので、三日月は足を止める。

 

『モビルスーツから降りて来い!素手で勝負だ!!』

 

「はぁ?」

 

 そしてハッシュは、なんと三日月と素手による決闘を申し出てきた。

 

『おい!ハッシュ・ミディ!貴様は今負けたのだ!結果が認められないからと言って、そんなみっともない真似してるんじゃない!!決闘は絶対だ!例外は認めんぞ!!』

 

 このハッシュの行動に、イオクも注意する。なんせ今、ハッシュは負けたのだ。

それも正々堂々戦って負けた。なのにハッシュは、その負けを認めようとせず再び勝負しろと言い出している。

 これは頂けない。決闘は絶対なのだ。これに意を唱える事は、誰であっても許されない。

 

『うるせぇ!だったら今からまたこいつに決闘を申し込む!!だから今すぐ勝負しろ!!』

 

『貴様なぁ…!』

 

 しかしハッシュ、それならばと三日月に再度決闘を申し出てきた。当然イオクは、そんな事を認めないと言おうとする。

 

「いいよ」

 

『な!?良いのか三日月!?』

 

「うん」

 

『むぅ…そういう事なら、その決闘を承諾しよう』

 

 だが三日月、この突然の再戦を承諾。

 

『ちょっと三日月!何勝手な事してるのよ!?』

 

「でもさ、多分あいつ、ここでちゃんとしとかないとしつこいよ?」

 

『……勝てるんでしょうね?』

 

「大丈夫だよ。体鍛えてるし」

 

『そう、ならやりなさい。ただし、絶対に勝つのよ』

 

「わかった」

 

 ミオリネからも許可を得たので、モビルスーツから降りてさっさと決闘を済ませる事にした三日月。

 

「ニカ、俺今から降りるからシステムちょっと弄って」

 

『……あ!う、うん!直ぐに降りられるようにするね!』

 

「ありがと」

 

 そしてニカに頼んで、阿頼耶識システムを遠隔操作で外してもらい、ゆっくりとバルバトスから降りて、ハッシュの元に近づく。

 

「えっとじゃあ、ただ、結果のみが真実」

 

「フィックスリリース!」

 

 決闘の前口上もそこそこに、三日月とハッシュは素手による決闘を開始する。ハッシュは三日月に一気に踏み込んで、右の拳を三日月の顔面目掛けて振り下ろす。それを三日月は、しゃがんで回避。

 

「ぐふっ!?」

 

 そしてそのままの勢いで、ハッシュの顎に向って左腕でアッパーカットをお見舞いした。三日月の攻撃が思いっきりクリーンヒットしたハッシュは、その場に背中から倒れて意識を失う。

 こうしてハッシュは、たった1発でノックアウトしてしまい、再度申し込んだ決闘にも負けてしまったのである。

 

「お前、口ほどにも無いじゃん…水星のじじい共の方が、よっぽど手ごわかったよ…」

 

 そして想像以上に弱かったハッシュに、三日月は心底呆れながらその場を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 翌日 地球寮

 

「うちのハッシュが、本当にすみませんでした!!」

 

「す、すんません…」

 

 決闘の翌日、ペルガミノ寮の寮長であるビルスがハッシュと共に頭を下げに地球寮にやってきた。昨日のハッシュの行動は、そこら中から総スカンを食らっている。

 負けを認めないばかりか、その後直ぐに挑んだ決闘で瞬殺。ダサイ、あまりにダサイ。あと単純に地球寮に迷惑かけている。なのでビルスは、ハッシュに説教をした後に、こうして地球寮に謝罪をしにきているのだ。

 そしてハッシュ自身も、あの時は頭に血が昇っていたと自覚し、落ち着いた今はかなり反省している。

 

「別に気にしてないからいいよ。俺勝ったし」

 

 因みに謝罪を受けている三日月は、面倒くさいとは思っていたが別にそれだけで特になんとも思っていない。それどころか、ハッシュの名前さえ憶えていない。

 

「それで何ですが、賭けの内容はどうします?」

 

 謝罪を終えたビルスは、三日月にハッシュの賭けについて聞く。ハッシュが勝てばバルバトスを奪えたが、ハッシュが負けた時は三日月の命令を何でも聞くというものだったのだ。

 もしここで三日月がハッシュに退学しろなんて言えば、ハッシュは退学するしかなくなる。大事な弟分の為にもそれだけは何とか避けないビルスだが、決闘に負けているのでそんな事言えない。

 

「じゃあ、明日から暫くティコ達の寝床の掃除を手伝って」

 

「「ティコ?」」

 

「あれ」

 

 ビルスとハッシュが首をかしげていると、三日月が指をさす。

 

「めぇ~~」

 

 その先には、ヤギがいた。

 

「あのヤギ?」

 

「そう。最近皆忙しくて、そこまで手が回らない事があるんだ。だから掃除して」

 

「因みに、それいつまで?」

 

「1か月くらいで」

 

 スレッタがホルダーを維持し続け、三日月が決闘に勝利。そしてもうじき、株式会社ガンダムも営業再開できる。そのせいで、ここ数日の地球寮は本当に忙しい。各々開いた時間で世話や掃除をしてはいるが、それでも完璧に手が回らない。

 なので暫くハッシュを掃除係に任命しようと、三日月は考えたのだ。

 

「わかりました!それでいいです!」

 

「な!?ビルス!?」

 

「ハッシュ!黙ってここで暫く掃除しろ!いいな!!」

 

「ぐっ…わかったよ…」

 

 ここでもし断ろうものなら、ペルガミノ寮の印象はもっと悪くなる。そもそも決闘での賭けは絶対のルール。それを蔑ろにするなんて、誰であってもしてはならないのだ。

 

「言っとくけど、入っていいのはそこだけだからね。寮の奥には絶対に入れさせないわよ」

 

「勿論です。こいつにしっかりと言い聞かせます。何なら首輪でも付けますので」

 

 ミオリネの注意を素直に聞くビルス。仮にここでバルバトスやエアリアルの情報をスパイしようものなら、本当にペルガミノ寮は終わる。とりあえず帰ったら、ハッシュにはもっと言い聞かせておこう。

 

「それじゃ、明日からよろしくお願いします。帰るぞ、ハッシュ」

 

「わかったよ。あの、それじゃ明日…」

 

 再び頭を下げて、ビルスとハッシュは帰っていく。こうしてハッシュの掃除の日々が、明日から始まる事となってしまったのだ。

 

 

 

「取り敢えず2人共、決闘お疲れ様。これで暫くの間、誰もあんたらに決闘を仕掛けてこないでしょう」

 

「ありがとうございます、ミオリネさん」

 

「うん」

 

 ハッシュ達が帰った後、ミオリネは地球寮の皆と談話室で決闘後のスレッタと三日月を

ねぎらっていた。

 

「いやー、マジで助かったぜ2人共!おかげで財布が潤ってしょうがねぇ!」

 

「これで学食のスペシャルランチを3か月は食えるな」

 

 オジェロとヌーノはニコニコしている。スレッタと三日月の決闘でボロ儲けしたせいだ。今なら多少の贅沢も許される。

 

「にしても、新しいエアリアルとバルバトスマジで強いな」

 

「そうだな。目に見えて以前よりパワーアップしているのがわかる」

 

「だね。エアリアルは機動力と攻撃力が上がっているし、バルバトスは背中のテイルブレードで最早無双状態だったし」

 

 チュチュ、昭弘、ティルは改めて改修された2機の強さを再確認。2機共、この2日の決闘で全くピンチに陥っていない。それだけ、エアリアルとバルバトスが強くなっている証拠だ。これならば、もう誰にも負ける事は無いだろう。

 

「リリッケ、大丈夫か?」

 

「はい、何とか。耐性付いたのか、少しは楽になってますし」

 

「そっか。でも無理はしないでね?」

 

「勿論です」

 

 そしてアリヤとマルタンは、リリッケの心配をする。あの日以降、決闘のような場面がダメになったリリッケだったが、今は大丈夫らしい。とりあえず、少しは成長したという事でいいかもしれない。それでも、油断は全く出来ないが。

 

「でも決闘に勝ったからと言って、天狗になって油断なんてしないでよ。もう少しでランブルリングがあるけど、そこで負けたらホルダーじゃなくなるんだし」

 

「も、勿論です!絶対に負けません!ミオリネさんの誕生日まで、私はホルダーを維持し続けますから!」

 

「…それでいいのよ」

 

 スレッタの言葉に、ミオリネは少しだけ頬を赤くする。プラント・クエタ以降、スレッタはミオリネと結婚する為に何があっても決闘に負けないと約束をした。ミオリネの言う通り、勝ったからと言って慢心はできない。何があろうと、ミオリネの誕生日までホルダーを維持しなければ。

 そしてそんなスレッタの素直な気持ちが、ミオリネは本当に嬉しかった。簡単に言葉にはしないが、今めっちゃ嬉しくて仕方が無い。何ならハグしてやりたい気分だ。

 

「それで三日月、体は大丈夫?」

 

「全然大丈夫。この試作GUNDのおかげもあって、腕も違和感ないしね」

 

 そんな気持ちを隠しながら、ミオリネは三日月に話しかける。今三日月は、寮内限定で例のGUNDを装着してるのだ。これで以前のように、両腕を使って生活が出来ている。株式会社ガンダム営業許可が下りて、GUNDが正式に認可されればどこでもこのGUNDを使用できるだろう。これはその為にも、寮内で使用してGUNDに慣らせようとしている結果だ。

 

「そう。でも少しでもおかしいと思ったら直ぐに誰かに言いなさいよ?」

 

「わかってるよ」

 

 最初の頃に比べると、ここ最近のミオリネは随分と丸くなった。スレッタが決闘を勝ち続け、三日月がその身を犠牲になったのを目の当たりにし、父親であるデリングに色々と言われたおかげで、ミオリネは多少自分を見つめ直したのである。それでも、未だに強い言葉は使うのだが。

 

「そういえば、ニカはどこいったの?さっきから見えないけど」

 

「ああ、ニカ姐なら明日の授業の予習で使いたい資料があるからそれを資料室まで取りに行くって言ってたぞ」

 

 ミオリネの質問に、チュチュが答える。どうやら寮の外にある資料室に行っているらしい。

 

「そ。そうやって予習する事は良い事ね」

 

 予習は大事だ。それをするだけで、授業の理解度がとても上がる。

 

「あんたらも、決闘や会社だけじゃなくて、ちゃんと授業もしなさいよね。学生の本分は勉強なんだから」

 

「うーい」

 

「へーい」

 

 オジェロとヌーノが、そんな軽い返事をする。

 

「スレッタ、あんたもよ?今度の筆記テストで赤点なんて取ったら許さないから」

 

「わ、わかってます!ちゃんと勉強もします!!」

 

「それでいいの」

 

 そしてスレッタは、やや慌てた返事をした。というのも、実は最近勉強をサボり気味だったせいで、少し授業に遅れ気味なのだ。今日からはちゃんと勉強もして、今度の筆記テストでも良い点数を取らなければ。

 

「あ、三日月はどうなの?ちゃんと勉強してる?」

 

「うん。勉強は面白いからちゃんとしてるよ。今度のテストも大丈夫だと思う」

 

「……え?」

 

 そして幼馴染が自分よりずっとちゃんと勉強していたのを知り、よりちゃんと自分も勉強をしようと決める。

 

 でもやったら普通にわからないところがあったので、アリヤやリリッケに教えを乞うのであった。

 

 

 

 

 

 アスティカシア学園 資料室

 

(顔見れないよ…どうしよう…)

 

 一方その頃、ニカは資料室の隅でじっとしていた。ようやく決闘が終わり、束の間の平穏が訪れた筈なのに、ニカは中々地球寮に戻れないでいる。

 

 理由は単純で、三日月と顔を合わせずらいからだ。

 

 いきなりキスをされてから、ニカはずっと三日月を意識しっぱなし。とてもじゃないが、三日月と正面切って話すなんて出来そうに無い。こんな事、今まで1度も経験してこなかった。故にニカは、どうすればいいのかがわからない。

 

(そもそも、私は三日月くんの事どう思ってるんだろう?)

 

 自分の胸に聞いて自問自答してみるが、答えが出ない。これがキスをされた事による勘違いなのか、それとも自分は三日月を好きになってしまったのか、まるでわからない。

 

(こんな事なら、機械工学だけじゃなくて色んな事をもっと学べば良かったかも…)

 

 生まれのせいでそんな暇なんて無かったのだが、ついそう思ってしまうニカ。もしそういった事も学べていれば、今の自分のように悩む事は無かったかもしれない。

 

(はぁ…どうしよう…)

 

 三日月の事だけじゃなく、他にも色んな悩みを抱えているニカ。おかげで最近、割といっぱいいっぱいになっている。このままでは、頭がパンクしてしまいそうだ。

 

 結局その後、資料室で1人悩み続けたニカが地球寮に帰ったのは、夜11時を過ぎてからであった。

 

 

 

 

 

 グラスレー寮 寮長室

 

「シャディク。ドルトコロニーで例の兵器の梱包が完了した。3日後には、学園に運び込まれる事になっている」

 

「そうか。なんとかランブルリングには間に合いそうだね」

 

 寮長室には、シャディクとサビーナ達が集まってお茶会という名の会議をしていた。

 

「でもさシャディク。あれを使ってまでバルバトスを破壊しないといけないの?」

 

 新しい紅茶を淹れたシャディクに、メイジーが話しかける。確かにバルバトスは強力な存在だ。しかし、何もあの兵器を使ってまで始末しないといけないのかと言われれば、少し疑問が残る。

 

「ああ、出来れば俺の手に収めておきたいけど、今後万が一彼が敵になったら危険だからね。そうなる前に完膚なきまで破壊しておきたいんだ。パイロット暗殺もひとつの手ではあるけど、学園内じゃ銃は持ち込めない。そもそも彼は異常に勘が良いらしいから、暗殺は成功しないかもしれない。だからアレを使うんだ。悪魔の宿敵だったアレをね」

 

「そこまで危険視する?いやまぁ、確かにバルバトスは強いけどね」

 

 シャディクの言っている事はわかるが、それでも少々やりすぎな気もする。

 

「勿論、他にも理由はあるよ。ランブルリングで、アレの稼働データを集める事だ」

 

「データ収集って事?」

 

「そう。そしてそのデータは、俺達の今後に必要だ。でも並大抵の相手じゃ意味がない。

そこで彼だよ。宿敵だった彼ならば、良いデータが取れる」

 

 もし相手がその辺のテロリストだったら、まともなデータも取れずに瞬殺だろう。だがバルバトスならば、問題無い。なんせバルバトスは、アレを殺す為に作られたモビルスーツ。これ以上に、おあつらえ向きの相手もいない。

 

「そっか。ならいいや」

 

 シャディクの言葉に納得したのか、メイジーはそれ以上何も聞かない。

 

「ランブルリングには、デリング総裁は出席しないだろう。そこはどうする気だ?」

 

「そこも考えているさ。総裁を引きずり降ろす丁度良い情報も手に入れたしね。でも先ずは養父さんを引きずり降ろして、俺達がグラスレーを手に入れる事が先だ」

 

「……いいんだな?もう引けないぞ」

 

「ああ、養父さんには本当に感謝してるけど、それはそれだ。命までは取らないし、どこかで静かに余生を過ごしてもらうさ」

 

 サビーナに言われるが、シャディクは既に覚悟を決めている。大勢の人が死ぬ事になるだろうが、それでも進むと決めたのだ。自分達には、成さないといけない事がある。その先がどれだけ多くの屍の山を築く事になっても、進み続ける。

 

「ねぇ、レネ?さっきからどうしてずっと黙ってるの?」

 

「お腹でも痛い?」

 

 そんな中、イリーシャとエナオがレネに話しかける。どういう訳か、レネはこの部屋に来てからずっと黙っているからだ。何故か一言も喋らない。ずっとソファに寝転がって、天井を見つめたままだ。

 

「…………」

 

「レネ?」

 

「決めた」

 

「ん?」

 

 すると突然、レネは起き上がる。

 

「シャディク、私明日ちょっと出かけてくるから」

 

「え?」

 

「じゃ」

 

 そして一方的にそう言うと、そのまま寮長室を出ていくのであった。

 

「「「「「……え?」」」」」

 

 寮長室に残された5人は、異口同音にそう言った。

 

 

 

 

 

 学園内 三日月の畑

 

「今度は何を育てようっか…」

 

 三日月は端末で家庭菜園情報を読みながら、次に育てる野菜を見繕う。

ジャガイモやニンジンなどは作ったので、次は少し難しい物を育ててみたい。因みに最終目標は、火星ヤシを自分の手で育てる事である。尚ミオリネからは、無謀と言われた。

 

「やっほー三日月」

 

「ん?」

 

 そこにレネが現れる。

 

「なんか用?」

 

「ちょっと話があるの。いい?」

 

「いいけど」

 

 三日月は端末を閉じて、レネの話を聞く事にした。

 

「この前さ、ご飯なら一緒に行ってもいいって、言ってたよね?」

 

「あー、確かに言ったね」

 

 それはプラント・クエタ襲撃の前、GUNDの試験をしていた日の事だ。あの時三日月は、レネのご飯のお誘いを別に行ってもいいと確かに言っていた。

 

「じゃあさ…」

 

 そしてレネは、1度静かに深呼吸をして三日月に言った。

 

「明日、私と一緒にご飯行かない?2人きりで」

 

 それは、明らかにデートのお誘い。レネの親衛隊が聞いたら、即了承するであろうお誘いだ。そしてスレッタやリリッケが聞けば、黄色い悲鳴を上げるだろう。

 このお誘いを三日月は、

 

「別にいいよ。明日は特に予定無いし」

 

「……え?マジ?」

 

「うん」

 

 何と了承した。ご飯に釣られた訳じゃなく、明日は本当にやる事が無いからである。バルバトスは整備中で、学園の授業も無い。つまり暇なのだ。

 それに以前レネに奢って貰ったお店のご飯は、本当に美味しかった。またああいった物が食べれるなら、行ってもいいだろうと考えたのだ。

 後レネには、割と畑の世話を手伝ってもらっている。自分がレネにばかり手伝わせて、レネのお願いをひつとも聞かないのは流石に悪い。なので受けたというのもある。

 

「ふふ、そっか!そっかぁ…!!なら明日の朝9時に、学園の4番港まで来てね?絶対来てね?」

 

「忘れたりしないって」

 

「約束だからね?じゃ、また明日!!」

 

 そう言うとレネは、少し浮ついて様子でその場を去る。心なしか、スキップしているようにも見えた。

 

「どんなご飯、食べれるのかな?」

 

 畑に残った三日月は、明日はどんな物が食べれるのかちょっとワクワクする。もしそれが美味しかったら、今度はスレッタ達とも行ってみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして翌日、何故か三日月は学園の外にある大型商業プール施設に来ていた。

 

 

 

 

 





 以下 キャラ紹介

 ゴクハ・ファウンドリンク

 ウルズハントに登場するキャラの「598」。元ヒューマンデブリで、名前はその時の所有者が付けた番号から。主人公ウィスタリオとの出会いをきっかけに、同じ境遇の仲間とともにファウンドリングという組織を結成していた。

 本作ではスペーシアンであり、両親も普通に健在。グラスレーとの決闘で三日月の暴れっぷりを見て三日月に強い憧れを抱くようになっているパイロット科の1年生。



 タマミ・ラコウ

 ウルズハントに登場する海賊団の船長。名瀬とアミダに強い恩義があり、その恩義を返す為にウルズハントに参加している。

 本作ではラコウ寮寮長であり、社長令嬢になっているパイロット科の2年生。心配性な両親にややうんざりしているが、しっかり両親の事は愛している。そして義理人情に厚く、筋が通らないことは許さない真っ直ぐな性格のため、寮内や学園内の信頼が厚い。あと女性人気がかなり高い。



 ハッシュ・ミディ

 鉄血のオルフェンズ2期に登場するキャラ。三日月に強い対抗心を持っており、阿頼耶識の手術を失敗してもいいからして欲しいと言うくらい、リスクを承知で行動する面が目立つ。でも最終的には三日月の舎弟になって、三日月の身の回りの世話とかをしていた根は真面目な子。

 本作では、恵まれている(と勝手に思っている)三日月に強く嫉妬しているパイロット科2年生のスペーシアン。最近自分達の会社の業績が低い事もあり、何としてでもバルバトスを手にしようと躍起になっていた。
 因みに同じ寮には、シャディクの声に似ているリーゼントの友達と、大柄な背丈の友達がいる。


 
 そんな訳で、三日月とバルバトス無双な決闘でした。いや、だってルプスレクスよ?普通に考えて、強すぎて誰も勝てないのよこの子。まぁ、相応しい相手がその内登場するので、それまでお待ちを。

 次回は三日月×レネの水着回です。それが終わったら、ソフィとノレアが転校してくる感じになると思います。

 今年も本作を読んでくれて、本当にありがとうございます。来年はもう少し投稿頻度を上げたい所存です。どうか来年も、よろしくお願いします。それではそれでは皆さん、良いお年を。

正月の予定は?

  • 1人でのんびり過ごす
  • 友達と過ごす
  • 家族や親戚と過ごす
  • 仕事です…
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