悪魔と魔女の物語   作:ゾキラファス

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 ようやくここまで書けました。大変かもだけど、今後もちゃんと書ききります。

 それと今回から、作者の都合にてまた新しい水星のキャラが出ます。活躍するのはずっと先になるでしょうが、ご注意ください。

 あと、毎回誤字報告してくれて、ありがとうございます。



 追記、私の書き方があまりに説明不足だったせいで、大勢の方が勘違いをされております。なので最後の方を,少し加筆いたしました。感想で言われるまで、気が付かなくてごめんなさい。

 そして大勢の方を勘違いをさせてしまい、誠に申し訳ございません。以後、こんな事が無いように気をつけます。


ランブルリング 1

 

 

 

 

 

 地球 とある港町

 

 漁業と海運業が盛んなとある港町。ここは戦争シェアリングの影響も無く、海も町並みのとても綺麗で、まさに平和そのものと言える港街だ。

 おまけにスペーシアン差別も特に無く、街にはアーシアンとスペーシアンが共存できている地球でもかなり珍しい街である。

 

 その理由は、この街の経済基盤を整えたのがアリアンロッド社前CEOのラカン・クジャンだからだ。

 

 彼は長年、アーシアンに対する不当な搾取をやめるべく様々な事をしてきた。病院や学校を建築したり、仕事を斡旋したり、そしてこの街のように、ちゃんと人が生活できるような街の復興もしたりした。

 その結果、この港町の人々は彼に対する恩義を感じており、下手なスペーシアン差別はしなくなったのである。それどころか、アーシアンとスペーシアンで夫婦になる人すらもいる。ある意味、理想とも言える街となったのだ。

 

 最も、これはかなり稀有な例。普通はどこかで、必ず衝突が起こり、最悪戦争に発展したりする。この街が今も平和を保たれているのは、やはり1度も戦争シェアリングの影響が全く無いのが大きいだろう。もし少しでも、戦争の影響があれば、絶対にこうは行っていない。

 

「ふんふん~」

 

 その街から少し外れた丘に続く道、そこを1人の女性が自転車に乗って走っていた。自転車のカゴの中には、買い物をして買った食材がいくつか入っている。

 

 そのまま自転車を走らせると、1軒の赤い屋根の小さな家と、1台の大型トレーラーが止まっているのが見える。彼女はトレーラーの横に自転車を置くと、元気よく家に帰宅した。

 

「先生ー!ただいまー!!」

 

 玄関の扉を開けて、いつものように元気よくあいさつをする。

 

「ああ、おかえり。怪我は無い?」

 

「勿論!私ももう、子供じゃないんだよ?昔と違って怪我なんてしないって!」

 

 そんな彼女を、この家に住んでいる妙齢の女性が出迎えてくれた。彼女は、たった今帰宅した女性にとって恩人とも言える人だ。

 

「それに、この心臓のおかげで、こんなに大きくなれたしね。あのちんちくりんだった子供が、今ではこんなに立派なレディだよ。本当だったら、私はあそこで死んでたのにね」

 

 そう言うと彼女は、両手を自分の胸に当てる。そして静かに、心音が聞こえるのを確認。これは、彼女の新しい心臓。これがなければ、彼女は既に死んでいる。それをどうにかしたのが、眼の前にいる先生と呼ばれている女性だ。

 

「最初は先生の事大っ嫌いだったけど、今では感謝してるよ?色んな場所を旅できて、色んな物を見れたしね」

 

「ふふ、それはよかったわ」

 

 彼女は昔、とある理由でこの家に住んでいる先生と、もう1人の同居人と敵対をした。しかしその後、本当に本当に色々あって、今では一緒に住んでいる仲になっているのだ。

 

「ところで、今日はどうなの?」

 

「……とても静かに寝ているわ。多分、今日も起きないでしょうね」

 

「…そっか」

 

 そして2人は、家の中で機械に繋がれ静かに眠っている男性へと視線を移す。男性は、ベッドの上で今日も眠っている。最近は、ほとんど起きる事が無い。例え起きても、ほんの1時間くらい。

 その理由は、彼の心臓に限界が来ているからである。今まで通りに普通に過ごしていたら、心臓にかかる負荷が大きすぎて死んでしまう。

 故に彼は、ここ数年は心臓をセーフモードにして、そして生命維持装置に繋がれて過ごしている。おかげで、なんとか今日まで生きてはいるのだ。

 だがそれは、生きているだけ。目を開けて会話するなんて、ほとんどできないしさせられない。だからこうして、日がな1日、日当たりの良いこの部屋でまるで眠り姫に眠っている。

 

「ねぇ、先生。やっぱりなんとかならないの?私、新しい心臓を作れるなら何でもするよ?どこかの基地襲って部品だって手に入れてみせるし」

 

「ダメよ。それはダメ。そんな事したら、彼が悲しむわ」

 

「そう、だよね…」

 

 一応、解決策はある、それは、新しい心臓を作ることだ。だがそのためには、希少な部品や大きな医療施設が必要不可欠。でもそんな物、簡単に手に入る筈がない。大企業の基地を襲撃すればそういった部品や場所も手に入るだろうが、そんな真似は彼を悲しませるだけ。

 

「この子にはもう、こうしてゆったりとした余生を過ごさせるしかないの。せめてこの平和な地で、こうして1日中日向ぼっこするくらいしかね」

 

「そんなの、死んでいるのと変わらないじゃん…」

 

「そうね。でも、今まで沢山戦ってきた。だからせめて最後くらい、ゆっくりと過ごさせたいの」

 

「そっか…」

 

 先生と呼ばれた彼女も、本当なら彼とまた普通に過ごしたい。しかし、そんな事もうできない。こうして数年前にこの平和な地で過ごすようにしたのも、彼にせめて静かな余生を過ごしてもらとうとしてる自己満足からだ。

 

(もっと早く、気がついていればよかった…)

 

 後悔先に立たずとは、まさにこの事だろう。もっと早く彼の心臓の異変に気がついていれば、こうはならなかったかもしれない。気がついていれば、彼にはもうモビルスーツに乗って戦わせるなんて真似、させなかった。

 しかし、時既に遅し。今はもうこうして、彼の寝顔を見ながら、彼の平穏を願うくらいしかできない。

 

「あ、そういえば先生。さっきね、街で先生の友達って人にあったよ」

 

「友達?」

 

「うん。でも怪しいから逃げてきちゃった」

 

 そうやって後悔していると、買い物を終えた彼女がそんな事を言ってきた。

 

 少し前、彼女が街で買い物をしていると、突然変な人に声をかけられたのだ。その人曰く、自分は先生の友達らしい。しかし、明らかに怪しい見た目をしていたので、彼女は話を早々に切り上げて、後を着けられないように、いつもとは違う道を使ってこの家に帰ってきたのである。

 

「どんな人だったの?」

 

「えっとね、変なヘルメットみたいな物被っている女の人だよ」

 

「えぇ…」

 

 その凄く怪しい風貌に、先生も警戒する。まさか、今更になってまた追ってがやってきたのだろうか。もしそうなら、もうここにはいられない。

 しかし、今更逃げることもできるかわからない。もしそうなら、トレーラーに積んであるあれでなんとかするかしかないだろう。出来るかはわからないが、それでもやるしかない。

 

 

 

「まさか、こんなところにいたなんてね」

 

 

 

 そう思っていると、声が聞こえた。先生と呼ばれた彼女が振り返ると、そこには確かにヘルメットみたいな物を被っている怪しい人物が立っていた。だが、その声に聞き覚えがある。

 

「もしかして、エルノラ先輩…?」

 

「22年ぶりかしらね、ヴィルダ」

 

 声の主は、かつてエルノラと呼ばれていたプロスペラであり、そして先生と呼ばれた彼女は、かつての後輩であったヴィルダ・ミレンであった。

 

「どうして、ここが?」

 

「随分苦労したわよ?でも、人間が完全に痕跡を消すのは不可能。根気と優秀な諜報員さえいれば、探すのはなんとかなるわ」

 

 まさかの人物と22年ぶりの再会。だが、とても嬉しいとは思えないヴィルダ。一体今更、何をしにこんな場所にきたのか警戒してしまう。まさか自分と再会を祝して、お祝いをしに来た訳でも無いだろうし。

 

「それ以上、先生に近づくな」

 

 すると、プロスペラに銃を向ける人物がいた。ヴィルダと共に過ごしている彼女だ。

 

「あら、嫌われてるみたいね」

 

「そんな風貌では仕方がないかと…」

 

「しょうがないじゃない。これが無いと、私も生きていけないのだから」

 

 なんせ、顔が見えない機械仕掛けのヘルメットを被っているのだ。誰が見ても、不審者にしかみえない。銃を向けられても、仕方がないだろう。

 

「……ヨシカ、銃を下ろして」

 

「でも!」

 

「大丈夫。彼女は敵じゃないわ。まぁ、味方でもないだろうけど。兎に角銃を下ろして」

 

「…わかった」

 

 ヴィルダに言われ、ヨシカは銃を下ろす。ヴィルダに言われたというのもあるが、プロスペラ以外に、この家の周りに複数の気配を感じたからだ。多分ここでプロスペラを撃った瞬間、自分が殺されるだろう。

 

「ふふ、素直で良い子ね。あなたの教育がそうさせたのかしら?」

 

「元々こんな子ですよ」

 

「あらそう」

 

 そう言うとプロスペラは、ベッドで寝ている彼に近づく。

 

「お前!キユウに何する気だ!!」

 

「何もしないわ」

 

 ヨシカが声を荒げるが、プロスペラはそれを半ば無視して進む。そして、ベッドで寝ているキユウと呼ばれた彼に近づいて、じっくりと観察する。

 

「心臓のGUND…先生のじゃないわね。あなたが作ったの?」

 

「基礎は私ですが、キユウに埋め込まれているのは私のではありません…」

 

「そう。随分と完成度が高いから、驚いたわ」

 

 元々GUND研究をしていたプロスペラから見ても、この心臓型GUNDは素晴らしい物であった。しかし、それも一目みただけで限界が来ているのがわかる。このままでは、彼はずっと眠ったまま穏やかな死を迎えるだろう。

 

「ねぇ、ヴィルダ」

 

 そんなキユウの心臓を見て、プロスペラが口を開く。

 

 

 

「もしこの子が、再び自由な体を手に入れられるとしたら、どうする?」

 

「……え?」

 

「私達に協力してくれるのなら、この子に新しい心臓のGUNDを与えるわよ?」

 

 

 

 そしてヴィルダに、悪魔の取引を持ちかけてきたのだった。

 

 

 

 

 

 アスティカシア学園

 

 オープンキャンパス当日。学園内は、活気に満ちていた。将来アスティカシアに入学する予定の子供や、ベネリットグループと業務提携を行っている企業の人、そして学園のOBなどの人達が大勢来校し、各々好きに過ごしている。モビルスーツを見学したり、グループ参加の企業の新技術を見たり、モビルクラフトを操縦したりと様々だ。

 

 そんな中、地球寮はというと、

 

「どうですか?」

 

「あの、これは?」

 

「ヤギのミルクです。美味しいですよ?」

 

「え、えっと!遠慮しておきます!!」

 

「あ、行っちゃった…」

 

 GUND医療を展示してると同時に、ティコのヤギミルクを配っていた。しかし、匂いがかなりキツイティコのミルクは、初見にはかなり厳しい。今のところ、誰も飲んでくれていないのが現状だ。

 

「だから言ったろ。俺は好きだけど、飲み慣れて無い人にティコのミルクは無理だって」

 

「美味しいのに…」

 

 ヌーノやアリアのように、普段から飲み慣れていればいいが、今日学園に来ている人はそうでは無い。やはり、このアイディアはちょっと無理だったみたいだ。

 

「それにしても、ミルクはまだしも、GUNDも禄に見られていないのは予想外だったな…」

 

「しゃーねーだろ。そもそもが呪われた技術とかイメージ持たれてるんだ。そう簡単に皆が受け入れてくれはしないって」

 

「それは、そうかもだけどさ…」

 

 ヌーノの言葉に、マルタンは渋々納得する。あの学園内外に中継されていたグラスレーとの決闘で勝利し、株式会社ガンダムの知名度は飛躍的に上がったというのに、誰もGUNDに興味を示さない。何人か見て足を止めてくれた人はいたが、全員怪訝な顔をして立ち去っていく。やはり、生身の体を機械仕掛けにするというのは抵抗があるようだ。

 

「よし、完成」

 

「アリヤ先輩、それが例の傷薬ですか?」

 

「そうだよリリッケ。故郷で伝わるやつで、効果は覿面だ。私も子供の頃、お世話になったしね」

 

 そう言うとアリヤは、小鉢で作っていた薬を瓶に詰める。これは先日、整備道具の扱いをミスして手を怪我し、その後階段から転げ落ちて腕の骨にヒビが入ってしまったニカに送るためのものだ。

 

「階段から落ちて腕の骨にヒビ入るって、相当だよな」

 

「だね。近くに三日月くんがいたおかげで直ぐに医務室に連れて行って貰えたからよかったけど、誰もいなかったら大変だったよ」

 

 ヌーノの言葉に、マルタンは同意する。

 

 ニカ曰く、うっかり階段を踏み外して転げ落ちたらしい。それにあのニカが、整備道具の扱いを間違えたというのも驚きだ。だってニカは、地球寮で1番のメカニック。そんな彼女が、整備道具の扱いを間違えて、怪我するなんて驚かない方が難しい。

 

 勿論、本当は違う。真実は整備道具の扱いを間違えた訳でも、階段から転げ落ちた訳でもない。ソフィとノレアに、危うく殺されかけたが真実だ。

 だがそんな事、言える訳がない。言えば自分の正体がバレるし、何よりソフィとノレアが何するかわからない。なのでニカは、三日月と協力してそんな嘘をついたのだ。

 

「失礼。見てもよろしいかな?」

 

「え?は、はい!どうぞ!」

 

 そんな時、1人の壮年の髭を生やした男性が足を止めてGUND機器を見る。その背後には、護衛であろうスーツ姿の屈強な男が数名。もしかすると、彼はかなりの地位の人間かもしれない。だとすると、下手な事はできない。しっかりと対応しなければ。

 

「ふむ…これが例のGUNDか。人体への影響はあるのかね?」

 

「いいえ!現時点では確認されておりません!そもそも、人体に影響があるのはGUND技術をモビルスーツに使った場合のみですし!」

 

「そうか。これは足だが、腕やその他の部分も開発は可能かな?」

 

「はい。流石に何でもかんでもとは言えませんが、現在この脚部だけでなく肌の感触を

再現するGUNDも既に開発済みです。ただ、ちょっと色々と事情があってまだトライアルを受けれていないのですが…」

 

「ほう、それは凄いな。中々出来る事では無いぞ」

 

 男性の質問に、マルタンが少し緊張しながらも答え、男性は非常に興味深そうな顔をする。実際、肌の感触を再現出来るGUNDの技術は相当に凄い。簡単に出来る事ではないからだ。

 

「あの、このミルクはどうですか?」

 

「ありがとう、お嬢さん。いただこう」

 

 そんな男性に、リリッケがティコのミルクを差し出す。すると彼は、紙コップに入ったミルクを一切嫌そうな顔をせずに受け取り、飲み干した。

 

「ほぉ、味が濃ゆくてうまいな」

 

「ふふ、ありがとうございます。でも少し驚きました。皆これ飲もうとさえしてくれないのに」

 

「はは、私は趣味で牧場を経営していてね。そのおかげで慣れているだけさ」

 

「まぁ、そうだったんですか?因みに何を育てておいでで?」

 

「主に牛だね。少しだけヤギや羊もいるが」

 

 おまけに、ミルクを美味しいと言ってくれた。今日初めての事である。

 

「しかしイオク坊っちゃんから聞いてはいたが、想像以上だ。これは確かに素晴らしい技術だよ」

 

「ありがとうございま…え?イオク坊っちゃん?」

 

 男性の台詞に、マルタンは疑問符を浮かべる。だって彼の口から出た名前は、株式会社ガンダムに協力してくれている

イオクだ。どうして、その名前が彼の口から出てきたのだろうか不思議である。

 

「おっと失礼。私はこういう者だ」

 

 すると男性は、懐から名刺を取り出して、マルタンに手渡す。

 

「あ、アリアンロッド社CEO、ラスタル・エリオン代表!?し、失礼しました!!」

 

『!?』

 

 眼の前の相手は、あのイオクやジュリエッタが所属しているアリアンロッド社のCEOその人であった。突然の大物の登場に、その場にいたマルタン、リリッケ、ヌーノ、アリヤの4人は驚く。

 

「そう身構えないでくれ。今日はお忍びみたいなものなのでね。しかし、イオク坊っちゃんから聞いた時は、正直半信半疑で、数十年も前に消えた技術を今更復活させて何になるのかとさえ思ったものだが、実際に目にしたら確信したよ。これは良い物だ」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

 そしてラスタルは、株式会社ガンダムのGUNDを称賛する。実際に見て、これがかなりの利益を出すとわかったからだ。地球には、戦争で手足を失った人が大勢いる。そんな人らに優先的に販売、もしくは配布すれば間違いなく売れるだろう。彼はそう確信したのだ。

 だからここは、今後も良い関係を持つためにも、しっかりとこちらの顔を売っておくとしよう。

 

「これからも、頑張りたまえ。そして何かあったら、イオク坊っちゃんに連絡をして、助けてもらうといい。彼は経営に関しては、とても信頼出来るからね」

 

 無論、その時はイオクだけじゃなく自分も助けるつもりである。最も、それは株式会社ガンダムの経営が上手く行っている事が前提。もし経営が振るわなかったら、普通に手を切るつもりだ。厳しいかもしれないが、それが商売である。

 

「それでは」

 

『は、はい!!』

 

 ラスタルはそう言うと、その場から立ち去る。

 

「やっべー…超大物が来たじゃん…」

 

「き、緊張しました…」

 

 ヌーノとリリッケは、どっと疲れたような気がしていた。なんせ、御三家の次に力を持っていると言われているアリアンロッド社である。もし何か不快な事をしてしまえば、何をされるかわからない。

 

「でもおかげで、良い宣伝になったと思うよ」

 

「だな。これで少なくとも、アリアンロッド社からは好印象を持たれただろうさ」

 

 でもマルタンとアリヤの言う通り、今の反応を見る限りはかなり好印象に見える。これなら、多分大丈夫だろう。ランブルリング後に会社の営業許可が下りたら、悪くない滑り出しが可能かもしれない。

 

「おっと。そろそろランブルリングの時間だ。1度店を片付けて、準備しないと」

 

「あ、もうそんな時間か。じゃあ急がないとね」

 

 アリヤは時間を確認すると、あと1時間ちょっとでオープンキャンパスの特別イベント、ランブルリングが始まる。どうせもうお客は来ないだろうし、ここは片付けて準備に入るとしよう。

 

 そうして片付けて、地球寮のモビルスーツハンガーに戻る4人。ハンガー内では、他の地球寮のメンバーがランブルリングの準備に勤しんでいた。

 エランは既にファラクトに乗り込んでいるし、チュチュと昭弘もパイロットスーツに着替えて、自分の愛機に乗り込もうとしている。そしてティルとオジェロは、モビルスーツの最終チェックをしていた。早いところ、自分達も手伝うとしよう。

 

「あ、ちょうどよかったわあんたら」

 

 だがそう思った矢先、どこか焦っているような、怒っているようなミオリネに話しかけられた。

 

「ミオリネ先輩、何かあったんですか?」

 

「実はね、三日月とニカがいないのよ。もう直ぐランブルリングが始まるっていうのに、あいつらどこで何してるんだか…電話にも出ないし、あの2人がどこに行ったか知らない?」

 

 リリッケの質問に、ミオリネが答える。どういう訳か、三日月とニカがいないらしい。

 

「知ってるかマルタン?」

 

「いいや、僕は知らないよ」

 

「私も知らないな」

 

 しかし残念ながら、ヌーノ、マルタン、アリヤは2人の行き先なんて知らない。そもそも朝一緒に食事をして以来、会っていないのだ。これは仕方がない。

 

「もしかして、秘密の逢引とかじゃないですか!?」

 

 そしてその話を聞いたリリッケは、そんな乙女脳全開な事を言い出した。

 

「いやリリッケ。流石にあの2人がそんな事…」

 

「いいえ!それはわかりませんよミオリネ先輩!!だって最近、ニカ先輩随分三日月先輩の事ばかり話してましたし!!」

 

「え?そうなの?」

 

「そういえば、ニカって最近そんな事言ってた気がするな…」

 

 マルタンも思い出す。最近のニカは、やたら三日月の話をしていた。やれ好きな食べ物は何かとか、普段筋トレと畑以外に何しているのだろうとか。

 更にここ数日は、スレッタに次いで三日月の側にいることが多い。全部、あの日三日月はレネと水着デートに行って以来だ。それをずっと見ていたリリッケは、ニカがレネに負けじと三日月にアプローチを始めたのだと思ったのである。

 

「絶対にそうですよ!もしかすると今頃、2人で学園内を回っているのかもしれませんよ!!」

 

「だとしても、もう直ぐランブルリングなのよ。遅刻したら棄権扱いになるんだから、今直ぐに戻ってきてほしいんだけど」

 

 それならそれでもいいが、このまま恋愛にうつつを抜かしてランブルリングに遅刻なんてしたらたまらない。そんなの、恥もいいところだ。

 

「だ、ダメですミオリネさん!色々探しましたが、どこにもいませんでした!!ついでに言うと、ソフィさんとノレアさんも見つかりません!!」

 

そこに、息を切らしたスレッタが戻ってきた。彼女は三日月を探して、学園内をモーターバイクに乗って探していたのだが、結果は全然。2人を探す事はできずにいた。おまけに、編入生であるソフィとノレアもいない。

 

「あーもう!本当にどこにいるのよあいつら!!」

 

 ミオリネは不機嫌そうに地団駄を踏む。とりあえず三日月が戻ってきたら、1回殴っておこう。

 

 

 

 

 

 学園 三日月の畑

 

 その頃、三日月とニカは学園内のミオリネの温室の直ぐ隣に作られた三日月の畑にいた。

 

「それで、ニカって結局テロリストなの?」

 

「そう、なるね…と言っても、私は下っ端の連絡係だけど…ううん、これは言い訳…三日月くんの言う通り、私はテロリストだよ…」

 

 三日月の質問を、ニカは肯定する答えを言う。先日のソフィとノレアとの会話。そこで大体察してはいたが、こうして直接言われるとやはり少しショックだ。まぁ、元々ニカには怪しい部分があったので、そこまで驚きはしなかったが。

 

「どうして、テロリストに?」

 

「……好きでなった訳じゃないよ」

 

 三日月の質問に、ニカはそう答える。彼女の言う通り、好きでテロリストになってなんていない。やむにやまれぬ事情があるからだ。そしてニカは、ポツポツと話し出す。

 

「私ね、元ヒューマンデブリなんだ…」

 

「っ」

 

 なんと、ニカは元ヒューマンデブリだった。あの鉄くず同然の値段で売られる、孤児であり奴隷であるヒューマンデブリ。これには流石に、三日月も驚きを隠せない。

 

「小さい頃に、住んでいた街が戦争で滅茶苦茶になって、その時にお母さんも死んじゃって…その後にやって来たスカベンジャーに攫われて、そのまま売られたんだ…」

 

「スカベンジャー?」

 

「戦場跡で廃品回収をする人達の事だよ。破壊されたモビルスーツの部品や、武器、そして行き場を失った子供とかを回収して売りさばくんだ」

 

 スカベンジャー。

 それは地球で一定の数存在する廃品回収屋。戦争が起こった地では、様々な物が落ちている。その中には、ニカのような生き残った孤児も沢山いるのだ。彼らにとっては、孤児すら大事な収入源である。ニカはそんな彼らに、母親を弔う暇も無く誘拐されて、成す術無くとある組織に売られたのだ。

 因みにその時の値段は、本当に安い。とても、人1人につける値段じゃないくらいに安い。

 

「で、売られた先が所謂反スペーシアンのテロ組織だったわけ。そこで私は、毎日なんとか必死に生きてきたの。でも、私はまだマシだったよ。手先が器用だったから、命の危険の無い最低限の生活は約束されてたし」

 

 しかしヒューマンデブリになったとは言え、ニカは幸運だった。手先が器用であったが故に、毎日毎日機械や武器の修理を任され、その組織で割と重宝されたからである。だが、ニカ以外の子は禄な目にあっていない。

 

 ある子供は、体に爆弾を大量にくくりつけられたまま、敵陣地に突っ込まされた。ある子供は、子供にしか欲情しない金持ちの変態に売られた。ある子供は、どこか胡散臭い実験施設へ送られた。

 

 そんな子らと比較すると、ニカは間違いなくマシな生活をしていただろう。1日2回は味のしないエナジーバーは食べられたし、週に1回は水だがシャワーも浴びる事が許された。もしニカが生まれつき手先が器用じゃなければ、そんな彼ら彼女らと同じ運命を辿っていただろう。

 

 最も、憂さ晴らしに殴られたり蹴られる等の暴行は数多く経験しているので、五十歩百歩かもしれないが。

 

「でもね、ある日この学校に行く事決まったの。あれは嬉しかったな。学校に行くの、ずっと憧れてたから」

 

 あの日の事は、今でも忘れない。ニカがいた反スペーシアン組織の上部組織であるフォルドの夜明け。そこがアスティカシアに潜入出来る人材を探していたのだ。

 そしてその時、白羽の矢が立ったのがニカである。そこから彼女は、学園に潜入しても怪しまれる事の無いように毎日勉強をさせられた。ニカ自身、学校に行きたくてしょうがなかったので、その辺の努力は苦では無かった。むしろ学校に行けることが嬉しくて、勉強そのものが楽しいと感じたくらいである。

 

「学校に来てからは、本当に楽してくて仕方がなかったよ。勉強ができて、暖かくて美味しい物も食べられて、清潔なベッドで眠れて、そして地球寮で友達もできたしね」

 

 入学してからの日々は、ニカにとって幸せでしかなかった。あのまま地球にいれば、絶対にできなかったであろう毎日。その毎日が楽しくて、嬉しくて仕方がなかったからだ。

 

「でもね、勿論ただで学校にこれた訳じゃない。私の役割は、連絡係っていう下っ端だけど、いざという時は協力しないといけなかったし」

 

 無論、善意で学校に来れた訳じゃない。いざと言う時は、ニカもテロ行為に手を貸さないといけない。それが条件だったからである。

 

「ついでに言うとね、初めて三日月くんとスレッタから学校に来るの初めてって聞いた時、私、勝手に親近感を感じてたんだ。あ、この2人は自分と同じだって。でも、実際は全然そんな事無かったよ。だって2人共、私よりずっと強いもん」

 

 それは、2人がモビルスーツに乗れるからという訳じゃない。三日月もスレッタも、確固たる自分の意思がある。少し歪んでいるかもしれないが、上に逆らえず、言われるがままに生きている自分とは大違いだ。

 スレッタはミオリネの為に決闘に勝ち続けてホルダーになっているし、三日月は自分を犠牲にしてまで株式会社ガンダムを守ってくれた。あんな真似、自分にはできない。今となっては、親近感を感じていた事が恥ずかしくて仕方がない。

 

「でも、もう大丈夫。後は、私がちゃんとケリをつけてくるから」

 

 これまでずっと逃げてきた自分だが、それもこれまでとニカは決意する。

 

「何するつもりなの?」

 

「フロント管理社に自首する。これまでの事全部喋って、あの2人を止める。だから三日月くんも、あの2人と戦う必要は無いよ」

 

「そんな事しなくて、俺があの2人を決闘で倒せば」

 

「信用しちゃダメ。だってあの2人は、生粋のテロリストだよ?三日月くんが勝っても、負けた腹いせに何かするかもしれない。だから私が全部喋って、フロント管理社にあの2人を先に拘束してもらう」

 

 ニカはせめてもの罪滅ぼしとして、これまでの事を全部喋って自首する気であった。あの2人が何をするかは知らない。だが、絶対に禄な事じゃない。

 それにソフィとノレアは三日月と決闘をすると言っているが、それも正々堂々とやるか疑問だ。もしかすると民間人を人質に取って、抵抗できなくなった三日月を一方的に攻撃するかもしれない。そうなる前に、全部喋る。

 

「でも、それだとニカが」

 

「仕方がないよ。だって私、テロリストの仲間だもん」

 

 当然、全部喋ればニカも無事では済まないだろう。良くて刑務所、悪けりゃ死刑だ。でも、もうこれ以上迷惑はかけられない。地球寮の皆にも、そして三日月にも。

 

「私にも、年貢の納め時ってやつが来ただけ。だから、心配しなくていいよ。後は全部、私が終わらせてくるから」

 

「行かせる訳無いでしょ」

 

 ニカが立ち去ろうとするが、そのニカの腕を三日月が掴んで止める。

 

「このままニカを行かせたりしたら、それこそ禄な事にならない。ていうか、単純に俺が嫌だ。そもそも、ニカは俺の大切な仲間だ。そんな死にに行かせるような事、絶対にさせない」

 

 三日月にとって、ニカはもう掛け替えのない仲間。そんな仲間が、むざむざ捕まりに行くような真似を許すなんて事できない。例えニカが何と言おうと、行かせたりしない。

 

「そもそも、そんな顔で言っても説得力ないし」

 

「私、どんな顔してる?」

 

「なんか酷い顔」

 

 実際、今のニカの顔は酷かった。後悔や罪悪感、そして恐怖が1度に来たような顔をしている。こんな顔をしておいて、自分でケリをつけるなんて言われても、説得力が無い。

 

「助けてほしかったら、助けてって言えばいいじゃん。少なくとも、俺はニカを助けるよ」

 

 そして三日月は、ニカに本心からそう言う。

 

「……ダメだよ。だって私、ずっと皆を騙してたんだよ?なのに、まだ助けてもらおうだなんて、ダメだって…」

 

「ダメじゃないでしょ。仲間を助けるのは当然だし」

 

 水星の採掘でもそうだった。いざという時は、例えいがみ合っている相手でも、手を貸すのが普通。そうしないと、簡単に死んでしまうからだ。

 実際三日月も、気に入らないクソじじいを何度も助けたり助けられたりしている。だから、ニカも見捨てたりしない。地球寮の皆には、事情を話してなんとか説得を試みよう。

 

「とりあえず、ここにいて。あの2人は、俺がしっかりと倒してくるから。大丈夫。1度倒してるし、油断しなければ問題ないよ。そもそも俺とバルバトスは、スレッタとエアリアル以外には負けないしね」

 

 そう言うと三日月は、ニカから手を放してその場を立ち去る。もう直ぐ、ランブルリングが開始される時間だ。ソフィとノレアも間違いなく参加して、こちらを攻撃してくるだろう。だから、今度こそ徹底的に叩く。もう2度と、抵抗できないように。

 

「……」

 

 畑に1人残されたニカは、その場に立ち尽くす。三日月の自分を案じてくれる気持ちは、本当に嬉しい。実際に今、ニカは胸がポカポカしている。好きになった人に助けてもらえるだなんて、まるで映画みたいだ。

 おして本音を言えば、このまま三日月に助けてもらいたい。ニカだって、好き好んで刑務所になんて行きたくない。叶うなら、これからも皆と一緒にこの学校で楽しく過ごしたい。

 

 けれどやはり、このまま三日月に守って貰ってばかりで良い訳がないのだ。

 

「ごめんね…三日月くん…あと、ありがとう…」

 

 そう呟くと、ニカは畑から立ち去る。これ以上、迷惑はかけられない。だから、全部自分で終わらせる。例え自分が刑務所に行く事になっても、全部話す。そしてニカは、人気のない校舎裏へと向かうのだった。

 

「……」

 

 だがその様子を、じっと監視している者がいることには全く気が付かずにいた。

 

 

 

 ジェターク寮 モビルスーツハンガー

 

『これより、オープンキャンパス特別イベント、ランブルリングを開催しまーす!ルールはバトルロイヤル方式で、制限時間は30分。頭部のブレードアンテナを折られた時点で失格とし、最後まで残っていた者を優勝とします!まぁ、これはエキシビションなので、負けたところで恥かいたりはしませんから、各々自由に戦ってくださいね~』

 

 セセリアの放送が、学園全体に聞こえる。いよいよ、オープンキャンパスの目玉イベントである、ランブルリングが開催されようとしていた。

 

「明日から僕は、正式にジェターク社のCEOになる。故に、学園生活は今日までだ。これまで、皆と楽しい学園生活を送れた事に、心から感謝する。だが、兄さんと僕たちを貶めたあの水星人だけは叩き潰す!!

 

『うおおおおお!!!』

 

 そんな中、ジェターク寮はやる気に満ちていた。既に死に体とさえ言われているジェターク社。ラウダの父親であるヴィムは死に、兄グエルは行方知れず。そんな中で、ラウダは学生という身分を捨ててCEOに就任する。はっきり言って、相当に苦しい日々が続くだろう。

 しかしそれでも、ここにいる皆の為にもジェターク社を守らないといけない。でもその前に、こうなった原因であるスレッタと三日月は倒す。絶対に倒す。

 ラウダにとって、あの2人は最早憎悪の対象だ。ランブルリングで勝利したところで、ホルダーになれる訳じゃないし、会社の経営が上手く行く訳でもない。言ってしまえば、これは憂さ晴らしだ。でも、やらないといけない。所謂、この恨み晴らさでおくべきかである。

 

「あの、先輩のディランザ、私が完璧に調整しておきました。思いっきり戦えますから、よろしくお願いします!!」

 

「ありがとうペトラ。行ってくる」

 

「はい!頑張ってください!私ここで応援していますから!!」

 

「ん?」

 

 そんな2人の会話に、フェルシーは首をかしげていた。正直凄く気になるし、今直ぐペトラに色々聞きたい気分だが、今は直ぐに始まるランブルリングに集中するとしよう。ペトラに話を聞くのは、ランブルリングが終わった後でいい。

 

 

 

 同時刻 アリアンロッド寮 モビルスーツハンガー

 

 ジェターク寮と同じように、こちらもランブルリングに参加するつもりだ。だがジュリエッタには、ひとつ懸念ができてしまっている。

 

「イオク先輩。本当に出るつもりですか?」

 

「ああ。親友に負けて以来、モビルスーツ訓練も増やしたしな。以前よりは上手に動けるだろう。それに、ランブルリングに勝ち負けはそこまで重要じゃない。参加することに意味があるのだ」

 

 ジュリエッタの隣にいるイオクは、ランブルリングに参加する気満々なのだ。正直、邪魔にしかならないから出ないでほしいのだが、本人が凄くやる気に満ちているので止めても無駄だろう。

 

「安心しろジュリエッタ。別にお前の邪魔はせんよ。大人しく後ろで援護射撃でもしておくさ」

 

(後ろから撃たれそうで嫌なんですけど…)

 

 是非そう言ってやりたいが、流石に寮の士気が下がりそうなので言わないでおいた。言わぬが花とはまさにこの事だろう。

 

「それで、ジュリエッタこそどうなのだ?あの新型機、上手く扱えるか?」

 

「問題ありません。操縦も私の癖に合わせてもらいましたし、シミュレーションや実機訓練でも十分に動かしています。これなら、三日月・オーガスにだって勝てるかもしれません」

 

「そうか!なら全力でやるのだぞ!!」

 

「言われなくとも」

 

 そう言うとジュリエッタは、自分に与えられた新型の愛機を見上げる。アリアンロッド社が売り出したグレイズシリーズの流れを汲む、高機動戦闘を主軸にした新型機。

 グラスレーとの決闘で1度壊れたが、それも完璧に修理済みだし、あの決闘で新しい戦闘データも手に入れる事ができ、それも入っている。これならば、三日月のバルバトスにだって引けを取らないだろう。

 

(今度こそ、勝ってみせます…!三日月・オーガス!!)

 

 そしてジュリエッタは、闘志を燃やしながら新型機に乗り込むのであった。今度こそ、バルバトスに勝つ為に。

 

 

 

 地球寮 モビルスーツハンガー

 

『おっそいのよ三日月!!さっさと準備しなさい!!もう直ぐランブルリングが始まるんだからね!!』

 

「わかってるよ」

 

 三日月はパイロットスーツに着替えて、バルバトスに乗り込んで出撃準備をしていた。因みにニカについては、お腹が痛くなって医務室に行っているという事にしている。

 

『三日月。バルバトスのシステムチェック完了したよ』

 

「ありがとう、ティル」

 

『それじゃあ、コンテナに運ぶからね』

 

「うん」

 

 バルバトスは万全の状態。テイルブレードも動くし、腕の腕部ビーム砲もエネルギー補給が完了している。そして、ナノラミネートアーマーも完璧だ。これなら何が来ても、問題無いだろう。

 因みに今日の武器は、いつものソードメイスである。例のバルバトス専用に開発された超大型メイスは、今日もハンガーでお留守番である。この学園ではレギュレーション違反になるから、仕方がないね。

 

『三日月。大丈夫?』

 

「うん。問題無いよ。スレッタこそ平気?」

 

『うん。皆も大丈夫って言ってるし、これならちゃんと戦えると思うよ。だから今日は、ミオリネさんや皆の為にも勝とうね!!』

 

「うん。必ず勝とう」

 

 スレッタもエアリアルもコンディションは万全。これなら、存分に戦える。

 

『チュチュ、昭弘。2人とも準備はいい?』

 

『バッチリだぜマルタン!今日は思う存分クソスペーシアンをボコってやるよ!!』

 

『問題無い。いつでも行ける』

 

 それは、チュチュと昭弘も同じだ。グラスレー戦ではスレッタや三日月ほどの活躍ができなかった。なので今日は、絶対に活躍してやるという気概を感じる。

 

『エラン!お前も活躍しろよな!!全力で勝ちにいけよ!!』

 

『はいはい。わかってるよオジェロ』

 

 ついでにエランも、一応やる気を出している。最も彼は、本気を出す気はこれっぽちも無いのだが。

 

『なぁアリヤ、あの編入生2人はどこだよ』

 

『私も知らないよヌーノ。でも、どっちみちもう無理だ。時間がきたからね』

 

 気がかりなのは、ソフィとノレアがいないこと。しかし、あの2人の事だ。その内自分達から姿を現すだろう。そして姿を現したら、その時はボコボコにする。

 

『全員よく聞いて。このオープンキャンパス終了後に、株式会社ガンダムはまた営業を再開出来る見通しよ。ランブルリングに勝敗は関係無いけど、どうせなら勝って!これは社長命令よ!そうすれば株式会社ガンダムは更に注目を浴びるからね!!』

 

「わかった」

 

『はい!わかりましたミオリネさん!!』

 

『おう!ぜってー勝ってやるぜ!!』

 

『わかっている。やるからには勝つ気でいくさ』

 

『了解ですっと』

 

 ミオリネの社長命令に、5人全員が頷く。実際、これは会社をアピールする絶好の機会。ならば、全力で勝ちに行こう。まぁ、内1人は全力を出す気はまるでないけどね。

 

(病室で見てなさいクソ親父。私の会社が、優勝するところをね!)

 

 因みにミオリネも、3割くらい父親に優勝を見せてあげたいという自分本位は気持ちがあったりする。無論、その事は皆に言わない。文句言われそうだし。

 

『それじゃ、コンテナ発進!!』

 

 そして5つのコンテナが、ランブルリング会場に向かって発進する。

 

『それでは、ここで立会人を紹介します。グラスレー・ディフェンス・システムCEO、サリウス・ゼネリ代表です』

 

『よろしく頼む』

 

 セセリアが会場にいる人達に、ランブルリングの立会人であるサリウスを紹介する。本来ならこの役目はグループのトップであるデリングなのだが、そのデリングは未だに入院中。そこで旧知の仲であるサリウスが選ばれたのだ。

 

『年寄りの長話は嫌われるのでな。多くは語らん。全員、全力を出してやるが良い』

 

 サリウスは実に短い言葉で、ランブルリング開始前にそう言った。それと同時に、ランブルリングの会場である第9戦術試験区画に数多くのコンテナが出てくる。全部、ランブルリングに参加する生徒達だ。

 その数、なんと40。これだけの数のモビルスーツが出揃うのは、アスティカシアではランブルリング以外に無いだろう。

 

 いや、少し前にグラスレー寮と地球寮の決闘で同じくらいのモビルスーツが出揃っていたが、あれは例外だ。同じに語ってはいけない。

 

「LP042、三日月・オーガス。バルバトスルプスレクス」

 

『LP041、スレッタ・マーキュリー。エアリアル』

 

『MP039、チュアチュリー・パンランチ。デミトレーナー』

 

『KP040、昭弘・アルトランド。グレイズ改』

 

『KB002、エラン・ケレス。ファラクト』

 

「出るよ」

 

『出ます!』

 

『出るぜ!』

 

『出るぞ』

 

『出る』

 

 そして、コンテナからモビルスーツが出てくる。

 

(あの2人は、いないか)

 

 三日月はコックピットから、試験区画を見て警戒する。しかし、やはりというべきかソフィとノレアが見当たらない。もしかすると既に試験区画にいるかもと思ったが、流石にそれは無いみたいだ。

 

(まぁでも、その内出てくるでしょ)

 

 流石に、逃げた訳じゃないだろう。何だかんだで、昨日約束したのだ。正直あまり信用はできないが、それでも約束は約束。それにソフィは、どういう訳か自分に執着している。ならば、その内出てくるはず。そこを叩けば、何も問題無い。

 

『それではサリウス代表、宣誓をお願いします』

 

『わかった。それでは、ランブルリング、スタート!

 

 そしてサリウスが宣誓をすると同時に、各モビルスーツが動き出す。

 

『レネ、作戦通りにやれよ?』

 

『わかってるよサビーナ。ちゃんとするって』

 

『行くぞフェルシー!あの水星人2人を、必ず仕留める!!』

 

『はい!ラウダ先輩!!』

 

『よし!援護は任せろジュリエッタ!お前は、思う存分戦ってこい!!』

 

『了解です。でも怖いから援護は程々でお願いします』

 

『ハッシュ!今度こそちゃんと活躍して、汚名挽回しろよ!!』

 

『いやザック。それを言うなら汚名返上だろ』

 

「んじゃ。俺先に行くよ」

 

『うん。気をつけてね。三日月』

 

 こうしてついに、ランブルリングが開催されたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでソフィ。調子はどう?」

 

「問題無いよ。ウルもソーンもしっかり修理されてるし、何よりこの新しいおもちゃも凄く気に入ったよ!なんとなくだけど、このおもちゃ喜んでる気がするし!」

 

「は?これが?機械が喜ぶ訳無いでしょ」

 

「いやいやノレア。だって300年ぶりに仇敵と戦えるんだよ?多分それが嬉しんだってこのおもちゃ!」

 

「あっそ。じゃあ、プリンスの合図までは待機しておくよ」

 

「はいはーい」

 

 そして学園の最下層にある、最早誰も使っていない大きな倉庫では、自分のモビルスーツに乗り込んだ2人の少女達と、その傍らにいる1機の新しいおもちゃが、今か今かと出番を待っていた。

 

 

 

 

 




 そんな訳で、ヴァナディースハートからキユウとヴィルダ先生、そしてヨシカ登場です。

 登場するに至った経緯なのですが、例のプロスペラが見つけたモビルスーツのちょど良いパイロットを探していまして『お、この子行けそうやん!』と思った次第です。
 因みに、1人は一応内定済みです。

 あと作者はヴァナディースハート、単行本の3巻までしか読んでいないので、3人の設定は最新話と色々と齟齬があるかもしれませんが、そこはご了承ください。

 そしていよいよ始まったランブルリング。ようやく、1番書きたかったシーンを書ける。

 矛盾やおかしな箇所がれば言ってください。修正いたします。

 それでは、また次回。じゃあね。

ランブルリングの被害は、

  • 原作通り割と軽微
  • 原作以上に被害甚大
  • 三日月が超頑張って被害無し
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