悪魔と魔女の物語   作:ゾキラファス

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 やっと書けた。最近ちょっと色々と忙してく、中々書けませんでした。お待たせしてしまい、すみません。

 そんな訳で、いよいよVS天使戦です。それでは、どうぞ。

 26年9月5日追記、感想にて指摘があったので、少し編集。


ランブルリング 3

 

 

 

 

 

「何だ、あれは…?」

 

 ランブルリングの特別席で、サリウスは信じられないものを目撃していた。プラント・クエタを襲ったガンダム。それが率いている新型のGUNDビット。

 そして、更にそこに加わる大型の兵器。まるで鳥のような見た目をしており、戦艦並の破壊力を持ったビーム兵器を装備している。どう考えても普通じゃない。

 

「避難だ!それとフロント管理社に連絡!大至急あの巨大兵器を破壊し、生徒の安全を確保せよと!」

 

「了解です!」

 

 これは非常にマズイ。ただでさえテロリストにより、学園はパニックになっている。そしてランブルリングの会場では、未だに大勢の学生が取り残されている。一刻も早くフロント管理社に救援に来てもらい、生徒の安全を確保しなかれば。

 

 しかし、事はそう簡単には行かなかった。

 

「代表!フロント管理社のモビルスーツ格納庫で爆発が発生!モビルスーツを出撃する事が出来ないとのことです!」

 

「何だと!?」

 

 なんと、肝心のフロント管理社が現場にこれない事態になっていた。こんなに都合よく、爆発事故が起こる訳が無い。恐らく、今暴れているテロリストのせいだろう。

 

「代表、更に悪い知らせです。先程の攻撃で、車両の一部が破損。我々はここから動く事ができません…」

 

「くっ!どこまでも運の悪いことが…!」

 

 更にサリウスが乗っている車両も、今この場から動けない状態になっていた。これでは良い的だ。

 

『サリウス代表!今こちらで予備車両を呼びました!直ぐに来るので、もう少し待っていてください!』

 

『それまでは、私たちがここをお守りします』

 

 そこにレネとサビーナがやってきて、サリウスを守るように車両の前に立ちふさがる。これで一先ず、安心だ。

 

(しかし、あれは一体なんだ?)

 

 ほっと胸を撫で下ろしたサリウスは、現在ランブリングの会場でその異質な存在感を放っている

巨大兵器を見て考察する。ほぼ間違いなく、テロリストが用意した新型の兵器だろうが、その正体がわからない。恐らく新型のGUNDビットなのだろうが、それにしても大きすぎる。

 

(まさか…いや、ありえん…それはありえん…!)

 

 ここでサリウスは、とある可能性を考えた。しかし、いくら何でもそれはありえない筈。なんせあれは、300年前に人類が多大な犠牲を払って絶滅させているのだ。今更復活し、それをテロリストが使っているだなんてあまりに都合が良すぎる。流石にそんな事は、無いと思いたい。

 

(だが、ガンダムフレームもそう言われていた…ならば…)

 

 けれど、三日月が乗っているガンダムフレームだって、あの審問会でプロスペラから話しを聞くまで既に失われた伝説のモビルスーツと言われていた。ならば、それに追従してあれが復活する可能性も決してゼロでは無いのかもしれない。

 

 そしてもしあれが、今サリウスが考えたものだとしたら、文字通りの一大事。一刻も早く処理しなければならない。そうしないとデリングが危惧した通り、人類は滅亡するかもしれないのだから。

 

『サリウス代表!車両が到着しました!これより救助を開始します!』

 

 そこに、新しい車両がやってくる。色々と気になるが、今は避難が優先だ。そして到着した車両から、ラペリングをしながらサリウスの元へと救助隊と思われる隊員がやってきた。

 

「遅いぞ!早く代表を安全なところまでお連れしろ!!」

 

 護衛のSPが救助隊員に悪態をついたその瞬間、

 

 ピュン ピュン

 

「…え?」「…は?」

 

 奇妙な音と共に何かが発射され、それはSPに命中。そして彼らはその場に倒れた。サリウスが驚きながら救助隊員を見ると、その手には銃が握られている。

 

「な、何が…?」

 

 救助隊の突然の凶行に、サリウスは固まる。その間に、救助隊員はヘルメットのバイザーを上げた。

 

「ごめんなさい、確保しますね」

 

「シャディクがお呼びですよ、代表」

 

 突然の凶行を働いた救助隊員の正体は、なんとイリーシャとメイジーであった。おまけに2人の口から、シャディクの名前が聞こえる。

 つまりそれは、これはシャディクが命令しているという事だ。そして2人はそのまま、サリウスを車両から運び出そうと準備を進める。

 

「シャディク!何を考えている…!!」

 

 こうして禄に抵抗も出来ずに、サリウスは2人に誘拐されたのであった。

 

 残された車両は、その後ガンヴォルヴァによって破壊され、木っ端微塵の残骸へと成り果てる。

 

(本当は思ったらダメなんだけど、死なないでよね、三日月…)

 

 そしてレネは、内心三日月の心配をしながらシャディクの命令を遂行する。

 

 胸にずっと、痛みを抱えながら。

 

 

 

 グラスレー寮 寮長室

 

「俺を拾い上げて、育ててくれて本当にありがとうございます、養父さん…」

 

 シャディクは寮長室で、タブレット端末を見ながらサリウスに礼を言う。

 

 彼はサリウスに対して、確かな恩義を感じている。

 

 こんな自分を拾ってくれて、養子にしてもらい、グラスレーの次期跡取りとして育ててくれたのだ。恩義を感じない訳が無い。

 

 しかし、それはそれ。自分の計画に、彼はもう邪魔でしかないのだ。本当なら殺した方が確実なのだろうが、流石のシャディクもそこまでの事はサリウスには出来ない。なので誘拐し、暫くどこかに監禁するという手段を取る事にした。

 

「できれば穏便にすませたかったですが、もう地球には時間が無いものでね」

 

 何事も無ければ、このままま学校を卒業し、グラスレーの重要なポストについて、いずれは

グラスレーの代表になり、更にそこからベネリットグループの総裁になる事も出来ただろう。シャディクには、それだけの才能と実績がある。彼自身、可能であればその正攻法でベネリットグループ総裁を目指したかった。そうすれば、誰にも文句を言わせないから。

 

 だが、それにはどうしても膨大な時間がかかってしまう。

 

 自分がベネリットグループ総裁になるには、どうあっても20年以上は必要。それでは遅いのだ。だって地球はもう、限界に近いから。その方法で総裁になる頃には、もう手遅れになっている。

 

 だからシャディクは、今回このような強硬手段に出た。全ては自分が新しいベネリットグループ総裁になり、ある計画を実行に移す為に。

 

「さてと…」

 

 シャディクはタブレット端末を操作し、画面をランブルリングの会場に変更する。そこでは現在、モビルアーマーとガンダムフレームが対峙していた。それはまさに、宿敵同士の再会。もう2度と再会するべきでは無い対戦カードが、今こうして復活している。

 

(これは、必要な事なんだ)

 

 恐らく、大勢が死ぬだろう。しかし、シャディクにはこの場にいる大勢の生徒が死んででもやらないといけない事がある。地獄行きは確定だろうが、それでもやらないといけない。

 

 そしてその計画に、バルバトスは邪魔なのだ。

 

 バルバトスは最早、自分達では手が付けられないくらい強くなっている。今後もし、自分達の完全に敵対し、本気の殺し合いをするような事態になったら、負けるのは自分達だろう。そうなった時の為に、バルバトスは破壊しておく必要があるのだ。ついでに天使の実働データも取れて、一石二鳥でもある。

 

「それじゃ300年ぶり…いや、直近だと25年ぶりか。宿敵との再会を、見させてもらうとするか」

 

 そしてシャディクは、天使と悪魔の戦いを真剣な目で見る。伝説のガンダムフレームの最後を、しっかりと見る為に。

 

 

 

 

 

 第9戦術試験区画

 

 ランブルリングが行われている会場では、その異様な存在感を放っている巨大兵器が周りを見渡しながら立っていた。周辺には、人型GUNDビットであるガンヴォルヴァが数機空を飛んでおり、その更に背後にはソフィとノレアがいる。

 

『早く逃げろ!なんかヤベーぞ!!』

 

『わかってるよ!』

 

『急げ!!1秒でも早くここから逃げるんだーー!!』

 

 そんな明らかにヤバイ物から、殆どの生徒は逃げ出す。しかし、逃げ出さない生徒もいた。

 

『イオク先輩。逃げないのですか?』

 

『正直逃げ出したい気持ちはあるが、逃がしてはくれんだろう…』

 

『ですね…』

 

 アリアンロッド寮のジュリエッタとイオクはその生徒になる。正確には逃げれるなら逃げたいが、ソフィとノレアが逃がしてはくれない状況にいるというものだが、

 

『しかし、あんな兵器まで用意しているとは…本気でこの学園を破壊するつもりですね』

 

『そうだな。それにしても、あれは何なのだ?』

 

 前方にいる巨大兵器を最大限警戒しながら、2人はいつでも動けるようにする。しかし、本当にあの巨大兵器はなんなのだろう。

 

「モビルアーマー」

 

『モビルアーマー?』

 

「うん。バルバトスが今、そう言ってくれた」

 

 2人の疑問に、三日月が答える。どういう訳か知らないが、今バルバトスから目の前にいるあれの正体を無理やり理解させられたからだ。

 

『ばかな…!モビルアーマーだと!?300年前に人類を絶滅させかけた無人兵器ではないか!?』

 

『大正解!』

 

 イオクの驚愕した返答に、ソフィが嬉しそうに答える。

 

『お兄ちゃんの言う通り、これはモビルアーマー!名前は、ハシュマル・リメインズって言うんだ!地球で見つけて、私たちが色々と改造をしたんだよ!』

 

 ソフィが操っているこの大型兵器の名前は、モビルアーマー。冠名を、ハシュマル・リメインズ。かつて人類を絶滅寸前まで追い詰めた、人類史上最悪の無人殺戮兵器である。300年前に全て破壊されていた筈だが、奇跡的に発見。それを回収したのち、現代技術で改造を施し、こうして復活させたのだ。

 

『そのおかげで、私達の思う通りに動いてくれるんだよね!!こんな風にさぁ!!

 

 そしてソフィは、モビルアーマーハシュマル・リメインズを動かし始め、3人に向かって先程のビーム攻撃を開始する。

 

『っ全員回避だ!回避ぃ!!』

 

『とっくにやってます!!』

 

「ちっ!!」

 

 その攻撃を、3人は全力で避ける。強固に建造された学園の外壁すら、簡単に破壊するのだ。あれをモビルスーツがくらえば、1撃で終わりだろう。バルバトスは食らっても大丈夫だろうが、態々攻撃を食らう理由も無いので普通に回避行動を取る。

 

『死ね!スペーシアン!!』

 

 回避行動を取る3人だが、そこにノレアがガンヴォルヴァと自身の乗るルブリス・ソーンによる攻撃が雨あられと降り注ぐ。

 

『ああもう!鬱陶しい!!』

 

『うおおおおおお!?』

 

 ジュリエッタとイオクは、その攻撃をなんとか避ける。新型のレギンレイスジュリアに乗っている事、そしてこの日の為にしっかりと基礎訓練をやり直してきたおかげだろう。しかし、避けるのに精一杯で反撃の隙が無い。

 

(避けてるだけじゃダメだ。あいつを、殺さないと)

 

 攻撃を回避している時、三日月はこの後なんとかするべく考える。このままずっと攻撃を避けていても、いずれはやられてしまう。ならば、その前に攻撃の元を叩く。

 

 それに、バルバトスが教えてくれた。あれは、この世に存在して良い兵器では無いと。だから壊す。今ここで、完膚なきまでに壊す。それが、自分の大切な人達を助けられる事になるだろうから。

 

「行くぞ、バルバトス」

 

 三日月は攻撃を前に避けながら、ソードメイスをしっかりと握りハシュマルへの攻撃を開始する。

 

『っこの!!大人しく死んでくださいよ!!』

 

 ノレアはガンヴォルヴァによる攻撃を、三日月に集中させる。普通ならこれで終わりだが、三日月とバルバトスは普通じゃない。そもそもこれくらいのビーム攻撃なら、当たってもダメージにならないし。

 

(よし!懐に入った!)

 

 そして三日月は、ハシュマルの足元までやってきた。このまま足を攻撃し破壊して、先ずは動きを止めよう。

 

「っ!?」

 

 しかし攻撃をしようとした瞬間、ビーム攻撃では無い別の何かが上から降ってきた。直ぐにそこから距離を取った三日月が、その攻撃が降った場所を見ると、

 

「尻尾…?」

 

 そこには、ハシュマルの後ろから生えた尻尾が突き刺さっていた。それはまるで、否、まさにバルバトスのテイルブレードと同じ武器であった。名前は、超硬ワイヤーブレード。ハシュマルに搭載されている、近接武器である。

 

『そうだよー!この子にもね、お兄ちゃんのバルバトスと同じように、凄い尻尾があるんだー!』

 

 三日月は知らない事なのだが、バルバトスルプスレクスのテイルブレードは、元々このハシュマルと呼ばれたモビルアーマーの基本装備なのだ。当然、その厄介さも同じである。

 

「ちぃっ!!」

 

 上から突き刺すような連続攻撃を、三日月は後ろの引きながら避ける。するとハシュマルは、今度は上からでは無く横からの薙ぎ払い攻撃をした。

 

「くっ!?」

 

 三日月はその横の薙ぎ払い攻撃を、ソードメイスで防御する。しかしその衝撃は凄まじく、三日月とバルバトスは思いっきり吹き飛ばされてしまった。

 

「がっ!?」

 

 久しぶりに感じる、ダメージらしいダメージ。幸いシステムはまだ動いているし、他の武装も損傷していない。ガンダムフレーム様々である。

 しかし、パイロットはそうもいかない。三日月は背中から体全体にかなりの衝撃を受け、一瞬だけ意識が遠のいた。

 

『終わりだ!三日月・オーガス!!』

 

 好機と思ったノレアが、ルブリス・ソーンによる攻撃をバルバトスに開始。狙いは、頭だ。そこを破壊すれば、バルバトスとて今までのようには動けない筈。後はそのまま、ハシュマルでトドメをさせばいい。

 

『三日月!!』

 

 しかし攻撃が当たる寸前、それを防ぐ者が現れた。スレッタのエアリアルである。スレッタはエスカッシャンでルブリス・ソーンの攻撃を防いで、三日月とバルバトスを守った。

 

『エアリアル!?どうして…!?』

 

『あのモビルスーツなら、もう全部壊しました!!』

 

 スレッタの言葉を聞いて、ノレアがガンヴォルヴァを確認。すると、スレッタを殺すべく配置していた6機ガンヴォルヴァは、全て破壊されていた。おまけにスレッタも、チュチュも昭弘も無事。最悪である。

 

「ごめんスレッタ。助かった」

 

『別にいいよ!それよりも、あれは何!?なんか皆が凄く怖がってるんだけど!?」

 

「モビルアーマーだよ。さっき、バルバトスが教えてくれた」

 

 エアリアルを含めた皆が、ハシュマルを見て心底恐怖していた。まるで、凶暴な肉食獣を眼の前にした幼子のように。

 だがそれも仕方がないだろう。なんせ相手は、かつて人類を絶滅させかけた殺戮兵器。その体に染み込まれた血の匂いと死臭は、簡単には取れない。怯えるのも、無理は無い事。

 しかし、ここで自分達が動かないと被害が増すばかりと思い、彼女らは根性を出してなんとか動いている。

 

『邪魔をするな!ガンダム!!』

 

『エアリアル!皆!!』

 

 そんなスレッタに、ノレアはガンヴォルヴァと共に攻撃を開始。しかし、エスカッシャンに全て防がれてしまう。

 

『くっそ!』

 

『どいてノレア!モビルアーマーで一気にケリをつけるから!!』

 

 そこにソフィによって操られているハシュマルのビーム攻撃が行われた。

 

『三日月!』

 

「大丈夫」

 

 スレッタと三日月は、その攻撃を回避。確かに強力ではあるが、あまりに一直線すぎる。

 

 しかし、避けただけで事は終わらなかった。

 

『まだまだいくよーー!!』

 

「くっ!?」

 

 ソフィはハシュマルのビーム攻撃を、横に薙ぎ払うように撃ち続ける。その間、攻撃が当たっている第9試験区画の地面は破壊され続けた。おかげで、試験区画の地面はボロボロになる。

 

(マズイな…早くあいつを殺しておかないと、被害が出るばっかりだ…)

 

 今はまだ大丈夫だが、このままではいずれ地面にも穴が空いてしまう可能性がある。そうなれば最悪、学園事態に致命的なダメージが入り、大勢が死んでしまうかもしれない。一刻も早く、ハシュマルを破壊しなければ。

 

「スレッタ。援護できる?あいつ、倒すから」

 

『わかった!でも気をつけてね!!』

 

 出来ればこの場から逃げたいが、とても相手は逃がしてはくれないだろう。恐らく逃げ出したら、

背中から撃たれて終わりだ。

 だから戦う。そうしないと、生き残れないだろうから。スレッタもそれを理解できているから、援護をする事にした。

 

「行くよ」

 

『うん!エアリアル!皆!!』

 

 三日月はバルバトスを再び全面に出して、スレッタはエアリアルのエスカッシャンを飛ばしてバルバトスの援護を開始。

 

『あはは!いいねいいね!!そうこなくっちゃ!!』

 

 そんな三日月に、ソフィは胸を高まらせる。あの殺意。プラント・クエタで見せたあの素敵な殺意を今三日月は纏わせている。最高だ。本当に最高だ。だからなんとしてでも、彼を自分の家族にしてみせる。

 

『暴れろ!ガンヴォルヴァ!!』

 

 ソフィはガンヴォルヴァによる飽和攻撃を開始。その攻撃を、三日月はあえて無視しながら突き進む。警戒するべきは、モビルアーマーただひとつ。それに今は、スレッタが援護をしてくれている。後ろを任せている今なら、全力で前に進められるだろう。

 

「しっ!」

 

 三日月はバルバトスのスラスターを吹かしながら、ハシュマル目掛けて全力で前に進む。ガンヴォルヴァとソフィとノレアの攻撃は、スレッタのエアリアルが防いでくれているし、援護射撃もある。

 しかしそれでも、全部を防いでくれる訳ではない。何機かのガンヴォルヴァは、少し離れた場所からバルバトスを攻撃しようとしていた。

 

『させるかぁ!!』

 

『落ちろくそったれぇ!!』

 

 だがそのガンヴォルヴァに、チュチュと昭弘が攻撃をする。その攻撃を受け、ガンヴォルヴァは自身の攻撃を中断。その間に、バルバトスはハシュマルに近づいた。

 しかし、それだけでは終わらない。ハシュマルが、超硬ワイヤーブレードによる攻撃を開始したからだ。当たればバルバトスとて、ひとたまりも無い。

 だが、三日月はその攻撃を避ける。更にハシュマルの超硬ワイヤーブレードを掴んで、それが巻き戻ると同時にハシュマルの上へとたどり着いた。

 そしてバルバトスの腕部に搭載されているビーム砲を向けて、ハシュマルの背中に搭載されていた大きなエネルギータンクを狙い攻撃をする。

 

 けれど、その攻撃が届くことは無かった。

 

「なっ!?」

 

『残念でしたー!』

 

 何故なら三日月の攻撃は、突然出てきた六角形の小型シールドのようなもので防がれたからだ。

 

 これは、ハシュマル・リメインズに新しく搭載されたGUNDビットである。用途は、基本的に防御のみ。エアリアルのエスカッシャンのように、攻撃は出来ない。しかし、これのおかげで弱点であるエネルギータンクを守れるのだ。

 

『それはそれとして、止まってるよ?』

 

「っ!?」

 

 そこにソフィのルブリス・ウルの攻撃がやってきた。その攻撃をバルバトスの左腕で防御しながら、三日月はテイルブレードを起動して反撃。

 

『おっと!』

 

 だが、その攻撃が当たる事は無い。ソフィは軽々と、その攻撃を避ける。

 

『じゃ、吹き飛んじゃえ』

 

「しまっ…!」

 

 この時バルバトスは、ハシュマルの超硬ワイヤーブレードをまだ握ったままであった。それがまずかった。ソフィはそう言うと、ハシュマルの超硬ワイヤーブレードを操作し、バルバトスを力一杯放り投げる。

 

『三日月!!』

 

 大きな音と土埃を立てながら、バルバトスは試験区画の壁に叩きつけられる。

 

「がっ…ふっ…!大丈夫…!」

 

 かなりの衝撃だったが、まだ意識はある。三日月は直ぐにそこから移動を開始し、体勢を整える。

 

『いい加減死ねよ!三日月・オーガス!!』

 

 案の定、そこにノレアが攻撃を開始。直ぐに移動していたので、かすった程度で致命傷には至らなかった。

 そして三日月は、移動しながらノレアに反撃をする。無論、その攻撃が当たることは無い。移動しながらの射撃というのは、兎に角当たりにくいのだ。

 

『鬱陶しい…まるでコバエかゴキブリですね…だったら…!!』

 

 ここでノレアは、とある攻撃をする事を決意。

 

『行け!ガンヴォルヴァ!!』

 

 それはなんと、ガンヴォルヴァを特攻させる事だ。無人機であるガンヴォルヴァだからこそ、出来る戦法である。バルバトス目掛けて特攻を開始した1機のガンヴォルヴァは、かなりの勢いでバルバトスに近づく。

 

「あーもう、鬱陶しいのはこっちの台詞だよ…」

 

 そんなガンヴォルヴァに、三日月はテイルブレードで応戦。あっという間に、特攻をしてきたガンヴォルヴァは真っ二つにされ、その場で爆発する。

 

「なっ!?」

 

 だがその爆発の中から2機目が現れて、バルバトスに抱きつくように捕まったのだ。

 

「マズイ…!」

 

 動きが封じられ、非常にマズイ事になった。

 

『そのまま爆発してそいつを殺せ!ガンヴォルヴァ!!』

 

「くっ!?」

 

 いくら頑丈なガンダムフレームとはいえ、この至近距離でモビルスーツが爆発すればひとたまりもない。今直ぐガンヴォルヴァを引き剥がさないと、やられてしまう。

 しかし、そう簡単に剥がれてはくれない。このままでは、やられる。

 

 そう思った時だ。

 

『はぁ!!』

 

 ジュリエッタのレギンレイスジュリアが、腕に装備されたジュリアンソードを振るい、ガンヴォルヴァの両腕のみを正確に破壊。三日月はその瞬間を見逃さす、バルバトスでガンヴォルヴァを蹴り飛ばす。

 そして蹴り飛ばされたガンヴォルヴァは、そのまま爆発四散した。

 

『大丈夫ですか?三日月・オーガス』

 

「うん。助かったよ。ありがと」

 

 まさに命の恩人であるジュリエッタに、三日月はしっかりとお礼を言う。

 

『それにしても、厄介極まりないですねあれは』

 

「そうだね。でも倒さないと、マズイ事になる」

 

『ですね。どういう訳かフロント管理社も来ませんし、私たちだけであれをどうにかしなければ…』

 

 本来なら、こういう現場にはプロの軍人であるフロント管理社のモビルスーツが対応するのだが、そのフロント管理社が一向に来てくれない。恐らく、テロリストが何らかの妨害でもしているのだろう。

 

『くっ!学園内でちょっと危ないけど、背に腹は代えられないよね!行くよ皆!!怖いだろうけど、頑張って!!』

 

 今日は何故か皆があのモビルアーマーを怖がっているが、それでも動かないといけない。エアリアルと皆は怯えながらも、根性でエスカッシャンとビームライフルを接続させた武器、ガンビットライフルをハシュマルに向けて発射する。これで少しは、ダメージが通る筈だ。

 

『嘘!?』

 

 しかしそのエアリアル最大の攻撃も、ハシュマルに搭載された防御型GUNDビットが、まるで合体するように大型の盾になった事で防がれてしまう。

 

『邪魔だよ、スレッタ・マーキュリー』

 

 そしてソフィは、スレッタに向けてガンヴォルヴァと共に攻撃を開始。

 

『きゃあああ!?』

 

 攻撃を完全には避けきれず、エアリアルにその攻撃が掠る。

 

「お前ら!!」

 

 その様子を見た三日月は、直ぐに攻撃を再開。

 

『な!?1人では危険です!三日月・オーガス!!』

 

 ジュリエッタも直ぐに後を追う事にしたが、

 

『死ね!スペーシアンが!!』

 

『くっ!?』

 

 ノレアとガンヴォルヴァによる妨害を受けて、その場に取り残されてしまった。

 

『あはは!いいねその殺意!!最高だよお兄ちゃん!!』

 

 三日月に、ソフィは4度目となるビーム攻撃を開始。三日月はその攻撃を右腕で防御しながら、前に進む。

 しかしそのせいでビームが拡散してしまい、周りに被害が出てしまう。だが今はそんな事気にしない。スレッタを殺そうとしたソフィとノレアを、直ぐにでも殺して止めないといけないのだから。

 

 そして攻撃を防いだ三日月は、そのままの勢いでソードメイスをハシュマルの頭部目掛けて投げつけた。ソードメイスは見事命中したが、大したダメージにはなっていない。寸前でソフィがハシュマルを動かして、直撃を避けたからである。

 これで武器を失ったバルバトスだが、三日月はそのまま前進。テイルブレードを起動し、ハシュマルを攻撃。

 

「っ!」

 

 しかしその攻撃も、ハシュマルの超硬ワイヤーブレードによって防げれてしまう。だがこれで終わりでは無い。バルバトスを更に前進させてハシュマルの懐に入り、その大きな拳でハシュマル本体を殴りつけたのだ。

 

「ちっ!ダメか…!!」

 

 でも案の定、大したダメージにはなっていない。もしこれが実戦仕様なら少しは変わったのだろうが、決闘仕様の今ではそうもいかない。そして三日月は投げたソードメイスを回収し、直ぐに距離を取る。

 

(やっぱり、もっと大きな武器がいる…)

 

 ソードメイスやバルバトスの腕も十分に質量のある武器だが、モビルアーマー相手にはやや威力不足。どうしても、もっと大きな武器がいる。早くチュチュにアレを届けてもらなわければ。

 

『誰かぁ!!お願い助けて!!』

 

「ん?」

 

 その時、ふと声が聞こえた。三日月が声のしたほうを見てみると、そこにはラウダとフェルシーのディランザがいた。そういえば、最初にソフィの攻撃を受けて倒れていたなと三日月は思い出す。

 

『ラウダ先輩が起きないの!このままじゃ、先輩が死んじゃう!!』

 

 フェルシーはなんとか救援を求めるが、誰も助けにいけないでいる。今は、自分の事で手一杯なのだ。

 

『あーもう!うるさいな!!外野はそのまま黙って死んでてよ!!』

 

そんな2人に、ソフィはハシュマルによる攻撃を開始。2人目掛けて、本日5発目となるビーム攻撃を発射したのだ。

 

『う、嘘!?いやああああ!?』

 

 ラウダを庇っているせいで、その場から動けないフェルシー。なんとか防御体勢だけは取るが、恐らく意味は無いだろう。このまま、ビーム攻撃の餌食になるだけだ。

 

『え?』

 

『へぇー?優しいね、お兄ちゃん?』

 

 しかし、三日月が寸前のところで間に割って入った事で、フェルシーとラウダはなんとか生き残れた。尤も、ナノラミネートアーマーによって弾かれたビームが周囲に拡散したので、周りは酷いことになってるが。

 

『え、えっと、ありがと…』

 

「邪魔だからさっさと逃げてくれない?」

 

『それが出来ないんだよ!ラウダ先輩が起きないし…!』

 

「あっそ。じゃあ。そこでじっとしてて」

 

 動けないなら仕方がない。ソフィの狙いは自分だし、ここは囮になってこの2人から興味を逸らせよう。

 

(でもマズイな…今ので腕のナノラミネート塗料が、殆ど剥げた…もう1回も受ける事は出来ないぞこれ…)

 

 しかし、状況はかなり悪い。なんせ今のビーム攻撃で、熱に弱いナノラミネート塗料がほぼ落ちたからだ。もう1度ビーム攻撃をくらえば、流石にやられる。尤も、全部避ければいいだけではあるのだが。

 

『おい三日月!無事なのか!?』

 

「うん、俺はまだ大丈夫。チュチュは?」

 

『なんとか行ける!あと昭弘も直ぐにくる!で、どうするんだ!?』

 

 状況は悪い。ただでさえ相手はあのモビルアーマー。そこにソフィとノレアという腕利きのガンダムパイロットがいるのだ。まともにやりあって、勝てる相手じゃない。

 

「…………」

 

 ならば、まともにやらなければいいだけだ。

 

 幸いな事に、バルバトスには切り札がある。あれを使えば、モビルアーマーもガンダムも破壊する事は可能だろう。しかし、その為にはもっと大きな武器がいる。

 

「チュチュ、格納庫に戻ってあれ取ってきてくれない?」

 

『は?』

 

「あれだよあれ。決闘じゃ使えない超大型メイス」

 

 その為に、チュチュにあの超巨大メイスを持ってきて欲しいとお願いをする。

 

『何言ってるんだ三日月!今は1人でも人手が必要なんだろ!?なのにあーしだけ逃げるみたいな真似、出来るわけねーだろ!!』

 

 だがチュチュ、簡単にそのお願いを受けない。いくら何でもまるで逃げているみたしだし、そもそもあの2人が逃がしてくれるとは思えない。

 

「この武器じゃ倒せないんだ。だからあれが必要なんだよ。それに、あの2人なら俺がなんとかする。だから、頼む」

 

『ぐっ!でも…!』

 

『行けチュチュ!!』

 

 そこに送れて、昭弘も合流。

 

『あいつらは俺等がなんとかする!だから格納庫まで行ってきてくれ!』

 

「頼む、チュチュ」

 

『うっぐ…!だあああ!わかったよ!その変わり、絶対に死ぬんじゃねーぞ!!』

 

 こう言われてしまえば、チュチュも断れない。1秒でも早く、三日月にあの超大型メイスを届ける事にしよう。

 

『おいマルタン聞こえたな!?今直ぐバルバトス専用のあのクソデカメイスを用意してくれ!!』

 

 そしてチュチュは、デミトレーナー改を戦術区画のハッチに向けて動かす。

 

『行かせる訳っ!?』

 

『させません!!』

 

 そのチュチュに攻撃をしようとしたノレアだが、スレッタによって邪魔されてしまう。

 

「スレッタ、大丈夫?」

 

『うん!まだ動けるよ!』

 

『どこまでも邪魔ばかりっ…!!』

 

 一応計画は進んでいるが、こうも邪魔ばかりされると腹が立ってしょうがない。やはりこいつらは、全員必ず殺そう。ノレアは強くそう誓う。

 

「スレッタ、昭弘。俺があのでかいモビルアーマーをなんとかする。だから、周りの2人とその他をなんとかして。チュチュが戻ってくるまでの辛抱だから」

 

『大丈夫なの三日月?あのモビルアーマーってやつ、凄く強いよ?』

 

「バルバトスはビーム効かないしいけるよ。お願い」

 

『うん、わかった!でも無茶だけはしないでね!』

 

『おう!任せろ!』

 

 そんな2人に、三日月は攻撃をして時間を稼ぐ事にする。あの超大型メイスと、バルバトスの切り札を使えば恐らくこのモビルアーマーも倒せるだろう。それまでは、なんとしてでも耐えて見せる。

 

(でもそれだと、後ろの2人が危ないんだよなぁ…)

 

 しかしこの場を動くと、今後ろで動くなくなっているラウダとフェルシーを見捨てる事になる。あまり好きでは無い2人だが、このまま死なれるのは目覚めが悪い。スレッタに守ってもらうのが1番ではあるが、それだと援護火力が足りない。

 

『ならば私は!ここでこの2人の盾になろう!正直ジェターク社は気に食わんが、今はそんな事言っている場合では無いしな!!』

 

『ついでに私も、戦闘に加わらせて貰いますね』

 

 どうするべきか考えている三日月の元に、イオクとガンヴォルヴァを破壊したジュリエッタが合流。おまけにイオクは、破壊されたガンヴォルヴァの盾を地面に突き刺して即席の防御陣地を築いていた。これで防御も、とりあえず安心だ。

 

「ありがと」

 

『気にするな!』

 

『私は三日月・オーガスと共に全面に出ます。その2人をよろしくお願いしますねイオク先輩』

 

『うむ!任された!!』

 

 イオクは元気に返事をすると、長距離ライフルを構えながら、ラウダとフェルシーの前に立つ。

 

『うぐっ…よりにもよってアリアンロッドに助けられるだなんて…』

 

『そんな事を言っている場合では無いだろう!!死んだらそれまでなのだぞ!?』

 

『わかってるよ…!ちゃんと感謝はしてる…!』

 

『ならばよし!!』

 

 かなりの屈辱ではあるが、確かに死ぬよりずっとマシだ。

 

『ああ、本当にムカツク…スペーシアンのくせに、いざという時は敵対してても仲良しこよしですか?お前らスペーシアンに、そんな人を思いやる心なんて無いくせに…』

 

 その光景を見ていたノレアは、苛立ちを加速させる。散々アーシアンから搾取しておいて、アーシアンを虐げておいて、アーシアンを殺しておいて、自分達はあんな風に結束する。そして最後は、見事勝利してめでたしめでたしという訳だろうか。

 

『ほんと、反吐が出る…』

 

 こいつらさえいなえければ、アーシアンはずっと平和に暮らせるのだ。だから殺す。大勢殺す。そして1秒でも長く、アーシアンに安寧をもたらせてみせる。

 

『ソフィ。モビルアーマーはそっちに任せるね。私はガンヴォルヴァを担当するから』

 

『おっけー。でもお兄ちゃんは殺しちゃだめだよ?私の家族にするんだから』

 

『……努力はする』

 

『そこはもっとしっかり言ってほしんだけどなー』

 

 いくらソフィのお願いでも、こればかりは聞けそうに無い。だって三日月は、皆の仇なのだ。どさくさ紛れて、殺してしまいそうである。

 

『散開しろ!ガンヴォルヴァ!』

 

 残された3機のガンヴォルヴァが、散開して三日月達を攻撃をしてくる。当然、ソフィとノレアも攻撃開始。そんな攻撃を開始された瞬間、三日月達も散開した。

 

 三日月とジュリエッタはハシュマルに向かい、スレッタと昭弘は左右に展開し、ガンヴォルヴァとソフィとノレアを攻撃する。これで、三日月とジュリエッタへの邪魔を極力減らせる。

 

「俺は右足」

 

『私は左足を』

 

 そして三日月とジュリエッタは、ハシュマルに攻撃を開始。三日月はソードメイスで右足を攻撃し、ジュリエッタはジュリアンソードで左足を攻撃する。これで脚部を破壊し、その場で動けなくする為だ。

 

『近づかせる訳ないでしょ!!』

 

 だがやはり、そう簡単に近づかせてはくれない。ソフィはルブリス・ウルによる攻撃を行い、同時にハシュマルの尻尾を動かす。

 

「ふっ!」

 

 その攻撃を、三日月はテイルブレードで相殺する。そしてハシュマルの右足目掛けてソードメイスを横に薙ぎ払うように攻撃をした。

 

「っ硬」

 

 ハシュマルは少しバランスを崩したが、大したダメージは入っていないようだ。

 

『くっ!なんて硬さですか!!』

 

 それはジュリエッタも同じようで、レギンレイスジュリアのジュリアンソードが弾かれているのが見える。

 

『当然だよ!この子の装甲を貫くんだったら、もっと大きな武器でも用意するんだね!』

 

 そう言うとソフィは、なんとその場でハシュマルをジャンプさせた。

 

「なっ…」

 

『跳ぶんですか!?』

 

 まさかあの巨体で跳ぶとは思っておらず、2人は驚愕。そしてハシュマルが着地すると同時に、大量の土埃が舞う。更にソフィは、超硬ワイヤーブレードを起動して、2人を攻撃する。

 

「ぐっ!?」

 

『危ないっ!?」 

 

 なんとか回避できたものの、やはり凄まじい攻撃だ。まともにくらえば、モビルスーツとて真っ二つになるだろう。

 

『どいてください!!』

 

『どくわけありません!!』

 

 上空では、スレッタがノレアのルブリス・ソーンとビームサーベルで鍔迫り合いをしていた。その間に1機のガンヴォルヴァがエアリアルを攻撃するが、それはエスカッシャンで防御している。こういう事が出来る当たり、スレッタはやはりホルダーに相応しいパイロットだろう。

 

『くっそ!いい加減落ちやがれ!!』

 

 その反対側では、昭弘が残った2機のガンヴォルヴァを落とすべく攻撃をしていた。しかし、常に飛んでいるせいで中々当たらない。

 

『こっちも忘れて貰っては困るぞテロリスト共めーー!!』

 

 更にイオクも、ラウダとフェルシーを守りながら攻撃をする。別に当たらなくていい。これは言ってしまえば、少しでも相手の集中力を減らすという嫌がらせだ。

 

『邪魔ぁ!!』

 

『きゃう!?』

 

 そんな中ソフィは、エアリアルを思いっきり蹴飛ばす。そしてガンヴォルヴァと共に、エアリアルを破壊すべく攻撃をした。

 

『なっ!?』

 

 だがその攻撃が、発射される事はなかった。

 

『無事かい?スレッタ・マーキュリー?』

 

『あ、ありがとうございます!エランさん!』

 

『いいって』

 

 寸前のところで、今まで遠くから状況を見ていたエランの乗るファラクトがガンヴォルヴァを破壊したからだ。本当ならずっと安全な場所で傍観しておきたかったが、ここでスレッタが死ぬと自分の指令が遂行できないと判断したからである。

 そしてガンヴォルヴァの爆発の余波に巻き込まれて、ルブリス・ソーンも微量だがダメージを受ける。

 

『おお!当たったぞ!!』

 

『これでとどめだーー!!』

 

 更に最後に残っていた2機のガンヴォルヴァも、イオクのラッキーショットが当たり1機を破壊し、そこに昭弘が1機のガンヴォルヴァにビームライフルを当てて頭部を破壊する。

 これで全てのガンヴォルヴァの破壊が完了。残っているのはソフィとノレアのガンダムと、モビルアーマーハシュマル・リメインズだけだ。

 

『うむ!行けるぞ!!このままテロリストを倒すのだ!!』

 

『イオク先輩、調子に乗らないでください。足元掬われますよ?』

 

 調子に乗るイオクに、ジュリエッタが注意を促す。勝って兜の緒を締めろという諺がある通り、最後まで気を抜くわけにはいかない。じゃないと、うっかり死んでしまいかねないからだ。そして三日月達は、ソフィとノレアを囲むように包囲する。

 

『ソフィ。あと何発撃てる?』

 

『5発だね。でも尻尾はまだまだ使えるよ』

 

 まさかガンヴォルヴァを全て壊されるとは思っていなかったが、こっちにはまだモビルアーマーがある。しかし、流石にちょっとマズイかもしれない。

 

『ノレア、時間がかかってるし、この子で一気に決めるよ』

 

『わかったソフィ』

 

『じゃあ、ちょっと激しく動くからね~?』

 

 なのでソフィは、切り札を使うことにした。

 

(何だ?)

 

 ソフィ達のガンダムの機体の1部がまた紅く光る。何かするつもりなのだろう。三日月達は、細心の注意をしながらソフィ達を見る。

 

「ーーーー!!」

 

 瞬間、三日月は驚くべき光景を目撃する。

 

「なっ!?」

 

 これまでその場からあまり動かなかったハシュマルが、突然水を得た魚の如く俊敏に動き出したのだ。それこそまるで、モビルスーツのように。そしてバルバトスとの距離をあっという間に詰めたハシュマルは、左足を大きく振り上げて踏みつけ攻撃をしてきた。

 

『あんまり激しく動くと関節部分が壊れるらしいから、最初からは動かなかったんだよねー』

 

「ぐうっ…!?」

 

 バルバトスの機動性のおかげで、攻撃を避けれた三日月。だがそこに、超硬ワイヤーブレードによる攻撃がやってくる。

 

「こいつっ…!!」

 

 超硬ワイヤーブレードによる攻撃を、ソードメイスで防御する三日月。だが、今までよりパワーとスピードがある。おかげでバルバトスでもしっかりと踏ん張っていないと、ぶっ飛ばされてしまいかねない。

 

『三日月!!』

 

 そんな三日月を助けるべく、スレッタは攻撃を開始。しかしその攻撃は、ハシュマルに装備されているGUNDビットによって防御される。そして攻撃をしてきたスレッタに、ハシュマルは頭部を開いてビーム攻撃を始める。

 

『マズイ…!!』

 

 あんなもの、当たればその瞬間に絶命だ。スレッタはエアリアルを必死で動かして、ハシュマルのビーム攻撃を回避。

 

『しまった!!』

 

 しかしそのせいで、また学園の外壁に穴が空いてしまった。このままハシュマルのビーム攻撃を避けてばかりだと、学園そのものが破壊されてしまう。

 

(やっぱりあれは、早く倒さないと…!)

 

 穴から宇宙に逃げることはできるだろう。しかしそうなった場合、ソフィとノレアを止める人がいなくなり、あのモビルアーマーが大暴れをして沢山の人が死んでしまう。そうなれば、ミオリネだって危ない。だから逃げず戦い、あれを壊さなければ。

 

『よそ見!!』

 

『っ!!』

 

 スレッタがそう思いながら穴に気を取られていると、ソフィはハシュマルの超硬ワイヤーブレードによる攻撃をエアリアルに行う。しかしその攻撃を、スレッタは回避する事に成功。これまで散々、三日月と模擬戦をしてきた経験が生きた。

 

『どいてください!』

 

『悪いけど、流石に彼女に死なれるのは俺も困るんだよねぇ』

 

 そしてノレアは、エランが足止めをしていた。実際ここでスレッタが死ぬと、その責任を取らされかねないのだ。出来れば本気で戦うなんてしたくないけど、彼も自分の命が大事なのだ。なのでほんの少しだけ、ちゃんと戦う事にした。無論、本気は絶対に出さないが。

 

「お前の相手は、俺だろ…!!」

 

 スレッタに攻撃する様子を見ていた三日月が、ハシュマルに突貫。

 

『あはっ!いいねお兄ちゃん!それだよ!その殺意最高だよ!!』

 

 家族になる予定の三日月からの殺意に、ソフィはうっとりとした表情をしながら標的を三日月に変更。ルブリス・ウルのビームライフルと、ハシュマルの超硬ワイヤーブレードによる猛攻を開始。

 

「邪魔!」

 

 三日月はその攻撃に、移動しながらソードメイスとテイルブレードで応戦。両者の尻尾と尻尾がぶつかり、周りに風が舞う。まるで剣の暴風だ。うっかり間合いに入ってしまえば、それだけで切り刻まれてしまうだろう。

 

『まだまだ!!』

 

 ソフィは意気揚々としながら、ハシュマルをバルバトスに向けて動かす。ハシュマルの踏みつけ攻撃や、超硬ワイヤーブレードによる攻撃。それらの攻撃を、時に防御し、時に回避して三日月は凌ぐ。これが三日月とバルバトスで無かったら、既に死んでいるであろう。

 

『これはどう!?』

 

「っ」

 

 ここでソフィは、ハシュマルの超硬ワイヤーブレードを広範囲に回し蹴りのように横に振るう。その攻撃を、三日月はジャンプして避けた。

 

 しかし、他はそうもいかない。

 

『しまっ!?ぐああああ!?』

 

『昭弘!?』

 

 まさか自分のところまで尻尾が伸びるとは思っていなかった昭弘のグレイズ改が、両足を破壊されてしまったのだ。

 

『終わりです。死ね』

 

『マズっ…!?』

 

 その場に崩れ落ちた昭弘のグレイズ改に、エランのファラクトから距離を取ったノレアが攻撃をする。三日月はソフィと彼女の操るハシュマルで忙しく、スレッタのエスカッシャンは距離があって間に合わない。エランに至っては助ける素振りも無い。これでようやく、1人殺せる。

 

 そう思ったノレアだったが、

 

『口閉じて!舌噛まないでください!!』

 

『うおおおお!?』

 

 攻撃が当たる寸前のところで、ジュリエッタが昭弘のグレイズ改を掴んでその場から移動をした。パワーアップしたレギンレイスジュリアだから、出来た真似である。

 

『ちょこまかとぐうっ!?』

 

『やらはせんぞ!テロリスト!!』

 

 更にそこにイオクが攻撃をしてきたことで、結局また仕留め損なってしまう。まだ誰も禄に殺せていないこの状況に、ノレアはイライラを募らせる。

 

『ちょっと!ノレアの邪魔しないでよ!!』

 

 そこにソフィが、ハシュマルの超硬ワイヤーブレードを動かして、破壊されたガンヴォルヴァの残骸に刺す。そしてそれを、イオクに向けて投げつけた。

 

『ぐおおおっ!?』

 

『イオク先輩!!』

 

 レギンレイズの胴体に思いっきり命中し、そのまま後ろに倒れる。幸い死んではいないようだが、怪我とかしているかもしれない。

 

「だから、こっちが相手だろ…!!」

 

 三日月はバルバトスのスラスターを吹かし、上に飛び上がる。そしてソードメイスを振りかぶり、ハシュマルの頭部目掛けて振り下ろした。

 

『そんな正面攻撃、当たらないよ!!』

 

 それをハシュマルは尻尾で防御し、更に右足を振り上げてバルバトスを蹴り飛ばそうとする。

 

「っ!!」

 

 だが攻撃が当たる寸前、バルバトスはテイルブレードを地面に発射し、それを巻き戻す事で避ける事が出来た。

 

(くっそ!落ち着け…!)

 

 地球寮の仲間であり、友達である昭弘がやられた事で頭に血が上り、冷静な判断を失ってしまった。これはいけない。こんな場所で冷静さを失えば、それだけで死期が早まる。ここは冷静にならなければ。

 

(ここで使う?ダメだ。この武器じゃ使っても致命傷にはならない…)

 

 ソフィ達に切り札があったように、三日月にも切り札がある。しかし、そのためにはこのソードメイスではダメなのだ。やはりチュチュが戻ってくるまで、耐えなければ。

 

『あ、そう言えばさ、お兄ちゃんって、あのスレッタ・マーキュリーが大事なんだよね?』

 

「……それが何?」

 

『いや?だったらさ…』

 

 三日月に態と確認するような質問をさせると、ハシュマルを動かす。具体的に言うと、超硬ワイヤーブレードをエアリアル目掛けて動かしたのだ。更にノレアも、エアリアルに攻撃をする。

 

『うわっ!?』

 

 スレッタはその攻撃を避けるが、ソフィの狙いは攻撃じゃない。

 

『なっ!?』

 

『捕まえた~!』

 

 ハシュマルの超硬ワイヤーブレードを、エアリアルの足にからませたのだ。そしてそのまま、超硬ワイヤーブレードを振り上げ、エアリアルを地面に叩きつける。

 

『がっ!?』

 

「スレッタ!!」

 

 三日月は直ぐにエアリアルの元に行こうとするが、それをソフィとノレアが邪魔をする。ナノラミネート塗料が落ちていなければこのまま強行突破も出来たのだが、今ではそれも難しい。

 

『そんなにこれが大事ですか?スペーシアンのくせに』

 

『あはは!やっぱりその殺気最高~~!この子はお兄ちゃんを怒らせる事が出来る良いおもちゃだね~~!』

 

「お前らっ…!!」

 

 最早三日月の中に、この2人を許すという選択肢は無い。ここで殺す。絶対に殺す。そう思ったからこそ、スレッタを助けるためにも三日月は突貫する。

 しかしやはり、簡単には近づけない。距離を取って腕部ビーム砲を撃っても、ハシュマルに装備されているGUNDビットのせいで防がれる。やはりハシュマルを倒すには、近接戦闘しかない。

 

『三日月・オーガス!!』

 

 そこにジュリエッタが、レギンレイスジュリアの肩に装備されているビーム砲を発射し、ジュリアンソードを振りかざしながら攻撃を開始。

 

『ちょっと!私とお兄ちゃんの決闘の邪魔しないでよ!!』

 

 その攻撃に、ソフィは少し苛つきながら対処する。ハシュマルの超硬ワイヤーブレードを振って、自分もビーム攻撃をした。

 

『くっ!近づけない…!!』

 

 バルバトス程では無いにしても、高機動モビルスーツであるレギンレイズジュリアだが、流石に相手が悪すぎる。なんせ相手は、ソフィ達が自在に操れるモビルアーマー。攻撃の速度も威力も、モビルスーツの比では無い。攻撃を捌くのがやっとだ。まぁ、ハシュマルの攻撃を捌いている時点でジュリエッタも十分に凄いのだが。

 

『しまっ…!?』

 

 だが、それも完璧では無い。ほんの僅かな隙を突かれて、ハシュマルはレギンレイスジュリアの左手を切り落とした。その結果、レギンレイスジュリアの左手が宙を舞い、バランスを崩したレギンレイスジュリアは尻もちをつく。

 

『とどめ!』

 

『っ』

 

 そこに超硬ワイヤーブレードが迫ってくる。迫りくる超硬ワイヤーブレードに、ジュリエッタは死を覚悟した。

 

 しかし、

 

『っ!?』

 

『あーもう!お兄ちゃん邪魔しないでよー!!』

 

 その攻撃は、バルバトスのテイルブレードで防がれてしまう。

 

『助かりました、三日月・オーガス』

 

「いいよ。それより、スレッタを助けたいから、協力してくれない?」

 

『ええ、よろこんで』

 

 この恩は返さないといけない。ジュリエッタは直ぐに体勢を立て直して、三日月と協力しスレッタの救助を試みる。

 

『どうしたの皆!?どうしてそんなに怖がってるの!?』

 

 一方、ハシュマルによって地面に叩きつけられたスレッタのエアリアル。どういう訳か、今日はエアリアルや皆が怯えていつものように動けない。ランブルリングが始まった時はこんな事なかったのに、あのモビルアーマーが現れてからというもの、ずっとこんな調子だ。一体何を、そんなに怖がっているのだろうか。

 

『え?あの天使が怖い?嗅いだ事のないくらいの血の匂いがする?ど、どういう事?』

 

『何をごちゃごちゃと…』

 

 1人でずっと喋っているスレッタに、ノレアは本日何度目かもわからない苛つきをする。

 

『ふーん。そっか。お兄ちゃん、そんなにこの鈍臭い子が大事なんだ。じゃあ、壊しちゃお』

 

『あぐっ!?』

 

 そうしている間に、ソフィはハシュマルを動かして、エアリアルを踏みつける。もっと言えば、まるで鳥が獲物を掴むようにハシュマルの足でエアリアルを掴んだのだ。

 

『いくらエアリアルがガンダムでも、流石にこのまま握られたら、ぺしゃんこになっちゃうよね~?』

 

『あっ…!?ぐうっ…!?』

 

「スレッタ!!」

 

『私の家族になってくれるなら、この子は助けてあげてもいいよ?』

 

 そしてソフィは、ゆっくりとハシュマルの足の指を閉じていく。ギギギと、金属が潰される音が聞こえてきた。エアリアルもどういう訳か、エスカッシャンを使えない。このままでは、スレッタが殺される。こちらの戦力は、自分のバルバトスとジュリエッタのレギンレイスジュリアだけ。あまりに絶望的だ。

 

(使うしか、無い…!)

 

 ここで三日月は、切り札を使うことを決める。ソードメイスでは少し不安があるが、ここで使わないとスレッタが死んでしまう。そして三日月は覚悟を決めて、使おうとした。

 

 

 

「え?」

 

 

 

 だがその瞬間、何者かがハシュマルを攻撃。おまけにそれは、1人や2人じゃなかった。

 

『撃て撃て!!あのホルダーを守るんだーー!!』

 

『注意を引きつけるだけでいい!!深追いするなよ!!』

 

『時間を稼げ!あの悪魔、いや、三日月・オーガスに武器が届くまでの辛抱だ!!』

 

 攻撃の正体は、ランブルリングに参加していた他の参加者だ。

 

『はぁ?今更何?』

 

『今なら!!』

 

 そして、その攻撃にソフィが気を取られている隙に、スレッタはエアリアルのエスカッシャンで、自分が捕まっている周囲の地面をエアリアルを縫うように攻撃。その攻撃で、エアリアルの周囲に隙間が出来た。これで動ける。そのままスレッタはエアリアルを動かして、ハシュマルの拘束から抜け出す事に成功。

 

「何で?逃げた筈じゃ…?」

 

 とっくに退避していたと思っていたのに、何故か戻ってきている。そしてどういう訳か、ハシュマルに攻撃をしている。一体何があったというのか。

 

 ここで時間を、少しだけ遡らせて貰う。

 

 

 

 

 

 第3モビルスーツ格納庫

 

「急げマルタン!早くこれを三日月に届けないといけないんだからな!!」

 

 緊急で使用している大型の格納庫では、チュチュがデミトレーナー改に乗ったままマルタンに命令を出していた。周りには、ランブルリングに参加していた他の生徒やモビルスーツもいる。

 そんな中、マルタンを初めとした地球寮の生徒は、超大型メイスを武器庫から運び出すべく奔走していた。

 

『チュチュ!?本気で戻るつもりなの!?』

 

「あたりまえだろ!!今も三日月達は戦ってるんだぞ!!そしてあーしは三日月にこれを取ってこいって頼まれたんだ!!だったら、その思いに答えないとだめだろ!!」

 

 眼の前にある、バルバトス専用の武器である超大型メイス。普段の決闘では殺傷力が高すぎるという理由で使われていないが、今はこれが必要なのだ。

 

『ちょっとチュチュ!あんたまで何してるのよ!!』

 

 そこに、ミオリネが割り込んでくる。

 

『ただでさえこっちは決闘仕様で禄に反撃できていないのよ!?おまけに相手はテロリストで、なんか知らないけど凄く大きなGUNDビットも持ってきてる!そんな場所に戻るっていうの!?』

 

 ミオリネがそう言うのも当たり前である。いくらモビルスーツとはいえ、相手は実戦仕様でこっちは決闘仕様。正面から戦っても、勝つのは難しいだろう。そこにむざむざ戻るなんて、自殺行為だ。

 

 これはただ事実を言っているだけでなく、チュチュにこれ以上危険な目にあってほしくないという思いもある。

 なんせ相手はガンダムに乗ったテロリスト。おまけに見たことも無い兵器も持ってきている。そんな危険な場所に、自分の会社の部下を送り込むなんてマネ、ミオリネには出来ない。

 

「うるせぇ!!クソスペ我儘お嬢様!!なんと言われようとも、あーしは戻るぞ!!どうしても止めたいなら、てめぇがモビルスーツに乗ってあーしを止めてみろ!!」

 

 しかしチュチュは、なんと言われようとも戻る気でいる。仲間が必死で戦っている上、三日月に頼まれたのだ。その約束を破るなんて真似、チュチュには出来ない。

 

『っあーーもう!だったら絶対に生きて帰ってきなさいよ!』

 

「んな事くらいわかってるよ!!」

 

 ミオリネも折れたのか、チュチュをこのまま行かせる事にした。正直気は全然進まないが、現状他に解決策が見当たらない。ならば、この学校で1番のモビルスーツであるバルバトスに、この超大型メイスを渡してあのモビルアーマーを壊そう。現状、それが1番誰も傷つかない道だ。

 

「っ重!?」

 

 しかし、ここで問題発生。チュチュのデミトレーナー改では、この超大型メイスを持つ事が出来なかったのだ。なんせこれは、ガンダムフレームであるバルバトス専用の武器。おまけのこの超大型メイスは、元々対艦用というコンセプトで作られた武器。普通の武器と違い、質量の塊なので重くて当然。チュチュのデミトレーナー改では、元の基本スペックが全然違うので運べる訳無いのだ。

 しかしまずい。今は1秒だって惜しいのに、このままでは約束を守れない。なんとしてでも、これをここから運びださなければ。

 

『手伝う』

 

 そう思っていると、1機のモビルスーツがチュチュの元までやってきた。

 

「お前…」

 

『よくわからんが、これが必要なんだろ?だったら俺も運ぶ。2機なら運べる筈だ』

 

 チュチュの元にやってきたのは、ハッシュが乗るスピナ・ロディ改だ。なんとかここまで逃げてこれた彼が、突然チュチュを手伝うと言い出した。

 

「何でだ?何を考えてる?」

 

『別に何も。ただ、三日月・オーガスは命の恩人だからな。ここで借りを返したいんだ』

 

 逃げる途中、ハッシュは三日月に命を救われた。もしもこのまま三日月が死んだりしたら、借りを返せない。なので彼は、それを返すべく手伝う事にしたのだ。

 

「そーかよ、じゃあそっち持て。落としたらぶっ飛ばすからな」

 

『わかった』

 

 そしてチュチュとハッシュは、協力して超大型メイスを持ち上げる。

 

「よし!上がった!さっさと運ぶぞ!」

 

 2機のモビルスーツのおかげで、なんとか持ち上がった。あとはこれを運ぶだけだ。

 

(でも、大丈夫か?こんなんじゃ、動きが悪すぎて良い的だ…)

 

 しかし、こんな重い物を運んでいるのだ。当然、動きは遅くなる。これではいざという時、避ける事も出来ない。誰かが囮にでもなればいいのだが、そんな相手が都合よくいる訳ない。

 

『な、なぁ!俺等にも手伝わせてくれ!!』

 

「はぁ?」

 

 そう思っていると、数機のモビルスーツが近づいてきた。全員、ランブルリングに参加していたモビルスーツである。

 

「何でだよ?てめぇら、スペーシアンだろ?それがどうしてアーシアンであるあーしらを手伝おうって言うんだ?」

 

 折角の申し出を、チュチュは威嚇しながら問う事にした。今まで散々自分達地球寮を見下し、嫌がらせをしてきたスペーシアンが、突然そんな事を言ったのだ。疑問に思い、怪しむのも無理は無い。

 

『だってさ、あの地球寮の悪魔、ずっと戦ってるじゃん!』

 

『そうだって!ラウダ先輩も助けていたし、あいつらが戦ってくれたおかげで俺達逃げる事が出来たんだ!』

 

『だから、このまま死なれたら寝覚めが悪いんだよ!頼む!協力させてくれ!!』

 

 彼らは三日月やスレッタ達に、ハッシュのように恩を感じていた。自分達は一目散に逃げたのに、三日月達は戦っている。おかげでテロリストに狙われる事無く、今生きている。その恩を、返したいのだ。

 

『チュチュ。丁度いいわ。そいつらに囮になってもらって』

 

「はぁ!?正気かてめぇ!?」

 

 ミオリネの突然の考えに、チュチュは驚く。ただでさえ危険な戦場に戻り、あの化物相手に囮になれというのだ。どう考えても、危険でしかない。

 

『ただし、あくまで意識を反らせるだけ!少し攻撃したら、直ぐに撤退させるのよ!これで死んだら、こっちの寝覚めが悪いしね!!そしてその間に、あんたはハッシュと協力してそれを三日月に届けなさい!!』

 

「鬼かてめぇは…」

 

 言っている事は理解したが、それでも普通はやらせようなんて考えない。しかし、今は猫の手も借りたいくらいなのも事実。ならば、この協力を受け入れよう。それに、スペーシアンに命令できる良い機会だ。せいぜい顎で使ってやろう。

 

「おーしてめぇら!よーく聞け!!」

 

 そしてチュチュは、すっごく簡単に作戦を命令して、直ぐに作戦を開始させた。

 

「よし行くぞ!ついてこいスペーシアン共!!」

 

 『了解!!!』

 

 こうしてチュチュは、ハッシュと共に超大型メイスを運びながら、協力してくれたスペーシアンに号令を出して、格納庫から出撃をしたのだった。

 

(にしても、三日月の奴。何を考えてるの?確かにバルバトスは強力だから、あの武器があればソフィとノレアも撃退できるかもしれないけど…)

 

 一方、格納庫に残ったミオリネは、三日月の考えに首を傾げる。確かに、バルバトスであれば勝てるかもしれない。

 しかし、どこかひっかかる。何か大事な事を見落としているような感覚だ。

 

 

 

(……まさかあの子!!)

 

 

 

 そしてミオリネは、自分がとんでもない選択ミスを犯してしまったと理解したのだった。

 

 

 

 

 再び、時間を現在に戻す。

 

 数機のモビルスーツが、ハシュマルに向かって攻撃を開始。その間に、チュチュとハッシュは超大型メイスを運搬。

 

『あーもう!邪魔すんなよ雑魚共!!』

 

『っ回避しろーー!!』

 

『うおおおおおお!?』

 

 今のところ、作戦は順調だ。ソフィとノレアの攻撃も、囮部隊はなんとか防げている。数発撃ったら即移動を心がけているおかげだろう。

 

『おいハッシュ!バルバトスが見えた!投げる準備をしろ!!』

 

『うす!了解です!』

 

 囮作戦が功を奏し、なんとか無事にポイントまでたどり着く。そしてポイントにたどり着いた2人は、超大型メイスを投げる準備をする。

 

『受け取れーー!三日月ーー!!』

 

『チュチュ!だめー!!』

 

 途中でミオリネからの通信が入ったが、今更止まらない。2人は超大型メイスをバルバトス目掛けて思い切り投げる。それをバルバトスは、ソードメイスを地面に落とすと同時にしっかりとキャッチした。

 

「おい、バルバトス」

 

 コックピット内で、三日月は目を閉じてバルバトスに呼びかける。

 

「あれは、お前の獲物なんだろ?」

 

 モビルアーマーが現れた時、バルバトスは三日月に大量の情報を流し込んだ。それは、あのモビルアーマーはなんとしてでも破壊しないといけない化物であり、自分はその為に生まれてきたという情報である。

 しかしアレを倒す為には、今みたいに枷に繋がれた状態じゃダメだ。倒すには、全ての枷を外さないといけない。

 

 だがそうすると、また三日月が代償を支払う事になる。それでもいいのかと、バルバトスは三日月に問うた。

 

「余計な鎖は全部外してやる。その為に必要な物があれば、くれてやる。だから…」

 

 その問いに、三日月は了承する答えを出す。また何か失うかもしれないが、スレッタや友達を失う方がずっと嫌だ。自分が犠牲になるだけでいいのなら、いくらでも持っていけと言わんばかりである。本当なら、バルバトスもこんな事はしたくない。そうすれば、またスレッタやエアリアルが悲しむ事を知っているからだ。

 しかし今は、状況が状況。他に方法が無い。だから、これで行く。三日月が望むのであれば、自分は全ての力を貸し与えよう。それが1番、犠牲者が少なくなるだろうから。

 

 

 

「見せてみろよ。お前の力を」

 

 

 

 そして三日月の願いを聞き入れたバルバトスは、三日月が右目から血を流すと同時に、

 

 

 

 その両目を、真っ赤に光らせるのであった。

 

 

 

 

 





 機体解説

 ハシュマル・リメインズ

 シャディクの命令を受けて、夜明けの地平線団が地球で見つけたモビルアーマー。完全に死んでいたので、それを現代技術で改修して、現代に復活させた。
 エイハブリアクターが無いので、背中に戦艦に仕様する大型のエネルギータンクを背負っている。因みにリメインズとは、時間が経過した遺体という意味。

 武装は、頭部に装備されているビーム兵器。尻尾である超硬ワイヤーブレード。そして防御用に、六角形のシールド型GUNDビットを積んでいる。
 失われた技術を現代で再現しているが、それでもスペック低下は避けられなかった。おかげでビーム砲は10発しか撃てず、鉄血本編のように俊敏に動く事もあまり出来ない。


 そして少し弱いと感じたのなら、それは間違いではありません。ここのハシュマルは、エイハブリアクター無いし、プルーマも1機もいないので、鉄血本編よりはどうしても弱くなっているのです。それでも、水星世界じゃ十分脅威だけどね。

 そしてエアリアル、モビルアーマーに恐怖して本来の力が出ていない感じです。なのでちょっと弱く書かれています。

 どこか変な箇所や、矛盾しているような場所があったら言ってください。修正します。

 次回、復活した天使VS枷の外れた悪魔。
 それじゃ、またね。


ランブルリングの被害は、

  • 原作通り割と軽微
  • 原作以上に被害甚大
  • 三日月が超頑張って被害無し
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