悪魔と魔女の物語   作:ゾキラファス

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 作者が1番好きな鉄血OPは1期の第2OPです。サビが凄く好き。

 そして沢山の感想、本当にありがとうございます。色々参考にしております。返信は、今度纏めてさせて頂きます。


旅立ちと出会い

 

 

 

 

 

 水星衛星軌道 ペビ・コロンボ23

 

「今日こそ私が沢山勝つよ!」

 

「いや、今日も俺がいっぱい勝つ」

 

 そこのモビルスーツハンガーに、エアリアルに乗ったスレッタと、バルバトスルプスに乗った三日月がいた。2人はこれから、シミュレーションを使った模擬戦をする。

 エアリアルとバルバトスには特殊なケーブルが繋がれており、機種の違う2機はこれで同じシミュレーションが可能となった。わかりやすくいうと、携帯ゲーム機の通信ケーブルだ。

 因みにこれ、プロスペラの手作りである。

 

「ううん!今日こそは私が勝つんだから!!」

 

「何か今日は凄く気合入ってるね?」

 

 そして今日のスレッタは、どういう訳か気合が入っている。何時もやる気に満ちてはいるが、今日は一段と満ちている。

 

「えっと、場所は砂漠で、建造物は無しっと」

 

 まるで友人の家で対戦ゲームでもするかのように、スレッタはシミュレーション画面を操作する。そして操作が終わり、シミュレーションが始まる。

 

「よし!行くよ!エアリアル!」

 

「やるぞ。バルバトス」

 

 2人の掛け声に応えるように、2機の白いモビルスーツは目を光らせる。

 

 金星から水星に戻ってきてから3年あまり。スレッタ・マーキュリーと三日月・オーガスは、17歳になっていた。

 

 

 

 

 

 1時間後

 

「また、負けた…」

 

「でもスレッタ、間違いなく前より強くなってるよ」

 

「それでもまだ三日月に勝ち越せてない…」

 

「気にしすぎじゃない?」

 

 体も精神も成長した2人は、いつもの無人倉庫で話していた。しかし、その無人倉庫も姿が変わっている。昔は本当にただ使われていないコンテナや工具箱が置かれているだけの薄暗い倉庫だったのに、今では綺麗に掃除がされ、コンテナを改造して作った机と2つの椅子が置かれている。

 スレッタと三日月が協力して廃棄する物を色々改造したおかげで、無人倉庫はちょっとした部屋になっていた。スレッタはその内、仮眠用のベッドでも置こうかとさえ考えている。

 

「身長なら勝ったのに…」

 

「勝って嬉しいそれ?」

 

「あー、特に…」

 

 17歳になった2人だが、身長はスレッタの方が高くなっていた。三日月はどういう訳か身長が伸びず、結果としてスレッタより10cm程低い身長で止まってしまった。

 今までほぼ同じ身長だったのに、いつの間にかスレッタを少し見上げる事となった三日月だが、その事を特に気にしていない。

 例えスレッタの方が身長が高くても、スレッタはスレッタだからだ。そしてスレッタもまた、三日月より身長が高い事を気にしていない。

 

「本当は今日勝ち越したらって思ったのに…」

 

「どうかした?」

 

 スレッタが何か言いたそうだったが、よく聞こえない。

 

「あ、あのね!三日月!」

 

「うん」

 

 するとスレッタが、椅子から立ち上がって三日月に話かける。やや顔が赤く、緊張しているように見える。

 そして懐から、何かを取り出した。

 

「こ、これ!!」

 

 スレッタの手には、黒色の刺繍糸で作られた紐のようなものがあった。

 

「何?」

 

 何かよくわからない三日月。しかしその疑問は、直ぐに解消される。

 

「た、誕生日おめでとう!これ、私からのプレゼントだよ!」

 

「あ」

 

 言われるまで忘れていた。確かにスレッタの言う通り、三日月は今日が誕生日だった。そしてこれは、三日月への誕生日プレゼント。因みにスレッタのお手製である。

 

「ありがとう、スレッタ」

 

「ううん!こんなのしか無くてごめん…」

 

「そんな事ないって。スレッタから貰えるものは何でも嬉しいし」

 

 三日月、本心である。水星には娯楽施設なんて無い。一応、酒を飲むことが出来るバーくらいはあるが、子供がそんな所に行く事は無い。当然、そんな場所で友達と一緒に誕生日パーティをするなんてする訳が無い。

 なのでせめて誕生日プレゼントだけは渡したいと思うのだが、こんな辺境ではそれすら限られる。

 

「それで、これは何なの?」

 

「えっとね、お母さんに教えてもらったんだけど、ミサンガって言うお守りなんだって。それが切れるまで手首に付けていると、願いが叶うらしいよ」

 

「そういうのがあるんだ」

 

 スレッタから話を聞いた三日月は、しっかりと自分の左手首に巻き付ける。

 

「うん。いいねこれ。凄く気に入ったよ。ありがとう、スレッタ」

 

「えへへ、どうしたしまして」

 

 三日月にお礼を言われ、スレッタは少しだけ照れる。何とも微笑ましい光景。水星に最近増えている尊み老人たちがこの光景を見たら、天からのお迎えが来てしまうだろう。

 

「ん?何だろう?」

 

 そんな光景が繰り広げられていると、スレッタの個人端末に連絡が入る。

 

「え!?お母さん帰ってくるの!?」

 

 連絡の相手はプロスペラだった。どうやら久しぶりに、水星に帰ってくるらしい。

 

「よかったね、スレッタ」

 

「うん!もう2年は直接会ってないから、本当に久しぶりで嬉しいよ!!」

 

 プロスペラは相変わらず忙しくしている。おかげで水星に帰ってくる事が無くなった。月に1回、モニター越しの会話をするだけでしか会えない。そんな母が帰ってくる。母が大好きなスレッタにとって、こんなに嬉しい事は無い。

 

「えへへ。お母さんが帰ってきたら何を話そうかな?」

 

 スレッタは母の帰りを楽しみに待ちながら、どうしようか考える。色んな事を話したい。もしかすると、何かお土産を持ってきてくれているかもしれない。前に食べたお土産のチーズケーキは、とても美味だった。

 

「楽しみだなぁ…」

 

「……」

 

 スレッタが楽しみで仕方が無い様子とは反対に、三日月はどうにも嫌な予感がしていた。なんせあのプロスペラが帰ってくるのだ。仕事で忙しく、スレッタとも遠距離通信のモニター越しでしか喋らないあのプロスペラが帰ってくる。ただ娘に会いたいだけな訳が無い。絶対に何かある。どうしても三日月は、そう感じてしまうのだ。

 

(気のせいだったらいいけど…)

 

 そう願う三日月だが、恐らく気のせいにはならないと感じるのであった。

 

 

 

 

 

「私、学校に行けるの…?」

 

「ええ。地球圏にあるアスティカシア高等専門学園。そこに編入できるわ」

 

 プロスペラは帰ってきてから、スレッタにとんでもない事を言い出した。なんとスレッタが、学校に通えると言うのだ。

 それもベネリットグループが運営し、多くの傘下企業の子供が通える地球圏にある学校、アスティカシア高等専門学園へ。普通では絶対に通う事が出来ない凄い学校だ。そんな学校へ、スレッタは通えるとプロスペラは言う。

 

「本当に?本当に私、学校へ行けるの?」

 

「こんな嘘をつく訳ないじゃない。本当の本当に学校へ通えるわ。勿論、スレッタが行きたければだけど」

 

「っつ~~~~~!!やっっっっったぁぁぁぁぁ!!!」

 

 スレッタはついその場で大きくジャンプして喜ぶ。ここ最近、スレッタの興味はもっぱら学校だった。古いコミックを読んで夢を見たり、三日月と一緒に妄想しながら過ごしたり、兎に角スレッタは学校に興味を持ってばかりだ。そんな憧れの学校に、行く事が出来る。

 

「あ…でも、三日月は…」

 

 だが途端にスレッタの表情が暗くなる。確かに自分は憧れの学校へ行ける。

しかし三日月は違う。自分が学校で楽しんでいる間に、三日月はこの水星で1人で過ごす事になってしまう。

 それは、嫌だ。凄く嫌だ。三日月を1人にさせたくない。だったら、学校へ行くのもやめた方がいいかもしれない。

 

「お、お母さん…その、嬉しいけど…」

 

「勿論、三日月くんも一緒よ」

 

「……え?」

 

「だから、学校へは三日月くんも一緒に行けるわ」

 

「本当に!?」

 

 母へ学校へ行くのを断ろうと言おうとしたスレッタだったが、三日月も一緒に行けると聞き、顔を驚かせる。

 

「じゃあ私、三日月と一緒に学校へ?」

 

「そうよ。2人一緒に通えるわ」

 

「っつ~~~~~!!やっっっっったぁぁぁぁぁ!!!」

 

 本日2度目で、先程より大きな声で喜ぶスレッタ。母とエアリアル以外で、唯一長い付き合いのある三日月も学校へ行ける。まるでコミックのような展開に驚きと同時に歓喜する。これ程嬉しい事は、これまで人生でも無かった。

 

「それでスレッタ。学校へ行く?」

 

「行く行く!勿論行くよ!!絶対に行く!!」

 

「ふふ。じゃあ、今から勉強もしっかりしておかないとね」

 

「うん!!」

 

 こうしてスレッタは、地球圏にあるアスティカシア高等専門学園へ行く事が決まった。

 

「えへへ。学校へ行ったら何しよう?友達と一緒にランチ?放課後に部活動?休みの日にお出かけ?あ、かっこいい先輩と勉強デートとかも?」

 

 まだ見ぬ学校生活に夢を膨らませるスレッタ。とっても楽しそうだ。

 

「……」

 

 そしてその様子を、隠れて見ている誰かが居た。

 

 

 

 

「聞いて、エアリアル。遂に扉が開いたのよ」

 

 エアリアルとバルバトスが並んでいるハンガー。そこにプロスペラはいた。その顔は、仮面に隠れているが歓喜している。

 

「アスティカシア高等専門学園で、モビルスーツを使った決闘が行われるわ。それに勝った人間が、デリングの一人娘と結婚できるの」

 

 それはつい最近、アスティカシアで作られた新しい制度。要は、1番強い人間がデリングの一人娘と結婚が出来るのだ。

 どうして急にこんな制度がつくられたのかは知らないが、そんなのはどうでもいい。大事なのは、デリングの一人娘と結婚が出来るというところ。

 

「エアリアル、貴方はスレッタと一緒に学校へ行きなさい。そして、スレッタの剣になるの」

 

 そのプロスペラの言葉にエアリアルが反応する。その様子は、まるでスレッタを巻き込んで欲しくないと言っているようだ。だがそんな事知らないと言わんばかりに、プロスペラは喋る。

 

「皆、私の娘たちが、遂に仇を取ってくれるわ…!だからもう少しだけ辛抱して…」

 

 

 

 

 

「お前何するつもり?」

 

 

 

 

 

「あら、聞かれちゃったわ。そういえば、今では貴方もここには自由に入れたわね」

 

 プロスペラが振り返ると、そこには敵意を持った目をしている三日月がいた。

 

「ふふ、怖い目ね。スレッタと同じ年とは思えないくらいに」

 

「答えろよ。お前何するつもり?」

 

 プロスペラの言葉を無視して、三日月は質問を繰り返す。今にもプロスペラにとびかかりそうだ。

 

「別に何もしないわ」

 

「じゃあさっきのはどういう意味?」

 

 先程、プロスペラは仇と言っていた。そんな物騒な事、何もしないのなら言わない筈だ。もしかすると、プロスペラはスレッタとエアリアルを使って、誰かを殺すのかもしれない。

 

「そんなに怖い顔をしないで?何度も言うけど、スレッタには本当に何もしないわ」

 

「……」

 

 スレッタには何もしない。その言葉を聞いた三日月は、少しだけ冷静になる。だが警戒は怠らない。

 

「三日月くん。前に私が言った事、覚えてる?」

 

「当たり前じゃん」

 

 三日月は数年前、プロスペラに言われた事を思い出す。

 

『学校でスレッタを守って欲しい』

 

 それが三日月がプロスペラに言われた事。そしてスレッタは、自分の意志で学校へ行くと言った。こうなった以上、三日月は約束通り学校へ行くつもりだ。そして、全力でスレッタを守る。

 

「私の方で編入生の枠をひとつ増やしておいたわ。これであなたも、学校へ行く事が出来る。だから、スレッタをお願いね」

 

「……」

 

 そう言うプロスペラを、三日月は黙って見つめる。確かにこれで学校へは行ける。だがプロスペラは、間違いなく何かを企んでいる。それも、恐ろしい何かを。

 

「別に学校に行くのはいいよ。俺も興味あったし。それにスレッタの事も、俺が守りたいからそうする。でも、お前の何かにスレッタを巻き込むな」

 

 先程隠れて見ていたが、スレッタは学校に行く事を本当に喜んでいた。だからこそ、スレッタには普通に学校へ行ってもらいたい。

 だがプロスペラは、そのスレッタに何かをさせようとしている。そんなの絶対許さない。だから三日月は、プロスペラに釘を刺す。

 

「貴方は本当にスレッタを大事に思っているのね。でもそれは、私も同じよ

 

 プロスペラの声色が変わり、三日月は身構えた。

 

「確かに私は、スレッタをある事に利用しようとしている。でも、あの子には学校で色んな事を学んでほしいとも本気で思っている。いつかあの子が、1人でもしっかりと生きていけるように」

 

 プロスペラは三日月を見ながら話す。恐らく、プロスペラのこの言葉は本心だろう。それは何となくわかる。

 

「それに私自身、本当にあの子を巻き込みたくないって思っているのよ?でもあの子とエアリアルじゃないと、私の計画は進められない。どうしても、スレッタとエアリアルが必要なのよ」

 

 仮面越しで素顔は見えないが、その目には狂気が見えた気がした。一体その計画とやらに、プロスペラはどれだけ執着しているのだろうか。

 

「そもそもどんな理由があっても、スレッタは憧れの学校には行けるのよ?だったら、そこまで問題は無いじゃない?あの子は学校へ行きたがっていたんだし。だからスレッタにだけは黙っておく。噓も方便って言うしね」

 

「……」

 

 暫し三日月は考える。言っている事はわかるが、それはそれとして気に食わない。計画とは何なのかとか、仇とはどういう事なのかとか、プロスペラに聞きたい事は山ほどある。

 だが、プロスペラがスレッタを大切に思っているのもまた事実。それに何も知らないと言うのは、案外幸せな事だったりもする。だって知らなければ、ショックを受ける事は無いのだから。

 

「わかった。でもこれだけは言っておく。もしお前がスレッタに何かしたら、例えスレッタの母親でも、俺はお前を許さない」

 

 だからこそ、三日月はプロスペラにそう宣言する。この先、プロスペラは何かをするだろう。そしてその時、もしスレッタを巻き込んだりするのなら、三日月はプロスペラを許さない。場合によっては、命を奪う。

 例えそのせいで、スレッタに恨まれる事になろうとも。

 

「ええ、それでいいわ。だから、これからもスレッタをお願いね」

 

 この時のプロスペラは、とてもやさしい声色で三日月にお願いをする。こうして聞くと、普通の母親だ。

 しかしプロスペラは、普通の母親じゃない。何かに囚われている母親だ。何時の日か、必ず何かをやるだろう。

 

(俺が、守らないと…)

 

 半ば強迫観念のように、三日月はスレッタを守ると固く決意する。

 

 そして絶対に、例え何があってもスレッタを1人にはさせないとも決意する。

 

 

 

 

 

「水星、もうあんなにちっちゃくなっちゃったね…」

 

「そうだね」

 

 宇宙船の窓から水星を見るスレッタと三日月。そしてその水星は、最早米粒程の大きさしかない。こうして、小さくなっていく水星を見るのは2回目だ。

 

「それにしても、学校かぁ…楽しみだなぁ…」

 

 スレッタは笑いながら呟く。その手には、タブレットが握られている。

 

「それなに?」

 

「あ、これ?学校に行ったらやりたい事をリスト化したんだ」

 

 そう言うとスレッタは、三日月にタブレットの画面を見せる。そこには色んな事が書かれていた。

 

「友達と一緒に登校する。授業中、先生にかっこよく質問する。あだ名で呼び合う。大盛の学食を食べる。色々あるね」

 

「うん!この前からいっぱい考えたんだ!だって学校に行けるんだし!」

 

 スレッタは本当に嬉しそうだ。そんなスレッタを見ていると、三日月も嬉しくなる。

 

「あ!そうだ。髪型も変えた方がいいのかな?えっと確か、新学期デビューだっけ?新入生はそういう事をするって、データで見たし」

 

 今のスレッタは、髪を後ろ2か所で束ねており、母から貰った古めかしいヘアバンドを付けている。これは、いつの間にか水星でスレッタがするようになった髪型だ。

 しかし、折角学校へ行くのだ。だったら、新しい髪型にしてみるのもありかもしれない。例えば、お団子ヘアーと、ツインテールとか、それとも髪をバッサリ切ってショートカットとか。

 

「ねぇねぇ三日月。三日月はさ、私はどういう髪型がいいと思う?」

 

 隣にいる三日月に、スレッタは質問する。

 

「スレッタは髪降ろしている方が可愛いと思うよ?」

 

「んぐっ!?」

 

 そして三日月は、素直にそう答える。それを聞いたスレッタは、顔を赤くする。

 

「お願い三日月…そういうの、学校では私以外に言わないで…ていうか私にもあまり言わないで…」

 

「何で?」

 

「絶対に勘違いする子が出るから…そういう人はナイフで刺されるって、コミックに描いてあったし…」

 

「へー。でも返り討ちにするよ?」

 

「そういう問題じゃないから!!」

 

 三日月の肩を掴んで、スレッタは注意する。三日月は基本、素直にこんな事を言う。スレッタは10年も一緒にいるのでかなり慣れたが、それでも三日月の言い方に赤面する事が多々ある。

 自分でこれなのに、学校にいるであろう他の女生徒たちはどうなるかわからない。下手すれば、三日月がとんでもないスケコマシになるかもしれない。

 そしてそういう人の末路は、刺されて死ぬものである。

 

「それと三日月。学校では水星みたいな喧嘩はダメだよ?そういう人は、学校にいられなくなっちゃうんだし」

 

「……わかった」

 

「今の間は何!?本当にダメだからね!?」

 

 憧れの学校だが、色々と前途多難だ。

 

 とりあえず、学校で三日月が暴力沙汰を起こさないよう、スレッタは気をつける事にした。

 

 

 

 

 

 数日後 地球圏

 

『はい。今回も俺の勝ち』

 

「ううう…また負けたぁ…」

 

『でも本当に危なかったよ。やっぱりスレッタ、強くなってる。俺でも苦戦する時あるし』

 

「それでも接近戦では全敗だよ。やっぱり強いね、三日月とバルバトスは」

 

 ベネリットグループが所有する輸送船。その中に、スレッタと三日月はいた。勿論、エアリアルとバルバトスルプスも一緒だ。

 

 そして2人は現在、学校へ向かっている途中である。

 

 しかし水星から地球圏はとても遠い。その道中、ただ待っている事なんて出来なかった。なのでスレッタと三日月は、エアリアルとバルバトスでシミュレーションをしたり、一緒に筋トレや柔軟をしたり、ついでに学校で習うであろう授業の予習もしていた。おかげで2人共、今なら模試も一発で合格するだろう。

 

『じゃ、少し休んでおこうか。学校には今日着く予定だけど、着いていた時にクタクタだったら嫌でしょ?』

 

「そうだね。なら少し休むよ。おやすみ、三日月」

 

『うん。おやすみ、スレッタ。あとエアリアルも』

 

 目的地であるアスティカシア学園には、今日中に到着する予定だ。それまでに疲れてしまっていたら、確かに全力で喜べそうにない。三日月に言われた通り、少し休んでいた方がいいだろう。

 

「もう直ぐかぁ…えへへ…」

 

口元がにやけながら、スレッタはエアリアルの中で暫し仮眠を取る。

 

 

 

『フロント73区 アスティカシア高等専門学園、到着5分前です。本船はこれより、入港軌道体勢に移行します』

 

「三日月!学校が見えてきたよ!」

 

『もう?』

 

「うん!早く見てごらん!!」

 

 少し仮眠を取って、端末で学校に必要な物を確認していた時、ようやく目的地の学校が見えてきた。スレッタは直ぐに端末を使い、船外カメラの映像をエアリアルのコックピットモニターに写す。

 

『へぇ、あれか』

 

 同時に三日月も、手元にある端末を弄り、バルバトスのコックピットモニターに船外カメラの映像を映し出す。

 するとその先にはとても巨大な建造物、アスティカシア高等専門学園が見える。

 

「お母さん。とうとう来たよ…」

 

 三日月と同じように、エアリアルのコックピットにいるスレッタは、目を輝かせながら言う。憧れの学校。何度も夢に見た学校。これから自分と三日月が通い、色んなことを学ぶ場所。勉強以外にもやりたい事が沢山ある。

 そうやって夢を膨らませていると、

 

「ん?」

 

 スレッタは何かを発見した。学校を背景にして、何かが宇宙に漂っている。

 

「デブリ…?いや、あれって…もしかして人!?」

 

 カメラをズームしてよく見ると、それは宇宙服を着た人間だった。

 

『どうかしたスレッタ?』

 

 バルバトスのコックピットにいる三日月が、いち早くスレッタの異変に気がつく。

 

「人!人がいる!!宇宙空間に人がいる!!」

 

『え?もしかして要救助者?』

 

「多分そう!!」

 

『じゃあ、先ずはブリッジに連絡だね』

 

「うん!」

 

 そう言うとスレッタは、コンソールを弄りブリッジに連絡。

 

「ブリッジ!こちらスレッタ・マーキュリー!宇宙空間に要救助者と思われる人を発見!」

 

『了解。その要救助者には、デブリなどの破片が当たったような痕跡はありますか?』

 

「いえ!ここからは見当たりません!ですが、ピクリとも動いていません!バックパックのエアーも吹いていないし!」

 

『了解。救助部署発令!要救助者発見!船外活動用意!』

 

 船内にアラームが鳴り響く。すぐにこの船に乗っている救助隊が、モビルスーツで助けにいくだろう。

 しかし、

 

『はぁ!?モビルスーツのブースターのガスがまだ補給されてない!?』

 

「え?」

 

『すみません!どうもガス補給機が調子悪くて…!』

 

 アクシデントが発生し、直ぐに助けに行けそうになかった。このままではまずい。

ガスが補給されるのが何時になるかわからない。

 その間にも、あの要救助者は助けを求めている。そう考えたスレッタは、ヘルメットを被り、ブリッジに連絡を入れる。

 

「これから私とエアリアルで助けに行きます!!」

 

『は?何を言って…』

 

 ブリッジの返答を待たずに、スレッタはエアリアルを起動。

 

『おい待て!我々に任せて大人しくしていろ!』

 

 しかしスレッタとエアリアルは止まらない。力任せにエアリアルを固定しているロックを解除し、輸送船のハッチに向かう。

 

『おい!聞いているのか!?やめ『止めないで』は?』

 

 ブリッジのスレッタへの通信に、三日月が割り込んでくる。

 

『スレッタは水星で1番のレスキューパイロットだ。それに、そっちがモビルスーツを用意している間にスレッタが助けに行った方が早いでしょ?』

 

 未だにモビルスーツのガスの補給が終わっていない。作業員によると、あと5分はかかるらしい。

 

『あーもう!モビルスーツのパイロット!これから船外ハッチを開ける!要救助者を見つけたら連絡してくれ!我々が指示を出すから!!』

 

「は、はい!わかりました!三日月もありがとう!」

 

『うん。気を付けてね』

 

「うん!」

 

 ブリッジはスレッタに許可を与えた。それを聞いたスレッタは、三日月との模擬戦でのようにブースターを吹かさず、ゆっくりと、しかし早く要救助者に向かってエアリアルを動かす。

 

(ま、スレッタなら大丈夫でしょ)

 

 ハンガーにバルバトスごと残った三日月はそう思う。自分の幼馴染のスレッタに、絶大な信頼を置いている三日月。それは水星でスレッタの活躍を何年も見てきたからだ。水星1と言われるだけあって、スレッタのレスキュー経験は最早ベテランの域にある。先ほど発見された要救助者も、直ぐに助けられるだろう。

 それにもしもの事があった時は、バルバトスで助けに行けばいい。

 

(一応、確認だけしとくか)

 

 カメラ映像をズームさせ、三日月はスレッタとエアリアルの救助を見る。スレッタが、要救助者をエアリアルの手で優しく包み込み、コックピットから出て、要救助者をコックピットへと入れる映像がバルバトスのコックピットモニターに映し出される。

 

『大丈夫ですか!?意識はありますか!?』

 

 バルバトスのコックピット内にスレッタの通信が聞こえる。どうやらスレッタは、うっかりオープン回線のままにしているみたいだ。

 

『んがぁ!?』

 

「は?」

 

 とその時、何かがぶつかった音と変な声が聞こえた。声の主はスレッタだ。

 

『邪魔しないでよ!!』

 

 同時に、聞いた事の無い女の声も聞こえる。

 

『もう少しで脱出できたのに!あんたのせいで台無じゃない!!どーしてくれんのよ!?』

 

 しかも相当に怒っているようだ。顔は見えないが声でわかる。

 

『責任、とってよね!!』

 

『……はい?』

 

「何あれ?」

 

 こうしてスレッタと三日月は、学校にたどり着く前に妙な奴と出会ったのだ。

 

 

 

 

 





 バルバトス ルプス
 見た目は殆ど鉄血本編のバルバトスルプス。しかし腕の腕部200㎜砲がビーム砲に変更されている。そしてこの世界では三日月が鉄華団に所属していないので、肩に鉄華団のシンボルマークも存在しない。また、プロスペラの改造により、エイハブウェーブを大幅に抑える事に成功。ただしその反動で、バルバトスの機体性能と、あの特製が少し落ちてしまっている。武器はソードメイスとツインメイス、そして刀など。
 詳しい事は、お話を進めたらまた書きます。


 ようやくミオリネ登場。一応、VSグエルまでは考えています。気長にお待ちください。

 そしておかしいところがあったら、遠慮なく言って下さい。修正しますので。

三日月以外の鉄血のキャラ

  • 出して欲しい
  • 出さないで欲しい
  • 少しなら出して欲しい
  • 好きにやりなさい
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