ところで息抜きに書いていた筈なのに、いつの間にかこっちをどんどん更新している… もう片方も頑張らなければ。
「決闘だって!」
「え?さっきあったのにまたするの?」
「誰がやるんだ?」
「グエル先輩と、例の水星からの編入生の女の子らしいぞ」
学園内では、再び決闘があると聞いて多くの生徒が浮足立っている。この学園では、決闘は刺激的な娯楽としての側面もある。また、生徒同士で決闘の勝利を予測した賭けも行われており、稀にそれで大儲けする生徒もいる。故にこうして、大勢の生徒が騒いでいるのだ。
「なぁなぁ!どっちが勝つと思う!?」
「そりゃグエル先輩でしょ!なんたってホルダーなんだし!」
「私も!水星の子が勝てる要素が無いでしょ!」
「俺は水星の子を応援しようかな。結構可愛いし」
因みにこれから行われる決闘は、圧倒的にホルダーであるグエルが人気だ。あんな横暴な態度を取っているグエルだが、パイロットとしての腕は一流。だからこそ、彼はホルダーになっているのだ。
ジェターク寮 モビルスーツハンガー
グエル・ジェタークは怒っていた。自分に尻叩きをしたあの水星女に。自分の首を掴み上げた小さい男に。そして必ずやこの決闘で勝利し、あの2人をこの学園から追い出してやると決意を固める。
『何も、兄さんがあんな田舎者の相手をしなくても』
あんな田舎者のことなんてほっとけばいいのにと、腹違いの弟であるラウダ・ニールが兄に苦言する。
「は!身の程を教えるだけだ!あんな田舎者なんて1分、いや30秒で終わらせてやる!」
しかしグエルはやめる気なんて無い。この自分に尻叩きをしたのだ。プライドの高いグエルがこんな事されて、黙って許す訳が無い。それに一緒に居たあの小さい奴は、自分の首を思いっきり握り潰そうとした。正直、命の危機を感じた。
だからこそ、2度と顔を見なくてすむように学園から追い出す。水星人は水星で大人しくしておけばいいのだ。
『カタパルト、射出します!』
「じゃ、行ってくる」
『気を付けて、兄さん』
オペレーターの許可と共に、グエルがラウダにそう言うと、キャトルが勢いよく発進する。
あっという間に戦術区画にたどり着き、キャトルのハッチが開き、赤いモビルスーツが姿を現す。
「KP001、グエル・ジェターク。ディランザ、出るぞ!」
そしてグエルの愛機、ディランザが戦術区画へと降り立った。
「は!来たか、水星女!」
同時に、グエルの視線の先には水星女こと、スレッタ・マーキュリーが乗っているであろう細めのモビルスーツが見える。頭に白い4つのヘッドアンテナ。全体的に青と白を基調とした派手なモビルスーツだ。
(ほう?見た目は悪くないな)
水星という辺境のモビルスーツと聞いていたから、どんなイロモノが出てくるかと思っていたが、デザインは中々良いセンスをしている。
しかし武装と思える物が、バックパックのサーベルと頭のバルカンしか見あたらない。もしかすると、格闘と機動に重きを置いたモビルスーツかもしれない。
(だがどんなモビルスーツでも大丈夫だ!この俺のディランザが文字通り叩き潰してやる!!)
だがそんな事、グエルには関係ない。この自分のモビルスーツ、ディランザで叩き潰すだけだ。
『これより、双方合意の下、決闘を執り行う。勝敗は通常通り、相手のモビルスーツのブレードアンテナを折った方の勝利とする』
決闘委員会のシャディク・ゼネリが決闘の音頭を取る。
『両者、向顔!』
その声と同時に、パイロット同士が顔を合わせる。
「……は?」
呆気に取られるグエル。
何故ならモニターに映った顔は自分の尻を叩いた水星女では無く、花嫁のミオリネ・レンブランだったからだ。
時間は少しだけ遡る。
「それでスレッタ?どうするの?」
エアリアルとバルバトスが格納されているモビルスーツハンガー。そこには、エアリアルに通信をする三日月がいた。
三日月は最初、自分が決闘であのグエルとかいう男を潰そうと思っていたのだが、決闘はスレッタがやらないといけないらしい。そういう決まりなのだ。なので手持ち無沙汰の三日月は、バルバトスのコックピットに入り、スレッタの決闘を見守る事にした。
そして決闘前にスレッタを落ち着かせる為、こうして話しかけている。
「相手がどういう奴か知らないけど、油断だけはしない方がいいと思うよ。自信が無いと、あんな事言わないだろうし」
先程のグエルは、横暴ではあったが自信があった。自分に自信がある奴は強い。なので油断はしないでほしいと、スレッタに三日月は忠告する。
「スレッタ?」
しかしスレッタから返事が無い。何時もなら必ず返事をすると言うのに、無言。その何時もと違う反応に、三日月は疑問に思う。その間にも、エアリアルは決闘場に向かう運搬機、キャリアに収納される。
『これ少し借りるから』
「……は?」
するとキャリアに収納中のエアリアルから、何時もと違う声が聞こえた。
「あ、トマトの人」
『ミオリネ・レンブランよ!!何よトマトの人って!?』
エアリアルから聞こえた声の主は、温室でスレッタと三日月にトマトをくれた女子、ミオリネだった。
「何でエアリアルに乗ってるの?それはスレッタのモビルスーツなんだから勝手に乗らないでくれない?」
やや怒った声でミオリネに質問をする。エアリアルはスレッタのものだ。それに勝手に乗っているのは、まるで泥棒である。三日月が怒るのも無理は無い。
『勝手にこれに乗って、あの子には悪いと思ってるわ。でも、これは私のケンカなの!だから私がやる!!』
どうやらミオリネ、勝手に決闘を始めた皆に怒ってるようだ。確かに温室はミオリネの所有物だし、それを壊したのはグエルである。だったら、本来決闘するのはミオリネとグエルだろう。確かに、筋は通っている。
「お前操縦できるの?」
『基本は学んでるわ!これくらい私にだって出来る!!』
「いや、無理じゃない?ていうか降りてくれない?」
だがそれはそれとして、人のモビルスーツに勝手に乗っているのはダメだ。それに話してみたら、ミオリネはモビルスーツの操縦が出来るかどうかさえ怪しい。このままでは、エアリアルが壊されるかもしれない。
『戦術区画までの通路、オブジェクト無し。発進を許可します』
しかし、無常にも時間が来てしまう。
『あとであの子に謝っておくから。それじゃ』
そう言うとミオリネを乗せたエアリアルは、キャリアごと凄い速さで決闘が行われる戦術区画に行ってしまった。
「これ、どうすればいいんだろう?」
いっそバルバトスで無理やりミオリネとエアリアルを連れ戻そうかと思ったが、生憎バルバトスではエアリアルを壊してしまうかもしれないので却下した。
そしてハンガーに取り残された三日月は、とりあえエアリアル本来のパイロットであるスレッタを探す事にした。そして1度、バルバトスのコックピットから出るのだった。
「どいつもこいつも勝手に言って…これは私のケンカなのよ!誰にも邪魔はさせない!!」
『はっ!生意気な女だ!なら俺には勝てないって教え込んでやる!』
『グエル。決闘相手の変更を了承するかい?』
『了承する』
こうして本来スレッタとグエルの決闘になる筈だった決闘は、花嫁ミオリネと花婿グエルという異色の決闘となったのだった。
『勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず』
「操縦者の技のみで決まらず」
『「ただ、結果のみが真実」』
『フィックス・リリース』
決闘前の前口上を口にする2人。そして遂に、決闘が始まった。
「武器は!?」
ミオリネが操縦レバーを操ると、武器画面が映る。どうやら、このエアリアルというモビルスーツにはビームライフルが装備されているらしい。それがわかったミオリネは、直ぐにそのビームライフルを装備して、グエルのディランザ目掛けて撃つ。
しかし、
「ちょっ!?きゃああ!?」
ビームライフルを発射した反動で、エアリアルは地面に倒れてしまう。
『経営戦略科の素人に、モビルスーツが操縦できるかよ!!』
グエルの言う通り、ミオリネは経営戦略科の生徒だ。当然、パイロット科のグエルのような専門的な授業を受けていない。あるのは本当に、基礎の基礎の知識だけ。そんなミオリネに、モビルスーツをグエルのように柔軟に操縦できるなんて、最初から無理だったのだ。
「何でよ…好きにさせてよ…私の人生なのよ…?人の人生、勝手に決めないで!!」
何とか立ち上がるミオリネだが、その間にもグエルのディランザは接近してくる。そしてあっという間に間合いに入り、ディランザが手にしているビームパルチザンの底の方で、エアリアルを吹っ飛ばす。
決闘委員会 ラウンジ
「あー。これはもう勝負ありっすねー」
そう言う露出の多い改造された制服を着ている褐色肌の女生徒は、セセリア・ドート。ブリオン寮所属の生徒で、決闘委員会の1人だ。
「あのエアリアル。どういう機体性能か全くわからないけど、これじゃ本気なんて見れませんね。ちょっと残念」
膝を抱えて、タブレットで試合を見ている小柄な男子生徒は、ロウジ・チャンテ。セセリアと同じブリオン寮の生徒で、同じく決闘委員会の1人だ。その隣には、ハロがいる。
「そうだね。ミオリネじゃ、余程のハンデがあったとしても、グエルには勝てないよ」
そう言う褐色肌で制服を派手に着崩しているの男子生徒は、シャディク・ゼネリ。ベネリットグループ御三家、グラスレー社CEOの養子で、決闘委員会の1人。そしてグラスレー寮の寮長でもある。
「君はどう思う?エラン」
「別に、興味ないから」
「君は相変わらずそっけないな」
シャディクに言われるも、そっけない返事で返すのは、エラン・ケレス。ベネリットグループ御三家、ペイル社に所属するペイル寮の男子生徒である。
「にしても、グエル先輩もイジワルっすねー。まるで見せしめじゃないっすかー」
「ですね。さっさと終わらせてあげればいいのに」
セセリアの言う通り、グエルはまるで遊ぶかのように戦っている。そしてミオリネは、それにまるで対応できていない。確かに見せしめだ。せめてさっさと終わらせてあげるのが慈悲であろう。
「ところで、本当のパイロットは何処に?」
「さぁ?怖くなって逃げたとかじゃないの?」
ロウジの言う通り、エアリアル本来のパイロットはスレッタだ。だというのに、エアリアルに乗っているのはミオリネ。一体どこに行ったのだろうか。
「そう言えばロウジ。確か編入生は2人いたよね?水星ちゃんと、もう1人」
「あ、はい…データによると、スレッタ・マーキュリーと、三日月・オーガスの2人です。どっちも自分のモビルスーツを持ってきています」
「へぇ。もう片方はどういうモビルスーツなんだい?」
「えっと、機体名は…」
ロウジが機体名を言おうとした時、大きな音が響いた。決闘委員会の全員が画面を見ると、そこには地面に仰向けに倒れているエアリアルと、それにビームパルチザンを向けているディランザが映っていた。
「くっ!?」
『身の程を知れ!お前はただのトロフィーなんだよ!黙って俺の言う通りにしておけ!!』
ミオリネは悔しかった。どいつもこいつも勝手に言ってばかり。いくら自分が何を言っても、誰も聞きゃしない。こんなの、本当にただのトロフィーみたいだ。
(何でよ…どうして…)
悔しくて泣いてしまいそうだ。こんな事になるのなら、パイロット科にでも行っておけばよかったとさえ思う。
そしてグエルのディランザが、ビームパルチザンを振り上げ勝負を決めようとしたその時、
「え?」
『侵入者!?誰だ!?』
戦術試験区画に、侵入者を知らせるアラートが鳴った。グエルとミオリネがモニターを確認すると、誰かがパイロットスーツに身を包み、モーターバイクに乗って爆走している。
そしてエアリアルの前でバイクから降りると、そのままエアリアルのコックピットまで登っていく。
「エアリアル、返して下さい!!」
「は?」
そう言うとエアリアルのコックピットを開けて、中に入っていった。
「ていうか私が色々用意している間に勝手に人のモビルスーツに乗らないでくださいよ!!」
演習区画にモーターバイクで侵入し、エアリアルのコックピットに入っていったのは、エアリアル本来のパイロットのスレッタだった。
「あんたには関係無いって言ったでしょう!?これは私の決闘なの!!」
「そう言うんだったら自分のモビルスーツを使って下さいよ!!」
「そんなの持ってないわよ!いいでしょ少しくらい借りても!このケチ!!」
「な!?ケチって何ですか!?だったらそっちは泥棒じゃないですか!?」
「誰が泥棒よ!?」
「泥棒ですよ!!お母さんから習わなかったんですか!?勝手に人の物取ったらダメだって!!」
『何だこれ?』
決闘を見ていた多くの生徒が同じ事を思った。いきなり侵入してきたかと思えば、喧嘩を始める。何とも珍妙な光景だ。
「それに、エアリアルはただのモビルスーツじゃありません!水星でずっと私や三日月と一緒に育った、大切な家族なんですから!!」
「か、家族?」
スレッタはミオリネをどけると、操縦席に座る。
「昨日言っていた責任なら、今から勝って果たします!私とエアリアルは、三日月とバルバトス以外には負けませんから!!」
そう言うとスレッタは操縦レバーを握り、グエルのディランザをしっかり目で捉える。
「えっと、そういう訳で!今から私が予定通り相手をします!!いいですか!?」
『そうかよ。俺は別にどっちもでいいぞ。シャディク!決闘相手を再変更だ!』
『了解。セセリア』
『はいは~い』
グエルが決闘委員会に言うと、外壁のモニターの決闘相手の名前が変更される。今度こそ本当に、スレッタとグエルの決闘が始まった。
『いくら威勢が良くてもな、俺には勝てねぇんだよ!水星女ぁ!!』
グエルはディランザに装備されているビームライフルを、エアリアル目掛けて撃ちながら接近する。
「お母さんが言ってました。逃げたらひとつ。進めばふたつ手に入るって!」
「は?いきなり何?」
倒れていたエアリアルが、スレッタの操縦によりゆっくりと立ち上がる。
「ここで逃げたら、負けないっていう結果が手に入ります。でも進めば…!」
「勝てるの?あいつに?」
「例え勝てなくても手に入ります。経験値やプライド、そして信頼も!」
スレッタが声を大きくして言うと同時に、エアリアルに装備されていた何かしらの外部装甲が宙を舞う。その数、11。
そしてそれがエアリアルの左腕に集まると、ある物に形を変えた。その間にも、グエルのディランザがビームライフルを発射する。今度は直撃コースだ。
しかし、
『何!?シールドだと!?』
それは、いつの間にかエアリアルの左腕に装備されていたシールドによって防がれた。恐らく、先ほどまで宙に舞っていた外部装甲がシールドとなったのだろう。
『だったら接近戦だ!』
ビームライフルは効かないと判断したグエルが、ビームライフルを捨て、ディランザに装備されているビームサーベルを取り出す。流石ホルダーと言われるだけあって判断が早い。
「それにさっきも言いましたけど、私とエアリアルは、三日月とバルバトス以外には絶対に負けませんから!!」
接近してくるグエルのディランザを正面に捉えたスレッタとエアリアル。するとシールドが再び形を変えて、宙を舞い出す。
そしてそれらは、ディランザ目掛けて一斉にビーム攻撃を開始した。
『は?』
グエルはつい、そんな間抜けな声を出してしまう。
「スレッタの勝ちだね」
その光景をバルバトスのコックピットで見ていた三日月は、自分の幼馴染の勝利を確信し、火星ヤシを摘まんでいた。
エアリアルによる、11条のビーム攻撃。最初は正面から。次に左右。そして頭上や背後。しかも射線間隔が狭く、大きいディランザではとても避けきれない。
いや、こんな攻撃、誰であっても避けられる筈が無い。グエルのディランザは、あっという間に手足を破壊されダルマになってしまう。これでもう、反撃なんて出来ない。
『何なんだ、そのモビルスーツは!?』
自分の身に起きた出来事に困惑しながらも、グエルはエアリアルから目は背けなかった。そしてそんな反撃能力を失ったディランザに、エアリアルはビームサーベルを抜いて、一気にヘッドアンテナ目掛けて振り下ろす。
こうして、グエル・ジェタークの敗北が決まったのだった。
「本当に、勝っちゃった…」
エアリアルのコックピットから出て、エアリアルの手に乗ったミオリネが呟く。目線の先には、バラバラにされたグエルのディランザ。
正直、勝てるなんて思っていなかった。だってグエルは実力でホルダーになった男だ。モビルスーツの腕前は本物。いくつかの敗北こそあれど、ホルダーになってからは無敗を貫いてきた。そんな彼に勝てる相手なんて、決闘委員会のエランやシャディクくらいしかいないだろう。
だというのに、実際は水星からやってきた編入生のスレッタの勝利。その現実に、ミオリネは未だに信じられないという顔をする。
「えっと、勝ちました」
コックピットから顔を出すスレッタ。先程までは決闘に集中していたのであんな風に自信満々な喋り方だったが、決闘が終わり緊張感が無くなった事により、温室で見た気弱な少女に逆戻りしてしまった。
「そうみたいね。ちょっと生徒手帳貸して」
「え?はい…?」
ミオリネに言われ、自分の生徒手帳を差し出すスレッタ。
「スレッタ・マーキュリー。これであなたはホルダーになったわ。はい」
「え?」
ミオリネが生徒手帳をスレッタにかざすと、スレッタのパイロットスーツが白色に変化する。
「あの、これは?」
「それはホルダーの証。そして同時に、私の婚約者の証でもあるわ」
「……はい?」
「だから婚約者よ。つまり。あんたは私の花婿なの」
「ええええええ!?」
ミオリネの口から出た衝撃の発言に、スレッタは驚愕する。だって花婿だ。まさか本当に決闘で決まるなんて思わない。
「あ。そういえば貴方とあの三日月って子ってそういう関係だっけ?だったら大丈夫よ。水星じゃどうか知らないけど、ここじゃ別に恋人が2人いても問題ないから。シャディクとかそんな感じだし」
「いやいやいやいやいや!?そういう事じゃなくて!?あと三日月と私は別に恋人とかじゃありませんから!?家族みたいな関係ですから!!あとシャディクって誰!?」
「じゃあ特に問題無いじゃない。これからよろしくね、私の花婿さん」
「え、ええー……?」
なんかとんとん拍子に話が進んで行く。よくわからないが、どうも自分は婚約を果たしたらしい。それも拒否権など無いようである。
そうやってスレッタが状況を自分なりに整理していると、
『こちら、フロント管理社。直ちに決闘を中止しなさい!繰り返す!直ちに決闘を中止しなさい!!』
突如、演習区画に警報が鳴り響き、学園の警備を任されているフロント管理社のモビルスーツであるデミギャリソンが3機やってきた。それも、エアリアルを囲むように。
「え!?な、何ですか!?」
「フロント管理社!?いきなり何!?」
ミオリネもこの事態に驚いている。
『学生番号、LP041 スレッタ・マーキュリー。違法モビルスーツのガンダムを使用した嫌疑で、君の身柄とそのモビルスーツを拘束する』
「が、ガンダム?」
フロント管理社が警告を発する。どうやら、スレッタのエアリアルに何かの原因があるらしい。
「銃を下ろしなさい!あんたたちの仕事はフロントの管理でしょ!?ここは学校よ!?」
『総裁の決めたルールは、全てにおいて優先されます』
「あのくそ親父っ…!!」
ミオリネが銃を下ろすように言うが、フロント管理社はそれを無視。それどころか、とんでもない事をしてきた。
『これは命令だ!直ちにガンダムから降りなさい!さもないと、攻撃も辞さない!』
何と、エアリアル目掛けて威嚇射撃をしてきたのだ。勿論威嚇射撃なので、エアリアルには当たらない様にしている。フロント管理社の攻撃は、エアリアルの直ぐ傍の地面に当たった。
「う、嘘?」
「このバカ!本当に撃つ奴がいるかっての!!」
だが、スレッタとミオリネにとって、これはかなり効く警告だった。相手は決闘仕様のモビルスーツじゃない。装備が軽いとはいえ、完全な実戦仕様だ。もしエアリアルに当たれば、ただでは済まない。当然、それはパイロットも同じである。
『早く降りろ!次は当てるぞ!!』
「あ…うあ…」
スレッタはこの状況に怯える。水星では、命の危機にあった事なんて沢山あった。しかしそれは、全て太陽風等による自然現象によるものだ。確かに水星の老人達からもイジワルをされた事はあったが、ここまでじゃ無かった。こんな風に敵意を持った攻撃を受けた事なんて、今まで1度も無い。
そんな時だった。
『隊長!レーダーに反応!何かが急速に接近してきます!』
『何!?」
フロント管理社のモビルスーツパイロット達が、何かに気が付いたのは。
『なんだこれは!?』
フロント管理社のパイロット達がレーダーを確認すると、何かが急速にこちらに接近している。
そしてそれは、演習区画のシャトルハッチを破壊して飛び出てきたのだ。
『何だ…?あれは…?』
フロント管理社のパイロット達や、スレッタやミオリネの目線の先には、白いモビルスーツがいた。しかも手に、大きな黒くて長い武器、ソードメイスを持ってこちらに凄い勢いで接近してくる。
「バルバトス…?」
スレッタはそのモビルスーツを知っている。あれは自分の幼馴染の三日月のモビルスーツ、バルバトスだ。
『お、おい!止まれ!!』
フロント管理社が、エアリアルからバルバトスに武器を向けて警告を発する。
だがそれは、
『どけ』
バルバトスが手にしていたソードメイスを思いっきり横に振るった事により、黙らされた。
「え…?」
今度はミオリネが小さく呟く。なんせ今、ミオリネの目の前では、デミギャリソンが突然吹っ飛ばされたのだ。吹っ飛ばされたデミギャリソンを見てみると、頭部が完全に破壊されている。そして死んだかのように、ピクリとも動かない。
『こ、こいつ!』
残っていた2機の内の1機が、ビームライフルをバルバトスに向ける。
しかしその瞬間、バルバトスが持っているソードメイスがデミギャリソンを上から叩き潰す。するとデミギャリソンは頭部がひしゃげ、そのまま後ろに倒れて沈黙。
『う、うわぁぁぁぁぁぁ!?』
残った1機が叫びながらバルバトスに向かって攻撃。だがそれも、
『だからどけって』
バルバトスが一気に接近し、デミギャリソンの横っ腹をソードメイスで思いっきり叩き潰す事で黙らされた。横っ腹から攻撃を受けたデミギャリソンは、そのまま数十メートルも吹き飛び沈黙。
こうして、3機のデミギャリソンはバルバトスによって完全に破壊されたのであった。
『スレッタ、大丈夫?』
デミギャリソン3機を文字通り叩き潰したバルバトスは、エアリアルの方に振り返り無事を確かめる。
「何よ…これ…」
ミオリネは震えた。突然目の前に現れたモビルスーツの凶行に。フロント管理社相手に、一切躊躇う事せず攻撃をしている。その結果、3機のデミギャリソンが大破している。
破壊されたデミギャリソンからは、黒いオイルがドクドクとまるで血液のように流れ出ている。まるで殺人現場だ。
だというのに、目の前のモビルスーツは何事も無かったかのような平坦な声で話す。その事実に、ミオリネは震えた。
「おいおい…何だよ、これは…?」
バラバラにされたディランザから出てきたグエルは、突然の出来事に混乱していた。フロント管理社がいきなり自分の決闘相手だったエアリアルを囲んだ事にも驚いたが、それを文字通り叩き潰したバルバトスにはより驚いていた。
そしてそのバルバトスを、グエルは見上げる。黒いソードメイスを手に持ち、まるでどんな敵が来ても必ず殺しつくすと言わんばかりの顔つき。2つの長いヘッドアンテナは角のように見え、指先は鋭利に尖っている。
そして機体の所所に、返り血のようにデミギャリソンのオイルが付着していた。
「悪魔…」
まるで悪魔だ。敵と見定めた相手を容赦なく殺しつくす悪魔だ。その姿に、グエルは身震いした。
「どうしよう、これ…」
一方でスレッタは頭を抱えていた。恐らく三日月は、自分を守るために攻撃をしたのだろう。しかし、これはやりすぎだ。フロント管理社相手に問答無用で攻撃をしたのだ。今スレッタの頭の中では、賠償金や裁判や逮捕などのワードが駆け巡っていた。果たして、どうやったらこの後始末が付けられるのか。自分たちは、これからどうなるのか。そんな様々な不安が脳内を駆け巡る。
『そこのモビルスーツ!今すぐ停止しなさい!!』
そうやって不安がっていると、今度はデミギャリソンが6機も現れる。そして明らかに、こちらに対して敵意を持っていた。おまけに6機全てが、ビームライフルを向けている。いきなりフロント管理社のデミギャリソンを3機も破壊したのだから、仕方が無いと言えばそうなのだが。
『まだ来んのか』
対する三日月は、バルバトスを再び戦闘態勢に移行。そして背中のスラスターを吹かし、6機のデミギャリソンに襲い掛かろうとしていた。
「三日月!ダメ!!」
スレッタは慌てて、三日月を止めに入る。
『?何で?』
「兎に角ダメ!大人しくして!!」
『いいの?あいつら敵だよ?』
「違う!敵じゃないよ!ただ私から話を聞きたいだけだから!」
『そうなの?』
「そうなの!だから三日月!バルバトスを停止させて!」
『わかった』
スレッタの言葉を素直に聞き、三日月はバルバトスを停止させる。それを見ていたフロント管理社が、警戒しながらバルバトスとエアリアルに近づいてきた。
更にその後ろには、武装したフロント管理社の警備員も大勢いる。余程バルバトスを警戒している証拠だろう。そんなフロント管理社相手に、三日月は完全に動きを止めて大人しくする。
こうして、スレッタの学園での初めての決闘は、波乱のまま終わりを迎えたのだった。
という訳で、バルバトスの初陣でした。実は感想にて言い当てている人がいてびっくりしてました。まぁ、これだけ大勢の方から感想がきたら、1人くらいそういう人もいますよね。
そして演習区画に出てきた時のBGMは、多分1期1話のあれ。
あとフロント管理社の人達は生きています。でも暫く入院します。
次回は査問会になると思います。
あと前回、セセリアが居なかったので新しく追加したアンケートも実施中です。よければお答えください。
もし三日月が『可愛いと思ったから』と言い、思わずキスするとしたら誰?(改)
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ニカ
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チュチュ
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リリッケ
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アリヤ
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フェルシー
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ペトラ
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セセリア
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サビーナ
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レネ
-
イリーシャ
-
メイジー
-
エナオ
-
ソフィ
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ノレア
-
ミオリネ
-
スレッタ