悪魔と魔女の物語   作:ゾキラファス

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 水星の魔女最終回、観ました。

 ハッピーエンドで本当によかった!
 制作に関わった全ての方々、素晴らしい作品を本当にありがとうございます!キャリバーン買えたら買います!

 ところでミオリネママ、出てきませんでしたね。

 それはそれとして今回、三日月あまり出番ありません。


呪いと悪魔のモビルスーツ

 

 

 

 

 

 

 決闘委員会 ラウンジ

 

「何ですか…これは…」

 

 セセリアがモニターを見ながら呟く。いきなり決闘相手が変更されたのはまだいい。その後、水星からの編入生があのグエルに勝った事もまだわかる。

 しかし、突然フロント管理社が出てきて例の水星のモビルスーツ、エアリアルを囲んで威嚇射撃。その後、演習区画にもの凄い勢いで現れた白いモビルスーツ。そしてそれは、あっという間にデミギャリソン3機を破壊した。これはもう意味がわからない。

 

「ロウジ。あのモビルスーツは?」

 

「水星からのもう1人の編入生、三日月・オーガスのモビルスーツ。バルバトスルプスです」

 

「バルバトス…」

 

 シャディクがロウジに、乱入してきたモビルスーツの事を聞く。機体名はバルバトスルプス。そしてパイロットは、水星からのもう1人の編入生、三日月・オーガス。たった今起こった出来事を見るに、どうやら随分と乱暴な生徒のようだ。もしくは、水星ではあれが日常的なあいさつだったりするのかもしれない。

 

「それと、妙な事が…」

 

「妙な事?」

 

 ロウジが怪訝な顔をして、首を傾げながら言う。

 

「何かのエラーとは思うんですが、あのバルバトスからは、パーメットが全く検出されませんでした」

 

「―――何だって?」

 

「……」

 

「いや、ありえないっしょ…?」

 

 それを聞いたシャディク、エラン、セセリアは驚く。パーメットは、この世に存在するあらゆる機械に使われている鉱石であり元素だ。ロウジが今使っている端末や、学園内を走っているモノレール。そしてモビルスーツ。あらゆる物にパーメットは使用されている。

 なのに、あのモビルスーツバルバトスからはそれが検出されていない。そんな事、普通はありえない。

 

(いや、まさか…)

 

 しかしシャディクは、パーメットを使用しないモビルスーツにひとつだけ思い当たる物があった。あまりにもデタラメで、無理のある可能性だ。だってあれは、遥か昔に全て失われ、最早伝説と扱われているモビルスーツである。現物が存在するなんて、ありえない。

 だがもしあれが本物だった場合、あのバルバトスは多くの企業が欲するモビルスーツとなってしまう。下手をすると、ベネリットグループ内でバルバトスを巡った争いが起きる可能性すらある。

 

「これは、魔女どころの騒ぎじゃすまなそうだね」

 

 シャディクはモニターをじっと見ながら、今後の事を考えるのであった。

 

 

 

 

 

 学園内 モビルスーツハンガー

 

「これが、例のガンダムなのか?」

 

「らしいぞ」

 

 ベネリットグループに所属する職員達。彼らの目の前には、モビルスーツデッキに念入りに固定されているエアリアルがあった。

 決闘の後、フロント管理社の者達により、エアリアルはこうして拘束されている。職員達が一様に口にする、ガンダムという単語。それは、かつて全て廃棄された呪われたモビルスーツの名前だ。

 

「確か、乗ってるパイロットすら殺すんだっけか?」

 

「おいおい。学園の授業で習っただろう?覚えとけよ」

 

「いやー、歴史って苦手でさ…」

 

「あーもう。軽く説明してやる」

 

 そういう職員の1人が、説明をする。

 

 GUNDと呼ばれる人体の機械化の技術をモビルスーツに使い、人間とモビルスーツを有機的にリンクさせ、ガンビットと呼ばれる遠隔操作兵器を使うモビルスーツ。それらを称して、GUND-ARM。もしくはガンダムという。完成したガンダムは、従来のモビルスーツを遥かに凌ぐ性能を発揮していた。

 しかしガンダムは、過剰なパーメットの人体への流入、データストームという侵害的情報逆流現象を引き起こすのだ。

 その結果、パイロットは脳神経に致命的な損傷を与え、パイロットは廃人同然となってしまうのだ。

 

「そうやって聞くと、マジで呪いの兵器だな…」

 

「本当な。人類存亡の危機でもない限り、乗りたくなんてないよ」

 

 乗り手の命すら奪う呪いの兵器。ガンダム。かつてデリング・レンブランは『命を奪った罰は、機械ではなく人によって科されなければならない』と言い、全てのガンダムを否定。そして全ガンダムタイプの抹消を宣言し、実行。

 その後あらゆる手段を使い、デリングはガンダムを破壊した。そうやってガンダムは全て破壊、もしくは廃棄された筈なのだ。こうして残っている筈が無い。仮に残っていたとしても、こんなに新しい訳が無い。これは明らかに、ごく最近建造されたモビルスーツだ。

 

「でもさ、だったら何であの子は生きてるんだ?」

 

「知らないよ。それを調べるのは上だろう?俺達下っ端職員は、ただこれをここに拘束しておけばいいんだよ」

 

「それもそっか。くわばらくわばら」

 

 藪をつついたら蛇が出るかもしれない。それにそういうのを調べるのは、別の人間だ。好奇心猫を殺すともいうし、彼らは黙って自分の仕事をするだけにした。

 

「しかし、だったらあれもか?」

 

「ああ。あれか。多分そうだろ。なんか似てるし」

 

 2人が視線を動かすと、そこにはエアリアルより頑丈に拘束されているモビルスーツ、バルバトスがあった。フロント管理社のデミギャリソン3機をあっという間に破壊したモビルスーツ。幸いパイロット達は無事だったが、現在彼らは入院中である。暫くはベッド生活のままだろう。

 

「にしても、いきなりぶっ飛ばすとか、水星人はおっかないな」

 

 突然演習区画に乱入したかと思えば、フロント管理社のモビルスーツを破壊した。あれが水星人のあいさつだとしたら、例え仕事でも絶対に水星には近寄りたくない。

 

「ところで、そのパイロット2人は?」

 

「丁度今頃、取り調べ中だよ」

 

 

 

 

 

「……」

 

「学籍番号LP041。パイロット科、スレッタ・マーキュリー。父親は既に死去。母親はラグランジュ1に赴任中。間違いありませんか?」

 

 学園内にある取り調べ室。そこには拘束され、取り調べを受けているスレッタがいた。机を挟んだ反対側には、取り調べを担当している聴取係がいる。

 

「それ、さっきも答えました…もう6回目です…」

 

「質問に答えなさい。間違いありませんか?」

 

「……はい」

 

「それでは、貴方は自分が乗っていたモビルスーツが、条約で禁止されているガンダムだと認識していますか?」

 

「してません。あの子はエアリアルです。ガンダムじゃない…」

 

「GUNDフォーマットを使用したモビルスーツが条約で禁止されている事は認識していますか?」

 

「そんな事、知りません」

 

「それでは、貴方はガンダムを開発した、ヴァナディース機関の人間ですか?」

 

「違います。そんなとこ、今まで聞いた事もありません」

 

 もうかれこれ2時間はこれの繰り返しだ。何度も何度も同じ質問をされ、スレッタはいい加減うんざりしていた。三日月がデミギャリソンを3機破壊した後、スレッタと三日月はそのままフロント管理社の人間に拘束された。そしてあっという間に、こうして尋問を受ける事となっている。

 因みにこの取り調べ、今日で3日目だ。

 

「あの、三日月…私と一緒に編入したもう1人の編入生は…?」

 

 スレッタがエアリアル以外で気になっている事。それが幼馴染の三日月の事だ。自分と同じように拘束され、自分と同じように今も尋問を受けているのかもしれない。目の前の聴取係が答えてくれるかはわからないが、聞かずにはいられない。

 

「彼なら現在、武装したフロント管理社の職員に監視された状態で厳重に拘束中です」

 

「ええ!?」

 

 意外な事に質問の答えが返ってきたが、その内容は驚くべきものだった。

 

「な、何でですか!?」

 

 てっきり自分と同じように、同じ質問をされ続けているのかと思えば、まさかの拘束中である。しかも武装した管理社の職員の監視付き。自分よりずっと厳重だ。どうしてそこまで自分と違うのか、理由が知りたい。

 

「彼には現在、条約で禁止されているガンダムを使用した疑いと、反スペーシアンのテロリスト容疑がかけられています」

 

「な!?」

 

 そしてその理由はスレッタの予想だにしていないものだった。

 

「フロント管理会社のモビルスーツを破壊したんです。幸い、パイロットは無事でしたが、普通はこんなことしない。ですが、スペーシアンに恨みを持っているのなら話は違う。ああやって、暴力的な手段に出る事もあるでしょう」

 

 聴取係の男は淡々と話す。スレッタは知らない事なのだが、地球出身のアーシアンと、宇宙出身のスペーシアンの溝は深い。それはスペーシアンが長年、地球での搾取をし続けてきたからだ。現に地球には、反スペーシアンを掲げるテロ集団も存在する。

 そしてそういった者たちは、スペーシアンに対する恨みがとても大きい。スペーシアンを見かけたら、いきなり撃ってきたりするくらいには。

 そういった経緯もあり、三日月がしでかした事を考え、彼は現在厳重に拘束されている。だが三日月が厳重に拘束されているのは、それだけが理由じゃない。

 

「それに彼は、初日に取り調べをしている際、聴取係を1人重体にしています」

 

「はいいい!?」

 

「まぁ、これに関しては彼を担当していた聴取係の自業自得ですので気にしないでください。ですが、それはそれとして彼は非常に狂暴であると我々は判断し、念入りに拘束しています」

 

 本当に自分の幼馴染は何をしでかしたのだろうか。出来れば今すぐ話を聞きにいきたい。だが、ここから出て会いに行く事は不可能だろう。

 

(三日月…お願いだから大人しくしておいて…)

 

 とりあえずスレッタは、心の中で祈る事にした。これ以上、自分の幼馴染が暴れない様に。

 

 

 

「ふむ…」

 

「魔女には見えないわね?」

 

「じゃあ何だと言うんだ」

 

 スレッタが取り調べを受けている様子を、別室で見ている者達がいた。

 

 グラスレー社CEO、サリウス・ゼネリ。

 ペイル社CEO、ニューゲン、カル、ネボラ、ゴルネル。

 ジェターク社CEO、ヴィム・ジェターク。

 

 ベネリットグループ、御三家の者達である。

 

「データによりますと、あのエアリアルというモビルスーツは、水星のシン・セー開発公社の所有物となっています」

 

「ふん!水星の採掘屋如きにガンダムが作れる訳ないだろう!」

 

 そう声を荒げるのは、ヴィム・ジェターク。スレッタが決闘で負かした相手、グエル・ジェタークの父親だ。

 

「条約で禁止されているモビルスーツを使った決闘など無効だ!ガンダムは即刻破壊!そしてあの水星人は水星に送り返せ!」

 

 そんな彼は現在、かなりイラついていた。折角自分の息子がホルダーになり、次期総裁の目も見えていたというのに、スレッタのせいで全てが台無しだ。なので一刻も早く決闘を無効にして、グエルを直ぐにホルダーに返り咲かせたいのだ。

 

「そうなれば、君の息子がホルダーに返り咲く。だから焦っているのか?」

 

「何だと貴様!?」

 

 サリウスの発言に再び声を荒げるヴィム。図星を指されたからである。

 

『それでは、彼、三日月・オーガスとあなたの関係は?』

 

 そんな時、モニターから声がした。それに反応したヴィムは、大人しく席に座り取り調べの続きを聞く。もしかすると、スレッタも反スペーシアンのテロリスト関係者かもしれないし。

 

『えっと、私と三日月は、幼馴染です。もう、10年くらいの』

 

『10年?随分長い付き合いですね?』

 

『はい。小さい頃、水星の基地の倉庫で泣いていた私に、声をかけてくれたのが三日月でした』

 

『ほう?そこからの関係で?』

 

『そうです。そして三日月は、泣いている私に火星ヤシっていうドライフルーツをくれました。あれ、とっても美味しかったなぁ…』

 

 モニター越しのスレッタの顔は、先ほどまで同じ質問をされていた時とは違い、少しだけ笑顔だった。

 

『他にも、水星のおじいさん達にイジワルされていた私を守ってくれたり、一緒にお話ししたり、エアリアルのゲームで遊んだり、同じベッドで寝たり、熱を出した私を看病してくれたりしました』

 

『な、成程?』

 

『その、三日月はかなり危ない事もしますけど、本当は凄く優しいんです。フロント管理社のモビルスーツを壊したのだって、威嚇射撃された私を守ろうとしたからなんです。だから、三日月がテロリストとか絶対にあり得ません!そもそも10年前から私と一緒に水星にいましたし、三日月の生まれは火星ですもん!』

 

 スレッタは懸命に三日月を弁護する。そもそもの話、三日月は火星生まれ水星育ちのスペーシアンである。アーシアンではない。それに、本当にずっと一緒にいたのだ。共に過ごした時間で言えば、エアリアルの次くらいには長い。

 因みにプロスペラは、仕事で水星を離れている時間が多かったのでギリギリ3番目だ。

 

『何度でも言います。三日月はテロリストなんかじゃない!私の大切な幼馴染で、家族なんです!そしてエアリアルもガンダムじゃありません!!』

 

『あ、あの…少し落ち着いて…ね?』

 

「何だこれは?」

 

 その様子をモニターで見ていたヴィムはそう呟く。恐らくスレッタは三日月の弁護をしているのだろうが、なんか半分くらい惚気に聞こえる。一体今、自分達は何を見ているのだろうか。

 

「懐かしいわねぇ…私達にも、あんな時代があったわ…」

 

「そうねぇ。もうずっと昔だけど、あんな若い頃があったのよねぇ…」

 

「私、つい初恋を思い出しちゃったわ」

 

「そうね。私も16の頃に初めて好きになった男の子の事を思い出したわ。名前はマクマードって言うんだけど」

 

「お前らは何の話をしている!?」

 

 スレッタに当てられたのか、ペイル社のCEO4人が昔を思い出し始めた。今でこそ4ババアとか陰で呼ばれている彼女達だが、そんな彼女達にも今のスレッタのような若くて青春していた時代が少なからずあったのだ。

 

「デリング総裁から通信です」

 

 そんな時、ベネリットグループ総裁、デリング・レンブランから通信がきた。役員の1人が端末を弄り、モニターを切り替える。するとモニターには、デリングが映し出された。

 

『シン・セー開発公社CEO、プロスペラ・マーキュリーを呼べ。審問会を開く』

 

 そして審問会という名の、魔女裁判を行うと言い出すのであった。

 

 

 

 

 

「決闘は無効になったんだって?」

 

「だってさ。何か編入生がズルしたかららしいよ?」

 

 学園では、数日前に行われた決闘の話題で持ち切りだった。ホルダーであるグエルが負けた時も騒がれたが、今はそのグエルに勝利したスレッタがズルをして勝利したという話題で騒がれている。

 

「おかしいと思ったんだよ。グエル先輩があんな水星からやってきた編入生なんかに負ける訳ないし」

 

「だよねー。でも一体どんなズルしたんだろう?」

 

「何かあのモビルスーツが条約で禁止されているものだからって聞いたけど…」

 

 グエルの強さは、学園の皆が知っている。ホルダーになる前こそ数回の負けがあったものの、ホルダーになってからは常勝無敗。数か月前にとある生徒との決闘で紙一重で負けそうになった事もあったがそれでも勝ってきたのがグエルだ。

 そんなグエルが、水星というド田舎からやってきた編入生程度にああも一方的に負けるなんてありえない。もし負けたとすれば、何かしらのインチキをしたからだろう。

 そしてスレッタは、そんなインチキをした生徒。それが今学園にいる多くの生徒の、スレッタに対する共通認識であった。

 

「ところでさ、もう1人のあの子はなんだったの?」

 

「ああ、彼ね…」

 

 そしてスレッタと同じくらい話題にされているのが、三日月だ。突然演習区画に乱入してきたかと思えば、フロント管理社のモビルスーツを破壊。それも全く躊躇せずにである。普段であれば、フロント管理社がそんな現場を見せないようジャミングを行うのだが、担当職員が職務を怠慢してしまい、大勢の生徒が三日月がデミギャリソンを破壊しているのを見てしまっている。

 因みにその担当職員は、半年間の減給処分が下された。

 

「あくまで噂なんだけど、学園に侵入してきたアーシアンのテロリストって話だよ?」

 

「マジで!?こっわ!?」

 

「いや実際怖かったって…私、あの映像見て震えちゃったもん…」

 

 3機のデミギャリソンを破壊し、オイルが返り血のように付着していたバルバトスを見て、恐怖を覚えた生徒も多くいた。そして一部の生徒は、三日月が仲間のスレッタをフロント管理社から守る為に、あのような凶行に及んだと考える。

 結果、三日月は暴力的な手段を取る恐ろしい生徒だという認識をされていた。三日月本人は気にも留めないだろうが、スレッタは悲しむだろう。 

 

「でもさ、反スペーシアンのテロリストが学園に侵入なんて出来るかな?」

 

「だからあくまで噂だって。他にも色んな噂あるしね」

 

「例えば?」

 

「決闘を見てあてられて急に暴れたくなったとか、モビルスーツが暴走したとか、自分の好きな女を守るために剣を振るったとか」

 

「いや最後何?」

 

 生徒達の間で、様々な噂が駆け巡る。こうしてスレッタと三日月がいない学園は、割とありふれた日常を送っていたのだった。

 

 

 

 同じ頃、スレッタ以上に厳重な警備体制で拘束されている編入生がいた。勿論、三日月である。彼は現在、全身を特製のベルトで巻かれており、全く身動きが取れない状態にいる。まるでミイラ男だ。

 一応、首から上は動かせるが、それ以外は全然ダメ。背中が痒くなってもかけない。更に拘束されている部屋には、腰に拳銃を装備しているフロント管理社の職員が2人いる。その2人が常に、三日月を直接監視している状況だ。

 普通の人間であれば、身動きが取れず、常に拳銃を装備している人間に見られているこの状況には耐えられないだろう。人間、常に誰かに見られているという状況はかなり堪えるものがあるからだ。

 そんな状況下にいる三日月はというと、

 

(暇)

 

 特に気分を害する事もなく、暇を持て余していた。

 

(スレッタ、無事かな?)

 

 三日月は、自分の幼馴染であるスレッタの心配をする。最初、三日月の取り調べを担当した聴取係の男は、言うなればスペーシアン史上主義の男だった。普段からアーシアンを見下し、侮蔑する。そんな男が三日月の取り調べを担当した。

 そしてその聴取係の男は、三日月の取り調べの最中、ついスレッタにどんな事をしてでもテロ容疑を認めさせるという発言をしてしまった。それを聞いた三日月はブチ切れた。

 三日月は聴取係の男を押し倒し、そのまま馬乗りになって顔をひたすらに殴り続けた。その後、フロント管理社の職員が止めに入ったので、何とか命だけは助かった。

 しかし彼は現在、前歯が7本折られ、顎の骨にヒビが入り、左目が陥没するという重体である。恐らく、もう完全に元に戻る事は無理だろう。

 そしてそれを見ていたフロント管理社は、三日月の狂暴性を恐れ、こうして動きを完全に封じたのだ。更に、スレッタには一切手を出さない取り調べをしていると三日月に丁寧に説明もした。こうでもしないと、また三日月が暴れると思ったからだ。そのおかげか、三日月はこうして大人しくしている。

 

(怖ぇぇ…やっぱりこの子怖いって…)

 

(早く交代時間来てくれー!マジでこの子怖いんだよ!!)

 

 そして三日月とは対照的に、三日月を監視しているフロント管理社の職員は怯えていた。三日月は、フロント管理社の職員達が止めるまで聴取係をずっと殴り続けていた。職員達が止めても、尚その拘束を解いて三日月は聴取係を殴ろうとしていた。

 結局、大人5人がかりでやっと三日月を止める事に成功し、こうして拘束。しかし彼らにしてみれば、猛獣と一緒の檻にいるような気分である。これで三日月がまだ不安そうな顔をしてればいいのだが、当の三日月は真顔である。真顔のまま、こっちを見てくるのが更に怖い。いくら拳銃を装備しているといっても、怖いものは怖い。

 

((交代時間はまだかーー!?))

 

(腹減ったな…)

 

 フロント管理社の職員2人は、早く交代時間が来てくれる事を祈りながら、三日月の監視を続けるのだった。

 

 

 

 

 

「これより、審問会を始める」

 

 ベネリットグループ本社があるコロニー。そこに存在する、議事堂のような場所。ベネリットグループの多くの幹部が集まっており、皆が審問席にいる仮面を被った女性を見ている。

 女性の名前は、プロスペラ。ベネリットグループの末端、シン・セー開発公社の代表であり、スレッタの母親だ。彼女はこれから、デリングが始めた審問会を受けるところである。

 

「シン・セー開発公社代表、レディ・プロスペラに問う。お前は魔女か?」

 

「いいえ」

 

「ヴァナディース機関との繋がりは?」

 

「いいえ」

 

「オックスアースとの関係は?」

 

「いいえ」

 

「あのエアリアルは、ガンダムか?」

 

「いいえ」

 

 デリングの質問に、プロスペラは全て簡潔に応える。その内容は、全て否定。

 

「あれはガンダムではないと?」

 

「エアリアルはガンダムではありません。我々シン・セー開発公社が独自開発した、新型のドローン技術です」

 

 そのプロスペラの答えに、周囲はざわめく。そんなざわめきの中、養父であるサリウスに連れられてこられたシャディクが口を開く。

 

「先の決闘において、あのモビルスーツは、パーメット流入値の基準を超えていました。これはガンダムの基幹システム、GUNDフォーマットの特徴を表していますが?」

 

「もしエアリアルがガンダムであれば、データストームが検出されているはずですが、如何です?」

 

「……確かに、エアリアルからデータストームは検出されていませんね」

 

「従来のパーメット技術を使った操作技術です。当然、グループの技術条項にも沿っています」

 

「それだけでガンダムではないと言えないと思いますが?」

 

「ですが断言もできませんよ?」

 

 何とも口の回る女だとシャディクは思う。だが同時に、プロスペラが言っているのは事実でもある。しかしこれだけで、エアリアルがガンダムではないと言える訳がない。

 

「レディ・プロスペラ。貴方は、エビデンスの欠落部分を言い訳にしているだけだ。黒を白と言い張るつもりかね?」

 

「我々も末席ではありますが、ベネリットグループの一員です。当然、カテドラルの協約も覚えています。ご信用いただきたい」

 

 サリウスがプロスペラにそう言うが、プロスペラは信じて欲しいと言う。

 

「その風体で信じろと?」

 

 今度はヴィムがプロスペラを睨みながら言う。確かに今のプロスペラは、奇妙な仮面を被っている。ハッキリ言って、見た目だけならとても怪しい。できれば近づきたくさえない。

 

「ん?」

 

 すると突然、プロスペラは上着を脱ぎ、腕を見せる。そこに現れたのは、機械で出来た義手。プロスペラはそれを外すと、ヴィムに投げつける。

 

「うおっと!?」

 

 ヴィムは慌てて、その義手を受け取る。

 

「ご覧の通り、この腕も、仮面の下の顔も、全て水星の磁場に持っていかれました。水星の環境は非常に過酷です。現に数か月前にも、採掘作業員数名が死亡しました。ですが、我々の開発したドローン技術を応用できれば、危険に身を晒す事なく、パーメットの採掘が可能となります。なのでどうか、エアリアルを認めて下さい。我々には、グループの支援が必要なのです!」

 

 プロスペラがそう言い終えると、静寂が訪れる。皆、デリングの返答を待っているのだ。

 

「いや、あれはガンダムだ」

 

「あら?パイロットは五体満足、データストームも検出されていないのに、何故でしょう?」

 

「私がそう判断したからだ。異論がある者はいるか?」

 

 まるでジャイアニズムである。デリングが周りを見渡すが、誰1人異論を唱えない。皆、デリングに逆らえばどうなるかわかっているからだ。

 それに、シン・セーなどという末端の企業を助けても特に利益が無い。なので誰も異論を唱えない。

 

「エアリアルの処分は、もうひとつのモビルスーツの事を聞いてからだ。後で纏めて決める事にしよう」

 

 どうやらこれで、エアリアルはガンダムであると決定されてしまったようだ。しかし処分は、もうひとつのモビルスーツの事を聞いてからになるらしい。

 

「レディ・プロスペラに問う。あのバルバトスは、ガンダムか?」

 

 それはフロント管理社のデミギャリソンをあっという間に3機も破壊したモビルスーツ、バルバトスについてだ。こちらもシン・セー開発公社の所属となっている。

 これまでの審問会の流れからして、例えバルバトスがガンダムでないとプロスペラが言っても、デリングは聞く耳を持たないだろう。そもそもエアリアルとバルバトスはデザインが似ている。これでガンダムで無いとはとても言えない。

 そんなデリングの質問にプロスペラは、

 

 

 

 

 

「はい。バルバトスはガンダムです」

 

 

 

 

 

 あっさりと、ガンダムであると答えたのだった。

 

『……は?』

 

 そのプロスペラの答えに、審問会に参加している幹部達はあっけに取られる。

 

「貴様、今認めたな?バルバトスはガンダムであると」

 

 デリングはプロスペラを睨みつける。更に大のガンダム嫌いでもあるサリウスも、デリング同様にプロスペラを睨む。

 

(だが何故だ?何故急に認めた?)

 

 しかし同時にサリウスには、ある疑問があった。エアリアルの時はずっと否定していたのに、バルバトスについてはあっさり認める。意味がわからない。もしかすると、エアリアルを守るためにバルバトスをスケープゴートのように生贄として捧げるつもりなのだろうか。

 

「断っておきますが、バルバトスは皆さんが今思っているガンダムではありません」

 

「何?」

 

 プロスペラの発言に、皆が耳を傾ける。ガンダムだけどガンダムでは無いとは、一体どういう意味なのだろう。審問会に参加しているベネリットグループの幹部達が疑問に思っている中、プロスペラは話を続ける。

 

「バルバトスは300年以上前に開発され、当時の人類を殺戮の天使達から守護した72機のモビルスーツ。そのモビルスーツシリーズの、現存する最後の1機です」

 

「……何だと?」

 

「……まさか」

 

 プロスペラのその言葉を聞いて、一部の幹部が驚いたような顔をする。だが多くの幹部は、未だにピンと来ていない。

 

 そしてプロスペラは、遂に口にした。

 

 

 

 

 

「バルバトスは、本物のガンダムフレームです」

 

 

 

 

 

 かつて最強と言われた、伝説のモビルスーツの名前を。

 

 

 

 

 

 おまけ 取り調べ中の三日月

 

「答えろ!お前は反スペーシアンのテロリストか!?」

 

「いや、違うけど?」

 

「正直に言え!今言えば懲役だけで済むぞ!」

 

「あんた何言ってんの?」

 

「あくまでとぼける気か!?だったらもう1人の女も聞くとするか!!殴ろうが蹴ろうが、どんな手段を使ってでもな!!そしてあの女が吐けば、お前らは揃って銃殺刑だ!!もしくはあの女をお前の目の前で痛めつければ、お前も何か吐くかもな!?」

 

「あ?」

 

 

 

 

 




 パーメット関係とか、もし間違っているところがあれば遠慮なく言って下さい。

 次回は、この作品における水星世界の超大まかな歴史のお話。そしてVSグエル2戦目に入れればいいかなって思っています。
 水星の魔女本編は終わっちゃいましたけど、この作品はまだ続きます。どうかこれからも、よろしくお願いします。

 でも来週は、もうひとつの作品を更新したのでお休みかも。その時はごめんね。

もし三日月が『可愛いと思ったから』と言い、思わずキスするとしたら誰?(改)

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