ドラえもんの方なのかウルトラマンの方なのかは想像に任せる!
西暦2XXX年、アメリカ合衆国、某所。
発展しすぎた文明は一度退廃に堕ち、その文明の残照を食いつぶしながら生きる人々ばかりの世界。
物語の舞台は、一部の富裕層が住む、人類の黄金期を切り取ったような特権階級の巣……ではなく。
その周囲にまばらに点在する、黄金の時代に取り残された人々が『生きているだけ』の街で始まった。
「ロクなパーツ無いなぁ……これじゃあ今日も廃油寸前のオイルかぁ」
廃虚と掘っ立て小屋、そしてゴミとガラクタが連なる底辺の街『デッドロイト』。
ぼさぼさの赤毛を汚水に濡らしながら、ガラクタの山を漁る少年。
彼は人間ではない。人間に寄せて作られた、軽労働用アンドロイド……『AN‐TYPE147』。
個体名『アンディ』、それが彼の正体であった。
この世界では、弱い者や稼げない者に人権は無い。それは人間・ロボット問わずに。
特に彼のような、まだ人類がここまで退廃する前に作られた『スペックが平均的な人間よりマシ』程度のロボットにとっては、非常に生きづらい世界であった。
人間のようにナノマシンやサイバネ技術でサイボーグ化することもできず、高性能な戦闘用ロボットのような拡張性もない。
家事や機械整備等の馬力を必要としない作業をするために、指先まで非常に細かく動く手足と比較的高性能なCPUとAI。
それも、所詮は大量生産の量産型の域を出ない。
取るに足らない底辺の一人、いや『一機』である彼では、一攫千金の夢の舞台に挑む権利すらなかった。
まだマシな廃材を背負って帰る途中、何かの破裂音と破砕音が響き渡る。
この街で数少ない娯楽であり、底辺がまだマシな底辺になるための舞台……『コロシアム』。
ごつごつとした軍用アンドロイドや、重機を改造した戦闘用ロボットが、ギラギラと照り付ける照明の中で殴り合う。
どちらが勝つのかにありったけの金が賭けられて、賭けに勝った者はソレを女や酒や薬に溶かす。
さらに、勝者であるアンドロイドやロボットには、この街ではまず見られない高級なパーツや純正品のオイルやバッテリー、あるいはとんでもない額の電子マネー。
敗者は言うまでもない、鉄筋コンクリートの壁も粉砕できる巨大なロボットアームが直撃し、五体がバラバラになった二足歩行ロボットを見ればよく分かる。
人間にとってもロボットにとっても、この底辺から『まだマシな底辺』、あるいは『底辺の先』へ行くための、唯一の道。
だがしかし、そんな道もただの人間よりはマシ程度のスペックしか持たないアンディにとっては、指先さえかからない幻の道。
「なあ、そこの坊主。 水持ってないか?酒でもいい。
対価は……金はいつも無いしなぁ。 ああ、そうだ」
幻の道、そのはずだった。
「お前にカラテを教えてやるよ。お前の腕でも、岩を砕ける技だ」
謎の美女『蓮花(レンカ)』*1と出会い、一機のアンドロイドは【一人の格闘家】となる!
(ここらへんで主題歌『屑鉄の拳』が流れ始める)*2
レンカによる特訓!特訓!猛特訓!
(シャドーボクシングしながらランニング……だが自動車より早いレンカの自転車にロープで繋がれて引きずられている)
脆かったはずの屑鉄の拳は、いつしか全てを砕く鋼鉄の拳となる!
(サンドバッグみたいに吊られたスクラップを、飛び後ろ回し蹴りで粉々にするアンディ)
襲い来る様々な暴力!武器!凶悪なロボットやアンドロイドの特殊兵器!
(幅1mはありそうな丸鋸チェーンソーを飛び越え、本体である3mはありそうなロボットに迫るアンディ)
(ガチムチマッチョでサングラスなアンドロイド*3とアクロバティックな格闘戦をするアンディ)
(肘からブレードを生やして切りかかってくるイケメン俳優の演じる二枚目アンドロイドのブレードを避けるアンディ)
「いい加減、貧民共が這いあがってくるのも見苦しくなってきましたね」
「そろそろ『掃除』が必要だろうなぁ。ま、どうせ減らしてもそのうち沸いて来るが」
そして、金の亡者に心まで売り渡した者達によって引き起こされるデッドロイトの危機!
迫る戦闘用ロボットとアンドロイド!迸る血と汗とオイル!弾ける火花!巻きあがる炎!
「人間の拳でロボットを破壊できないと思ったかこのタンカスがァーッ!!」
「師匠、貴方は一体……!?」
そして、謎のカラテマスター・レンカに隠された秘密とは!?
アンディ、今こそ君の鋼の拳で、暗い未来を打ち砕け!!
「立て、立つんだアンディーッ!!」
「うおおおおおおぉぉぉぉっ!!」
(巨大なロボットの拳とアンディのスクラップフィスト*4的なパンチがぶつかり合う瞬間に暗転)
役者は全員ノースタント!撮影のために死んでもいいぜと言い切ったバカ共の作り上げた、SFアクション映画の集大成!
今冬公開!【アンティーク・アンドロイド】!
君は今、鋼の英雄譚を目撃する。
「どうよ、アタシのハリウッドデビュー作。今日公開のPV貰って来たんだぜ?」
「うーん、実にイバラちゃん!というか良くも悪くも成長してないね!」
「……え、何?まさかと思うけどこのPV見せるためだけに来日したの?ハリウッド女優が?!」
「そうだけど?」
「そうだけどじゃないんだけどぉ!?
子役時代にも見てたけどどんだけフットワーク軽いのよアンタ!?
っていうかそのフットワークの軽さ今でも変わって無いワケ!?ウソでしょ!?」
「まあそもそもバサラやった後はアタシとかなちゃん現場で会わなくなったから知らなくてもしょうがないけどさ」
「げぼぇあっ!??」
「ロリ重曹せんぱーい!?!?」「かなぁー!?」
「あだ名がミックスされてすごい事になってるなかなちゃん」
と、上記のようなロングPVを流していたのは、苺プロダクションの一室。
ぴえヨン初登場時等に使われていたあの部屋で、緊急来日したイバラが持って来たDVDを再生していたのだ。
呼ばれたのはいつものメンバー、つまりアイ、アクア、ルビー、かな、MEMちょ、おまけにミヤコさんである。
斎藤社長はお仕事中だし、鬼瓦プロデューサーは緊急来日によるマスコミ対応をぶん投げられている。
「おう、おおぉ……」
「え、えーっと、なんでいきなりかなは吐血したの……?」
「婆娑羅剣風帳で売れっ子になった後、子役から女優への転身を盛大に失敗したり歌路線でも大失敗したのを思い出したんだろ」
「あー……」
婆娑羅剣風帳とピーマン体操は未だに有馬かなにとって二大代表作ではある。
前者は興行収入100億を突破した大作映画 兼 最高視聴率14.1%を記録した化け物ドラマだ。
後者にしても本人的には黒歴史だが、ピーマン体操は歌手路線のきっかけを作ったオリコン一位の曲。
そして、この2つの【大物に成れる土台】を本人の高飛車な性格で丸々ダメにして今に至るのがこの世界線の有馬かなである。
そりゃトラウマにもなる。
ついでにそのことをアクアにしっかり解説されて「ごふぅ」と再度女の子らしくない声を漏らし、有馬かなは顔面からテーブルに突っ伏した。
「じゃ、自慢話も終わったしアメリカ帰るわ!」
「コイツ本当にコレのためだけに来日したんだな……」
「昨日のニュース、あの最強で無敵のバラドルが緊急来日!で一色だったのにね……」
「まあ、撮影もひと段落したし、次の仕事決まる前におめーらの顔見ておきたかったのもあるけどさ」
アメリカ土産だ、と言って部屋に持って来たよくわからないインディアンな感じの巨大な仮面をミヤコに押し付けつつ。*5
ひょい、と色々な荷物が詰まったリュックサックを担ぎ上げた。
ちなみにこのリュックサック、いつ旅行中に遭難してもいいように様々なグッズがみっしり詰まっている特別性。
ただし重量も相応であり、具体的にはアクアでは背負っても動けない。
「えー、もう帰っちゃうの?今夜ぐらいウチに泊まっていこうよぉ!」
「よりにもよって30超えた大人が一番ダダこねるんじゃねーっての」
「今でもハタチで通るからセーフ!」
「否定はしないけどさー……」
(表向き姉妹って事にしてるけど、実際外見だけなら姉妹で通っちゃいそうだもんね、ママ)
(アイの老けなさはちょっとした人体の神秘だからな……イバラとは別方向に)*6
気軽に別れの挨拶をするイバラにゴネるアイと、そんな母親を『いつものかぁ』って顔で見ている息子と娘。
なんのかんの言って、出会ってから今まで、この二人の距離感は変わっていない。
羨望と、尊敬と、友情と、スパイスにほんのちょっぴりの嫉妬。
全部を愛したバラドルと、全部を愛そうとしたアイドル。
海を隔てて、時間がたっても、きっと二人は変わらない。
結局、アイはイバラがバイクに跨って走り去るまで、わざわざ外まで見送っていたのだった。
「ねえ、アクア」
「……なに、アイ?」
「アクアがイバラちゃんを【腹ボテ】させればイバラちゃんは実質私の義理の娘だから遠慮なく家にいてくれるんじゃないかな!!」
「そうか。 何言ってんだこいつ」
前世から推していたはずのアイドルであり最愛の母親に、思わず全力でセメントツッコミを入れてしまうアクア君なのでした。
原作128話で表示された芸能人ステータスのイバラちゃんバージョン。
タレント力 A(何気に教養もトーク力も高い)
バラエティ力 S(言うまでもなく)
ネット・SNS A(さらっとヒマラヤなうとか書き込んでバズる)
話題性 A(寧ろ話題しか作らない女)
役者 B(女傑系の役だけはハリウッド級)
楽曲 B(努力してるけどこれでカンスト)