ガッチガチに、というほどではなく、割とゆるいルールで管理された異世界に転生した少年ミツが『運命の相手』を見つけ、時には『決闘』し、時には『神に挑む』。
 
 そんな なんでもない平凡なお話である。


 いいタイトルが思いつきませんでした。まる。


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 自由に書けるからオリジナルはいいよね~
 気が楽だよ~厨二病さいこ~


『ミツという少年』

 

 

「はっ、はっ、はっ──」

 

 

 ああ、情けない。いやはや情けない。

 走る走る、森の中を走る。

 足を縺れさせ、躓き、膝を擦りむこうとも全く意に介さず、すぐさま走り始める。

 

 彼は子供。農村に生まれて十年の子供である。

 好きなことは家事をさぼることと友達と遊ぶこと。

 好きな女の子は幼馴染のリーリャ。一番の親友はニア。 

 

 末っ子だった彼は甘やかされて育ち、家事やお遣いをさぼることがしばしばあった。

 ならば教養を身に着けたかと言われれば、否である。

 もっぱら勉強は好きではなかった。わざわざ村の長老の家へと出向いて教えを乞うなど面倒の極み。その気になれば文字だろうと教養だろうと身につけられなくはなかったが、少年はそれをしなかった。別段、本気になったところで得意でもなければ好きでもなく、報酬なんて少年の想像力からはせいぜい幼馴染や親友に教わったことを教えて優越感に浸れるくらいである。

 

 そんな小さな優越感は存外馬鹿にならない。

 少年の幼馴染は頭お花畑のアホの子……純粋無垢であるわけできっと文字を完璧に扱う少年を心底から褒めてくれるだろう。「すごいすごい!ねぇ()()、わたしにも教えて!」なんて言うことは想像に難くない。彼女の尊敬の念はさぞ少年の男としてのちんけなプライドを満たしてくれることだろう。

 

 それは少年の親友もそう。親友は少年とは違いまじめだった。暇な日には、いいや時間を見つけては長老の家に通っている。そうして学を修めようとしているのだ。いい子ちゃんである。いい子であり、まじめなのだ。そういうやつは得てしてストレスの発散方法を知らないし、無理をして自分を追い詰める傾向にある。

 だからたまに息抜きとして一緒に村のはずれのほとりでさぼるのである。

 その気遣いが親友に伝わっているかは知らないが、少なくとも少年は親友と険悪な仲になったことはない。喧嘩をしたことはないでもないが……まぁその話はまた今度にしよう。

 

 

 無駄話をしている時間もなくなってきた。

 

 

「──こっちだッ!見つけたぞ!」

 

「ッ!」

 

「あっ待てッ!」

 

 

 待ってなどいてたまるか。

 少年はここまで走りっぱなしで疲れた足に更に鞭を打ち、さきほどよりもなお早い速度で動き出した。

 止まってはならない。

 止まったら最後──少年は追っ手に捕まり、死ぬ。

 

 ああ、どうしてこんなことになったのか。

 

 なんて、回想に入るまでもない。理由は至極単純。

 

 少年が、幼馴染と親友の恋仲を引き裂こうとしたこの村の領主の息子をぼこぼこにしたからだ。

 ──正式な決闘にて。

 

 ん?幼馴染は少年の想い人じゃなかったのかって?

 

 ああ、違う違う。そりゃあこの村じゃ一番かわいい……いや、きっとこの世界で一番かわいい女の子だけど。

 彼女が好きになったのは、というか選んだのはニアだったのだ。ちなみにさっき割愛した喧嘩の原因は彼女を巡っての物だったりする。あいつが少年の方がふさわしいだのなんだのうるせぇからぼこぼこにして思いのたけを伝えるように言った。

 

 なお、これも正式な決闘によるものである。

 

 少年はなかなかに強いのだ。領主の息子という裕福な環境で上等な指導者に師事して剣を学びながら健やかに育った満15歳の青年、この世界では成人、をただの一撃で気絶させてしまうくらいには強かった。

 「クソガキが十歳の女の子に欲情してんじゃねぇよ。殺すぞ」と、げふんげふん。

 そう言ってしまったのが運の尽き。

 

 現在、そうして二桁にようやく届いた幼児に面子を潰され、恥辱を受けブチギレた領主の息子が強硬手段に出たのである。お抱えの騎士に少年と幼馴染、そして死に物狂いで抵抗するニアを取り押さえさせた。正式な決闘で決まった結論をなかったことにしようとしたのだ。

 

 それはこの世界において概ねご法度である。別に神様に怒られるとかそういうことはない。ただ、村の者は口酸っぱく言われている。神に誓ったものを取り下げてはならない、と。何が起こるかまでは教えてくれなかった。ただ、良くないことが起こる、とそれだけを何度も、何度も教えられているのだ。

 

 それはこの世界に根付く宗教、法の神を崇め、その教えを説くものたちによって齎されている。

 

 ニアはまじめでかついい子なので当然その宗教に入っているし、その法の神様を信仰している。故にこそ、神への誓いを無碍にした領主の息子にキレた。まぁ、恋人を奪われんとしていたのだから当然ではあるのだが。

 

 

 さて、ではなぜただの一介の村人である少年がそんなに強いのかと言えば、まぁ、隠すことでもない少年が転生者だからである。ええ、転生者だったりします。チートは多分あります。が、神様にあったわけでもこの世界にスキルやレベルがあるわけでもないため、如何せん特典の子細がわかりません。

 

 

 別にどうでもよかったんだけどさ。今まで碌に困ったことなどないし、幼馴染かわいいし、親友いいやつだし、家族は愛してくれるし、兄も姉もうざいけど悪い人たちじゃない。長老だって少年は苦手だけど、少年の才能を見抜いていろいろと擁護してくれる。

 

 まったくもっていい村だ。

 

 別に、転生者だからって全員が全員派手な人生を送るわけではない。波乱万丈に生きようと思えばできるし、ぼくはむてきになってさいきょうになってかみになるんだーとそう思わない気持ちも、ないではない。悪く思わないでくれ、少年が死んだのは十四のとき、すなわち厨二である。いや中二である。かっこいい生き様に憧れないではない。ただ、それよりも今度は早死する親不幸な息子になりたくなかったのである。

 

 普通にこの村で育ち、普通に村の子と結婚し、あるいは独身で過ごし、親の老後を世話して見取り、最後には幼馴染や親友と老後を過ごす。そこまで都合よくいくかはわからないが、少なくとも理想の一つ、人生設計の上での可能性の一つとして考えていた。

 

 

 と、すまない。話が長すぎた。話好きなのは性分でね、許してくれ。

 

 

 そう、今大事なのは少年が転生者であるということ。

 そう、チートがきっとあるということ。

 そう、そう、そうでなければ、ああ、困ったことになる。

 

 

「頼むからオレに人殺しをさせないでくれよ……」

 

 

 少年は呟いた。そんな懸念を。

 少年は逃げている。勝てないから、ではない。

 少年は自分が壊れていることを知っている。

 壊れているのだ。

 少年は生まれてこの方壊れたままだ。

 それは精神と肉体の乖離。あるいは肉体による魂の拒絶。

 ようするに中途半端な転生だった。

 少年は前世を知っている。少年は今世を知っている。

 殺し合わず、しかし混ざりきらず、半端なままここまで来た。

 困りなどしなかった。

 だが今は困っている。

 

 

「ああ、わかってるよ。オレたちは今、決断を迫られている。覚悟を決めなければならない」

 

 

 少年の名はミツ。またの名を(みつ)

 今必要なのは力か、知識か、策略か。否である。

 要するは覚悟。それによって齎される決断。

 

 選ぶのだ。

 ミツとして生きるか、光として生きるのか。

 少年は一人で語っているが、別にもう一人の自分の声が聞こえているわけではない。単なる自己暗示である。

 

 少年は迷った。迷った。迷った。

 

 だが、そう。

 光は決めたのだ。今世は親孝行をすると。

 ミツは決めるのだ。覚悟を。

 

 

 そうとなれば答えは必至。

 

 

「オレはミツ!逃げも隠れもしない!あんなクソガキに従う権力に屈した薄汚い騎士崩れども、よく聞け!法の神の名のもとに、お前たち不調法者を処罰する!──『決闘(デュエル)』!」

 

「んなっ!?正気か坊主!?」

 

「さぁ、これでもう逃げられないぞ」

 

「お前さん、本当に十か?えれぇ肝っ玉してやがんな、坊ちゃんに見習わせてぇわ。……『決闘(デュエル)』」

 

「オレが勝ったらあのガキを説得すること」

 

「ハッ、ガキにガキ言われてちゃ坊ちゃんもまだまだだな。──おーけー、なら俺が勝ったら大人しくついて来な。オレも契約上逆らえないとはいえ俺の半分以下のガキを斬るのは抵抗があったんだ。決闘なら痛みだけで済む、後悔するなよ」

 

「はん、勝ってからいいな、らッ!」

 

「おわっ、いきなり土放るたぁ礼儀がなってねぇな!『風刃(ふうじん)』!」

 

「おおおっ!?あぶねぇぇぇ!!何が礼儀だ!大人げねぇぞ!」

 

「悪いな、俺はもう二度と『決闘(デュエル)』で手は抜けねぇって誓ったんだ。さもなきゃあんなガキに負けるこたぁなかったんだよッっと!」

 

「くっ!そのガキは『決闘(デュエル)』の結果を踏みにじってるわけだが!?そこんとこどうなわけ!」

 

「あぁまったく度し難いね。無知ってのはまったく愚かしい。あいつあれで頭は悪くないのに、よっぽどあの女の子が気に入ったのか……さては『運命の相手』だったりしたのかもな?」

 

「はっ?なんだよそれ、おっさん占いとか信じるタイプ?」

 

「けっ、ちげぇよッ──話しながら石投げるたぁ器用だね、しかも俺の頭ドンピシャか、やるな。あのガキを一撃だったことはある。だが、てめぇも無知には違いねぇ、たとえ追っ手を全員『決闘(デュエル)』で懐柔したところで貴族に逆らって無事で済むとは思わないことだ」

 

「……」

 

「ま、俺としてはお前さんを応援したいがね。幼馴染二人の為に体張るなんてかっこいいじゃねぇか。農村に置いとくにゃ勿体ないね。お前さん、学院に通う気はねぇのか?そんだけ強けりゃ余裕だろ」

 

「……興味ないね。女の子とか女の子とか女の子とか、へっ、全然興味ないぜ!!」

 

「おい力増してねぇか!?ちょまっ、単純すぎるだろ!──ッアガッ!?」

 

「──油断大敵」

 

 鳩尾に一発。

 ようやく決定打が決まった。

 おっさんは倒れ伏し、その場から動けない。

 

 

「──『決闘(デュエル)』は当事者どちらかの死でもって終了する。悪く思わないでくれ、おっさん」

 

「……ちっ、まさかここまでたぁな。……坊主、名前は?」

 

「先に名乗りなよ」

 

「ほんっと最近のがきは……──ライナーだ」

 

「──ミツ・テミステスだ」

 

「はっ、ははっ、まさかこんな近くの村に『信託者』様たぁ、恐れ入った、ね……」

 

「──いい夢を」

 

 

 ゴキッ

 

 

 何が起きたかは、語らないでおこう。

 

 

◆◇◆

 

 

「ったく、容赦ねぇな、首を折られる側の気持ちを考えろよ」

 

「子供の腕力じゃ手段を選んでらんないんですよ。剣もないですし」

 

「別に怒ってねぇけどよぉ、あぁもう面倒くせぇ!なんで俺があんガキを説得しなきゃならねぇんだよー!」

 

「敗者に拒否権はないです。とっとと他の追っ手も説得してきてください」

 

「いやいや、そりゃあ契約に入ってなかっただろ?」

 

「ついでですからいいじゃないですか、お願い!」

 

「……はぁ……わーったよ」

 

「やったー!おっさん、だいすきだよ!」

 

「男に言われたって嬉しかねぇよ……ちょ、おい!抱き着くな!きもい!」

 

「きもいとはなんだ!おっさんは大人しくオレを肩車すればいいんだよ!ほら!ほら!こちとらおっさんが一人になるまで逃げ続けてたんだぞ!」

 

「やっぱり狙ってやがったか」

 

「うん、おっさん以外大したことなさそうだったし、ここまでついてこれるのはおっさんくらいかなって」

 

「疲れたふりもあのペースも手加減したものだったってか、あーこわこわ、今時のガキってみんなお前みたいなのか? だとしたらおちおち子供も作れねぇな」

 

「おっさん、結婚してんの?」

 

「ああ、息子はまだいねぇがな」

 

「へー、じゃあ子供出来たらまた村に来なよ、歓迎するよ」

 

「ははっ、んだそりゃあ……考えとくわ」

 

「ん」

 

 

 肩車し、雑談に興じながら歩く二人は、まるで親子のようであり、その姿はさきほどまで殺し合っていたとは思えない様相であった。

 

 まぁ、この世界の人間関係ってのはだいたいこんな感じだから慣れるしかないね。

 

 

 

 

 

 この世界には、ルールがある。

 

 一つは言わずもがな──『決闘(デュエル)』。

 子細は今度話すとして。

 

 簡潔に説明するならば、契約である。宣誓と言い換えてもいい。何かを賭けて殺し合うのだ。勝った方が報酬を手に入れる。そうして、殺された方、負けた側だが……これがどうして『決闘(デュエル)』が終われば生き返る。

 

 『決闘(デュエル)』は割と頻繁に行われている。よって殺し合いが日常、なんてこともある。死なないのだから、毒や薬、人体実験、強さ比べ、はてはアブノーマルな『ピー』まで、やりたい放題である。

 

 まぁ、神法教の方々は神様が見届ける決闘をそんな不埒な目的に使用してはならないと戒めているのだが、人の欲望に鍵を掛けられない。

 

 この世界は法の神というただ一人の神様によって管理されている。これは与太ではなく真なる事実。まぁ、だからと言って庶民には関係ないのだが、この世界では戦争も、略奪も、あるゆる悪は『決闘(デュエル)』によって決まる。法の神様は存外脳筋なのだ。力こそすべて、強者こそが正義。否、勝った方が正義なのだ。

 

 ゆえに、強くあれと。神は望む。神に頼ることなく、自身の求むる物は自身の力で手に入れろと仰せだ。

 

 もう一つは先ほどちろっと話に出た。『運命の相手』

 そうしてあと一つ、この世界は絶対の理によって定められているらしい。

 

 らしいというのはそのルールを未だもって、この世界が生まれてから一度も行使されたことがないからだ。

 

 

 

 曰く、──神に『決闘(デュエル)』を申し込み勝った者は──次代の神なりけり、と。

 

 

 

◆◇◆

 







 (ルール)

 ・『信託者』の『決闘(デュエル)』を断ってはならない。
 ・『運命の相手』を見つけなさい。
 ・法のもと、自由に健やかに生きなさい。New!



 この世界にレベルはない、ステータスはない。
 しかし魔法はある。
 また、攻撃手段の主流は無手である、剣を扱うものもいるが、法によって銃と剣の力は極端に下がっている。生半可な腕では人を殺せない。『決闘(デュエル)』で勝てない。
 魔法は例外であるが、まともに魔法を扱えるのは貴族のみ。それにしたって身体強化魔法が主流である。神様に似て神の子らは脳筋が多かったりする。



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