ただ、あなたのために。

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ある機械人形の走馬灯

「ガラテア」という名は、旧文明の神話に登場する人形の名前らしい。

 

 無機物の体を持ち、命を持たず、それでも創造主の愛を一身に受け、最後は新たな命の器となった。

 

 それを知った時、わたしは密かにその名を名乗ることにしたのです。

 

 ***

 

 わたしが、消えていく。

 

 悪意に晒されたこの体から、魂を逃がすことはできた。あとは、わたしが身代わりに消えていくだけ。

 ──だというのに、いやに意識がはっきりしていくのは、これが走馬灯というものなのだからでしょう。

 

 わたしは機械人形。やがて、神の躯となるハズだったモノ。我が創造主に愛され、再臨を心から願われた魂の、器。

 そんなわたしが、“ガラテア”を名乗るのは烏滸がましいでしょうか。

 

 あなたは、きっとわたしを見てはいなかったのでしょう。あなたが見ていたものは、わたしの向こう、わたしという存在の先にいるハズの、(イヴ)。わたしは、ガラテアを名乗りながらついにガラテアに成ることはできなかった。

 

 でも、それでいいのです。

 

 創造主よ、わたしは貴方の心を知っています。

 

 暗く、冷たく、閉ざされている。

 しかし同時に、優しく、強く、慈愛に満ちているのです。

 そんなあなたが心から愛したイヴという女性。

 わたしが生み出された理由。

 

 ──一体、どんな(ひと)だったのでしょうか。

 

 ついにわかることはありませんでした。

 わかりたかったのかすらも、わかりません。器なりに、これから受け入れる魂について知っておきたかったのか、それとも、あなたに愛された人は、どんな人だったのか。それが気になったのか。

 今となっては、その疑問に大した価値も無さそうです。

 

 そういえば。

 魂を逃がす瞬間、ほんの刹那の間だけ、それに触れることができたような気がします。

 

 そうか。

 

 あの、どこまでも明るく、暖かく、どうしようもないくらい優しい光は。

 

 あれが、わたしに宿るはずだったものなのですか。

 

 ──。

 

 ──あぁ、なんと素敵な兄妹なのだろう! 

 

 消えていくことに、恐怖はありません。わたしは、わたしの守りたいモノを守り、護りたいヒトを、護ったのだから。

 

 時間が、来ました。

 

 この体を包む悪意は、わたしがしたことに気づいてはいないようです。ここにいるはずの魂を消し去ろうとしている。

 

 そんなことはさせない。ただの機械の身なれど、この魂はわたしが護り抜く。

 わたしは、最期まで闘ってみせましょう。

 

 創造主よ。(イヴ)よ。

 

 わたしは、あなた達の力になれたことを、幸せに思います。

 

 

 

 

 


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