ゆゆゆ世界にダクソの主人公をぶち込んでみた。(未完) 作:イロマス
まあ今回は早く投稿できたから良かったけど。
「──無理だと?もう一回言ってくれるか?」
「北海道への救援は無理だと言ったのです」
大社。その中で四国の運営をしている神官が集まる場、その中央で灰と神官は向かいあって話している。
「なぜだ、北海道に居る勇者や人々を救えば四国の復興、新たな戦力などメリットしかない筈だ。それに、今も苦しんでいる人々を見過ごすわけにはいかん」
「確かに北海道にいる勇者を四国へと迎え入れればバーテックスに対する兵力としては大いに見込めます。しかし、時間がないのです」
「……っ!」
「徐々に増していくバーテックスの数、それに比例するように勇者達は傷を増やしていく。そんな状況で遠征など……四国が保ちません。それに、諏訪の一件もあります。北海道もそう長くは保たないでしょう、ならば少しでも既存の勇者の強化に努めるべきかと」
それは遠回しの見捨てる宣言。確かに神官の言うことは理解できる。今できる最善、最短の選択肢はそれだけだと灰自身も痛いくらい分かっている。現に過去に同じ選択を何度もした身だから重々承知している。しかし、納得できない。
灰の耳には今も安心した少女の声がこだましている。そんな彼女の期待を安心を、裏切るのだ。
「……ならば、私だけが行くというのは……どうだ?」
神官達に動揺が広がる。
「私は不死だ。何度死んでも復活できる。ならば私一人が北海道まで行き、そして北海道の人々を連れて戻る。これならば勇者は誰一人欠けずにいられる」
「それこそ以ての外。貴方は自分自身の価値を分かっていない……!貴方という存在が勇者に、ひいては四国にどれ程の影響を与えているのか……分からないのですか」
信じられないと言わんばかりに詰め寄る神官に灰も負けじと睨み返す。流石にこれは不味いのかと思ったのか周りの神官達は狼狽え止めようと立とうとする。その時、神官達の後方、出入り口から気怠げながらも芯の通った声が場を支配する。
「血迷ったか?お前ともあろうものが」
「──烏丸、鷲尾」
「烏丸!鷲尾!この大事にどこに行っていた!」
「いやいやーちょっと調べ物をね?遅れた事に関しては謝りますよ。ただこっちもこっちで手を離せないので、なのでこの事は許してくれると」
「右に同じく」
「貴様ら……!」
青筋を浮かべながら口を開閉させる神官。大社きっての問題児相手にしていればムカっ腹が立つのも仕方ない事だろう。
「まぁそこの神官の事は放っておいて、おい灰」
「なんd──ガッ!」
足早に近づいた烏丸は腰の入った渾身の一発を灰の腹にかます。一切警戒していなかった灰は突然鳩尾を襲った鈍い鈍痛に堪らず膝を折る。
「本当はもう三発殴りたい気分だがこれぐらいで我慢してやる。お前、なんで私がここまで怒ってるのか……分かってるか?」
「ぐぅ……ハッ……」
「苦しくて喋れないか。ならこっちで理由を言ってやる。あの神官が言ってたように、お前は自分自身の価値を分かってなさすぎる。なんで千景があそこまで勇者に拘るか、どうして命をかけて戦いに身を投げるか……お前はそれを考えた事があるか?」
「何を……」
「ここから先は私の口からは言えない。お前自身で解れ」
よろめきながら立ち上がる灰の胸倉を掴みながら烏丸はずいっと顔を近づかせる。
「
「ま、待て、まだ話は……!」
強引に部屋の外に出された灰は尚も食い下がろうとする。しかし無情にも目の前の扉は閉じられ、外には灰一人が残された。
遠征は保留……そう事が進んだらどれだけ良かっただろう。しかし結果は遠征拒否。北海道に今でも戦っているであろう勇者の思いを、期待を無下にしてしまった失望が灰を蝕む。もう無駄だと分かった灰は重い足取りでこの場を去っていった。
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「食らえ友奈!タマの必殺技ッ!」
「こい!タマちゃん!」
「なあ杏、一つ聞きたい。球子のアレは……なんだ?」
「えーっと、タマっち先輩、自分だけ盾で守り特化な事に怒っちゃって。タマも若葉達みたいな必殺技を作る!って言ってあの調子です」
そう言ってまた目線をやる先には球子の扱う円盤を模した模型を振う球子の姿があった。対する友奈も同じように籠手を嵌めており、腰を低く、しかし防御の姿勢ではなく攻めの姿勢で待っていた。
遊びなどではなくマジも本気でやっている姿に若葉はなんとも不可解といった様子で首を傾げている。
「くっそー!友奈や若葉はカッコいい技を持ってて良いよなぁ!タマももっと派手な技が欲しいんだよ!」
「なあ、段々ただの愚痴になってきてないか?本当に必殺技の特訓なんだよな」
「はい……多分」
必殺技を作る名目で単純に八つ当たりをするだけなのでは?と若葉は訝しんだがああいうのは深く考えない方がいいなとそっと目を逸らした。
「──千景?」
ふと逸らした先には木陰の下で黙々と大鎌を扱う千景の姿があった。その表情は微かな焦燥が混じっている。
隣の杏に断りを入れた若葉はそっと千景の近くまで歩み寄り、千景の動きを観察する。
淡々と、しかしただの
「──綺麗だ」
「っ、誰……って、乃木さん。……何か用かしら?」
「すまない、邪魔をするつもりは無かったんだ。ただ、千景の動きが綺麗で……見惚れてたんだ」
「……そう」
率直な感想を言えば千景はふい、と顔を背ける。心なしかその頬は朱に色づいている様に見える。
そのままそそくさと大鎌を仕舞い、この場を去ろうとする千景を若葉は呼び止める。
「なあ、千景。少し話さないか?」
「……私とあなたが話したところで、何の得があるの?」
「得とか良いとかそう言うのではなく純粋に話したいんだ。私と千景は知り合ってそれなりに経つが未だに二人で話した事がなかっただろ?だからだ、私はもっと千景を知りたいんだ」
「……少しよ」
「そ、そうか!ありがとう!」
二人揃って木陰に腰を下ろし、会話を始めようとする。
「………」
「………」
「……友奈達、頑張ってるな」
「そうね」
「…………」
「…………」
(会話が続かない!)
そう、上手く話が弾まないのだ。言葉のキャッチボールをしようとしても投げ返されるボールは正に豪速球。これにはコミュニケーションに自信のある若葉も流石に狼狽える。さすがに自分から誘った手前、何も言わずにいるのは悪い為、どうにか話そうと話題を探していると、千景があっ、と呟く。
視線の先を見れば特訓していた球子が友奈のカウンターをモロに食らい吹っ飛ばされている姿があった。
「吹っ飛ばされたな」
「吹っ飛ばされたわね」
「それにしてもぶっつけ本番にカウンターを合わせられる友奈は凄いな。ああいうのを天才と呼ぶんだろうな」
「当たり前でしょう……高嶋さんは凄いもの」
自慢げに言うその姿を若葉は意外そうな表情で見つめる。その時、若葉の脳はある事を閃いた。
「なあ、一つどうしても気になっていたんだが……
瞬間、千景の目の色が変わった。
「そうね、高嶋さんは確かに戦闘での格闘術は誰よりも秀でているわ。けれど灰さんも負けないぐらい経験豊富で単純な力勝負で終わる訳がない。高嶋さんの天才性か、それとも灰さんの経験からなら熟達した技量か……簡単には決められないわね。ただ、もし決めるとするなら、勝ちは灰さんに傾くわ」
「なるほど」
いつもどこか達観じみた空気を醸し出す千景がここまで熱意を表に出しながら喋るのは若葉にとって初めての光景であった。故に若葉は一瞬戸惑いはしたが、絶好のチャンスと思いこのまま会話を広げようと口を開く。
「よく二人を見てる……好きなんだな、友奈と、灰さんが」
「好き……そうね。私は二人が好きよ……でも、まだ自信がない」
そう言って俯く千景に対して若葉は何か言おうとして口を紡ぐ。灰や千景を見出した巫女に千景の境遇を耳にした事があり、そのどれもが若葉とは程遠い隔絶された、理不尽に晒され悪意に満ちた日々だったという。
そんな悪意に浸され続けた千景はいつしか自己肯定感は最低にまで落ち、現在も最低を歩み続けている。
「んぅ……なあ、誰かを好きと思える気持ちに自信もなにも要らないと思う。それが心の底からの気持ちなら尚更。千景が心から思うのならそれは正直に伝えれば良いと思うぞ?」
「……簡単に言えるわね」
「う、そうか?すまん、こういうのは慣れてなくて……で、でも千景はもっと自信を持っていいと思う!人一倍努力しているし、誰よりも周りを見て冷静に動ける、それにび、美人だし……な」
「っ……そ、そう」
つい感情にまかして口走った内容に千景はバッ、とそっぽを向き、若葉は遅い羞恥に襲われ、顔を両手で隠す。
やってしまった。そんな後悔が若葉の心中に飛来するが、隣に座る千景は然程嫌がるような様子を見せず、逆に満更でもなさそうな表情が指の隙間から見える。
(ああ、くそ。こんな恥ずかしい事になるなんて!千景は嫌がってなさそうなのが救いだが……この空気、居た堪れない。誰か、助けてくれー!)
変な沈黙が痛い程に若葉の心をすり減らしていく。どうにかしてこの気まずい空気を破こうと頭の回転をフルに稼働し、方法を模索していると。
「あーっ!若葉と千景が木陰で休んでる!ズルいぞ!タマも休ませろー!」
「タマっち先輩、自分から始めた特訓なのに……はぁ」
「でも私はすっごい楽しかったよ!誰かと何かを作るって楽しいね!」
溜まった疲労は何処へやら、全速力でコチラへ駆け寄る球子に若葉は内心良くやったと歓喜した。
「……球子」
「……土井さん」
「ん?どうしたタマを見て?」
「「良くやった」わ」
「????」
「どうしたのかな?アンちゃん」
「さぁ……?」
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『そう、ですか。覚悟はしてましたけど……クルものがありますね』
通信機越しから聞こえる落胆の声にすまない、と一言返す。
「私の力不足だ。強引にでも意見を押し通せば良かったのだ」
『無理は、しないで下さい。私はそこまで気にしてませんし、それに、誰かと話せるだけ儲けものです』
「そうか……。それなら、良かったよ」
コチラを案ずるような声に灰は自分の至らなさ、不甲斐なさを実感する。
『あー、辛気臭い会話はやめにしてもっと楽しい話しましょう』
「……そうだな。ではまず自己紹介から始めるとするか。名前を知らないままではやりづらいだろう」
『ですね……私は秋原雪花って言います。北海道で勇者やってます』
「知っているよ。こちらでも既に四国外の勇者は何人か認知している」
『知っていたんですね、てか他の勇者もいたんだ……』
暗い空気を吹き飛ばすために始めた会話だが思っていたよりも話が広がり、二人はいつの間にか和気藹々と話していた。心なしか灰の表情も和らぎ、緊張が解けているように見える。
「そういえば、通信が初めよりも安定しているようだが」
『あー……あの時はバーテックスがタイミング悪く襲ってきたせいで通信に支障が出ちゃったんですよねー。まあ今はバーテックスも来てないし通信機にも不調は見当たらないから問題なしですよ』
そんな感じに二人は会話を楽しむ。自分自身の事、周りの友人達の事。他にもいる勇者の事。一瞬の間も無く話し続ける様はまるで別れを惜しみ、必死に記憶に残そうとする者のそれだった。
一時間ぐらいだろうか、また徐々に増えていくノイズに遂にこの会話も終わりなのだと二人は内心察する。
『……これ以上は難しそうですね』
「そのよう、だな。今日君と話せた事は忘れはしないよ」
『そんな大袈裟な……また話せるかもしれませんし、そんな悲しくならないでください』
「──だな。また君と話せる事を願う」
『……私も、また楽しく話したいですね。次は灰さんの言う友人達と大切な人も入れて……じゃあ、通信を終わります』
そう言って雪花は通信を切った。通信終わりの余韻が部屋内を満たす。
冷め止まぬ興奮に似た感情に困惑とも歓喜ともどちらとも取れる微妙な表情をしながら椅子の背もたれに体を沈ませる。
「まだ、生存者は生きている……諦めずに」
ならば自分もこんな所で立ち止まっているわけにはいかない。雪花や他の県にいるであろう勇者もきっと今も戦っている。ウジウジと理由や過去計りに囚われていたままでは不死人失格だ。
「……まずはやれる事をやらねば」
この通信が最後の通信にならないように、せめて自分の役割を見つけてそれを果たそうと灰は窓から見える休憩中の千景達を見ながら決心する。
しかし……この通信が正真正銘、文字通り北海道との最期の通信だとは灰はこの時は思いもしていなかった。
次話からは一気にストーリーを進めていきたいなー。
我々ぐんちゃんを幸せにする会はぐんちゃんのこれからを応援します。
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