ゆゆゆ世界にダクソの主人公をぶち込んでみた。(未完) 作:イロマス
あとなんか知らない内にお気に入り50件になっててビックリしました。お気に入りありがとナス!
やっと、やっと次話からのわゆ本編に入ります。灰さんの胃に穴が空きますね(物理)クォレハ。
夜。ひっそりとした山の中を灰は険しい雰囲気で歩いていた。灰は時折空を見上げては何かを憎々しげに呟き、また歩みを進める。
灰は今、微弱ながらもとても懐かしい気配を空から感じていた。例えるなら、そう。神気のようなものを灰は全身で感じていた。気配を感知するたび灰は己の中にある簒奪者としての魂が狩れ、奪えと叫び声をあげ、その度に灰はダガーで己を傷つけ、律していた。
かなりの血を失い、気怠さと目眩が灰を襲う中、遂に山の頂上につき、真上を見上げる。頂上は木が生えておらず、視界を遮るものは無く、空が一望できる。
────爛々と光る夜空が目に入る。
いつもなら感嘆の声を上げ、朝まで見続けてしまうだろう。しかし、今はこの夜空が、いや、
今、この瞬間で己に出来ることは何もない。灰はそれを自覚し、悔しげに拳を握る。しかし、近いうちにあの敵は何かしらのアクションを出すはずだ、それまで堪え忍ぶのだ。
灰はもうここまでか、と血に濡れたダガーを喉元に持っていく。血も無くなり、立つのも辛くなってきた。家まではかなりの距離がある。どうするか?簡単な話だ。自刃する、ただそれだけの話。灰は不死人の死んだら篝火に戻る特性を利用した。
「神よ……憎き神よ。奪い、殺してやろう」
灰はソリットの奥から
❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀
灰にとって朝の狩りは灰を灰たらしめるものの一つだ。いくら神の時代は終わり、あの様な惨劇は無いとはいえ、今の今まで戦いにしか身を置かなかった灰にとって今の平和は少々むず痒い。なんというか、落ち着かないのだ。身体や魂にまで染み付いた戦闘への高揚感はそう簡単には拭えず、彼はそれを獣を狩る事でどうにか補っていた。そう、言うなれば身体は闘争を求める。つまりそういう事である。
しかし、いくら狩りを好むとはいえ流石に生態系というものがあり、灰はそれを壊さない程度に狩りをしている。だが、そんな彼でも狩りの中でとてつもなく憎む存在がいる。そう、熊だ。
神の時代。灰は長く生きてきた。そして様々な存在を殺してきた。不死人、巨人、竜、果てには神すらも殺した彼は己の力に多少の自信がある。
───だがなんだアレは、可笑しくないか?
一度走ればその巨大に似合わない速度で走り、その太い腕から放たれる一撃は灰をかなり焦らせた。挙句の果てには黄金の樹が生えた地で貴族のふうをした人間が巨大な熊に変貌するという存在しない記憶まで出てきた。今では灰の中の嫌いな獣ランキングTOP3にまで入ったぐらいだ。一位は決まっている。犬だ。
故に灰は狩りの際は過剰とも言える程の武器をソウルに仕込み、狩りに赴く。もちろん、熊に出くわしたら全力で逃げる所存だ。
そんな灰は現在山の中を歩き、手頃な獣を探していた。獣を探すのに灰はソウルの業を使わない。彼の中で狩りの際に信頼出来るのは己の直感と技だと信じているからだ。確かにソウルの業は良いものだ。しかし、いつ消えるか分からぬ物より決して消えぬ己自身が一番良い事は決まっている。
「う~む。見つからん」
しかし探せど探せど一向に姿を表さない獣に灰は頭を悩ませた。最近は獣の動きが消極的になっている。これは単純にそういう時期なのか、それとも何かの前触れなのか。
森の中でそんなことを考えているその時、奥から何やら騒がしい声が聞こえ、何事かと見に行ってみれば前回鹿を狩った小川につき、奥には子供達が釣りをしている姿が見えた。
子供達は各々が釣り竿を持ち、小川に投げている。子供特有の天真爛漫な笑顔をばら撒きながら友人達と釣りをする子供達を灰はそれを木々の奥から複雑な思いで見ていた。
人の、子供の活発な姿は見ていて飽きない。しかし、千景の今を作ったのが彼らだと思うと落胆の気持ちが渦巻く。
「なあ勝負しようぜ!!一番デカいやつ釣った奴が勝ちで一番小さいやつを釣ったやつは俺達全員にアイス奢りね!」
「はぁっ!?ちょっと今お金無いんだけど!俺最下位だったらヤバいじゃん!」
「嫌だったら勝てば良いんだよ!そうすりゃあ金の問題はないじゃん」
「う〜……あ~、やってやるよ……勝てば良いんだろ?やるよ!」
「よく言った!………しゃあっ!やるぞ〜!」
そう言って各自が釣りを始める姿を彼は悲痛な表情で(バイザーに遮られて見えないが)見ていた。
───あの子供達は千景に対して暴行を加えた奴らなのだろう。そしてそれに何の違和感も感じずに生きていく。
だが、嗚呼。それが人の、今の彼らの人間性なのだろう。
否定はしない。彼らのソウルの、人間性の内からくる行動なら誰がそれを咎められるだろうか。それは己の切っては切れぬ性……なのだから。
灰は誰にともなくそう心の中で呟きながら着た道を戻る。いつの間にか狩りに対する興奮が鳴りを潜め、今灰を包むのはなんとも後味の悪い感覚だった。
灰は背後で笑い声を上げる子供達を背に、振り向くこと無く去って行った。
❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀
「────貴公」
「あ、灰さん」
山から降りた灰の目に映ったのは所々に青あざが見える千景だった。見れば服も少し汚れている。それになにやら手に袋を持っており、心なしか悲痛な表情をしているように見える千景に灰は声をかける。
「その傷は………彼らにつけられたのか?」
「大丈夫………いつもの、ことよ。慣れてるわ」
なんてことのないように振る舞う千景。灰は千景のソウルから発せられる《ゆらぎ》を見つけ、黙って千景の下に行く。
「………灰さん?」
困惑する千景をよそに灰はソウルから取り出した聖職の聖鈴と呼ばれる鈴を取り出す。
「───回復」
呟く灰を中心に温かな光が溢れる。それは千景にも降りかかり、千景は何事かと身を竦ませる。
灰が起こした光の変化はすぐに起きた。千景の青あざが消えていったのだ。元からそんなものはなかったかのように綺麗サッパリと青あざや周りの傷は消えていく。
「これ………灰さん。いったい」
「奇跡。私の居た所ではよく見た業だ。さぁ、来たまえ。何か出せるかと言われればまぁ、出せるものはあまり無いが」
そう言って気まずそうにガリガリと兜を掻く。千景はそんな灰を見て少し表情が緩んだ気がした。
「灰さん………。ありがとう」
「………なんて事はないさ…………貴公にそんな傷は似合わんよ」
私も甘くなったな。とどこか嬉しそうに、寂しそうに呟き、歩いていく。千景もそれに追従するように灰の後を追いかけていった。
❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀
縁側に座る私の頬を爽やかな風が撫でる。このボロ家はお世辞にもゆったりと寛げるスペースは無いに等しい。唯一あるとしたら今いる縁側ぐらいだ。だが、縁側だけで事足りると私は思っている。貴重な物や場所を見たらそれにとてつもない価値を見出すみたいなものだ。
時刻は多分12時を過ぎたところだろう。ちょうど太陽が真上に位置し、私のお腹が何か食べ物をと声を上げ始めている。
「お昼にしない?灰さん」
「ん?あぁ。食べて良いぞ」
「灰さんは………食べないの?」
「私は……不死故に食べずとも生きてゆけるからな。要らんよ」
灰さんはそう言って笑うが私は少々むかっ腹がたっていた。私が灰さんを差し置いて無遠慮にご飯を食べるのは違うと思うし、それはなんだが灰さんに負けた気がする。まぁ、その、子供特有の理不尽な怒りが私を包んでいた。
精一杯の抗議の視線を送れば灰さんは何がなんだか分からないように狼狽える。それがどうにも可笑しくて吹き出しそうなのを我慢する。
「うぅむ……。貴公、なぜそんな目で私を見る。まあ、慣れてはいるが……いや貴公、視線を強くするのを止めたまえ、慣れていても知人からそんな目で見られるのは少々心にクル」
「………分からないなら別に良いわよ………」
「いや待て、少し、少し時間をくれないか?貴公の心中を理解しよう。………う~む」
そう言って顎に手を当てて考え込む灰さんに私はとてもゾクゾクしていた。私の為にこんなに考えてくれている。それはとても嬉しくて、今の私には甘い蜜のようなものだった。
「………灰さん。時間切れよ。…………はい」
「な……んだと。………?これはいったい」
もう少し灰さんの姿を見ていたかったけれど流石にこれ以上は可哀想かと思い、袋からあるものを出す。
「おにぎりよ………コンビニで買ってきたの……でも、色々あって、こんな形になったけど……」
私の手の中にあるおにぎりはぐちゃぐちゃに潰れており中身も少し出ている。残念ながら食欲が湧かない形になっていた。
多分というか絶対に私のこれは不躾にあたるだろう。しかし灰さんは怒る素振りも見せず、逆に恐る恐るといった感じでおにぎりを手に取る。
「…………」
灰さんは固まったようにピタリと動きを止め、すると兜を被ったままおにぎりを口に運ぼうとする。
「………えっ?灰さん……!」
慌てて止めれば灰さんは何が可笑しいのか分かっていなさそうに首を傾げる。
「どうした?何か変なことでも……」
「灰さん………ご飯は、兜をしたまま食べる物じゃ……ないの………兜は外して」
「そ、そうなのか。今まで気にしてはいなかったが」
不死に慣れすぎていたのか、と呟く灰さんは何処となく哀愁漂う姿でおにぎりを見つめていた。
────ますます灰さんがどんな生活を送っていたのか気になる。
「そうか、そうだよな。もう、あの時代じゃあないのか………」
「どうしたの………灰さん」
「いやなに、ククッ……私と君たちの違いを改めて思い知っただけさ。そうだな、これが俗に言うジェネレーションギャップというモノか」
兜越しから失笑する灰さんは一度おにぎりを置いて、その兜に手を掛ける。
カチャッ、と耳触りの良い金属音を鳴らして兜は抵抗なく外れた。
「ぅん……。久しいな………兜をずっと被っていたからなのか色々と慣れん。………暖かい、そして、風が心地よい。嗚呼、なんと、素晴らしい事か」
灰さんの素顔はお世辞にも美顔とは言えないものだった。どこまでも普通。これといった特徴のない、唯一あるとしたら今の灰さんのようにくたびれた印象を受ける褪せた灰色の髪だ。
「ん、どうした貴公。なにやら面食らっているようだが」
「……灰さんってかなり歳をとってそうな印象が、あったから………思ったより若くて、驚いたわ」
「不死になったと同時に私の成長も止まってな。怖がらせてしまっただろうか」
「───もう、慣れたわ」
「そうか」
「………」
「………」
とても、とても気まずい。私は元から話すのが苦手だ。隣に座る灰さんも多分私よりかはマシだと思うが話すのが苦手な部類に入るだろう。お陰様で気まずい雰囲気が生まれてしまっている。
話したい。話したい、が、何を話せば良いんだろうか。今日ほど人とのコミュニケーション能力の低さに歯がゆい思いをしたことは無いだろう。
───何か話さないと。
「お………」
「お?」
「おにぎり………美味しいわよ、ね?」
一瞬の沈黙。のち、私は膝の間に顔を埋めるようにして蹲る。何を言っているんだ?馬鹿なのか?まだ食べてすらないというのに同意を求めてどうする。
穴があったら入りたいとはこのことを言うのだろう。灰さんの視線がいやに痛い。心配そうに見ないでほしい。せめて、盛大に笑ってほしい。じゃないと本当に虚しくなる。
「おいおい、なぜ蹲る?どこか痛いのか?どうする、回復いるか?」
「そういうのじゃ……·ないのよ………!」
「お、おい、叩くのはやめてくれ、いや、別に痛くはないが貴公の手が怪我をするだろう。知人が私のせいで傷つくのは見たくない」
己の衝動の赴くまま灰さんを叩き続ける。コツン、コツン、と可愛らしい音が鳴り、私の右手も限界に近づき、ようやく叩くのを止める。少々右手が赤くなっているがそれはきっと羞恥のせいだと思う。きっとそうだ。
「………貴公。笑っているのか?」
「────ぇ?」
咄嗟に顔を触れば口角が微妙に上がっている。自覚していなかったが灰さんから見て私は笑っているらしい。
笑う、なんて何時ぶりだろうか。いや、そもそも笑ってすらないのかもしれない。だとすれば今日が初めてになる。でも、それはそれで良いのかもしれない。
「………フフっ」
「ちょ、ちょっと……笑わないで、灰さん」
「良いじゃあないか。貴公の笑う姿は見たことがなかったんだ。これぐらい良いだろう?」
いたずらっぽく笑う灰さんに碌な反応もできず、ただ熱くなる顔を冷まそうと必死に心の中で唱える私に灰さんは笑みを更に深くする。
「さて、貴公の表情も見れたことだ。貴公の持ってきた飯でも食べようじゃあないか」
「………灰さん……!」
灰さんのその飄々とした雰囲気に多少の苛つきが私の中に芽生えるが、灰さんは素知らぬ顔でおにぎりの袋を破く。
中に入っている梅が灰さんの手を汚す。しかし灰さんは何食わぬ顔でおにぎりを顔の前に移動させ、なにやら小さく唱える。
「どうしたの………灰さん」
「古い、友の言葉さ。彼とは会うたびに祝杯を上げててな。今では誰かと何かを飲むとき、食すときは友の言葉を借りると決めている。誰かと何かをするのは無限にみえて有限だ。だからどれだけささやかな物でも感謝するのだよ」
「………」
「はは……。長々と話してしまったな。さて、食べようか」
そう言っておにぎりを食べる灰さん。その際になぜか灰さんの後ろに花が何輪か咲く光景が見える。私はそれを横目に手の中にある潰れた梅味のおにぎりを頬張る。
「……おいしい」
初めて誰かと食べたおにぎりの味は仄かに甘く、心休まる感じがした。
今回の話は少し駆け足過ぎたかも、後々修正するかもしれません。そして何気に灰さんの初デスが見れましたね。
そして、次からは本編に移りますが少々時間が飛びます。そこの所ご了承ください。あと天の神さんはお祈りの準備をしておいてください。
我々ぐんちゃんを幸せにする会はぐんちゃんのこれからを応援しています。