ゆゆゆ世界にダクソの主人公をぶち込んでみた。(未完)   作:イロマス

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 一言。次から本格的に若葉達とバーテックスとの戦いが始まります。


第六話 顔も知らない友達、芽吹く種。前編

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   勇者とは土地神から力を貰らい、戦う者だ。

  しかし、年端も行かぬ少女に背負わせて良いのだろうか。

 

  私はアレを一種のソウルの業と予想している。

  もしそれが本当だとしたら、私は。

 

  そういえば最近イヤに胸騒ぎがする。

  奴らが攻めてくる日も近いのだろうか。

   

    勇者御記

    西暦ニ〇一八年八月

     火の無い灰

    

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 灰にとって夜明けは神聖な瞬間だ。朝や昼とは違う、冷たさの中に流れる仄かな暖かさはとても心地良く、素晴らしいものだ。

 今日も灰は昇る朝日に向かって太陽賛美の構えを送る。ご丁寧に友の装備を着込んでだ。太陽に向かって奇妙な構えを取る灰は、一見変人の類かと疑われるが、これは灰なりの太陽と友への敬意と親愛の表れなのだ。

 

「───太陽万歳!」

 

 朝日に吠える灰の声。雄々しいその声に、丸亀城に住む人は活動を始める。初めは不審に思われたり、大社のトップからやめるよう釘を刺されたが、今では一種の目覚ましとして、丸亀城の皆から親しまれている。

 約一時間みっちりと太陽賛美をやり通した灰は、至極満悦な顔で、丸亀城へと帰っていく。

 

 

 太陽もそれなりに昇り、丸亀城だけではなく、四国中の人々が活動を開始する時間、灰は一人丸亀城に作られた放送室に設置された椅子に足を組みながら本を読んでいた。

 本の表紙には花や可憐な少女が書かれており、どちらかと言うと女性向けの本と見える。というかまんまラブコメ小説だ。

 鎧姿の男がラブコメ小説を読むという、違和感しか無い光景なのだが、とうの灰が真面目な様子で読んでいるため、これを他人が見たら新手の不審者か、コントかと見間違えてしまう。街でやったら職質されるだろう。

 灰からすれば別にどうって事もない為、不動、不干渉を貫く所存だ。

 

「───む、来たか」

 

 扉越しから二人分の気配を感じた灰は、ようやくと言った様子で頭を上げる。引き戸特有のやかましい音を鳴らしながら、若葉とひなたが入ってくる。

 

「おはようございます灰さん」

 

「おはようひなた、若葉。おや?二人は先程まで何かしていたか?」

 

「あっ、分かっちゃいますか?えぇそうです、先程少し若葉ちゃんの耳かきをしてたんです。とっても可愛かったですよ〜?写真に収められなかったのが残念です」

 

「ひ、ひなた………むぅ」

 

 なるほど、どうりでひなたの顔がツヤツヤとしているわけだ。それにしても耳かきか。今度千景に頼んでみようか。灰は密かに決心した。

 

「そう言えば、灰さんはさっきまで何か読んでいたようですが………」

 

「これか?杏から読んで下さいと頼まれてな。読んでみたんだが、少々私には理解し難い世界だな。だが、脳を空っぽにして読めるという点ではこの小説は良いものだ」

 

 最後に小説を一通り流し読みした後、パタンと小説を閉じる。

 それを見た若葉は放送室の無線機のスイッチを入れ、何処かへ通信を絆ぐ。

 しばらく雑音が流れると、少女の声が通信機から発せられる。

 

『……諏訪より、白鳥です。勇者通信を始めます』

 

「香川より、乃木だ。よろしくお願いする」

 

「同じく火の無い灰だ。よしなに」

 

 さっそく若葉と通信先の白鳥と呼ばれる少女は各自の近況報告を始める。灰はそれに混ざる事はせず、後ろから二人の会話を聞くだけに留めた。

 白鳥は、四国から離れた長野県諏訪湖に張られた結界の中で、少数の人達と暮らしている。諏訪以外にも人の生きられる生存圏があることは大社や灰も認知しているが、今に至るまでコンタクトを取れた例がない。

 白鳥と話している若葉の表情に影が差す。話の内容的に白鳥の住む諏訪の生存圏が狭まったか、それとも……。何にせよ、先は長くないだろうと灰は憐れな目で通信先の白鳥を思った。

 

「……ところで、白鳥さん」

 

(流れ変わったな)

 

 先程までの深刻な面持ちはどこへ行ったのか、一転変わって好戦的な笑みに変わった若葉に灰は何かを察する。

 

『えぇ、私もそろそろ決着を着けたいと思ってました』

 

「『蕎麦とうどん、どちらが優れているか、を!』」

 

(やはりか、ひなたも分かってたみたいだな)

 

 諏訪との通信が出来てからというもの、事あるごとに若葉と白鳥はうどんと蕎麦どちらが優れているかを言い争っていた。その度に灰に飛び火する為、やるなら自分を除いてやって欲しいと常々思っているが、この二人は灰の気持ちなど、どこ吹く風で各々の主張を始める。

 

「貴様は香川のうどんを食べた事があるのか?あの玄妙な歯ごたえ、輝かんばかりの純白さ、毎日三食食べても飽きない奥深い旨み……蕎麦など及びもつかん」

 

(若葉……完全にスイッチ入ってるなぁ……白鳥も譲らんなぁ……まあ、己の好みに妥協は許せないのは分かる私も己の好みを理解させるためによく侵入していたなぁ……懐かしいなぁ)

 

 若葉達の一進一退の主張に過去の自分の残滓を見た灰は微笑ましい者を見る目で二人の会話を聞いていた。

 

「クッ、なかなか譲らないな」

 

『乃木さん、あなたこそ……!』

 

「かくなる上は、灰さん!」

 

「うどんか蕎麦どっちが良いかだろ?」

 

『はい、ここまで膠着状態が続いてしまうと私と乃木さんだけではどうにもなりませんので』

 

 ならするな、と言いたいところだが彼女達の数少ない触れ合いの場を無くすのは忍びない為、渋々といった感じで通信機の近くまで寄り、この争いに終止符を打つことにした。

 

「───ラーメンだ

 

「『……なっ!』」

 

「そんな、灰さん!私達が今まで築き上げてきたうどんとの絆はどこへ行ったというのですか!嘘だと言ってください!」

 

『そうです!それに、ラーメンなんて塩分と脂質の塊です!蕎麦は動脈硬化や生活習慣病の予防になる完璧な健康食品なんですよ!?蕎麦の方が良いに決まってます!』

 

「何を言っている!うどんが───!」

 

 やらかした、そう思っても時すでに遅し、今まで以上にヒートアップした論争に天を仰ぐ。結局、蕎麦とうどんを巡った論争は、チャイムが鳴るまで続く事になった。

 

 

❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀

 

 

 夏の暑さをその身に感じながら教室の中を見る。

 案の定というか、私とひなた以外はまだ教室には居ない。先程まで一緒にいた灰さんは図書室に行くと言って、途中で別れた。

 

(………今日から新学期か)

 

 特に変わらない教室。新学期だと言うのにそういった実感はどうも湧かない。それもそうか、本来夏休みな筈の日も私達勇者は変わらず学校へと行っていた。私達は護国を守る為に鍛錬は欠かせないのだから。

 

「あぁ!またタマが三番目か!?」

 

 廊下を走りながら教室へと駆け込んできた土居は、到着早々膝から崩れ落ちる。

 その後ろから伊予島が土居の背中に隠れる様にして現れる。土居と伊予島は身長差でいうと伊予島に軍配が上がるため、隠れようにも隠れられないのが現実なのだが、これも彼女の個性と捉えるようにしている。

 

「次ッ!次こそはタマが一番乗りになってやるからな!」

 

 ビシィ!と効果音がつくほどの勢いでこちらを指さしてくる土居。本人は至極真面目に言っているのだろうが、当の本人の身長故にどうにも気迫が薄く、逆に微笑ましい気持ちが湧き出てくる。

 ひなたは可愛い者を見るかのような目で笑っているし、伊予島は困ったような表情で土居を宥めているが、その瞳には土居に対する愛が確かにある。

 

「ぐぬぅ……皆してタマをバカにしてぇ……それにひなた!お前はタマに見せつけているのか!!その悪魔の!ブツを!」

 

 不味い、標的をひなたに定めた土居は目にも止まらぬ速さでひなたの背後へと移動し、服の上からでも分かるほどの存在感を醸し出す二つのソレへと手を出し、鷲掴みにした。

 

「ちょ!?ちょっとやめてください球子さん!?い、痛ッ、痛いです!」

 

「うるさい!いっつもいっつもタマに見せてぇ……もぎ取ってやる!その胸もぎ取ってやるぅ!」

 

「やめてよタマっち、恥ずかしいよ!」

 

「あ〜ん〜ず〜!タマの事はタマっち先輩と呼べ!あんずは年下だろ!」

 

「タマっちは良いんだ……」

 

「あぁ!た、助けてください若葉ちゃん!」

 

 この光景を苦笑いしながら眺めているとひなたからのヘルプが来たため、私は土居を引き剥がすために駆け寄った。

 

「……何してるの」

 

 次に登校してきたのは郡だった。教室に入ってくるやいなや、私達の事を訝しんだ目で見てきた。

 

「千景ぇ!お前もひなたの胸をもぐの手伝ってくれぇ!同じ、同じ『ぺたん』なら分かるはずだろ!?」

 

「………」

 

 心なしか千景の土居を見る目が数℃下がった気がする。

 

「……私は、遠慮するわ。そんな事をしても時間の無駄だもの」

 

 哀れ、土居の必死の懇願を郡はいとも容易く跳ね返し、我関せずの態度で席につく。

 丸亀城に来た頃よりかは皆と話す時間が増えたが、やはりどうしてか、周りに壁を作ってしまう傾向がある。

 いつかは郡とも──。そんな事を考えていると、始業のチャイムに滑り込むようにして、高嶋が登校してきた。

 

「高嶋、今日はギリギリだな」

 

「えへへ、昨日見たプロレスに気になる技をがあったから朝からずっと練習しちゃった!」

 

 テヘッと笑う高嶋。元気ハツラツ、太陽。高嶋はそんな言葉が似合う。誰に対しても平等に笑顔を振りまく高嶋だからこそ、郡は信頼するのだろう。

 メンバー全員が揃ったと同時に先生が教室に入ってくる。私達にとって変わりのない、至って平和な新学期が今始まった。

 

 

❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀

 

 

「───昼のチャイムか」

 

 汗で蒸れた兜を脱ぎながら灰は己がどれぐらいここに居たのかを理解する。

 若葉達と別れてから図書室で少し時間を潰した後、灰は鈍った体を少しでも戻そう、と()()()の訓練場で一人剣を振っていた。

 初めは軽く仮想敵と戦えば良いだろうと考えていたが、気がつけばここまで熱中していた。

 

「しかし、勝てぬものだな……」

 

 タオルで顔を拭きながら先程の仮想敵を思い返す。神の時代の支配者に仕えた四騎士の一人。『深淵歩き』と呼ばれた彼の人物は剣を持てば、無双であったと言われていたが、想像上とは言え、今し方戦った限りでは無双と言われるのにも納得する。

 灰は過去に実際に戦った事があるが、あのときはとある事情で全力ではなかった為、苦辛しながらも勝利を掴むことが出来たが、今回は違う。何の縛りのない全力の相手に灰はなすすべもなく敗北した。もしこの場に実際に存在したならば、灰は逃走を選ぶ、そう思ってしまうほどに圧倒的。

 当分勝てそうに無いと苦笑しながらも、いつかはリベンジを果たそうと決意を固める。

 エストを一煽りした灰は次はどうしようか、と考えた末に、食堂へ足を運ぶ事にした。

 

 

 食堂に行けば案の定人が何人か居るようで、食事をしていた。

 灰は適当に食事を受け取り、席に座ろうと周りを見渡すと、若葉達の姿が目に映る。好機と捉えた灰は若葉達の席へと足を運ぶ。

 

「邪魔でなければ私も同伴しても良いだろうか」

 

「あっ、灰さん。はい、大丈夫です」

 

 若葉から了承を貰った灰は、千景の隣に座る。

 全員のトレーを見れば見事に全部うどんと、完全にうどんに染まっているな、と内心灰は苦笑する。

 

「そうだ、灰さんは先程まで何処へ?」

 

「ん?あぁ、図書室の後は訓練場でひたすらに仮想の敵と戦っていたよ。最近体が鈍ってきたからな」

 

「ほう、勝敗はどうなりました?」

 

「………負けだ。復活込みで二桁、死んだよ」

 

 やれやれ、と肩を窄めながら話すと、対面の若葉が驚いた声をだす。

 

「私が過去に戦った者の全盛期を想像したからな。多少の脚色はあるが、それでも私と彼では圧倒的な差があった」

 

 灰の戦った『深淵歩き』は理性がなかった為、対処のしようは幾らでもあるが、理性アリとなれば、話は変わる。

 剣を振ればその大盾で防がれ、攻撃を防げば、腕はひしゃげる。『深淵歩き』の名は伊達じゃないと言うことだ。

 

「………灰さんは、勝つわ。絶対」

 

「ククっ……そうだといいなぁ。まぁ、暫くは負け続きにはなるだろうがな」

 

「灰さんがそこまで言う敵か………ふむ」

 

「若葉?それに友奈よ。何思案してる?まさか、戦いたいと言うんじゃなかろうな?」

 

 ジト目で二人に視線を向ければ、片方は露骨に吃りはじめ、もう片方は困ったように笑顔を向ける。

 清々しいまでの戦闘狂っぷりにお手上げの意味を込めて、千景とひなたにアイコンタクトを送れば、それを察した二人はすぐさま友奈と若葉を落ち着かせる。

 

「別に戦うなとは言わんが……己の力量を見誤るなよ?一瞬で持ってかれるぞ?これは本当だ」

 

 念の為に二人に釘を指しておき、灰は自分のトレーに乗っかっている唐揚げを一つ、口に運んだ。

 

「………にしてもさー、毎日毎日訓練訓練って、なんでタマ達がこんな事しないといけないんだろーな」

 

 天ぷらを箸で摘みながら、ボヤくように球子は言った。

 

「バーテックスに対抗できるのは勇者だけですからね……」

 

「そりゃ分かってるよ、ひなた。でもさ、普通の女子中学生って言ったら、友達と遊びに行ったり、それこそ………恋、とかしちゃってさ。そういう生活してるもんじゃん」

 

 球子はため息をつく。

 灰も内心、球子の気持ちに賛同していた。

 

「今は有事だ、自由が制限されるのは仕方あるまい」

 

 真剣な様子で喋る若葉に、球子は納得していないように腕を組む。

 

「う~ん……」

 

「我々が努力しなければ、人類はバーテックスに滅ぼされてしまう。私達が人類の矛とならなければ───」

 

「若葉。そこまでにしておけ。これ以上は球子が限界だ」

 

 すかさず灰は若葉へ待てを告げる。ハッと気がついた若葉は申し訳無さそうに身を窄める。

 

「若葉、人類の為と意気込むのは良いが、周り全てが若葉のように覚悟が決まっている訳じゃあないのだ。不安なのだよ、いつ命を懸けた戦場に駆り出されるのか分からないのだ。球子も、それに………」

 

 そう言って灰は横目で杏を見る。その瞳は不安げに震えながら、杏は球子の裾を掴んでいた。

 球子も、杏も、勇者である前に一人の少女なのだ。命のやり取りの経験がない。

 

(まして、球子は己が傷つくよりも杏が傷つく事を極度に恐れている。それ程までに球子にとって杏は大切なものなのだろう)

 

 場が重く、暗い雰囲気に包まれそうになったのを破ったのは友奈だった。

 

「───ごちそうさまー!んー!今日も美味しかった!」

 

 いつの間に飲み干した丼をテーブルに乗せた友奈は満足気な表情で周りを見渡す。

 

「あれ?なんで皆そんなに暗い顔してるの?」

 

「……友奈、お前。いや、お前はそういう奴だったな」

 

「へっ?灰さん、なんで呆れてるの?」

 

 灰の言葉にすっかり毒気を抜かれた若葉達は一斉に頷いた。

 

「だ、大丈夫だよ!私達は強いもん、それに、一生懸命頑張ればどんな事も乗り越えられるよ!」

 

 確固たる自信を持って友奈は全員に向けて、そう言った。

 

 

 

 




 この話を書く際に原作とアニメを一通り見て来たんですけれども……いや~、キツイっす(5死)
 始めて勇者御記を書いてみたんですけど、どうですかね?

 誤字脱字報告ありがとうございます!高評価や感想貰えたら嬉しいです。

我々ぐんちゃんを幸せにする会はぐんちゃんのこれからを応援しています。
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