ゆゆゆ世界にダクソの主人公をぶち込んでみた。(未完)   作:イロマス

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 アーマードコア6はギャルゲー。

 長くなりそうだったので分けます。



第八話 ささやかな異変/陰葉

 

 喉かな田園を一台のバスが走っていく。

 千景は奥の席に座り、灰は隣で静かに流れる景色を見ていた。黙々とゲームをする千景の隣には、折り畳まれ袋に入った大鎌が置いてあった。

 現在、千景は特別休暇を貰い地元の高知へと帰って来ていた。休暇は千景だけではなく、勇者全員に与えられ、各々が休みを満喫していた。

 しかし、その中で友奈だけは前の戦闘で使用した精霊による弊害を警戒してか、現在は病院に居る。友奈は己の休みが病院の中で終わる事に嘆いていたが、精霊の使用による害は未だ分からずじまいな為、無理な行動は控えるべきだと思う。

 そんな中、千景だけはこの帰郷には決して本意ではなく、逆に忌々しさすら湧いてくる程だった。そして、千景からすれば不本意な帰郷には訳があった。

 

 先週、千景の父から連絡があった。母の容態が悪化したから来てくれ、と。千景の母が発症した病は『天空恐怖症候群』。バーテックス襲来の日、多くの人々が発症した精神疾患だ。この病にはステージが四段階に分けられており、千景の母は先日ステージ2から3へと悪化した。更にその先のステージ4まで行くと、自我の崩壊、記憶の混濁、発狂と手の施しようがなくなる。しかも、ステージ3から4まで至るまで時間はかからないという。

 

 つまり、近いうち千景の母は自分の産んだ娘の顔を忘れるということ。故にせめて顔を見せてほしい、と千景の父は電話越しに懇願した。

 電話越しに分かる明らかに取り繕った声色に嫌悪感と怒りが込み上げてくる。灰もそれには忌避感を隠そうとせず、諦めた様に天を仰いだ。

 ゲームが終わったのか、顔を上げて窓の外を見る千景。バスの中には数人の乗客が乗っており、家族と思われる子連れの親子が楽しそうに喋っている。いつもなら何ともない筈の話し声が今は耳障りに感じる。

 

 千景の親はお世辞にも良い親とは言えなかった。父は幼い子供がそのまま成長した様な性格をしており、母は先が見えぬ人だった。二人は恋愛結婚だったらしい。二人の家族はもちろん反対したが、二人はその反対を押し切って結婚し、ボロボロのアパートに住んだ。

 二人がアパートに住み、それからまもなくして、二人の間に千景が生まれ、二人は心から祝福した。そして三人は幸せに生活を送る………ことは無かった。

 父は娘が出来たからと言ってそう簡単に変わる人では無かった。母は何度も父に苦言を漏らした、しかし父はどこ吹く風で遊び呆け、家庭内の雰囲気は徐々に劣悪になっていった。

 そんな日々が続いたある日、千景の耳にとある情報が入った。

 

──母が不倫した。

 

 そこから先の日々は千景にとって最低最悪にも等しかった。道を歩けば「阿婆擦れの子」や「淫乱女」など呼ばれ、学校に行けばかならず持ち物が無くなっていた。

 そんな地獄という言葉すら生温い程の日常を過ごし数年が経ち、精神的にも限界が近かった時、灰と出会った。

 夜、街灯に虫が寄るように、人が暗闇の中遂に見つけた光明に縋るように、千景は地獄という闇に現れた灰という太陽に惹かれ、依存した。無自覚ながらも確かに存在する依存心に千景当然気づかず、また灰もそれを察知しない。いや、出来なかった。

 

「──千景。良かったのか?」

 

「大丈夫よ……少しだけ滞在するだけだから」

 

「そうか……無理はするな」

 

「───うん」

 

 心配そうに声掛けする灰に、千景は心配かけさせまいと軽く微笑んでまた外を向く。

 千景を案じて同行を願った灰は、何もしてやれない自分に怒りと歯痒さを千景の背中を見る。

 どんよりと重く息苦しい空気の中、バスはバス停に着いた。

 

「……降ります」

 

 バスから降り、バスが去って行くのを見届けた後、千景と灰は並んで歩く。

 

「灰さんは、この後どうするの?」

 

「私か?………家に行こうと思う。もう見る影も無いだろうがな」

 

「……私も、こっちの用事が終わったら……行っても良い?」

 

「なに遠慮している。あそこは千景の第2の家と思って良い。まあ、今となってはもてなす事も出来なくなったが」

 

 当たり障りのない会話を続ける中で、千景の心はこれ以上なく満たされていた。

 バス停から歩いて数分、遂に目的である千景の家に着いた。

 

「灰さん、ここまでありがとう………また後で」

 

「──分かった。待ってるぞ」

 

 何かを堪える表情を一瞬表に出した灰は渋々と歩いて行く。灰の姿が見えなくなるまで見続けた千景は重い足取りで玄関まで歩く。

 

「……っ……ハァ……ハァ……」

 

 動悸が激しくなる、息が苦しい。千景にとって最悪にも等しい二人が扉の先にいる。今すぐにでもここから離れたい衝動に襲われるが、灰と約束した手前、震える手を空いた手でギュッと掴み、ドアノブに手を掛ける。

 

「──ただいま」

 

 千景のどんよりと重い心に対してすんなりと開いた扉の先の光景に、千景は徐に顔を顰める。

 廊下に放り出されたゴミ袋の数々、長らく換気をしていないのか今すぐにでも出て行きたくなるほどの空気、これが自分の家なのか目を疑う。

 

「……千景か?……良く帰って来たな、大変だったろう?」

 

 部屋から現れた千景の父は一瞬千景の持つ大鎌にぎょっと目を見開くが直ぐに元の調子に戻り、取り繕った笑顔で両手を開く。

 

「別に……慣れてるから」

 

 ポツリとそう言って父の横をすり抜ける。すれ違い様に千景の目に映ったのは何かを必死に押し殺す様な表情をした父だった。

 

 

❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀

 

 

(この村も……変わった)

 

 山の中腹から見下ろしながらそう思う。バーテックス襲来の日から三年。壊れた家や公共施設はあらかた治り、灰の記憶通りの村の姿に戻りつつあった。

 しかし、(ガワ)は元通りでも中は見違えるほど変わった。子の笑い声、大人の会話、人の営みが薄くなっている。

 至極残念そうに息を吐く。背後には無惨にも原型がなくなった自分の家だったものがある。唯一残ってるのは千景と良く座った縁側ぐらいか。

 

「……新しくリフォームするべきか」

 

 縁側に腰掛けながらそんな事を思う。今まで要らないと貯め続けて来た大社からの金の使い所が漸く見えた。

 ボーッとそんな小さな事を考えていると、灰のポケットに入っているスマホが震える。

 

「大社か………え〜、と電話はどうやったか……あぁ、これか」

 

「──もしもし」

 

『もしもし、灰様。少しお時間頂けますか?』

 

「問題ない。どうした?」

 

 電話越しから聞こえてくるのは壮年の男性の声だ。突然の連絡に何事かと耳をすますと、男性の口から耳を疑う情報が入ってきた。

 

「──大社の神官が、行方不明?本当か」

 

『はい。2日前から連絡が取れず、見たという報告もありません。フッ、と消えたのです。忽然と霧の様に』

 

「………。これは勇者や巫女達は周知か?」

 

『いえ、勇者様と巫女様には余計な不安をかかせまいとこれは我々神官だけに留めております』

 

 声に出さず、灰は安堵した。

 

『我々は変わらず行方不明者の捜索に尽力します。灰様は心配せず休暇を──』

 

「──静かに」

 

 電話越しの困惑の声に答えず、灰は座りながら確かに肌に感じる敵意に注意を向ける。

 刹那、葉の掠れる音に遅れて飛んでくる刃物を視界に捉えた灰。刃物が頭蓋に刺さる直前、目にも止まらぬ速度で刃物を掴み取る。

 掴み取った刃物を地面に突き刺し、飛んできた方向を注視する。

 

「行方不明者の捜索と言ったが、その必要は無くなったな」

 

『はい?………まさか、()()()()()()()()()()()()有り得ません。どれだけの距離があると思ってるんですか!』

 

「確かに人の足一つで行くには少々厳しいだろう。しかし人の身を逸脱した存在なら……可能だと思わないか?」

 

 木々の間から現れたソレはかろうじて人の姿をとどめていた。大社の服は破れ、皮膚が見える。ここまで来るのに一切の防御をしなかったのか、体の所々には切り傷や、枝が刺さっており今も血を流し続けている。極め付けはその両足だ。膝から下は皮膚が完全に破れ、中の肉どころか骨が顔を出しており痛々しい。それでも尚千切れ飛ばなかったのは、触手の様なものが糸のように縫い付けられているためだった。

 

「不意打ちとは……卑劣だな。私が言えたものではないが」

 

 異形は喋らない。ただ焦点の合わない虚な瞳で灰を見続けるだけだ。

 

「……何処だったか、過去に似たような奴が居たな。さて、私に用があるのだろう?来るもの拒まず、客が来るならもてなしてやらないとな」

 

 ゾンビのような覚束ない足取りで近づく異形。縁側から腰を浮かせた灰の手にはいつの間にかロングソードが握られていた。徐々に近づく両者。距離約五メートルまで近づいたその瞬間、異形は目にも止まらぬ速度で灰の視界から消えた。

 

「………ほう」

 

──殺気。

 

 感嘆の声を漏らした灰は一瞬口角を上げ、背後を横一線に斬る。

 肉を斬る感覚、臓物を絶ったと確信し振り向くと、灰の目前でもがいている異形の姿。下を見れば剣が深々と腹に刺さっており、絶えず血が滴り落ちている。もし剣を引き抜いたら辺り一面血に染まるだろう。

 

「もう良いだろう?何をもって私を殺そうとしたのかは知らん。だが、貴公も生きる者ならば死にたくないだろう。今すぐここから去るならば助けてやる。だからこれ以上の抵抗は止めておけ」

 

 精一杯の慈悲を持って声を掛ける。異形はそれに答えず、黙ってその手を灰に伸ばすだけだった。

 

「……忠告はした」

 

 一呼吸おいた後、全力で剣を振り切る。肉を、臓物を、骨を完全に断たれた異形は最後まで喋ることなく草の上に倒れ伏す。

 物言わぬ亡骸と化した異形を前に灰は目を閉じる。数分した後、剣を消した灰は大社に電話を掛ける。

 

『ご無事でしたか!灰様』

 

「あぁ、傷一つない」

 

『そうですか……行方不明の神官は』

 

「死んだ。襲いかかって来たからな、仕方なく」

 

『そうですか……』

 

「それに、この神官は操られているかもしれん。いまはもう痕跡は無いが、触手の様なものが奴の体から生えていた。多分、何かしらの外的要因で寄生されたのかもな」

 

『──そんな』

 

 電話越しの神官は言葉を失う。

 

「外的要因が天の神によるものなのか、それとも別のナニカなのか……現状分からない………この行方不明者の件、頼めるか?」

 

『もとよりこれは我々がやらなければいけない事……必ず吉報を知らせます』

 

「──頼んだ」

 

 電話を切り、血溜まりの中に寝そべる死体を調べる。裂けた皮膚、折れた骨、全身の裂傷、普通の生活では到底負うことの出来ない傷ばかりだ。極めつけの触手は逃げたか、それとも死んで消滅したのか、何にせよ油断は出来なかった。

 せめて安らかに眠るよう、死体の体に触れた灰は呪術『浄火』を使い、燃やす。

 

「………」

 

 燃える死体を眺めながら灰は険しい表情を作る。神樹が気づかぬ程の微力な存在。しかし、超常の存在ならば微力だろうが人の身では脅威になる。その脅威が今、四国に、大社に向けられている。杏、球子、友奈、ひなた、若葉、そして千景。いつその凶牙に掛かるか分からない。

 

「──守護(まも)らねば」

 

 守る、護る、守護る。勇者を、巫女を。眼前で燃える火を前にして、密かに灰は決意した。

 

 翌日、大社に戻る事になった二人は、来た時と同じ様にバスに乗っていた。二人の間にある会話はいつもより少ない。千景は変わらずゲームに没頭し、灰は腕を組み目を閉じている。

 

「………ねえ、灰さん?」

 

「どうした」

 

 この空気に耐えられなくなったのか、ゲームから顔を上げて灰に声を掛ける千景。どこか迷ったような声色に気になりつつも、灰は千景の方に顔を向ける。

 

「───私って、生まれて良かったのかしら。勇者としての価値はあるのかな」

 

 あまりに辛すぎる千景の思いに、灰は言葉を失う。普通ならば当たる事のない疑問。己の生まれた事に対する失望、疑問、懐疑、千景がこのたった一日の間、どれほど苦しんだが、どれほど迷ったかをこの一言が如実に表していた。

 あの時無理にでも一緒に居れば、そんな後悔が灰の中で螺旋のように渦巻く。

 

「──えっ、ど、どうしたの?」

 

 灰のとった行動は抱擁であった。そっと自分の胸に頭をくっ付けるように優しく抱く。

 

「生まれてよかったのか、なんて言うな。千景、望まれずに生まれた者なんて居ないのだ。誰しも祝福されて生まれるんだ、千景もその一人だと言うことを忘れないでくれ」

 

 口下手で、何かを伝えるのが苦手な灰の精一杯の言葉だった。腕の中で恥ずかしそうに身を捩らせる千景は灰の腕を軽く叩く事で己の羞恥を訴える。

 

「灰さん、大丈夫、大丈夫だから。ありがとう」

 

 漸く灰の腕から解放された千景は気恥ずかしそうにそう言って窓の外に目を向ける。その口元は、微かに笑みを浮かべていた。

 

 

❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀❀

 

 

「前回に比べて数が多いな」

 

 灰が顎に手を当て鋭い視線をバーテックスに向ける。休暇が終わり、香川に戻ったそのすぐ後、二度目の侵攻が知らされ、現在は壁を超えて迫るバーテックスとの戦闘の真っ只なかだ。

 今回は初陣の時よりも数が多い。隣で戦う千景はも数の多さに辟易しているほどだ。

 

「──後ろだ千景!」

 

「──えっ?」

 

 三桁は超える程の数を休みなく倒し続けていればいつかは集中が切れる。一瞬だけ気を抜いてしまった千景を見逃すバーテックスではなく、格好の餌だと一体のバーテックスが千景の懐に迫る。

 灰も咄嗟にカバーに入ろうとするが、行かせまいとバーテックスが周りを覆う。

 絶体絶命、他の仲間に助けを求めようも距離が離れている。千景が死を覚悟したその時──山桜が視界を覆った。

 

「……高嶋……さん」

 

 千景は目を疑う。友奈は本来病院で検査を受けている筈。決してこの場にはいない存在だ。

 そんな千景の疑問に答えるように友奈は少し気まずそうな笑みを浮かべて。

 

「あはは……時間止まってるから、抜け出してきちゃった。皆んなが戦ってるのに、私だけお休みなんてできないよ!」

 

 友奈らしい答えに千景は一瞬呆気にとられる。しかしすぐにその表情は崩れ、笑みが溢れる。

 

「あっ!ぐんちゃん笑った!」

 

「高嶋さんらしくて……大丈夫、もうさっきみたいな醜態は晒さないわ」

 

「千景、大丈夫か──って友奈か?病院にいる筈では」

 

「あっ……えーっと……抜け出してきちゃいました!」

 

「……」

 

「えへへ、あのー、この事は秘密にしてくれませんか?」

 

「本来なら叱るべきなのだろうが、先程の不覚がある手前、黙っておく。ありがとう千景を助けてくれて」

 

 頭を下げる姿に戸惑い、焦ったように忙しなく動く友奈と灰の二人の姿に千景は自分でも気づかぬほどの小さな嫉妬心が生まれる。

 

「高嶋さん……灰さん……今は戦いの真っ只中よ……」

 

「そうだったね、しっかりしなくちゃ!よーし、バーテックスを倒して四国を守るよー!」

 

 友奈の発破に千景と灰は頷き、行動を始める。友奈と千景は高く跳躍し、空中に屯するバーテックスを己の得物で殲滅していく。

 対する灰は樹海の幹を駆けながら迫るバーテックスを一刀のもとに下していた。

 

「少しは数を抑えられんのか、知能はあるくせにこういう時は阿呆になる」

 

 灰は一対多は大の苦手だ。それはどの不死にも言える事だが。今の所は捌けているが、やはり敵の多さに嫌気とイライラが募り、バーテックスに吐き捨てるように愚痴る。

 そんな切実な思いが届いたのか、目の前のバーテックスは動きを止める。

 

「──は?まて、なぜ止まる。こんな時に知能の高さをアピールしたところで意味ないぞ」

 

 予想の斜め上を超える動きについ剣を振るう腕が止まる。それを狙ってか、灰の死角から四体のバーテックスが襲いかかるが簡単にあしらわれる。

 

「そんな事だろうと思ったよ。一瞬期待した私が馬鹿だった」

 

 先ほどよりも更に怒りが溜まった灰は、半ば八つ当たりのようにバーテックスの波目掛けて駆け出して行った。

 

 




 えー、こっから徐々に原作から逸れていきます。あくまで流れは出来るだけ原作準拠でやっていきますが、内容はだんだん別物になりますので。ですが本編組は幸せにします。そう、本編組は。

我々ぐんちゃんを幸せにする会はぐんちゃんのこれからを応援しています。
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