しのぶにとって湊と過ごす日は安息の日だった。
鬼殺隊に入ってからは姉と共に鬼を殺し続ける日々、そんな日の中で彼と過ごす日は心の癒しの日となった。
最初のきっかけは茶屋の九水さんに湊のことを見ていて欲しいと言われたことだった。その時は私達と同じような重い過去を聞かされて、彼が死に急がないように見ていて欲しいと言われたから会うようになった。
最初の方こそ私が彼のことを見ていなければという意識が強かったが、彼と過ごす時間はとても楽しくて、過ぎるのがあっというまで、いつのまにか彼よりも私の方がこの時間を楽しみにして、心労を癒していたのだと思う。
彼と過ごす時はいつも姉が隠れて見ていた。湊は人の気配を探るのが上手い、姉のことを最初の方こそ気にしていたが会う回数が増えていくにつれ、気にすることは無くなっていった。私は姉がニヤニヤしながらこちらを見てくるのが癪だったので何回か注意したが直ることはなかったので諦めることにした。
彼がする話はとても面白かった。その中でも私は彼が話す葦名のことが好きだった。今は落城してしまったがその雄大さを感じることができる葦名城、美しい自然に囲まれた中にある寺 金剛山仙峯寺、彼の口から語られる葦名はどれも聞いたことがない話で興味深く、彼が私を連れていってくれて、実際にこの目で見るのを楽しみにしていた。そして、そんな自分のルーツに誇りをもって嬉しそうに語る彼が好きだった。
彼とは目的、いや信念が同じ同僚でもあった。だからこそこういう日を繰り返して大人になっていくのだとその時の私は思っていた。しかし忘れていた、現実は非情なのだ。私と姉から両親を奪ったように。
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「伝令!伝令!真半山ニテ下弦ノ参ガ出現!現在ハ乙ノ隊士ガ一人デ応戦中!柱ハ日ノ出マデニ到着ガ間ニ合ワナイ、近クノ胡蝶隊員ハ今スグ真半山ニムカエ!」
その日、胡蝶姉妹は任務がなく宿でリラックスしていた日だったが十二鬼月の出現の伝令により二人の緊張感は一気に高まり、すぐに現場へと向かう。
カナエの実力は柱に迫るほどまでに上がっており、実際に柱への勧誘も行われていた。だからこそ柱の代わりとして派遣されることになったのだろう。カナエとしのぶが山に着いた時にはまだ戦闘が続いている様子だった。
「伝令が来てから既に10分以上は経っています。急ぎましょう姉さん。」
しのぶはカナエに伝える。
「えぇ、一人だけで10分以上持ち堪えてくれてるのに感謝しなくちゃね。」
カナエは少しでも早く戦闘に入ろうと全速力で走っていた。
カナエとしのぶは自分たちがどこにいるのか分かりづらいこの山を、道中の爆発音と光を頼りに進んでいる。
「この爆発音、鬼の血鬼術ですかね?」
「えぇそうだと思うわ。だとしたら厄介だけどおかげで場所もわかる、最短でいくわよ。」
しのぶとカナエはある程度進んだところで爆発音が止み、静かになったのを確認する。しかしながらもさっきまで爆発音がしていたところに向かって走り続けて、二人は湊と鬼が互いに技を放とうと構えている姿を遠くから確認する。
「あれは湊君⁉︎十二鬼月の相手をしてたのって彼なの⁉︎」
「…ッ!」
カナエとしのぶは交戦していた相手がかなり仲の良い知り合いだったことに驚き、更にスピードを上げる。
しかし湊と鬼の技は放たれた。湊は目にも見えない速さで穿ち、鬼は体を爆発してものすごいスピードで湊に突っ込む。しかし湊の方が一枚上手だった、鬼の拳を突きで受け止め、それを支柱として飛び上がり空中で鬼の首を落としたのだ。
しかしカナエとしのぶは止まらない、むしろさっきより焦ってスピードを上げていた。それは鬼が首を切り落とされている途中で体を光らせたからである。
カナエたちがここまでくるのに頼りにした光と爆発音、そして先ほどの鬼が使った体を爆発させる技。ここまでわかればこの後に何が起こるかは想像に難くない。しのぶは必死に手を伸ばした、彼の手を掴んでこちら側に引っ張ろうと。彼をこれから起こることから助けようと。
しかしその手が届くことはない。そこから湊のところに着くにはほんの少し遠かった。湊がしのぶたちに気付き、しのぶたちの方を見る。
「・・・・・。・・・・・。」
湊はしのぶたちに言葉を残したがしのぶ達とはほんの少し距離があったために彼女らは聞き取ることが出来なかった。
そして湊の体は光に包まれ、一瞬の静寂が訪れた後、大きな爆発が起きた。
衝撃波に吹き飛ばされそうになるもなんとか持ち堪え、胡蝶姉妹は爆心地を見る。そこには刃の折れた湊の刀が落ちているのみであった。その夜、森に悲しみがこだました。
その後数日間は隠による後処理があった。あれだけの爆発があったのだ、完全に隠しきる事はできず、火薬の事故があっただの神の祟りだのとの噂を町中に流すことでなんとか対応した。そしてその後に今回の件について湊の鎹鴉と現場の情報を元にまとめられた報告書がつくりあげられ、胡蝶姉妹を始めとした湊と関わりがあったものに配られた。
─報告書─
◯月△日
真半山にて下弦の参が出現。調査のため近くにいた隊士、薄井 湊(乙)を派遣。異形の鬼一体を含む七体の鬼と戦闘し撃破の後、下弦の参と戦闘。勝利するも鬼の自爆に巻き込まれ行方不明。五日間の隠による捜索でも見つからなかったため、捜索を打ち切り。薄井 湊は死亡したものとする。
この報告書を見たしのぶは絶望に襲われる。目の前で鬼が自爆したものの湊の遺体は見つかることはなかった。だからまだどこかにいるのではないかと僅かだが希望を持つことができた、しかし隠をも動員して五日間捜索しても見つからないとなればそういうことだろう。
しのぶは耐えきれず屋敷をでて外に向かう、足が赴いた先は九郎茶屋だった。
「いらっしゃい、しのぶちゃん」
「…九水さん」
九水はいつもと変わらないような様子でしのぶに声をかけてくれた、だけどそれが逆に今のしのぶには辛いところもあった。
「あの…湊さんのことは…」
「あぁ聞いてるよ。数日前に君たちの組織の人が尋ねてきてね、そこで一通りの説明を受けた後、遺品として折れてはいたけど刀をもらったよ。」
「そう…ですか…」
しのぶは九水が湊の件を知ってたことを知り謝ろうとするが、その前に九水が喋り始めた。
「何か勘違いしてるようだけど君が責任を感じる必要はない。確かにしのぶちゃんには湊のことを見ていて欲しいとは言ったけどそれは私生活の部分だ。戦いなんて命のやりとりまでみてやる必要はないよ、それこそその道に進んだのはあいつ自身の選択だからね。私はあくまで湊自身が死ぬことを目的として活動しないようにしてほしかっただけさ、だからむしろ感謝を言いたいくらいだ。あいつはここ最近楽しそうにしてたからね。」
その言葉を聞いてもなおしのぶは責任を感じてしまう
「でも、私があと少しでも早くついていれば彼に手が届いて助けることができたんです…」
「君の目の前で死ぬなんて湊も悪い奴だねぇ。まぁしのぶちゃんが自分のことを許せない気持ちはわからない訳じゃない。目の前で死なれたらそう思ってしまうのも無理はないからね。でもね、湊も君が自分のことで迷ってるのは見たくないと思うよ。」
その言葉にしのぶは思わず黙り込んでしまう。
「…君に渡したいものがあったんだ。これだよ。」
そういって九水がしのぶに手渡したのは灰色の腕輪だった。
「これは?」
「湊の刀の折れていた部分を加工して作ったものだよ。君と湊の目的は自分達と同じような人を減らすことだとあいつから聞いている。だからこそ傲慢かも知らないが君に新たにお願いをしたい、あいつの願いを引き継いではくれないか?あいつがいなくなってもその意思は生き続けて欲しいんだ。その意味も込めてあいつの遺品の一部を受け取って欲しいんだ。」
しのぶは黙ってその腕輪を見つめている
「自分が許せなくてもいい。ただ、目的は見失わないで欲しい。それがあいつの願いにつながるのだから。」
少しの間があった後しのぶは答える
「そうですね、私がこんなんだったら彼に怒られてしまいますね。
…腕輪ありがとうございます、私は彼の意思を引き継ごうと思います。」
しのぶは心の中で思う
(私はまだ自分を許すことが出来ない、立ち止まることも許されない。でも彼の意思を引き継ぐことが償いになるのなら私はしたい。この腕輪はそれを違うためのものだ。)
その言葉を聞いた九水は少し微笑んで言った。
「そうかい、本当にすまないね。今度は姉さんと一緒にくるといい。サービスしよう。」
「はい、ありがとうございました。失礼します。」
それを言い残してしのぶは姉の元へと帰っていく。
しのぶの姿が見えなくなった九水は、しのぶとは別の客席に座っていた人に向かって声をかける
「彼女は君のとこであんなに悩んでいたのに君は本当にこれでいいのかい、
そう呼ばれた青年は何も言わずにしのぶが歩いていった方向とは逆方向に立ち去っていった。
時はこれより数日前に遡る。
(うっ 体中が痛い。…待て、俺はどうなったんだ?クソッ、まだ意識が朦朧としてる…、早く覚醒しなければ…)
「・・・・・!・・ろって!」
(あぁ声が聞こえてきた。目も少し開く、もう少しだ。)
「おい起きろ!起きろって!」
完全に覚醒する。
「…ッ頭に響く。…ここは?」
すると近くにいた隠が小さな声で答えた。
「何してる!お館様の前だぞ、礼を正せ!」
その隠の発言に驚いた
「大丈夫、無理をする必要はないよ。薄井湊君、君に話があるんだ。」
考査が近いのでまた投稿遅れます。すみません
湊に忍び義手つける?
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つけてくれ
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別にいらん